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こんにちは!

 

私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室の獣医師看護師は、朝から夜まで、都内を往診車でまわり、診察を行なっています。

救急車ではないことをご了承いただいた上で、できる限り診察を受けさせていただいています。基本は予約制ですが、ペットが体調を壊す日なんて予測がつかないものですので、慢性疾患を含む多くの病気が当日でのご予約をいただいています。

 

今回は、これからの時期、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室でよく出会う「熱中症」の大型犬の症例をお話しします。

 

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症例は、東京都大田区在住の7歳の高齢犬、ゴールデンレトリバーのルイくんです。

 

昨年7月の猛暑が続く時期に出会った大型犬のルイ君は、とても印象的であり、ご家族様と3日間に渡って一緒に戦い、そしてお別れを迎えました。熱中症は、状態によってはお別れまでを考えなければいけない病気です。

ペットの生活環境、お散歩の時間帯など、これを機に見直していきましょう!

 

大型犬/暑い日の朝の散歩/熱中症に要注意

ルイ君が、お外から帰ってきてから、ぐったりとしていて、息遣いが荒く、嘔吐を2回したとのことを電話問診で伺いました。息遣いが荒いとのことでしたので、緊急性が高いと感じ、すぐにお伺いさせて頂くこととしました。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室では、緊急性が高いと判断した場合には、できる限りスケジュールを調整し、対応させて頂くようにしております。そのため、今回もうまく調整ができたため、早急に向かわせて頂きました。

 

お家にお伺いすると、ルイくんはフローリングでぐったりとしており、ご家族様によると、身体が熱くて、先程血便が出たとのことでした。

 

すぐに身体検査を実施し、詳しいお話しは後ほどお伺いさせて頂くこととしました。

 

体温は42度、呼吸は浅く速い呼吸で、舌の色もやや薄いピンク色、脈も速く、血便は鮮血の水下痢のようなものでした。暑い中で、お散歩とボール遊びをしていたとの稟告、体温の上昇から、熱中症と判断し、すぐに体温を下げるように処置を始めました。

まずクーラーで室温をさらに下げて、クーラーからの冷風をサーキュレーターにて身体に当て、脇の下、首、股の間に保冷剤を入れて、点滴も行いました。

身体を冷やし始めて30分ほどでルイくんの顔つきは少し楽になったように感じられました。

 

ここで、熱中症について少しご説明させて頂きます。

 

熱中症は、人間同様、犬、特に今回のような大型犬や短頭種(フレンチブルドッグやパグ、シーズーやマルチーズ、ペキニーズなど)、また体温調節が苦手な高齢犬では起こりやすいと言われています。

熱中症になった場合、悪化してしまうと、あまりの高い体温に、身体の細胞が壊れていってしまいます。

そのため様々な臓器が障害を受けて重篤な症状を引き起こし、致死的になってしまうこともあります。

軽度の場合であれば、ハアハアと息遣いが荒くなったり、ぐったりしてしまうといった症状がみられますが、重症度が上がると、それに加えて嘔吐や血便、血圧低下や頻脈、呼吸不全や、痙攣などの神経症状など多岐に渡る症状を引き起こします。

身体の中では通常何もなければ出血は起こりません。

しかし、強い炎症が起こったり、感染が起こったり、細胞が壊れたりすると、血液が固まりにくくなってしまう、いわゆるDIC(播種性血管内凝固症候群)という状態になってしまいます。

DICになってしまうと、身体の至る所で血栓ができやすくなり、それを溶かそうと、身体は血液をサラサラにします。

その結果血液が固まりにくくなり、様々なところで出血が起こる結果、血便や血尿、血圧の低下が見られることとなります。

これらが見られると、熱中症に限らず、かなり厳しい状態と言われています。

 

今回のルイくんは、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室スタッフが到着するまでの間に血便をしてしまったこと、脈が速くなっていることから、DICが疑われました。

しかし、DICになっていても、ルイくんは頑張ってくれていて、私たちもそれに応えられるように、血栓予防のお薬や、点滴を行い、体温が下がるのを待ちました。

 

その間にも、ルイくんは血尿をしてしまい、ご家族様に、ルイくんの現状を詳しくお話しさせて頂きました。

 

ご家族様としては、つい数時間前までいつもと変わらず元気なルイくんだっただけにかなり厳しいお話しとなってしまいましたが、頑張っているルイくんを見て、せめて少しでも楽になってほしいとのご希望でした。

また、呼吸不全がいつ起こるか分からない状態のため、酸素室をレンタルして頂きました。

 

現状でできる治療をできるだけ行いつつ、体温測定を行っていると、ようやく39.8度まで下がってきました。犬の平熱が38〜39度なので、39.8度でもまだ高いのですが、熱中症の体温からはようやく抜け出せました。引き続き冷却をしてもらい、39.5度まで下がったところで、顔つきも楽になったようだったので、採血を行い、次の日の朝一で、もう一度診察をさせて頂くこととしました。しかし、状態が状態なだけに、急変のリスクがあることもご家族様にお伝えさせて頂き、何かあればすぐにご連絡を頂くこととしました。

 

血液検査では、腎臓の数値や肝臓の数値、電解質の数値などに異常値が見られました。このことから、ルイくんは熱中症による多臓器不全が考えられました。

 

次の日の朝一で、ルイくんのお家にお伺いすると、昨日よりハアハアは収まっていましたが、舌の色が少し紫色になり始めていて、かなり厳しい状態と判断されました。

血液検査と現状をご家族様にご説明し、その日も血栓に関する治療を実施しました。

 

しかし、ルイくんはその日の夕方に虹の橋を渡ってしまいました。

 

ご家族様にとって、突然のお別れになってしまいましたが、最期まで頑張っているルイくんの姿を見て、励まされたこと、お家で過ごすことが出来たので24時間離れずにルイくんと一緒にいられたことを伝えて下さり、ルイくんにとってもしっかりとお別れができたように思われました。

 

今回のルイくんのように、熱中症は死に至ることも少なくありませんが、同時にお散歩時間をずらしたり、日中はお部屋で涼しく過ごすなどを気をつけるだけで防ぐことができる病気です。

 

しかし、それでも熱中症になってしまう子も中にはいます。ルイくんのように大型犬の場合は普段は動物病院に連れて行けても、立てなくなってしまうと連れていくことが大変かと思われます。

そんな時は、往診専門動物病院わんにゃん保健室までご相談ください。

 

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