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大型犬に多く見られる腹腔内腫瘍。診断された時にはすでに高齢で、手術や抗がん剤などの積極的な治療が選択肢に入らないケースも少なくありません。

そんなとき、ご家族ができることは何か——それが「在宅での緩和ケア」という選択肢です。

今回は、東京都渋谷区に暮らす大型犬が、突然の起立不能をきっかけに腹腔内腫瘍が見つかり、ご家族とともに過ごした穏やかな在宅緩和ケアの実例をご紹介します。

犬のがん、特に腹腔内腫瘍と向き合うなかで「何ができるのか」「どう見送るのか」を考えるきっかけになれば幸いです。

目次

 

大型犬の腹腔内腫瘍とは

今回ご紹介するのは、東京都渋谷区にお住まいのご家族と暮らす、12歳・去勢済のゴールデンレトリバー(38kg)、タロくんです。

2025年1月9日の散歩中、突然ふらつく様子が見られたことから緊急で帰宅。その日は特に大きな異常はなかったものの、翌朝には起立不能となり、ご家族だけでは病院への移動が困難だったため、当院へ往診のご相談をいただきました。

超音波検査の結果、タロくんの腹腔内には約8cmの腫瘤を認めました。現時点での画像所見だけでは腫瘍の確定診断はできませんが、年齢や症状から悪性腫瘍の可能性が高いと判断しました。

腫瘍の摘出や抗がん剤といった積極的な治療についてもご提案はしましたが、ご家族としては「手術や入院ではなく、できるだけ穏やかに家で過ごさせてあげたい」との強いご希望がありました。

このように、大型犬の腹腔内腫瘍に対しては、年齢・体力・性格・生活環境などを総合的に考慮した上で、在宅緩和ケアという選択肢をとるケースが増えています。

次は、急な体調変化により通院が難しくなったタロくんに、どのように往診で対応していったのかをご紹介します。

 

 

通院が困難な大型犬への往診の選択

大型犬であるゴールデンレトリバーのタロくんは、体調が急変し、翌朝には完全に起立不能な状態となりました。高齢かつ体重のある犬にとって、移動のための介助はご家族だけでは非常に困難であり、移動中の負担も大きなリスクになります。

特に、腫瘍によって出血や貧血が起こっている可能性がある状態では、ちょっとした移動の衝撃が容体をさらに悪化させることがあります。結果として腫瘍が見つかったのですが、この時点ではまだ何も発覚していなかった中での急な症状だったため頑張って通院させようと試みましたが難しく、自宅での診療を希望されました。

当院では、必要な医療機器を持参し、往診で腹部超音波検査・血液検査などの初期評価を実施しました。その結果、腫瘤の存在とともに、炎症マーカーの上昇、肝酵素・膵酵素の上昇、そして軽度の貧血を認め、腫瘍からの慢性的な出血や局所炎症が疑われました。

このように、大型犬で体調急変があった場合には、速やかに往診による評価と対応を行うことが、安全で現実的な選択肢となります。

次は、タロくんに対してどのように在宅緩和ケアを開始していったのか、その具体的な初期対応についてご紹介します。

 

 

在宅緩和ケアの初期対応

往診初日に、タロくんの身体検査と血液検査、腹部超音波検査を実施し、腹腔内に8cm大の腫瘤を確認しました。画像と血液検査から判断しても、悪性腫瘍の可能性が高く、また抗がん剤治療や外科手術は希望されないとのことでした。

そのため、タロくんには「在宅緩和ケア」によるサポートを選択しました。これは、残された時間を穏やかに過ごしてもらうことを目的としたケアであり、ご家族にとっても精神的・肉体的な負担を軽減できる方法です。

初診当日は、以下の対応を行いました。

  • 皮下点滴による輸液と薬剤投与(鎮痛剤、制吐剤、抗炎症薬)
  • 酸素飽和度などのバイタルチェックと全身状態の評価
  • 環境評価(タロくんが快適に過ごせる場所の整備)
  • ご家族への今後の流れの説明と不安のヒアリング

皮下点滴には、炎症や痛みに対する鎮痛薬、制吐薬、食欲刺激などを含め、その時点で可能な限りのケアを提供しました。

翌日の再診では、検査結果に基づいた今後の見通しと、どのように医薬品を用いながらケアを継続していくのかについて、丁寧に説明を行いました。

次は、定期的なモニタリングとケアの調整についてご紹介します。

 

定期モニタリングとケア内容の調整

タロくんの在宅緩和ケアでは、1週間ごとの往診を基本とし、状態の変化に応じて柔軟に対応していきました。大切なのは、“今の状態に合ったケア”を提供し続けることです。

定期往診で行った内容
  • 身体検査(体重、粘膜色、脱水、呼吸状態など)
  • 血液検査による肝酵素、炎症マーカー、貧血の進行評価
  • 腹部超音波検査による腫瘍サイズと周囲臓器への影響確認
  • ご自宅での皮下点滴内容の見直しと調整

モニタリングの目的は、腫瘍の進行具合だけでなく、症状(痛み、食欲、活動性)の緩和度を客観的に把握することにあります。

皮下点滴内容の調整

最初は皮下点滴を獣医師が対応していましたが、ご家族ができるようにトレーニングを行い、在宅での自立したケアが可能になるよう指導しました。

  • 利便性を考えた1回あたりの点滴量の調整(例:30〜40ml/kg)
  • 薬剤構成(鎮痛薬・抗炎症薬・制吐薬など)を状態に応じて変更
  • ご家族が管理しやすいよう、薬剤の希釈方法や保存方法の共有
症状に応じた細やかな対応

在宅緩和ケアでは、痛みの兆候、呼吸の変化、排泄状態など、細かな体調変化を敏感にキャッチし、対応策を即座に講じることが求められます。往診時だけでなく、LINEなどを用いた連絡体制で、必要に応じて助言や訪問を行いました。

次は、状態が大きく変化した際の対応と、ご家族へのサポート体制についてご紹介します。

 

 

お別れが近づいたときの準備と支え

病状が進行し、タロくんの体力が目に見えて落ちてきた頃、ご家族には「お別れが近いかもしれない」という現実をお伝えする必要がありました。これは決して冷たく突き放すものではなく、“最期まで一緒に過ごすための心と環境の準備”をする大切な時間です。

痙攣発作に備えた準備
  • 腫瘍からの炎症や毒素が神経に影響し、痙攣を引き起こす可能性を説明
  • 発作時の動画や資料を共有し、実際にどう対応するかを事前に練習
  • 発作止めの注射薬を準備し、使用手順をしっかり指導

予期せぬ急変に備えることは、ご家族の混乱を最小限にし、タロくんの苦痛を和らげる大きな支えとなります。

精神的な支えとしてのマインドセット

この時期は、ご家族の心の揺れもとても大きくなります。「これでよかったのか」「もう限界かもしれない」という葛藤が渦巻く中、私たちは“事実と感情を切り分ける”ことを意識的にお伝えします。

  • 「苦しいのは誰か」を常に考える
  • 客観的な指標(呼吸数、食欲、体温など)で状況を判断する
  • 冷静な判断が“穏やかだった”という記憶につながる
家族で過ごす最後の時間の整え方

最期の時間を家族でどう過ごすか。その準備を一緒に進めていきました。

  • リビングのソファーの下に寝床を設置し、家族全員の目が届く場所に
  • タロくんの大好きだったおもちゃや毛布をそばに置く
  • できるだけ一緒の時間を増やすために、仕事のスケジュールを調整

そして2025年3月18日、タロくんは玄関先から見える桜の木に花が咲き始めた頃、家族に見守られながら、自宅で穏やかに旅立ちました。

 

 

在宅緩和ケアがもたらした意義と学び

大型犬であるタロくんが腹腔内腫瘍を抱えながらも、自宅で穏やかに過ごし、家族に見守られて旅立つことができた背景には、在宅緩和ケアという選択の中で、日を追うごとに強まったご家族の覚悟があったからだと思っています。別れを受け入れることは決して単純なことでなければ簡単なことでもないです。

大型犬特有の在宅管理の難しさと工夫

  • 移動が困難なため、通院による負担が非常に大きい
  • 身体が大きいため、寝床の調整や介助が必要になる
  • 酸素管理や点滴量の設定も、小型犬・猫とは違う基準が求められる

これらの課題に対し、私たちは個別にプランを設計し、無理のない範囲での皮下点滴、酸素環境の構築、家族全員が協力できる診療体制を整えました。

ご家族の心の成長と準備の重要性

診断直後は混乱していたご家族も、診療を重ねていくうちに表情が変わっていきました。必要な情報を伝え、段階的に心構えをしていくことで、タロくんの最期に「やれることはやれた」と感じられたそうです。

  • 急変時に慌てないよう、シミュレーションを行った
  • 苦しみを和らげる投薬のタイミングを練習
  • お別れの時間を意識的に作るように指導
在宅緩和ケアは「医療」だけではない

点滴や投薬といった医療行為だけでなく、「最期をどこで迎えたいか」「誰と過ごしたいか」といった“生き方”に寄り添うケアこそが在宅緩和ケアの本質です。

タロくんが見せてくれた穏やかな最期と、ご家族が示してくれた愛情と覚悟は、これから同じような病と向き合う子たちへの大きなヒントになると確信しています。

 

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犬の腎臓腫瘍の在宅緩和ケア(2025年3月)

犬の腎臓腫瘍は、比較的まれではありますが進行が早く、発見時にはすでに他の臓器へ転移していることも多い疾患です。外科的な摘出や抗がん剤治療といった選択肢がある一方で、高齢や他の持病、性格的な問題、通院によるストレスを理由に、在宅での緩和ケアを選ばれるご家族も増えてきました。

このブログでは、犬の腎臓腫瘍において在宅医療という選択がどういったものか、どのようなケアが可能なのかをご紹介していきます。在宅でもしっかりとしたサポートが可能であることを、少しでも多くのご家族に知っていただけたら嬉しいです。

目次

 

犬の腎臓腫瘍とは?〜発見されにくい沈黙の病〜

犬の腎臓腫瘍は発生頻度としては決して高くはありませんが、発見が遅れることが多く、発見されたときにはすでに進行しているケースも少なくありません。腎臓は沈黙の臓器とも言われ、腫瘍がかなり大きくなるまで明確な症状が出にくいのが特徴です。

腎臓に発生する腫瘍の種類

- 腎細胞癌:最も代表的な原発性腎腫瘍

- 腎リンパ腫:リンパ腫が腎臓に転移または原発する形

- 移行上皮癌:腎盂や尿管に関係する腫瘍

特に腎細胞癌は片側の腎臓に発生することが多く、外科手術によって摘出可能であることもありますが、発見されたときには肺や肝臓などへの転移が確認されていることもあります。

進行しても症状が出にくい理由

腎臓は二つある臓器であり、一方が障害されてももう一方が機能を補うことで、体の代謝が維持される場合が多いため、片側の腫瘍だけでは目立った症状が出ないまま進行してしまうことがあります。

在宅ケアを検討するケースとは

- 高齢で全身麻酔のリスクが高い

- すでに転移が認められており、根治が望めない

- 性格的に通院や入院が著しいストレスになる

こうした理由から、腎臓腫瘍の犬においては、在宅でできるだけ穏やかに過ごさせてあげたいと考え、緩和ケアを選択されるご家族も増えてきています。

 

診断のきっかけと代表的な症状

犬の腎臓腫瘍は進行するまで明確な症状が出ないことも多いですが、ある程度腫瘍が拡大したり、腎機能が落ちたり、または他の臓器に転移したことによる症状から発見されることがあります。

腎臓腫瘍でよく見られる症状

- 食欲不振や体重減少

- 元気の低下や動きの鈍さ

- 持続的な嘔吐

- 血尿や頻尿などの泌尿器症状

- 腹部の膨満感やしこりを触れる

検査で発見されるケースも

症状があまり出ていない場合でも、定期的な健康診断での血液検査や腹部超音波検査で偶発的に腫瘍が見つかることもあります。特に高齢犬では、腎機能マーカー(BUN、クレアチニンなど)の上昇が見られた際に画像検査を併用することで、腫瘍性病変が判明する場合もあります。

当院の往診(在宅緩和ケア)では、検査の時に検査項目を絞らずに決まった項目は必ず検査することをスクリーニング検査として実施しています。費用面では項目を絞った方がいいとされる考え方もありますが、結果として見落としがあった場合に、あの時検査していればと後悔しないためです。追加検査で再度採血などのストレスをかけるくらいであれば、1度の検査で、かつストレスが限定されている範囲で、得られる所見は集めることを推奨しています。

診断後の選択肢

- 外科手術による腎摘出(片側のみの場合)

- 抗がん剤治療(腫瘍の種類によっては適応あり)

- 積極的治療が難しい場合は在宅での緩和ケアの選択

ご家族の意向や年齢、性格、基礎疾患の有無を踏まえたうえで、治療方針を決めていく必要があります。

 

在宅ケアで注意したいこと

犬の腎臓腫瘍に対する在宅緩和ケアを行う際には、いくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。これらを適切に管理することで、愛犬が少しでも快適に過ごせるようサポートできます。

定期的な健康状態のモニタリング

- 毎日の食欲、飲水量、排尿・排便の状態を観察し、変化があれば記録する。

- 体重測定を定期的に行い、体重減少がないか確認する。

- 呼吸状態や粘膜の色(歯茎など)をチェックし、異常がないか観察する。

異常時の対応策の準備

- 急な体調不良や症状の悪化に備え、かかりつけの獣医師と連絡を取れる体制を整える。

- 緊急時に使用できる薬剤や処置方法について、事前に指導を受けておく。

- 夜間や休日でも対応可能な動物病院の連絡先を把握しておく。

犬猫も人と同じく、終末期に向かって歩んでいく道のりは、決して平坦ではないです。そのため、急変はつきものであり、その時にどうするのかという具体的なアクションプランを、ご家族で決めておきましょう。

ご家族の精神的・身体的負担の軽減

- 在宅ケアは決して楽ではなく、ご家族にも負担が大きいため、無理のない範囲で行うことが重要。

- 必要に応じて、訪問看護サービスやペットシッターなどの外部サポートを検討する。

- ご家族自身の休息やリフレッシュの時間を確保し、心身の健康を維持する。

在宅緩和ケアを行う際には、これらのポイントを踏まえ、愛犬とご家族双方のQOLを維持することが大切です。

 

在宅緩和ケアを選択するタイミング

腎臓腫瘍の犬において、在宅での緩和ケアを選ぶべきタイミングにはいくつかの目安があります。体調の変化や治療の限界を迎えたとき、ご家族と愛犬が一緒にいられる時間を大切にするための選択肢となります。

治療の限界が見えたとき

- 外科手術や化学療法などの根治治療が難しいと判断されたとき。

- 腫瘍の進行により、症状が再発・悪化し続けているとき。

- これ以上の積極的治療が犬にとって苦痛を伴うと判断されたとき。

通院や入院が犬にとって大きな負担になるとき

- 移動に伴うストレスや興奮で体調が悪化するリスクがある場合。

- 入院が長期化し、愛犬が精神的に不安定になっているとき。

- 通院後にぐったりする、食欲が落ちるなどの反応が見られる場合。

ご家族が「自宅で過ごさせたい」と感じたとき

- 最期は病院よりも住み慣れた自宅で迎えさせてあげたいと考えたとき。

- ご家族が在宅でのケアを希望し、覚悟を持って支えていく意志を持ったとき。

- 愛犬が家族のそばで安心して過ごす姿が望ましいと感じたとき。

在宅緩和ケアへの切り替えは、診断名や病期だけで判断するものではありません。犬の状態、ご家族の想いと覚悟、生活スタイルなど、すべてを総合的に考慮した上で決定することが大切です。

ここまでで、愛犬が腎臓腫瘍を抱えたことを知った後のことを書かせていただきました。

最後に、わんにゃん保健室が提供する在宅ケアのサポート体制についてご紹介します。

 

わんにゃん保健室の在宅ケアサポート体制

わんにゃん保健室では、腎臓腫瘍を含む終末期の疾患に対して、ご家族とペットが安心して在宅で過ごせるよう、きめ細やかなサポート体制を整えています。

初診時の丁寧なカウンセリング

- 初診では獣医師が訪問し、最大2時間かけて病歴やご家族の希望を丁寧にヒアリング。

- 動物看護師の同行は、必要に応じて検査や処置の際に対応。

- 在宅で可能な処置の範囲や、今後の経過予測についても具体的に説明。

緩和ケアプランの個別設計

- 診察や検査結果に基づき、症状のコントロールを目的とした投薬プランを作成。

- 皮下点滴や注射薬など、ご家族でも管理可能な方法をご提案。

- 酸素環境の構築や床の工夫など、生活環境の最適化も併せてアドバイス。

ご家族への細やかなフォローアップ

- 緊急時に備えた対応や頓服薬を準備。

- 状態が変化しやすい子には、必要に応じて週1回以上の定期訪問。

在宅ケアにおいて、最も大切なのは「この子の最期は、どこでどんな風に過ごさせてあげたいのか」という視点です。

病気と闘うのではなく、病気を受け入れ、共に穏やかな時間を生きていく。

わんにゃん保健室は、ご家族と愛犬、愛猫の最後の時間に寄り添った在宅緩和ケアを最後まで提供します。

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わんにゃん保健室での一日の診療の流れ

東京台東区を中心に、往診専門で犬・猫の診療/緩和ケアを行っておりますわんにゃん保健室です。
当ブログでは、当院が提供する獣医療について、より詳しくご紹介してまいります。

本日は、当院での業務の一日の流れについてご紹介します。
普段往診で診察を受けている方は、どういった流れでわんにゃん保健室が訪問するのかを参考にしてみてください。

わんにゃん保健室が行っている業務について

獣医師の主な業務は、

  • 往診での診察:実際にご自宅にお伺いし、診察いたします
  • 症例の報告:受け持った症例をチームに共有します
  • 電話対応:飼い主様からの相談にお電話で対応

となります。

獣医師は「診療」のみを行っていると思われがちですが、

わんにゃん保健室では「獣医師」と「愛玩動物看護師」がチームとなり
飼い主様、ペットをサポートします。

そのため、どういった病状なのか? どういった症例なのか?
といった内容を、院内で共有、チームがより適切な対応をできるよう努めております。

また、一度診察した飼い主様から入電があることも。
急遽病状が変化したり、困ったことがあった際などにお電話をいただくことがあります。

ペットの往診で出ている時間帯や、別のペットの診療中は通話に出ることが難しいこともあります。
そのため、時間を作って折り返しのお電話となることも。
留守電にメッセージを残していただけると、折り返しの際もスムーズに対応できますので、ご協力をお願いいたします。

わんにゃん保健室の一日の様子

1、往診の予約が入ったら、まずはカルテのチェックを行います。

同時にメール等のチェックも行い、飼い主様からの連絡がないかを確認します。

2、お客様のご自宅にお伺いし、診察します。

診察に必要な器具はわんにゃん保健室から持参します。
往診は車での移動がほとんどのため、車の中に必要な機器を揃えたら、そのまま飼い主様のご自宅に運び込みます。

3、カルテの内容や、飼い主様へのヒヤリングをもとに、診察を進めていきます。
4、予約がなければ待機・もしくは事務所へ戻り、次の予約が入っていれば直行します。

次の予約までの時間が長くある場合は、ここで休憩をとります。

5、全ての往診が完了しましたら事務所へ戻り、検査や翌日の往診の準備を行います。

往診は事前準備が肝となります。
必要な器具を揃える・どういった診察が予想されるかを考える、といった面でも飼い主様、
ペットが安心して受けられる獣医療を提供したいと考えています。

お問い合わせを頂く際も、なるべく詳細にご要望や現状の記載をいただきますと、
ご予約についてもスムーズにご案内が可能です。
病状やご状況によって必要な診療時間が異なります。
お問い合わせ時にその状況が確認できますと、より確実な予約枠の確保が可能です。

安心して診察を受けていただくために

わんにゃん保健室では様々な状況に対応できるよう、診療器具を揃えています。 ご予約優先とはなりますが、急ぎでの対応も可能な場合がありますので、 ペットの様子がおかしい・普段と違う・病状が急に悪化した等の場合は 迷わずお電話でお問い合わせください。

普段は動物病院に通っている子も、休診日等で診療が受けられないなどの理由で往診を利用する場合もあります。
わんにゃん保健室はいつでも皆様に寄り添う動物病院として、これからも心を込めた診察を心がけてまいります。

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猫の腎不全、皮下点滴はいつまで続けるの?

導入

猫の慢性腎不全(CKD)は高齢猫に多く見られる病気であり、進行性の疾患です。そのため、病状の管理には皮下点滴(皮下補液)が重要な役割を果たします。

腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物を排出する力が衰え、水分のバランスが崩れて脱水状態になりやすくなります。これを補うために、腎不全の猫には皮下点滴を行い、必要な水分や薬剤を補給していきます。

しかし、皮下点滴はずっと続けるべきなのでしょうか?また、どのタイミングでやめるべきなのでしょうか?

この記事では、猫の腎不全における皮下点滴の役割、適切な使用方法、やめるタイミング、注意すべきポイントについて詳しく解説します。

 

目次

次は、猫の腎不全と皮下点滴の基本について詳しく解説していきます。

 

猫の腎不全と皮下点滴の基本

猫の慢性腎不全(CKD)は進行性の病気であり、症状の管理が重要です。特に、脱水の予防や体内の老廃物の排出を助けるために、皮下点滴(皮下補液)が広く用いられています。

 

皮下点滴の目的
  • 体内の水分バランスを維持し、脱水を防ぐ
  • 腎臓の負担を軽減し、老廃物の排出を促進
  • 電解質のバランスを整え、全身状態の改善を目指す
  • 必要な薬剤を混ぜ、腎不全の進行を抑える
皮下点滴の一般的な投与量と頻度
  • 通常の目安は30ml/kg(例:4kgの猫なら120ml)
  • 腎不全の進行度に応じて、10〜20ml/kgに減量することも
  • 最初は週3回程度、進行に応じて1日おき、毎日へと増加

皮下点滴は、初期段階では脱水を防ぐために実施されますが、進行に伴い薬剤投与の手段としても重要になっていきます。次は、腎不全の進行と皮下点滴の変化について詳しく解説します。

 

 

腎不全の進行と皮下点滴の変化

腎不全の進行に伴い、皮下点滴の目的や投与量、頻度が変わります。適切なタイミングで調整することが、猫の快適な生活につながります。

 

慢性腎臓病ステージごとの皮下点滴の役割
  • ステージ2〜3:脱水予防が中心。必要に応じて週3〜4回の皮下点滴を実施。
  • ステージ4(末期腎不全):体液管理と投薬のために、1日おきまたは毎日実施。
  • 終末期(ターミナル期):水分補給ではなく、投薬を目的とした皮下点滴に移行。
皮下点滴の調整ポイント
  • 貧血や循環不全がある場合は、輸液量を減らす(10〜20ml/kgに調整)。
  • 浮腫や呼吸状態の悪化が見られた場合、皮下点滴の頻度や1回量をすぐに見直す。
  • 利尿剤や補助療法と併用しながら、全体のバランスを考える。

腎不全の進行に伴い、皮下点滴の役割は変化します。特に終末期では、単なる水分補給ではなく、投薬手段としての役割が主になります。次は、皮下点滴をやめるべきタイミングについて詳しく解説します。

 

 

皮下点滴をやめるべきタイミングとは?

腎不全の猫にとって、皮下点滴は重要な治療の一環ですが、病状が進行すると「いつまで続けるべきか?」という問題に直面します。適切な判断をするためのポイントを見ていきましょう。

 

皮下点滴を中止する判断基準
  • 循環不全が進行し、浮腫や胸水が認められる:体内の水分バランスが崩れ、呼吸困難を引き起こす可能性がある。
  • 尿量が極端に減少腎機能がほぼ停止し、水分の排出が困難になった場合。
  • 全身状態の悪化:活動量の低下、意識レベルの変化が見られ、輸液による改善が見込めなくなった場合。
終末期の皮下点滴の役割
  • 水分補給ではなく投薬手段として継続鎮痛薬や抗吐剤などを注射薬として投与することを目的とする。
  • ご家族の負担を考慮:皮下点滴が猫にとって大きなストレスとなる場合は無理に続けない。
  • 最期の時間を穏やかに過ごせるかを優先:皮下点滴の継続が苦痛になっていないかを見極める。

皮下点滴の中止を判断する際は、猫の状態を観察しながら、ご家族と獣医師が相談して決定することが大切です。

次は、皮下点滴をやめる際の注意点について詳しく解説します。

 

 

皮下点滴をやめる際の注意点

皮下点滴をやめる際には、猫の状態や症状を慎重に評価しながら判断することが重要です。以下のポイントに注意しながら、適切な対応を考えていきましょう。

 

急に中止せず、徐々に調整する
  • 輸液量を徐々に減らす:いきなりゼロにするのではなく、体調を見ながら1回量や頻度を減らしていく。
  • 尿量や水分摂取量の変化を確認:皮下点滴を減らすことで脱水や尿量の変化がないか注意深く観察する。
  • 呼吸状態や浮腫の有無をチェック:輸液量が多かった場合は、むしろ呼吸の改善が見られることもある。
猫のストレスを最小限に抑える
  • 皮下点滴自体が負担になっていないか:痛みやストレスが強い場合は無理に続けない。
  • ご家族の精神的負担も考慮:皮下点滴をやめることへの罪悪感を感じることが多いが、猫にとって最適な選択を優先する。
  • 獣医師と相談しながら進める:独断でやめるのではなく、適切なタイミングを専門家と話し合う。

皮下点滴を中止するかどうかは、その子の状態に応じた判断が求められます。獣医師と連携しながら、無理のないケアを続けていくことが大切です。次は、皮下点滴をやめた後のケアについて詳しく説明します。

 

皮下点滴をやめた後のケア

皮下点滴をやめた後も、猫の体調管理は引き続き重要です。水分補給の方法や症状の変化に注意しながら、適切なケアを続けていきましょう。

 

水分補給の工夫
  • 飲水量の確認:水を飲む量が減っていないかを毎日チェックする。
  • ウェットフードを活用:ドライフードよりも水分を多く含むため、食事からの水分摂取を増やせる。
  • 給水器の見直し:流れる水を好む猫も多いため、自動給水器を活用すると飲水量が増えることがある。
体調の変化を観察
  • 脱水のサインを見逃さない:皮膚の張りや歯茎の状態をチェックし、脱水の兆候がないか確認する。
  • 食欲の変化:皮下点滴をやめたことで体調が変化し、食欲が落ちていないか確認する。
  • 排尿の頻度と量:尿量が極端に減っていないかを注意深く観察する。
獣医師との継続的な連携
  • 定期的な診察を受ける:皮下点滴をやめた後も、血液検査や健康チェックを継続する。
  • 異変があればすぐに相談:呼吸が荒い、ぐったりしている、食べられないなどの変化があれば早めに獣医師に相談する。
  • ケアプランの見直し:猫の状態に合わせて、最適なサポート方法を随時調整する。

皮下点滴をやめた後も、日々の変化を観察しながら、猫が快適に過ごせるようにサポートしていきましょう。

 

 

まとめ:猫の皮下点滴をやめるタイミングと適切な判断

猫の慢性腎臓病において、皮下点滴は重要な治療の一環ですが、最終的にいつやめるかの判断は非常に繊細です。これまで述べてきたポイントを整理し、適切な判断基準についてまとめます。

 

皮下点滴をやめるべきか判断するポイント
  • 猫の体調の変化:体重減少、食欲低下、動きの鈍化が進んでいないか。
  • 水分補給の必要性:自力で十分に水分を摂取できるかどうか。
  • 腎臓の状態:血液検査の結果や尿量の変化を考慮する。
  • 合併症の有無:浮腫、胸水、肺水腫などの症状が出ていないか。
  • 猫のQOL(生活の質):皮下点滴が猫にとって強いストレスになっていないか。
最期までのサポートと在宅緩和ケアの重要性
  • 皮下点滴の代替ケア:投薬や食事管理、環境調整で猫の負担を軽減。
  • ご家族の判断を尊重:獣医師と相談しながら、猫にとって最適な選択を考える。
  • ターミナルケアの準備:最期の時間を穏やかに過ごせるよう、環境を整える。

皮下点滴の中止は、単に「やめる」ことではなく、猫のQOLを最優先に考えた上での選択です。症状の変化をよく観察しながら、適切なタイミングを見極め、ご家族と獣医師が協力して最善のケアを提供していくことが大切です。

皮下点滴の適切な判断に不安がある場合は、往診専門の動物病院に相談するのも一つの選択肢です。あなたの大切な猫が、最期まで穏やかに過ごせるように、慎重にケアの方針を決めていきましょう。

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電話番号:03-4500-8701(往診本部直通)
 
 
受付時間:10:00~19:00
休診日:不定休診療カレンダー
 
〒111-0036
東京都台東区松が谷3-12-4 マスヤビル5F
 
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東京都内23区を中心に往診専門の獣医療を提供しております、わんにゃん保健室です。
当院はペットとご家族様が過ごす最後の時間を、
より良いものにするべく最良の往診獣医療を
提供することに注力しています。

本日のブログでは、わんにゃん保健室が大切にしている3つのポイントについてご紹介します。
より良い獣医療を提供するため、様々な点から獣医療の在り方を検討し
飼い主様・ペットのみんながより良く過ごせる環境を作るため、
『動物病院』を運営しています。

わんにゃん保健室が動物病院を運営する理由

わんにゃん保健室が動物病院を運営しているのは、
飼い主様やペットたちがより良く過ごせるよう、環境を整えるお手伝いがしたいからです。

ペットに対する緩和ケアやターミナルケアについて、
より深く、多くの方へ知ってもらいたいと考えています。

「最良の在宅医療を最後まで」というのが、
わんにゃん保健室の考えの一つです。
ペットが年齢を重ねて、以前のように自由に動き回れなくなった時、
痛みや辛さを緩和するための方法を提供したいと考えたからです。

往診が求められている現状

動物病院は多くありますが、そのすべてが往診を行っているわけではありません。ですが、緩和ケアやターミナル期となった子は、
自分で自由に動いたりすることが難しい場合もあります。
また、そもそも病院が嫌いで診察を受けることができないといった
子もいます。

飼い主様も、お仕事や家事でお忙しい中で
ペットに対して十分な時間を捻出できない場合もあるかもしれません。また、交通手段の関係で、動けなくなったペットを動物病院へ診察するのが難しい場合も。

上記のような場合でも、動物病院が往診を行っていれば、
そういった子たちにも獣医療を届けられるのです。

わんにゃん保健室では、獣医療の形として往診が求められていると考え
往診専門動物病院として運営しています。

適切な診療料金

わんにゃん保健室では、適切な診療料金にて診療を行っております。

往診のため実際にご自宅にお伺いをすることを考慮しますと
通常の動物病院よりも費用がかかる印象となるかもしれませんが、
飼い主様の負担とならないよう、料金を考慮しております。

ペットに対して、費用をかけてしっかりと診療を受けさせたいという方ばかりだと思います。 ですが、実際にはご自身やご家族の生活もあるため、制限なく費用がかけられるわけではないと思います。

そのため、当院では負担とならないよう適宜料金改定などを行い、
なるべく皆様の診療費の負担を減らしたいと考えています。
費用が理由で診療を諦めてしまう子を少しでも減らしたいという思いからです。

 

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犬猫の往診専門動物病院
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猫の腎臓病の在宅緩和ケア(2025年3月)

猫の腎臓病は高齢猫に非常に多い疾患であり、慢性腎臓病(CKD)として徐々に進行していきます。特にステージが進行すると、通院の頻度が増え、猫にとって大きなストレスとなることがあります。そこで、在宅での緩和ケアを取り入れることで、猫の負担を軽減しながら適切な治療を続けることが可能になります。

本記事では、猫の腎臓病の基本情報から、動物病院での検査や治療の流れ、通院の負担、そして在宅緩和ケアの導入について詳しく解説します。猫にとって最適なケアを考え、ご家族が無理なく続けられる治療方法を一緒に探っていきましょう。

 

【 目次 】

 

 

猫の腎臓病とは?

猫の腎臓病(慢性腎臓病:CKD)は、高齢の猫に非常に多く見られる疾患です。特に10歳以上の猫では、腎機能の低下が進行しやすく、病気が発見されたときにはすでに慢性腎不全の状態になっていることも少なくありません。

腎臓は、体内の老廃物を排出し、水分やミネラルのバランスを調整する重要な役割を持っています。しかし、慢性腎臓病では腎機能が徐々に低下し、以下のような症状が現れます。

 

猫の腎臓病の主な症状

- 水をたくさん飲むようになる(多飲)

- おしっこの量が増える(多尿)

- 食欲が落ちる、痩せてくる(削痩)

- 嘔吐や下痢を繰り返す

- 後ろ足がふらつく(筋力低下)

- 口臭が強くなる(尿毒症の影響)

これらの症状は、腎臓の機能が低下することで体内の老廃物を適切に排出できなくなったり、水分バランスが崩れたりすることで引き起こされます。特に、慢性腎臓病は初期段階では症状がほとんど見られないことが多く、定期的な健康診断で早期発見することが重要です。

 

腎臓病の進行と生活の変化

腎臓病の進行に伴い、食欲の低下や脱水症状が顕著になり、生活の質(QOL)が低下していきます。特に、ステージが進むにつれて通院や点滴治療の頻度が増え、猫にとっての負担が大きくなるため、在宅でのケアの必要性が高まります。

次は、動物病院での検査頻度とその意義について詳しく解説していきます。

 

 

動物病院での検査頻度とその意義

猫の腎臓病は進行性の疾患であり、定期的な検査を行うことで病気の進行度を把握し、適切な治療を実施することが重要です。特に慢性腎臓病(CKD)は、症状が徐々に現れるため、早期発見と継続的なモニタリングが欠かせません。

 

腎臓病の進行度を把握するための検査

- 血液検査(BUN、クレアチニン、SDMA、リン、電解質)

- 尿検査(尿比重、尿蛋白、UPC比)

- 超音波検査(腎臓の形状、血流の評価)

- 血圧測定(高血圧の有無を確認)

これらの検査を組み合わせることで、腎臓の機能低下の進行度を把握し、治療方針を決定します。特に、慢性腎臓病では腎機能がある程度失われてから症状が現れるため、早期に異常を発見できるSDMA(対称性ジメチルアルギニン)検査が有効とされています。

 

検査頻度の目安

- 健康な猫:年に1回の健康診断

- 慢性腎臓病(初期):3〜6ヶ月ごと

- 慢性腎臓病(進行中):1〜2ヶ月ごと

- 末期腎不全:1〜2週間ごと

腎臓病の進行度に応じて検査頻度を調整し、病状の変化に迅速に対応することが大切です。

 

検査結果に基づく治療方針の決定

検査結果をもとに、適切な治療を行います。

- 早期腎臓病:食事療法やサプリメントで管理

- 進行期:利尿薬、リン吸着剤、ACE阻害薬などの投薬

- 末期腎不全:皮下点滴や給餌補助などのサポート

特に腎臓病が進行すると、皮下点滴や強制給餌が必要になることが多く、ご家族の負担も増えるため、在宅でのケアを検討することが重要になります。

次は、腎臓病の進行に伴う処方の変化について詳しく解説していきます。

 

 

経過における処方の変化

猫の腎臓病は進行性の疾患であり、病状の変化に応じて処方内容を適切に調整する必要があります。初期段階では食事療法やサプリメントを中心とした管理が可能ですが、進行するにつれて、投薬や補助療法の必要性が高まります。

 

腎臓病の進行と処方の変化
初期(ステージ1〜2)

- 腎臓療法食(低リン・高品質タンパクの食事)

- リン吸着剤の導入(リン値が高い場合)

- 血管拡張薬などの使用

初期段階では、食事管理が最も重要となります。特にリンを制限することで、腎機能の低下を遅らせることが期待できます。

 

進行期(ステージ3)

上記の治療に加えて、以下の処方を追加

- 腎性貧血に対する造血ホルモン製剤(エリスロポエチンなど)

- 胃腸障害の管理(制酸剤、吐き気止め)

- 脱水予防のための皮下点滴の開始(週1〜2回)

腎機能の低下が進むと、貧血や食欲低下が目立つようになります。この時期から皮下点滴を導入し、脱水を防ぐことが重要です。

 

末期(ステージ4)

- 皮下点滴の頻度を増やし(1日おき、または毎日)

- 強制給餌の検討(食欲が大幅に低下した場合)

- 尿毒症に対する事前対策

末期腎不全の段階では、猫の生活の質(QOL)を重視したケアが求められます。この頃になると、通院の負担が大きくなるため、在宅緩和ケアへ切り替えるタイミングを検討することが重要です。

次は、通院が猫にとってどれほど負担になるのか、そしてその影響について解説していきます。

 

 

通院は猫にとって負担

猫は環境の変化に敏感な動物であり、動物病院への通院は大きなストレスとなります。特に腎臓病を抱えた高齢猫にとって、頻繁な通院は負担が増し、病状の悪化を招く可能性があります。

 

猫はそもそも通院が苦手
キャリーに入れること自体がストレス

- キャリーを見ただけで逃げる猫も多い

- 無理に入れようとすると興奮し、呼吸が荒くなる

- 強いストレスがかかると、脱糞や嘔吐をすることもある

 

移動中の環境変化が大きな負担

- 車や電車などの移動音や振動に驚く

- 外の匂いや他の動物の気配に警戒する

- 通院後、帰宅しても落ち着かないことがある

これらの理由から、通院自体が猫のストレスとなり、病状を悪化させる可能性があるのです。

 

通院できる猫でも頻度が重要
週1回程度の通院なら耐えられることが多い

- 腎臓病の管理のため、定期的な検査や処方調整が必要

- 週1回程度の通院であれば、猫のストレスも最小限に抑えられる

- しかし、体調が悪化すると移動自体が難しくなる

 

皮下点滴が始まると通院頻度が増える

- 皮下点滴の頻度は、病状によって1日おきや毎日になる

- 頻繁な通院は、猫にとって大きな負担となる

- 通院のたびにキャリーに入れるストレスが加わる

腎臓病の進行に伴い、皮下点滴の頻度が増えると、通院の負担がさらに大きくなります。そこで、在宅緩和ケアの導入を検討することが推奨されます。

次は、猫の腎臓病における在宅緩和ケアの具体的な方法について説明します。

 

 

猫の腎臓病の在宅緩和ケア切替

猫の腎臓病が進行し、通院が負担になってきた場合、在宅緩和ケアへの切り替えを検討することが重要です。在宅緩和ケアでは、動物病院での治療と同様に、適切な管理が可能です。

 

通常の定期検査は在宅で対応可能
血液検査や尿検査を自宅で実施

- 往診での血液検査や尿検査により、腎臓の状態を把握

- ストレスの少ない環境で、猫の負担を軽減

- 定期的な検査により、病状の変化を早期に察知

 

超音波検査も在宅で可能

- 腎臓の大きさや血流を確認し、進行度を評価

- 往診により、自宅で落ち着いた状態で検査を実施

- 動物病院と同様の精度で検査が可能

在宅でも定期的な検査が可能なため、動物病院へ通院するのと同様に病状を管理することができます。

 

結果に応じて処方を変化させることも可能
血液検査の結果をもとに処方調整

- 腎臓の状態に合わせて内服薬の種類や量を変更

- 必要に応じて、皮下点滴の頻度や成分を調整

- 生活環境や食事内容も併せて最適化

 

猫の状態に合わせた柔軟なケア

- 内服薬が飲めない場合は、皮下点滴での薬剤投与を検討

- 食欲低下時には、嗜好性の高い療法食やサプリメントを提案

- 生活の質(QOL)を重視し、苦痛を最小限に抑える

 

在宅緩和ケアでは、猫の状態に合わせて治療を柔軟に調整できるため、負担を抑えながら適切なケアを継続できます。

 

ご家族による在宅皮下点滴でストレス軽減
ご家族が皮下点滴を実施するメリット

- 通院の必要がなくなり、猫のストレスを軽減

- ご家族が猫の状態を観察しながら対応できる

- 継続的なケアが可能になり、病状の安定化につながる

 

皮下点滴のトレーニングとサポート

- 獣医師が往診時に皮下点滴の方法を指導

- 針の刺し方や適切な量の確認を丁寧にサポート

- 初めてのご家族でも安心して実施できるようフォローアップ

 

皮下点滴を在宅で実施することで、動物病院へ行くストレスを減らしながら、適切なケアを継続することができます。

次は、在宅緩和ケアへ切り替える適切なタイミングについてお話しします。

 

 

切り替えはいつから?

在宅緩和ケアへの切り替えは、猫の病状や生活環境に応じて検討することが重要です。適切なタイミングを見極めることで、猫の負担を最小限に抑えながら、適切なケアを続けることができます。

 

慢性腎臓病かもしれないと言われた時から変更を検討
初期段階での選択肢としての在宅緩和ケア

- 腎臓病の診断を受けた段階で、在宅ケアの選択肢を考える

- 通院ストレスが大きい猫の場合、早めの在宅切り替えが有効

- ご家族が猫の病気に対する理解を深め、準備を進める

 

定期検査の頻度が増えたタイミング

- 月1回の検査から、2週間に1回、週1回と頻度が増えてきた

- 皮下点滴の必要性が出てきた段階で在宅ケアを検討

- 通院後の疲労やストレスが顕著になったと感じたら切り替えのサイン

 

通院が難しくなった時

- キャリーに入れるだけで強い拒否反応を示すようになった

- 通院後にぐったりしてしまい、回復に時間がかかる

- ご家族が通院の負担を感じ、在宅ケアを希望するようになった

 

在宅緩和ケアへの切り替えは、猫の状態だけでなく、ご家族の生活環境や希望も考慮しながら進めることが大切です。

次は、猫の腎臓病の在宅緩和ケアの具体的な方法について詳しくご紹介します。

 

 

猫の腎臓病と在宅緩和ケアの重要性

猫の腎臓病は高齢の猫に多く見られ、進行すると日常生活にさまざまな影響を与えます。早期発見と適切な管理が重要ですが、通院が負担になるケースも少なくありません。在宅緩和ケアを適切に導入することで、猫の生活の質を維持しながら、ご家族の負担も軽減できます。

 

在宅緩和ケアを検討すべきタイミング

- 猫が通院を極端に嫌がる場合

- 定期検査の頻度が増え、通院が負担になってきた時

- 皮下点滴や継続的な投薬が必要になったタイミング

 

在宅緩和ケアのメリット

- 自宅で安心した環境の中で治療を受けられる

- ストレスを最小限に抑えながら適切なケアが可能

- ご家族が猫の状態をより深く理解し、適切な対応ができる

 

最後に

猫の腎臓病は長期的な管理が必要な病気ですが、在宅での適切なケアによって、穏やかに過ごせる時間を延ばすことができます。猫の性格やご家族の生活スタイルに合わせた最適な方法を選び、できる限り快適な環境を整えてあげましょう。

当院では、在宅緩和ケアを通じて、猫とご家族が穏やかに過ごせる時間をサポートしています。通院が難しくなった、在宅ケアを考えたいという方は、お気軽にご相談ください。

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東京都内近郊、関東エリアにて往診による獣医療を提供しています「わんにゃん保健室」です。
飼い主様とペットのための安心の治療をお届けします。

「わんにゃん保健室」では、飼い主様とペットのもとにお伺いして診療を行う、往診専門のサービスを提供しています。
私たちの医療の特徴は、通常の動物病院とは一線を画し、ご自宅という安心できる環境で診療が行われることにあります。
この環境により、飼い主様は待ち時間なく、ペットは見慣れた場所でリラックスした状態で治療を受けることができるため、非常に高い安心感を得ることができます。

ペットにとってのストレスの重要性

ペットは、病院のような異なる環境に強いストレスを感じることがあります。
このストレスが原因で、普段とは異なる行動を示すことがあり、思わぬトラブルや問題を引き起こすこともあります。
さらに、病院へ通院すること自体がペットにとって大きな負担となり、暴れてしまうことで治療が困難になるケースもあります。もし通院ができない状況になった場合、治療の継続が難しくなり、治るべき病気が治らず治療が遅れてしまう恐れもあります。このような問題を解決するために、「わんにゃん保健室」では往診医療を提供しています。特に、通院ができず治療を中断せざるを得ないペットにとって、往診は非常に有効な手段となり得ます。

ペットと飼い主様の安心のための診療

病院での診察は、ペットが多く待機していることから、診察がどうしても急ぎ足になりがちです。
その結果、飼い主様への説明が不十分になったり、理解が追いつかないまま診察が終了してしまうことも少なくありません。ペットの治療において、飼い主様の理解は非常に重要です。
その理解がなければ、治療の効果は十分に発揮されません。

「わんにゃん保健室」では、時間をかけてじっくりと診察を行います。
ご自宅にお伺いし、まずは飼い主様のお話をお聞きします。
その上で、ペットの現在の状態を深く理解し、最適な医療方針をご提案します。
もしその方針に疑問があれば、その場で納得できるまでご説明いたします。
私たちは妥協せず、より良い医療を提供することを常に心掛けています。

在宅医療と緩和ケアでの安心

在宅医療や緩和ケアにおいて、飼い主様が特に直面するのは「どうしたら良いのか」という悩みです。
ペットのために何かをしてあげたいと思いながらも、それが本当にペットのためになっているのか、
という不安や疑問を抱えている飼い主様は多いです。
「わんにゃん保健室」では、そのような飼い主様に寄り添い、後悔のない緩和ケアやターミナルケアを提供しています。
ただの医療提供者ではなく、飼い主様とペットの心の支えとして寄り添い、
治療が難しい状況でも、ペットとその家族が最良の結果を迎えられるよう全力でサポートいたします。

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猫の腎臓病と穏やかに過ごすための在宅ケア

腎臓病は高齢の猫ちゃんにとても多い病気のひとつです。10歳を超えると多くの猫ちゃんで腎機能の低下が見られ、徐々に進行していきます。

初期は多飲多尿や食欲低下といった症状が見られる程度ですが、進行すると嘔吐や体重減少、貧血などが現れ、最終的には腎不全へと移行します。腎臓病は完治が難しい病気ですが、適切なケアを行うことで穏やかな時間を長く過ごすことができます。

しかし、猫ちゃんは通院を極端に嫌がることが多く、ストレスによって病状が悪化することもあります。そんな時に選択肢となるのが「在宅ケア」です。往診を利用することで、ご家族の負担を減らしつつ、猫ちゃんにとっても安心できる環境で治療を受けることができます。

この記事では、腎臓病の猫ちゃんに対する在宅ケアの流れや、看取りに向けた準備について詳しく解説します。

 

目次

 

 

猫の腎臓病の初期症状と気づき方

腎臓病は静かに進行する病気

猫の腎臓病は「気づいたときには進行している」ことが多い病気です。初期段階では目立った症状が少なく、ご家族が異変に気づく頃にはすでに腎機能の多くが失われていることも珍しくありません。

特に、高齢の猫ちゃんでは腎臓の機能が徐々に低下していくため、「年のせいかな?」と思われがちです。しかし、腎臓病の早期発見・早期対策が猫ちゃんの余命を大きく左右します。

 

こんな症状が見られたら要注意

以下のような症状が見られたら、腎臓病の可能性を疑いましょう。

- 水をたくさん飲む(多飲)

- トイレの回数が増え、尿の量が多い(多尿)

- 体重が減ってきた(削痩)

- 毛づやが悪くなった

- 後ろ足がふらつく(筋力低下)

- 食欲が落ちてきた

- 嘔吐が増えてきた

 

腎臓病の発見が遅れやすい理由

猫ちゃんは本能的に体調の悪さを隠そうとする動物です。特に腎臓病はゆっくり進行するため、少しずつ変化していく姿を毎日見ているご家族が異変に気づきにくいこともあります。

また、猫ちゃんは環境の変化を嫌うため、「病院に連れて行くこと自体がストレスになるのでは?」と通院をためらうご家族も多いです。

そのため、動物病院での定期検診が難しい猫ちゃんの場合は、日々の様子をしっかり観察し、異変に気づいたらできるだけ早く対応することが大切です。

 

 

猫の腎臓病が進行するとどうなる?

腎臓病の進行とともに現れる症状

腎臓病が進行すると、猫ちゃんの体にはさまざまな変化が現れます。初期症状の段階では気づきにくかった異変も、次第にはっきりと見えてくるようになります。

- 食欲が著しく低下し、好きなものも食べなくなる

- 体重減少が顕著になり、骨ばってくる

- 毛づやがさらに悪くなり、被毛がバサバサする

- 嘔吐が頻繁になり、胃液を吐くことが増える

- 後肢のふらつきが強くなり、歩くのが困難になる

- 貧血が進行し、歯茎や舌の色が薄くなる

- おしっこの色が薄くなり、臭いが弱くなる

 

腎不全の末期に起こる変化

腎臓病がステージ4に進行すると、腎機能のほとんどが失われ、老廃物を排出できなくなります。すると、以下のような症状が現れることがあります。

- まったく食べなくなる

- 水を飲む量も減る

- 寝ている時間が圧倒的に長くなる

- 呼吸が荒くなることがある

- 意識がぼんやりする(尿毒症による影響)

- 強い貧血で動くのが困難になる

- 尿毒症による痙攣発作が起こる

 

猫の腎不全末期での選択肢

この段階になると、腎臓の機能を回復させることはできません。そのため、治療の目的は「腎臓の負担を軽減しながら、少しでも快適に過ごしてもらうこと」にシフトします。

選択肢としては、以下のようなものがあります。

- 皮下点滴で体の水分バランスを維持する

- 貧血対策として造血ホルモン剤を使用する

- 嘔吐や胃腸の不快感を和らげる内服薬を使う

- 食事を無理に与えず、猫ちゃんのペースに合わせる

- 酸素室を準備し、呼吸をサポートする

ご家族ができることは限られていますが、猫ちゃんが少しでも楽に過ごせるように、最適なケアを考えていくことが大切です。

 

 

在宅でできる腎不全のケア

皮下点滴による水分補給

腎不全の猫ちゃんにとって、皮下点滴は重要なケアのひとつです。特に、腎機能が低下すると体内の水分バランスが崩れ、脱水が進行しやすくなります。定期的に皮下点滴を行うことで、次のような効果が期待できます。

- 脱水を防ぎ、腎臓への負担を軽減する

- 老廃物の排出を促し、尿毒症の進行を遅らせる

- 食欲の回復をサポートする

ご家族が自宅で皮下点滴を行う場合、適切な手技と準備が必要です。当院では、ご家族が無理なく実施できるよう、丁寧にトレーニングを行っています。

 

投薬管理:無理なく飲ませる工夫

腎不全の治療では、複数の薬を併用することが一般的ですが、猫ちゃんにとって投薬は大きなストレスになりやすいものです。以下のような方法を取り入れることで、負担を軽減しつつ投薬を続けることができます。

- 錠剤をすりつぶしてウェットフードに混ぜる

- シロップタイプの薬をスポイトで与える

- 投薬用のおやつを活用する

- どうしても飲めない場合は、皮下点滴に切り替える

当院では、猫ちゃんの状態や性格に合わせた投薬方法を提案し、ご家族と一緒に最適な方法を見つけていきます。

 

食欲が落ちたときの対応

腎不全が進行すると、食欲が低下することがよくあります。無理に食べさせようとすると、かえって猫ちゃんにストレスを与えてしまうこともあるため、以下のような工夫をしながら様子を見ていきます。

- 好きなフードや手作り食を試してみる

- 温めて香りを立たせることで食欲を刺激する

- 強制給餌が必要かどうかを慎重に判断する

- 食欲促進剤の使用を検討する

最終的には、食べる・食べないも猫ちゃんの意思のひとつです。無理のない範囲で、ご家族と一緒にサポートしていきます。

 

 

家での生活環境の整え方

トイレ環境の工夫

腎不全の猫ちゃんは多飲多尿になり、トイレの回数が増えることが一般的です。また、体力の低下によりトイレまでの移動が負担になることもあります。以下のような工夫で、快適なトイレ環境を整えましょう。

- トイレの数を増やし、寝床の近くにも設置する

- 段差をなくし、入りやすい形状のトイレを選ぶ

- ペットシーツを活用し、万が一の粗相にも対応できるようにする

特に、高齢の猫ちゃんはトイレの失敗が増えることがあります。叱らずに、できるだけ負担のない環境を整えてあげることが大切です。

 

寝床と移動スペースの調整

腎不全が進行すると、筋力が低下し、ふらつきや転倒のリスクが高まります。安全で快適に過ごせるよう、寝床や移動スペースを見直しましょう。

- 柔らかく暖かいベッドを用意し、快適な睡眠環境を整える

- 滑りにくいマットを敷き、転倒を防ぐ

- キャットタワーの段差を減らし、安全に登れるようにする

寝床の位置を工夫することで、猫ちゃんが安心して休めるようになります。

 

温度管理と快適な空間作り

腎不全の猫ちゃんは体温調節が難しくなることがあります。特に冬場の寒さは体力を奪うため、適切な温度管理が重要です。

- 冬場は湯たんぽやペット用ヒーターで温かく保つ

- 夏場はエアコンや扇風機を使い、適度な涼しさを維持する

- 直射日光を避けつつ、適度に日向ぼっこできる場所を用意する

快適な環境を整えることで、猫ちゃんがリラックスして過ごせるようになります。

 

 

在宅緩和ケアでの投薬と水分補給

投薬の工夫と飲ませ方

腎不全の猫ちゃんにとって、適切な投薬は病状の進行を遅らせるために重要です。しかし、猫ちゃんは投薬を嫌がることが多いため、できるだけ負担の少ない方法を選ぶ必要があります。

- シロップや粉薬を使用し、投薬用のおやつやウェットフードに混ぜる

- カプセルに入れて匂いを抑え、投薬をスムーズにする

- 強制投薬が必要な場合は、事前に獣医師から適切な方法を学ぶ

無理に投薬すると猫ちゃんにストレスがかかるため、なるべく自然に摂取できる方法を探していくことが大切です。

 

水分補給の重要性

腎不全では脱水を防ぐことが非常に重要です。猫ちゃんが自発的に水を飲める環境を整えることで、体調を安定させやすくなります。

- 複数の場所に新鮮な水を用意し、いつでも飲めるようにする

- 流れる水を好む猫ちゃんには、自動給水器を設置する

- ウェットフードや水分を多く含むフードを与え、水分摂取量を増やす

猫ちゃんが水を飲みやすい環境を整えることが、腎臓の負担を軽減するポイントです。

 

皮下点滴の導入と実施方法

腎不全が進行すると、経口摂取だけでは十分な水分補給が難しくなることがあります。そのため、皮下点滴を取り入れることで、脱水を防ぐことができます。

- 獣医師の指導のもと、ご家族が自宅で皮下点滴を行う

- 点滴の頻度や投与量は、猫ちゃんの状態に合わせて調整する

- 点滴を行う際は、猫ちゃんがリラックスできる環境を整える

皮下点滴はご家族の協力が必要ですが、在宅緩和ケアを進める上で非常に有効な手段となります。

 

 

腎不全の猫ちゃんの生活環境の工夫

猫ちゃんが過ごしやすい環境作り

腎不全の猫ちゃんが快適に過ごせるように、生活環境を工夫することが重要です。体力の低下や関節の衰えを考慮し、以下のような調整を行いましょう。

- 移動の負担を減らすために、ベッドやトイレを近くに配置する

- 登り降りの負担を軽減するため、スロープやステップを設置する

- 寒さや暑さに敏感になるため、適温を維持できるように空調を調整する

 

トイレ環境の見直し

腎不全では多尿傾向があるため、トイレ環境の調整が必要です。

- トイレの数を増やし、猫ちゃんがすぐに行けるようにする

- 高さの低いトイレを用意し、足腰への負担を軽減する

- トイレの出入り口に滑り止めマットを敷き、安全に移動できるようにする

 

快適な寝床の準備

腎不全の猫ちゃんは寝ている時間が長くなるため、快適な寝床を用意しましょう。

- 体圧を分散するクッション性の高いベッドを用意する

- 冬場は湯たんぽや電気毛布などで適度に暖かさを確保する

- 静かで落ち着いた場所に寝床を配置し、ストレスを軽減する

生活環境の調整を行うことで、猫ちゃんが安心して過ごせる時間を増やしてあげることができます。

 

 

腎不全の猫ちゃんとの最期の時間

ターミナル期のサイン

腎不全が進行し、ターミナル期に入ると以下のような変化が見られることがあります。

- 食欲が極端に低下し、ほとんど食べられなくなる

- 水を飲む量が減り、脱水が進行する

- 動くことが少なくなり、一日の大半を寝て過ごす

- 呼吸が浅くなり、不規則になる

- 意識がぼんやりし、呼びかけへの反応が鈍くなる

これらの症状が見られた場合、積極的な治療を行うか、できるだけ穏やかに見送るか、ご家族での話し合いが必要です。

 

看取りに向けた準備

最期の時間を穏やかに過ごせるよう、以下の準備をしておきましょう。

- 猫ちゃんが安心できる静かな環境を整える

- 必要に応じて酸素ハウスや保温設備を用意する

- 食事が取れなくなった場合の水分補給方法を考える

- 痛みや苦しみを軽減するための頓服薬を準備する

- 看取りのタイミングについて、獣医師と相談しておく

 

ご家族の心の準備

看取りの時間はご家族にとっても精神的に大きな負担がかかる時期です。以下のポイントを意識して、心の準備を整えましょう。

- 「最期の時間をどう過ごしたいか」を家族で話し合っておく

- 愛猫の状態に合わせて、できることを受け入れる

- 悲しみや不安を抱え込まず、獣医師や周囲のサポートを頼る

- 後悔のないよう、できる限りそばにいてあげる

最期の時間をどう過ごすかは、それぞれのご家族によって異なります。どの選択も間違いではなく、愛猫とご家族にとって最善の方法を見つけることが大切です。

 

 

看取り後の対応とご家族のケア

看取り後の対応

愛猫が旅立った後、まずは静かにお別れの時間をとることが大切です。すぐに何かを決めなくても大丈夫です。以下の手順を参考にしてください。

- 猫ちゃんの体を優しく拭き、落ち着いた場所に寝かせる

- ご家族でお別れの時間をゆっくりととる

- 動物病院やペット葬儀社に連絡し、火葬や埋葬の手続きを確認する

- 信頼できる人に話を聞いてもらい、気持ちを整理する

 

ペット葬儀の選択肢

ペットの葬儀にはいくつかの方法があります。それぞれのご家庭に合った形を選びましょう。

- 個別火葬:自宅でお別れをした後、ペット専門の火葬施設で個別に火葬を行い、遺骨を手元に残す

- 合同火葬:他のペットと一緒に火葬し、遺骨は共同墓地に納める

- 自宅での供養:遺骨を手元に置き、写真や思い出の品とともに供養する

- ペット霊園での埋葬:専門の施設に納骨し、定期的にお参りできる場所を確保する

 

ご家族の心のケア

ペットを失った悲しみ(ペットロス)は、深い喪失感を伴うことがあります。無理に気持ちを切り替えようとせず、自然な形で受け入れることが大切です。

- 悲しい気持ちを抑え込まず、家族や友人と共有する

- 写真や思い出を振り返り、感謝の気持ちを持つ

- 必要であれば、ペットロスカウンセリングを受ける

- 次のステップに進む準備ができたら、新たな家族を迎えることを検討する

愛猫との時間はかけがえのないものであり、思い出はずっと心の中に残り続けます。どのような形であっても、大切な家族として過ごした時間を忘れずに、ゆっくりと前を向いていきましょう。

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犬猫の往診専門動物病院
わんにゃん保健室
 
猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
電話番号:03-4500-8701(往診本部直通)
 
 
受付時間:10:00~19:00
休診日:不定休診療カレンダー
 
〒111-0036
東京都台東区松が谷3-12-4 マスヤビル5F
 
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東京都台東区を中心に、東京23区、そして関東エリアでペットの往診診療を行っているわんにゃん保健室です。 当院では、通院が難しいわんにゃん・ねこちゃんのために、飼い主様のご自宅へお伺いし獣医療を提供しております。

本日のブログでは、当院が何故往診専門の動物病院であるかをご紹介いたします。

ペットへの治療に、往診という選択肢

ペットは人間とは異なり、自分で自分の状況を言葉で説明することはできません。 そのため、飼い主が体調や状況等を判断し、必要であれば動物病院に通院させる必要があります。

ですが、全ての方がペット中心の生活を送れるわけではありません。
ご自身の体調が悪いタイミングや、どうしても家を離れることが難しいご状況があるかもしれません。
あるいは、ペット自体が家から出ることが難しい・病院が嫌いで医者にかかることができない、といった状況もあると思います。

ですが、だからと言って治療を受けずにそのままにするわけにはいきません。
そういったご状況の方たちに、往診という選択肢が必要だと考えました。

当院は建物がある動物病院ではないため、道端で看板を見て来た、という方はいません。
ですが有難いことに、ホームページをご覧になってお問い合わせをいただくことが多くございます。

飼い主様からは
「往診で先生に家に来てもらえるなんて知らなかった」
「通院が嫌いな子なので、とても助かっている」

といったお声をいただきます。

飼い主の皆様の困難を解消する手助けができている事、
そして病院嫌いの犬や猫のために正しい獣医療が提供できていることに、嬉しく思います。

そして同時に、ペットの往診に関する認知度をもっと上げていきたいと考えました。
ご自宅でペットに関するお困り事や、ペットの緩和ケア・ターミナルケアで不安に思うことがあれば、すぐにお問い合わせください。

往診獣医療で大切にしている点

往診は、ペットがリラックスできる家が診察室になるため、 病院での治療よりも安心して治療を受けてくれる確率が高いです。
ですが飼い主様もペットも、治療に対して不安に思うことは多いはずです。
その中で、飼い主様とのコミュニケーションを大切にしています。

勉強し、獣医療に関する知識や能力はいくらでもつけることができます。
ですが、コミュニケーション能力は、自分で取り組んでいこうと思わなければ身に付きません。

コミュニケーションは、「自分が言いたいことを言う」能力ではありません。
飼い主様の立場に立って、心に寄り添う言葉や行動の選択が、コミュニケーションとなります。

どんなに卓越した知識やスキルがあったとしても、人として信用できない人や、
意思疎通が取れない人には自分の大切な家族を預けることはできません。
ですので、わんにゃん保健室では獣医師をはじめすべてのスタッフが、飼い主様に寄り添う姿勢を持っています。

ペットとその家族が安心できる治療を心がけておりますので、
お困りのことがございましたら、是非お気軽にご相談ください。

 

 

 

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犬の膵炎の在宅緩和ケア

犬の膵炎は、突然の嘔吐や激しい腹痛を伴い、場合によっては命に関わる病気です。多くのケースでは入院管理が推奨されますが、中には通院や入院が難しい犬もいます。

入院中のストレスや環境の変化により、状態が悪化してしまう犬も少なくありません。「できることなら自宅で落ち着いて過ごさせてあげたい」と考えるご家族のために、在宅緩和ケアの選択肢を詳しく解説します。
本記事では、膵炎の基本的な治療法に加え、在宅でできるケアの方法、症状の管理ポイントについてご紹介します。

 

目次

はじめに:膵炎とその治療の選択肢
膵炎の標準治療:通院・入院が可能な場合
在宅緩和ケアが必要なケースとは?
在宅での疼痛管理と症状緩和
在宅での経過観察と注意点
最期をどう迎えるか:ご家族の選択
まとめ:犬の膵炎と在宅緩和ケアの選択

 

 

はじめに:膵炎とその治療の選択肢

膵炎とは?犬の膵炎の基本

犬の膵炎は、膵臓が強い炎症を起こし、消化酵素が異常に分泌されることで膵臓自身を傷つけてしまう病気です。急性膵炎は特に症状が激しく、命に関わることもあります。
膵炎の発症には、脂肪分の多い食事や肥満、基礎疾患(クッシング症候群や糖尿病など)などが関係しているとされていますが、明確な原因が特定できないこともあります。

膵炎の症状と診断方法

膵炎の主な症状には以下のようなものがあります。

- 繰り返す嘔吐や下痢

- 食欲不振(全く食べなくなることも)

- お腹を触ると痛がる(腹部の違和感)

- 元気消失、ぐったりする

- 発熱や脱水

診断には、血液検査で膵炎のマーカー(Spec cPLIなど)を測定し、超音波検査で膵臓の腫れや異常を確認することが一般的です。

膵炎の治療方針と選択肢

膵炎の治療では、基本的に入院管理が推奨されます。その理由は、嘔吐や食欲不振が強いため、内服薬を使った治療が難しくなるためです。主な治療のポイントは以下の通りです。

- 点滴による水分・電解質補正

- 吐き気止めの投与

- 鎮痛剤による疼痛管理

- 必要に応じた抗生剤の使用

軽度の膵炎であれば、通院での治療も可能ですが、重度の場合には集中管理が必要になります。では、入院ができない場合、在宅でのケアはどこまで可能なのでしょうか?

 

 

膵炎の標準治療:通院・入院が可能な場合

入院管理のメリット

膵炎の標準治療は、基本的に入院での集中管理です。入院することで、以下のような治療が可能になります。

- 持続的な点滴で脱水や電解質バランスを整える

- 嘔吐がひどい場合でも、注射や点滴で薬を投与できる

- 痛みが強い場合に、持続的な鎮痛剤の投与が可能

- 必要に応じて酸素管理や血糖コントロールも実施できる

このように、入院管理は膵炎の治療において最も安定した環境を提供できます。

 

通院での治療が可能なケース

膵炎の症状が軽度で、嘔吐がそこまでひどくなく、食欲がわずかに残っている場合は、通院治療が可能です。通院治療では以下のような対応を行います。

- 点滴を打ち、脱水の進行を防ぐ

- 吐き気止めの注射や内服薬での対処

- 消化器サポートのフードを用いた食事療法

- 痛みが強くない場合の軽い鎮痛剤の使用

ただし、膵炎は急激に悪化することがあるため、通院での治療を選択する場合でも、慎重な経過観察が必要になります。

 

入院・通院のどちらが適しているのか?

愛犬の膵炎治療において、入院・通院のどちらが適しているかは、症状の重さやご家族の意向によります。以下のポイントを参考に判断することが重要です。

- 入院が適しているケース:重度の嘔吐・下痢、意識レベルの低下、強い腹痛、血液検査で著しい異常がある場合

- 通院が可能なケース:食欲がある程度あり、点滴での管理が不要な場合

- 在宅緩和ケアが必要なケース:入院や頻繁な通院ができない、または高齢やストレスに弱い犬である場合

もし入院や通院が難しい場合には、在宅での緩和ケアが選択肢になります。

 

 

在宅緩和ケアが必要なケースとは?

入院・通院が難しい理由

膵炎の治療には入院が推奨されますが、すべての犬が入院できるわけではありません。以下のような理由から、在宅緩和ケアを選択するご家族も少なくありません。

- 強い入院ストレス:病院が苦手で、入院すると極度のストレスを感じてしまう

- 家で最期を迎えたい:膵炎の重症度によっては回復が難しいため、病院で最期を迎えるのではなく、自宅で過ごさせたい

- 通院が困難:入院はさせたくないが、ご家族の事情により、頻繁な通院が難しい

このような場合、在宅での緩和ケアを検討することが重要になります。

 

在宅緩和ケアを選択する際のポイント

在宅緩和ケアでは、犬の症状を管理しながらできる限り苦痛を和らげることが目的になります。以下のようなポイントを押さえておくことで、適切なケアが可能になります。

- 吐き気止め・鎮痛剤の適切な使用:動物病院と相談し、在宅で使える薬を処方してもらう

- 水分補給の管理:皮下点滴を利用して脱水を防ぐ

- 食事管理:膵炎用の消化に優しいフードを準備し、少量ずつ与える

- 愛犬の変化をよく観察する:呼吸の異常、ぐったりしている、嘔吐が続くなどの症状があればすぐに獣医師に相談

在宅緩和ケアは、ご家族のサポートが不可欠です。そのため、無理のない範囲でケアできるよう、往診やオンライン相談などのサポートを活用することをおすすめします。

 

在宅緩和ケアのゴールとは?

在宅での膵炎ケアは、「回復を目指すケース」と「穏やかに見送るケース」の2つに分かれます。

- 回復を目指すケース:症状をコントロールしながら徐々に食欲や元気を回復させる

- 穏やかに見送るケース:愛犬が苦しまずに最期を迎えられるよう、疼痛管理や環境調整を行う

ご家族の希望に沿ったケアプランを立てることが大切です。

 

 

在宅緩和ケアの具体的な方法

1. 痛みの管理(鎮痛剤の使用)

膵炎の犬にとって痛みの管理は最も重要です。強い炎症が膵臓を刺激し、激しい腹痛を引き起こすため、適切な鎮痛剤の使用が不可欠です。

- 内服薬:軽度の痛みであれば、飲み薬での鎮痛管理が可能

- 皮下点滴による鎮痛薬:内服が困難な場合や、痛みが強い場合には、皮下点滴で鎮痛剤を投与

- 注射薬:必要に応じて、往診で鎮痛薬の注射を実施

在宅での鎮痛管理は、ご家族が犬の様子を観察しながら調整することが重要です。

 

2. 吐き気の管理(制吐剤の使用)

膵炎の犬は強い吐き気を感じることが多いため、食事を受け付けなくなることがあります。これを防ぐために、以下のような対応を行います。

- 制吐剤の内服:嘔吐が軽度であれば、内服薬でコントロール

- 皮下点滴での制吐剤投与:食欲がない場合には、皮下点滴に制吐剤を混ぜて投与

- 食事の工夫:少量ずつ、消化に優しいフードを与える

嘔吐が続く場合には、速やかに獣医師に相談することが大切です。

 

3. 水分補給(皮下点滴の実施)

膵炎による脱水を防ぐために、在宅での皮下点滴が推奨されます。

- 1日1回、皮下点滴を実施(ご家族が自宅で行う場合はトレーニングが必要)

- 電解質バランスを考慮:適切な輸液を使用し、犬の状態に合わせて調整

- 水分摂取のサポート:皮下点滴だけでなく、飲水量を確保できるよう、工夫が必要

皮下点滴の頻度や量は、獣医師と相談しながら調整しましょう。

 

4. 食事管理(膵炎用の低脂肪フード)

膵炎の犬にとって、適切な食事管理は回復の鍵となります。

- 低脂肪・消化の良い食事を選ぶ

- 少量ずつ、こまめに与える

- 食欲がない場合は流動食やシリンジ給餌を検討

食事の選択肢についても、獣医師と相談しながら決定することが大切です。

 

5. 環境の整備(安静とストレス軽減)

膵炎の犬は静かで落ち着いた環境で過ごすことが重要です。

- 安静を保てるスペースを作る

- 動きやすい場所にベッドやトイレを配置

- ストレスを最小限に抑えるため、過度な接触を避ける

快適な環境を整えることで、犬が少しでも楽に過ごせるようサポートします。

 

 

在宅緩和ケアの経過とご家族の対応

1. 初診時の状態とご家族の決断

犬の膵炎が判明し、ご家族は入院ではなく在宅での緩和ケアを選択しました。初診時には以下のような状態でした。

- 食欲低下:3日間ほとんど食べられていない

- 嘔吐が継続:水を飲んでも吐いてしまう

- 腹痛の兆候:背中を丸めるような姿勢

- 脱水の進行:皮膚をつまんでも戻りが遅い

この状態から、ご家族と相談しながら在宅緩和ケアのプランを決定しました。

 

2. 皮下点滴と投薬の実施

在宅での緩和ケアでは、皮下点滴と投薬が重要な役割を果たします。

- 皮下点滴:毎日2回、ご家族が自宅で実施(獣医師が指導)

- 鎮痛剤:痛みのコントロールのために定期投与

- 制吐剤:嘔吐を防ぐために皮下投与

ご家族には、投薬のタイミングや皮下点滴の方法について詳しくレクチャーしました。

 

3. 食事の工夫と経過

膵炎の犬は適切な食事管理が回復の鍵となります。

- 食事の工夫:低脂肪フードを少量ずつ与える

- 食欲がない場合:流動食をシリンジで与える

- 水分摂取:常に新鮮な水を用意し、飲水量を確認

在宅ケア開始から2日目には、少量ずつ食事を取れるようになりました。

 

4. ご家族のサポートと犬の変化

在宅緩和ケアの成功には、ご家族の協力が不可欠です。

- 観察の継続:毎日の様子を記録し、診察時に獣医師と共有

- 環境の整備:安静に過ごせる場所を確保

- ストレス軽減:いつも通り声をかけながら落ち着いた環境を維持

これにより、犬は次第に回復の兆しを見せ、落ち着いて過ごせるようになりました。

 

 

在宅緩和ケアの結果と今後の見通し

1. 在宅ケア開始後の経過

在宅緩和ケアを開始してから、犬の体調には徐々に変化が見られました。

- 1日目:嘔吐が軽減し、落ち着いて過ごせる時間が増える

- 4日目:少量ながら食事を受け付けるようになる

- 7日目:動きが出始め、短時間の歩行も可能に

- 14日目:食事量が安定し、投薬もスムーズに進む

この段階で、ご家族からも「少し元気になってきた気がする」という声が聞かれました。

 

2. 改善が見られたポイント

在宅緩和ケアによって、以下の点で改善が見られました。

- 嘔吐の完全抑止:制吐剤の効果で安定

- 食欲の回復:低脂肪フードを少量ずつ摂取

- 痛みの軽減:鎮痛剤により落ち着いた様子を維持

- ご家族の不安が軽減:在宅ケアに慣れ、対応がスムーズに

 

3. 今後の見通しと注意点

このまま安定した状態を維持できるよう、ご家族と協力しながらケアを継続していきます。

- 継続的なモニタリング:食欲や排泄、元気の有無を確認

- 皮下点滴の頻度調整:体調に応じて量や回数を調整

- 緊急時の対応準備:急変時の対処法を事前に共有

今後も定期的なフォローを行い、犬ができるだけ穏やかに過ごせるようサポートを続けます。

 

 

在宅緩和ケアの選択肢とご家族の決断

1. 入院と在宅ケアの選択肢

急性膵炎の治療には、一般的に以下の2つの選択肢があります。

- 入院治療:点滴や注射を用いて集中的に管理する

- 在宅緩和ケア:症状を和らげながら、自宅で見守る

本来であれば、入院管理が最善とされるケースが多いですが、ご家族の考え方や犬の性格、病状によっては在宅緩和ケアが適した選択となることもあります。

 

2. ご家族が在宅ケアを選択した理由

今回のケースでは、ご家族は入院ではなく在宅緩和ケアを選びました。その理由として、以下の点が挙げられます。

- 犬が入院を極度に嫌がる:ストレスで状態が悪化する可能性があった

- 自宅で穏やかに過ごさせたい:環境の変化がない方が安心できる

- 最後までそばにいたい:万が一のときに、一緒にいられる

- 治療の方向性を緩和ケアにシフト:病気の進行を考慮し、苦痛を和らげる方針に

こうしたご家族の想いを尊重し、往診でのサポート体制を整えました。

 

3. 在宅緩和ケアの準備と方針

在宅緩和ケアを選択するにあたり、以下の準備を行いました。

- 皮下点滴の指導:自宅での実施方法を詳しくレクチャー

- 投薬管理の調整:飲みやすい形での処方を検討

- 緊急時の対応プラン:急変時の行動指針を作成

ご家族の不安を軽減し、できる限り安心して看護できる環境を整えました。

 

 

まとめ:在宅緩和ケアを通じて感じたこと

1. ご家族の決断と向き合い方

今回のケースでは、入院ではなく在宅緩和ケアを選択し、ご家族が犬のそばで最後まで見守る道を選びました。この選択には、不安や葛藤が伴いましたが、「できる限り穏やかに過ごさせたい」という強い想いがありました。

在宅緩和ケアでは、獣医師の往診サポートのもと、ご家族が主体となってケアを行うことになります。だからこそ、事前にしっかりと準備し、正しい知識を持つことが重要です。

 

2. 在宅緩和ケアのメリットと課題

在宅緩和ケアを選択することで、以下のようなメリットがありました。

- 自宅という安心できる環境で過ごせる

- ご家族が最期までそばにいられる

- ストレスを最小限に抑えられる

一方で、次のような課題もありました。

- ご家族がケアを担う負担がある

- 急変時の対応が必要になる

- 精神的なプレッシャーを感じることがある

こうした課題を少しでも軽減するために、獣医師と密に連携をとり、状況に応じたサポートを受けながら進めていくことが大切です。

 

3. 最後に:後悔のない時間を過ごすために

在宅緩和ケアは、「最期まで穏やかに過ごさせてあげたい」と願うご家族にとって、大切な選択肢のひとつです。しかし、その道のりは決して簡単なものではなく、冷静な判断や決断が求められる場面もあります。

大切なのは、「どの選択が正解か」ではなく、「ご家族がどのように寄り添いたいか」です。最期の時間をどう過ごすか、どのようなサポートが必要かを考えながら、ご家族とペットが納得できる形を選んでいただきたいと思います。

もし在宅緩和ケアについてお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。ペットとご家族が安心して過ごせるよう、最適なプランをご提案いたします。

 

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犬の肺水腫の在宅緩和ケア

肺水腫とは?

肺水腫は、心臓の機能が低下することで肺に水が溜まり、呼吸が苦しくなる状態です。特に小型犬の高齢期に多くみられる僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、心臓のポンプ機能が低下し、肺水腫を引き起こすことがあります。

今回ご紹介するのは、13歳の小型犬モコちゃんのケースです。モコちゃんは2ヶ月前に僧帽弁閉鎖不全症と診断され、内服薬で経過観察を続けていました。しかし、ある日突然呼吸が荒くなり、肺水腫が疑われる状態に。動物病院で緊急処置を受けましたが、ご家族は入院ではなく在宅での緩和ケアを選択しました。

本記事では、モコちゃんの在宅緩和ケアの流れを通じて、肺水腫の管理やケアのポイントについて詳しく解説します。

IMG_7845.jpg

 

目次

モコちゃんのケース:肺水腫発症から在宅緩和ケアへ

在宅緩和ケアの開始:呼吸を楽にするための対策

現在の経過と今後の展望

まとめ:肺水腫の犬を在宅で支えるために

 

 

肺水腫発症から在宅緩和ケアへ

診断から2ヶ月間の経過

モコちゃんは13歳の小型犬で、2ヶ月前にかかりつけの動物病院で僧帽弁閉鎖不全症と診断されました。当初は内服薬で経過観察を続けていましたが、3日ほど前に呼吸がゼコゼコしているのに気づいたとのことでした。元気食欲などの一般状態には大きく変化はなく、たまたま定期検診だった日の前日の夜から体調が悪そうで、検査日当日は食欲廃絶の状態だったとのことでした。

 

呼吸状態の急変と肺水腫の診断

定期検診の当日、ご家族がモコちゃんの呼吸が異常に荒く、苦しそうにしていることに気づき、動物病院で詳しい検査をお願いしたところ、超音波検査を実施しようとした時に急変し、呼吸状態が一気に増悪したとのことでした。すぐに利尿剤などを用いた緊急処置を受けましたが、ご家族は入院でお別れしてしまうリスクを考慮し、ご自宅に連れて帰り、最後の時間を在宅緩和ケアで過ごさせたいと希望されました。

 

在宅緩和ケアの選択

動物病院では、急性肺水腫を疑う場合には、緊急処置と徹底した入院管理を行うことが常ですが、その選択が正しかったかどうかは、結果を見てみなければ誰も断定できません。モコちゃんのご家族は「入院中に亡くなってしまうのではないか」という不安を抱えました。

結果として、最期の時間を家で過ごさせてあげたいという想いから、入院ではなく在宅での緩和ケアを選択しました。

 

 

在宅緩和ケアの開始

酸素環境の構築

モコちゃんのご家族は、帰宅後すぐに酸素ハウスの導入を決定しました。肺水腫の犬にとって、酸素濃度を適切に維持することは、呼吸の負担を軽減するために非常に重要です。

当院では、以下のような方法で酸素環境の構築をサポートしました。

- 酸素発生装置をレンタルし、モコちゃんが落ち着いて過ごせるスペースを確保

- 酸素ハウス内の温度や湿度を適切に管理

- モコちゃんの呼吸状態に適した酸素濃度指示

 

皮下点滴と投薬プランの調整

肺水腫の犬では、内服薬を無理に飲ませることで誤嚥やストレスによる悪化が懸念されます。そのため、モコちゃんには以下の対応を実施しました。

- 一旦内服薬の全面中止と注射薬への変更

- 皮下点滴による投薬を導入し、必要な薬剤を投与

- 利尿剤を適切な用量で使用し利尿による呼吸状態改善を目指す

モコちゃんは、ご家族の優しい声掛けと適切な環境調整により、少しずつ落ち着きを取り戻しました。診療の最後には、寝返りや呼び掛けに応じるなどの行動を見せてくれました。

 

食欲管理と日常生活のケア

肺水腫の犬は、呼吸が苦しくなることで食欲が低下しがちです。モコちゃんの場合も、食事を口にする機会が減っていました。そのため、ご家族には以下のような工夫をお願いしました。

- モコちゃんが好む食材を与える

- 水分補給は自由にさせてあげる

このようなケアを通じ、モコちゃんが少しでも体調を安定させ、もしかしたら酸素室から離脱できるかもしれない期待をみつつ、僧帽弁閉鎖不全症からの肺水腫に対する在宅緩和ケアが始まりました。

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現在の経過と今後の展望

在宅緩和ケア開始時の状況

モコちゃんは、在宅緩和ケアを開始したばかりであり、まだ安定しているとは言えない状態です。呼吸は高濃度酸素下でかろうじて維持できており、皮下点滴による治療と酸素環境の調整を行いながら、少しずつ様子を見ていく段階です。

 

モコちゃんの今後の展望

現時点では、今後の経過がどのように進むかは分かりません。大きく分けると以下の2つのシナリオが考えられます。

 

回復に向かう場合

- まずは酸素室内での飲食ができるようになる

- 現在は酸素濃度を高めに設定しているため、徐々に濃度を下げても呼吸の乱れが起きないか確認

- 酸素濃度を30%台まで下げることができれば、酸素室からの離脱が視野に入る

- 呼吸の安定を最優先しながら、皮下点滴での投薬を継続し、状態が良くなれば内服薬へ移行

- 最終的に酸素室なしで日常生活を送れるようになり、内服薬でのコントロールが可能になるのが理想のゴール

 

病状が進行する場合

- 高濃度酸素下でも呼吸促迫が止まらない

- 食欲廃絶が続き、栄養補給が困難になる

- 利尿剤を投与しても排尿が認められない状態になる

 

今後の診療計画

今後の診療では、モコちゃんの呼吸状態、食欲、排尿の有無などをこまめにチェックしながら、適切なケアを続けていきます。回復に向かうか、それとも悪化していくかは、今後の経過次第です。引き続きご家族と連携を取りながら、可能な限り最善のサポートを行っていきます。

どちらの道を進むのか、または紆余曲折しながらどちらにも揺れ動くのか、慎重に見守りながらケアを続けます。

 

 

まとめ:肺水腫の犬を在宅で支えるために

在宅緩和ケアの選択とその意義

肺水腫を発症した犬にとって、在宅緩和ケアは、ご家族が最期まで寄り添いながら治療を行う選択肢の一つです。モコちゃんのように、入院ではなく自宅でのケアを希望するケースでは、適切な環境を整え、状態を見ながら慎重に対応することが求められます。

 

肺水腫の犬に必要なサポート

- 酸素環境の適切な管理:酸素室や酸素発生装置を活用し、呼吸の負担を軽減する

- 定期的な状態チェック:呼吸の変化、食欲、排尿の有無をこまめに確認する

- 適切な投薬プラン:内服薬の調整や皮下点滴による薬剤投与を行い、症状を管理する

家族の心構え:病状の進行に備え、最期まで穏やかに見守る準備をする

 

モコちゃんのこれから

モコちゃんは、まだ在宅緩和ケアを開始したばかりです。今後の経過次第で、回復に向かう可能性もあれば、症状が悪化することも考えられます。どのような道を辿るにせよ、ご家族がモコちゃんと過ごす時間を大切にしながら、最適なサポートができるよう努めていきます。

 

在宅緩和ケアのご相談について

肺水腫や心臓病を抱える犬の在宅緩和ケアについて、ご相談を希望される場合は、お気軽にご連絡ください。東京23区を中心に往診を行い、愛犬とご家族が安心して過ごせるようサポートいたします。

 

 

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在宅緩和ケアの流れとは?

高齢や病気によって通院が難しくなったペットにとって、在宅緩和ケアは大切な選択肢のひとつです。自宅での診療を通じて、ペットができるだけ苦しまずに穏やかに過ごせるようにサポートします。

わんにゃん保健室では、ご家族の不安に寄り添いながら、診療・投薬指導・在宅酸素の導入・定期フォローアップまで、一貫した緩和ケアを提供しています。

この記事では、当院の在宅緩和ケアの流れを詳しくご紹介します。ペットの最期の時間を後悔のないものにするために、ぜひご一読ください。

▼この記事の内容

 

 

1. 在宅緩和ケアとは?自宅での安心した医療を提供

在宅緩和ケアの目的

在宅緩和ケアは、病気や加齢によって通院が難しくなったペットが、ご家族と一緒に自宅で穏やかに過ごせるようにサポートする医療ケアです。

緩和ケアの目的は、「治すこと」ではなく、「苦痛を軽減し、穏やかな時間を過ごす」ことにあります。

  • 痛みや呼吸困難の緩和
  • 食欲低下時のサポート
  • 生活環境の調整とご家族の負担軽減

通院が難しいペットとご家族の負担軽減

高齢や病気の進行により、ペットがキャリーに入るのを嫌がる、移動の負担が大きいといった理由から、通院が難しくなることがあります。また、大型犬の場合は、歩けなくなると通院自体が物理的に困難になります。

往診による在宅緩和ケアでは、自宅で診療を受けられるため、ペットのストレスを大幅に軽減でき、ご家族も移動の負担を減らすことができます。

こんなペット・ご家族におすすめ

  • ペットが高齢で通院の負担が大きい
  • 病気の進行により、動物病院までの移動が困難
  • ペットが通院を極端に嫌がる(キャリーを見ただけでパニックになる)
  • 最期の時間をできるだけ穏やかに過ごさせたい

在宅緩和ケアを選択することで、ペットのストレスを最小限に抑えながら、ご家族がそばで見守ることが可能になります。

 

 

2. じっくり時間をかけた初回カウンセリング

初診は約2時間:ペットとご家族の状況を深く理解する

在宅緩和ケアを始める際、最も重要なのが初診の問診とカウンセリングです。ペットの病状だけでなく、ご家族の意向や生活環境も考慮しながら、最適な緩和ケアのプランを作成します。

当院では、初診時に約2時間をかけて以下のような内容を詳しく伺います。

  • ペットの病歴・現在の症状・服用中の薬
  • 食欲や排泄の状態、普段の生活リズム
  • ご家族のケアに対する考え方(どこまで治療をするか)
  • ペットが快適に過ごせる環境の確認

ご家族の気持ちに寄り添った方針の模索

緩和ケアでは、ペットのためだけでなく、ご家族の負担を減らすことも重要です。そのため、以下のような点も考慮しながら、無理のないケアプランを模索します。

  • ご家族がケアに割ける時間(仕事や家庭の事情)
  • どこまで治療を続けるか、在宅でどのように見守るか
  • 「最後まで自宅で看取りたい」「少しでも長く一緒にいたい」などの希望

「何が正解かわからない」「どうしてあげるのが一番いいのか迷う」と感じる方も多いため、獣医師と一緒に考えながら、最適な方針を決めていくことを大切にしています。

診療後に行う方針の決定

初診後には、問診と診察結果をもとに、以下のような方針を決めていきます。

  • 緩和ケアを進める上での具体的なケアプラン
  • 内服薬や皮下点滴の導入有無
  • 必要に応じた酸素管理の計画
  • ご家族ができる在宅ケアの指導

初診時にしっかりと方針を決めておくことで、今後のケアをスムーズに進めることができます。

 

 

3. 診察の流れと検査の実施

診察は基本的に獣医師1名で実施

在宅緩和ケアの診察は、ペットのストレスを最小限に抑えるため、基本的に獣医師1名で訪問し、穏やかな環境で行います。

診察では、ペットの状態を総合的に確認し、ご家族が普段気になっている症状についても詳しく伺います。

必要な検査の実施と動物看護師の同行

病状の変化を正確に把握するために、検査が必要な場合は動物看護師1~2名が同行し、以下のような検査を行います。

  • 血液検査:腎機能・肝機能・貧血の状態を確認
  • 超音波検査:胸水や腹水の有無、腫瘍の状態を確認
  • レントゲン検査:呼吸器や心臓の状態を把握(ご自宅では不可)

ご家族と結果を共有し、今後の方針を決定

検査結果はその場でご家族と共有し、今後のケア方針を相談しながら決定します。

  • 検査結果に応じた内服薬や皮下点滴の調整
  • 病状の進行に合わせた酸素管理の必要性
  • ご家族ができる在宅ケアの範囲

診察と検査を通じて、ペットの状態を正確に把握し、ご家族と一緒に最適なケアプランを立てていきます。

 

 

4. 具体的な在宅緩和ケアプランの策定

ペットの状態に応じた個別ケアプラン

診察と検査の結果をもとに、ペットの状態やご家族の希望に合わせた個別の在宅緩和ケアプランを作成します。

緩和ケアは「全ての症状に対処する」のではなく、ペットの負担を最小限にしながら快適に過ごせる方法を選択することが大切です。

緩和ケアプランの主な内容

  • 内服薬・皮下点滴の投与計画:投薬が難しい場合の代替方法も考慮
  • 呼吸管理:酸素発生装置の導入や使用方法の指導
  • 食事管理:食欲低下時の補助方法や好みに合わせた食事調整
  • 疼痛管理:痛みがある場合の鎮痛薬の使用
  • 生活環境の調整:移動しやすいスペース作りや寝床の整備

ご家族が無理なく続けられるプランを

緩和ケアは、ご家族が毎日行うケアでもあるため、無理のない範囲で続けられることが重要です。

  • 仕事や家事の合間でもできるケア方法の提案
  • ご家族の負担が少ないシンプルな投薬・点滴スケジュール
  • ペットの性格に合わせたストレスの少ない方法を優先

「何を優先すべきか」「何を諦めるべきか」も一緒に考えながら、最適なケアプランを決めていきます。

 

 

5. 内服薬・皮下点滴などの投薬指導

ご家族が無理なくできる投薬方法を提案

緩和ケアでは、投薬が負担になりすぎないことが大切です。ペットの性格やご家族の状況に合わせ、ストレスの少ない方法を提案します。

「内服薬が飲めない=治療ができない」わけではありません。飲めない場合には、皮下点滴や注射薬への切り替えを検討します。

内服薬の工夫とサポート

  • 投薬補助おやつ:おやつの中に薬を包み、自然に食べてもらう
  • ウェットフードに混ぜる:香りが強いフードで薬を包み込む
  • カプセルに入れて負担を減らす:苦味がある薬はカプセルで飲ませる

投薬に慣れていないご家族には、実際にやり方を見せながら指導し、スムーズにできるようサポートします。

皮下点滴の導入とトレーニング

腎不全や脱水症状がある場合、皮下点滴が在宅ケアの重要なポイントになります。ご家族が安心して実施できるよう、以下の点を重点的に指導します。

  • 適切な針のサイズと点滴量の確認
  • 皮下に適切に点滴液を注入する方法
  • ペットがリラックスできる体勢と環境作り

無理なく続けられる投薬計画

「毎日投薬しなければならない」と思うと、ご家族にとって大きな負担になります。そのため、無理なく続けられるスケジュールを提案します。

  • 飲ませる回数を最小限にする(1日1回にまとめるなど)
  • どうしても飲めない薬は皮下点滴や注射薬に切り替え
  • 投薬がストレスにならないよう、成功率の高い方法を選ぶ

ご家族が安心して投薬や点滴ができるよう、実践的なアドバイスを行いながらサポートします。

 

 

6. 生活環境に合わせた在宅酸素の運用指導

呼吸状態が悪化したときのための酸素管理

心疾患や腫瘍、腎不全の進行により、呼吸が苦しくなることがあります。このような場合、在宅での酸素療法が重要になります。

特に以下のような症状が見られた場合は、早めの酸素環境の整備を推奨します。

  • 呼吸が速く、浅い(頻呼吸)
  • お腹を使った呼吸(努力呼吸)
  • 伏せの姿勢で首を伸ばし、口を開けて呼吸する

在宅での酸素供給の方法

在宅で酸素を供給する方法には、酸素発生装置酸素ボンベの2種類があります。

  • 酸素発生装置:長時間の使用が可能で、自宅での管理に適している
  • 酸素ボンベ:緊急時に高濃度の酸素を即座に供給できる

酸素ハウスの活用と環境調整

小型犬や猫の場合、酸素ハウス(簡易的な酸素室)を設置することで、呼吸状態の安定を図ることができます。

  • ペットが出入りできるようにして、ストレスを最小限に
  • 室内の酸素濃度を適切に管理する(測定器の使用)
  • 酸素の供給量を状態に応じて調整する

大型犬の場合は酸素ハウスの設置が難しいため、鼻先に酸素を吹きかける方法を採用します。

ご家族ができる酸素療法の工夫

酸素管理を在宅で行うためには、ご家族の協力が不可欠です。以下のような工夫で、より効果的な酸素供給が可能になります。

  • 酸素発生装置の設置場所をペットの好きな場所に調整
  • 酸素を嫌がる場合は、徐々に慣れさせる
  • ペットがリラックスできる環境を作り、呼吸を落ち着かせる

在宅での酸素療法は、ご家族の理解と協力が不可欠です。事前に準備し、適切なタイミングで導入することで、ペットの呼吸状態を安定させることができます。

 

 

7. 定期フォローアップとご家族へのサポート

定期的な訪問診療でペットの状態を把握

在宅緩和ケアでは、定期的なフォローアップが重要です。ペットの状態に合わせて、診察やケアプランの見直しを行います。

訪問診療の頻度は以下を目安に調整します。

  • 安定している場合:1〜3ヶ月に1回程度の訪問診療
  • 症状が進行している場合:2週間~1週間に1回
  • 終末期の管理:必要に応じた頻回のフォローアップ

ご家族が不安にならないためのサポート

緩和ケアでは、ペットだけでなくご家族のサポートも大切です。ご家族が「何をすればいいかわからない」とならないよう、以下の対応を行います。

  • ペットの状態が悪化したときの対応方法を事前に説明
  • 食欲低下や呼吸の変化など、注意すべきポイントを共有
  • 内服薬・点滴の管理に関する相談受付

緊急時の対応と判断のポイント

「急に元気がなくなった」「食欲が落ちた」「呼吸が苦しそう」など、緊急時の対応が必要な場面では、すぐにご相談いただける体制を整えています。

ただし、緩和ケアを行う上で、救急対応が難しいケースもあります。そのため、以下のようなポイントを事前にお伝えし、ご家族に判断していただくこともあります。

  • 動物病院に連れて行くべきか、在宅で見守るべきか
  • 症状が出たときの具体的な対応手順
  • どのような状態が「危険な兆候」なのかを理解しておく

ご家族が不安なく対応できるよう、事前にしっかりと準備を整え、サポートしていきます。

 

 

8. わんにゃん保健室の在宅緩和ケアとは

在宅緩和ケア専門の動物病院として

「わんにゃん保健室」は、ペットの在宅緩和ケアを専門とする往診専門の動物病院です。通院が難しくなったペットとご家族のために、ご自宅での診療を提供しています。

当院では、病気の治療だけでなく、ペットとご家族が穏やかに過ごせることを最優先に考え、以下のような診療を行っています。

  • 緩和ケアの方針決定とカウンセリング
  • ご自宅での診察・検査・処置
  • 内服薬や皮下点滴などの投薬指導
  • 在宅での酸素管理サポート
  • 終末期のケアと看取りのサポート

東京23区を中心に訪問診療を実施

わんにゃん保健室では、東京23区を中心に往診を行っています。ご自宅での診療をご希望の方は、お気軽にご相談ください。

「病院に連れて行くのが難しくなった」「ペットが通院を嫌がるようになった」と感じたら、一度往診を検討してみてください。

ご相談・お問い合わせ

ペットの在宅緩和ケアについてのご相談は、当院の公式サイトまたはお電話にて受け付けています。

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ペットのターミナルケア

ペットの最期の時間を迎えるとき、ご家族にはさまざまな選択が求められます。「もっと何かできたのでは?」「これでよかったのだろうか?」と、迷いや葛藤を抱えることも少なくありません。

ターミナルケアでは、時に冷静な判断を求められる場面があります。しかし、その選択は「正解・不正解」ではなく、「その子にとって最善かどうか」が大切です。ご家族の決断に後悔が残らないよう、ペットの状態や希望をしっかりと見つめ、自分を信じて選択していくことが重要です。

この記事では、ターミナルケアにおいてご家族が持つべき心構えや、決断のポイントについてお伝えします。

【目次】

 

1. ターミナルケアとは?

ペットのターミナル期とは?

ターミナル期とは、病気の進行や加齢により治療による回復が見込めなくなった段階のことを指します。この時期のケアでは、延命を目的とするのではなく、ペットができるだけ苦痛を感じず、穏やかに過ごせることを最優先に考えます。

ターミナルケアの目的と役割

ターミナルケアの最大の目的は、ペットの生活の質(QOL)を維持し、できる限り安らかに最期を迎えられるようにすることです。そのため、以下のようなケアが行われます。

  • 痛みや苦しみを和らげるための緩和医療
  • 呼吸困難時の酸素供給や環境調整
  • 食欲が低下した際のサポート
  • ご家族の精神的なケアと意思決定のサポート

在宅ケアと病院ケアの違い

ターミナル期のケアには、動物病院での治療と在宅での緩和ケアの2つの選択肢があります。

  • 病院でのケア: 集中的な医療措置が可能だが、移動や環境のストレスが大きい
  • 在宅ケア: 慣れた環境で安心して過ごせるが、家族のサポートが必要

どちらの選択肢がペットにとって最善かを、ご家族と獣医師で話し合いながら決めることが大切です。

 

 

2. ご家族が持つべき心構え

冷静な判断が求められる場面

ターミナル期では、ご家族が「何をしてあげるべきか」「どこまで治療を続けるべきか」といった選択を迫られることが多くなります。特に、延命処置を行うか、緩和ケアに切り替えるかの判断は、多くのご家族にとって難しい決断です。

その場の感情に流されず、ペットにとって何が最善かを考えることが大切です。決して「諦める」のではなく、「ペットのために最良の選択をする」という視点を持つことが求められます。

「してあげたいこと」と「必要なこと」

ご家族は、「もっとご飯を食べてほしい」「最期まで歩かせてあげたい」など、できるだけ今まで通りの生活を送らせてあげたいと思うものです。しかし、ペット自身がそれを望んでいるかどうかを考えることも重要です。

例えば、食事を無理に与えることで苦しみが増す場合もあります。また、移動が負担になる状態で無理に歩かせることが、ペットの体力を奪うこともあります。「本当に必要なことは何か?」を冷静に見極めることが大切です。

自分の決断を信じることの大切さ

どんな選択をしても、「あの時こうしていれば…」という後悔が残ることは少なくありません。しかし、その時の自分が精一杯考えて出した決断であれば、それがペットにとって最善の選択だったはずです。

「正解のない選択」だからこそ、ご家族はペットの状態と向き合い、自分を信じて決断をすることが必要になります。迷ったときには、獣医師や周囲のサポートを受けながら、冷静に判断できる環境を整えましょう。

 

 

3. ターミナル期における決断

延命治療を続けるか、緩和ケアに切り替えるか

ターミナル期では、延命治療を続けるか、緩和ケアに移行するかの判断が求められます。

  • 延命治療:さまざまな方法を駆使して、できる限り生命を維持する
  • 緩和ケア:痛みや苦しみを和らげ、穏やかに過ごせるようサポートする

どちらの選択肢も間違いではなく、ご家族の価値観やペットの状態に合わせて決めることが大切です。

苦痛緩和のための鎮静や鎮痛処置

ターミナル期には、呼吸困難や痛みが出てくることがあり、鎮静剤や鎮痛剤を使用するかどうかの判断が必要になることがあります。

しかし、ご家族の中には「意識がなくなってしまうのでは?」という不安を感じる方もいます。獣医師と相談しながら、ペットにとって最良の方法を選択することが重要です。

最期をどこで迎えさせてあげるか

ペットの最期を病院で迎えるのか、それとも自宅で迎えるのかという選択も、ご家族にとって大きな決断となります。

  • 病院での看取り:医療設備が整っているため、緊急対応が可能
  • 在宅での看取り:慣れた環境で、家族に囲まれて穏やかに過ごせる

在宅での看取りを希望される場合は、事前に緩和ケアの準備を整えておくことが大切です。

 

 

4. ご家族自身のケアも大切に

ペットロスとどう向き合うか

ターミナルケアの過程では、ペットの状態を見守る中で強い悲しみや不安を感じることがあります。そして、最期を迎えた後も「ペットロス」と呼ばれる喪失感に苦しむことが少なくありません。

  • 「もっと何かできたのでは?」と後悔してしまう
  • ペットがいない日常に適応するのが難しくなる
  • 気持ちの整理がつかず、涙が止まらない

ペットロスは自然な感情です。大切なのは、一人で抱え込まずに誰かに気持ちを話すこと。家族や獣医師、ペットロスに理解のある友人と、気持ちを共有することが心のケアにつながります。

少しでも後悔しないためにできること

「もっとこうしてあげればよかった…」と後悔しないために、以下のことを意識してみてください。

  • ペットの様子を日々観察し、必要なケアを行う
  • 「何が正解か」ではなく、「今できる最善の選択」を考える
  • 決断に迷ったときは、獣医師や専門家の意見を参考にする

ご家族が冷静に考え、しっかりと向き合うことで、「最期までできることをやってあげられた」と思えるようになります。

支えてくれる人と繋がる

ターミナルケアの期間は、ご家族自身の心のケアも非常に重要です。一人で抱え込まず、信頼できる人と話すことで気持ちが少し楽になることもあります。

  • 動物病院のスタッフや往診獣医師に相談する
  • 同じ経験をした飼い主さんと交流する
  • ペットロスのサポートグループに参加する

ペットのためにも、ご家族自身の心のケアを大切にしながら、最期までしっかりと寄り添っていきましょう。

 

 

5. 獣医師ができるサポート

ご家族の決断を支える役割

ターミナルケアでは、ご家族が重要な決断を迫られる場面が多くあります。しかし、その決断を一人で抱え込む必要はありません。きっとかかりつけの獣医師は、医学的な視点だけでなく、ご家族の気持ちにも寄り添いながら、最善の選択をサポートしてくれるはずです。

  • 現在のペットの状態を正しく把握する
  • 緩和ケアに関する選択肢を分かりやすく説明する
  • ご家族の意向に沿った治療・ケアプランを提案する

「このまま見守るべきか、処置をするべきか」など、判断に迷った際には、獣医師と話し合うことで適切な選択ができるようになります。少なくとも、ご家族としてどうしていきたいのかを、できるだけ明確にして伝えましょう。

ターミナルケアにおける医療の選択肢

ペットの状態に応じて、ターミナル期には以下のような医療的な選択肢が考えられます。

  • 痛みや苦しみを軽減するための鎮痛剤・鎮静剤
  • 呼吸が苦しい場合の酸素供給(酸素発生装置、酸素マスク)
  • 水分補給のための皮下点滴
  • 食事が取れない場合の栄養管理

「どこまで治療を行うか」はご家族の希望によって異なります。獣医師と相談しながら、ペットにとって一番穏やかに過ごせる方法を選びましょう。

ご家族とペットのための最適なプラン

ターミナルケアは、ペットだけでなく、ご家族にとっても大切な時間です。獣医師は、その時間が少しでも穏やかに、後悔のないものとなるよう、サポートを提供します。

  • ペットの体調に応じたケアプランを作成
  • ご家族が自宅でできるケアのアドバイス

「何をしてあげるべきか」と悩むのではなく、「今、何ができるのか」を一緒に考えながら、最期の時間を大切に過ごしましょう。

 

 

6. 私たちのターミナルケア

在宅緩和ケアを支える往診専門動物病院

わんにゃん保健室は、ご自宅での緩和ケア・ターミナルケアを専門とする往診動物病院です。「病院に連れて行くのが難しい」「最期まで自宅で一緒に過ごしたい」というご家族の願いに寄り添いながら、ペットが安心できる環境で穏やかに過ごせるようサポートします。

当院のターミナルケアでできること

ペットの状態やご家族の意向に合わせて、以下のようなケアを提供しています。

  • ペットの苦痛を軽減するための鎮痛・鎮静処置
  • 呼吸困難時の酸素供給(酸素発生装置の設置・管理)
  • 水分補給や薬の投与を目的とした皮下点滴
  • 食事が取れない場合の栄養管理アドバイス
  • ご家族ができるケアの指導
  • 最期の時間を穏やかに過ごすための環境づくり

「何をしてあげるのがベストなのか分からない」と感じたときも、獣医師と相談しながらケアを決めることができます。

対応エリアとご相談について

当院では、東京23区・千葉・埼玉・神奈川エリアを中心に往診を行っています。「今すぐ相談したい」「これからターミナルケアを考えたい」といった場合も、お気軽にお問い合わせください。

ターミナルケアは、ご家族にとってもペットにとっても、とても大切な時間です。最後の時間を後悔のないものにするために、一緒に考えていきましょう。

お問い合わせは、お電話またはWebフォームから受け付けています。

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在宅緩和ケアはいつからなの?

ペットが高齢になり、慢性疾患や病気の進行が見られると「いつから在宅緩和ケアに切り替えるべきか?」と悩むご家族は多いです。

「まだ通院できるから大丈夫」「お薬を飲めているうちは病院で診てもらうべき?」と思う一方で、ペットが通院のストレスでぐったりしてしまったり、内服薬が難しくなったりすると、ご家族も不安を抱えるようになります。

この記事では、在宅緩和ケアを検討するべきタイミングと切り替えるポイントについて解説します。 ペットが最期まで安心して過ごせるように、負担を減らしながら適切なケアを選択していきましょう。

目次

 

 

1. 在宅緩和ケアとは?

在宅緩和ケアの目的

在宅緩和ケアとは、病気の治療ではなく、ペットが残りの時間をできるだけ穏やかに過ごせるようにするためのケアです。特に高齢のペットや慢性疾患を抱えた子にとって、通院の負担を減らし、安心できる環境でケアを受けられることが大きなメリットになります。

病院での治療との違い

動物病院では、「治療」を中心とした診療プランを組んでいきますが、慢性疾患やがんなどの末期では、基本的には治すというよりは症状をコントロールして、これ以上悪化させないようにすることが目的だったりもします。この段階になると検査の頻度も高くなり、ペットにとって通院が負担になることが懸念されることと思います。一方、在宅緩和ケアでは、ご自宅で必要な検査や処置(皮下点滴、投薬管理、栄養補助など)を行いながら、ペットがリラックスできる環境を整えることができます。

ご家族の負担を軽減するケア

緩和ケアはペットだけでなく、ご家族の負担を軽減することも目的としています。通院のストレスが減ることで、ご家族も安心してケアに専念できるようになります。また、ペットの状態に応じた適切なアドバイスを受けることで、最期の時間を後悔なく過ごすことができます。

 

 

2. 在宅緩和ケアを検討するタイミング

通院が負担になってきたとき

ペットが高齢になり、通院のたびに疲れやすくなったり、診察後にぐったりしてしまうことが増えてきたら、在宅緩和ケアへの切り替えを考える時期かもしれません。特に、大型犬で歩行困難になった時や通院ストレスが大きい猫にとって、往診によるケアは負担を大きく軽減できます。

内服薬が難しくなったとき

病気の進行とともに、内服薬を飲ませることが難しくなる場合があります。特に、食欲が低下し始めたペットに無理に投薬を続けることで、かえってストレスを与えてしまうことも。在宅緩和ケアでは、皮下点滴や注射による投薬管理が可能なため、ペットの負担を減らしながら治療を続けることができます。

食欲や活動量が低下してきたとき

「最近あまり食べなくなった」「寝ている時間が増えた」と感じる場合、ペットの体調に大きな変化が起こっている可能性があります。食事を摂ることが難しくなってきたときこそ、適切な栄養管理やケアが必要です。在宅緩和ケアでは、食欲低下時の工夫や栄養補助、静かな環境づくりをサポートすることができます。

 

 

3. 状態に応じた切り替えのポイント

慢性疾患の進行に応じて

慢性疾患を抱えているペットは、病気の進行とともに治療の負担が増していきます。例えば、腎臓病の猫の場合、皮下点滴が必要になったり、食欲が低下したりするタイミングで、通院ではなく在宅ケアへ切り替えることで負担を軽減できます。心臓病の犬では、呼吸が苦しくなってくると頻繁な検査や投薬管理が必要になるため、在宅での緩和ケアが有効になります。

呼吸が苦しくなったとき(酸素環境の準備)

呼吸が苦しそうになってきた場合、病院への移動がかえって負担になってしまうことがあります。在宅緩和ケアでは、酸素発生装置や酸素ハウスを導入し、自宅で呼吸をサポートすることが可能です。特に、心疾患や肺疾患を抱えるペットの場合、早めに酸素環境を準備することで、苦しさを和らげることができます。

痛みや不快感が増えてきたとき

ペットの体調が悪化すると、痛みや不快感が強くなることがあります。このような場合、無理に積極的な治療を続けるよりも、痛みを和らげ、できる範囲のケアをする選択肢があります。在宅緩和ケアでは、適切な鎮痛管理を行いながら、ペットが穏やかに過ごせる環境を整えることができます。

 

 

4. ご家族の気持ちと在宅ケアの選択

在宅ケアを選ぶ心理的な不安

「本当に自宅で看られるのか?」「最期を家で迎えさせてあげるのは正しいのか?」といった不安を抱えるご家族は多いです。在宅緩和ケアは、病院での治療を諦めることではなく、ペットの負担を最小限にしながら、穏やかに過ごすための選択肢の一つです。

事前に準備しておくべきこと

在宅緩和ケアを選択する際には、あらかじめ以下の準備をしておくと安心です。

  • かかりつけ医や往診専門の動物病院と連携する
  • 必要な医療機器(酸素発生装置・皮下点滴セットなど)を整える
  • 家族のスケジュールを調整し、ケアの時間を確保する

緩和ケアの選択肢と柔軟な対応

在宅緩和ケアでは、ご家族の状況やペットの状態に応じて、治療の進め方を柔軟に調整できます。たとえば、最初は内服薬で管理しながら、徐々に皮下点滴や注射に切り替えるなど、その子に合った方法を選択していきます。

 

 

5. 在宅緩和ケア切り替えの準備

かかりつけ医との相談と連携

在宅緩和ケアに切り替える際は、まずかかりつけの動物病院や往診専門の動物病院に相談することが重要です。病状の進行やケアの方針を獣医師と共有し、適切なサポートを受けられるよう準備を整えます。

自宅でできるケアの確認

在宅緩和ケアでは、ご家族ができる範囲でのケアが求められます。以下の点を確認しておくと、安心して対応できます。

  • 投薬管理(内服薬や注射の準備)
  • 皮下点滴の実施(必要に応じて練習)
  • 食欲が低下したときの対応(流動食や栄養補助)

 

必要な医療機器・物資の準備

ペットの状態に合わせて、以下のような医療機器や物資を揃えておくとスムーズにケアが進められます。

  • 酸素発生装置や酸素ハウス(呼吸が苦しくなったときに備えて)
  • 皮下点滴セット(脱水症状や腎不全のケア)
  • ペット用の介護マットや滑り止めマット(移動をサポート)

 

 

6. 在宅緩和ケアのメリットと事例

ペットがリラックスできる環境

慢性疾患の後半や腫瘍を抱えた犬猫、特に終末期にさしかかった時には、病院での診察や処置は、ペットにとって大きなストレスになります。在宅緩和ケアでは、慣れ親しんだ環境でケアを受けることができるため、精神的な負担が軽減されます。特に、通院が難しい高齢のペットにとって、自宅で安心して過ごせることは大きなメリットです。

家族が穏やかに見守れる時間

在宅緩和ケアを選ぶことで、ご家族はペットと過ごす時間を最大限に確保できます。通院にかかる時間やストレスが減ることで、ペットとゆっくり過ごしながら、最期の時間を大切にすることができます。

実際に在宅緩和ケアを選択したケース

例えば、腎臓病を患った高齢の猫ちゃんが、通院の負担を減らすために在宅緩和ケアに切り替えたケースがあります。皮下点滴や酸素管理を自宅で行うことで、ペットもご家族も安心して過ごすことができました。実際に、多くのご家族が「最期まで穏やかに過ごせた」と話されています。

 

 

7. どんなサポートが受けられるのか?

往診専門の動物病院による診察

在宅緩和ケアでは、往診専門の動物病院による診察を受けることができます。通院が難しくなったペットのために、獣医師がご自宅に訪問し、診察や必要な処置を行います。定期的な診察だけでなく、急な体調変化にも対応できるのが特徴です。

皮下点滴や注射薬の処方

腎臓病やがんなどの慢性疾患を抱えるペットには、皮下点滴や注射薬が処方されることがあります。ご家族が自宅で投与できるよう、獣医師が指導を行い、ペットの状態に応じたケアプランを提案します。

酸素発生装置や介護用品の手配

呼吸が苦しくなったペットのために、酸素発生装置や酸素ハウスを手配することも可能です。また、寝たきりのペットには、介護マットや歩行補助のグッズなど、快適に過ごすためのサポート用品も提供されます。

 

 

8. わんにゃん保健室の在宅緩和ケア

ペットとご家族に寄り添う往診サービス

わんにゃん保健室では、通院が難しくなったペットのために、在宅での緩和ケアを提供しています。往診専門の獣医師がご自宅に伺い、ペットの状態を丁寧に診察し、ご家族の希望に沿ったケアプランを立てていきます。

診療エリアと対応可能なケア

東京23区を中心に、埼玉・千葉・神奈川の一部地域まで対応しています。対応可能なケアには、以下のようなものがあります。

  • 定期的な往診(ペットの状態に応じた診察)
  • 皮下点滴・注射薬の処方と指導
  • 酸素発生装置や介護用品の導入サポート
  • 最期の時間を穏やかに過ごすためのターミナルケア

 

在宅緩和ケアをご検討の方へ

「在宅でできる限りのことをしてあげたい」「穏やかな最期を迎えさせてあげたい」そんなご家族の思いに寄り添いながら、サポートを行っています。ペットの状態が悪化する前に、早めにご相談いただくことで、最適なケアをご提案することが可能です。

東京23区・埼玉・千葉・神奈川エリアで往診を希望される方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

 

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猫の腎不全ステージ4から最期まで

猫の腎臓病は進行性の病気であり、高齢猫では避けて通れない問題の一つです。

初期の段階では目立った症状がないこともありますが、腎機能が低下すると、食欲不振や体重減少、嘔吐、歩行のふらつきなどの症状が現れ、最終的には緩和ケアが必要になります。

今回ご紹介する福ちゃん(日本猫・18歳・女の子)は、通院が難しい状況の中で腎不全ステージ4と診断されました。

ご家族は仕事と介護を両立しながら、在宅での緩和ケアを選択し、福ちゃんと最期まで穏やかな時間を過ごしました。

本記事では、福ちゃんの病気の進行や在宅緩和ケアの具体的な方法、最期の看取りまでの経過について詳しくご紹介します。

 

【目次】

 

 

腎臓病ステージ4とは?

腎臓病は進行性の疾患であり、病気の段階(ステージ)によってケアの内容や必要な対応が大きく変わります。

福ちゃんが診断された腎臓病ステージ4は、最も進行した段階であり、腎機能の低下が顕著になり、体への影響も大きくなります。

腎臓病ステージ4の特徴

- 腎機能の大部分が失われ、体内の老廃物を適切に排出できなくなる

食欲低下や体重減少が進行し、全身の衰弱が目立つ

貧血が進行し、疲れやすく、動きが鈍くなる

嘔吐や下痢、脱水症状が見られることがある

多飲多尿の症状が悪化し、トイレに行く回数が増える

 

福ちゃんの場合も、診断の半年前から多飲多尿が目立ち始め、次第に体重減少や食欲不振が進行しました。

ご家族が「いつもなら自然と回復していたのに、今回はなかなか戻らない」と感じるようになり、最終的に往診を依頼されました。

 

診断のきっかけと初期の対応

福ちゃんは、1日1回以上の嘔吐と食欲廃絶を主訴に往診を受けました。

血液検査の結果、腎臓病ステージ4と診断され、すぐに在宅での治療とケアが開始されました。

嘔吐のコントロール(制吐剤の投与)

皮下点滴による水分補給の開始

食欲回復を目的とした栄養管理

ご家族への在宅ケア指導

 

診断後、適切なケアを行うことで福ちゃんの嘔吐は完全に止まり、食欲も回復しました。しかし、腎臓病は完治しない病気であり、進行をできる限り遅らせることが重要となります。

 

 

腎臓病の初期症状と進行

腎臓病は進行がゆっくりであるため、初期の段階では目立った症状がないことが多く、ご家族が気づくころには病気がかなり進行しているケースも少なくありません。

福ちゃんも、初診の半年前から徐々に症状が出始めていましたが、「高齢だから仕方がない」と思い込み、様子を見ているうちに病状が進行していました。

 

多飲多尿と嘔吐:初期症状のサイン

腎臓病の初期に最もよく見られる症状の一つが「多飲多尿」です。

腎機能が低下すると尿が薄くなり、体が水分を補おうとするために水を大量に飲むようになります。福ちゃんも以下のような変化が見られました。

水を飲む量が明らかに増えた

トイレに行く回数が増え、おしっこの量も多い

 

また、腎臓が正常に働かないことで体内に毒素が蓄積し、吐き気や嘔吐を引き起こします。

福ちゃんも、1日1回以上の嘔吐が見られ、「いつもなら1~2日で治まるのに、今回は長引いている」とご家族が心配されるようになりました。

 

腎臓病の進行が与える影響

腎臓病が進行すると、次のような症状が現れるようになります。

食欲不振(ご飯の匂いを嗅ぐが食べない、食べる量が減る)

体重減少(筋肉の減少が目立つ)

被毛のツヤがなくなる(毛並みが悪くなる)

元気がなくなり、寝ている時間が増える

歩行がふらつく、動きがゆっくりになる

 

福ちゃんの場合、初診時にはすでにこれらの症状が見られ、特に食欲低下と体重減少が顕著でした。血液検査の結果、腎不全の末期(ステージ4)と診断されました。

 

診断後の早急な対応

診断後は、病状の進行を少しでも抑えるために、以下の対応を行いました。

嘔吐のコントロール(制吐剤の投与)

食欲を回復させるための内服薬

皮下点滴の導入(水分補給と老廃物の排出を促進)

自宅でのケアの指導(投薬のコツ、食事管理)

 

これらの対応により、福ちゃんの嘔吐は完全に止まり、食欲も回復しました。とはいえ、腎臓病は完治する病気ではないため、継続的なケアが必要となります。

 

 

在宅緩和ケアへの切り替え

福ちゃんの腎不全がステージ4と診断された後、ご家族は動物病院への通院ではなく、在宅での緩和ケアを選択しました。

もともと福ちゃんはキャリーを見るだけで強く警戒し、通院が大きなストレスになってしまう猫でした。

そのため、ご家族は「最期までできるだけ穏やかに過ごさせたい」と考え、往診専門の動物病院に相談されました。

 

往診での診療開始

初診時、ご家族の希望として挙げられたのは以下の3点でした。

できる限り通院せずに、自宅で診療を受けたい

無理に延命するのではなく、苦痛を軽減してあげたい

投薬や皮下点滴など、在宅でできるケアを知りたい

 

これらの希望を踏まえ、まずは福ちゃんの状態を詳しく把握するために、以下の検査・処置を行いました。

血液検査(腎機能、貧血の確認)

超音波検査(腎臓の状態、尿路の異常の確認)

皮下点滴の実施(脱水の改善)

嘔吐のコントロール(制吐剤の投与)

 

また、ご家族が自宅で行えるケアについても丁寧に説明し、すぐに実践できるよう指導を行いました。

 

日々のケア:投薬と皮下点滴

腎不全の進行を抑え、福ちゃんができるだけ快適に過ごせるようにするため、在宅での投薬と皮下点滴が重要な役割を果たしました。

特に、福ちゃんのように通院が難しい猫の場合、いかにストレスなくケアを継続できるかがポイントとなります。

 

投薬の工夫

福ちゃんはもともと警戒心が強く、直接投薬するのが難しい猫でした。

そのため、ご家族と相談しながら、できるだけ負担を減らせる方法を取り入れました。

苦手な薬はできる限り除外し、飲みやすい薬に調整

投薬用のおやつやカボチャに混ぜて与える

食欲が低下した場合は、無理に薬を飲ませるのではなく皮下点滴へ切り替え

 

この方法により、福ちゃんはストレスを感じることなく投薬を続けることができました。

 

皮下点滴の導入

腎不全が進行すると、体内の水分バランスが崩れ、脱水が進行しやすくなります。

福ちゃんも診断時には脱水が進んでいたため、皮下点滴を導入することになりました。

 

皮下点滴の頻度と方法

初期は2日に1回の頻度で実施

ご家族が慣れてきた後、毎日夜の時間帯に実施

できるだけリラックスできる環境で行う

 

ご家族の生活リズムに合わせ、焦らずにできる時間帯(仕事後の夜)に皮下点滴を実施することで、福ちゃんも安心してケアを受けることができました。

 

ご家族が工夫したポイント
  • 最初は2人がかりで行い、慣れてきたら1人でもできるように練習
  • 点滴後にご褒美として好きな食べ物を与える

このような工夫を取り入れることで、ご家族も無理なくケアを続けることができました。

 

最期の1ヶ月の変化

福ちゃんは腎不全のステージ4と診断されてから1年半、自宅での緩和ケアを続けながら穏やかに過ごしていました。

しかし、最期の1ヶ月に入ると、少しずつ病状が進行し、ご家族も変化を実感するようになりました。

 

食欲の低下と体重の減少

これまで工夫しながら続けていた食事も、最期の1ヶ月になると徐々に食べる量が減っていきました。

好きだったウェットフードも口にする機会が減った

一度に食べる量が減り、少しずつつまむ程度になった

体重が減少し、筋肉量の低下が目立つようになった

腎臓病が進行すると、体内の老廃物が排出されにくくなり、食欲が落ちることがよくあります。

福ちゃんのご家族も、「何か食べさせなきゃ」と焦る気持ちがありましたが、「無理に食べさせることが福ちゃんにとって本当に良いことなのか」を一緒に考えながらケアを進めました。

 

歩行のふらつきと体力の低下

最期の1ヶ月では、歩行のふらつきも目立つようになりました。

トイレに行く途中で何度も休憩する

滑りやすい床では転倒することが増えた

普段の寝床から動かず、寝ている時間が増えた

 

ご家族は、福ちゃんの動きを見守りながら、トイレの近くに寝床を移動し、床には滑り止めマットを敷くなどの工夫をしました。

それでも福ちゃんは、最後まで慣れ親しんだトイレを使おうと頑張っていました。

 

呼吸状態の変化と酸素環境の準備

最期の1週間には、貧血も進行し、呼吸が浅く速くなることが増えてきました。

そのため、酸素室を準備し、苦しくなったときにすぐに対応できるようにしました。

福ちゃんが自分から酸素室に入ることはほとんどなかった

ご家族がそばについて、酸素を鼻先に吹きかけることで対応

平日は仕事のため、基本的には酸素室で管理

 

「酸素室を準備する=お別れが近いのかも」と感じてしまい、ご家族も最初は戸惑っていましたが、福ちゃんの呼吸を楽にしてあげるためにできることの一つとして、前向きに取り入れることができました。

 

呼吸のケア:酸素環境の整備

腎臓病の終末期では、貧血や脱水の影響で呼吸が浅くなったり、速くなったりすることがあります。

福ちゃんも、最期の1週間に入ると呼吸の状態が悪化し、ご家族と相談しながら酸素環境を整えることになりました。

 

酸素室の準備

まず、ご家族が在宅でできる対策として、酸素発生装置を導入しました。

酸素発生装置を1台設置

専用の酸素室を用意し、福ちゃんが落ち着ける環境を確保

ご家族が不在のときは、酸素室内で管理

 

しかし、福ちゃんは酸素室に入ることを嫌がり、自分のベッドで過ごすことを選びました。

そのため、ご家族が在宅のときは、鼻先に酸素を吹きかける方法を取りました。

 

酸素環境の工夫

ご家族と相談し、福ちゃんの負担にならないよう、できる限り自然に酸素を取り入れられるよう工夫しました。

窓際のベッドの近くに酸素チューブを設置

寝ている間に酸素が届くように調整

ご家族がそばにいるときは、手で酸素を鼻先に送る

 

酸素を取り入れることで、福ちゃんの呼吸は少し落ち着き、苦しそうな時間を減らすことができました。

 

ご家族の心の準備

「酸素を使う」という選択は、ご家族にとって「もうお別れが近いのではないか」という不安を抱かせることもあります。

しかし、酸素はあくまで「今、少しでも楽に過ごしてもらうためのケア」です。

福ちゃんのご家族も、最初は戸惑いながらも、できることを一つずつ取り入れていきました。

 

 

最期の1週間:福ちゃんとご家族の時間

福ちゃんの最期の1週間は、ご家族にとってかけがえのない時間となりました。

食欲がなくなり、動くことが少なくなっても、ご家族のそばで穏やかに過ごす姿がありました。

 

食事と水分摂取の変化

最期の1週間に入ると、福ちゃんはほとんど食事を摂らなくなりました。

お水は少しずつ飲むが、ご飯はほとんど食べない

無理に食べさせることはせず、好きなものをそっと差し出す

たまに興味を示して、ほんのひと口だけ食べることもあった

 

ご家族は、「食べてくれないことが不安」と感じながらも、無理に与えることはせず、福ちゃんの意思を尊重する選択をされました。

 

最後まで自分で歩こうとする姿

福ちゃんは最期の1週間、寝ている時間がほとんどでしたが、それでもトイレには自力で行こうとしました。

ふらつきながらも、トイレまで少しずつ歩く

途中で休憩を挟みながら、ゆっくりと進む

滑らないように床にはペットシーツと滑り止めマットを敷いた

 

ご家族は、福ちゃんの動きを見守りながら、できる限り手を貸さず、「自分でやりたい」という気持ちを尊重しました。

 

最後の夜:福ちゃんが選んだタイミング

福ちゃんは、ご家族が仕事で不在になる日を前に、旅立ちのタイミングを自分で選んだかのように、最期の時を迎えました。

翌日、ご家族は「福ちゃんが私たちを待っていてくれたのかもしれない」と話されていました。

出張の日を避け、家族全員が揃う日に旅立った福ちゃんの姿に、ご家族も「しっかりお別れを言う時間をくれた」と感じたそうです。

 

福ちゃんの旅立ちとご家族の想い

福ちゃんは、家族が揃う最後の夜に穏やかに旅立ちました。

その瞬間、ご家族は「ついにこの時が来たんだ」と静かに受け止めるしかありませんでした。

しかし、悲しみの中にも、「福ちゃんが最後まで頑張ってくれたこと」「しっかりと見送ることができたこと」への感謝の気持ちがありました。

 

福ちゃんが残してくれたもの

初めての在宅での看取りを経験したご家族にとって、福ちゃんの存在は何よりも大きなものでした。

通院がどうしても苦手だった中、それでも最期まで緩和できたことが、ご家族にとって、最後に福ちゃんにしてあげられた恩返しだと話されていました。

最期まで自分のペースで生き抜き、そして家族全員が揃ったタイミングで旅立ってくれたことに、感謝しかないとのことでした。

 

在宅での看取りを選んで

今回、ご家族は「できるだけ福ちゃんにとって負担の少ない最期」を目指し、在宅での緩和ケアを選択しました。

その決断が、福ちゃんにとっても、ご家族にとっても、後悔のないものになったと感じています。

最期の時間を大好きな家で過ごすことができた

無理に病院へ連れて行かず、穏やかに過ごせた

福ちゃんの気持ちを尊重しながらケアができた

 

ご家族は、「福ちゃんのために、最善の選択ができたと思います」と話されていました。

 

これから看取りを迎えるご家族へ

ペットの最期をどう迎えるかは、ご家族にとって大きな決断です。

病院での治療を続けるか、自宅で穏やかに見守るか、正解は一つではありません。

しかし、どの選択をしても、「その子が少しでも苦しくないように」と願う気持ちは共通しているはずです。

福ちゃんのご家族のように、「自宅で穏やかに看取りたい」と考える方も多いでしょう。

そんな時は、在宅緩和ケアという選択肢があることを思い出してください。

ご家族が後悔しないよう、一緒に考えていくことが大切です。

 

 

在宅緩和ケアを支えるわんにゃん保健室

私たち、わんにゃん保健室は、ペットが最期まで安心して過ごせるように、ご家族と一緒に在宅緩和ケアを支えています。

「病院に連れて行くのが難しい」「できるだけ自宅で看取りたい」——そんなご家族の想いに寄り添い、往診という形でサポートを行っています。

 

在宅緩和ケアでできること

病院への通院が難しくなったペットでも、ご自宅で適切なケアを続けることが可能です。

わんにゃん保健室では、以下のようなサポートを提供しています。

状態に応じた治療・ケアの提案(内服薬の調整、皮下点滴、栄養管理など)

ご家族ができるケアの指導(皮下点滴の方法、投薬のコツ、環境調整のアドバイス)

急な変化への対応(呼吸困難時の酸素環境構築、緩和ケアの進め方)

ターミナルケアのサポート(最期の時間の過ごし方、看取りの準備)

 

診療エリアについて

現在、わんにゃん保健室では、東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県の一部地域にて往診対応を行っています。

「在宅緩和ケアを考えている」「どのように進めればいいかわからない」といったお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

 

あなたと大切なペットのために

在宅緩和ケアは、ご家族が愛するペットの最期の時間を穏やかに見守るための選択肢のひとつです。

福ちゃんのご家族のように、「できるだけストレスの少ない環境で過ごさせてあげたい」と思われている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。

どんな小さなことでも構いません。私たちが、一緒に最適なケアの方法を考えていきます。

まずは、お電話またはお問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。

 

 

まとめ

福ちゃんのケースを通して、腎不全の最終段階における在宅緩和ケアの大切さをお伝えしました。

腎不全の進行に合わせた適切なケアが重要

食欲や歩行の変化に対して、無理のないサポートを

呼吸状態の悪化時には、酸素環境の準備を

最期の時間をご家族と共に過ごせるよう、ターミナルケアを検討

在宅緩和ケアは、ご家族の不安を軽減し、後悔のない選択につながる

 

大切な家族の一員であるペットが最期の時を迎えるとき、ご家族が安心して見守れるよう、わんにゃん保健室はサポートを続けていきます。

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犬猫の往診専門動物病院
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猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
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東京都足立区に住む高齢のご夫婦と17歳の日本猫マルちゃん。幼い頃に保護されて以来、マルちゃんはずっとご夫婦と一緒に穏やかな日々を過ごしてきました。警戒心が強く、人見知りなマルちゃんにとって、ご家族以外の人と接することは難しく、通院も避けてきたため、健康管理はご家族が注意深く見守ることで行われていました。

2022年10月、食欲の低下と多飲多尿の症状から往診のご相談をいただき、診療の結果、慢性腎臓病ステージ4と診断されました。進行性の腎不全であることから、ご家族は在宅での緩和ケアを選択。病気と向き合いながらも、マルちゃんが最後まで穏やかに過ごせるよう、ご家族と私たちが一緒に支えていくこととなりました。

この記事では、マルちゃんが迎えた在宅緩和ケアの日々から最期までの様子を振り返りながら、ペットの緩和ケアがもたらす安心感とその重要性についてお伝えします。

 

 

1. 診断から始まった在宅ケア:マルちゃんとご家族の決断

2022年10月25日、マルちゃんにとって初めての往診が行われました。それまで通院を避けていたご家族にとっても、往診は初めての経験でしたが、ホームページやインスタグラムを通じて当院を知り、「これなら安心できそう」という思いからご連絡をいただきました。

マルちゃんは、ここ数ヶ月で水を飲む量が増え、多飲多尿の症状が見られていました。しかし、警戒心が強く、家族以外の人にはなかなか心を許さない性格だったため、通院という選択肢は考えられなかったとのことです。

 

腎臓病ステージ4の診断

往診時の診察と血液検査の結果、慢性腎臓病ステージ4と診断されました。脱水症状もあり、削痩が進行している状態で、ご家族には「これからは、穏やかに過ごせる緩和ケアを中心に考えていきましょう」とお伝えしました。

診断を受けたご家族は、「何もしてあげられなかったのでは...」と自分を責めるような言葉を口にされました。しかし、「これまで一緒に過ごしてきた日々が何よりの愛情です」とお話しすると、ご家族も少しずつ緩和ケアの大切さを受け入れてくださるようになりました。

 

往診による緩和ケアのスタート

ご家族の希望はただ一つ、「マルちゃんが安心して穏やかな時間を過ごせること」。この気持ちに寄り添い、月に1回程度の往診を行いながら、まずは内服薬を調整して腎臓の負担を減らすことを目指しました。

ご家族の不安を和らげるために、マルちゃんの状態やケアの方針を丁寧に説明し、「自宅でのケアが思った以上に簡単だ」と感じてもらえるようサポートしました。

 

 

2. 初期ケア:内服薬と定期的な往診

マルちゃんの在宅緩和ケアは、内服薬を中心とした初期ケアから始まりました。ご家族の不安を軽減しながら、マルちゃんが負担を感じないようなケアを目指しました。

 

飲みやすさを最優先した内服薬の調整

腎臓病ステージ4のマルちゃんにとって、内服薬は腎臓の機能を少しでも補助し、体調を安定させるために欠かせないものでした。しかし、警戒心が強く人見知りのマルちゃんにとって、投薬は一筋縄ではいきません。

そこで、ご家族の負担を減らすために、投薬の工夫を徹底しました。飲みづらい薬はすべて外し、飲ませやすい薬だけを選択。また、投薬用のおやつやカボチャを利用し、マルちゃんが自ら薬を受け入れられる方法を見つけました。これにより、スムーズに薬を飲ませることができ、ご家族も「こんなに簡単なら続けられそう」と安心されていました。

 

月1回の往診での定期チェック

最初の頃は月1回の往診で、マルちゃんの状態を確認しました。血液検査を通じて、腎臓の数値や脱水の程度を把握し、薬の種類や量を調整。削痩の進行や脱水症状を見ながら、ご家族にケアのアドバイスを行いました。

この段階では、マルちゃんはまだ自力で食べたりトイレに行ったりすることができたため、特別な介助は必要ありませんでした。しかし、次第に腎臓の数値が悪化し、食欲の低下や疲れやすさが目立つようになっていきました。

 

ご家族と共に進めたケア

腎臓病が進行する中、ご家族は「無理をさせずにできる範囲で頑張りたい」との意向を示されました。月1回の往診では、マルちゃんの状態だけでなく、ご家族の気持ちにも寄り添いながら、ケアの方法を相談し続けました。

 

 

3. 皮下点滴の導入:緩和ケアの本格化

マルちゃんの腎臓病が進行し、腎機能の低下が顕著になった頃、BUN(血中尿素窒素)の数値が80を超えるようになりました。この段階から、在宅での皮下点滴を導入することとなりました。ご家族の手による皮下点滴のケアは、緩和ケアの大きな一歩となりました。

 

BUNが80を超えたタイミングで皮下点滴を開始

腎臓病の進行に伴い、体内に老廃物が蓄積し、脱水が進むことでマルちゃんの体調も徐々に悪化していきました。特にBUNが急激な上昇を見せた頃からは、腎臓の負担を軽減するための水分補給が重要になります。

皮下点滴は、体に必要な水分を直接補う方法で、脱水を改善し、老廃物の排出を助ける効果があります。この時点で点滴は2日に1回の頻度で実施することになりました。

 

ご家族への皮下点滴トレーニング

マルちゃんの性格やご家族の環境を考慮し、お母さんが一人で点滴を行えるよう、トレーニングを行いました。

  • ポイント1:安心感の提供
    初回は往診時に一緒に練習し、「これなら私にもできそう」と思っていただけるよう丁寧に指導しました。

  • ポイント2:マルちゃんの負担を軽減
    点滴時にマルちゃんが緊張しないよう、普段リラックスして過ごしている窓際のベッドで実施。事前に温めた輸液を使用することで、冷たさによるストレスを軽減しました。

  • ポイント3:実用的なアドバイス
    点滴中にマルちゃんが動いてしまわないよう、声かけや撫でるタイミングなど細かいアドバイスを行いました。

お母さんの努力と優しい手つきのおかげで、マルちゃんも点滴に慣れ、ご家族によるケアがスムーズに進められるようになりました。

 

皮下点滴による体調の安定

皮下点滴を導入したことで、マルちゃんの体調は一時的に安定しました。脱水が改善されたことで食欲が回復し、トイレにも自力で行ける日が増えました。ご家族も「点滴をすることで、マルが楽そうにしているのがわかる」と話し、日々のケアへのモチベーションがさらに高まりました。

 

 

4. 食欲の変化と寄り添うケア

腎臓病が進行すると、食欲不振は避けられない症状のひとつです。マルちゃんも徐々に食事の量が減り始めましたが、ご家族は「少しでも好きなものを食べさせてあげたい」と工夫を重ね、最期まで穏やかに過ごせるように努められました。

 

食欲が落ちたときの工夫

マルちゃんはもともと食事にこだわりが強い猫ちゃんでした。食欲が落ち始めた頃、ご家族はマルちゃんの好みを思い出し、特別なメニューを用意しました。

  • カボチャを柔らかく煮て、少量をペースト状にしたもの
  • 好物のウェットフードを少し温めて香りを引き立てたもの

これらの工夫により、マルちゃんは少量ずつでも食べてくれる日が続きました。「食べてくれるだけでホッとします」とご家族は嬉しそうに話していました。

 

最期の特別なご褒美:金目鯛の刺身

腎臓病の最期の段階では、猫が食べたがるものを優先することが大切です。マルちゃんも最期の1週間はほとんど食事を取らなくなりましたが、最終日の朝、ご家族が特別に用意した金目鯛の刺身を2切れも食べてくれました。

「最後にこんなに食べてくれるなんて」とお母さんは驚きと喜びで涙を浮かべていました。振り返って「今思えばエンジェルタイムだったのかもしれない」と話されていましたが、このエピソードはご家族にとってかけがえのない思い出となりました。

 

食事以外の穏やかな時間

食欲が完全に落ちてからも、マルちゃんは窓際のベッドで穏やかに過ごしていました。ご家族は湯たんぽで体を温めながら、そっと寄り添い、撫でたり声をかけたりしてマルちゃんが安心できるように努められました。

 

 

5. 最期の1週間:酸素室と窓際のベッドで穏やかに

マルちゃんが最期の1週間を迎える頃、腎臓病の進行により体力が大きく低下していました。動くことも少なくなり、ほとんどの時間を窓際のベッドで過ごしていました。それでも、ご家族はできる限りのケアを続け、穏やかで快適な時間を作ることに集中されていました。

 

呼吸状態の悪化と酸素室の準備

最期の1週間、呼吸が浅く荒くなってきたため、酸素室を準備しました。酸素発生装置を1台使用し、酸素濃度を保てる環境を整えましたが、マルちゃんは酸素室には入ろうとせず、窓際のベッドにいることを選びました。

ご家族は「マルちゃんが好きな場所で過ごせるのが一番」と考え、窓際の環境を快適に整えました。湯たんぽで体を温めたり、呼吸が楽になるよう酸素を直接ベッドの近くで吹きかけたりと、細やかな配慮を続けました。

 

トイレへのサポートと床環境の工夫

マルちゃんは最後の1週間も、トイレに行く努力を見せてくれました。自力で歩くことは難しくなっていましたが、少しでも自分でトイレに行きたいという意思を感じたご家族は、マルちゃんが安全に移動できるように床環境を整えました。

  • 滑り止めマットを敷いて足元が滑らないようにする
  • トイレの周囲にはペットシーツを敷き、失敗しても問題がないようにする

また、途中で倒れてしまうことも想定し、床にはクッション性のある素材を敷き詰め、マルちゃんが怪我をしないように配慮しました。「自分で歩いていこうとする姿が愛おしかった」とご家族は振り返ります。

 

ご家族の優しさに包まれた時間

最期の1週間、マルちゃんは食べることもほとんどなくなり、静かにベッドで横たわっていました。それでもご家族は、マルちゃんに寄り添い、撫でたり声をかけたりして、安心できる時間を作り続けました。

 

 

6. マルちゃんの旅立ちとご家族の思い

2024年6月3日、マルちゃんは窓際のベッドで、穏やかにその一生を閉じました。最期の瞬間まで、ご家族はマルちゃんに寄り添い、愛情に包まれた時間を過ごされました。

 

 

最後の朝

マルちゃんの最期の日、これまで1週間以上何も食べられなかったにもかかわらず、ご家族が特別に用意した金目鯛の刺身を2切れも食べてくれました。

「こんなにおいしそうに食べてくれるなんて、本当に嬉しかった」とお母さんは涙ぐみながら話されました。その姿は、ご家族にとって希望の光となり、最後の特別な思い出として心に残ったそうです。

 

最期の時

その日の午後、マルちゃんの呼吸は少しずつ浅くなり、窓際のベッドで静かに横たわっていました。ご家族はマルちゃんを抱きしめ、「ありがとう」「ずっと一緒にいられて幸せだったよ」と優しく語りかけていました。

そして、静かな時間が流れる中で、マルちゃんは最期の瞬間を迎えました。大好きなご家族に包まれながら、安らかな表情で旅立っていったのです。

 

ご家族から頂いた温かい声

ご家族は「マルちゃんが最期まで安心できる環境を整えてあげられてよかった」と話しておられました。「わんにゃん保健室さんにお願いして本当によかったです。最期の時間を穏やかに過ごせたのは、緩和ケアのおかげです」と感謝の言葉をいただきました。

看取りは悲しみと向き合う時間でもありますが、ご家族はマルちゃんと過ごした日々の温かさを胸に、少しずつ心を癒されていったようでした。

 

 

7. 在宅緩和ケアがもたらす安心感

在宅緩和ケアは、ペットとご家族が最後まで一緒に穏やかに過ごすための大切な選択肢です。マルちゃんとご家族のケースからも、その意義と効果が実感されました。

 

1. ペットが安心できる環境でケアを受けられる

通院が難しい猫ちゃんや、高齢のペットにとって、見慣れた自宅は最も安心できる場所です。マルちゃんも、窓際のベッドで穏やかな時間を過ごすことができました。酸素室や皮下点滴といった医療ケアも、ご家族が自宅で実施できるようにサポートすることで、マルちゃんがストレスを感じることなくケアを受けることができました。

 

2. ご家族の負担を軽減しながらペットと向き合う時間を確保

在宅緩和ケアでは、ご家族が無理をせずに日常の中でケアを行うことができます。マルちゃんのケースでは、お母さんが一人で皮下点滴を行えるようトレーニングを行いました。その結果、ケアの時間が負担になることなく、ご家族はマルちゃんと向き合う時間を大切にすることができました。

 

3. 最期まで寄り添う選択肢を広げる

緩和ケアの目的は「治す」ことではなく、「苦痛を和らげる」ことです。ご家族がマルちゃんとともに過ごした時間は、医療的なケアだけではなく、心のケアでもありました。「最後まで一緒にいられてよかった」と感じていただけたのは、在宅緩和ケアを選んだからこそ実現できたことです。

 

 

8. わんにゃん保健室の取り組み:安心の在宅緩和ケアを提供

わんにゃん保健室では、ペットとご家族が安心して穏やかな日々を過ごせるよう、在宅緩和ケアのサポートに力を入れています。マルちゃんのケースのように、ご家族の想いに寄り添いながら、ペットにとって最善のケアを提供することを心がけています。

 

東京都を中心に、安心の往診サービスを提供

当院は東京都足立区をはじめ、東京23区や周辺地域を対象に往診を行っています。ご家族の状況やペットの性格を考慮し、自宅での診療や緩和ケアを行うことで、通院が難しいペットやご家族の負担を軽減します。

 

初めての往診でも安心のサポート体制

初めて往診を利用するご家族の中には、「どんな診療が受けられるの?」と不安を感じる方もいらっしゃいます。当院では、診療前に詳しいヒアリングを行い、ご家族のご希望やペットの状態をしっかりと確認。緩和ケアの流れを丁寧に説明し、不安なくサービスをご利用いただけるよう努めています。

 

大切な時間を一緒にサポートします

緩和ケアは、ペットとご家族が共に過ごす時間を穏やかにするためのケアです。マルちゃんのように、自宅で大好きなご家族と最後まで過ごせることは、ペットにとって何よりの安心です。

「在宅緩和ケアを考えているけれど、どうしたらいいかわからない」とお悩みのご家族も、まずはお気軽にご相談ください。ペットとご家族が少しでも笑顔で過ごせるよう、わんにゃん保健室が全力でサポートいたします。

 

最期まで愛するペットと穏やかな時間を過ごすために、わんにゃん保健室がお手伝いします。診療エリアやサービス内容については、ホームページやお電話でお気軽にお問い合わせください。

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東京都練馬区で暮らしていたシュンくんは、11歳のラブラドールレトリバー。穏やかで優しい性格のシュンくんは、高齢のご夫婦と暮らしながら、日々を大切に過ごしていました。

2024年4月、いつも楽しそうに歩いていたシュンくんが、散歩中に立ち止まることが増え、息が荒くなる姿を見せ始めました。気になったご夫婦が動物病院で検査を受けた結果、進行性の腫瘍が見つかりました。

治療を進めるか、穏やかな時間を優先するか悩んだ末、ご夫婦は在宅緩和ケアを選択。シュンくんが安心して過ごせる環境を整え、ご夫婦とともに穏やかな最期を迎えるまでのストーリーを、実際のケア内容やご家族の話などを交えながらご紹介します。

 

 

1. シュンくんとご家族の日々と病気の兆候

シュンくんは、東京都練馬区に暮らしていた11歳のラブラドールレトリバーです。人懐っこく穏やかな性格で、特にお母さんのそばにいるのが大好きでした。ご家族にとってシュンくんは、家族そのものであり、日々の生活に欠かせない存在でした。

 

シュンくんとご夫婦の日常

ご夫婦は高齢ではありましたが、毎日シュンくんの散歩を日課として楽しんでいました。練馬区の緑豊かな公園や散歩道を一緒に歩き、シュンくんはいつも嬉しそうに尻尾を振っていました。

お母さんがキッチンで料理をしているときには足元でお座りし、お父さんが新聞を読んでいるときにはそばに寄り添って一緒に過ごす。そんな何気ない日々が、シュンくんとご夫婦にとってかけがえのない時間でした。

 

病気の兆候が見え始めた日々

2024年の春、シュンくんの様子に少しずつ変化が現れ始めました。散歩中に急に立ち止まり、歩くのをためらうような仕草を見せたり、帰宅後に疲れたように横になる時間が増えました。

「少し年を取ったのかな?」と当初は楽観的に考えていたご夫婦ですが、ある日シュンくんが散歩中に座り込み、息を荒げる姿を見せたことで心配が募りました。

 

動物病院での検査と診断

ご夫婦はシュンくんを動物病院に連れて行き、検査を受けました。診断結果は、進行性の腫瘍による胸腔内の転移。腫瘍が胸水貯留を引き起こし、呼吸が苦しくなる可能性が高いとのことでした。

「治療を進めるべきか、シュンくんが穏やかに過ごせる方法を考えるべきか…」と、ご夫婦は深く悩みました。このとき、治療ではなく在宅での緩和ケアを選ぶことを決意しました。

 

 

2. 腫瘍の診断と通院でのケア

シュンくんが進行性の腫瘍と診断された後、ご夫婦は治療とケアについて何度も話し合いを重ねました。動物病院での診療は、シュンくんの症状を緩和するための重要なステップでしたが、次第に通院そのものが大きな負担となっていきました。

 

病気の進行と診断結果

動物病院での検査の結果、シュンくんの腫瘍は胸腔内に転移しており、胸水の貯留が確認されました。この状態は、腫瘍が胸膜を刺激し、液体が溜まることで呼吸困難を引き起こすリスクが高いものでした。

病気が進行すると、胸水の抜去が必要になる頻度が増え、また呼吸を助けるための酸素環境の整備も重要になると説明を受けたご夫婦。治療を進めるよりも、シュンくんが安心して穏やかに過ごせる方法を模索し始めました。

 

通院中に行われたケアとその効果

最初の通院では、胸水抜去が行われました。この処置により一時的に呼吸が楽になり、食欲や活動量が回復したように見えました。

しかし、胸水は再び溜まる可能性が高く、定期的な検査と抜去が必要になると説明を受けました。また、内服薬による症状管理も併せて行うことになりました。

 

通院の負担が見えてきた頃

通院を重ねる中で、ご夫婦は次第にその負担を感じるようになりました。シュンくんを車に乗せて病院まで運ぶことは、年齢的にご夫婦にとっても負担が大きく、シュンくん自身も帰宅後に疲れ切った様子を見せることが増えました。

「もっとシュンが楽に過ごせる方法はないだろうか…」そう感じたご夫婦は、往診による在宅緩和ケアの可能性について調べ始めました。

 

 

3. 通院から往診へ:在宅緩和ケアへの切り替え

シュンくんの通院が重なるにつれて、ご夫婦はシュンくん自身の負担とともに、自分たちの体力的な限界を感じ始めました。そんな中、在宅緩和ケアという選択肢が浮上し、シュンくんが安心して穏やかな日々を過ごせる環境を整えるきっかけとなりました。

 

通院が難しくなった理由

シュンくんは比較的落ち着いて通院を受け入れていましたが、胸水抜去や診療後にはぐったりしてしまうことが増えていました。ご夫婦もまた、シュンくんを車に乗せる作業や病院での待ち時間に疲れを感じ、通院そのものが双方にとってストレスとなっていました。

特にシュンくんが疲労で息を切らしながら横たわる姿を見るたびに、ご夫婦は「この時間がもっと穏やかになれば…」という思いを強くされていたそうです。

 

在宅緩和ケアを検討したきっかけ

通院中に知った在宅緩和ケアという選択肢に、ご夫婦は興味を持ち始めました。そこで「シュンが家で診てもらえるなら」という期待から、往診専門の動物病院である当院に相談をいただきました。

ご自宅で診療を受けられることで、シュンくんのストレスを大幅に軽減し、さらにご夫婦自身も負担を減らせることが大きな決め手となり、在宅緩和ケアを始めることを決意されました。

 

在宅緩和ケアの始まり

初回の往診では、シュンくんの状態を詳しく確認し、ご家族と一緒に緩和ケアのプランを立てました。ケアプランでは以下の点を重視しました。

  • 定期的な胸水抜去のスケジュール作成
  • 呼吸をサポートする酸素発生装置の導入
  • 内服薬が難しくなった場合に備えた皮下点滴の準備
  • シュンくんがストレスを感じにくい環境作り

「シュンくんが家でのびのび過ごせるのが一番の喜び」というご夫婦の希望に沿って、在宅緩和ケアが本格的にスタートしました。

 

 

4. 在宅緩和ケアの実施内容

シュンくんが在宅緩和ケアを受け始めてから、ご自宅での生活は大きく変わりました。ストレスなく穏やかな時間を過ごせるよう、さまざまなケアが行われました。ここでは、シュンくんに対して具体的に行われたケア内容をご紹介します。

 

内服薬から皮下点滴への切り替え

シュンくんは病気が進行しても、比較的内服薬を受け入れてくれる子でした。しかし、胸水が溜まり始めて呼吸が苦しくなると、内服薬を与えること自体が負担となる可能性がありました。

ご夫婦には「内服薬を無理に飲ませることが呼吸を悪化させることもある」と説明し、必要な薬の一部を皮下点滴で投与する準備をしました。皮下点滴には輸液剤を少量加え、苦痛を最小限にしながら薬を体内に届ける工夫をしました。

 

呼吸をサポートする酸素環境の整備

シュンくんの呼吸を楽にするために、酸素発生装置を2台導入しました。ラブラドールレトリバーのような大型犬の場合、酸素ハウスを設置するのが難しいため、鼻先に酸素を吹きかける方法を採用しました。

酸素供給を安定させるために、風量やシュンくんの状態に合わせた運用方法を調整しました。特に胸水が溜まり始めて呼吸が荒くなったときには、酸素を直接鼻先に吹きかけることでシュンくんの負担を軽減しました。

 

食欲低下時のケアと栄養補助

腫瘍が進行するとともに、シュンくんの食欲が低下する日もありました。このようなときには、好きな食べ物を少量ずつ与えることで少しでも栄養を摂れるよう工夫しました。

また、ご夫婦に「シュンくんが自分のペースで食べられるよう見守ってください」とお伝えし、無理に食べさせることは避けていただきました。食べる楽しみを保ちながら、必要に応じて栄養補助食品を利用することで、シュンくんのエネルギーをサポートしました。

 

シュンくんの体調に合わせた細やかなケアは、ご夫婦の負担を軽減するとともに、シュンくんが安心して過ごせる環境を作ることに大きく貢献しました。

 

6. 最期の1週間:シュンくんの穏やかな時間

シュンくんが過ごした最期の1週間は、ご夫婦とシュンくんが穏やかに絆を深める特別な時間でした。この時期のケアは、呼吸や痛みを管理しながら、シュンくんができるだけ快適に過ごせるよう細心の注意を払いながら進められました。

 

呼吸と痛みの管理:最優先のケア

シュンくんは胸水が溜まりやすい状態が続いていました。往診時にはこまめに胸水の状態を確認し、必要に応じて抜去を行いました。このとき、シュンくんが苦痛を感じないよう、慎重に進めることを心がけました。

呼吸をサポートするための酸素発生装置もフル稼働しました。シュンくんは直接鼻先に酸素を吹きかけられることで、呼吸が落ち着き、リビングで安心して横たわる姿が見られました。

 

ご夫婦とシュンくんの特別な時間

最期の数日間、シュンくんは食事の量が減り始めましたが、ご夫婦が手で与えた少量のフードは受け取ってくれました。「いつも通りにシュンが少しでも食べてくれることが、本当に嬉しい」とお母さんは話していました。

また、お父さんはシュンくんがそばで寝られるようにリビングに布団を敷き、一緒に過ごす時間を増やしました。ご夫婦は「シュンと一緒にいられる今が何より大切」と話し、穏やかな日々を大切にされていました。

 

最後の日に向けた準備

ご夫婦には、最期の時間に向けてできる準備をお伝えしました。特に以下の点を共有しました。

  • 呼吸が荒くなったときの対処法
  • 痛みが強い場合の頓服薬の使用方法
  • シュンくんの体調がさらに変化したときの対応

「できる限りのことをしたい」というご夫婦の思いに寄り添いながら、最期の時間が苦しみの少ないものとなるようサポートしました。

 

 

7. シュンくんの旅立ちとご家族の思い

2024年の秋、シュンくんは穏やかに最期の時を迎えました。ご夫婦に見守られながら、自宅という安心できる場所で、苦しみの少ない静かな旅立ちとなりました。

 

最期の日

その朝、シュンくんの呼吸は浅くゆっくりとしたものになっていました。お母さんはシュンくんを抱きかかえながら「そばにいるよ、大丈夫だからね」と優しく声をかけ続けました。お父さんも隣でシュンくんの頭を撫でながら、ずっと見守っていました。

呼吸が止まる瞬間は、あまりにも静かで穏やかなものでした。ご夫婦は「こんなに静かな旅立ちができるなんて、夢にも思わなかった」と話されていました。

 

緩和ケアがもたらした安心感

シュンくんの旅立ちを迎えた後、ご夫婦は「シュンが穏やかに過ごせたのは在宅緩和ケアのおかげです」と感謝の言葉を口にされていました。

「通院ではなく自宅でケアを受けられたことで、シュンが最後まで安心できたのだと思います。私たちも、シュンと一緒にいる時間を大切にすることができました」とお母さんは振り返ります。

 

ご家族が感じた緩和ケアの価値

シュンくんの最期の時間は、痛みや苦しみを最小限に抑え、ご夫婦との穏やかな時間を大切にすることができました。「緩和ケアはペットのためだけでなく、私たち家族のためのケアでもあったと実感しました」とお父さん。

ご家族に寄り添いながら、ペットとその家族が共に過ごす最期の時間を支えることが、緩和ケアの最大の価値であると改めて感じた瞬間でした。

 

 

8. わんにゃん保健室が提供する在宅緩和ケア

わんにゃん保健室では、ペットとご家族が安心して穏やかに最期の時間を過ごせるよう、在宅緩和ケアを中心とした診療を行っています。シュンくんのように通院が難しくなったペットや、ご家族の心の負担を軽減したい方に寄り添ったケアを提供します。

 

ペットとご家族に寄り添うオーダーメイドのケア

ペットの状態やご家族の希望に応じて、個別のケアプランを作成します。具体的には以下の内容を柔軟に対応しています。

  • 定期的な往診とこまめな状態確認
    ペットの体調に合わせた診療スケジュールを組み、変化に迅速に対応します。
  • 自宅での酸素環境の構築
    呼吸をサポートするための酸素発生装置やその他の機器を導入します。
  • 皮下点滴や胸水抜去などの専門的なケア
    通院が難しいペットでも、在宅でできる範囲での診療を行います。

 

東京23区を中心とした往診サービス

わんにゃん保健室は、東京都内を中心に往診サービスを提供しています。特に東京都練馬区などのエリアで、多くのご家族から信頼をいただいております。ご自宅でケアを受けられることで、ペットのストレスが軽減され、ご家族も安心して見守ることができます。

診療エリアや往診の詳細については、お気軽にお問い合わせください。

 

後悔のない選択を一緒に

「最期の時間を穏やかに過ごしてほしい」「苦しみを少しでも和らげたい」という思いを持つご家族のために、わんにゃん保健室では一つひとつの診療を丁寧に行っています。

ペットが安心できる環境で、ご家族と笑顔で過ごせる時間を作ることが、私たちの使命です。どんな小さな不安でも、まずはご相談ください。

ペットとご家族が笑顔で過ごせる穏やかな日々を、私たちと一緒に作っていきましょう。

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犬猫の往診専門動物病院
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猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
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「ペットの緩和ケアって、具体的にどんなことをするんだろう?」

「治療をあきらめるということなの?」

こういった疑問をお持ちのご家族も少なくありません。緩和ケアは、ペットが病気や老化に伴う苦痛を軽減し、最期の時間を安心して過ごせるようにサポートするケアです。そして、それはペットだけでなく、ご家族の心の支えとなる重要な役割も果たします。

ペットが穏やかに過ごすことは、ご家族にとっても大きな安心感となり、「最期まで一緒にいられた」という実感を与えます。このブログでは、ペットの緩和ケアがどのようにペットとご家族を支えるのか、具体的な内容や事例を交えながらお伝えします。

ペットとの時間を大切にしたいと考えるすべてのご家族に向けて、緩和ケアという選択肢を知っていただければと思います。

 

 

1. ペットの緩和ケアとは:最期を穏やかに過ごすために

ペットの緩和ケアとは、病気や老化に伴う苦痛を和らげ、最期の時間を穏やかに過ごせるようにするためのケアです。ペット自身の体や心に寄り添うだけでなく、ご家族がその時間を悔いなく過ごせるようにサポートすることも、緩和ケアの大切な目的のひとつです。

 

病気や老化による苦痛を和らげるケア

病気が進行すると、痛みや呼吸困難、食欲低下など、ペットの生活に大きな負担がかかる症状が現れます。緩和ケアでは、こうした苦痛を少しでも和らげるために、以下のようなケアを行います。

  • 痛みを和らげるための鎮痛剤や皮下点滴の活用
  • 呼吸が苦しいときの酸素環境の整備
  • 食欲が落ちたときの特別な食事や栄養補助の工夫

これらのケアは、ペットが「その瞬間」を少しでも快適に過ごせるよう、病状や性格に合わせて柔軟に対応します。

 

ペットの「今」に寄り添うとは

緩和ケアの本質は、ペットが持つ「今」を大切にすることにあります。治療の延命効果を追求するのではなく、ペットが穏やかに、そして安心して過ごせる時間を最大限に引き出すことを目的としています。

例えば、治療のために負担が大きい検査や処置を繰り返すのではなく、ご自宅でペットがリラックスできる環境の中でケアを行うことで、ペット自身のストレスを軽減することができます。

ペットの緩和ケアは「治すこと」が目的ではありません。それでも、ペットが最期の時間を穏やかに過ごし、ご家族と安心して過ごせることを目指す、大切な選択肢です。

 

 

 

2. 緩和ケアでペットが得られる穏やかな時間

ペットの緩和ケアは、病気や老化による苦痛を軽減し、「穏やかな時間」を作るために行われます。緩和ケアを受けたペットは、身体的な負担が減るだけでなく、精神的にも落ち着きを取り戻すことができるのです。ここでは、緩和ケアがもたらす具体的な効果についてご紹介します。

 

痛みや苦しみを軽減する具体的な方法

病気が進行すると、痛みや苦しみがペットの生活に影響を与えます。緩和ケアでは、以下のような方法でこれらを和らげます。

  1. 痛みを抑える鎮痛薬や皮下点滴
    症状や病気の種類に合わせて、ペットができる限り快適に過ごせるよう、痛みを和らげる薬を使用します。内服薬が難しくなった場合には、皮下点滴で薬を投与することも可能です。

  2. 呼吸が苦しいときの酸素環境整備
    胸水貯留や肺への負担がある場合には、酸素発生装置を用いて呼吸を助ける環境を整えます。酸素濃度を保つことで、ペットが呼吸を楽に行えるようサポートします。

  3. 寝床や生活スペースの工夫
    ペットの体が楽になるように、寝床の素材や温度管理を工夫します。特に高齢のペットでは、床ずれや関節の負担を軽減するためのマットやブランケットが役立ちます。

 

呼吸が苦しいときの酸素環境整備

呼吸困難はペットにとって非常に辛い症状です。緩和ケアでは、酸素発生装置を活用して酸素環境を整え、ペットが呼吸しやすい状況を作ります。具体的には以下のような取り組みを行います。

  • 酸素発生装置の導入と運用
  • ペットの状態に応じた酸素濃度の調整
  • 鼻先に酸素を吹きかけるなどの負担が少ない方法の採用

これにより、ペットは呼吸の負担が軽減し、安らぎを取り戻します。

 

食欲が落ちたときのサポート

食欲低下は、病気が進行したペットによく見られる症状です。緩和ケアでは、食事をサポートするために以下のような工夫を行います。

  • ペットが好む特別な食事を用意
  • 水分補給がしやすい形での食事提供
  • 栄養補助食品や流動食の活用

これらの工夫によって、ペットは少量でも栄養を摂取でき、体力を維持しやすくなります。

 

ペットの緩和ケアは、痛みや苦しみを軽減し、穏やかで快適な時間を過ごせるようサポートするものです。

 

 

3. ご家族の心を支える緩和ケアの役割

ペットの緩和ケアは、ペットだけでなく、ご家族にとっても大きな支えとなります。病気や老化が進行し、ペットが苦しそうな姿を見ることは、ご家族にとって心の負担が非常に大きいものです。緩和ケアは、その苦しみを和らげ、ペットとの時間を大切に過ごせるようにするためのサポートでもあります。

 

ペットの苦しみを軽減することで心の負担を軽くする

ご家族が最も辛いと感じるのは、ペットが痛みや苦しみを感じているときです。緩和ケアでは、ペットの症状を客観的に捉え、適切な方法で苦痛を和らげます。

例えば、呼吸困難が起きた場合に酸素環境を整えることで、ペットが苦しそうな様子が和らぎます。このように具体的なケアを行うことで、ご家族も「ペットの苦しみを軽減できている」という安心感を持つことができます。

 

ご家族が「最期まで一緒にいられる」安心感

緩和ケアを受けることで、ペットが自宅で最期の時間を過ごすことができるようになります。通院や入院のストレスから解放され、慣れ親しんだ環境で穏やかに過ごすペットの姿を見ることは、ご家族にとっても大きな安心感につながります。

ご家族からは、「最期まで家で一緒にいられたことで、後悔がありません」というお言葉をいただくことが多くあります。この安心感は、在宅緩和ケアならではの大きなメリットです。

 

ペットとの時間を最大限に活用するために

緩和ケアでは、ペットとの時間をより大切に過ごせるようにサポートします。例えば、ペットがリラックスできる環境を整えたり、好きな食べ物を用意したりすることで、ペットが穏やかに過ごせる時間を増やすことができます。

さらに、緩和ケアを行うことで、ご家族は「今」という時間に集中しやすくなります。病気の進行に目を向けるだけではなく、ペットとの日々を楽しむことができるようになるのです。

 

緩和ケアは、ご家族にとって「ペットと共に歩む最後の時間」を支える重要な役割を果たします。

 

 

4. 緩和ケアでよくある誤解とその解消

緩和ケアに対して、「治療をあきらめることでは?」という誤解を持たれる方も少なくありません。しかし、緩和ケアはあきらめではなく、ペットとご家族が穏やかに過ごせる時間を作るための重要な選択肢です。ここでは、緩和ケアに対する誤解とその正しい理解について解説します。

 

「緩和ケアはあきらめではない」という考え方

緩和ケアの目的は、病気を「治すこと」ではなく、ペットが感じる苦痛を和らげ、最期の時間を穏やかに過ごせるようにすることです。

例えば、進行した腫瘍や老化に伴う症状では、治療の効果が期待できないこともあります。その場合でも、ペットが快適に過ごせる環境を整え、症状を管理することで、ペットとご家族が一緒に過ごせる大切な時間を作り出すことができます。

 

治療を継続しながらの緩和ケアも可能

緩和ケアは治療と完全に切り離されるものではありません。症状が軽減できる治療を併用しながら緩和ケアを行うことも可能です。

例えば、腫瘍が進行している場合には、抗がん剤を少量だけ投与することで症状を抑える治療を行いながら、痛みの緩和や呼吸のサポートを行うことがあります。このように、ペットの状態に応じて柔軟に対応するのが緩和ケアの特徴です。

 

緩和ケアを始めるタイミングとは?

緩和ケアは「治療がもうできない」と言われたときだけの選択肢ではありません。むしろ、以下のようなタイミングで始めることをお勧めします。

  • ペットの通院が難しくなったとき
  • 病状が進行し、症状がつらそうに見えるとき
  • ペットの負担を減らしてあげたいと思ったとき

早い段階で緩和ケアを取り入れることで、ペットとご家族がゆっくりと穏やかに過ごせる時間を増やすことができます。

 

緩和ケアは、ペットとご家族にとって大切な選択肢のひとつです。

 

 

5. 実際に緩和ケアを選択したご家族の声

緩和ケアを選択することで、ペットとご家族がどのような時間を過ごせるのか、具体的な事例を通じてご紹介します。緩和ケアを通じて得られた穏やかな時間や安心感は、多くのご家族にとって忘れられない大切な思い出となっています。

 

「家で穏やかに過ごせた」:猫の事例

心筋症を抱えていた15歳の猫ちゃんのご家族は、通院のたびにぐったりする愛猫の姿に胸を痛めていました。そこで往診での緩和ケアを選択。酸素発生装置や皮下点滴を使ったケアを中心に、ご自宅での診療を続けました。

「苦しい時間が減り、最期まで一緒にいられたことが本当に嬉しいです。愛猫がリラックスしている姿を見るたびに、緩和ケアを選んでよかったと思いました」と語るご家族。最後の時間まで、自宅で穏やかに過ごせたことが心の支えになったそうです。

 

「心穏やかに送り出せた」:大型犬の事例

ゴールデンレトリバーのロイくん(10歳)は、腫瘍が進行し、呼吸が苦しい状態が続いていました。ご家族は在宅緩和ケアを選択し、酸素発生装置の導入や頓服薬の指導を受けながら、ロイくんと向き合いました。

「緩和ケアを始めるまでは、不安と悲しみでいっぱいでした。でも、往診の先生が親身に寄り添ってくれたおかげで、私たちも冷静に対応できるようになりました。ロイが苦しむことなく、穏やかな顔で眠りにつけたのが何よりの救いです」と語るご家族の言葉が印象的でした。

 

「緩和ケアが支えとなった時間」

緩和ケアを受けたご家族の多くが、「自宅で過ごせる時間がペットとの絆を深める機会になった」とお話しされています。最期の時間を大切にすることは、ご家族自身の心の整理にもつながります。

 

 

6. 緩和ケアを支える往診サービスの価値

ペットが高齢や病気の進行によって通院が難しくなると、往診サービスによる在宅緩和ケアが大きな力を発揮します。通院のストレスや体力消耗を避け、ご自宅で穏やかに過ごせる環境を整えることが、ペットとご家族の負担を大幅に軽減します。

 

通院が難しいペットとご家族の負担を軽減

通院が難しいペットの場合、キャリーや車への移動だけでも大きなストレスとなります。特に大型犬の場合、体を持ち上げる作業や車への積み込みはご家族にとっても一苦労です。また、通院中の待ち時間や帰宅後のぐったりした様子を見て、心を痛めるご家族も少なくありません。

往診サービスでは、獣医師が直接ご自宅に訪問し、診療やケアを行うため、ペットは安心できる自宅で過ごすことができます。これにより、ペットのストレスを減らし、ご家族も安心してケアに集中できる環境を作ることができます。

 

ご自宅で行える診療やケア内容

往診による在宅緩和ケアでは、通院とほぼ同等の診療やケアを行うことが可能です。具体的には、以下のようなケアが含まれます。

  • 酸素発生装置や酸素環境の整備
    呼吸が苦しいペットに合わせた酸素供給を行います。
  • 胸水や心嚢水の抜去
    必要に応じて専門的な処置を在宅で行います。
  • 皮下点滴や頓服薬の投与
    内服薬が難しくなった場合の対応も可能です。
  • ご家族へのケア指導
    日常的なケアや緊急時の対応方法を丁寧にお伝えします。

 

ご家族とペットに合わせた柔軟なケアプラン

往診サービスでは、ペットの症状やご家族の希望に合わせて、柔軟なケアプランを作成します。緩和ケアにおいては、ご家族の心のサポートも重要な要素のひとつです。そのため、獣医師がペットの状態だけでなく、ご家族の不安や希望にも耳を傾けながらケアを進めていきます。

 

 

7. ペットの緩和ケアを検討するタイミング

ペットの緩和ケアは、病気の進行や高齢による体力の低下が見られるタイミングで考え始めることが大切です。「まだ大丈夫」と先延ばしにしてしまうと、緩和ケアを始めるタイミングを逃してしまい、ペットとご家族が苦しい時間を過ごすことにもつながりかねません。

 

病状が進行したとき

例えば、腫瘍や心臓病などの病気が進行し、以下のような症状が現れたときは、緩和ケアの検討を始めるサインです。

  • 痛みや呼吸困難が見られる
  • 食欲が落ち、体重が減少している
  • 活動量が減り、疲れやすくなった

これらの症状がある場合、治療の継続だけではなく、ペットが少しでも穏やかに過ごせるケアが求められます。

 

ペットの負担を減らしたいと感じたとき

ペットが通院を嫌がったり、移動中にぐったりしてしまう様子を見て「もっと楽に過ごさせてあげたい」と感じることがあるかもしれません。このようなとき、往診による在宅緩和ケアが非常に有効です。

通院が必要なくなることで、ペットが慣れ親しんだ環境でストレスを感じることなくケアを受けることができます。また、ご家族の負担も大幅に軽減されるため、ペットとの時間をより穏やかに過ごすことができるようになります。

 

ご家族が安心して選べるように

緩和ケアを検討する際には、獣医師との十分な相談が重要です。ペットの状態やご家族の希望を共有し、一緒に最適なケアプランを考えることで、後悔のない選択ができます。

緩和ケアは、ペットとご家族が最期の時間を穏やかに過ごせるための大切な手段です。「まだ早いかも」と思わず、少しでも気になることがあれば、ぜひ専門家に相談してみてください。

 

 

8. わんにゃん保健室が提供する緩和ケアの特徴

わんにゃん保健室では、通院が難しいペットとご家族のために、在宅緩和ケアを中心とした診療を行っています。ペットの最期の時間を穏やかに過ごせるよう、ペットとご家族の負担を軽減し、安心できるサポートを提供しています。

 

ペットの「今」と「これから」に寄り添う診療

わんにゃん保健室の在宅緩和ケアは、ペットの状態やご家族の希望に合わせたオーダーメイドのケアを特徴としています。以下のようなサービスを提供しています。

  • ペットの症状に応じた柔軟なケアプラン
    痛みの緩和や呼吸のサポートなど、病状に応じた具体的なケアを行います。
  • ご家族への丁寧な説明と相談
    ペットの状態をわかりやすく説明し、不安や疑問に寄り添いながら対応します。
  • 訪問時の細やかな診療
    酸素環境の整備や皮下点滴など、専門的な処置もご自宅で行うことができます。

 

東京23区を中心とした往診サービス

わんにゃん保健室は、東京23区を中心に往診サービスを提供しています。通院が難しいペットとご家族が、住み慣れた環境で安心してケアを受けられるようサポートしています。

特に、通院が困難な大型犬や高齢のペットにとって、自宅でケアを受けられることは大きなメリットとなります。診療に関するご相談や予約は、電話やウェブサイトの問い合わせフォームから受け付けています。

 

ご家族が笑顔で見守れる最期をサポート

緩和ケアの目的は、ペットとご家族が笑顔で過ごせる時間を作ることです。ペットが安心して穏やかに過ごせる環境を整え、ご家族が「一緒にいて良かった」と感じられる時間をサポートします。

「ペットの最期の時間を大切にしたい」とお考えの方は、ぜひわんにゃん保健室にご相談ください。一緒に最善のケアプランを考え、ペットとご家族の笑顔を守るお手伝いをさせていただきます。

お問い合わせはお気軽にどうぞ。ペットとご家族の安心できる時間を、一緒に作っていきましょう。

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ゴールデンレトリバーの男の子(8歳)を飼っている東京江戸川区在住のご夫婦から、こんな相談をいただきました。

「散歩が大好きだった子が、最近疲れやすくなって、呼吸も浅く速い気がします。検査をしてみたら、胸水が溜まっていると診断されました。これからの通院が難しくなりそうで、在宅でのケアができないかと考えています」

腫瘍が胸腔内に転移し、胸水貯留を繰り返す状況になると、通院そのものが犬にとって大きな負担になることがあります。特に大型犬は体重が重いため、移動させることが飼い主さん自身の負担も重なります。

この記事では、通院から在宅緩和ケアに切り替えたゴールデンレトリバーの実例をもとに、胸水貯留に対応するための具体的なケア方法や酸素環境の整備について詳しくお話しします。在宅緩和ケアは、ペットとご家族が安心して穏やかな時間を過ごせる選択肢の一つです。江戸川区をはじめとする東京23区での往診サービスに興味がある方にとっても、参考になる情報をお届けします。

 

 

1. 腫瘍の胸腔内転移と胸水貯留の発覚から在宅緩和ケアへの切り替え

ゴールデンレトリバーの男の子(8歳)は、東京江戸川区の河川敷を歩くのが大好きな、元気いっぱいの大型犬でした。しかし、ここ最近、散歩を途中で嫌がるようになり、帰宅後に息が荒くなることが増えました。さらに、伏せたまま立ち上がるのを躊躇する様子が見られるようになり、高齢のご夫婦は心配して動物病院を受診しました。

診断結果は「腫瘍の胸腔内転移」と「胸水貯留」でした。腫瘍が胸腔内に広がることで液体が溜まり、肺を圧迫して呼吸が苦しくなっていたのです。胸水は一度抜いても再び溜まることが多く、今後は定期的に胸水抜去が必要になるとのことでした。

 

通院のハードルが上がる大型犬の特性

大型犬の場合、歩行が困難になると一気に通院が難しくなります。車に乗せるだけでも、体重があるため高齢のご夫婦にとって大きな負担です。また、動物病院では待ち時間が長くなることもあり、犬が疲れてしまう様子を見ると「本当にこれが最善なのだろうか」と悩むようになりました。

ご夫婦が往診の選択肢を検討し始めたのは、動物病院での診察中に疲れ切って伏せている愛犬の姿を見たときでした。「これ以上無理をさせたくない」という思いが強まり、往診専門の動物病院に相談することを決意されました。

 

在宅緩和ケアを選択した理由

在宅緩和ケアでは、犬が自宅でリラックスした状態で診療を受けられるため、通院時のストレスが大幅に軽減されます。また、頻繁な胸水抜去や内服薬の調整も、往診なら負担を最小限に抑えて行うことが可能です。特に、大型犬では一度歩けなくなると移動そのものが難しくなるため、早めの段階で往診に切り替えることで、飼い主さんと犬双方の負担を減らせます。

ご夫婦は「自宅でケアが受けられるなら」と在宅緩和ケアを選択し、まずは胸水抜去や酸素環境の準備を中心にしたケアプランをスタートしました。

 

 

2. 在宅緩和ケア開始後の診療内容と環境整備

在宅緩和ケアを選択したロイくんとご夫婦は、初めての往診診療の日を迎えました。この診療では、ロイくんの現在の状態を細かく把握し、今後のケアプランを慎重に立てることが目標でした。

 

内服薬からのスタートと皮下点滴への準備

診療開始時、ロイくんはまだ自力で食事を取ることができていました。そのため、腫瘍性胸水を抑えるための薬や心臓の負担を軽減する薬など、内服薬を中心とした治療プランが導入されました。大型犬であるロイくんは、比較的内服薬を問題なく飲める状況にありましたが、同時に「今後内服が難しくなる可能性」についても説明を行いました。

ご夫婦には、「内服薬が飲めなくなった際に備えて皮下点滴を準備しておく」ことを提案しました。腫瘍症例の場合、最後の1週間ほどで内服から皮下点滴への切り替えが必要になるケースが多いため、あらかじめ皮下点滴の方法や薬剤の準備を進めることで、ご家族の不安を軽減することができました。

 

酸素環境の構築と工夫

胸水貯留による呼吸の負担を軽減するため、酸素発生装置を導入しました。ロイくんのような大型犬では、猫や小型犬のように酸素ハウスを作るのが難しいため、鼻先に酸素を吹きかける方法が採用されました。この方法では、酸素発生装置を2台使用し、風量を増やして効率よく酸素を供給します。

さらに、ご夫婦と相談しながら簡易的な酸素マスクをDIYで作成しました。段ボールを加工してロイくんの顔全体をカバーできるように工夫し、その中に酸素を送り込む仕組みを整えました。酸素環境の効果はすぐに現れ、呼吸が浅かったロイくんも、穏やかに息ができる時間が増えました。

酸素環境を整えることで、ご夫婦は「呼吸が苦しそうになっても対応できる」という安心感を持てるようになり、ロイくんと穏やかな時間を過ごすことができました。

 

 

3. 胸水貯留の進行と胸水抜去:ゴールデンレトリバーのケアの工夫

在宅緩和ケアを始めて数週間後、ゴールデンレトリバーのロイくんの胸水貯留が再び目立つようになりました。大型犬では、胸水が溜まると肺が圧迫され、呼吸が浅く速くなる「努力呼吸」の症状が現れます。この時期から胸水抜去を定期的に行うことが、ロイくんの生活の質を維持するための重要なケアとなりました。

 

胸水抜去のタイミングと頻度

初回の胸水抜去は、往診診療の際に実施しました。この処置では、細い針を胸に刺して溜まった液体を排出します。ロイくんの場合、約300mlの胸水が抜け、直後に呼吸が安定し、顔色も戻るほどの効果が見られました。

大型犬の胸水抜去では、猫や小型犬に比べて体格が大きい分、処置中の安定性が求められます。しかし、ゴールデンレトリバーのような痛みに強い犬種の場合、鎮静処置を行わずに実施できることが多いです。ロイくんも、処置中は大きな動きも見せず、穏やかに対応してくれました。

胸水抜去の頻度は、ロイくんの症状に応じて変化しました。最初は2~3週間に1回程度の頻度でしたが、症状が進行するにつれて週1回、最終的には2~3日に1回の処置が必要となりました。ご家族には「胸水が溜まるタイミングを見逃さないこと」が重要であると説明し、呼吸状態を常に観察するようお願いしました。

 

胸水抜去をスムーズに行うための工夫

胸水抜去は体への負担を伴うため、ロイくんの状態を確認しながら慎重に進めました。以下の工夫を取り入れることで、負担を軽減しながらケアを続けることができました。

  1. 診療前の準備
    酸素発生装置を稼働させ、処置前に十分な酸素を吸入して呼吸を安定させる。

  2. ご家族の協力
    ご夫婦には、ロイくんがリラックスできる環境を整えていただき、診療中も優しく声をかけてもらいました。

  3. 負担の少ない処置
    胸水抜去の際には、処置時間を短縮し、可能な限りストレスを与えないよう工夫しました。また、処置後には十分な休息時間を確保し、ロイくんの体力を回復させることを重視しました。

胸水抜去は、ゴールデンレトリバーのような大型犬の在宅緩和ケアにおいて重要な役割を果たします。処置が成功するたびに、ロイくんの呼吸が楽になる様子を見たご夫婦は「在宅ケアを選んで本当によかった」と感じたとお話ししていました。

 

 

4. 酸素環境の活用とゴールデンレトリバーへの対応方法

胸水貯留が進行し、呼吸が苦しくなる時間が増える中で、ロイくんの生活を支える上で欠かせなかったのが酸素環境の整備でした。大型犬であるゴールデンレトリバーには、小型犬や猫と異なる酸素管理の工夫が必要でした。

 

酸素発生装置の設置と工夫

ロイくんには酸素発生装置を2台導入し、十分な酸素供給が可能な環境を作りました。大型犬では、酸素ハウスのような閉じた空間を作ることが難しいため、鼻先に酸素を直接吹きかける方法を採用しました。

さらに、段ボールを加工してロイくんの頭部を覆える簡易的な酸素マスクをDIYで作成しました。このマスク内に酸素を送り込むことで、効率的に酸素濃度を高めることができました。また、ご夫婦には酸素装置の運用方法を丁寧に説明し、酸素濃度をモニタリングしながら調整する方法もお伝えしました。

 

大型犬に特化した酸素環境の注意点
  1. 風量の確保
    大型犬の肺容量に対応するためには、酸素発生装置の風量が重要です。ロイくんの場合、1台では不十分だったため、2台を並行稼働させました。

  2. 酸素濃度の調整
    鼻先に酸素を吹きかける方法では、吹きかける位置や方向によって濃度が変わるため、常に犬の状態を観察しながら適切な濃度を保つ必要があります。

 

ご家族のサポートで生まれた安心感

酸素環境を整えたことで、ロイくんは息苦しさが軽減し、呼吸が安定する時間が増えました。また、「呼吸が乱れたときにどうすればいいのか」をご夫婦が把握できたことで、不安も和らいだようでした。

「酸素があるだけで、ロイが楽になっているのがわかります。本当に助かりました」と、ご夫婦からもお声をいただきました。大型犬のケアには独自の課題がありますが、酸素環境を整えることでその多くを解決することが可能です。

 

 

5. ターミナル期に向けたケアとご家族の心構え

在宅緩和ケアが進む中で、ロイくんの状態は少しずつ変化していきました。胸水の貯留頻度が増え、内服薬を飲むのが難しくなってきたタイミングで、ご夫婦と一緒にターミナルケアへの準備を進めることになりました。この時期は、ロイくんが安心して過ごせるよう、ご家族の協力がこれまで以上に重要となりました。

 

最期の1週間で必要な準備

ロイくんのような大型犬のターミナル期では、以下の準備が特に重要です。

  1. スケジュールの調整
    「最期の時間を家族全員で見守りたい」というご夫婦の希望を受け、仕事や予定を調整していただき、ロイくんに寄り添う時間を確保してもらいました。

  2. 皮下点滴への切り替え
    内服薬が難しくなったロイくんには、皮下点滴での薬剤投与を開始しました。腫瘍症例の場合、水分補正が不要なことが多いため、少量の輸液剤を希釈液として使用し、負担を最小限に抑えました。この方法により、ロイくんは穏やかな状態を保つことができました。

  3. 酸素環境の強化
    胸水の再貯留が進む中、酸素発生装置の設定を見直し、より効率的に酸素を供給できるよう調整しました。特に呼吸が苦しそうなときには、酸素の吹きかけを強化するようご家族に指導しました。

 

ご家族の心構えとサポート

ターミナルケアでは、ペットと過ごす時間が限られていることを実感し、ご家族が不安や悲しみに押しつぶされそうになることがあります。そのため、この期間中は以下のようなサポートを行いました。

  1. 事実と感情を分けて考える
    「苦しいのはペット自身である」という事実を改めてご家族に共有し、その苦しみを軽減するための行動に専念していただくようにしました。

  2. 冷静さを保つアドバイス
    症状が現れた際には「今の状態で必要な対応」に目を向けてもらい、頓服薬や酸素の使い方など、具体的な対処法を冷静に実践してもらえるよう支援しました。

  3. 最期の時間を大切に
    「最期に何をしてあげたいか」をご家族と話し合い、ロイくんが好きだったおやつやリラックスできるアイテムを用意していただきました。この時間は、ロイくんが安心して過ごせるだけでなく、ご家族にとっても心に残るひとときとなりました。

 

ターミナルケアで感じたご家族の思い

「最初は不安ばかりでしたが、在宅緩和ケアのおかげで、ロイと最後まで一緒に過ごせたことに感謝しています」と、ご夫婦は話していました。ロイくんが最期まで安心して過ごせる環境を作れたことが、ペットとご家族双方にとって大きな支えになったようです。

 

 

6. ロイくんが過ごした最期の時間と在宅緩和ケアの総括

ターミナル期に入り、ロイくんの状態は徐々に穏やかな時間と厳しい時間が交互に訪れるようになりました。それでも、ご夫婦とロイくんが築いた在宅緩和ケアの環境は、最期まで大きな役割を果たしました。

 

最期の時間を穏やかに迎えるための準備

ロイくんの呼吸が浅くなり、胸水が再び貯留していることが確認されましたが、ご夫婦は無理に胸水抜去を繰り返すのではなく、酸素環境と皮下点滴でのケアを中心に進める選択をされました。この時期、ロイくんの負担を最小限に抑え、ご家族が寄り添える時間を大切にしました。

ロイくんの最期の数日間に行った主なケア:

  1. 酸素供給の強化
    呼吸が苦しい時間帯には、酸素発生装置をフル稼働させ、鼻先に酸素を吹きかける方法で呼吸を支えました。

  2. 頓服薬の使用
    必要に応じて、安定剤や鎮痛剤を皮下点滴で投与し、ロイくんが苦しまずに過ごせるよう調整しました。

  3. 穏やかな環境づくり
    ご家族にはロイくんの周りで穏やかに過ごしてもらい、彼が安心できるように優しく声をかけたり、リラックスできる音楽を流したりしていただきました。

 

2024年12月27日の朝、ロイくんは穏やかな表情のまま、ご夫婦に抱かれながら眠りにつきました。その場には、これまで支え続けてきたご夫婦と、ロイくんが好きだったおもちゃやおやつがそっと置かれていました。

最期の瞬間、ロイくんは大きな苦しみを見せることなく、ただ穏やかに呼吸が止まりました。その姿を見たご夫婦は、「ロイが安心して旅立てたことが何より嬉しいです」と語り、愛犬と最期まで共にいられたことに感謝されていました。

 

在宅緩和ケアがもたらした安心感

ロイくんが通院ではなく、自宅で最期まで過ごせたことで、ご夫婦は「在宅ケアを選んで本当に良かった」と感じていました。往診による在宅緩和ケアは、犬が慣れ親しんだ環境で過ごせるだけでなく、ご家族がペットとの絆を深める時間を持てる選択肢でもあります。

 

 

7. わんにゃん保健室が提供する在宅緩和ケアの特徴

わんにゃん保健室では、通院が難しくなったペットとご家族の負担を軽減するため、在宅緩和ケアを中心とした診療を行っています。特に、大型犬や高齢のペットの緩和ケアには、ご家族とペット双方の心と体に寄り添った対応が欠かせません。

 

通院が難しい大型犬に特化したケア

ゴールデンレトリバーのような大型犬は、通院が困難になることが多いため、往診による在宅ケアが非常に有効です。以下のような特徴を活かし、診療を提供しています。

  1. 酸素環境の整備
    呼吸が苦しいペットには、酸素発生装置や簡易的な酸素マスクを活用し、個々の状況に合わせた酸素供給を行います。特に、大型犬は鼻先への酸素吹きかけが有効であり、機器の運用方法も丁寧にご説明します。

  2. 胸水抜去や皮下点滴への対応
    胸水が貯留した際の抜去や、内服薬が難しくなった場合の皮下点滴の準備・実施も往診で対応可能です。鎮静や鎮痛処置を適切に用いることで、ペットの負担を最小限に抑えます。

  3. ご家族の心に寄り添ったアプローチ
    診療のたびに、ご家族の希望や心配を丁寧にお伺いし、ペットが穏やかに過ごせるプランを一緒に考えます。最後の瞬間まで後悔のないケアを目指して、サポートを続けます。

 

東京23区を中心とした往診サービス

わんにゃん保健室では、東京23区を中心に往診サービスを提供しています。通院が難しい状況にあるペットとご家族が、安心して在宅での緩和ケアを受けられるよう、必要なサポートを全てお届けします。

また、初めて往診を利用される方にも安心していただけるよう、診療内容や料金についてのご質問にも丁寧に対応いたします。

 

大切な家族との時間をサポートします

在宅緩和ケアは、ペットとご家族にとって、穏やかで安心できる選択肢です。通院が難しいと感じたら、無理をせずにご相談ください。わんにゃん保健室は、最後の時間まで寄り添い、ペットとご家族の絆を守るお手伝いをいたします。

お問い合わせは、お電話またはウェブサイトのフォームからお気軽にどうぞ。
ペットが安心して過ごせる在宅ケアを一緒に考えていきましょう。

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犬猫の往診専門動物病院
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ペットの病気が進行し、治療ではなく「今を穏やかに過ごすこと」を選ぶとき、ご家族は多くの不安や葛藤を抱えます。特に、猫の心筋症は進行性の病気であり、呼吸困難や胸水貯留といった症状が現れることがあり、通院そのものが負担になるケースも少なくありません。

この記事では、実際に心筋症を抱えた12歳の猫ちゃんが通院から在宅緩和ケアに切り替えた経緯を追いながら、具体的なケア内容や、在宅で得られる安心感についてお話しします。

ペットの「今」に寄り添う在宅緩和ケアは、治すことを目的とする医療とは異なり、ペットとご家族が一緒に穏やかな時間を過ごすための選択肢です。この記事が、同じように悩むご家族にとって少しでも参考になれば幸いです。

 

 

1. 心筋症の発覚と通院から在宅緩和ケアへの切り替え

12歳の健康診断で、猫ちゃんに心筋症が発覚しました。超音波検査と血液検査の結果、心臓に負担がかかりやすい状態であることが分かり、かかりつけの動物病院から「中央生存期間は3年程度」との説明を受けました。その日から、ご家族はできる限りのケアを始めました。心筋症を管理するための内服薬やサプリメント、食事管理がスタートし、当初は3ヶ月に1回の定期検査を行っていました。

最初の頃、猫ちゃんは通院にも慣れていて、特に問題なく動物病院に通えていました。しかし、心臓の数値が少しずつ悪化し、1ヶ月に1回の検査が必要になった頃から、通院後の疲れが目立つようになりました。キャリーケースに入れられると緊張し、帰宅後はぐったりして食欲が落ちることもありました。この状況を見たご家族は、通院による負担が猫ちゃんの状態を悪化させるリスクになると感じ始めました。

通院のたびに疲れ果てた姿を見るのは、ご家族にとっても辛いものでした。「もっと穏やかに過ごさせてあげられる方法はないか」という思いから、在宅緩和ケアへの切り替えを検討するようになりました。

在宅緩和ケアでは、通院のストレスがない状態で診療を受けられるため、猫ちゃんにとってもご家族にとっても大きな安心感があります。私たちの訪問診療では、まず初回の診察で猫ちゃんの状態を丁寧に確認し、ご家族と相談しながら、必要なケアを段階的に進めていくプランを立てました。

 

 

2. 在宅緩和ケア開始後の生活と診療

通院から在宅緩和ケアに切り替えた猫ちゃんは、自宅で穏やかに過ごせる時間が増えました。慣れた環境での診療は、猫ちゃんにとってストレスが少なく、ご家族にとっても安心できるものでした。

 

最初の診療では、全身状態を確認するための超音波検査を行いました。負担を最小限にすることを重視し、診療時間を短く設定しつつ、必要なデータをしっかりと収集しました。その後の診療でも、心臓の状態や呼吸の安定性を定期的に評価し、そのデータに基づいて内服薬やサプリメントの処方を調整しました。

 

内服薬の管理は、猫ちゃんの性格や状態に合わせてプランを組むことが重要です。ご家族の協力もあり、初期段階ではご飯に混ぜる方法で無理なく投薬を続けることができました。しかし、心臓の数値が悪化し始めた頃、呼吸状態の不安定さが目立つようになり、内服薬が負担となる可能性が高まったため、皮下点滴による薬の投与を開始しました。呼吸が苦しい猫ちゃんに無理に薬を飲ませることは逆効果となる場合もあるため、猫ちゃんの状態に合わせた柔軟なケアが求められます。

 

在宅緩和ケアでは、猫ちゃんが少しでも快適に過ごせる環境を整えることが重要です。私たちは、ご家族と相談しながら、自宅でのケア方法について細かくアドバイスを行いました。例えば、猫ちゃんがリラックスできる場所を確保し、静かで温度や湿度が適切な環境を作ることがポイントです。また、ご家族の希望や不安にも耳を傾けながら、日々のケアが無理なく続けられるようにサポートしました。

 

 

3. 胸水貯留の始まりと初期対応

在宅緩和ケアを始めてから半年後、猫ちゃんの呼吸状態に明らかな変化が見られました。呼吸が浅く速くなる頻呼吸や、お腹を大きく動かす努力呼吸の症状が目立ち始め、胸水貯留が疑われました。診察の結果、心筋症の進行による胸水貯留が確認され、早急に対応が必要な状況でした。

 

胸水が溜まると肺が圧迫され、酸素が十分に取り込めなくなるため、猫ちゃんにとって呼吸が非常に苦しくなります。この状況を緩和するため、初回の診療で胸水抜去を行いました。細い針を胸に刺して胸水を排出するこの処置は、猫ちゃんにとって負担がかかるため、慎重に鎮静と鎮痛を行いながら進めました。このとき、約50mlの胸水を抜去することができ、処置後は呼吸状態が大きく改善しました。

 

胸水抜去を行った後、呼吸の安定を維持するため、酸素環境の構築が必要になりました。酸素発生装置を設置し、猫ちゃんの状態に応じて酸素濃度を調整できる環境を整えました。酸素発生装置を導入することで、猫ちゃんが自宅で快適に呼吸を続けられるようになり、緊急時にも安心して対応できる体制が整いました。

 

胸水貯留は、心筋症が進行すると繰り返し発生することがあります。そのため、初回の胸水抜去後も定期的に診療を行い、胸水の量をチェックしながらケアプランを調整しました。2週間に1回だった胸水抜去の頻度は、猫ちゃんの状態が変化するにつれて徐々に増え、最終的には2~3日に1回の処置が必要となりました。

 

 

4. 酸素環境の構築と胸水貯留進行中のケア

胸水貯留が始まると、呼吸を楽にするための酸素環境が欠かせませんでした。私たちは、猫ちゃんの状態を見ながら酸素発生装置を導入し、細やかに運用方法を調整しました。  

 

酸素環境を整える際には、酸素発生装置を設置するだけでなく、猫ちゃんが快適に過ごせる場所を確保することが重要です。最初はリビングの一角に酸素ハウスを設置し、出入り自由にして猫ちゃん自身が入りやすい環境を作りました。呼吸がさらに苦しくなった段階では、酸素濃度を高めた密閉型の酸素室での管理に切り替えました。  

 

酸素発生装置の運用では、ご家族にも使い方を丁寧に説明しました。例えば、日中は酸素濃度を一定に保ちながら吹きかけで対応し、夜間は酸素ハウス内で管理する方法を採用しました。酸素濃度のモニタリングも行い、猫ちゃんの呼吸状態が安定する範囲を常に確認しながら運用を続けました。  

 

胸水貯留が進行する中、頻繁な胸水抜去が必要となる一方で、体力を消耗させないよう配慮したケアも重要でした。胸水抜去の頻度が2~3日に1回に増えた頃には、処置を無理なく続けられるように以下のような工夫をしました。  

 

1. 診療の際に必ず事前の鎮静と鎮痛を行うことで、猫ちゃんのストレスを最小限に抑える  

2. 胸水抜去後の休息時間を確保し、体力の回復を優先する  

3. 内服薬から皮下点滴への切り替えを進め、呼吸状態が悪化している猫ちゃんに負担をかけないよう調整  

 

ご家族の協力を得ながら、猫ちゃんが少しでも穏やかに過ごせる環境を維持しました。酸素環境と適切なケアによって、呼吸の安定が保たれた時間が多く、猫ちゃんも安心した様子を見せてくれることが増えました。  

 

 

5. ターミナルケアへの移行と最期の時間

胸水抜去の頻度が増え、2日に1回のペースになった頃、ご家族と相談しながらターミナルケアへの移行を進めました。この時期は、猫ちゃんにとってもご家族にとっても、大切な時間を穏やかに過ごすための準備期間でした。  

 

胸水が抜去した翌日には再び貯留が見られることが増えたため、頻繁な処置が猫ちゃんの体力を奪う可能性があると判断しました。そこで、ご家族と相談の上、酸素環境をさらに強化し、胸水抜去の間隔を少し広げる形を取りました。酸素濃度を調整しながら、猫ちゃんが楽に過ごせるよう配慮を続けました。  

 

ターミナルケアにおいて最も重要だったのは、猫ちゃんとご家族が心穏やかに時間を共有することでした。  

 

1. ご家族と猫ちゃんがリラックスして過ごせる空間を整えるため、酸素ハウスの位置をリビングの中心に設置し、常に目が届くようにしました。  

2. 呼吸が苦しくなる兆候が見られた際には、すぐに酸素濃度を上げるようご家族にお伝えし、適切に対応していただけるよう準備を整えました。  

3. 猫ちゃんが快適に過ごせるよう、必要に応じて鎮痛剤や安定剤を使用し、痛みや不安を最小限に抑えるよう努めました。  

 

最期の1週間は、猫ちゃんが自力で食事を取るのが難しくなりましたが、強制給餌は行わずに様子を見てあげることとしました。この時期、ご家族は「どんな選択が猫ちゃんにとって最善なのか」と悩む時間が多かったようです。しかし、最終的には「無理に処置を増やすのではなく、穏やかに過ごしてほしい」というご家族の希望に寄り添う形でケアを進めました。  

 

2024年12月27日、ご家族全員が見守る中、猫ちゃんは静かに眠りにつきました。最期の時間は呼吸も安定しており、苦しむ様子は見られませんでした。ご家族がそばで声をかけながら撫でていたことで、猫ちゃんも安心感に包まれていたように感じます。  

 

 

6. 在宅緩和ケアがもたらした安心と心の変化

在宅緩和ケアを選んだことで、ご家族と猫ちゃんにとって大きな変化がありました。それは「通院という負担から解放され、自宅で安心して過ごせるようになったこと」です。  

 

猫ちゃんが通院していた頃は、キャリーケースに入れるたびに緊張し、帰宅後にはぐったりと疲れてしまう姿を見るのが辛いとご家族はおっしゃっていました。しかし、在宅緩和ケアを始めてからは、慣れた環境で診療を受けることができ、猫ちゃん自身も穏やかに過ごせるようになりました。

 

ご家族は「自宅で診療を受けられるという選択肢があることを知り、もっと早く相談すればよかった」と振り返っています。また、獣医師と直接相談しながら、猫ちゃんの状態に合わせた柔軟なケアプランを立てることで、「これでいいんだ」という安心感を持ってケアに向き合えるようになりました。  

 

呼吸が苦しくなることが多かった猫ちゃんですが、酸素発生装置を導入したことで、日常的な安心感が大きく向上しました。酸素環境を整えることで呼吸が安定し、「いつでも適切なケアができる」という自信が、ご家族の心の負担を軽くしてくれたようです。  

 

最期の時間を穏やかに迎えることができたのも、在宅緩和ケアのおかげと感じています、とご家族はおっしゃっていました。猫ちゃんが苦しむことなく静かに旅立つ姿を見届けることができ、ご家族も心を込めて最期の時間を見守ることができたことに安堵の表情を浮かべていました。  

 

在宅緩和ケアは、ペットだけでなくご家族にとっても大きな安心感をもたらします。

 

 

7. わんにゃん保健室の在宅緩和ケア

わんにゃん保健室では、東京23区を中心に往診専門の在宅緩和ケアを提供しています。ペットが自宅で穏やかに過ごせるように、ご家族の不安や悩みに寄り添いながら、心のこもったケアを行っています。  

 

在宅緩和ケアは、通院が難しくなったペットや、緩和ケアを希望するご家族にとって、大きな助けとなる選択肢です。当院では、以下の特徴的なサービスを提供しています。  

 

1. ご家族に寄り添った柔軟なケアプラン

ペットの体調やご家族の希望に合わせて、個別のケアプランを作成します。内服薬や注射薬、皮下点滴などの医薬品管理を含め、最適な方法で対応します。  

 

2. 酸素環境の構築と運用サポート

呼吸困難を抱えるペットのために、酸素発生装置や酸素ボンベの導入をサポートします。使用方法の説明や状態に合わせた調整も丁寧に行います。  

 

3. 愛玩動物看護師とのチーム診療

獣医師だけでなく、愛玩動物看護師が同行することで、診療のサポートや保定などを適切に行い、ペットの負担を最小限に抑えます。  

 

4. 緊急時の相談と事前準備

急変時に備えたアクションプランを事前にご家族と共有します。特にターミナル期では、急な呼吸困難や食欲低下などに適切に対応できるよう、薬の準備や酸素運用を含めたサポートを行います。  

 

診療区域は東京23区全域をカバーしており、ペットの体調や緊急性に応じて迅速に訪問します。また、千葉、神奈川、埼玉の近隣地区までであれば、ご家族が少しでも安心してペットと過ごせるよう日程調整の上で訪問し、最善を尽くします。  

 

在宅緩和ケアについてお困りのことがあれば、まずはご相談ください。通院が難しい状態や、ペットの体調に不安がある場合、事前の相談を通じて最適なケアプランを一緒に考えさせていただきます。  

 

在宅緩和ケアやターミナルケアをご検討中のご家族様は、ぜひ一度わんにゃん保健室へお問い合わせください。

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