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猫の腎臓病は在宅緩和ケアが可能(2025年5月)

猫の慢性腎臓病は進行性の疾患であり、内服薬や皮下点滴などを含めた期的な管理が必要です。特に高齢の猫にとって、頻繁な通院は大きなストレスとなることがあります。本記事では、15歳7ヶ月の日本猫、ロッキーくんの症例を通じて、在宅での緩和ケアの可能性とその実践について詳しく解説します。

 

ロッキーくんの症例紹介

東京都中央区にお住まいの日本猫、15歳7ヶ月の去勢雄ロッキーくん。3年前にかかりつけ動物病院で腎不全と診断されました。診断当初は腎臓ケアのフードやサプリメントによる治療が中心でしたが、徐々に血液検査結果の悪化がみられ、血管拡張薬やラプロスの投与が開始されました。

さらに病状が進行するにつれ、皮下点滴が必要となり、通院回数も最初は週1回から週3回へと増えていきました。しかし通院後はぐったりして寝込んでしまう日が続き、ご家族は「これ以上の通院はストレスになる」と判断し、在宅緩和ケアへの切り替えを決断。当院へのご相談をいただきました。

初診ではこれまでの治療経過や現在のご様子、ご家族が希望する今後の診療方針を細かくお伺いするカウンセリングからスタート。特に呼吸状態の悪化が気になったため詳細に状況をお聞きすると、体重2.3kgのロッキーくんに対し1回150ml以上の皮下点滴を行っていたことがわかりました。

すぐに超音波検査(エコー検査)を実施したところ、胸水の貯留を確認。もともと心臓には問題がないと聞いていたものの、診察では心雑音も確認できました。このことから、腎臓病の管理に集中するあまり、循環状態の悪化に気づかず過剰輸液になってしまっていたと考えられました。

さらに動物病院の診療体制からも、多くの獣医師による引き継ぎの中でプランが固定化されていたリスクも考えられました。当時の体重は4.5kgあったため、当初の計画は理解できましたが、その後の体重変化に応じた見直しが行われていなかったようです。

このような経緯を経て、ご家族のご希望に沿いながらロッキーくんの在宅緩和ケアがスタートしました。現在は1回60mlの皮下点滴を1日2回、ご自宅で行っていただきながら、月1回の往診と血液検査で状態を管理しています。

初期の在宅緩和ケアと症状改善

在宅緩和ケアに切り替えた直後のロッキーくんは、呼吸状態が悪く全身のだるさも顕著でした。まずは過剰輸液による循環負担を軽減するため、皮下点滴の量を標準量に合わせ、1回60mlを1日2回に分けて投与するプランを立てました。

この変更により、呼吸の速さや努力性呼吸(肩で息をする動き)が徐々に改善。胸水の貯留も少しずつ減少傾向となり、ロッキーくん自身の活動性もわずかに回復していきました。

加えて、腎機能の安定化と心負担軽減のために、内服薬やサプリメントの種類・量も細かく調整。血圧管理や利尿のバランスも慎重に見ながら治療を進め、ご家族には日々の観察ポイント(呼吸数・食欲・体重・排尿量など)を共有しました。

通院の負担から解放されたことはロッキーくんにとって非常に大きく、ご家族からも「以前より目に見えて落ち着いた」「呼吸も楽そうで安心して過ごせるようになった」とのお声をいただきました。

在宅ケア開始から約2週間後には、食欲・元気ともに安定。腎不全に対する治療を継続しながら、ストレスの少ない生活環境を整えることができました。

 

在宅管理のメリットと課題

在宅緩和ケアに切り替えたことで通院ストレスから解放され、診療のストレスも最小限にすることができ、また日々の変化についても二人三脚で歩んでいけることも大きなメリットのようでした。指示は口頭のこともあれば、基本はメールでの指示となるため、ご家族にとっても、どんな指示だったかのか、相談結果などを忘れてしまった時に、文書に戻れるという安心感があったとのことでした。

課題としては急変時の対応です。緩和ケア〜ターミナルケア、そして看取りといった後半のステージでは、急変はつきものです。その時に、1.救急を対応してくれる動物病院に飛び込むか、2.自宅でできる範囲の準備をしておき対処する、の2択となります。

まだ緩和ケアに切り替えたばかりの頃であれば、1を選ばれることがほとんどですが、病状の進行とともに、2を選ばれることが多くなり、ターミナルケアでは、みんなが2を選択されます。

もし1を選ぶ場合には、すでにかかりつけだった動物病院にお願いすることが多いですが、別の動物病院が関与しているのであればうちは診ない、とする動物病院も多く存在するのが現実です。

このように、在宅緩和ケアに切り替えることによるメリットもあれば、デメリットも存在します。

また、往診と救急は相性が悪いということをご理解ください。

急変時の判断はご家族に委ねられるため、日頃からの方針決定や、担当の先生との意思疎通はしっかりと行っておきましょう。

 

皮下点滴の調整と安全な管理

腎不全管理において皮下点滴は非常に重要な手段ですが、過剰輸液による副作用にも注意が必要です。ロッキーくんのケースでも、当初は過剰な点滴量が原因で胸水貯留を起こしてしまいました。在宅緩和ケアでは、安全な範囲での適正な投与量と頻度の調整が不可欠です。

過剰輸液のリスク
  • 胸水貯留や浮腫による呼吸苦
  • 心雑音の発現や循環負荷増加
  • 腎不全以外の合併症リスク
安全な皮下点滴管理のポイント
  • 体重1kgあたり10〜30ml/回を基準に設定
  • 猫の状態に応じて分割での投与を選択
  • 注射部位や針の選択、衛生管理を徹底
ご家族と二人三脚の治療
  • 初回は往診時に点滴方法を丁寧に指導
  • 不安があればオンライン相談やメールでフォロー
  • ご家族の精神的な負担を最小限にしつつ継続治療をサポート

現在ロッキーくんは1回60mlを1日2回という少量・高頻度投与で、腎臓への負担を抑えながら安定した管理が続けられています。

 

血液検査と病状モニタリング

腎不全の管理において、定期的な血液検査による病状の把握は不可欠です。在宅緩和ケアにおいても、月1回の血液検査で状態をモニタリングし、適切な治療調整を行っています。

主な検査項目
  • BUN(血中尿素窒素)・クレアチニン:腎機能の評価
  • SDMA:早期の腎障害検出
  • リン・カリウム・ナトリウムなど
検査データに基づく治療調整
  • 皮下点滴量や頻度の見直し
  • リン吸着剤を含めた投薬内容の調整
  • 食事療法やサプリメントの再評価
ご家族への説明とサポート
  • 検査結果は丁寧にご説明し、ご家族と今後の治療方針を相談
  • 体重や食欲の変化なども併せて総合的に判断
  • 常に最新の状態を共有し、ご家族と二人三脚のケア体制を継続

ロッキーくんのケースでも、月1回の血液検査によって過剰輸液の早期発見ができ、その後の適正管理につなげることができました。

 

 

在宅緩和ケアの進め方と注意点

在宅緩和ケアは、ご家族と獣医師が密に連携しながら進めていきます。ロッキーくんのケースでも、ご家族が主体となり、適切な医療サポートを受けながら在宅でのケアを続けています。

ご家族への情報提供と教育
  • 皮下点滴の手技や注意点を事前にしっかり指導
  • 症状の変化や異常サインの早期発見方法を説明
  • 日常的なモニタリング項目(体重、食欲、排尿量など)の確認
在宅医療の安全確保
  • 過剰輸液や低血圧などのリスクへの注意喚起
  • 感染予防のための衛生管理方法の徹底
  • 緊急時に備えた体制や対応方法の指導を提供
ご家族と獣医師の連携
  • 日常の様子を定期訪問時に報告
  • 月1回の往診および検査結果による治療計画の調整
  • 疑問点や不安を随時相談できる安心の体制づくり

このように在宅緩和ケアは、ご家族の協力と獣医師のサポートによって成り立ち、ロッキーくんも現在まで良好なコントロールが維持されています。

 

 

急変時の対応と準備

慢性腎臓病の在宅緩和ケアでは、急な体調変化にどう対応するかが非常に重要です。ロッキーくんのご家族も、事前にしっかりと準備を行い、不測の事態に備えていました。

事前に備えておくべきこと
  • 急変時の症状やサイン(ぐったり、食欲不振、呼吸異常など)を理解する
  • 急変時に緊急で対応してくれる動物病院の連絡先を調べておく
  • 皮下点滴や薬の量や種類、投与量、投与間隔などを再確認
  • 状態の悪化が続く場合、ご家族の意向に応じて看取りの準備を進める

 

 

わんにゃん保健室の在宅緩和ケア

ロッキーくんのように、慢性腎臓病の在宅緩和ケアをご希望されるご家族のサポートを、わんにゃん保健室では積極的に行っています。

ご家族とのカウンセリング
  • 初診時に過去の治療歴や現在の状態を詳細にヒアリング
  • 今後の診療方針や目標を明確に設定
  • ご家族の意向を最大限尊重したプラン作成
在宅管理への具体的な支援
  • 皮下点滴や投薬のご家族への指導
  • 緊急時の判断のための家族会議のすすめ
  • メールを活用した継続的な相談体制
最期までのトータルサポート
  • 病状の変化に応じた診療内容の調整
  • ターミナルケアや看取りへの準備・支援
  • ご家族の不安や負担を軽減するための伴走支援

在宅緩和ケアでは、ご家族と動物病院の信頼関係と密な連携が最も重要です。わんにゃん保健室では、ロッキーくんのご家族のように、自宅で最期まで穏やかに過ごしていただけるよう全力でサポートしています。

 

まとめ

ロッキーくんは、慢性腎臓病という長い闘病を経ながらも、ご家族の愛情と努力によって、自宅で穏やかな時間を過ごすことができています。

  • 通院によるストレスから解放されることで、精神的・身体的な負担が軽減された
  • 適切な皮下点滴量と在宅モニタリングにより、病状のコントロールが可能になった
  • ご家族と獣医師が二人三脚で在宅ケアを継続できたことで、最期までの生活の質(QOL)が保たれた

慢性腎臓病は完全な治癒が難しい疾患ですが、ご家族の協力と在宅ケアの工夫次第で、ペットにとっての「穏やかな日常」を実現することができます。

わんにゃん保健室では、東京を中心に通院が困難となった猫ちゃん・わんちゃんのご家族のもとへ往診に伺い、在宅緩和ケアの選択肢をご提案しています。どんな小さなご不安でも、まずはお気軽にご相談ください。

猫の肺腫瘍と胸水の向き合い方(2025年5月)

猫の肺腫瘍は高齢猫に多く見られる疾患の一つであり、進行に伴って胸水貯留を引き起こすことがあります。胸水がたまると、猫は呼吸困難を訴えるようになり、食欲や活動性にも大きな影響を及ぼします。今回は、肺腫瘍による胸水貯留と向き合いながら、在宅での緩和ケアを選択された16歳の猫ちゃん、東京都江戸川区在住のキキちゃんのお話をご紹介します。

通院が困難となった今、どのような選択肢があり、胸水抜去は必須なのか、それとも他の方法で症状を緩和できるのか、ご家族様が取るべき行動と心構えをお伝えします。

目次

 

胸水がたまるということ

猫の肺腫瘍が進行すると、胸腔内に液体(胸水)が貯留することがあります。これは、腫瘍が肺や胸膜を圧迫・浸潤することで血液やリンパの流れが滞り、液体が溜まるためです。胸水の貯留が進行すると、肺が圧迫され、呼吸困難を引き起こすことがあります。

胸水がある時に見られる症状
  • 呼吸が速く浅くなる(呼吸促迫、尾翼呼吸、開口呼吸)
  • 安静時でも肩で息をするような動作
  • 食欲の低下、元気の消失
胸水がたまる原因
  • 肺腫瘍や胸膜腫瘍の進行
  • リンパの循環障害
  • 炎症による滲出液の産生増加
診断のために行う検査
  • 超音波検査(胸腔内の液体確認)
  • X線検査(肺の圧迫評価)
  • 血液検査(全身状態の把握)

猫の呼吸状態の異常に気づいたら、胸水の有無を含めた早急な評価が必要です。ご家族が気づく呼吸の変化が、命をつなぐきっかけになることもあります。

 

 

胸水抜去のメリットとリスク

胸水が貯留している場合、呼吸状態を改善するために胸水の抜去を検討することがあります。適切に胸水を抜去することで、肺の圧迫が軽減し、呼吸が楽になります。ただし、処置にはリスクも伴います。

胸水抜去のメリット
  • 肺が拡張し、呼吸が安定する
  • 食欲や元気の回復が期待できる
  • 苦しみを軽減できることで、ご家族の精神的負担も減少
胸水抜去のリスク
  • 抜去時の痛みと恐怖
  • 鎮静処置による呼吸抑制や循環不全
  • 大量の胸水を急速に抜去した場合の再膨張性肺水腫の可能性
在宅で抜去する場合の配慮
  • 状態の安定している時間帯に実施
  • 必要に応じた軽度鎮静を併用
  • 胸水抜去後の酸素管理を強化

胸水抜去は苦しみを取り除くための有効な処置である一方で、実施するかどうかはご家族の意向とその子の状態によって決まります。命をつなぐための選択肢の一つであると同時に、最期をどう過ごさせてあげるかを考える場面でもあります。

 

抜去しないという選択

胸水抜去は有効な対処法ではありますが、全ての症例において「必ず抜去すべき」とは限りません。猫の状態や性格、そしてご家族の希望によっては、抜去せずに緩和ケアを行うという選択肢もあります。

抜去を避ける理由
  • 重度の呼吸不全により鎮静のリスクが高い
  • 痛みによる強いストレスやトラウマ
  • 過去の経験から胸水抜去への強い拒否反応がある
代替手段としての治療
  • 利尿剤の増量(例:フロセミドなど)
  • ステロイドによる炎症抑制と腫瘍縮小の期待
  • 酸素濃度の管理強化(酸素発生装置・酸素ハウス)
在宅ケアに必要な準備
  • 高濃度酸素が維持できる環境整備
  • 状態の変化に応じた頓服薬の準備
  • こまめな呼吸数と様子のモニタリング

抜去を行わない場合でも、猫にとって「穏やかに過ごせる環境」を整えていくことは可能です。何がその子にとって最も苦痛の少ない道か、ご家族と共に考えることが在宅緩和ケアの本質です。

 

 

ご家族が選んだ緩和ケアとその工夫

ご家族は、「できるだけ苦しい処置を避けたい」「最後まで家で穏やかに過ごさせたい」という思いから、在宅緩和ケアという選択をされました。抜去を行わない代わりに、さまざまな工夫を重ねて呼吸状態の管理を行いました。

酸素環境の見直しと強化
  • 酸素濃度を高く保てるよう、酸素発生装置を1台追加
  • 密閉性の高い酸素ハウスの見直し
  • 猫が安心できる場所に酸素供給を集約(ベッドやお気に入りのスペース)
薬の調整による緩和ケア
  • 利尿剤の用量を調整し、胸水のさらなる貯留を抑制
  • ステロイドによる抗炎症作用と腫瘍の進行抑制
  • 鎮静や呼吸緩和を目的とした内服薬・注射薬のバランス調整
猫に寄り添った生活環境の整備
  • 酸素ハウスとトイレの距離を縮め、移動の負担を軽減
  • 床に滑り止めマットや低反発マットを敷き、動きやすくする
  • 好物の匂いを活用して、少しでも食欲を引き出す工夫

胸水抜去という選択をしない分、ご家族の工夫と努力で「穏やかな時間」を守っていく。その姿勢が、キキちゃんにとっての何よりの安心だったはずです。

 

 

最期の日の話

キキちゃんが旅立つ当日、ご家族はいつもと同じように朝のケアを行い、声をかけながら一日を過ごしました。呼吸は浅く早いものの、目を閉じて穏やかに横たわっていました。

酸素室の中で静かに寝ていたキキちゃんに、ご家族が「おはよう」と声をかけると尻尾と耳で反応を見せてくれ、お気に入りのウェットフードを鼻先に持っていくと、ほんの少しだけ舐めてくれたそうです。

午後に入り、呼吸がゆっくりになり、全身の動きも少なくなってきました。ご家族がそっと手を握っていたところ、一度だけお母さんの手をぎゅっと押し返してくれたとのことでした。

その後、軽くひきつけるような動きを数秒見せ、苦しむ様子もなく眠るように息を引き取ったとのことでした。

通院をやめると決めた時から、キキちゃんの表情が穏やかだったと話してくれました。きっとご家族の心が決まったことで、心の反応が穏やかになったことと、それがキキちゃんに伝わり、安心を与えられたんだと思っています。

動物も、そして人も、最後の時間をどう過ごせるかは、その一生を象徴する大切な時間です。キキちゃんのように、愛されながら、静かに、穏やかに過ごすこと。それが在宅緩和ケアの一つの理想です。

 

 

胸水抜去をしないという決断とその理由

キキちゃんの胸水貯留が確認された際、通常であれば胸水抜去を行うことで呼吸の改善が期待されます。しかし、胸水抜去には以下のようなリスクや負担が伴います。

  • 胸水抜去は肋骨の間に針を刺すため、大きな痛みを伴う
  • 鎮静処置が必要となるが、状態の悪い猫に対してはリスクが高い
  • 処置によるストレスやトラウマが残る可能性がある

これらの理由から、ご家族は胸水抜去を行わない選択をされました。代わりに、以下のような在宅での緩和ケアを進めました。

  • 利尿剤とステロイドの用量調整を行い、胸水の貯留を抑制
  • 酸素濃度を高めるために、酸素発生装置や酸素ボンベを追加設置
  • 内服薬を中止し、すべての薬剤を注射薬に切り替えて皮下点滴で投与

このようなケアにより、キキちゃんは呼吸状態が安定し、穏やかな日々を過ごすことができました。胸水抜去を行わないという決断は、ご家族とキキちゃんにとって最善の選択であったと考えられます。

 

 

在宅酸素療法の導入とその効果

呼吸状態が悪化したキキちゃんにとって、在宅酸素療法は重要な選択肢となりました。通院が難しい状態でも、自宅で酸素環境を整えることで、呼吸の補助が可能になります。

使用した酸素療法機器
  • 酸素発生装置(1〜2台)
  • 酸素ハウス
  • 必要に応じて酸素ボンベを追加導入

これらの機器を活用し、酸素濃度を安定的に維持することで、呼吸の苦しさを軽減しました。

設置と運用の工夫
  • 日の当たらない場所に酸素ハウスを設置し、温度が上がりすぎないようにする
  • 温度だけでなく湿度管理を併せて行い、快適な環境を維持
  • モニタリングにより、呼吸状態に合わせた酸素濃度の調整

ご家族と相談のうえ、無理のない運用方法を構築し、継続的なサポートを実現しました。

在宅酸素療法の効果
  • 呼吸促迫が改善し、落ち着いて横になる時間が増加
  • 食欲と元気が徐々に回復
  • ご家族が目の届く環境で見守れる安心感

キキちゃんにとって、在宅酸素療法は「安心して過ごせる時間」をもたらす大きな支えとなりました。

 

 

看取りを迎えるということ

キキちゃんの旅立ちは、ご家族にとって心に残る大切な時間となりました。通院という大きなストレスから解放され、自宅という安心できる場所で最期を迎えることは、猫にとってもご家族にとっても、穏やかな選択だったのだと思います。

在宅で看取るという決意
  • キキちゃんの呼吸が悪化したタイミングで、ご家族は通院を断念
  • 病院での処置を受けるよりも、自宅で寄り添いたいという強い思い
  • 在宅緩和ケアを選んだことへの後悔はなく、むしろ安心感があったとお話しされていました
最期の瞬間にできること
  • そばに寄り添い、優しく声をかける
  • 手を握ったり、背中を撫でたりといったスキンシップ
  • 呼吸が落ち着くよう酸素環境を保ち、静かな環境を整える

こうした「できること」を一つひとつ行っていただくことで、苦しさを最小限に抑え、穏やかな旅立ちへとつなげていくことが可能です。

在宅での看取りの意味
  • 病院という非日常ではなく、日常の延長にある時間で看取れる
  • 介護の時間を通じて、より深く絆を感じることができる
  • 最期の姿がトラウマになりにくく、後悔が少ない

キキちゃんの旅立ちが、悲しみだけではなく、「ちゃんとできた」という安堵と誇りに変わるよう、私たちは全力でサポートしています。

 

 

まとめ

キキちゃんは、肺腫瘍による胸水貯留や呼吸困難と向き合いながら、ご家族とともに在宅での時間を大切に過ごしてきました。

通院の限界を迎えたタイミングで在宅緩和ケアに切り替えたことで、治療の継続だけでなく、穏やかな生活と尊厳ある最期を実現することができました。

  • 肺腫瘍による胸水貯留には、在宅でも対応が可能なケースがある
  • 呼吸が苦しい状態でも、酸素療法や皮下点滴で負担を軽減できる
  • 通院が困難になっても、適切なケアと見守りで「穏やかな日々」を支えられる

呼吸の異変や日常の違和感を覚えた時、ご家族の気づきが命をつなぐきっかけになります。キキちゃんのように、ご家族に見守られながら、安心できる場所で穏やかに過ごすこと。

それが、私たちが目指す在宅緩和ケアのかたちです。

東京都江戸川区を中心に、通院が難しくなった猫ちゃん・わんちゃんのご家族のもとへお伺いしています。どんな小さな不安でも、どうか一度ご相談ください。

 

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〜犬猫の在宅緩和ケア専門〜
往診専門動物病院わんにゃん保健室
 
猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
電話番号:03-4500-8701(往診本部直通)
 
 
受付時間:10:00~19:00
休診日:不定休診療カレンダー
 
〒111-0036
東京都台東区松が谷3-12-4 マスヤビル5F
 
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東京都内を中心に在宅緩和ケアに特化した往診専門で診療を行っている「わんにゃん保健室」です。
当院は、犬や猫などのペットに特化した動物病院として、
ご自宅にお伺いし、その子に合った緩和ケア・ターミナルケアを提供しています。

「病院に連れて行きたいけれど、ペットがストレスを感じてしまう...」
「高齢で通院が難しい...」
「急な体調不良、でも家を離れられない...」

そんな時にこそ、私たちの往診がお役に立てます。
わんにゃん保健室では、毎日さまざまなご家庭のご事情に寄り添いながら、
ペット一匹一匹の年齢や性格、生活環境、ご家族の思いに合わせて診療を行っています。

"ご自宅でできる最善の医療"を一緒に考えることが、私たちのスタイルです。

今回は、実際に当院をご利用いただいた飼い主さまから寄せられたお声をご紹介します。

飼い主さまからのお声

【M様】

高齢の猫が腎不全になり、病院に点滴で通っていましたが、ストレスなのか帰宅後元気がなくなるのでどうにかストレスがかからない方法はないかと探したところ、こちらの病院と出会いました。
とても親切に説明をしてくれ、こちらが納得し理解するまで話をしてくれました。
診察後も普段通りご飯も食べてくれてとても感謝しています。
往診て凄いなと思いました。お願いして本当に良かったです。

【U様】

我が家の犬は要介護で、これまでかかった動物病院も良い先生でしたが、こちらの先生は圧倒的に良い先生です。

ペットの健康状態、飼い主の生活スタイルに合わせた方針を提案していただけます。室内レイアウトや点滴の仕方など、飼い主の不安への対応策を丁寧にご提案してくださいます。

また、とても言いづらかったんですが、家蔵みんなにもう一度説明をしてほしいと相談したところ、快く承諾してくださり、家族が揃う日程を先生の方から伺ってくれて、とても安心しました。本当にこんな先生いらっしゃるんだ...と思うくらい、とても面倒見の良い先生です。

通院型の動物病院では、私自身も疲弊しきっていたと思いますが、先生のおかけで人間側も生活を保てています。1回の診察費は高額ですが、個人的にはなんとなくで流されてしまう動物病院の診察よりも、いっぱい相談に乗ってくれる江本先生にお願いして本当によかったです。
先生のお人柄も明るくとても優しい方だと思うので、ペットも人間も負担が少ないと思います。緩和ケアで悩んでいる方には、江本先生を推薦したいです。

【N様】

病院に行けなくても自宅で病院と同様に治療をしていただけることに、感謝しています。初めてお願いした時は、発作を起こして激しく苦しむ姿を見るだけで、どうすることもできず絶望していた時に家に来て貰え本当に救われました。

今は2代目がお世話になっていますが、獣医の先生、看護師さん、全員プロ意識が非常に高く本当に頼もしいです。
とても仲が良く、明るく元気でエネルギッシュな方たちで、私もいつも元気をいただいています。常に相談にのってくださり、まずは動物の状態をきちんと教えてくださり、治療も出来ることと出来ないことをちゃんと教えてくださいます。

その上で私達、飼い主がどうしたいか?を良く聞いてくださり、みんなが幸せになれる治療方法を提案してくださいます。
安心して任せられるので、これからもずっとお願いしたいと思っています。

わんにゃん保健室よりメッセージ

往診だからこそできる医療があります。
わんにゃん保健室では、単に治療を行うだけでなく、ペットと飼い主さんの"心に寄り添うケア"を大切にしています。
最期までその子らしく生きられるよう、QOL(生活の質)を尊重した緩和ケア・ターミナルケアを実践しています。

ご自宅という安心できる環境の中で、その子にとって本当に必要な医療を、一緒に考え、寄り添いながら提供いたします。
私たちは、最期のその時まで、飼い主さまとペットのそばにいる存在でありたいと願っています。

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猫の肥大型心筋症と在宅緩和ケア(2025年4月)

心臓病を抱える猫にとって、「通院による負担」は病状を大きく左右する重要な要素です。特に、肥大型心筋症は進行とともに胸水貯留や呼吸困難を引き起こす可能性があり、病気自体の重症度だけでなく、日々のケアの在り方が予後を左右します。

今回ご紹介するのは、東京都内に暮らす13歳の日本猫・キキちゃん。かかりつけで心臓病と診断され通院を続けていましたが、ある日を境に、通院後の疲弊がひどくなり、薬も飲ませられなくなってしまいます。

ご家族は、治療をあきらめたのではなく、「別の形でのケア」を模索し、在宅緩和ケアへと舵を切りました。

このブログでは、キキちゃんがどのように在宅緩和ケアへ移行し、どのようなサポートを受け、そして最期を迎えたのかを記録としてまとめています。通院が難しい猫と暮らすご家族に、ひとつの選択肢として届くことを願っています。

目次

 

キキちゃんの心臓病発覚とその経過

心臓病の診断と通院による管理

キキちゃんは2022年4月、かかりつけの猫専門動物病院にて肥大型心筋症と診断されました。当初は元気・食欲ともに安定していたため、3ヶ月に1回の通院で心臓の検査と内服薬の処方を受けながら経過観察を行っていました。

病状の悪化と通院の限界

2024年10月、急激な体調悪化が見られ、ぐったりとした様子にご家族も強い不安を抱かれました。どうにか通院したものの、胸水貯留が認められ胸水抜去を実施。その後、内服薬を継続するも、食欲がなく投薬が難しくなり、通院後もぐったりとした状態が続いたため、「通院が限界」と感じるようになったとのことでした。

在宅緩和ケアへの希望とご家族の決断

通院によるストレスや体調悪化のリスクを避けたいという思いから、ご家族は在宅での緩和ケアを希望されました。Web検索で当院を見つけてくださり、「この子にとって一番穏やかな選択を」と、往診での在宅ケアへの切り替えを決断されました。

 

呼吸の悪化と在宅ケアの開始

初診時の評価と胸水の状況

往診初診は、胸水抜去から10日後でした。キキちゃんは玄関まで迎えに来てくれるほどの体力は残っていましたが、超音波検査では少量の胸水が確認されました。呼吸の状態を鑑みて、この日は抜去は行わず、経過観察としました。

投薬方法の変更:皮下点滴への切り替え

ご家族からの「口を開けるだけで呼吸が乱れてしまう」という訴えを受け、すべての内服薬を中止し、注射薬を希釈した皮下点滴への変更を決定しました。これにより、投薬時のストレスを最小限にしながら治療を継続する体制を整えました。

在宅酸素環境の整備

初診時に酸素発生装置1台と酸素ハウスを導入し、呼吸補助を行いました。在宅酸素環境は、呼吸状態の安定に重要な要素であり、以後の診療でも環境強化を適宜行っていく方針としました。

 

在宅ケアでの安定期

内服中止後のキキちゃんの変化

皮下点滴への切り替え後、キキちゃんは徐々に食欲と元気を取り戻し、ご家族の目にもはっきりとした改善が見られました。内服のストレスが軽減されたことで、体への負担も大きく減ったと考えられます。

再診時の胸水減少と呼吸安定

初診から1週間後の再診では、胸水はほとんど認められず、呼吸状態も落ち着いていました。この結果を受け、診療間隔を2週間に1回とすることに決定しました。

穏やかな日常の再構築

この間、キキちゃんはお気に入りの窓辺のベッドで過ごし、ご家族とゆったりとした時間を取り戻していました。治療の効果と在宅環境の整備が、安定した時間を作る大きな要因となりました。

 

 

胸水再貯留とその対応

4ヶ月後の状態悪化

安定していた在宅ケアから4ヶ月が経過した頃、キキちゃんの呼吸状態が再び悪化。再診を前倒しで実施したところ、超音波検査で胸水の再貯留が確認されました。

在宅胸水抜去と鎮静処置

猫ちゃんは胸水抜去の際に強い不安やストレスを感じやすいため、軽度の鎮静をかけて処置を実施しました。こうすることで、処置へのトラウマを軽減し、次回以降のケアをスムーズに行うことが可能になります。

酸素環境の再構築

呼吸状態をさらに安定させるため、酸素発生装置を追加でもう1台設置し、酸素ボンベの併用も開始。必要に応じて酸素濃度を調整できるようにし、安心して過ごせる環境づくりを強化しました。

 

 

頻回な胸水抜去と症状の変化

1週間ごとの胸水抜去

キキちゃんはその後、1週間に1回のペースで胸水の抜去が必要となる状態が続きました。抜去後は一時的に呼吸が落ち着くものの、数日で再び呼吸促迫が見られるようになってきました。

呼吸の安定が得られない状況

4回目の胸水抜去後には、抜去後も呼吸状態がなかなか安定せず、これまでの経過とは異なる反応が見られました。この段階で、胸水以外の要因による呼吸不全の可能性を疑いました。

胸水がないのに呼吸困難

再度3日後に往診を実施し、超音波検査を行ったところ、胸水はほとんど貯留していませんでした。これは、末期の肥大型心筋症においてよく見られる症状であり、胸水がそんなに溜まっていなくても呼吸困難が継続する状態でした。

 

 

最期の夜と静かな旅立ち

お母さんとの最後のふれあい

その夜、キキちゃんはお母さんの手をペロペロと優しく舐めてくれました。それはまるで、「ありがとう」と伝えているような仕草だったとのことでした。その仕草に、お別れを感じ取ったとのことで、何も不安はなかったとのことでした。呼吸は浅くなりつつも、穏やかな表情を見せてくれていたそうです。

静かで穏やかな最期

明け方、キキちゃんは一瞬だけピクピクと痙攣のような動きを見せた後、大きくばたつくことなく、静かに眠るように旅立ちました。お母さんがそばにいてくれたことが、キキちゃんにとって何よりの安心だったことだと思っています。

最期を一緒に過ごせた

通院の負担を減らし、家で過ごす時間を大切にした選択は、キキちゃんにとっても、ご家族にとっても、かけがえのない時間だったのことでした。あの状態で通院させていたら、途中の車の中で、または病院で亡くなっていたかもしれないので、それだけは絶対避けたかったことだったとのことで、「家で見送れてよかった」というお母さんの言葉を受け、これが在宅緩和ケアの最大の意義であると、改めて思えました。

 

 

在宅緩和ケアでできること

通院に代わるケアの実現

通院が困難になったキキちゃんにとって、往診による在宅緩和ケアは大きな安心につながりました。検査・処方・処置をすべてご自宅で実施できるため、負担の少ない医療が実現できます。また、もう通院に伴うストレスをかけないでいいんだというご家族の精神的な安定が、キキちゃんの状態安定に繋がったんだと思います。ご家族の心の安定が、犬猫に及ぼす影響は、緩和ケアの時期にはかなり大きいと感じています。

酸素環境や注射薬での管理

酸素発生装置や酸素ハウスの設置、必要に応じた薬剤の皮下投与など、病院と同等の環境を自宅で整えることが可能です。特に心疾患を抱える猫にとって、呼吸をサポートする環境は今を少しでも楽に過ごさせてあげるための鍵になります。酸素環境を徹底することで、苦しいはずの時間を少しでも穏やかに過ごさせてあげることが可能であり、もしかすると、またご飯を食べてくれるかもしれないという期待を持てるかもしれません。

ご家族の心の準備を支える

在宅緩和ケアでは、医療面だけでなく、ご家族の心のサポートも大切にしています。今後の変化について丁寧に説明し、心構えを共有することで、急な変化にも落ち着いて対応できるよう支援しています。ご家族の病気への理解、そして家族としての方針決定などが、緩和ケアではとても大切です。

 

 

看取りからお別れまで

最期の時間をどう過ごすか

キキちゃんは、お母さんの見守るなか、静かに最期の時を迎えました。胸水貯留がないにもかかわらず呼吸状態が改善しないという状況は、心筋症の終末期のサインの一つです。苦しさを最小限に抑え、静かに息を引き取ることができるよう、医療と環境の両面からサポートしてきました。

家族にしかできないサポート

最期の瞬間にそっと手を舐めてくれたキキちゃん。その行動は、ご家族との絆の深さを物語っていました。ご家族の存在こそが、キキちゃんにとって何よりの安心であり、痛みを超えて心を癒す力となります。いつものように話しかけ、撫でてあげることで、愛犬、愛猫の不安が少しでも和らぎ、苦痛緩和につながるようです。これは、ご家族にしかできない、最後のケアです。

わんにゃん保健室ができること

当院では、症状に応じた医療サポートはもちろん、看取り後のご相談やご葬儀の案内など、最期のその先までを見据えたサポートを提供しています。「苦しませたくない」「穏やかに送り出したい」という想いに寄り添いながら、最期の時間を家族らしく過ごしていただけるよう尽力いたします。

 

愛犬、愛猫の穏やかな最期のために、在宅緩和ケアをご希望される場合には、当院までご連絡ください。

 

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〜犬猫の在宅緩和ケア専門〜
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肺腫瘍の犬の在宅胸水抜去(2025年4月)

肺腫瘍は犬にとって決して珍しい病気ではなく、特に高齢の大型犬では、徐々に進行する呼吸器の異常として現れることが多くあります。今回ご紹介するのは、ゴールデンレトリバーのマコトくん。肺腫瘍と診断されてから半年後、呼吸状態の悪化とともに胸水の貯留が見られ、在宅緩和ケアという選択肢に切り替えました。胸水抜去を通じて、苦しみを最小限に抑えながら、最期の時間をご家族と共に穏やかに過ごしたその記録をお届けします。

 

肺腫瘍と診断されたゴールデンレトリバーの最後の1ヶ月

マコトくんは、12歳のゴールデンレトリバーの男の子です。2024年9月、かかりつけの動物病院にて「肺腫瘍」と診断されました。はじめは特に目立った症状もなく、通院しながら内服薬を服用し、日常生活を続けていました。

性格は穏やかで、ご家族と一緒にいる時間が大好きな子でした。ご飯もモリモリ食べるタイプで、食欲が落ちることはほとんどなく、少し息が荒くなっても気にせずに過ごしていたそうです。

しかし、診断から半年が経った2025年3月、急に様子が変わり始めました。食欲が突然落ち、呼吸も早く浅くなってきたため、ご家族が再度病院へ連れて行くことを決意。その時、胸水が多量に貯留していることが判明しました。

 

通院での緩和ケアのはじまり

肺腫瘍の診断を受けた後、マコトくんはかかりつけの動物病院で通院しながらの緩和ケアを続けていました。幸いにも、診断直後の状態は安定しており、無理のない範囲での通院が可能でした。

食欲旺盛だったマコトくんは、内服薬もご飯に混ぜれば問題なく摂取できていました。ご家族も薬の管理をしっかりと行い、日々の体調を細かく観察することで、症状の進行にいち早く気づけるよう心がけていました。

当時のマコトくんは、息が少し荒くなることがあっても、お散歩を楽しみ、日常の生活を自分のペースで送っていました。肺腫瘍という厳しい診断を受けても、ご家族と一緒に過ごす日々が、穏やかに流れていたのです。

ただ、この時期から、少しずつ「呼吸の変化」に注意が必要となってきていました。肺腫瘍が進行する中で、胸腔内に水が貯まることは、よく起こることです。

 

呼吸状態の急変と胸水の貯留

肺腫瘍の進行に伴い、マコトくんの体調に大きな変化が現れたのは2025年2月下旬のことでした。元気や食欲があったにもかかわらず、急に呼吸が浅く、速くなり、見た目にも苦しそうな様子が目立つようになってきました。

ご家族は、すぐにかかりつけの動物病院を受診し、超音波検査(エコー検査)を実施。その結果、胸腔内に多量の胸水が貯留していることが判明しました。肺腫瘍が進行することで、肺から胸腔に滲出液が漏れ出し、呼吸機能を圧迫していたのです。

その場で胸水抜去を実施することになり、マコトくんはゴールデンレトリバーという犬種の特性もあって、鎮静処置を行わずに処置を受けることができました。この時、抜去された胸水は1500mlにも及び、処置後には呼吸がかなり楽になった様子が見られました。

しかし、ご家族にとって印象的だったのは、処置後の帰宅時のマコトくんの姿でした。行きよりも状態は改善していたとはいえ、大きな負担を抱えての移動であることは明らかでした。この経験を経て、ご家族は「今後は自宅でできる限りのケアを」と考えるようになり、在宅緩和ケアへの切り替えを検討し始めたのです。

 

在宅緩和ケアへの切り替えと準備

病院での胸水抜去の後、ご家族は移動中のマコトくんの苦しそうな様子に心を痛め、通院に限界を感じ始めました。「このまま通院を続けるのではなく、自宅で穏やかに過ごさせてあげたい」というお気持ちから、在宅緩和ケアが可能な動物病院を探され、当院へご連絡をいただきました。

初診は2025年3月3日。ご自宅の玄関まで尻尾を振って迎えてくれたマコトくんの姿は、まだまだしっかりとした力を感じさせてくれるものでした。身体検査とエコー検査を実施した結果、再び胸水の貯留を確認しましたが、すぐの抜去は行わず、あえて日程を調整し、最も苦しくなる直前で胸水抜去を実施するようにスケジュールを組むことにしました。

また、このタイミングで処方の見直しを行い、鎮咳薬や鎮痛薬を強めに加え、呼吸の快適さを保ちつつ、痛みや不快感をできる限り抑えることを目指しました。マコトくんの状態、性格、ご家族の希望をすべて踏まえて、在宅緩和ケアに向けた最初の一歩を踏み出したのです。

 

在宅での胸水抜去とマコトくんの反応

初診から4日後、予定通りマコトくんの2回目の胸水抜去を在宅で実施しました。ご自宅という安心した環境で、移動のストレスもなく落ち着いた様子で処置に臨むことができました。この時の抜去量は1380ml。抜去後、呼吸の速さが緩やかになり、ご家族の表情も少し和らぎました。

その後も約1週間おきに胸水の貯留が見られ、次の抜去では1520ml、さらにその次には1750mlと、貯留量は増加傾向にありました。ですが、抜去後は毎回、呼吸が楽になり、短いながらも穏やかな時間が戻ってきました。

胸水抜去は強い痛みを伴うため、処置の可否やタイミングには常に慎重な判断が求められます。痛みの負担と呼吸の苦しさ、そのどちらも極力減らしたいという思いの中で、ご家族と相談を重ねながら、その都度最善と思われる選択を重ねていきました。

 

最期の時間とご家族の思い

2025年4月7日。マコトくんは、その日も朝まではご飯を食べていたそうです。「ちょっと様子が違うな」と感じたとのことでしたが、その後は静かに、まるで眠るかのように旅立ったとのことでした。

最後まで内服薬もご飯と一緒に食べてくれて、処置のたびに呼吸が楽になり、ご家族とともに少しでも楽に過ごせる時間を作ることができました。苦しみが強くなる前にその時を迎えられたことに、ご家族様も「頑張ってくれたね」と静かに話されていました。

ゴールデンレトリバーのような大型犬では、腫瘍(がん)を抱えることは珍しくないです。呼吸を圧迫する胸水の貯留は命に関わる重大な状態ですが、その都度の丁寧なケアと、ご家族の見守りにより、マコトくんは穏やかに最後を迎えることができました。

 

胸水貯留の犬における在宅緩和ケアの考え方

胸水の貯留は、肺腫瘍や転移性腫瘍、心不全などさまざまな原因で起こることがあります。貯留した胸水は肺を圧迫し、呼吸を著しく妨げるため、犬にとって大きな苦痛となります。

在宅での胸水管理が重要な理由

- 通院の負担を減らすことで、呼吸状態の悪化リスクを下げられる

- ストレスによる呼吸促迫を避けることができる

- ご家族が側で寄り添いながらケアを行える

胸水抜去の実施タイミング

- 呼吸が速くなる、胸が上下に大きく動くといった症状が見られたとき

- ご飯を食べなくなったとき

- 横になって眠れなくなるとき(座ったまま寝ようとする

これらの兆候が見られた場合には、胸水の貯留が原因である可能性があり、抜去を検討すべきタイミングです。

胸水抜去時の注意点

- 大型犬では無鎮静で対応できるケースが多いが、痛みは強いということは忘れないこと

- 頻回に抜去を行うと、それ自体が負担になるため、呼吸状態や生活の質を見ながら判断

- 初回の抜去量に比べ、次第に貯留量が増えていくケースが多いため、次の処置のタイミングは柔軟に調整する

在宅で胸水を適切に管理することは、犬のQOL(生活の質)を守り、穏やかな時間を提供する上で非常に重要です。

次は、当院が行う在宅胸水抜去と継続的なケアの方針についてご紹介します。

 

当院が行う在宅胸水抜去と継続ケアの方針

当院では、大型犬や高齢の犬に対して、通院や入院によるストレスを避けるため、在宅での胸水抜去を積極的に取り入れています。診察は基本的に獣医師1名で行い、胸水抜去などの処置が必要な場合には、動物看護師が同行します。

在宅での胸水抜去の進め方

- 往診時に超音波検査で胸水の貯留量と状態を確認

- 鎮静なしでの抜去を基本とし、状態によって鎮静を使用

- 初回は処置の反応や量を慎重に観察し、次回以降のプランを立てる

抜去頻度とモニタリング

- 呼吸状態に応じて抜去頻度を調整(例:1〜2週間おき、必要に応じて週1回)

- ご家族からの日常の観察情報も重要な判断材料となる

継続的な在宅緩和ケアの内容

- 鎮痛薬や鎮咳薬など、内服薬の調整

- 酸素発生装置を活用した在宅酸素管理

このように、在宅緩和ケアでは単に胸水を抜くだけでなく、犬の体調やご家族のご希望を踏まえて、柔軟で丁寧な対応を行っていきます。

 

ご家族とともに過ごした最期の日々

マコトくんが旅立ったのは、2025年4月7日。ご家族に見守られながら、自宅のリビングで穏やかにその時を迎えました。胸水抜去の直後には、呼吸が楽になった様子を見せ、ご飯も少しずつ口にすることができていました。

旅立ちの直前まで見せた“いつもの姿”

- 朝には自分の足で立ち、少しだけお散歩にも行こうとする素振りを見せた

- ご飯の香りには反応し、少量ながら口にしてくれた

- 大好きな場所、リビングのソファー下でゆっくりと眠るように旅立った

ご家族の寄り添いと、安心感

- 胸水抜去の処置も含め、すべてのケアをご自宅で行えたことに、深い安心を感じていただけた

- 「いつもと変わらない日常」の中で過ごせた時間が、ご家族の心の支えに

- 苦しみを最小限にできたことが、ご家族にとって最大の救いだった

在宅緩和ケアの価値

- 病院に行くことなく、最後まで大好きな家族と自分の家で過ごせたこと

- ご家族と獣医師、動物看護師が一緒に歩んだ、最期の時間

- 「家で看取ってあげられて良かった」と語ってくださった言葉が印象的だった

在宅緩和ケアは、ご家族にとっても愛犬にとっても、心穏やかな選択肢となり得ます。

 

わんにゃん保健室が行う在宅緩和ケアの特徴

わんにゃん保健室は、東京都内および近隣エリアを中心に活動している往診専門動物病院です。ペットの在宅医療、特に緩和ケアやターミナルケアに特化し、「病院に行けない・行かせたくない」状況でも、できる限りの医療を提供することを目指しています。

在宅でできる医療を最大限に

- エコーや血液検査など、病院と同等レベルの検査を自宅で実施

- 症状に合わせた処方変更や、投薬内容の調整が可能

- 緩和ケア・ターミナルケアを熟知した獣医師による診療

ご家族の不安に寄り添う

- 初診では2時間近くかけて、じっくりと問診・カウンセリングを実施

- 状況の整理、選択肢の提示、判断サポートまでを一貫して提供

- 医療面だけでなく、精神面のケアにも重点を置いた対応

苦しまない最期のために

- 胸水や心嚢水の抜去など、症状の緩和に必要な処置も自宅で対応

- 鎮痛、鎮静、呼吸管理など、ペットのQOLを最優先に考えた医療設計

- 家で過ごすこと、家で旅立つことを選ぶご家族への全面的なサポート

マコトくんのように、最期まで“家で”を貫いた子たちの物語が、これからも増えていくよう、私たちはひとつひとつの命と真摯に向き合っていきます。

腎臓病や心臓病、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症、糖尿病などの慢性疾患で、定期検診での血液検査や超音波検査(エコー検査)のための通院が、愛犬、愛猫にとってストレスになっていると感じたとき、またはがん(腫瘍)や病末期で、もう余生を穏やかに過ごさせてあげたいと感じた時からは、私たち、在宅緩和ケアに特化した往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。

残された時間にどんなことを考え、準備していかなければいけないのかなど、1つ1つ生活環境やご家族の意思を確認しながら、緩和ケアプランを構築していきます。

 

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ターミナルケア・緩和ケアについて

東京23区を中心に往診を行っている「わんにゃん保健室」です。
当院では、ペットのいるお住まいへ直接診療に向かう『往診』を専門にしております。

往診のメリットは、何と言ってもペットが自宅でリラックスした状態で診療を受けられることです。 動物病院へ通院が難しいペットにも、快適な環境で適切な獣医療を提供できることが、わんにゃん保健室の強みです。 本日は、当院が特に力を入れている「ターミナルケア」と「緩和ケア」についてご紹介します。

ペットにとってのターミナルケア

犬や猫は人間よりも寿命が短いため、飼い主様より先に旅立つことが多くあります。
それは自然の摂理であり、避けられない現実です。
しかしその時が訪れる前に、ペットとどのように向き合っていくかを考えることが大切です。
ターミナル期を迎えたペットを前に、飼い主様は「いつまで治療を続けるか」 長い年月を共に過ごしてきた大切な家族を見守ることは、どんなに辛くてもその決断をしなければならない時が来ます。
しかし、「もう楽にしてあげたい」という想いが沸き上がるのも事実です。

飼い主様の想いに寄り添う

ペットが病に苦しんでいる姿を見守る飼い主様もまた、同じように心が痛むものです。
そのような中で、獣医師や愛玩動物看護師は飼い主様の決断に寄り添い、支える役割を担っています。
ターミナルケア」は単に病気を治療することではなく、ペットの最後の時期を穏やかに過ごさせ、飼い主様が納得のいく形で見送ることが目的です。 わんにゃん保健室では、飼い主様が抱える不安や疑問をしっかりと受け止め、最良の選択肢をご一緒に考えていきます。

長い時間をかけて向き合う

わんにゃん保健室では、通常の動物病院とは異なり、飼い主様とお話をする時間を大切にしています。
動物の診察だけでなく、そのペットの未来や最良の診療をしっかりと考えるために、時間をかけて寄り添っています。
そのため、ペットのターミナルケアに関しても、飼い主様の決断を支えるためにじっくりと時間をかけて向き合います。
飼い主様としっかり向き合い、ペットの最良の未来を考えたい」と当院では考えています。

わんにゃん保健室の思い

わんにゃん保健室は、飼い主様とペットの最も近くに寄り添い、支え合いながら診療を行っています。
ターミナルケア・緩和ケアにおいても、飼い主様とペットがより穏やかで安心できる時間を過ごせるようサポートしています。
もしもペットが辛い時期に差し掛かった際には、わんにゃん保健室のスタッフがしっかりとサポートいたします。
ペットと過ごす大切な時間を、できるだけ穏やかで意味のあるものにするために、私たちにお任せください。

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大型犬に多く見られる腹腔内腫瘍。診断された時にはすでに高齢で、手術や抗がん剤などの積極的な治療が選択肢に入らないケースも少なくありません。

そんなとき、ご家族ができることは何か——それが「在宅での緩和ケア」という選択肢です。

今回は、東京都渋谷区に暮らす大型犬が、突然の起立不能をきっかけに腹腔内腫瘍が見つかり、ご家族とともに過ごした穏やかな在宅緩和ケアの実例をご紹介します。

犬のがん、特に腹腔内腫瘍と向き合うなかで「何ができるのか」「どう見送るのか」を考えるきっかけになれば幸いです。

目次

 

大型犬の腹腔内腫瘍とは

今回ご紹介するのは、東京都渋谷区にお住まいのご家族と暮らす、12歳・去勢済のゴールデンレトリバー(38kg)、タロくんです。

2025年1月9日の散歩中、突然ふらつく様子が見られたことから緊急で帰宅。その日は特に大きな異常はなかったものの、翌朝には起立不能となり、ご家族だけでは病院への移動が困難だったため、当院へ往診のご相談をいただきました。

超音波検査の結果、タロくんの腹腔内には約8cmの腫瘤を認めました。現時点での画像所見だけでは腫瘍の確定診断はできませんが、年齢や症状から悪性腫瘍の可能性が高いと判断しました。

腫瘍の摘出や抗がん剤といった積極的な治療についてもご提案はしましたが、ご家族としては「手術や入院ではなく、できるだけ穏やかに家で過ごさせてあげたい」との強いご希望がありました。

このように、大型犬の腹腔内腫瘍に対しては、年齢・体力・性格・生活環境などを総合的に考慮した上で、在宅緩和ケアという選択肢をとるケースが増えています。

次は、急な体調変化により通院が難しくなったタロくんに、どのように往診で対応していったのかをご紹介します。

 

 

通院が困難な大型犬への往診の選択

大型犬であるゴールデンレトリバーのタロくんは、体調が急変し、翌朝には完全に起立不能な状態となりました。高齢かつ体重のある犬にとって、移動のための介助はご家族だけでは非常に困難であり、移動中の負担も大きなリスクになります。

特に、腫瘍によって出血や貧血が起こっている可能性がある状態では、ちょっとした移動の衝撃が容体をさらに悪化させることがあります。結果として腫瘍が見つかったのですが、この時点ではまだ何も発覚していなかった中での急な症状だったため頑張って通院させようと試みましたが難しく、自宅での診療を希望されました。

当院では、必要な医療機器を持参し、往診で腹部超音波検査・血液検査などの初期評価を実施しました。その結果、腫瘤の存在とともに、炎症マーカーの上昇、肝酵素・膵酵素の上昇、そして軽度の貧血を認め、腫瘍からの慢性的な出血や局所炎症が疑われました。

このように、大型犬で体調急変があった場合には、速やかに往診による評価と対応を行うことが、安全で現実的な選択肢となります。

次は、タロくんに対してどのように在宅緩和ケアを開始していったのか、その具体的な初期対応についてご紹介します。

 

 

在宅緩和ケアの初期対応

往診初日に、タロくんの身体検査と血液検査、腹部超音波検査を実施し、腹腔内に8cm大の腫瘤を確認しました。画像と血液検査から判断しても、悪性腫瘍の可能性が高く、また抗がん剤治療や外科手術は希望されないとのことでした。

そのため、タロくんには「在宅緩和ケア」によるサポートを選択しました。これは、残された時間を穏やかに過ごしてもらうことを目的としたケアであり、ご家族にとっても精神的・肉体的な負担を軽減できる方法です。

初診当日は、以下の対応を行いました。

  • 皮下点滴による輸液と薬剤投与(鎮痛剤、制吐剤、抗炎症薬)
  • 酸素飽和度などのバイタルチェックと全身状態の評価
  • 環境評価(タロくんが快適に過ごせる場所の整備)
  • ご家族への今後の流れの説明と不安のヒアリング

皮下点滴には、炎症や痛みに対する鎮痛薬、制吐薬、食欲刺激などを含め、その時点で可能な限りのケアを提供しました。

翌日の再診では、検査結果に基づいた今後の見通しと、どのように医薬品を用いながらケアを継続していくのかについて、丁寧に説明を行いました。

次は、定期的なモニタリングとケアの調整についてご紹介します。

 

定期モニタリングとケア内容の調整

タロくんの在宅緩和ケアでは、1週間ごとの往診を基本とし、状態の変化に応じて柔軟に対応していきました。大切なのは、“今の状態に合ったケア”を提供し続けることです。

定期往診で行った内容
  • 身体検査(体重、粘膜色、脱水、呼吸状態など)
  • 血液検査による肝酵素、炎症マーカー、貧血の進行評価
  • 腹部超音波検査による腫瘍サイズと周囲臓器への影響確認
  • ご自宅での皮下点滴内容の見直しと調整

モニタリングの目的は、腫瘍の進行具合だけでなく、症状(痛み、食欲、活動性)の緩和度を客観的に把握することにあります。

皮下点滴内容の調整

最初は皮下点滴を獣医師が対応していましたが、ご家族ができるようにトレーニングを行い、在宅での自立したケアが可能になるよう指導しました。

  • 利便性を考えた1回あたりの点滴量の調整(例:30〜40ml/kg)
  • 薬剤構成(鎮痛薬・抗炎症薬・制吐薬など)を状態に応じて変更
  • ご家族が管理しやすいよう、薬剤の希釈方法や保存方法の共有
症状に応じた細やかな対応

在宅緩和ケアでは、痛みの兆候、呼吸の変化、排泄状態など、細かな体調変化を敏感にキャッチし、対応策を即座に講じることが求められます。往診時だけでなく、LINEなどを用いた連絡体制で、必要に応じて助言や訪問を行いました。

次は、状態が大きく変化した際の対応と、ご家族へのサポート体制についてご紹介します。

 

 

お別れが近づいたときの準備と支え

病状が進行し、タロくんの体力が目に見えて落ちてきた頃、ご家族には「お別れが近いかもしれない」という現実をお伝えする必要がありました。これは決して冷たく突き放すものではなく、“最期まで一緒に過ごすための心と環境の準備”をする大切な時間です。

痙攣発作に備えた準備
  • 腫瘍からの炎症や毒素が神経に影響し、痙攣を引き起こす可能性を説明
  • 発作時の動画や資料を共有し、実際にどう対応するかを事前に練習
  • 発作止めの注射薬を準備し、使用手順をしっかり指導

予期せぬ急変に備えることは、ご家族の混乱を最小限にし、タロくんの苦痛を和らげる大きな支えとなります。

精神的な支えとしてのマインドセット

この時期は、ご家族の心の揺れもとても大きくなります。「これでよかったのか」「もう限界かもしれない」という葛藤が渦巻く中、私たちは“事実と感情を切り分ける”ことを意識的にお伝えします。

  • 「苦しいのは誰か」を常に考える
  • 客観的な指標(呼吸数、食欲、体温など)で状況を判断する
  • 冷静な判断が“穏やかだった”という記憶につながる
家族で過ごす最後の時間の整え方

最期の時間を家族でどう過ごすか。その準備を一緒に進めていきました。

  • リビングのソファーの下に寝床を設置し、家族全員の目が届く場所に
  • タロくんの大好きだったおもちゃや毛布をそばに置く
  • できるだけ一緒の時間を増やすために、仕事のスケジュールを調整

そして2025年3月18日、タロくんは玄関先から見える桜の木に花が咲き始めた頃、家族に見守られながら、自宅で穏やかに旅立ちました。

 

 

在宅緩和ケアがもたらした意義と学び

大型犬であるタロくんが腹腔内腫瘍を抱えながらも、自宅で穏やかに過ごし、家族に見守られて旅立つことができた背景には、在宅緩和ケアという選択の中で、日を追うごとに強まったご家族の覚悟があったからだと思っています。別れを受け入れることは決して単純なことでなければ簡単なことでもないです。

大型犬特有の在宅管理の難しさと工夫

  • 移動が困難なため、通院による負担が非常に大きい
  • 身体が大きいため、寝床の調整や介助が必要になる
  • 酸素管理や点滴量の設定も、小型犬・猫とは違う基準が求められる

これらの課題に対し、私たちは個別にプランを設計し、無理のない範囲での皮下点滴、酸素環境の構築、家族全員が協力できる診療体制を整えました。

ご家族の心の成長と準備の重要性

診断直後は混乱していたご家族も、診療を重ねていくうちに表情が変わっていきました。必要な情報を伝え、段階的に心構えをしていくことで、タロくんの最期に「やれることはやれた」と感じられたそうです。

  • 急変時に慌てないよう、シミュレーションを行った
  • 苦しみを和らげる投薬のタイミングを練習
  • お別れの時間を意識的に作るように指導
在宅緩和ケアは「医療」だけではない

点滴や投薬といった医療行為だけでなく、「最期をどこで迎えたいか」「誰と過ごしたいか」といった“生き方”に寄り添うケアこそが在宅緩和ケアの本質です。

タロくんが見せてくれた穏やかな最期と、ご家族が示してくれた愛情と覚悟は、これから同じような病と向き合う子たちへの大きなヒントになると確信しています。

 

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犬の腎臓腫瘍の在宅緩和ケア(2025年3月)

犬の腎臓腫瘍は、比較的まれではありますが進行が早く、発見時にはすでに他の臓器へ転移していることも多い疾患です。外科的な摘出や抗がん剤治療といった選択肢がある一方で、高齢や他の持病、性格的な問題、通院によるストレスを理由に、在宅での緩和ケアを選ばれるご家族も増えてきました。

このブログでは、犬の腎臓腫瘍において在宅医療という選択がどういったものか、どのようなケアが可能なのかをご紹介していきます。在宅でもしっかりとしたサポートが可能であることを、少しでも多くのご家族に知っていただけたら嬉しいです。

目次

 

犬の腎臓腫瘍とは?〜発見されにくい沈黙の病〜

犬の腎臓腫瘍は発生頻度としては決して高くはありませんが、発見が遅れることが多く、発見されたときにはすでに進行しているケースも少なくありません。腎臓は沈黙の臓器とも言われ、腫瘍がかなり大きくなるまで明確な症状が出にくいのが特徴です。

腎臓に発生する腫瘍の種類

- 腎細胞癌:最も代表的な原発性腎腫瘍

- 腎リンパ腫:リンパ腫が腎臓に転移または原発する形

- 移行上皮癌:腎盂や尿管に関係する腫瘍

特に腎細胞癌は片側の腎臓に発生することが多く、外科手術によって摘出可能であることもありますが、発見されたときには肺や肝臓などへの転移が確認されていることもあります。

進行しても症状が出にくい理由

腎臓は二つある臓器であり、一方が障害されてももう一方が機能を補うことで、体の代謝が維持される場合が多いため、片側の腫瘍だけでは目立った症状が出ないまま進行してしまうことがあります。

在宅ケアを検討するケースとは

- 高齢で全身麻酔のリスクが高い

- すでに転移が認められており、根治が望めない

- 性格的に通院や入院が著しいストレスになる

こうした理由から、腎臓腫瘍の犬においては、在宅でできるだけ穏やかに過ごさせてあげたいと考え、緩和ケアを選択されるご家族も増えてきています。

 

診断のきっかけと代表的な症状

犬の腎臓腫瘍は進行するまで明確な症状が出ないことも多いですが、ある程度腫瘍が拡大したり、腎機能が落ちたり、または他の臓器に転移したことによる症状から発見されることがあります。

腎臓腫瘍でよく見られる症状

- 食欲不振や体重減少

- 元気の低下や動きの鈍さ

- 持続的な嘔吐

- 血尿や頻尿などの泌尿器症状

- 腹部の膨満感やしこりを触れる

検査で発見されるケースも

症状があまり出ていない場合でも、定期的な健康診断での血液検査や腹部超音波検査で偶発的に腫瘍が見つかることもあります。特に高齢犬では、腎機能マーカー(BUN、クレアチニンなど)の上昇が見られた際に画像検査を併用することで、腫瘍性病変が判明する場合もあります。

当院の往診(在宅緩和ケア)では、検査の時に検査項目を絞らずに決まった項目は必ず検査することをスクリーニング検査として実施しています。費用面では項目を絞った方がいいとされる考え方もありますが、結果として見落としがあった場合に、あの時検査していればと後悔しないためです。追加検査で再度採血などのストレスをかけるくらいであれば、1度の検査で、かつストレスが限定されている範囲で、得られる所見は集めることを推奨しています。

診断後の選択肢

- 外科手術による腎摘出(片側のみの場合)

- 抗がん剤治療(腫瘍の種類によっては適応あり)

- 積極的治療が難しい場合は在宅での緩和ケアの選択

ご家族の意向や年齢、性格、基礎疾患の有無を踏まえたうえで、治療方針を決めていく必要があります。

 

在宅ケアで注意したいこと

犬の腎臓腫瘍に対する在宅緩和ケアを行う際には、いくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。これらを適切に管理することで、愛犬が少しでも快適に過ごせるようサポートできます。

定期的な健康状態のモニタリング

- 毎日の食欲、飲水量、排尿・排便の状態を観察し、変化があれば記録する。

- 体重測定を定期的に行い、体重減少がないか確認する。

- 呼吸状態や粘膜の色(歯茎など)をチェックし、異常がないか観察する。

異常時の対応策の準備

- 急な体調不良や症状の悪化に備え、かかりつけの獣医師と連絡を取れる体制を整える。

- 緊急時に使用できる薬剤や処置方法について、事前に指導を受けておく。

- 夜間や休日でも対応可能な動物病院の連絡先を把握しておく。

犬猫も人と同じく、終末期に向かって歩んでいく道のりは、決して平坦ではないです。そのため、急変はつきものであり、その時にどうするのかという具体的なアクションプランを、ご家族で決めておきましょう。

ご家族の精神的・身体的負担の軽減

- 在宅ケアは決して楽ではなく、ご家族にも負担が大きいため、無理のない範囲で行うことが重要。

- 必要に応じて、訪問看護サービスやペットシッターなどの外部サポートを検討する。

- ご家族自身の休息やリフレッシュの時間を確保し、心身の健康を維持する。

在宅緩和ケアを行う際には、これらのポイントを踏まえ、愛犬とご家族双方のQOLを維持することが大切です。

 

在宅緩和ケアを選択するタイミング

腎臓腫瘍の犬において、在宅での緩和ケアを選ぶべきタイミングにはいくつかの目安があります。体調の変化や治療の限界を迎えたとき、ご家族と愛犬が一緒にいられる時間を大切にするための選択肢となります。

治療の限界が見えたとき

- 外科手術や化学療法などの根治治療が難しいと判断されたとき。

- 腫瘍の進行により、症状が再発・悪化し続けているとき。

- これ以上の積極的治療が犬にとって苦痛を伴うと判断されたとき。

通院や入院が犬にとって大きな負担になるとき

- 移動に伴うストレスや興奮で体調が悪化するリスクがある場合。

- 入院が長期化し、愛犬が精神的に不安定になっているとき。

- 通院後にぐったりする、食欲が落ちるなどの反応が見られる場合。

ご家族が「自宅で過ごさせたい」と感じたとき

- 最期は病院よりも住み慣れた自宅で迎えさせてあげたいと考えたとき。

- ご家族が在宅でのケアを希望し、覚悟を持って支えていく意志を持ったとき。

- 愛犬が家族のそばで安心して過ごす姿が望ましいと感じたとき。

在宅緩和ケアへの切り替えは、診断名や病期だけで判断するものではありません。犬の状態、ご家族の想いと覚悟、生活スタイルなど、すべてを総合的に考慮した上で決定することが大切です。

ここまでで、愛犬が腎臓腫瘍を抱えたことを知った後のことを書かせていただきました。

最後に、わんにゃん保健室が提供する在宅ケアのサポート体制についてご紹介します。

 

わんにゃん保健室の在宅ケアサポート体制

わんにゃん保健室では、腎臓腫瘍を含む終末期の疾患に対して、ご家族とペットが安心して在宅で過ごせるよう、きめ細やかなサポート体制を整えています。

初診時の丁寧なカウンセリング

- 初診では獣医師が訪問し、最大2時間かけて病歴やご家族の希望を丁寧にヒアリング。

- 動物看護師の同行は、必要に応じて検査や処置の際に対応。

- 在宅で可能な処置の範囲や、今後の経過予測についても具体的に説明。

緩和ケアプランの個別設計

- 診察や検査結果に基づき、症状のコントロールを目的とした投薬プランを作成。

- 皮下点滴や注射薬など、ご家族でも管理可能な方法をご提案。

- 酸素環境の構築や床の工夫など、生活環境の最適化も併せてアドバイス。

ご家族への細やかなフォローアップ

- 緊急時に備えた対応や頓服薬を準備。

- 状態が変化しやすい子には、必要に応じて週1回以上の定期訪問。

在宅ケアにおいて、最も大切なのは「この子の最期は、どこでどんな風に過ごさせてあげたいのか」という視点です。

病気と闘うのではなく、病気を受け入れ、共に穏やかな時間を生きていく。

わんにゃん保健室は、ご家族と愛犬、愛猫の最後の時間に寄り添った在宅緩和ケアを最後まで提供します。

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犬猫の往診専門動物病院
わんにゃん保健室
 
猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
電話番号:03-4500-8701(往診本部直通)
 
 
受付時間:10:00~19:00
休診日:不定休診療カレンダー
 
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わんにゃん保健室での一日の診療の流れ

東京台東区を中心に、往診専門で犬・猫の診療/緩和ケアを行っておりますわんにゃん保健室です。
当ブログでは、当院が提供する獣医療について、より詳しくご紹介してまいります。

本日は、当院での業務の一日の流れについてご紹介します。
普段往診で診察を受けている方は、どういった流れでわんにゃん保健室が訪問するのかを参考にしてみてください。

わんにゃん保健室が行っている業務について

獣医師の主な業務は、

  • 往診での診察:実際にご自宅にお伺いし、診察いたします
  • 症例の報告:受け持った症例をチームに共有します
  • 電話対応:飼い主様からの相談にお電話で対応

となります。

獣医師は「診療」のみを行っていると思われがちですが、

わんにゃん保健室では「獣医師」と「愛玩動物看護師」がチームとなり
飼い主様、ペットをサポートします。

そのため、どういった病状なのか? どういった症例なのか?
といった内容を、院内で共有、チームがより適切な対応をできるよう努めております。

また、一度診察した飼い主様から入電があることも。
急遽病状が変化したり、困ったことがあった際などにお電話をいただくことがあります。

ペットの往診で出ている時間帯や、別のペットの診療中は通話に出ることが難しいこともあります。
そのため、時間を作って折り返しのお電話となることも。
留守電にメッセージを残していただけると、折り返しの際もスムーズに対応できますので、ご協力をお願いいたします。

わんにゃん保健室の一日の様子

1、往診の予約が入ったら、まずはカルテのチェックを行います。

同時にメール等のチェックも行い、飼い主様からの連絡がないかを確認します。

2、お客様のご自宅にお伺いし、診察します。

診察に必要な器具はわんにゃん保健室から持参します。
往診は車での移動がほとんどのため、車の中に必要な機器を揃えたら、そのまま飼い主様のご自宅に運び込みます。

3、カルテの内容や、飼い主様へのヒヤリングをもとに、診察を進めていきます。
4、予約がなければ待機・もしくは事務所へ戻り、次の予約が入っていれば直行します。

次の予約までの時間が長くある場合は、ここで休憩をとります。

5、全ての往診が完了しましたら事務所へ戻り、検査や翌日の往診の準備を行います。

往診は事前準備が肝となります。
必要な器具を揃える・どういった診察が予想されるかを考える、といった面でも飼い主様、
ペットが安心して受けられる獣医療を提供したいと考えています。

お問い合わせを頂く際も、なるべく詳細にご要望や現状の記載をいただきますと、
ご予約についてもスムーズにご案内が可能です。
病状やご状況によって必要な診療時間が異なります。
お問い合わせ時にその状況が確認できますと、より確実な予約枠の確保が可能です。

安心して診察を受けていただくために

わんにゃん保健室では様々な状況に対応できるよう、診療器具を揃えています。 ご予約優先とはなりますが、急ぎでの対応も可能な場合がありますので、 ペットの様子がおかしい・普段と違う・病状が急に悪化した等の場合は 迷わずお電話でお問い合わせください。

普段は動物病院に通っている子も、休診日等で診療が受けられないなどの理由で往診を利用する場合もあります。
わんにゃん保健室はいつでも皆様に寄り添う動物病院として、これからも心を込めた診察を心がけてまいります。

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猫の腎不全、皮下点滴はいつまで続けるの?

導入

猫の慢性腎不全(CKD)は高齢猫に多く見られる病気であり、進行性の疾患です。そのため、病状の管理には皮下点滴(皮下補液)が重要な役割を果たします。

腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物を排出する力が衰え、水分のバランスが崩れて脱水状態になりやすくなります。これを補うために、腎不全の猫には皮下点滴を行い、必要な水分や薬剤を補給していきます。

しかし、皮下点滴はずっと続けるべきなのでしょうか?また、どのタイミングでやめるべきなのでしょうか?

この記事では、猫の腎不全における皮下点滴の役割、適切な使用方法、やめるタイミング、注意すべきポイントについて詳しく解説します。

 

目次

次は、猫の腎不全と皮下点滴の基本について詳しく解説していきます。

 

猫の腎不全と皮下点滴の基本

猫の慢性腎不全(CKD)は進行性の病気であり、症状の管理が重要です。特に、脱水の予防や体内の老廃物の排出を助けるために、皮下点滴(皮下補液)が広く用いられています。

 

皮下点滴の目的
  • 体内の水分バランスを維持し、脱水を防ぐ
  • 腎臓の負担を軽減し、老廃物の排出を促進
  • 電解質のバランスを整え、全身状態の改善を目指す
  • 必要な薬剤を混ぜ、腎不全の進行を抑える
皮下点滴の一般的な投与量と頻度
  • 通常の目安は30ml/kg(例:4kgの猫なら120ml)
  • 腎不全の進行度に応じて、10〜20ml/kgに減量することも
  • 最初は週3回程度、進行に応じて1日おき、毎日へと増加

皮下点滴は、初期段階では脱水を防ぐために実施されますが、進行に伴い薬剤投与の手段としても重要になっていきます。次は、腎不全の進行と皮下点滴の変化について詳しく解説します。

 

 

腎不全の進行と皮下点滴の変化

腎不全の進行に伴い、皮下点滴の目的や投与量、頻度が変わります。適切なタイミングで調整することが、猫の快適な生活につながります。

 

慢性腎臓病ステージごとの皮下点滴の役割
  • ステージ2〜3:脱水予防が中心。必要に応じて週3〜4回の皮下点滴を実施。
  • ステージ4(末期腎不全):体液管理と投薬のために、1日おきまたは毎日実施。
  • 終末期(ターミナル期):水分補給ではなく、投薬を目的とした皮下点滴に移行。
皮下点滴の調整ポイント
  • 貧血や循環不全がある場合は、輸液量を減らす(10〜20ml/kgに調整)。
  • 浮腫や呼吸状態の悪化が見られた場合、皮下点滴の頻度や1回量をすぐに見直す。
  • 利尿剤や補助療法と併用しながら、全体のバランスを考える。

腎不全の進行に伴い、皮下点滴の役割は変化します。特に終末期では、単なる水分補給ではなく、投薬手段としての役割が主になります。次は、皮下点滴をやめるべきタイミングについて詳しく解説します。

 

 

皮下点滴をやめるべきタイミングとは?

腎不全の猫にとって、皮下点滴は重要な治療の一環ですが、病状が進行すると「いつまで続けるべきか?」という問題に直面します。適切な判断をするためのポイントを見ていきましょう。

 

皮下点滴を中止する判断基準
  • 循環不全が進行し、浮腫や胸水が認められる:体内の水分バランスが崩れ、呼吸困難を引き起こす可能性がある。
  • 尿量が極端に減少腎機能がほぼ停止し、水分の排出が困難になった場合。
  • 全身状態の悪化:活動量の低下、意識レベルの変化が見られ、輸液による改善が見込めなくなった場合。
終末期の皮下点滴の役割
  • 水分補給ではなく投薬手段として継続鎮痛薬や抗吐剤などを注射薬として投与することを目的とする。
  • ご家族の負担を考慮:皮下点滴が猫にとって大きなストレスとなる場合は無理に続けない。
  • 最期の時間を穏やかに過ごせるかを優先:皮下点滴の継続が苦痛になっていないかを見極める。

皮下点滴の中止を判断する際は、猫の状態を観察しながら、ご家族と獣医師が相談して決定することが大切です。

次は、皮下点滴をやめる際の注意点について詳しく解説します。

 

 

皮下点滴をやめる際の注意点

皮下点滴をやめる際には、猫の状態や症状を慎重に評価しながら判断することが重要です。以下のポイントに注意しながら、適切な対応を考えていきましょう。

 

急に中止せず、徐々に調整する
  • 輸液量を徐々に減らす:いきなりゼロにするのではなく、体調を見ながら1回量や頻度を減らしていく。
  • 尿量や水分摂取量の変化を確認:皮下点滴を減らすことで脱水や尿量の変化がないか注意深く観察する。
  • 呼吸状態や浮腫の有無をチェック:輸液量が多かった場合は、むしろ呼吸の改善が見られることもある。
猫のストレスを最小限に抑える
  • 皮下点滴自体が負担になっていないか:痛みやストレスが強い場合は無理に続けない。
  • ご家族の精神的負担も考慮:皮下点滴をやめることへの罪悪感を感じることが多いが、猫にとって最適な選択を優先する。
  • 獣医師と相談しながら進める:独断でやめるのではなく、適切なタイミングを専門家と話し合う。

皮下点滴を中止するかどうかは、その子の状態に応じた判断が求められます。獣医師と連携しながら、無理のないケアを続けていくことが大切です。次は、皮下点滴をやめた後のケアについて詳しく説明します。

 

皮下点滴をやめた後のケア

皮下点滴をやめた後も、猫の体調管理は引き続き重要です。水分補給の方法や症状の変化に注意しながら、適切なケアを続けていきましょう。

 

水分補給の工夫
  • 飲水量の確認:水を飲む量が減っていないかを毎日チェックする。
  • ウェットフードを活用:ドライフードよりも水分を多く含むため、食事からの水分摂取を増やせる。
  • 給水器の見直し:流れる水を好む猫も多いため、自動給水器を活用すると飲水量が増えることがある。
体調の変化を観察
  • 脱水のサインを見逃さない:皮膚の張りや歯茎の状態をチェックし、脱水の兆候がないか確認する。
  • 食欲の変化:皮下点滴をやめたことで体調が変化し、食欲が落ちていないか確認する。
  • 排尿の頻度と量:尿量が極端に減っていないかを注意深く観察する。
獣医師との継続的な連携
  • 定期的な診察を受ける:皮下点滴をやめた後も、血液検査や健康チェックを継続する。
  • 異変があればすぐに相談:呼吸が荒い、ぐったりしている、食べられないなどの変化があれば早めに獣医師に相談する。
  • ケアプランの見直し:猫の状態に合わせて、最適なサポート方法を随時調整する。

皮下点滴をやめた後も、日々の変化を観察しながら、猫が快適に過ごせるようにサポートしていきましょう。

 

 

まとめ:猫の皮下点滴をやめるタイミングと適切な判断

猫の慢性腎臓病において、皮下点滴は重要な治療の一環ですが、最終的にいつやめるかの判断は非常に繊細です。これまで述べてきたポイントを整理し、適切な判断基準についてまとめます。

 

皮下点滴をやめるべきか判断するポイント
  • 猫の体調の変化:体重減少、食欲低下、動きの鈍化が進んでいないか。
  • 水分補給の必要性:自力で十分に水分を摂取できるかどうか。
  • 腎臓の状態:血液検査の結果や尿量の変化を考慮する。
  • 合併症の有無:浮腫、胸水、肺水腫などの症状が出ていないか。
  • 猫のQOL(生活の質):皮下点滴が猫にとって強いストレスになっていないか。
最期までのサポートと在宅緩和ケアの重要性
  • 皮下点滴の代替ケア:投薬や食事管理、環境調整で猫の負担を軽減。
  • ご家族の判断を尊重:獣医師と相談しながら、猫にとって最適な選択を考える。
  • ターミナルケアの準備:最期の時間を穏やかに過ごせるよう、環境を整える。

皮下点滴の中止は、単に「やめる」ことではなく、猫のQOLを最優先に考えた上での選択です。症状の変化をよく観察しながら、適切なタイミングを見極め、ご家族と獣医師が協力して最善のケアを提供していくことが大切です。

皮下点滴の適切な判断に不安がある場合は、往診専門の動物病院に相談するのも一つの選択肢です。あなたの大切な猫が、最期まで穏やかに過ごせるように、慎重にケアの方針を決めていきましょう。

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犬猫の往診専門動物病院
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東京都内23区を中心に往診専門の獣医療を提供しております、わんにゃん保健室です。
当院はペットとご家族様が過ごす最後の時間を、
より良いものにするべく最良の往診獣医療を
提供することに注力しています。

本日のブログでは、わんにゃん保健室が大切にしている3つのポイントについてご紹介します。
より良い獣医療を提供するため、様々な点から獣医療の在り方を検討し
飼い主様・ペットのみんながより良く過ごせる環境を作るため、
『動物病院』を運営しています。

わんにゃん保健室が動物病院を運営する理由

わんにゃん保健室が動物病院を運営しているのは、
飼い主様やペットたちがより良く過ごせるよう、環境を整えるお手伝いがしたいからです。

ペットに対する緩和ケアやターミナルケアについて、
より深く、多くの方へ知ってもらいたいと考えています。

「最良の在宅医療を最後まで」というのが、
わんにゃん保健室の考えの一つです。
ペットが年齢を重ねて、以前のように自由に動き回れなくなった時、
痛みや辛さを緩和するための方法を提供したいと考えたからです。

往診が求められている現状

動物病院は多くありますが、そのすべてが往診を行っているわけではありません。ですが、緩和ケアやターミナル期となった子は、
自分で自由に動いたりすることが難しい場合もあります。
また、そもそも病院が嫌いで診察を受けることができないといった
子もいます。

飼い主様も、お仕事や家事でお忙しい中で
ペットに対して十分な時間を捻出できない場合もあるかもしれません。また、交通手段の関係で、動けなくなったペットを動物病院へ診察するのが難しい場合も。

上記のような場合でも、動物病院が往診を行っていれば、
そういった子たちにも獣医療を届けられるのです。

わんにゃん保健室では、獣医療の形として往診が求められていると考え
往診専門動物病院として運営しています。

適切な診療料金

わんにゃん保健室では、適切な診療料金にて診療を行っております。

往診のため実際にご自宅にお伺いをすることを考慮しますと
通常の動物病院よりも費用がかかる印象となるかもしれませんが、
飼い主様の負担とならないよう、料金を考慮しております。

ペットに対して、費用をかけてしっかりと診療を受けさせたいという方ばかりだと思います。 ですが、実際にはご自身やご家族の生活もあるため、制限なく費用がかけられるわけではないと思います。

そのため、当院では負担とならないよう適宜料金改定などを行い、
なるべく皆様の診療費の負担を減らしたいと考えています。
費用が理由で診療を諦めてしまう子を少しでも減らしたいという思いからです。

 

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猫の腎臓病の在宅緩和ケア(2025年3月)

猫の腎臓病は高齢猫に非常に多い疾患であり、慢性腎臓病(CKD)として徐々に進行していきます。特にステージが進行すると、通院の頻度が増え、猫にとって大きなストレスとなることがあります。そこで、在宅での緩和ケアを取り入れることで、猫の負担を軽減しながら適切な治療を続けることが可能になります。

本記事では、猫の腎臓病の基本情報から、動物病院での検査や治療の流れ、通院の負担、そして在宅緩和ケアの導入について詳しく解説します。猫にとって最適なケアを考え、ご家族が無理なく続けられる治療方法を一緒に探っていきましょう。

 

【 目次 】

 

 

猫の腎臓病とは?

猫の腎臓病(慢性腎臓病:CKD)は、高齢の猫に非常に多く見られる疾患です。特に10歳以上の猫では、腎機能の低下が進行しやすく、病気が発見されたときにはすでに慢性腎不全の状態になっていることも少なくありません。

腎臓は、体内の老廃物を排出し、水分やミネラルのバランスを調整する重要な役割を持っています。しかし、慢性腎臓病では腎機能が徐々に低下し、以下のような症状が現れます。

 

猫の腎臓病の主な症状

- 水をたくさん飲むようになる(多飲)

- おしっこの量が増える(多尿)

- 食欲が落ちる、痩せてくる(削痩)

- 嘔吐や下痢を繰り返す

- 後ろ足がふらつく(筋力低下)

- 口臭が強くなる(尿毒症の影響)

これらの症状は、腎臓の機能が低下することで体内の老廃物を適切に排出できなくなったり、水分バランスが崩れたりすることで引き起こされます。特に、慢性腎臓病は初期段階では症状がほとんど見られないことが多く、定期的な健康診断で早期発見することが重要です。

 

腎臓病の進行と生活の変化

腎臓病の進行に伴い、食欲の低下や脱水症状が顕著になり、生活の質(QOL)が低下していきます。特に、ステージが進むにつれて通院や点滴治療の頻度が増え、猫にとっての負担が大きくなるため、在宅でのケアの必要性が高まります。

次は、動物病院での検査頻度とその意義について詳しく解説していきます。

 

 

動物病院での検査頻度とその意義

猫の腎臓病は進行性の疾患であり、定期的な検査を行うことで病気の進行度を把握し、適切な治療を実施することが重要です。特に慢性腎臓病(CKD)は、症状が徐々に現れるため、早期発見と継続的なモニタリングが欠かせません。

 

腎臓病の進行度を把握するための検査

- 血液検査(BUN、クレアチニン、SDMA、リン、電解質)

- 尿検査(尿比重、尿蛋白、UPC比)

- 超音波検査(腎臓の形状、血流の評価)

- 血圧測定(高血圧の有無を確認)

これらの検査を組み合わせることで、腎臓の機能低下の進行度を把握し、治療方針を決定します。特に、慢性腎臓病では腎機能がある程度失われてから症状が現れるため、早期に異常を発見できるSDMA(対称性ジメチルアルギニン)検査が有効とされています。

 

検査頻度の目安

- 健康な猫:年に1回の健康診断

- 慢性腎臓病(初期):3〜6ヶ月ごと

- 慢性腎臓病(進行中):1〜2ヶ月ごと

- 末期腎不全:1〜2週間ごと

腎臓病の進行度に応じて検査頻度を調整し、病状の変化に迅速に対応することが大切です。

 

検査結果に基づく治療方針の決定

検査結果をもとに、適切な治療を行います。

- 早期腎臓病:食事療法やサプリメントで管理

- 進行期:利尿薬、リン吸着剤、ACE阻害薬などの投薬

- 末期腎不全:皮下点滴や給餌補助などのサポート

特に腎臓病が進行すると、皮下点滴や強制給餌が必要になることが多く、ご家族の負担も増えるため、在宅でのケアを検討することが重要になります。

次は、腎臓病の進行に伴う処方の変化について詳しく解説していきます。

 

 

経過における処方の変化

猫の腎臓病は進行性の疾患であり、病状の変化に応じて処方内容を適切に調整する必要があります。初期段階では食事療法やサプリメントを中心とした管理が可能ですが、進行するにつれて、投薬や補助療法の必要性が高まります。

 

腎臓病の進行と処方の変化
初期(ステージ1〜2)

- 腎臓療法食(低リン・高品質タンパクの食事)

- リン吸着剤の導入(リン値が高い場合)

- 血管拡張薬などの使用

初期段階では、食事管理が最も重要となります。特にリンを制限することで、腎機能の低下を遅らせることが期待できます。

 

進行期(ステージ3)

上記の治療に加えて、以下の処方を追加

- 腎性貧血に対する造血ホルモン製剤(エリスロポエチンなど)

- 胃腸障害の管理(制酸剤、吐き気止め)

- 脱水予防のための皮下点滴の開始(週1〜2回)

腎機能の低下が進むと、貧血や食欲低下が目立つようになります。この時期から皮下点滴を導入し、脱水を防ぐことが重要です。

 

末期(ステージ4)

- 皮下点滴の頻度を増やし(1日おき、または毎日)

- 強制給餌の検討(食欲が大幅に低下した場合)

- 尿毒症に対する事前対策

末期腎不全の段階では、猫の生活の質(QOL)を重視したケアが求められます。この頃になると、通院の負担が大きくなるため、在宅緩和ケアへ切り替えるタイミングを検討することが重要です。

次は、通院が猫にとってどれほど負担になるのか、そしてその影響について解説していきます。

 

 

通院は猫にとって負担

猫は環境の変化に敏感な動物であり、動物病院への通院は大きなストレスとなります。特に腎臓病を抱えた高齢猫にとって、頻繁な通院は負担が増し、病状の悪化を招く可能性があります。

 

猫はそもそも通院が苦手
キャリーに入れること自体がストレス

- キャリーを見ただけで逃げる猫も多い

- 無理に入れようとすると興奮し、呼吸が荒くなる

- 強いストレスがかかると、脱糞や嘔吐をすることもある

 

移動中の環境変化が大きな負担

- 車や電車などの移動音や振動に驚く

- 外の匂いや他の動物の気配に警戒する

- 通院後、帰宅しても落ち着かないことがある

これらの理由から、通院自体が猫のストレスとなり、病状を悪化させる可能性があるのです。

 

通院できる猫でも頻度が重要
週1回程度の通院なら耐えられることが多い

- 腎臓病の管理のため、定期的な検査や処方調整が必要

- 週1回程度の通院であれば、猫のストレスも最小限に抑えられる

- しかし、体調が悪化すると移動自体が難しくなる

 

皮下点滴が始まると通院頻度が増える

- 皮下点滴の頻度は、病状によって1日おきや毎日になる

- 頻繁な通院は、猫にとって大きな負担となる

- 通院のたびにキャリーに入れるストレスが加わる

腎臓病の進行に伴い、皮下点滴の頻度が増えると、通院の負担がさらに大きくなります。そこで、在宅緩和ケアの導入を検討することが推奨されます。

次は、猫の腎臓病における在宅緩和ケアの具体的な方法について説明します。

 

 

猫の腎臓病の在宅緩和ケア切替

猫の腎臓病が進行し、通院が負担になってきた場合、在宅緩和ケアへの切り替えを検討することが重要です。在宅緩和ケアでは、動物病院での治療と同様に、適切な管理が可能です。

 

通常の定期検査は在宅で対応可能
血液検査や尿検査を自宅で実施

- 往診での血液検査や尿検査により、腎臓の状態を把握

- ストレスの少ない環境で、猫の負担を軽減

- 定期的な検査により、病状の変化を早期に察知

 

超音波検査も在宅で可能

- 腎臓の大きさや血流を確認し、進行度を評価

- 往診により、自宅で落ち着いた状態で検査を実施

- 動物病院と同様の精度で検査が可能

在宅でも定期的な検査が可能なため、動物病院へ通院するのと同様に病状を管理することができます。

 

結果に応じて処方を変化させることも可能
血液検査の結果をもとに処方調整

- 腎臓の状態に合わせて内服薬の種類や量を変更

- 必要に応じて、皮下点滴の頻度や成分を調整

- 生活環境や食事内容も併せて最適化

 

猫の状態に合わせた柔軟なケア

- 内服薬が飲めない場合は、皮下点滴での薬剤投与を検討

- 食欲低下時には、嗜好性の高い療法食やサプリメントを提案

- 生活の質(QOL)を重視し、苦痛を最小限に抑える

 

在宅緩和ケアでは、猫の状態に合わせて治療を柔軟に調整できるため、負担を抑えながら適切なケアを継続できます。

 

ご家族による在宅皮下点滴でストレス軽減
ご家族が皮下点滴を実施するメリット

- 通院の必要がなくなり、猫のストレスを軽減

- ご家族が猫の状態を観察しながら対応できる

- 継続的なケアが可能になり、病状の安定化につながる

 

皮下点滴のトレーニングとサポート

- 獣医師が往診時に皮下点滴の方法を指導

- 針の刺し方や適切な量の確認を丁寧にサポート

- 初めてのご家族でも安心して実施できるようフォローアップ

 

皮下点滴を在宅で実施することで、動物病院へ行くストレスを減らしながら、適切なケアを継続することができます。

次は、在宅緩和ケアへ切り替える適切なタイミングについてお話しします。

 

 

切り替えはいつから?

在宅緩和ケアへの切り替えは、猫の病状や生活環境に応じて検討することが重要です。適切なタイミングを見極めることで、猫の負担を最小限に抑えながら、適切なケアを続けることができます。

 

慢性腎臓病かもしれないと言われた時から変更を検討
初期段階での選択肢としての在宅緩和ケア

- 腎臓病の診断を受けた段階で、在宅ケアの選択肢を考える

- 通院ストレスが大きい猫の場合、早めの在宅切り替えが有効

- ご家族が猫の病気に対する理解を深め、準備を進める

 

定期検査の頻度が増えたタイミング

- 月1回の検査から、2週間に1回、週1回と頻度が増えてきた

- 皮下点滴の必要性が出てきた段階で在宅ケアを検討

- 通院後の疲労やストレスが顕著になったと感じたら切り替えのサイン

 

通院が難しくなった時

- キャリーに入れるだけで強い拒否反応を示すようになった

- 通院後にぐったりしてしまい、回復に時間がかかる

- ご家族が通院の負担を感じ、在宅ケアを希望するようになった

 

在宅緩和ケアへの切り替えは、猫の状態だけでなく、ご家族の生活環境や希望も考慮しながら進めることが大切です。

次は、猫の腎臓病の在宅緩和ケアの具体的な方法について詳しくご紹介します。

 

 

猫の腎臓病と在宅緩和ケアの重要性

猫の腎臓病は高齢の猫に多く見られ、進行すると日常生活にさまざまな影響を与えます。早期発見と適切な管理が重要ですが、通院が負担になるケースも少なくありません。在宅緩和ケアを適切に導入することで、猫の生活の質を維持しながら、ご家族の負担も軽減できます。

 

在宅緩和ケアを検討すべきタイミング

- 猫が通院を極端に嫌がる場合

- 定期検査の頻度が増え、通院が負担になってきた時

- 皮下点滴や継続的な投薬が必要になったタイミング

 

在宅緩和ケアのメリット

- 自宅で安心した環境の中で治療を受けられる

- ストレスを最小限に抑えながら適切なケアが可能

- ご家族が猫の状態をより深く理解し、適切な対応ができる

 

最後に

猫の腎臓病は長期的な管理が必要な病気ですが、在宅での適切なケアによって、穏やかに過ごせる時間を延ばすことができます。猫の性格やご家族の生活スタイルに合わせた最適な方法を選び、できる限り快適な環境を整えてあげましょう。

当院では、在宅緩和ケアを通じて、猫とご家族が穏やかに過ごせる時間をサポートしています。通院が難しくなった、在宅ケアを考えたいという方は、お気軽にご相談ください。

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犬猫の往診専門動物病院
わんにゃん保健室
 
猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
電話番号:03-4500-8701(往診本部直通)
 
 
受付時間:10:00~19:00
休診日:不定休診療カレンダー
 
〒111-0036
東京都台東区松が谷3-12-4 マスヤビル5F
 
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東京都内近郊、関東エリアにて往診による獣医療を提供しています「わんにゃん保健室」です。
飼い主様とペットのための安心の治療をお届けします。

「わんにゃん保健室」では、飼い主様とペットのもとにお伺いして診療を行う、往診専門のサービスを提供しています。
私たちの医療の特徴は、通常の動物病院とは一線を画し、ご自宅という安心できる環境で診療が行われることにあります。
この環境により、飼い主様は待ち時間なく、ペットは見慣れた場所でリラックスした状態で治療を受けることができるため、非常に高い安心感を得ることができます。

ペットにとってのストレスの重要性

ペットは、病院のような異なる環境に強いストレスを感じることがあります。
このストレスが原因で、普段とは異なる行動を示すことがあり、思わぬトラブルや問題を引き起こすこともあります。
さらに、病院へ通院すること自体がペットにとって大きな負担となり、暴れてしまうことで治療が困難になるケースもあります。もし通院ができない状況になった場合、治療の継続が難しくなり、治るべき病気が治らず治療が遅れてしまう恐れもあります。このような問題を解決するために、「わんにゃん保健室」では往診医療を提供しています。特に、通院ができず治療を中断せざるを得ないペットにとって、往診は非常に有効な手段となり得ます。

ペットと飼い主様の安心のための診療

病院での診察は、ペットが多く待機していることから、診察がどうしても急ぎ足になりがちです。
その結果、飼い主様への説明が不十分になったり、理解が追いつかないまま診察が終了してしまうことも少なくありません。ペットの治療において、飼い主様の理解は非常に重要です。
その理解がなければ、治療の効果は十分に発揮されません。

「わんにゃん保健室」では、時間をかけてじっくりと診察を行います。
ご自宅にお伺いし、まずは飼い主様のお話をお聞きします。
その上で、ペットの現在の状態を深く理解し、最適な医療方針をご提案します。
もしその方針に疑問があれば、その場で納得できるまでご説明いたします。
私たちは妥協せず、より良い医療を提供することを常に心掛けています。

在宅医療と緩和ケアでの安心

在宅医療や緩和ケアにおいて、飼い主様が特に直面するのは「どうしたら良いのか」という悩みです。
ペットのために何かをしてあげたいと思いながらも、それが本当にペットのためになっているのか、
という不安や疑問を抱えている飼い主様は多いです。
「わんにゃん保健室」では、そのような飼い主様に寄り添い、後悔のない緩和ケアやターミナルケアを提供しています。
ただの医療提供者ではなく、飼い主様とペットの心の支えとして寄り添い、
治療が難しい状況でも、ペットとその家族が最良の結果を迎えられるよう全力でサポートいたします。

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猫の腎臓病と穏やかに過ごすための在宅ケア

腎臓病は高齢の猫ちゃんにとても多い病気のひとつです。10歳を超えると多くの猫ちゃんで腎機能の低下が見られ、徐々に進行していきます。

初期は多飲多尿や食欲低下といった症状が見られる程度ですが、進行すると嘔吐や体重減少、貧血などが現れ、最終的には腎不全へと移行します。腎臓病は完治が難しい病気ですが、適切なケアを行うことで穏やかな時間を長く過ごすことができます。

しかし、猫ちゃんは通院を極端に嫌がることが多く、ストレスによって病状が悪化することもあります。そんな時に選択肢となるのが「在宅ケア」です。往診を利用することで、ご家族の負担を減らしつつ、猫ちゃんにとっても安心できる環境で治療を受けることができます。

この記事では、腎臓病の猫ちゃんに対する在宅ケアの流れや、看取りに向けた準備について詳しく解説します。

 

目次

 

 

猫の腎臓病の初期症状と気づき方

腎臓病は静かに進行する病気

猫の腎臓病は「気づいたときには進行している」ことが多い病気です。初期段階では目立った症状が少なく、ご家族が異変に気づく頃にはすでに腎機能の多くが失われていることも珍しくありません。

特に、高齢の猫ちゃんでは腎臓の機能が徐々に低下していくため、「年のせいかな?」と思われがちです。しかし、腎臓病の早期発見・早期対策が猫ちゃんの余命を大きく左右します。

 

こんな症状が見られたら要注意

以下のような症状が見られたら、腎臓病の可能性を疑いましょう。

- 水をたくさん飲む(多飲)

- トイレの回数が増え、尿の量が多い(多尿)

- 体重が減ってきた(削痩)

- 毛づやが悪くなった

- 後ろ足がふらつく(筋力低下)

- 食欲が落ちてきた

- 嘔吐が増えてきた

 

腎臓病の発見が遅れやすい理由

猫ちゃんは本能的に体調の悪さを隠そうとする動物です。特に腎臓病はゆっくり進行するため、少しずつ変化していく姿を毎日見ているご家族が異変に気づきにくいこともあります。

また、猫ちゃんは環境の変化を嫌うため、「病院に連れて行くこと自体がストレスになるのでは?」と通院をためらうご家族も多いです。

そのため、動物病院での定期検診が難しい猫ちゃんの場合は、日々の様子をしっかり観察し、異変に気づいたらできるだけ早く対応することが大切です。

 

 

猫の腎臓病が進行するとどうなる?

腎臓病の進行とともに現れる症状

腎臓病が進行すると、猫ちゃんの体にはさまざまな変化が現れます。初期症状の段階では気づきにくかった異変も、次第にはっきりと見えてくるようになります。

- 食欲が著しく低下し、好きなものも食べなくなる

- 体重減少が顕著になり、骨ばってくる

- 毛づやがさらに悪くなり、被毛がバサバサする

- 嘔吐が頻繁になり、胃液を吐くことが増える

- 後肢のふらつきが強くなり、歩くのが困難になる

- 貧血が進行し、歯茎や舌の色が薄くなる

- おしっこの色が薄くなり、臭いが弱くなる

 

腎不全の末期に起こる変化

腎臓病がステージ4に進行すると、腎機能のほとんどが失われ、老廃物を排出できなくなります。すると、以下のような症状が現れることがあります。

- まったく食べなくなる

- 水を飲む量も減る

- 寝ている時間が圧倒的に長くなる

- 呼吸が荒くなることがある

- 意識がぼんやりする(尿毒症による影響)

- 強い貧血で動くのが困難になる

- 尿毒症による痙攣発作が起こる

 

猫の腎不全末期での選択肢

この段階になると、腎臓の機能を回復させることはできません。そのため、治療の目的は「腎臓の負担を軽減しながら、少しでも快適に過ごしてもらうこと」にシフトします。

選択肢としては、以下のようなものがあります。

- 皮下点滴で体の水分バランスを維持する

- 貧血対策として造血ホルモン剤を使用する

- 嘔吐や胃腸の不快感を和らげる内服薬を使う

- 食事を無理に与えず、猫ちゃんのペースに合わせる

- 酸素室を準備し、呼吸をサポートする

ご家族ができることは限られていますが、猫ちゃんが少しでも楽に過ごせるように、最適なケアを考えていくことが大切です。

 

 

在宅でできる腎不全のケア

皮下点滴による水分補給

腎不全の猫ちゃんにとって、皮下点滴は重要なケアのひとつです。特に、腎機能が低下すると体内の水分バランスが崩れ、脱水が進行しやすくなります。定期的に皮下点滴を行うことで、次のような効果が期待できます。

- 脱水を防ぎ、腎臓への負担を軽減する

- 老廃物の排出を促し、尿毒症の進行を遅らせる

- 食欲の回復をサポートする

ご家族が自宅で皮下点滴を行う場合、適切な手技と準備が必要です。当院では、ご家族が無理なく実施できるよう、丁寧にトレーニングを行っています。

 

投薬管理:無理なく飲ませる工夫

腎不全の治療では、複数の薬を併用することが一般的ですが、猫ちゃんにとって投薬は大きなストレスになりやすいものです。以下のような方法を取り入れることで、負担を軽減しつつ投薬を続けることができます。

- 錠剤をすりつぶしてウェットフードに混ぜる

- シロップタイプの薬をスポイトで与える

- 投薬用のおやつを活用する

- どうしても飲めない場合は、皮下点滴に切り替える

当院では、猫ちゃんの状態や性格に合わせた投薬方法を提案し、ご家族と一緒に最適な方法を見つけていきます。

 

食欲が落ちたときの対応

腎不全が進行すると、食欲が低下することがよくあります。無理に食べさせようとすると、かえって猫ちゃんにストレスを与えてしまうこともあるため、以下のような工夫をしながら様子を見ていきます。

- 好きなフードや手作り食を試してみる

- 温めて香りを立たせることで食欲を刺激する

- 強制給餌が必要かどうかを慎重に判断する

- 食欲促進剤の使用を検討する

最終的には、食べる・食べないも猫ちゃんの意思のひとつです。無理のない範囲で、ご家族と一緒にサポートしていきます。

 

 

家での生活環境の整え方

トイレ環境の工夫

腎不全の猫ちゃんは多飲多尿になり、トイレの回数が増えることが一般的です。また、体力の低下によりトイレまでの移動が負担になることもあります。以下のような工夫で、快適なトイレ環境を整えましょう。

- トイレの数を増やし、寝床の近くにも設置する

- 段差をなくし、入りやすい形状のトイレを選ぶ

- ペットシーツを活用し、万が一の粗相にも対応できるようにする

特に、高齢の猫ちゃんはトイレの失敗が増えることがあります。叱らずに、できるだけ負担のない環境を整えてあげることが大切です。

 

寝床と移動スペースの調整

腎不全が進行すると、筋力が低下し、ふらつきや転倒のリスクが高まります。安全で快適に過ごせるよう、寝床や移動スペースを見直しましょう。

- 柔らかく暖かいベッドを用意し、快適な睡眠環境を整える

- 滑りにくいマットを敷き、転倒を防ぐ

- キャットタワーの段差を減らし、安全に登れるようにする

寝床の位置を工夫することで、猫ちゃんが安心して休めるようになります。

 

温度管理と快適な空間作り

腎不全の猫ちゃんは体温調節が難しくなることがあります。特に冬場の寒さは体力を奪うため、適切な温度管理が重要です。

- 冬場は湯たんぽやペット用ヒーターで温かく保つ

- 夏場はエアコンや扇風機を使い、適度な涼しさを維持する

- 直射日光を避けつつ、適度に日向ぼっこできる場所を用意する

快適な環境を整えることで、猫ちゃんがリラックスして過ごせるようになります。

 

 

在宅緩和ケアでの投薬と水分補給

投薬の工夫と飲ませ方

腎不全の猫ちゃんにとって、適切な投薬は病状の進行を遅らせるために重要です。しかし、猫ちゃんは投薬を嫌がることが多いため、できるだけ負担の少ない方法を選ぶ必要があります。

- シロップや粉薬を使用し、投薬用のおやつやウェットフードに混ぜる

- カプセルに入れて匂いを抑え、投薬をスムーズにする

- 強制投薬が必要な場合は、事前に獣医師から適切な方法を学ぶ

無理に投薬すると猫ちゃんにストレスがかかるため、なるべく自然に摂取できる方法を探していくことが大切です。

 

水分補給の重要性

腎不全では脱水を防ぐことが非常に重要です。猫ちゃんが自発的に水を飲める環境を整えることで、体調を安定させやすくなります。

- 複数の場所に新鮮な水を用意し、いつでも飲めるようにする

- 流れる水を好む猫ちゃんには、自動給水器を設置する

- ウェットフードや水分を多く含むフードを与え、水分摂取量を増やす

猫ちゃんが水を飲みやすい環境を整えることが、腎臓の負担を軽減するポイントです。

 

皮下点滴の導入と実施方法

腎不全が進行すると、経口摂取だけでは十分な水分補給が難しくなることがあります。そのため、皮下点滴を取り入れることで、脱水を防ぐことができます。

- 獣医師の指導のもと、ご家族が自宅で皮下点滴を行う

- 点滴の頻度や投与量は、猫ちゃんの状態に合わせて調整する

- 点滴を行う際は、猫ちゃんがリラックスできる環境を整える

皮下点滴はご家族の協力が必要ですが、在宅緩和ケアを進める上で非常に有効な手段となります。

 

 

腎不全の猫ちゃんの生活環境の工夫

猫ちゃんが過ごしやすい環境作り

腎不全の猫ちゃんが快適に過ごせるように、生活環境を工夫することが重要です。体力の低下や関節の衰えを考慮し、以下のような調整を行いましょう。

- 移動の負担を減らすために、ベッドやトイレを近くに配置する

- 登り降りの負担を軽減するため、スロープやステップを設置する

- 寒さや暑さに敏感になるため、適温を維持できるように空調を調整する

 

トイレ環境の見直し

腎不全では多尿傾向があるため、トイレ環境の調整が必要です。

- トイレの数を増やし、猫ちゃんがすぐに行けるようにする

- 高さの低いトイレを用意し、足腰への負担を軽減する

- トイレの出入り口に滑り止めマットを敷き、安全に移動できるようにする

 

快適な寝床の準備

腎不全の猫ちゃんは寝ている時間が長くなるため、快適な寝床を用意しましょう。

- 体圧を分散するクッション性の高いベッドを用意する

- 冬場は湯たんぽや電気毛布などで適度に暖かさを確保する

- 静かで落ち着いた場所に寝床を配置し、ストレスを軽減する

生活環境の調整を行うことで、猫ちゃんが安心して過ごせる時間を増やしてあげることができます。

 

 

腎不全の猫ちゃんとの最期の時間

ターミナル期のサイン

腎不全が進行し、ターミナル期に入ると以下のような変化が見られることがあります。

- 食欲が極端に低下し、ほとんど食べられなくなる

- 水を飲む量が減り、脱水が進行する

- 動くことが少なくなり、一日の大半を寝て過ごす

- 呼吸が浅くなり、不規則になる

- 意識がぼんやりし、呼びかけへの反応が鈍くなる

これらの症状が見られた場合、積極的な治療を行うか、できるだけ穏やかに見送るか、ご家族での話し合いが必要です。

 

看取りに向けた準備

最期の時間を穏やかに過ごせるよう、以下の準備をしておきましょう。

- 猫ちゃんが安心できる静かな環境を整える

- 必要に応じて酸素ハウスや保温設備を用意する

- 食事が取れなくなった場合の水分補給方法を考える

- 痛みや苦しみを軽減するための頓服薬を準備する

- 看取りのタイミングについて、獣医師と相談しておく

 

ご家族の心の準備

看取りの時間はご家族にとっても精神的に大きな負担がかかる時期です。以下のポイントを意識して、心の準備を整えましょう。

- 「最期の時間をどう過ごしたいか」を家族で話し合っておく

- 愛猫の状態に合わせて、できることを受け入れる

- 悲しみや不安を抱え込まず、獣医師や周囲のサポートを頼る

- 後悔のないよう、できる限りそばにいてあげる

最期の時間をどう過ごすかは、それぞれのご家族によって異なります。どの選択も間違いではなく、愛猫とご家族にとって最善の方法を見つけることが大切です。

 

 

看取り後の対応とご家族のケア

看取り後の対応

愛猫が旅立った後、まずは静かにお別れの時間をとることが大切です。すぐに何かを決めなくても大丈夫です。以下の手順を参考にしてください。

- 猫ちゃんの体を優しく拭き、落ち着いた場所に寝かせる

- ご家族でお別れの時間をゆっくりととる

- 動物病院やペット葬儀社に連絡し、火葬や埋葬の手続きを確認する

- 信頼できる人に話を聞いてもらい、気持ちを整理する

 

ペット葬儀の選択肢

ペットの葬儀にはいくつかの方法があります。それぞれのご家庭に合った形を選びましょう。

- 個別火葬:自宅でお別れをした後、ペット専門の火葬施設で個別に火葬を行い、遺骨を手元に残す

- 合同火葬:他のペットと一緒に火葬し、遺骨は共同墓地に納める

- 自宅での供養:遺骨を手元に置き、写真や思い出の品とともに供養する

- ペット霊園での埋葬:専門の施設に納骨し、定期的にお参りできる場所を確保する

 

ご家族の心のケア

ペットを失った悲しみ(ペットロス)は、深い喪失感を伴うことがあります。無理に気持ちを切り替えようとせず、自然な形で受け入れることが大切です。

- 悲しい気持ちを抑え込まず、家族や友人と共有する

- 写真や思い出を振り返り、感謝の気持ちを持つ

- 必要であれば、ペットロスカウンセリングを受ける

- 次のステップに進む準備ができたら、新たな家族を迎えることを検討する

愛猫との時間はかけがえのないものであり、思い出はずっと心の中に残り続けます。どのような形であっても、大切な家族として過ごした時間を忘れずに、ゆっくりと前を向いていきましょう。

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東京都台東区を中心に、東京23区、そして関東エリアでペットの往診診療を行っているわんにゃん保健室です。 当院では、通院が難しいわんにゃん・ねこちゃんのために、飼い主様のご自宅へお伺いし獣医療を提供しております。

本日のブログでは、当院が何故往診専門の動物病院であるかをご紹介いたします。

ペットへの治療に、往診という選択肢

ペットは人間とは異なり、自分で自分の状況を言葉で説明することはできません。 そのため、飼い主が体調や状況等を判断し、必要であれば動物病院に通院させる必要があります。

ですが、全ての方がペット中心の生活を送れるわけではありません。
ご自身の体調が悪いタイミングや、どうしても家を離れることが難しいご状況があるかもしれません。
あるいは、ペット自体が家から出ることが難しい・病院が嫌いで医者にかかることができない、といった状況もあると思います。

ですが、だからと言って治療を受けずにそのままにするわけにはいきません。
そういったご状況の方たちに、往診という選択肢が必要だと考えました。

当院は建物がある動物病院ではないため、道端で看板を見て来た、という方はいません。
ですが有難いことに、ホームページをご覧になってお問い合わせをいただくことが多くございます。

飼い主様からは
「往診で先生に家に来てもらえるなんて知らなかった」
「通院が嫌いな子なので、とても助かっている」

といったお声をいただきます。

飼い主の皆様の困難を解消する手助けができている事、
そして病院嫌いの犬や猫のために正しい獣医療が提供できていることに、嬉しく思います。

そして同時に、ペットの往診に関する認知度をもっと上げていきたいと考えました。
ご自宅でペットに関するお困り事や、ペットの緩和ケア・ターミナルケアで不安に思うことがあれば、すぐにお問い合わせください。

往診獣医療で大切にしている点

往診は、ペットがリラックスできる家が診察室になるため、 病院での治療よりも安心して治療を受けてくれる確率が高いです。
ですが飼い主様もペットも、治療に対して不安に思うことは多いはずです。
その中で、飼い主様とのコミュニケーションを大切にしています。

勉強し、獣医療に関する知識や能力はいくらでもつけることができます。
ですが、コミュニケーション能力は、自分で取り組んでいこうと思わなければ身に付きません。

コミュニケーションは、「自分が言いたいことを言う」能力ではありません。
飼い主様の立場に立って、心に寄り添う言葉や行動の選択が、コミュニケーションとなります。

どんなに卓越した知識やスキルがあったとしても、人として信用できない人や、
意思疎通が取れない人には自分の大切な家族を預けることはできません。
ですので、わんにゃん保健室では獣医師をはじめすべてのスタッフが、飼い主様に寄り添う姿勢を持っています。

ペットとその家族が安心できる治療を心がけておりますので、
お困りのことがございましたら、是非お気軽にご相談ください。

 

 

 

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犬の膵炎の在宅緩和ケア

犬の膵炎は、突然の嘔吐や激しい腹痛を伴い、場合によっては命に関わる病気です。多くのケースでは入院管理が推奨されますが、中には通院や入院が難しい犬もいます。

入院中のストレスや環境の変化により、状態が悪化してしまう犬も少なくありません。「できることなら自宅で落ち着いて過ごさせてあげたい」と考えるご家族のために、在宅緩和ケアの選択肢を詳しく解説します。
本記事では、膵炎の基本的な治療法に加え、在宅でできるケアの方法、症状の管理ポイントについてご紹介します。

 

目次

はじめに:膵炎とその治療の選択肢
膵炎の標準治療:通院・入院が可能な場合
在宅緩和ケアが必要なケースとは?
在宅での疼痛管理と症状緩和
在宅での経過観察と注意点
最期をどう迎えるか:ご家族の選択
まとめ:犬の膵炎と在宅緩和ケアの選択

 

 

はじめに:膵炎とその治療の選択肢

膵炎とは?犬の膵炎の基本

犬の膵炎は、膵臓が強い炎症を起こし、消化酵素が異常に分泌されることで膵臓自身を傷つけてしまう病気です。急性膵炎は特に症状が激しく、命に関わることもあります。
膵炎の発症には、脂肪分の多い食事や肥満、基礎疾患(クッシング症候群や糖尿病など)などが関係しているとされていますが、明確な原因が特定できないこともあります。

膵炎の症状と診断方法

膵炎の主な症状には以下のようなものがあります。

- 繰り返す嘔吐や下痢

- 食欲不振(全く食べなくなることも)

- お腹を触ると痛がる(腹部の違和感)

- 元気消失、ぐったりする

- 発熱や脱水

診断には、血液検査で膵炎のマーカー(Spec cPLIなど)を測定し、超音波検査で膵臓の腫れや異常を確認することが一般的です。

膵炎の治療方針と選択肢

膵炎の治療では、基本的に入院管理が推奨されます。その理由は、嘔吐や食欲不振が強いため、内服薬を使った治療が難しくなるためです。主な治療のポイントは以下の通りです。

- 点滴による水分・電解質補正

- 吐き気止めの投与

- 鎮痛剤による疼痛管理

- 必要に応じた抗生剤の使用

軽度の膵炎であれば、通院での治療も可能ですが、重度の場合には集中管理が必要になります。では、入院ができない場合、在宅でのケアはどこまで可能なのでしょうか?

 

 

膵炎の標準治療:通院・入院が可能な場合

入院管理のメリット

膵炎の標準治療は、基本的に入院での集中管理です。入院することで、以下のような治療が可能になります。

- 持続的な点滴で脱水や電解質バランスを整える

- 嘔吐がひどい場合でも、注射や点滴で薬を投与できる

- 痛みが強い場合に、持続的な鎮痛剤の投与が可能

- 必要に応じて酸素管理や血糖コントロールも実施できる

このように、入院管理は膵炎の治療において最も安定した環境を提供できます。

 

通院での治療が可能なケース

膵炎の症状が軽度で、嘔吐がそこまでひどくなく、食欲がわずかに残っている場合は、通院治療が可能です。通院治療では以下のような対応を行います。

- 点滴を打ち、脱水の進行を防ぐ

- 吐き気止めの注射や内服薬での対処

- 消化器サポートのフードを用いた食事療法

- 痛みが強くない場合の軽い鎮痛剤の使用

ただし、膵炎は急激に悪化することがあるため、通院での治療を選択する場合でも、慎重な経過観察が必要になります。

 

入院・通院のどちらが適しているのか?

愛犬の膵炎治療において、入院・通院のどちらが適しているかは、症状の重さやご家族の意向によります。以下のポイントを参考に判断することが重要です。

- 入院が適しているケース:重度の嘔吐・下痢、意識レベルの低下、強い腹痛、血液検査で著しい異常がある場合

- 通院が可能なケース:食欲がある程度あり、点滴での管理が不要な場合

- 在宅緩和ケアが必要なケース:入院や頻繁な通院ができない、または高齢やストレスに弱い犬である場合

もし入院や通院が難しい場合には、在宅での緩和ケアが選択肢になります。

 

 

在宅緩和ケアが必要なケースとは?

入院・通院が難しい理由

膵炎の治療には入院が推奨されますが、すべての犬が入院できるわけではありません。以下のような理由から、在宅緩和ケアを選択するご家族も少なくありません。

- 強い入院ストレス:病院が苦手で、入院すると極度のストレスを感じてしまう

- 家で最期を迎えたい:膵炎の重症度によっては回復が難しいため、病院で最期を迎えるのではなく、自宅で過ごさせたい

- 通院が困難:入院はさせたくないが、ご家族の事情により、頻繁な通院が難しい

このような場合、在宅での緩和ケアを検討することが重要になります。

 

在宅緩和ケアを選択する際のポイント

在宅緩和ケアでは、犬の症状を管理しながらできる限り苦痛を和らげることが目的になります。以下のようなポイントを押さえておくことで、適切なケアが可能になります。

- 吐き気止め・鎮痛剤の適切な使用:動物病院と相談し、在宅で使える薬を処方してもらう

- 水分補給の管理:皮下点滴を利用して脱水を防ぐ

- 食事管理:膵炎用の消化に優しいフードを準備し、少量ずつ与える

- 愛犬の変化をよく観察する:呼吸の異常、ぐったりしている、嘔吐が続くなどの症状があればすぐに獣医師に相談

在宅緩和ケアは、ご家族のサポートが不可欠です。そのため、無理のない範囲でケアできるよう、往診やオンライン相談などのサポートを活用することをおすすめします。

 

在宅緩和ケアのゴールとは?

在宅での膵炎ケアは、「回復を目指すケース」と「穏やかに見送るケース」の2つに分かれます。

- 回復を目指すケース:症状をコントロールしながら徐々に食欲や元気を回復させる

- 穏やかに見送るケース:愛犬が苦しまずに最期を迎えられるよう、疼痛管理や環境調整を行う

ご家族の希望に沿ったケアプランを立てることが大切です。

 

 

在宅緩和ケアの具体的な方法

1. 痛みの管理(鎮痛剤の使用)

膵炎の犬にとって痛みの管理は最も重要です。強い炎症が膵臓を刺激し、激しい腹痛を引き起こすため、適切な鎮痛剤の使用が不可欠です。

- 内服薬:軽度の痛みであれば、飲み薬での鎮痛管理が可能

- 皮下点滴による鎮痛薬:内服が困難な場合や、痛みが強い場合には、皮下点滴で鎮痛剤を投与

- 注射薬:必要に応じて、往診で鎮痛薬の注射を実施

在宅での鎮痛管理は、ご家族が犬の様子を観察しながら調整することが重要です。

 

2. 吐き気の管理(制吐剤の使用)

膵炎の犬は強い吐き気を感じることが多いため、食事を受け付けなくなることがあります。これを防ぐために、以下のような対応を行います。

- 制吐剤の内服:嘔吐が軽度であれば、内服薬でコントロール

- 皮下点滴での制吐剤投与:食欲がない場合には、皮下点滴に制吐剤を混ぜて投与

- 食事の工夫:少量ずつ、消化に優しいフードを与える

嘔吐が続く場合には、速やかに獣医師に相談することが大切です。

 

3. 水分補給(皮下点滴の実施)

膵炎による脱水を防ぐために、在宅での皮下点滴が推奨されます。

- 1日1回、皮下点滴を実施(ご家族が自宅で行う場合はトレーニングが必要)

- 電解質バランスを考慮:適切な輸液を使用し、犬の状態に合わせて調整

- 水分摂取のサポート:皮下点滴だけでなく、飲水量を確保できるよう、工夫が必要

皮下点滴の頻度や量は、獣医師と相談しながら調整しましょう。

 

4. 食事管理(膵炎用の低脂肪フード)

膵炎の犬にとって、適切な食事管理は回復の鍵となります。

- 低脂肪・消化の良い食事を選ぶ

- 少量ずつ、こまめに与える

- 食欲がない場合は流動食やシリンジ給餌を検討

食事の選択肢についても、獣医師と相談しながら決定することが大切です。

 

5. 環境の整備(安静とストレス軽減)

膵炎の犬は静かで落ち着いた環境で過ごすことが重要です。

- 安静を保てるスペースを作る

- 動きやすい場所にベッドやトイレを配置

- ストレスを最小限に抑えるため、過度な接触を避ける

快適な環境を整えることで、犬が少しでも楽に過ごせるようサポートします。

 

 

在宅緩和ケアの経過とご家族の対応

1. 初診時の状態とご家族の決断

犬の膵炎が判明し、ご家族は入院ではなく在宅での緩和ケアを選択しました。初診時には以下のような状態でした。

- 食欲低下:3日間ほとんど食べられていない

- 嘔吐が継続:水を飲んでも吐いてしまう

- 腹痛の兆候:背中を丸めるような姿勢

- 脱水の進行:皮膚をつまんでも戻りが遅い

この状態から、ご家族と相談しながら在宅緩和ケアのプランを決定しました。

 

2. 皮下点滴と投薬の実施

在宅での緩和ケアでは、皮下点滴と投薬が重要な役割を果たします。

- 皮下点滴:毎日2回、ご家族が自宅で実施(獣医師が指導)

- 鎮痛剤:痛みのコントロールのために定期投与

- 制吐剤:嘔吐を防ぐために皮下投与

ご家族には、投薬のタイミングや皮下点滴の方法について詳しくレクチャーしました。

 

3. 食事の工夫と経過

膵炎の犬は適切な食事管理が回復の鍵となります。

- 食事の工夫:低脂肪フードを少量ずつ与える

- 食欲がない場合:流動食をシリンジで与える

- 水分摂取:常に新鮮な水を用意し、飲水量を確認

在宅ケア開始から2日目には、少量ずつ食事を取れるようになりました。

 

4. ご家族のサポートと犬の変化

在宅緩和ケアの成功には、ご家族の協力が不可欠です。

- 観察の継続:毎日の様子を記録し、診察時に獣医師と共有

- 環境の整備:安静に過ごせる場所を確保

- ストレス軽減:いつも通り声をかけながら落ち着いた環境を維持

これにより、犬は次第に回復の兆しを見せ、落ち着いて過ごせるようになりました。

 

 

在宅緩和ケアの結果と今後の見通し

1. 在宅ケア開始後の経過

在宅緩和ケアを開始してから、犬の体調には徐々に変化が見られました。

- 1日目:嘔吐が軽減し、落ち着いて過ごせる時間が増える

- 4日目:少量ながら食事を受け付けるようになる

- 7日目:動きが出始め、短時間の歩行も可能に

- 14日目:食事量が安定し、投薬もスムーズに進む

この段階で、ご家族からも「少し元気になってきた気がする」という声が聞かれました。

 

2. 改善が見られたポイント

在宅緩和ケアによって、以下の点で改善が見られました。

- 嘔吐の完全抑止:制吐剤の効果で安定

- 食欲の回復:低脂肪フードを少量ずつ摂取

- 痛みの軽減:鎮痛剤により落ち着いた様子を維持

- ご家族の不安が軽減:在宅ケアに慣れ、対応がスムーズに

 

3. 今後の見通しと注意点

このまま安定した状態を維持できるよう、ご家族と協力しながらケアを継続していきます。

- 継続的なモニタリング:食欲や排泄、元気の有無を確認

- 皮下点滴の頻度調整:体調に応じて量や回数を調整

- 緊急時の対応準備:急変時の対処法を事前に共有

今後も定期的なフォローを行い、犬ができるだけ穏やかに過ごせるようサポートを続けます。

 

 

在宅緩和ケアの選択肢とご家族の決断

1. 入院と在宅ケアの選択肢

急性膵炎の治療には、一般的に以下の2つの選択肢があります。

- 入院治療:点滴や注射を用いて集中的に管理する

- 在宅緩和ケア:症状を和らげながら、自宅で見守る

本来であれば、入院管理が最善とされるケースが多いですが、ご家族の考え方や犬の性格、病状によっては在宅緩和ケアが適した選択となることもあります。

 

2. ご家族が在宅ケアを選択した理由

今回のケースでは、ご家族は入院ではなく在宅緩和ケアを選びました。その理由として、以下の点が挙げられます。

- 犬が入院を極度に嫌がる:ストレスで状態が悪化する可能性があった

- 自宅で穏やかに過ごさせたい:環境の変化がない方が安心できる

- 最後までそばにいたい:万が一のときに、一緒にいられる

- 治療の方向性を緩和ケアにシフト:病気の進行を考慮し、苦痛を和らげる方針に

こうしたご家族の想いを尊重し、往診でのサポート体制を整えました。

 

3. 在宅緩和ケアの準備と方針

在宅緩和ケアを選択するにあたり、以下の準備を行いました。

- 皮下点滴の指導:自宅での実施方法を詳しくレクチャー

- 投薬管理の調整:飲みやすい形での処方を検討

- 緊急時の対応プラン:急変時の行動指針を作成

ご家族の不安を軽減し、できる限り安心して看護できる環境を整えました。

 

 

まとめ:在宅緩和ケアを通じて感じたこと

1. ご家族の決断と向き合い方

今回のケースでは、入院ではなく在宅緩和ケアを選択し、ご家族が犬のそばで最後まで見守る道を選びました。この選択には、不安や葛藤が伴いましたが、「できる限り穏やかに過ごさせたい」という強い想いがありました。

在宅緩和ケアでは、獣医師の往診サポートのもと、ご家族が主体となってケアを行うことになります。だからこそ、事前にしっかりと準備し、正しい知識を持つことが重要です。

 

2. 在宅緩和ケアのメリットと課題

在宅緩和ケアを選択することで、以下のようなメリットがありました。

- 自宅という安心できる環境で過ごせる

- ご家族が最期までそばにいられる

- ストレスを最小限に抑えられる

一方で、次のような課題もありました。

- ご家族がケアを担う負担がある

- 急変時の対応が必要になる

- 精神的なプレッシャーを感じることがある

こうした課題を少しでも軽減するために、獣医師と密に連携をとり、状況に応じたサポートを受けながら進めていくことが大切です。

 

3. 最後に:後悔のない時間を過ごすために

在宅緩和ケアは、「最期まで穏やかに過ごさせてあげたい」と願うご家族にとって、大切な選択肢のひとつです。しかし、その道のりは決して簡単なものではなく、冷静な判断や決断が求められる場面もあります。

大切なのは、「どの選択が正解か」ではなく、「ご家族がどのように寄り添いたいか」です。最期の時間をどう過ごすか、どのようなサポートが必要かを考えながら、ご家族とペットが納得できる形を選んでいただきたいと思います。

もし在宅緩和ケアについてお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。ペットとご家族が安心して過ごせるよう、最適なプランをご提案いたします。

 

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犬の肺水腫の在宅緩和ケア

肺水腫とは?

肺水腫は、心臓の機能が低下することで肺に水が溜まり、呼吸が苦しくなる状態です。特に小型犬の高齢期に多くみられる僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、心臓のポンプ機能が低下し、肺水腫を引き起こすことがあります。

今回ご紹介するのは、13歳の小型犬モコちゃんのケースです。モコちゃんは2ヶ月前に僧帽弁閉鎖不全症と診断され、内服薬で経過観察を続けていました。しかし、ある日突然呼吸が荒くなり、肺水腫が疑われる状態に。動物病院で緊急処置を受けましたが、ご家族は入院ではなく在宅での緩和ケアを選択しました。

本記事では、モコちゃんの在宅緩和ケアの流れを通じて、肺水腫の管理やケアのポイントについて詳しく解説します。

IMG_7845.jpg

 

目次

モコちゃんのケース:肺水腫発症から在宅緩和ケアへ

在宅緩和ケアの開始:呼吸を楽にするための対策

現在の経過と今後の展望

まとめ:肺水腫の犬を在宅で支えるために

 

 

肺水腫発症から在宅緩和ケアへ

診断から2ヶ月間の経過

モコちゃんは13歳の小型犬で、2ヶ月前にかかりつけの動物病院で僧帽弁閉鎖不全症と診断されました。当初は内服薬で経過観察を続けていましたが、3日ほど前に呼吸がゼコゼコしているのに気づいたとのことでした。元気食欲などの一般状態には大きく変化はなく、たまたま定期検診だった日の前日の夜から体調が悪そうで、検査日当日は食欲廃絶の状態だったとのことでした。

 

呼吸状態の急変と肺水腫の診断

定期検診の当日、ご家族がモコちゃんの呼吸が異常に荒く、苦しそうにしていることに気づき、動物病院で詳しい検査をお願いしたところ、超音波検査を実施しようとした時に急変し、呼吸状態が一気に増悪したとのことでした。すぐに利尿剤などを用いた緊急処置を受けましたが、ご家族は入院でお別れしてしまうリスクを考慮し、ご自宅に連れて帰り、最後の時間を在宅緩和ケアで過ごさせたいと希望されました。

 

在宅緩和ケアの選択

動物病院では、急性肺水腫を疑う場合には、緊急処置と徹底した入院管理を行うことが常ですが、その選択が正しかったかどうかは、結果を見てみなければ誰も断定できません。モコちゃんのご家族は「入院中に亡くなってしまうのではないか」という不安を抱えました。

結果として、最期の時間を家で過ごさせてあげたいという想いから、入院ではなく在宅での緩和ケアを選択しました。

 

 

在宅緩和ケアの開始

酸素環境の構築

モコちゃんのご家族は、帰宅後すぐに酸素ハウスの導入を決定しました。肺水腫の犬にとって、酸素濃度を適切に維持することは、呼吸の負担を軽減するために非常に重要です。

当院では、以下のような方法で酸素環境の構築をサポートしました。

- 酸素発生装置をレンタルし、モコちゃんが落ち着いて過ごせるスペースを確保

- 酸素ハウス内の温度や湿度を適切に管理

- モコちゃんの呼吸状態に適した酸素濃度指示

 

皮下点滴と投薬プランの調整

肺水腫の犬では、内服薬を無理に飲ませることで誤嚥やストレスによる悪化が懸念されます。そのため、モコちゃんには以下の対応を実施しました。

- 一旦内服薬の全面中止と注射薬への変更

- 皮下点滴による投薬を導入し、必要な薬剤を投与

- 利尿剤を適切な用量で使用し利尿による呼吸状態改善を目指す

モコちゃんは、ご家族の優しい声掛けと適切な環境調整により、少しずつ落ち着きを取り戻しました。診療の最後には、寝返りや呼び掛けに応じるなどの行動を見せてくれました。

 

食欲管理と日常生活のケア

肺水腫の犬は、呼吸が苦しくなることで食欲が低下しがちです。モコちゃんの場合も、食事を口にする機会が減っていました。そのため、ご家族には以下のような工夫をお願いしました。

- モコちゃんが好む食材を与える

- 水分補給は自由にさせてあげる

このようなケアを通じ、モコちゃんが少しでも体調を安定させ、もしかしたら酸素室から離脱できるかもしれない期待をみつつ、僧帽弁閉鎖不全症からの肺水腫に対する在宅緩和ケアが始まりました。

IMG_7844.jpg

 

現在の経過と今後の展望

在宅緩和ケア開始時の状況

モコちゃんは、在宅緩和ケアを開始したばかりであり、まだ安定しているとは言えない状態です。呼吸は高濃度酸素下でかろうじて維持できており、皮下点滴による治療と酸素環境の調整を行いながら、少しずつ様子を見ていく段階です。

 

モコちゃんの今後の展望

現時点では、今後の経過がどのように進むかは分かりません。大きく分けると以下の2つのシナリオが考えられます。

 

回復に向かう場合

- まずは酸素室内での飲食ができるようになる

- 現在は酸素濃度を高めに設定しているため、徐々に濃度を下げても呼吸の乱れが起きないか確認

- 酸素濃度を30%台まで下げることができれば、酸素室からの離脱が視野に入る

- 呼吸の安定を最優先しながら、皮下点滴での投薬を継続し、状態が良くなれば内服薬へ移行

- 最終的に酸素室なしで日常生活を送れるようになり、内服薬でのコントロールが可能になるのが理想のゴール

 

病状が進行する場合

- 高濃度酸素下でも呼吸促迫が止まらない

- 食欲廃絶が続き、栄養補給が困難になる

- 利尿剤を投与しても排尿が認められない状態になる

 

今後の診療計画

今後の診療では、モコちゃんの呼吸状態、食欲、排尿の有無などをこまめにチェックしながら、適切なケアを続けていきます。回復に向かうか、それとも悪化していくかは、今後の経過次第です。引き続きご家族と連携を取りながら、可能な限り最善のサポートを行っていきます。

どちらの道を進むのか、または紆余曲折しながらどちらにも揺れ動くのか、慎重に見守りながらケアを続けます。

 

 

まとめ:肺水腫の犬を在宅で支えるために

在宅緩和ケアの選択とその意義

肺水腫を発症した犬にとって、在宅緩和ケアは、ご家族が最期まで寄り添いながら治療を行う選択肢の一つです。モコちゃんのように、入院ではなく自宅でのケアを希望するケースでは、適切な環境を整え、状態を見ながら慎重に対応することが求められます。

 

肺水腫の犬に必要なサポート

- 酸素環境の適切な管理:酸素室や酸素発生装置を活用し、呼吸の負担を軽減する

- 定期的な状態チェック:呼吸の変化、食欲、排尿の有無をこまめに確認する

- 適切な投薬プラン:内服薬の調整や皮下点滴による薬剤投与を行い、症状を管理する

家族の心構え:病状の進行に備え、最期まで穏やかに見守る準備をする

 

モコちゃんのこれから

モコちゃんは、まだ在宅緩和ケアを開始したばかりです。今後の経過次第で、回復に向かう可能性もあれば、症状が悪化することも考えられます。どのような道を辿るにせよ、ご家族がモコちゃんと過ごす時間を大切にしながら、最適なサポートができるよう努めていきます。

 

在宅緩和ケアのご相談について

肺水腫や心臓病を抱える犬の在宅緩和ケアについて、ご相談を希望される場合は、お気軽にご連絡ください。東京23区を中心に往診を行い、愛犬とご家族が安心して過ごせるようサポートいたします。

 

 

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在宅緩和ケアの流れとは?

高齢や病気によって通院が難しくなったペットにとって、在宅緩和ケアは大切な選択肢のひとつです。自宅での診療を通じて、ペットができるだけ苦しまずに穏やかに過ごせるようにサポートします。

わんにゃん保健室では、ご家族の不安に寄り添いながら、診療・投薬指導・在宅酸素の導入・定期フォローアップまで、一貫した緩和ケアを提供しています。

この記事では、当院の在宅緩和ケアの流れを詳しくご紹介します。ペットの最期の時間を後悔のないものにするために、ぜひご一読ください。

▼この記事の内容

 

 

1. 在宅緩和ケアとは?自宅での安心した医療を提供

在宅緩和ケアの目的

在宅緩和ケアは、病気や加齢によって通院が難しくなったペットが、ご家族と一緒に自宅で穏やかに過ごせるようにサポートする医療ケアです。

緩和ケアの目的は、「治すこと」ではなく、「苦痛を軽減し、穏やかな時間を過ごす」ことにあります。

  • 痛みや呼吸困難の緩和
  • 食欲低下時のサポート
  • 生活環境の調整とご家族の負担軽減

通院が難しいペットとご家族の負担軽減

高齢や病気の進行により、ペットがキャリーに入るのを嫌がる、移動の負担が大きいといった理由から、通院が難しくなることがあります。また、大型犬の場合は、歩けなくなると通院自体が物理的に困難になります。

往診による在宅緩和ケアでは、自宅で診療を受けられるため、ペットのストレスを大幅に軽減でき、ご家族も移動の負担を減らすことができます。

こんなペット・ご家族におすすめ

  • ペットが高齢で通院の負担が大きい
  • 病気の進行により、動物病院までの移動が困難
  • ペットが通院を極端に嫌がる(キャリーを見ただけでパニックになる)
  • 最期の時間をできるだけ穏やかに過ごさせたい

在宅緩和ケアを選択することで、ペットのストレスを最小限に抑えながら、ご家族がそばで見守ることが可能になります。

 

 

2. じっくり時間をかけた初回カウンセリング

初診は約2時間:ペットとご家族の状況を深く理解する

在宅緩和ケアを始める際、最も重要なのが初診の問診とカウンセリングです。ペットの病状だけでなく、ご家族の意向や生活環境も考慮しながら、最適な緩和ケアのプランを作成します。

当院では、初診時に約2時間をかけて以下のような内容を詳しく伺います。

  • ペットの病歴・現在の症状・服用中の薬
  • 食欲や排泄の状態、普段の生活リズム
  • ご家族のケアに対する考え方(どこまで治療をするか)
  • ペットが快適に過ごせる環境の確認

ご家族の気持ちに寄り添った方針の模索

緩和ケアでは、ペットのためだけでなく、ご家族の負担を減らすことも重要です。そのため、以下のような点も考慮しながら、無理のないケアプランを模索します。

  • ご家族がケアに割ける時間(仕事や家庭の事情)
  • どこまで治療を続けるか、在宅でどのように見守るか
  • 「最後まで自宅で看取りたい」「少しでも長く一緒にいたい」などの希望

「何が正解かわからない」「どうしてあげるのが一番いいのか迷う」と感じる方も多いため、獣医師と一緒に考えながら、最適な方針を決めていくことを大切にしています。

診療後に行う方針の決定

初診後には、問診と診察結果をもとに、以下のような方針を決めていきます。

  • 緩和ケアを進める上での具体的なケアプラン
  • 内服薬や皮下点滴の導入有無
  • 必要に応じた酸素管理の計画
  • ご家族ができる在宅ケアの指導

初診時にしっかりと方針を決めておくことで、今後のケアをスムーズに進めることができます。

 

 

3. 診察の流れと検査の実施

診察は基本的に獣医師1名で実施

在宅緩和ケアの診察は、ペットのストレスを最小限に抑えるため、基本的に獣医師1名で訪問し、穏やかな環境で行います。

診察では、ペットの状態を総合的に確認し、ご家族が普段気になっている症状についても詳しく伺います。

必要な検査の実施と動物看護師の同行

病状の変化を正確に把握するために、検査が必要な場合は動物看護師1~2名が同行し、以下のような検査を行います。

  • 血液検査:腎機能・肝機能・貧血の状態を確認
  • 超音波検査:胸水や腹水の有無、腫瘍の状態を確認
  • レントゲン検査:呼吸器や心臓の状態を把握(ご自宅では不可)

ご家族と結果を共有し、今後の方針を決定

検査結果はその場でご家族と共有し、今後のケア方針を相談しながら決定します。

  • 検査結果に応じた内服薬や皮下点滴の調整
  • 病状の進行に合わせた酸素管理の必要性
  • ご家族ができる在宅ケアの範囲

診察と検査を通じて、ペットの状態を正確に把握し、ご家族と一緒に最適なケアプランを立てていきます。

 

 

4. 具体的な在宅緩和ケアプランの策定

ペットの状態に応じた個別ケアプラン

診察と検査の結果をもとに、ペットの状態やご家族の希望に合わせた個別の在宅緩和ケアプランを作成します。

緩和ケアは「全ての症状に対処する」のではなく、ペットの負担を最小限にしながら快適に過ごせる方法を選択することが大切です。

緩和ケアプランの主な内容

  • 内服薬・皮下点滴の投与計画:投薬が難しい場合の代替方法も考慮
  • 呼吸管理:酸素発生装置の導入や使用方法の指導
  • 食事管理:食欲低下時の補助方法や好みに合わせた食事調整
  • 疼痛管理:痛みがある場合の鎮痛薬の使用
  • 生活環境の調整:移動しやすいスペース作りや寝床の整備

ご家族が無理なく続けられるプランを

緩和ケアは、ご家族が毎日行うケアでもあるため、無理のない範囲で続けられることが重要です。

  • 仕事や家事の合間でもできるケア方法の提案
  • ご家族の負担が少ないシンプルな投薬・点滴スケジュール
  • ペットの性格に合わせたストレスの少ない方法を優先

「何を優先すべきか」「何を諦めるべきか」も一緒に考えながら、最適なケアプランを決めていきます。

 

 

5. 内服薬・皮下点滴などの投薬指導

ご家族が無理なくできる投薬方法を提案

緩和ケアでは、投薬が負担になりすぎないことが大切です。ペットの性格やご家族の状況に合わせ、ストレスの少ない方法を提案します。

「内服薬が飲めない=治療ができない」わけではありません。飲めない場合には、皮下点滴や注射薬への切り替えを検討します。

内服薬の工夫とサポート

  • 投薬補助おやつ:おやつの中に薬を包み、自然に食べてもらう
  • ウェットフードに混ぜる:香りが強いフードで薬を包み込む
  • カプセルに入れて負担を減らす:苦味がある薬はカプセルで飲ませる

投薬に慣れていないご家族には、実際にやり方を見せながら指導し、スムーズにできるようサポートします。

皮下点滴の導入とトレーニング

腎不全や脱水症状がある場合、皮下点滴が在宅ケアの重要なポイントになります。ご家族が安心して実施できるよう、以下の点を重点的に指導します。

  • 適切な針のサイズと点滴量の確認
  • 皮下に適切に点滴液を注入する方法
  • ペットがリラックスできる体勢と環境作り

無理なく続けられる投薬計画

「毎日投薬しなければならない」と思うと、ご家族にとって大きな負担になります。そのため、無理なく続けられるスケジュールを提案します。

  • 飲ませる回数を最小限にする(1日1回にまとめるなど)
  • どうしても飲めない薬は皮下点滴や注射薬に切り替え
  • 投薬がストレスにならないよう、成功率の高い方法を選ぶ

ご家族が安心して投薬や点滴ができるよう、実践的なアドバイスを行いながらサポートします。

 

 

6. 生活環境に合わせた在宅酸素の運用指導

呼吸状態が悪化したときのための酸素管理

心疾患や腫瘍、腎不全の進行により、呼吸が苦しくなることがあります。このような場合、在宅での酸素療法が重要になります。

特に以下のような症状が見られた場合は、早めの酸素環境の整備を推奨します。

  • 呼吸が速く、浅い(頻呼吸)
  • お腹を使った呼吸(努力呼吸)
  • 伏せの姿勢で首を伸ばし、口を開けて呼吸する

在宅での酸素供給の方法

在宅で酸素を供給する方法には、酸素発生装置酸素ボンベの2種類があります。

  • 酸素発生装置:長時間の使用が可能で、自宅での管理に適している
  • 酸素ボンベ:緊急時に高濃度の酸素を即座に供給できる

酸素ハウスの活用と環境調整

小型犬や猫の場合、酸素ハウス(簡易的な酸素室)を設置することで、呼吸状態の安定を図ることができます。

  • ペットが出入りできるようにして、ストレスを最小限に
  • 室内の酸素濃度を適切に管理する(測定器の使用)
  • 酸素の供給量を状態に応じて調整する

大型犬の場合は酸素ハウスの設置が難しいため、鼻先に酸素を吹きかける方法を採用します。

ご家族ができる酸素療法の工夫

酸素管理を在宅で行うためには、ご家族の協力が不可欠です。以下のような工夫で、より効果的な酸素供給が可能になります。

  • 酸素発生装置の設置場所をペットの好きな場所に調整
  • 酸素を嫌がる場合は、徐々に慣れさせる
  • ペットがリラックスできる環境を作り、呼吸を落ち着かせる

在宅での酸素療法は、ご家族の理解と協力が不可欠です。事前に準備し、適切なタイミングで導入することで、ペットの呼吸状態を安定させることができます。

 

 

7. 定期フォローアップとご家族へのサポート

定期的な訪問診療でペットの状態を把握

在宅緩和ケアでは、定期的なフォローアップが重要です。ペットの状態に合わせて、診察やケアプランの見直しを行います。

訪問診療の頻度は以下を目安に調整します。

  • 安定している場合:1〜3ヶ月に1回程度の訪問診療
  • 症状が進行している場合:2週間~1週間に1回
  • 終末期の管理:必要に応じた頻回のフォローアップ

ご家族が不安にならないためのサポート

緩和ケアでは、ペットだけでなくご家族のサポートも大切です。ご家族が「何をすればいいかわからない」とならないよう、以下の対応を行います。

  • ペットの状態が悪化したときの対応方法を事前に説明
  • 食欲低下や呼吸の変化など、注意すべきポイントを共有
  • 内服薬・点滴の管理に関する相談受付

緊急時の対応と判断のポイント

「急に元気がなくなった」「食欲が落ちた」「呼吸が苦しそう」など、緊急時の対応が必要な場面では、すぐにご相談いただける体制を整えています。

ただし、緩和ケアを行う上で、救急対応が難しいケースもあります。そのため、以下のようなポイントを事前にお伝えし、ご家族に判断していただくこともあります。

  • 動物病院に連れて行くべきか、在宅で見守るべきか
  • 症状が出たときの具体的な対応手順
  • どのような状態が「危険な兆候」なのかを理解しておく

ご家族が不安なく対応できるよう、事前にしっかりと準備を整え、サポートしていきます。

 

 

8. わんにゃん保健室の在宅緩和ケアとは

在宅緩和ケア専門の動物病院として

「わんにゃん保健室」は、ペットの在宅緩和ケアを専門とする往診専門の動物病院です。通院が難しくなったペットとご家族のために、ご自宅での診療を提供しています。

当院では、病気の治療だけでなく、ペットとご家族が穏やかに過ごせることを最優先に考え、以下のような診療を行っています。

  • 緩和ケアの方針決定とカウンセリング
  • ご自宅での診察・検査・処置
  • 内服薬や皮下点滴などの投薬指導
  • 在宅での酸素管理サポート
  • 終末期のケアと看取りのサポート

東京23区を中心に訪問診療を実施

わんにゃん保健室では、東京23区を中心に往診を行っています。ご自宅での診療をご希望の方は、お気軽にご相談ください。

「病院に連れて行くのが難しくなった」「ペットが通院を嫌がるようになった」と感じたら、一度往診を検討してみてください。

ご相談・お問い合わせ

ペットの在宅緩和ケアについてのご相談は、当院の公式サイトまたはお電話にて受け付けています。

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ペットのターミナルケア

ペットの最期の時間を迎えるとき、ご家族にはさまざまな選択が求められます。「もっと何かできたのでは?」「これでよかったのだろうか?」と、迷いや葛藤を抱えることも少なくありません。

ターミナルケアでは、時に冷静な判断を求められる場面があります。しかし、その選択は「正解・不正解」ではなく、「その子にとって最善かどうか」が大切です。ご家族の決断に後悔が残らないよう、ペットの状態や希望をしっかりと見つめ、自分を信じて選択していくことが重要です。

この記事では、ターミナルケアにおいてご家族が持つべき心構えや、決断のポイントについてお伝えします。

【目次】

 

1. ターミナルケアとは?

ペットのターミナル期とは?

ターミナル期とは、病気の進行や加齢により治療による回復が見込めなくなった段階のことを指します。この時期のケアでは、延命を目的とするのではなく、ペットができるだけ苦痛を感じず、穏やかに過ごせることを最優先に考えます。

ターミナルケアの目的と役割

ターミナルケアの最大の目的は、ペットの生活の質(QOL)を維持し、できる限り安らかに最期を迎えられるようにすることです。そのため、以下のようなケアが行われます。

  • 痛みや苦しみを和らげるための緩和医療
  • 呼吸困難時の酸素供給や環境調整
  • 食欲が低下した際のサポート
  • ご家族の精神的なケアと意思決定のサポート

在宅ケアと病院ケアの違い

ターミナル期のケアには、動物病院での治療と在宅での緩和ケアの2つの選択肢があります。

  • 病院でのケア: 集中的な医療措置が可能だが、移動や環境のストレスが大きい
  • 在宅ケア: 慣れた環境で安心して過ごせるが、家族のサポートが必要

どちらの選択肢がペットにとって最善かを、ご家族と獣医師で話し合いながら決めることが大切です。

 

 

2. ご家族が持つべき心構え

冷静な判断が求められる場面

ターミナル期では、ご家族が「何をしてあげるべきか」「どこまで治療を続けるべきか」といった選択を迫られることが多くなります。特に、延命処置を行うか、緩和ケアに切り替えるかの判断は、多くのご家族にとって難しい決断です。

その場の感情に流されず、ペットにとって何が最善かを考えることが大切です。決して「諦める」のではなく、「ペットのために最良の選択をする」という視点を持つことが求められます。

「してあげたいこと」と「必要なこと」

ご家族は、「もっとご飯を食べてほしい」「最期まで歩かせてあげたい」など、できるだけ今まで通りの生活を送らせてあげたいと思うものです。しかし、ペット自身がそれを望んでいるかどうかを考えることも重要です。

例えば、食事を無理に与えることで苦しみが増す場合もあります。また、移動が負担になる状態で無理に歩かせることが、ペットの体力を奪うこともあります。「本当に必要なことは何か?」を冷静に見極めることが大切です。

自分の決断を信じることの大切さ

どんな選択をしても、「あの時こうしていれば…」という後悔が残ることは少なくありません。しかし、その時の自分が精一杯考えて出した決断であれば、それがペットにとって最善の選択だったはずです。

「正解のない選択」だからこそ、ご家族はペットの状態と向き合い、自分を信じて決断をすることが必要になります。迷ったときには、獣医師や周囲のサポートを受けながら、冷静に判断できる環境を整えましょう。

 

 

3. ターミナル期における決断

延命治療を続けるか、緩和ケアに切り替えるか

ターミナル期では、延命治療を続けるか、緩和ケアに移行するかの判断が求められます。

  • 延命治療:さまざまな方法を駆使して、できる限り生命を維持する
  • 緩和ケア:痛みや苦しみを和らげ、穏やかに過ごせるようサポートする

どちらの選択肢も間違いではなく、ご家族の価値観やペットの状態に合わせて決めることが大切です。

苦痛緩和のための鎮静や鎮痛処置

ターミナル期には、呼吸困難や痛みが出てくることがあり、鎮静剤や鎮痛剤を使用するかどうかの判断が必要になることがあります。

しかし、ご家族の中には「意識がなくなってしまうのでは?」という不安を感じる方もいます。獣医師と相談しながら、ペットにとって最良の方法を選択することが重要です。

最期をどこで迎えさせてあげるか

ペットの最期を病院で迎えるのか、それとも自宅で迎えるのかという選択も、ご家族にとって大きな決断となります。

  • 病院での看取り:医療設備が整っているため、緊急対応が可能
  • 在宅での看取り:慣れた環境で、家族に囲まれて穏やかに過ごせる

在宅での看取りを希望される場合は、事前に緩和ケアの準備を整えておくことが大切です。

 

 

4. ご家族自身のケアも大切に

ペットロスとどう向き合うか

ターミナルケアの過程では、ペットの状態を見守る中で強い悲しみや不安を感じることがあります。そして、最期を迎えた後も「ペットロス」と呼ばれる喪失感に苦しむことが少なくありません。

  • 「もっと何かできたのでは?」と後悔してしまう
  • ペットがいない日常に適応するのが難しくなる
  • 気持ちの整理がつかず、涙が止まらない

ペットロスは自然な感情です。大切なのは、一人で抱え込まずに誰かに気持ちを話すこと。家族や獣医師、ペットロスに理解のある友人と、気持ちを共有することが心のケアにつながります。

少しでも後悔しないためにできること

「もっとこうしてあげればよかった…」と後悔しないために、以下のことを意識してみてください。

  • ペットの様子を日々観察し、必要なケアを行う
  • 「何が正解か」ではなく、「今できる最善の選択」を考える
  • 決断に迷ったときは、獣医師や専門家の意見を参考にする

ご家族が冷静に考え、しっかりと向き合うことで、「最期までできることをやってあげられた」と思えるようになります。

支えてくれる人と繋がる

ターミナルケアの期間は、ご家族自身の心のケアも非常に重要です。一人で抱え込まず、信頼できる人と話すことで気持ちが少し楽になることもあります。

  • 動物病院のスタッフや往診獣医師に相談する
  • 同じ経験をした飼い主さんと交流する
  • ペットロスのサポートグループに参加する

ペットのためにも、ご家族自身の心のケアを大切にしながら、最期までしっかりと寄り添っていきましょう。

 

 

5. 獣医師ができるサポート

ご家族の決断を支える役割

ターミナルケアでは、ご家族が重要な決断を迫られる場面が多くあります。しかし、その決断を一人で抱え込む必要はありません。きっとかかりつけの獣医師は、医学的な視点だけでなく、ご家族の気持ちにも寄り添いながら、最善の選択をサポートしてくれるはずです。

  • 現在のペットの状態を正しく把握する
  • 緩和ケアに関する選択肢を分かりやすく説明する
  • ご家族の意向に沿った治療・ケアプランを提案する

「このまま見守るべきか、処置をするべきか」など、判断に迷った際には、獣医師と話し合うことで適切な選択ができるようになります。少なくとも、ご家族としてどうしていきたいのかを、できるだけ明確にして伝えましょう。

ターミナルケアにおける医療の選択肢

ペットの状態に応じて、ターミナル期には以下のような医療的な選択肢が考えられます。

  • 痛みや苦しみを軽減するための鎮痛剤・鎮静剤
  • 呼吸が苦しい場合の酸素供給(酸素発生装置、酸素マスク)
  • 水分補給のための皮下点滴
  • 食事が取れない場合の栄養管理

「どこまで治療を行うか」はご家族の希望によって異なります。獣医師と相談しながら、ペットにとって一番穏やかに過ごせる方法を選びましょう。

ご家族とペットのための最適なプラン

ターミナルケアは、ペットだけでなく、ご家族にとっても大切な時間です。獣医師は、その時間が少しでも穏やかに、後悔のないものとなるよう、サポートを提供します。

  • ペットの体調に応じたケアプランを作成
  • ご家族が自宅でできるケアのアドバイス

「何をしてあげるべきか」と悩むのではなく、「今、何ができるのか」を一緒に考えながら、最期の時間を大切に過ごしましょう。

 

 

6. 私たちのターミナルケア

在宅緩和ケアを支える往診専門動物病院

わんにゃん保健室は、ご自宅での緩和ケア・ターミナルケアを専門とする往診動物病院です。「病院に連れて行くのが難しい」「最期まで自宅で一緒に過ごしたい」というご家族の願いに寄り添いながら、ペットが安心できる環境で穏やかに過ごせるようサポートします。

当院のターミナルケアでできること

ペットの状態やご家族の意向に合わせて、以下のようなケアを提供しています。

  • ペットの苦痛を軽減するための鎮痛・鎮静処置
  • 呼吸困難時の酸素供給(酸素発生装置の設置・管理)
  • 水分補給や薬の投与を目的とした皮下点滴
  • 食事が取れない場合の栄養管理アドバイス
  • ご家族ができるケアの指導
  • 最期の時間を穏やかに過ごすための環境づくり

「何をしてあげるのがベストなのか分からない」と感じたときも、獣医師と相談しながらケアを決めることができます。

対応エリアとご相談について

当院では、東京23区・千葉・埼玉・神奈川エリアを中心に往診を行っています。「今すぐ相談したい」「これからターミナルケアを考えたい」といった場合も、お気軽にお問い合わせください。

ターミナルケアは、ご家族にとってもペットにとっても、とても大切な時間です。最後の時間を後悔のないものにするために、一緒に考えていきましょう。

お問い合わせは、お電話またはWebフォームから受け付けています。

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犬猫の往診専門動物病院
わんにゃん保健室
 
猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
電話番号:03-4500-8701(往診本部直通)
 
 
受付時間:10:00~19:00
休診日:不定休診療カレンダー
 
〒111-0036
東京都台東区松が谷3-12-4 マスヤビル5F
 
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在宅緩和ケアはいつからなの?

ペットが高齢になり、慢性疾患や病気の進行が見られると「いつから在宅緩和ケアに切り替えるべきか?」と悩むご家族は多いです。

「まだ通院できるから大丈夫」「お薬を飲めているうちは病院で診てもらうべき?」と思う一方で、ペットが通院のストレスでぐったりしてしまったり、内服薬が難しくなったりすると、ご家族も不安を抱えるようになります。

この記事では、在宅緩和ケアを検討するべきタイミングと切り替えるポイントについて解説します。 ペットが最期まで安心して過ごせるように、負担を減らしながら適切なケアを選択していきましょう。

目次

 

 

1. 在宅緩和ケアとは?

在宅緩和ケアの目的

在宅緩和ケアとは、病気の治療ではなく、ペットが残りの時間をできるだけ穏やかに過ごせるようにするためのケアです。特に高齢のペットや慢性疾患を抱えた子にとって、通院の負担を減らし、安心できる環境でケアを受けられることが大きなメリットになります。

病院での治療との違い

動物病院では、「治療」を中心とした診療プランを組んでいきますが、慢性疾患やがんなどの末期では、基本的には治すというよりは症状をコントロールして、これ以上悪化させないようにすることが目的だったりもします。この段階になると検査の頻度も高くなり、ペットにとって通院が負担になることが懸念されることと思います。一方、在宅緩和ケアでは、ご自宅で必要な検査や処置(皮下点滴、投薬管理、栄養補助など)を行いながら、ペットがリラックスできる環境を整えることができます。

ご家族の負担を軽減するケア

緩和ケアはペットだけでなく、ご家族の負担を軽減することも目的としています。通院のストレスが減ることで、ご家族も安心してケアに専念できるようになります。また、ペットの状態に応じた適切なアドバイスを受けることで、最期の時間を後悔なく過ごすことができます。

 

 

2. 在宅緩和ケアを検討するタイミング

通院が負担になってきたとき

ペットが高齢になり、通院のたびに疲れやすくなったり、診察後にぐったりしてしまうことが増えてきたら、在宅緩和ケアへの切り替えを考える時期かもしれません。特に、大型犬で歩行困難になった時や通院ストレスが大きい猫にとって、往診によるケアは負担を大きく軽減できます。

内服薬が難しくなったとき

病気の進行とともに、内服薬を飲ませることが難しくなる場合があります。特に、食欲が低下し始めたペットに無理に投薬を続けることで、かえってストレスを与えてしまうことも。在宅緩和ケアでは、皮下点滴や注射による投薬管理が可能なため、ペットの負担を減らしながら治療を続けることができます。

食欲や活動量が低下してきたとき

「最近あまり食べなくなった」「寝ている時間が増えた」と感じる場合、ペットの体調に大きな変化が起こっている可能性があります。食事を摂ることが難しくなってきたときこそ、適切な栄養管理やケアが必要です。在宅緩和ケアでは、食欲低下時の工夫や栄養補助、静かな環境づくりをサポートすることができます。

 

 

3. 状態に応じた切り替えのポイント

慢性疾患の進行に応じて

慢性疾患を抱えているペットは、病気の進行とともに治療の負担が増していきます。例えば、腎臓病の猫の場合、皮下点滴が必要になったり、食欲が低下したりするタイミングで、通院ではなく在宅ケアへ切り替えることで負担を軽減できます。心臓病の犬では、呼吸が苦しくなってくると頻繁な検査や投薬管理が必要になるため、在宅での緩和ケアが有効になります。

呼吸が苦しくなったとき(酸素環境の準備)

呼吸が苦しそうになってきた場合、病院への移動がかえって負担になってしまうことがあります。在宅緩和ケアでは、酸素発生装置や酸素ハウスを導入し、自宅で呼吸をサポートすることが可能です。特に、心疾患や肺疾患を抱えるペットの場合、早めに酸素環境を準備することで、苦しさを和らげることができます。

痛みや不快感が増えてきたとき

ペットの体調が悪化すると、痛みや不快感が強くなることがあります。このような場合、無理に積極的な治療を続けるよりも、痛みを和らげ、できる範囲のケアをする選択肢があります。在宅緩和ケアでは、適切な鎮痛管理を行いながら、ペットが穏やかに過ごせる環境を整えることができます。

 

 

4. ご家族の気持ちと在宅ケアの選択

在宅ケアを選ぶ心理的な不安

「本当に自宅で看られるのか?」「最期を家で迎えさせてあげるのは正しいのか?」といった不安を抱えるご家族は多いです。在宅緩和ケアは、病院での治療を諦めることではなく、ペットの負担を最小限にしながら、穏やかに過ごすための選択肢の一つです。

事前に準備しておくべきこと

在宅緩和ケアを選択する際には、あらかじめ以下の準備をしておくと安心です。

  • かかりつけ医や往診専門の動物病院と連携する
  • 必要な医療機器(酸素発生装置・皮下点滴セットなど)を整える
  • 家族のスケジュールを調整し、ケアの時間を確保する

緩和ケアの選択肢と柔軟な対応

在宅緩和ケアでは、ご家族の状況やペットの状態に応じて、治療の進め方を柔軟に調整できます。たとえば、最初は内服薬で管理しながら、徐々に皮下点滴や注射に切り替えるなど、その子に合った方法を選択していきます。

 

 

5. 在宅緩和ケア切り替えの準備

かかりつけ医との相談と連携

在宅緩和ケアに切り替える際は、まずかかりつけの動物病院や往診専門の動物病院に相談することが重要です。病状の進行やケアの方針を獣医師と共有し、適切なサポートを受けられるよう準備を整えます。

自宅でできるケアの確認

在宅緩和ケアでは、ご家族ができる範囲でのケアが求められます。以下の点を確認しておくと、安心して対応できます。

  • 投薬管理(内服薬や注射の準備)
  • 皮下点滴の実施(必要に応じて練習)
  • 食欲が低下したときの対応(流動食や栄養補助)

 

必要な医療機器・物資の準備

ペットの状態に合わせて、以下のような医療機器や物資を揃えておくとスムーズにケアが進められます。

  • 酸素発生装置や酸素ハウス(呼吸が苦しくなったときに備えて)
  • 皮下点滴セット(脱水症状や腎不全のケア)
  • ペット用の介護マットや滑り止めマット(移動をサポート)

 

 

6. 在宅緩和ケアのメリットと事例

ペットがリラックスできる環境

慢性疾患の後半や腫瘍を抱えた犬猫、特に終末期にさしかかった時には、病院での診察や処置は、ペットにとって大きなストレスになります。在宅緩和ケアでは、慣れ親しんだ環境でケアを受けることができるため、精神的な負担が軽減されます。特に、通院が難しい高齢のペットにとって、自宅で安心して過ごせることは大きなメリットです。

家族が穏やかに見守れる時間

在宅緩和ケアを選ぶことで、ご家族はペットと過ごす時間を最大限に確保できます。通院にかかる時間やストレスが減ることで、ペットとゆっくり過ごしながら、最期の時間を大切にすることができます。

実際に在宅緩和ケアを選択したケース

例えば、腎臓病を患った高齢の猫ちゃんが、通院の負担を減らすために在宅緩和ケアに切り替えたケースがあります。皮下点滴や酸素管理を自宅で行うことで、ペットもご家族も安心して過ごすことができました。実際に、多くのご家族が「最期まで穏やかに過ごせた」と話されています。

 

 

7. どんなサポートが受けられるのか?

往診専門の動物病院による診察

在宅緩和ケアでは、往診専門の動物病院による診察を受けることができます。通院が難しくなったペットのために、獣医師がご自宅に訪問し、診察や必要な処置を行います。定期的な診察だけでなく、急な体調変化にも対応できるのが特徴です。

皮下点滴や注射薬の処方

腎臓病やがんなどの慢性疾患を抱えるペットには、皮下点滴や注射薬が処方されることがあります。ご家族が自宅で投与できるよう、獣医師が指導を行い、ペットの状態に応じたケアプランを提案します。

酸素発生装置や介護用品の手配

呼吸が苦しくなったペットのために、酸素発生装置や酸素ハウスを手配することも可能です。また、寝たきりのペットには、介護マットや歩行補助のグッズなど、快適に過ごすためのサポート用品も提供されます。

 

 

8. わんにゃん保健室の在宅緩和ケア

ペットとご家族に寄り添う往診サービス

わんにゃん保健室では、通院が難しくなったペットのために、在宅での緩和ケアを提供しています。往診専門の獣医師がご自宅に伺い、ペットの状態を丁寧に診察し、ご家族の希望に沿ったケアプランを立てていきます。

診療エリアと対応可能なケア

東京23区を中心に、埼玉・千葉・神奈川の一部地域まで対応しています。対応可能なケアには、以下のようなものがあります。

  • 定期的な往診(ペットの状態に応じた診察)
  • 皮下点滴・注射薬の処方と指導
  • 酸素発生装置や介護用品の導入サポート
  • 最期の時間を穏やかに過ごすためのターミナルケア

 

在宅緩和ケアをご検討の方へ

「在宅でできる限りのことをしてあげたい」「穏やかな最期を迎えさせてあげたい」そんなご家族の思いに寄り添いながら、サポートを行っています。ペットの状態が悪化する前に、早めにご相談いただくことで、最適なケアをご提案することが可能です。

東京23区・埼玉・千葉・神奈川エリアで往診を希望される方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

 

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