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猫ちゃんの多くは動物病院への通院が難しく、その中でも頑張って通院されるご家族様はたくさんいます。

 

ただ、もう治らない病気を抱えたり、体力的にキツくなった時には、在宅医療に切り替えてあげることも一つの手段です。

 

犬猫の在宅医療は発展途上であるのは確かであり、今後普及してくれるかどうかは、まだまだ不確かな状況です。

 

それでもかかりつけの動物病院に往診してくれるかどうかを確認し、難しいようであれば往診ができる動物病院を早々に探しておくことをお勧めします。

 

今回は、重度の黄疸を抱えた猫のはなちゃんの3回目です。

 

初診でぐったりしており、検査にて甲状腺機能亢進症が見つかり、その治療を実施したところ元気さを取り戻してきたことで、もしかしたらこのまま回復してくれるかもしれないと期待した矢先、状態が暗転しました。

 

2024年3月11日、お母さんの見守る中、眠るように旅立ちました。

 

はなちゃんの診療日誌、最終章を始めます。

 

はなちゃん①.jpg

 

再診(診察24日目)

前日から調子が悪かったこともあり、夜中にご連絡をいただきました。

 

折り返しができたのはこの日の朝で、調子が悪く、吐いてしまったというものでした。

 

日中はお仕事があるため、夕方のお時間で調整したところ、夜間の時間で予約をお受けすることができました。

 

その日の夜に往診で訪問すると、少し元気のないはなちゃんがいました。

 

お話をお伺いすると、前日からなんとなく体調の変化に気づいていたが、運動量としてはそこまで変わっていなかったとのことでした。

 

しかし、今朝になるとじっとして動かなくなり、朝2:00に少量のドライフードを多部田ことを最後に、食べたそうになくが食べられないという状況だったとのことでした。

 

排便も前日が最後で、尿量も減り、また濃い黄色のおしっこになったとのことでした。

 

飲水量も減っているということもあったので、利尿剤をカットしたこともあり、もしかすると尿量が減った原因は単純に利尿剤をカットしたからと考えたかったですが、黄疸尿を見たことがあるお母さんからのお話でしたので、また黄疸が始まったことを瞬時に悟りました。

 

また、制吐剤が入っているにもかかわらず、嘔吐を認めました。

 

超音波検査にて胃から十二指腸にかけて、内容物の鬱滞を確認し、腸管の動きが悪くなってきたことを考え、一部制吐関連の医薬品を変更し、腸管の動きが良くなることを期待しました。

 

同時にステロイドの用量を増やし、下がってしまった状態が、また安定を取り戻してくれるように祈りました。

 

翌日の朝までに1口も食べなかった場合には、翌日の夜間にお伺いすることとしたのですが、翌朝少しだけ食べてくれたことを認めたため、少し様子見としました。

 

再診(診察26日目)

前回の結果で、腎数値が大幅下がって参考基準値内に入っていました。

 

そして、肝数値が一気に上昇し、黄疸が出始めました。

 

超音波検査にて胃から十二指腸にかけての鬱滞に、変化はありませんでした。

 

ここまで急激に腎数値が改善するのは珍しいことであり、違和感を覚えました。

 

当初考えていた、甲状腺機能亢進症によって肝負荷が上がり肝障害を発症し、黄疸発症を起こした。また、慢性腎臓病はマスクされた状態だったこともあり、甲状腺機能亢進症のコントロールによって、慢性腎臓病が表に見えるようになった、というストーリーは否定的であると考えました。

 

血栓によって肝臓が障害され黄疸が発症し、次に腎臓が障害されて腎数値が一気に上がってきた、というストーリー変更が起こりました。

 

他の血液検査結果を踏まえ、腫瘍が隠れていることを考えました。

 

甲状腺機能亢進症は、別途発症していたにすぎなかったと結論づけました。

 

過去症例からの経験則から、肥満細胞腫とリンパ腫が挙げられますが、その両方ともに得られるはずの画像所見は認めませんでした。

 

ただ、精査が叶わないのが在宅医療であり、もう麻酔をかけた精査を求めないのが、ペットの終末期です。

 

状態が下がっていることから、無理に内服させなくてもいいサプリは休薬とし、ステロイドを増やして、回復してくれることを祈りました。

 

再診(診察29日目)

肝数値がさらに悪化していること、黄疸もさらに強くなっていることが発覚しました。

 

昨日から元気がなく、ご飯の催促も昨日少しだけであり、今日は全くないとのことでした。

 

前日の排便が最後で、少量のだけで出ていました。

 

2日前に嘔吐があり、エコーに写っていた胃の内容物が出てきたのだと思われました。

 

その分だけ胃に空間ができ、ご飯を食べられていたのだと考えました。

 

消化管の通過障害を伴う疾患はたくさんあります。

 

病気にもよりますが、完全閉塞を伴った場合でもう治る見込みがない場合、ご飯に対する考え方は異なります。

 

おそらく、多くの獣医師の意見は、食べても吐くだけであり、吐くのは辛いから、もう食べさせないであげましょう、というものです。

 

食べても吐くだけだとは思います。

 

それでも、食べたいという本人の意思を尊重してあげたいです。

 

在宅緩和ケアでは、動物たちがどうしたいのかに委ねるように伝えています。

 

強制給餌はしないほうがいいです。

 

ただ、食べたいのであれば、食べさせてあげてください。そのように伝えています。

 

はなちゃんも例外ではなく、食べられそうであれば食べさせてあげてくださいとし、この日の診察を終了しました。

 

再診(診察32日目)

 

2024年3月9日の土曜日の11時に訪問して、はなちゃんの様子を診させていただいました。

 

そこにいたのは、ぐったりしたはなちゃんでした。

 

はなちゃん3-①.png

 

こたつの中にいつも隠れているのに、この日はこたつから頭だけ出して、僕らの訪問を待っていてくれました。

 

もう何も食べなくなり、血圧も下がっていることを認め、検査をやめることとしました。

 

平日は朝から夜までお仕事のお母さんでしたが、翌週の月曜日はたまたまお休みが取れていたとのこともあり、今日から3日間は一緒にいられるとことでした。

 

次回の診察はその翌日の火曜とし、診察を終了しました。

 

 

2024年3月11日(月)の早朝

お母さんが見守る中、はなちゃんは眠りにつきました。

 

本当であればお仕事に向かわれてしまうはずだった月曜日。

 

きっとはなちゃんがこの日を選んで、お母さんがお休みを取れるように仕向けてくれたのかもしれません。

はなちゃん2-③.png

 

 

犬猫と暮らすご家族様へ

どんな命でも、いつかはお別れを迎えます。

 

そして、そこには旅立つ命以外に、置いて行かれた存在ができます。

 

食い止めることは不可能であることから、最後にどこまで、その子と向き合えたのかが大切だと思っています。

 

最後はどこで、どんな風に看取ってあげたいのか。

 

考えるのはいつからでもいいですが、早いに越したことはありません。

 

いつまで通院させるのか。

 

いつまで治療をするのか。

 

いつまで薬を飲ませるのか。

 

いつまでご飯を食べさせるのか。

 

誰がどこまで看病にあたれるのか。

 

いつも診察の時に、お母さんの目を見ています。

 

きっとみんな寝てないんだろうなという目をしていて、大丈夫ですか?、という問いかけに、みんな、大丈夫です。と言います。

 

簡単な最後なんてありません。

 

通院が難しくなることを想定し、近くにある往診可能な動物病院、または往診専門動物病院で、早めに一度診察を受けておくことをお勧めします。

 

通院から在宅に切り替えるタイミング、それは余生を楽に過ごさせてあげたいと考えた時からなのかもしれません。

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前回のブログでは、重度の黄疸を抱えた日本猫のはなちゃんに、甲状腺機能亢進症が見つかり、その治療を行うことで肝数値の改善と黄疸の消失までを認めることができたところまでを書かせていただきました。

 

前回のブログはこちら

 

状態も改善し、元気さを取り戻していた最中、今度は腎数値が徐々に上がってきて、その後急激に腎数値が改善したと思えば、同時にまた肝数値が一気に上がり、黄疸も進み、拡張した胃と十二指腸を確認しました。

 

そして、2024年3月11日、お母さんの見守る中、眠るように旅立ちました。

 

元気な姿をまた見られてからの状態悪化。

 

緩和ケアの現場では、1日1日の変化が大きく、また日内変動を見ても、とても大きいことが多々あります。

 

はなちゃんの最後の日までを描かせていただきます。

 

はなちゃんのご冥福を心から祈ります。

 

はなちゃん2-①.jpg

 

再診(診察8日目)

この日のはなちゃんは、前回よりも元気さが戻っており、キャットタワーやダイニングテーブルにも飛び乗れるようになっていたとのことでした。

 

食欲も旺盛であり、排便もやや軟便ではありましたが、ちゃんと出ていました。

 

おしっこの色も、黄色みが強かった(黄疸色)頃と比べ、だいぶ元の色に戻ってきているとのことでした。

 

前回の診察時、体重が急激に増加と、検査時に下側の前肢に浮腫あることを確認しました。

 

調子よく進んでいたものの、全身的にも浮腫があると判断されました。

 

追加した利尿剤の効果もあり、今日まで尿量は多かったとのことでしたが、お水もちゃんと飲めており、前回認めた浮腫も取れていることを確認しました。

 

在宅緩和ケアで実施している1日2回の皮下点滴の中に、利尿効果のある医薬品を使用することで、浮腫の改善を図ることに成功しました。

 

この浮腫改善対策が功を奏し、四肢のむくみもなく、また体重も通常の幅での増加となっており、体がちゃんと栄養吸収できていると判断しました。

 

ちなみに、初診時が2.1kg、4日後に2.6kgと急激な増加を認めなり、利尿効果を追加したこの日は2.4kgでした。

 

超音波エコー検査所見は、特別な変化なく、経過良好でした。

 

はなちゃん2-②.png

 

再診(診察12日目)

この日も大きな変化ななく、元気食欲も安定したはなちゃんに会えました。

 

前回行った血液検査では、肝数値は徐々に改善してきていましたが、腎数値が徐々に上がってきたことを認めました。

 

甲状腺機能亢進症がある場合には、甲状腺機能亢進症の薬を飲むことで、甲状腺ホルモンの生成を抑制します。

 

甲状腺ホルモンが高すぎたことで、異常な代謝が起こり、心臓への負荷、肝臓やその他臓器への負荷が上がることがネガティブ側面ですが、高齢の猫ちゃん、特に10歳以上の猫ちゃんでは、この病気によって活力をサポートしてもらっている、という雰囲気をよく見受けます。

 

そして、甲状腺機能亢進症が隠れている場合には、腎数値がそこまで悪くなく見えてしまうという現象を起こします。

 

今回、甲状腺機能亢進症のコントロールを始めていたこともあり、最初から腎臓の数値が上がってくることを想定し、内服薬や皮下点滴などによって、先に対策は打ててはいました。

 

ここで認めた腎数値の上昇は、かなり高かったものの、状態も安定していることから、大きく1回の皮下点滴量を増やすことなく、現状維持としました。

 

また、利尿剤は、腎臓病を悪化させる可能性があります。

 

ただ、はなちゃんのように、全身の浮腫を疑う症例では、すぐにカットすることは危険であると判断し、この日から半量まで下げることで、浮腫の再発が起こるかの様子を見つつも、腎数値悪化に対しての対策としました。

 

なお、腎臓のサプリとして2種類処方しました。

 

詳しくは書きませんが、1つはBUNを下げることが目的であり、もう2つはリンを下げることが目的です。

 

食べられるうちは頑張ってもらい、無理に飲ませないでいいので、ということで処方しています。

 

早期であれば、療法食だけでもコントロールが効きますが、緩和ケアの時は食欲の維持が何よりも大切なところだったりしますので、できれば療法食、でも無理は絶対にしないで、好きなもので食欲を刺激してあげます。

 

超音波検査所見は、特別な変化なく、経過良好でした。

 

はなちゃん2-③.png

 

再診(診察19日目)

この日のはなちゃんは、さらに元気さが増しており、高い棚の方までジャンプして登れていたとのことでした。

 

食欲も旺盛で、排便、排尿も問題ないとのことでした。

 

サプリメントも頑張って飲んでくれたこともあり、腎数値がやや改善してくれたことを受け、このまま安定してくれることを期待していました。

 

肝数値、黄疸数値ともに改善傾向でした。

 

この日から、利尿剤は頓服とし、常用から外すこととしました。

 

はなちゃんの場合、頓服使用としての利尿剤は、①浮腫を認めたとき、②急げきな体増加を認めた時、の2つの事象としました。

 

また、ステロイドの種類も変更し、カットできるようになることを目指して漸減していくこととしました。

 

超音波検査所見でも特別な変化なく、経過良好でした。

 

しかし、体調の変化が訪れたのは、この診察から4日後の2024年2月28日でした。

 

 

ここまでのまとめ

医薬品は選び方や使い方で期待される効果に大きな変化を起こします。

 

人であれば飲んでくださいと言えば、理性のある方であれば、飲んでくれるものです。

 

しかし、犬猫は違います。

 

特に猫ちゃんでは、内服薬のほとんどを受け付けてくれないものです。

 

少量であればおやつなどに混ぜて飲ませられるかもしれませんが、緩和ケア、特に終末期を見据えた時には、体から発せられる強いサインを押さえ込むのに、複数の医薬品を使わなければいけません。

 

体調の変化に合わせて、医薬品の種類や剤形などを選択するために、その時体調が安定していなければ、診察の間隔は短いものとなります。

 

また、ペットのことだけでなく、その横で必死に看病してくれるご家族様のメンタル面を支えなければいけません。

 

それが、私たちが目指す在宅緩和ケアです。

 

次回のブログで、診察24日目から最後の日までです。

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猫ちゃんの病気として有名なものに、甲状腺機能亢進症があります。

 

☑︎ご飯をよく食べる割には、痩せたような気がする。

 

☑︎毛並みが粗造になった気がする。

 

☑︎気が立ってるような気がする。

 

など、わかりやすい所見はいくつかありますが、中にはほとんど症状を表さないのに、甲状腺機能亢進症を発症している猫が一定数いる印象を受けています。

 

通常の動物病院では、血液検査項目をギリギリまで絞って検査されることが多いですが、これは診療費を抑え込むために、獣医師が必死に考えて項目を減らしてくれているからだと考えられます。

 

しかし、その分見落としが出るかもしれないことを理解していなければいけません。

 

追加検査が必要にあれば、また通院しなければいけないし、また針刺しという侵襲性のある行為を行わなければいけないので、できれば1回で広く検査してあげたいという方と、とはいえ金額の安さを重視する方と、二分されると思います。

 

通院頻度が高くなり、針刺し頻度も高くなることは、犬猫にとってストレスであることに間違い無いと考えています。

 

もし検査項目をもっと広く見てもらいたい場合には、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。

 

今回書かせていただく症例は、重度の肝障害と黄疸を伴い、かかりつけの動物病院からは何もできないのでこのまま旅立つのを待つしかないとされた猫のハナちゃん、14歳の女の子の緩和ケアについてです。

 

はなちゃん①.jpg

 

当院での在宅緩和ケアでは、最初に広く検査をさせていただきデータを集め、データに基づいて、在宅緩和ケアプランを構築していきます。

 

検査結果から、隠れていた病気が見つかり、毎日の点滴によって、状態が調子の良かった頃のように戻ってきてくれています。

 

検査項目を絞ることだけが正義じゃないかもしれません。

 

既往歴

2021年に腎臓の数値が悪いとされ、血管拡張薬の内服を開始と、2週間に1回の通院で、ビタミン剤などを入れた皮下補液を実施するように指示されていたとのことでした。

 

2024年1月20日の段階では2.6kgあった体重が、2月2日から急に食べなくなってしまったことを機にガクッと下がり、2月4日時点では2.1kgまで減っていました。

 

また、この日は検診日だったこともあり動物病院に通院させて検査したところ、肝臓の数値が著しく悪化していることを指摘され、余命1週間とされたとのことでした。

 

今まで肝臓について何も指摘されてなかったこともありましたが、今回も特別今後の方針を示してくれず、ただ余命だけを言われてしまったことから、もし厳しいのであれば、もう苦手な通院はさせないで、在宅緩和ケアに切り替えたいという想いで、当院までご連絡をいただきました。

 

初診(診察1日)

見るからにぐったりしていたこともありましたが、血圧がしっかりしていることから、採血、そして超音波検査を実施することを踏み切りました。

 

猫のはなちゃんは、特別大きく嫌がることなく終始検査に協力してくれたこともあり、検査にかかる時間は、おおよそ15分ほどで完了することができました。

 

検査後も、好きなお部屋にトコトコと歩いて行き、そこでくつろいでいてくれましたので、現在予想している内容と、今後の流れ、今後起こりうることやその時はどうすべきなのかなど、幅広くお話しすることができました。

 

また、すでに苦い内服薬を飲ませるには厳しい状況だったこともあり、苦味のほぼない内服薬のみで作成したシロップ剤を1種類、朝晩の投薬と補水を目的とした皮下点滴としました。

 

皮下点滴トレーニングも問題なく完了し、医薬品もお渡し、この日から猫のはなちゃんの在宅緩和ケアが開始されました。

 

はなちゃん②.jpg

 

再診(診察5日目)

状態がかなり安定しており、以前のはなちゃんとは別の猫ちゃんのような毛並みにまで回復している姿を見せてくれていました。

 

3日間も食べられなかったご飯を食べてくれ、お水も飲め、ジャンプまでできるほどまでに改善してくれたとのことでした。

 

初診時に実施した血液検査結果では、肝臓の数値がかなり高く、黄疸も強く出ていることがわかりました。

 

心臓の数値も高かったのですが、甲状腺の数値がかなり高いことが検出されました。

 

この日から、甲状腺の薬、心臓の薬を開始して、更なる安定を図ることとしました。

 

 

はなちゃんの在宅緩和ケア

 

もう治らない、余命1週間と言われて家に帰った後も、苦しい時間は続きます。

 

今どんな状態で、最後の日までの間にどんな変化が起こり、どんな症状を出すのか。

 

その時どう捉えて、何をしてあげられるのか。

 

治療が叶う状態であれば、ある程度の診療時点での説明で十分かもしれませんが、緩和ケア、時に終末期ケアの段階では、未来に起こり得る変化までをお伝えしておく必要があります。

 

本当に今の準備だけしかできないのか。

 

不安は募る一方であり、その不安は自然に減少することはないです。

 

猫のはなちゃんの場合には、たまたま東京世田谷区だったこともあって、私たちがお伺いすることができ、在宅緩和ケアプランを組むことができました。

 

もしお伺いできないエリアにお住まいの場合には、お薬だけを受け取って帰るのではなく、不安な気持ちを少しでも払拭できるように、かかりつけの獣医師に全部聞いてもらうようにしましょう。

 

きっとご家族様のお力になってくれるはずです。

 

最後まで粘り強く、少しでも緩和できるよう、方法を追求してあげましょう。

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猫の心臓病といえば、肥大型心筋症です。

 

と言い切ると語弊がありますが、犬だと僧帽弁閉鎖不全症が多い中で、猫ちゃんは心筋の病気が多い印象があります。

 

そもそもが動物病院への通院を苦手とする猫ちゃんにとって、心臓病で苦しい中、ストレスを加えられながら通院して、検査を受けることが、果たしていつまで続けられるのかという課題は常に抱えているのが、動物病院として心苦しいところではあります。

 

しかし、通院してもらえなければ、心臓の精査は叶わないため、可能な限り、動物病院としても通院を促すしかないのが現状です。

 

ご自宅にいながらも、血圧や心電図などの補助的な検査であれば、猫ちゃんの性格にもよりますが、ご家族様だけで実施可能です。

 

心筋症を発症すると、肺水腫を起こすこともありますが、胸水貯留を起こすこともあります。

 

肺水腫を発症した場合には、その苦しさから救急的な処置が必要であり、また帰宅後も酸素ハウス内での集中管理を余儀なくすることが多いです。

 

完全に回復するまでは動物病院の酸素室内で集中的に管理してもらい、安定して酸素室から離脱できるようになってから帰宅させてあげたい気持ちも山々ですが、実際のところ、入院中は慣れない環境ということもあり、ご飯を全く食べてくれない、という猫ちゃんが多くいます。

 

その場合には、安定する前に帰宅せざるを得ないため、在宅での集中的な酸素管理が求められます。

 

今回は、通院で肥大型心筋症の検査と治療を行っていましたが、もう入院が難しいとされ、在宅での緩和ケアを実施した猫のミーちゃんのお話です。

 

東京足立区に住む、穏やかで人が大好きな日本猫、15歳の女の子です。

 

胸水抜去を繰り返しながらも、調子がいい時は酸素室の外でゆったりと過ごせていました。

 

内服薬の量が増えてしまって大変ですが、それ以上に動物病院での入院が辛かったのか、全部理解したようにちゃんとウェットフードと一緒に食べてくれていました。

 

最後は家族が揃った団欒の時間、2023年11月15日、リビングで眠るように旅立って行きました。

 

家族の力って、本当にすごいなと思う症例です。

ミーちゃん①.jpg

 

既往歴

2018年10月に、呼吸が変だなという感じから、かかりつけの動物病院に通院したところ、肺水腫を発症していたことから、緊急入院し、3日間入院した後に安定した頃から退院となったとのことでした。

 

ただ、8月にも健康診断で診てもらっていたのに、なぜ今になって急に心臓病が発症したのかということに不信感を得たことから、他院後は別の動物病院にて、心臓病の治療を進めていたとのことでした。

 

なお、最初の動物病院に今までの経過を伺ったところ、教えてくれなかったとのことから、新しいかかりつけとなる動物病院では、過去のデータがないままの初診となりましたが、特別問題なく受け入れてくれたとのことでした。

 

こちらの動物病院では、月に1回だけ、循環器専門医が来てくれたとのことで、その日に通院して心臓の精査をしてもらっていたとのことでした。

 

最初の動物病院で出された内服薬を確認すると、別の医薬品の方がミーちゃんの容態には合うかもしれないとことから変更を加えてくれたとのことでした。

 

その後も何度か肺水腫を繰り返し、入退院を繰り返しましたが、2022年9月に胸水が溜まってしまい、動物病院で抜去してもらったところ、それ以降キャリーを見ると異常に興奮してしまうことから、もう通院は難しいと判断し、かかりつけの動物病院と相談し、往診専門動物病院で緩和ケアを受けるように指示されたとのことでした。

 

経過報告書を作成していただけていたので、猫のミーちゃんの経過を把握することができ、どの抗生物質がミーちゃんと相性が悪く、またどの心臓薬を使ったらどんな反応が出たので、今の処方内容になっているのかという投薬歴も明記されていました。

 

ミーちゃんのことを真剣に診ていてくださったことが、書面から感じ取ることができるものでした。

 

ミーちゃんの在宅緩和ケアプラン

2022年10月3日に初診で訪問させていただきました。

 

知らない人が来ても、特別興奮することなく、逆に酸素ハウスから出してと言って、出てきてはスリスリしてくれました。

 

初診時には、すでに酸素ハウスが設置されており、酸素流量8L/min、酸素濃度60%で、酸素室内の酸素濃度が35%〜45%で管理されていました。

 

投薬内容も継続処方とさせていただき、内容によっては苦味の少ないもので代用できると判断し、できるかぎり飲みづらさを緩和させてあげました。

 

最初のうちは、月1回程度の訪問と継続処方、エコー検査、3ヶ月に1回の血液検査でコントロールしていました。

 

2023年1月9日から、呼吸状態が悪化してきたため、酸素管理方法を変更し、最初の頃の酸素発生装置1台体制だったのに対して、酸素発生装置2台での管理に変更しました。

 

また、胸水貯留を確認したため、処方されていた1日1回の利尿剤の用量を増加させることで、胸水の消失を認めることができ、そのまま管理としました。

 

しかし、3月7日に胸水が中等度まで貯留していることを確認し、胸水抜去に踏み込みました。

 

胸水抜去は、肋骨と肋骨の間を針で貫く必要があるため、腹水抜去と比較にならないほどの痛みを伴います。

 

そのため、往診では鎮静処置をしてから実施するようにしていますが、我慢強い場合や、状態から鎮静状態にある場合、すでに鎮静処置に耐えられない状態などの場合には、そのまま抜去してあげています。

 

胸水抜去は、通常の動物病院で実施するのと、往診にてご自宅の中で抜去するのでは、リスクが異なります。

 

そのため、十分にご理解いただき、事前にご家族様の同意を得ることが必要となります。

 

ミーちゃんの場合には、鎮静処置をせずに戦うこととし、見事耐えてくれました。

 

抜去する、ものの数分で呼吸が安定し、酸素室内であれば立ち上がって鳴いてる姿まで見せてくれました。

 

失神を起こす可能性や、急にチアノーゼを起こす可能性などを説明させていただき、その時にどんなアクションが取れるのか、事前準備を徹底的にさせていただきました。

 

往診は救急車ではないこと、そして救急症例には対応しかねるため、急変時は救急が対応できる動物病院に飛び込むか、そのまま看取ってあげるかの2択です。

 

ただ、そのまま看取るとしても、その時ご自宅でできることを理解しておけば、最後まで病状と戦うことができます。

 

気づけば家族みんなが、立派な動物看護師となり、ミーちゃんの容態をしっかりと管理してくれるまでに成長していました。

 

旅立つ前日に1回だけ発作を起こしましたが、最後の時は、本当に眠るように静かだったとのことでした。

 

2023年11月15日、家族が見守る中、大好きなリビングで静かに旅立ちました。

 

ミーちゃん②.jpg

 

動物と暮らす全ての方へ

最初に通院した動物病院は、おそらく家から近かった、その地域で人気があった、診療費が安かったのでいい先生だと思った、などの理由で、その動物病院をかかりつけとしたかと思います。

 

しかし、動物病院で働く獣医師も人であり、それぞれに得意、不得意があります

 

予防に力を入れる獣医師もいれば、先進医療に尽力し、新たな病気を発見したり、治療方法を提唱したりなど、獣医師によって様々です。

 

本当に、今のかかりつけの動物病院だけで大丈夫でしょうか。

 

現在の動物病院のスタンダードは、ある程度の医療機器や設備は整っているものであり、またネットワークとしては、外部の専門医による診療日を設けている動物病院も少なくありません。

 

経過報告書の作成や紹介状の作成などは、日常診療業務の中で当たり前のように舞い込んできます。

 

今の時代は1次診療と2次診療が手を組み、紹介医療の確立がある程度成されてきていると考えています

 

そんな中、もし専門医への紹介を拒まれた場合には、その理由に納得できるかどうか、まずはかかりつけの動物病院にお尋ねください。

 

しっかり理由を伺った上で、それでも納得できなければ、かかりつけの動物病院を変えることをお勧めします。

 

その選択が正しかったかどうかは、最後にわかることと思われますが、その決断をするかどうかは、全てご家族様次第です。

 

覚悟して行動するのも一つ、またかかりつけの動物病院を信じて最後まで愛犬、愛猫の命を付けて行くのも一つです。

 

そして、もし通院が難しいとなった場合には、病気を受け入れ、余生をできるかぎりストレスなく過ごさせるために、在宅緩和ケアに切り替えることも、また一つだと覚えておいてください。

 

何をどこまでするのが正しいのか、には答えはないです。

 

早期からご家族様で相談し、少しでも後悔ない選択ができるよう祈っています。

 

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猫の口腔内腫瘍で最も多いとされるのが、扁平上皮癌です。

 

扁平上皮癌を抱えると、口の動きに合わせて痛みや出血を伴う印象があり、ご飯を食べなくなり、動かなくなるという経過をよく見受けます。

 

また、発生場所にもよりますが、頬が腫れてくるように見えることから、歯の病気に分類される根尖部膿瘍を疑われ、根尖部膿瘍の治療に入ってしまう場合があります。

 

この場合にも、基本的には麻酔下での処置となるため、口腔内をしっかりと観察することができ、その違和感から細胞診などの実施を踏み切り、扁平上皮癌が発見されるというケースもあります。

 

また、初期であれば腫脹も軽度なため、もしその時に鼻風邪や鼻炎のような症状を伴っていた場合には、猫風邪などで様子見とされてしまうことが多いです。

 

猫風邪の治療に、もしプレドニゾロンなどのステロイドを使用されていた場合には、少し状態が改善してしまうということが起こってしまうかもしれません。

 

そのため、細胞診などの麻酔をかけた検査への踏み込みが遅れてしまい、猫風邪にしては症状が長く、改善したのに徐々に悪化してきておかしいとされ、ようやく麻酔に踏み切り口腔内を精査すると明らかな違和感を認め、検査、診断とつながるという、少し回り道をしてしまう可能性がありますので、注意が必要です。

 

この病気は、明らかな変化(頬の腫脹や鼻の形状変化など)を伴っていなければ、検査に麻酔が必要となることから踏み込まれづらいところがありますが、もし見つかれば腫瘍性疾患となり、可能であれば腫瘍を専門とする動物病院でがん治療に踏み込みましょう。

 

また、現状は慢性の猫風邪だと思い長期間の服薬をしている猫ちゃんの場合にも、一度セカンドオピニオンとして、腫瘍専門の動物病院で、がん専門医の診察を受けることをお勧めします。

 

今回書かせていただく症例は、東京江東区にお住まいのさぶちゃん、12歳の日本猫の男の子です。

 

現在も継続中の在宅緩和ケアについて書かせていただきます。

さぶちゃん1.png

 

今までの経緯

2023年12月に左頬からの排膿を認めてかかりつけの動物病院に通院したところ、その違和感から検査に踏み込み、扁平上皮癌と診断されました。

 

その状況から、内服薬での緩和治療とされていましたが、2024年2月を迎えると徐々に食欲が下がり、内服薬を受け付けてくれなくなりました。

 

もともとドライフードを好んでいましたが、この時はすでにチュールしか食べてもらえず、それの量も減ってしまっていました。

 

もう通院させるのは厳しいと判断され、2024年2月13日に当院までご連絡をいただきました。

 

 

初診(診察1日目)

お伺いすると、猫のさぶちゃんはリビングで伏せており、手をぴんと伸ばしたまま、終始じっとしていて動きませんでした。

 

目が開かないほどの左頬の腫脹もあり、毛並みもパサパサ、脱水も著しい状況でした。

 

過去の血液検査結果、かかりつけ動物病院での処方歴など、お母さんがお持ちだった全てのデータを見させていただき、現在までにどんなことがあり、何をされていたのかなどについて整理させていただきました。

 

血液検査結果では、腎臓や肝臓などに異常所見はなく、栄養状態なども含めて特記すべき所見は認めませんでした。

 

腫瘍疾患を抱えていて、特に肝臓転移や腹腔内腫瘤による障害などを伴わない場合には、血液検査結果がキレイなことが多いです。

 

そのため、肝臓や腎臓の機能は正常に残っていることから、現在の状態をサポートしてあげ、自力でご飯を食べたり、お水を飲んだりできるようになれれば、体を維持できることが期待できます。

 

お母さんのお話によると、まだ歩いて水を飲みに行っているが、全然飲めていないように感じるとのことがあり、おそらく扁平上皮癌によって、舌をうまく動かせていない可能性を疑いました。

 

食欲がないのも、痛みと口を動かすことが辛いのではないかと疑いました。

 

排便も、食欲の低下とともに徐々に少なくなり、ころっとした硬いものが少しでた程度とのことでした。

 

おしっこは出ていないとのことで、腎臓の問題で尿の生成ができていない、いわゆる腎不全の最終段階にある無尿期ではなく、単純に水が飲めていないことで、体内にある少量の水分をうまく運用して生命維持をしている可能性を疑いました。

 

そして、診察開始の少し前に吐血のような症状があり、結構な量の血が出ていたこともあってか、舌色はかなり白く、出血性の貧血を伴っている様子でした。

 

今の状態に出血が重なったこともあり、さぶちゃんはぐったりしていたと考えました。

 

状態から、同日に検査で負担をかけることは避けた方がいいと考え、今までのデータを持って在宅緩和ケアプランを組み立てていくこととし、脱水補正ではなく投薬を目的とした皮下点滴を1日2回実施してもらうこととしました。

 

在宅緩和ケアプランを組む上で大切なことは、病状だけでなく、この犬猫と暮らすご家族様の環境などをすることです。

 

具体的には、生活環境や家族構成、誰がペットの看護や介護に協力してくれるのか、その人たちの日常のスケジュールなどです。

 

猫のさぶちゃんでは、まずは皮下点滴をご自宅で実施していただくために、皮下点滴のトレーニングをしていただきました。

 

1つ1つの手順を一緒に、ゆっくりと指導させていただきますので、初めての方でもご自宅で、家族内で皮下点滴を実施できるようになります。

 

道具をお渡しし、次回診察を3日後としました。

 

薬の効果がどこまで出るかにもよりますが、状態が悪くなってから内服薬がうまく飲ませられていなかったことを考慮すれば、少し状態が上がってくることが期待できると考えました。

 

再診(診察4日目)

 

そこには、元気さを取り戻したさぶちゃんがいました。

 

さぶちゃん2.png

 

本当にびっくりするくらいまで状態が上がっており、遊んでって言わんばかりに猫じゃらしのおもちゃを持ってきては、戯れてくれていました。

 

ふらつきも強く、お水も飲めていなさそうだった初診の時とは打って変わり、動きも俊敏にあり、ジャンプまでするようになったとのことでした。

 

水もちゃんと飲めているようで、体重も増え、毛並みもだいぶ改善しており、もう見た目が別の猫ちゃんのようでした。

 

ご飯もチュールだけでなくウェットフードを食べてくれるようにあり、少し軟便が出ましたが、その後良便に戻りました。

 

さぶちゃん3.png

 

在宅緩和ケアの可能性

私たちが得意とする「犬猫の在宅緩和ケア」では、末期症状だった犬猫の状態を少しでも楽にしてあげることで、体の不自由左から諦めていた行動を、犬猫たちの意思によってまた時間を与えられる可能性があります。

 

また、緩和ケアは治療ではないため、延命かどうかの問いには答えられません。

 

しかし、少しでも楽に余生を過ごさせてあげたいと考えた場合、緩和ケアは最良の選択肢になりうると考えています。

 

犬猫は言葉を話せないため、送られてくるサインをどう受け取り、どう判断していくかの全ては、ご家族様次第です。

 

最後の時間を、できる限り家の中で過ごさせてあげたいとお考えの場合には、在宅緩和ケアをお勧めします。

 

ご自宅の地域まで往診で来てもらえる動物病院、または往診専門動物病院があるかどうかを、事前に調べておきましょう。

 

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腎臓病にはステージがあります。

 

時間と共に、徐々に進んでいく病気に分類されるのが腎臓病であり、早期発見が大切であり、早期からご飯の選定やケア、投薬することで、進行を遅らせることが期待されています。

 

多くの猫ちゃんが動物病院への通院を苦手としているため、わんちゃんのように毎月のように動物病院に通院して状態を診てもらうことが叶わないのも事実です。

 

そのため、日常の中での変化を、ご家族様がしっかりと観察しておく必要があります。

 

「少し水を飲む量が増えたかな?」

「ご飯を残すようになった?」

「痩せてきた?」

 

そのほかにも、毛並みはどうなのか、ふらつきはあるのかなど、日常に潜む違和感に、目を光らせてあげましょう。

 

今回書かせていただくのは、腎臓病末期の猫ちゃん、ソマリの稟ちゃんのお話です。

 

最後の1週間を動物病院への通院ではなく、往診(在宅医療)に切り替え、できる限り負担のない時間をご自宅で過ごしたお話です。

 

2024年2月9日に出逢い、在宅医療プランを組み、負担のない範囲で、毎日の皮下点滴を頑張ってもらいました。

 

少しだけ元気さを取り戻すことができましたが、やはりステージは末期。

 

5日後の2024年2月14日、家族の見守る中、静かに眠りにつきました。

 

①.jpg

 

 

往診までの経緯

かかりつけの動物病院までは徒歩1分ほど近かったこともあり、年1回の予防接種には行くことが出来ていました。

 

腎臓病を指摘されたのは去年のことで、その日から3ヶ月に1回の通院検査の指示を出されたとのことでした。

 

2024年1月に入ると、食欲がだんだんと下がってきました。

 

2024年2月4日の通院時には、すでに食欲がほとんどなく、普段好きだったドライフードは全く食べられず、ウェットフードをなんとか食べてくれていました。

 

この日の検査結果で、腎臓の数値が大きく悪くなっていることを受け、入院管理とされました。

 

腎臓病の入院点滴では、多くの場合で3日間ほどの集中管理を行なった上で数値に改善が見られるか否かで、予後判断となります。

 

今回、3日間入院するも改善を認めないことから、余命宣告を受けたとのことでした。

 

かかりつけの動物病院からは、週2回の通院を促されましたが、もう動かすだけでも辛そうな姿を見ていて、往診に切り替えたいと希望されました。

 

 

初診(1日目)

お伺いすると、ソファーの下で寝転がっている稟ちゃんがいました。

 

状態は日々下がっているとのことで、数日前まではまだ普通に歩けていたものの、後肢の踏ん張りが効かないのか、ふらつきが強く出てきたとのことでした。

 

食欲もこの時点でガクッと下がっており、ウェットを1、2回舐め、リーナルリキッド(腎臓病用の液体ご飯)を強制給餌(10ml/回)で3回くらい、チュールを2本ほどやっと食べてくれたとのことでした。

 

おしっこの量も少し減った印象とのことだが、飲水量は多くなったような印象とのことでした。

 

最後の検査から数日しか経っていませんでしたが、急性変化の中にいることを考慮し、また当日の状態を加味した上で、検査を実施しました。

 

また、過去の検査結果から、すでに腎数値がかなり高くなっていることから、1日2回の皮下点滴が必要であると考え、同日、皮下点滴指導を実施し、無事打てるようになっていただけました。

 

1日2回の皮下点滴が実施できるようになると、在宅医療プランを組む上で選択肢が多くなります。

 

今回の稟ちゃんのケースでは、ご家族様が基本在宅していただけることを踏まえ、1日2回の投薬を踏まえた皮下点滴と、苦くない薬だけで組んだ医薬品シロップを1日1回の投与として、在宅医療プランを組ませていただきました。

 

そして、腎臓病の終末期では、多くの確率で発作が出ます。

 

この日の最後は、頓服薬の指導を行い、今後どんなことが起こりうるのか、その時何ができるのか、どんな選択肢があるのか、などをゆっくりとご説明させていただきました。

 

初日は2時間半ほどのお時間をいただき、綿密なプラン構築を行い、再診は翌日としました。

 

明日の朝の皮下点滴が、ご家族様だけで実施する最初の在宅皮下点滴です。

 

うまく行くことを祈って、この日は診察終了です。

 

 

再診(2日目)

前日とは打って変わり、一回だけでしたがダイニングテーブルまで飛び乗ったとのことでした。

 

食欲も上がってきたのか、割と食べた印象とのことで、チュール2本、ウェットフードをすりつぶしてペーストにしたものを20gほど、リーナルリキッドを少々、カツオのおやつにはがっつくほどだったとのことでした。

 

お尻がいつもおしっこで濡れているとのことを受け、介護用のお尻洗浄液をお渡しさせていただき、少しでも稟ちゃんに負担なく綺麗にしてあげられるような準備をさせていただきました。

 

再診(5日目)

3日前とは打って変わり、もうほとんど動けない様子でした。

 

1日中ずっとソファーの下で寝ており、あまり外に出てくることはなかったとのことでした。

 

食欲もなく、もうご飯も食べてくれなくなったとのことでした。

 

ここから強制給餌をするかどうかに分かれますが、状態とステージを考慮すると、もう無理して食べさせることで、逆に嫌な思い出ばかり作ってしまうことが懸念されることもあり、強制級はお勧めしませんでした。

 

お水を飲む量もガクッと減り、いよいよお別れの準備に入ったような印象を受けました。

 

いつまで点滴を続けるのかという質問を受けることがあります。

 

これには状態を把握していないと、一概にお伝えできませんが、何のためにその処置を行なっているのか、によって答えは異なります。

 

使用する医薬品、その用量、用法、愛犬、愛猫の病気または病状などをしっかりとかかりつけの動物病院、獣医師から説明を受けておくことで、その判断につながります。

 

稟ちゃんのケースでは、最後まで実施するようにお伝えさせていただきました。

 

四肢浮腫も、胸水や腹水の貯留も認めず、ちゃんと水を代謝できている状態であれば、そこまで点滴を絞る必要はありません。

 

ただ、もう皮下点滴を吸収できなくなってきた頃からは、輸液量をギリギリまで絞るという方法を取ることもありますので、当院では適宜お伝えさせていただいております。

 

次回の診察は4日後としましたが、もうその日が来る可能性は低いことも、同時にお伝えさせていただきました。

 

②.jpg

 

お別れ(6日目)

翌日の昼間に、稟ちゃんは眠りにつきました。

 

最後に1回だけ発作を起こしましたが、すぐにご家族様による鎮静処置を実施していただくことができました。

 

急変時に何もできないわけではなく、事前準備さえできていれば、ご家族様だけで対応できることはあります。

 

終末期の動物たちと過ごすのであれば、事前の準備と今後起こりうること、その時何をどうすればいいのかなどを、きちんとかかりつけ動物病院と、獣医師と、話し合っておくことが大切です。

 

最後まで本当に力強い子でした。

 

稟ちゃんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。

 

わんにゃん保健室

スタッフ一同

 

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病気は同時に、別々のものが発症しないと思ってます。

 

とはいえ、立証できないことや、もちろんそういった事例もあるとも思います。

 

ただ、大体のケースで、ストーリー性に病気が発症し、どれが原疾患だったのかを追求することが、完治であったり、緩和ケアだったりの初手につながると考えています。

 

今回お話しする「猫ちゃんの扁平上皮癌」の終末期ケアですが、もともとはかかりつけの動物病院で治療を受けていました。

 

徐々にご飯を食べられなくなり、ふらつきも見え始める中、それでも通院するたびに普段出さない鳴き声を出すことから、在宅での終末期ケアに切り替えた症例のお話です。

 

緩和ケアプランは、犬猫の病気だけでなく、性格や取り巻く環境、ご家族様が何を求めるのかによって異なってきます。

 

扁平上皮癌の猫.jpg

 

予約時の電話内容

2ヶ月ほど前に、口を気にすることを主訴にかかりつけの動物病院へ通院したところ、扁平上皮癌の可能性があると言われ、すぐに2次医療施設を紹介受診し、確定診断を受けたとのことでした。

 

年齢は12歳であり、抗がん剤などの説明を受けましたが、入院や高頻度での通院には向かない性格だったことから断念したとのことでした。

 

かかりつけの動物病院の獣医師と相談し、緩和ケアに切り替えることで進めていましたが、最初は頑張れていた内服薬の投与も、食欲の低下とともに、徐々に難しくなり、もう内服は厳しいいと思い動物病院に相談したところ、往診専門動物病院があることを教えてもらい、当院を紹介されたとのことでした。

 

すぐに予約を確定し、翌日訪問することとなりました。

 

当院は、東京23区を中心に、23区外、千葉、埼玉、神奈川を含む近隣エリアまで往診対応しております。

 

最近では、動物病院からの紹介が増えておりますが、まだまだご家族様自身で探し当ててご連絡をいただくことのほうが多いです。

 

今回のケースでは、経過報告書もいただけるとのことから、現在までにどんな治療をしてきたのかなどがわかるため、スムーズに診察に入れました。

 

初診時

ふらつきながらも、悠々自適に家の中を歩いており、初対面の私たちに擦り寄ってきてくれるほど人懐っこい性格の猫ちゃんでした。

 

食事は猫ちゃん自身でお皿から食べることは難しく、ご家族様が口の奥の方にペースト状のご飯を入れてあげると飲み込んでくれるという状態でした。

 

排便は3日前が最後でころっとしたものを1粒、排尿は普段と変わらずできているとのことでした

 

飲水はできているが、お皿の水が目立って減っているような印象はないとのことでした。

 

咳もなく、呼吸状態も安定していました。

 

家族構成はお父さん、お母さんの二人暮らし。

 

お父さんはカレンダー通りのお休みで、お母さんはこの病気の発覚を機に、お仕事を辞めて常に在宅されているとのことでした。

 

環境としては、猫ちゃんの看護、介護ができる大人が2人以上いるため、大体のプランを組むことが可能であると判断しました。

 

いただいた紹介状にもあったように、扁平上皮癌の終末期ケアを中心とした緩和ケアプランを作成することで、診療を進めます。

 

今までの血液検査結果を拝見すると、至って正常であることが、こういった病気の特徴だったりもします。

 

肝臓腫瘍などの場合には肝数値と言われる項目に変化が見えるのですが、扁平上皮癌やリンパ腫などで、臓器に浸潤していないものの場合には、体調不良を主訴に血液検査を時失したが特別異常所見がなく、画像検査をしたら見つかったというケースが多いです。

 

そのため、検査は負担のかかりすぎない範囲で、できる限り広く実施してあげることが、私としては重要だと考えています。

 

金額面で許容することが難しい場合には、必ず実施前に獣医師から説明があるかと思いますので、そこで相談するようにしましょう。

 

検査は検査であり、処置は処置。

 

検査して、治療を続ける費用が難しくならないように、包み隠さず相談するようにしましょう。

 

この日から在宅緩和ケアプランを実施していただくこととしました。

 

この猫ちゃんの場合、肝臓や腎臓、膵臓に問題がないことから1日2回の注射薬を用いた皮下点滴、痛み止めは1日3回の皮下投与をお願いしました。

 

液量もかなり少なく設定できるため、猫ちゃんに刺す針の太さも一番細い、子猫用の針としいて選択されるもので実施していただきます。

 

これから毎日刺すことから、針の太さはとても大切な選択ポイントです。

 

ただ、細ければいいっていうこともなく、長くじっとしていられないタイプの犬猫の場合には針を少し太くしたり、液量をたくさん入れなければいけない場合には、一番太いものを選択することもあります。

 

皮下点滴1つをとっても、何のために実施するのか、実施環境はどこまで整っているのかなどを明確にすれば、自ずとどんな道具選択が一番いいのかを導き出すことができます。

 

食事は好きなものをあげるようにお伝えしました。

 

口の痛みは、医薬品の力である程度緩和できます。

 

少しでも、最後に食べたいものを探してあげるようにお伝えしました。

 

その後の流れ

初診時に、すでに皮下点滴指導が完了し、そのほかにも頓服薬指導なども完了したため、以降は週1回の往診としました。

 

毎週の往診では、超音波検査による胸水や腹水の貯留がないかを評価し、状態にあった医薬品を調整してお渡ししていました。

 

初診後すぐに食欲がグッと上がり、ご飯を久しぶりに猫ちゃん自身で食べてくれたとのことでした。

 

ジャンプもできるようになり、大好きだったソファーの上に、猫ちゃん自身で飛び乗ることができたとのことでした。

 

初診から4 週間、安定した終末期を過ごせていましたが、5週間目には徐々にまたふらつきが出始め、同時に食欲がグッと下がってきました。

 

食欲増進を期待する軟膏も処方しましたが、効果は認めませんでした。

 

初診から6週間目、呼吸が荒くなってきたことを受け、酸素環境を構築することとなりました。

 

酸素濃度は45%でも呼吸が荒く、55%でようやく落ち着きました。

 

酸素室内で久しぶりに立ち上がり、ゴロゴロいっている姿を見ることができました。

 

酸素室設置から6日後、お父さんの帰宅を待っていたかのように、そのタイミングで旅立ちました。

 

猫の扁平上皮癌の在宅終末期ケア

 

今回の症例では、皮下点滴を1日2回+痛み止め注射を1日3回で組ませていただきました。

 

そして、呼吸状態に合わせて酸素室を設置し、酸素環境を整えることができました。

 

何をどこまでしてあげたいのかは、全てご家族様次第であり、その意向に沿って診療プランであったり、処方内容や在宅での処置プランを組んでいきます。

 

動物病院では何もできないとされ、家で看取ってくださいとされた時から、初めて往診専門動物病院を探すご家族様がほとんどの中、このように動物病院から紹介をしていただくことが叶えば、スムーズに診療に入ることができます。

 

少しでも広く、動物病院に往診専門動物病院の存在を認知していただき、命のバトンを途絶えることなく受け渡せる社会がくることを願っています。

 

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猫の腎臓病を疑うサイン(東京/猫/往診)

猫ちゃんは言葉を話すことができないため、猫ちゃんが発するサインをご家族様が受け取らなければいけません。

 

また、そのサインをどう解釈するかによって、次の行動が大きく変わることと思います。

 

動物病院への通院が苦手ながらも定期的にできているご家族様であれば、その違和感について、すぐにかかりつけの動物病院に問い合わせることで、通院を促してもらえることと思います。

 

しかし、猫ちゃんの多くがかかりつけと言えるほどの動物病院を持っていません。

 

通院が苦手であり、昔行っていた近所の動物病院で暴れてしまったことをきっかけに、もう来ないでくださいなど辛辣な言葉を受けたご家族様も少なくありません。

 

ただ、多くのご家族様が通院をやめるきっかけが、「キャリーに入れたら発狂した」「通院させた後に、逆にぐったりさせてしまった」などのネガティブな経験、そして、「体調が悪そうだったけど放っておいたら3日くらいで治った」というある種の成功体験をきっかけに、通院しないでも大丈夫という意識付けがなされているように思われます。

 

若い時であれば、それでもいいかもしれません。

 

免疫力も高く、栄養状態も万全の頃であれば、大病でなければ自力で回復させることができると思います。

 

でも、10歳以上の高齢だった場合には、受け取って違和感のサインを見逃すことで、致命的な結果となってしまうかもしれません。

 

緊急のサインはたくさんありますが、在宅緩和ケアの観点から、診察をしてあげたほうがいいと思われるサインをいくつかご紹介させていただこうと思います。

 

動物病院への通院が苦手な猫ちゃんと暮らしているご家族様は、是非ご一読いただければと思います。

 

ご飯の減りが悪い(食欲低下、食欲廃絶)

このサインは、もっとも見逃されやすいサインと言っても過言ではないと感じています。

 

ここでいう食欲低下は、こんなストーリー性を持っています。

 

a.1週間以上前から、食欲が50%ほどまで下がっているような気がしていた。

b.ここ1週間はほとんど食べなくなっていた。

c.2日前からは、チュールを舐める程度しかできていない。

 

往診のご依頼をいただくのは、大体cになってからが多く、10歳以上の猫ちゃんにおいて高い確率で腎臓病がヒットしています。

 

aの段階で往診のご予約をいただけるケースは稀となっている理由は、上記のとおりです。

 

3-③ 食欲が下がった.JPG

 

このケースでの往診では、1つの例として以下のような流れで取り組んでいきます。

・Day1 初診時にフル検査(血液検査、超音波検査)と処置

・Day2 翌日までに院内検査結果が出るので、結果に沿って処置内容を変動させ実施

・Day3 外注検査結果が出てくるので、その内容を元にさらに処置内容を変動させ、短期処方プラン決定

・Day7 経過確認と必要に応じての再検査。

 

このプランは、猫ちゃんの在宅緩和ケアプラン作成が必要な症例の多くで実施している内容です。

 

これから往診専門動物病院での在宅緩和ケアの実施をご検討中のご家族様にとって、1つの参考になればと思います。

 

よく吐くようになった(嘔吐、頻回嘔吐)

主訴で嘔吐が関与してくることはかなり多いです。

 

猫ちゃんの場合には、週1回程度であれば生理的嘔吐と呼ばれる現象かもしれないので様子見とされることが多いです。

 

しかし、以下のような場合には見逃してはいけません。

 

・嘔吐後に食欲減退、ぐったりなどの一般状態の変化を伴った場合

・頻回嘔吐(当院では1日に3回以上吐いたら該当するとお伝えしています)

 

また、上記以外でも、吐瀉物が白(胃液)ではなく茶色だった場合には、フードの色や未消化物の影響しているかもしれませんが、急いだほうがいいかもしれないので、必ずご連絡いただくようにお伝えしています。

 

高齢猫において、嘔吐は状態を大きく加工させる現象の1つですので、在宅緩和ケアでは注視してあげたいポイントになっています。

3-⑨ 吐く頻度が増えた猫 .jpg

 

 

痩せた気がする(削痩)

いつも一緒にいると、体重や体型の変化に気付きづらいものです。

 

毎日のように体重測定してあげていれば別ですが、おざなりにされやすい指標評価の1つが、体重の変化です。

 

痩せてきたなと感じた時には、すでに最盛期から半分近くまで減っているということも少なくありません。

 

年齢のせいで痩せてきたと解釈されているご家族様も多いですが、もちろんそういった場合もありますが、やはり基礎疾患によって体重減少を伴ってしまったと考える方が自然だと考えます。

 

もしかしたら、今苦しくてご飯を十分に食べられないのかもしれません。

 

基礎疾患がなければ老化現象だったと受け取ってあげるとして、まずは基礎疾患を調べであげましょう。

 

また検査は万能ではないので、原因は突き止められないかもしれません。

 

その場合でも、今ある症状に対して緩和処置を施してあげることは可能ですので、まずは獣医師に相談するようお勧めします。

 

3-⑦ 痩せてきた猫.png

 

まとめ

このほかにも、ふらつきが出始めた、飲水量が増えた、おしっこの量が増えた、口が痛そう、臭いが変わった、などまだ挙げればたくさんありますが、今回はよく往診の初診で伺う主訴の中から抜粋させて記載させていただきました。

 

猫ちゃんは通院が苦手な生き物です。

 

だからこそ、日常の中で彼らが発するサインを、ご家族様が的確に捉えなければいけません。

 

もし通院ができない猫ちゃんと暮らしている場合には、まずは家まできてくれる往診専門動物病院があるのかを検索しておきましょう。

 

また、もし可能であれば、大きく体調が下がってしまう(急変)前に、事前にその往診専門動物病院で健診を受けておくことをお勧めします。

 

東京23区とその近郊(都下、千葉、埼玉、神奈川)までであれば、往診専門動物病院わんにゃん保健室が訪問させていただきます。

 

ご家族様がではさわれなくても大丈夫です。

 

在宅医療専門スタッフがお伺いさせていただきますので、診察時に、ご家族様に保定をお願いすることも、捕獲をお願いすることもございません。

 

猫ちゃん、特に10歳以上の猫ちゃんと暮らしている場合には、健診を踏まえて、一度ご相談ください。

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年末年始の休診情報

●往診受付最終:2023年12月26日

●往診休診:2023年12月27日〜2024年1月3日

●往診受付開始:2024年1月4日

 

 

初診の方へ

当院は、在宅医療に特化した往診専門の獣医療をご提供させていただいております。

愛犬、愛猫を、積極的な治療ではなく、苦痛をできるだけ減らしてあげ、家でゆっくりと余生を過ごさせてあげたいとお考えの場合には、在宅での緩和ケアを選択することができます。

体調が著しく低下し、もう何も食べない、動けないなど、ぐったりしてしまう前に、まずはご連絡ください。

事前に状況を把握させていただくことで、「急変時にどうしたらいいのか」をお手伝いさせていただきます。

 

もし年末年始の休診期間に入ってしまったとしても、そのタイミングぐったりしてしまいましたら、慌てず、まずはご連絡ください。

 

緊急のみに対応できる特別診療として、お受けできる場合がございます。

 

その場合には、年末年始特別診療費として、別途30,000円がかかります。

 

ご了承くださいますよう、お願い申し上げます。

 

 

当院での処方管理期間中のご家族様

休診期間中にぐったりした場合には、まずはご連絡ください。

 

スタッフが待機しておりますので、お電話にて状況を詳しくお伺いさせていただきます。

 

なお、緩和ケア、終末期ケアに向けて、在宅での皮下点滴トレーニングがお済みの場合には、内服ができない状況でも、注射薬の処方にてご自宅で対応していただくことが可能です。

 

生活環境を踏まえた診療プランを組ませていただいておりますので、安心して年末年始をお過ごしいただければと思います。

 

また、もし緊急での往診が必要と判断した場合には、対応できる場合もございます。

 

諦めず、まずはお電話にてご相談ください。

 

2023年も残すところあと僅か。

 

心穏やかに過ごせることを祈りましょう。

 

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「心臓血管肉腫」という病気をご存知でしょうか。

 

血管肉腫は血管内皮由来の細胞が腫瘍化することで発生する悪性腫瘍です。

 

心臓にできる腫瘍の多くが血管肉腫であり、「運動量が減った」「呼吸が苦しそう」「顔色が白っぽい」「急に立てなくなった」「失神した」などの所見から発覚することが多いです。

 

この病気になると、心臓と心臓を覆う膜(心嚢膜)の間に液体が貯留し、心臓を外からギュッと握られたような、胸部を強く圧迫されたような感覚になる「心タンポナーデ」を発症することがあります。

 

解除する方法は、この貯まってしまった液体を抜去しなければいけません。

 

そして、この抜去には胸郭に針を刺さなければいかないため痛みを伴い、そして胸水抜去と比べて危険度は高くなります。

 

心臓の血管肉腫を抱えた場合には、外科手術をしても生存率はかなり低いことから、貯留した場合に繰り返し抜去するという選択肢を選ばれる方が多い印象があります。

 

今回ご紹介する症例は、心臓血管肉腫を抱えたゴールデンレトリバーのGENちゃんです。

 

2023年11月2日に急に立てなくなってしまったことを主訴に頑張って通院したところ、心嚢水の貯留と心臓腫瘍が見つかり、在宅終末期ケアに切り替え、11月24日の朝、お母さんの腕の中で眠りにつきました。

 

GENちゃんの在宅終末期ケアについて、お話させていただきます。

①.jpg

 

 

今までの経緯

人が大好きなゴールデンレトリバーのGENちゃんは、毎月お母さんと一緒に動物病院へ通院していました。

 

倒れるほんの数日前の2023年10月29日は、河川敷を自由に走り回って遊んでいたほど元気でした。

 

11月1日の夕方もいつも通り散歩に行くことができていました。しかし、この日の夕食時から異変が起きました。

 

食欲旺盛なGENちゃんが、ご飯皿を前に、一瞬だけ固まったとのことでした。ただ、その後普通に平らげてくれたので、安心していましたが、その夜寝ようと横になった時に明らかにぐったりしたため、夜間救急で動物病院に飛び込みました。

 

動物病院での検査で、心臓腫瘍心嚢水貯留が確認され、心タンポナーデに伴う症状と考えられ、心嚢水抜去を行いました。

 

この時、心嚢水が60mlほど抜けたとのことでした。

 

年齢や病気、生活環境など考慮し、抗がん剤を攻めていくよりも、在宅で緩和ケアをしてあげることを望まれ、当院までご連絡いただきました。

 

初診(ペットの在宅終末期ケア1日目)

動物病院での心嚢水抜去後、元気ないまま過ごしていたGENちゃんでしたが、徐々に元気を取り戻してきて、この日は15分ほどですがお散歩にもいけたとのことでした。

 

食欲も上がってきて、この日は遂に完食するほどまでに回復していました。

 

少し軟便気味だったので下痢止めを継続的に飲ませていただき、先日の抜去以降、やや頻尿気味とのことでした。

 

呼吸状態も安定しており、全身状態としては良好でした。

 

超音波検査のみを実施し、液体の貯留がないことを確認し、医薬品8種類の内服薬でのコントロールとしました。

 

余命は2週間といわれており、11月17日がその日です。

 

この残された時間を、いかにGENちゃんにとって、そしてご家族様にとって心穏やかに過ごせるように、在宅終末期ケアのプランを組んでいきます。

②.png

 

急変時のアクションプラン

終末期に急変はつきものであり、今状態が安定していたとしても、数分後はわかりません。

 

そして、その時すぐ駆けつけることができる救急車は動物医療には存在せず、また私たちが駆けつけることができる保証もありません。

 

ペットの在宅終末期ケアは、いわゆる「在宅医療」であることから、救急でのお伺いは叶わないことが多いです。

 

診療時間外では電話も繋がらないため、その時には目の前で起きている事象に対して、ご家族様自身で判断し、行動しなければいけません。

 

選択肢は大きく分けて2つ。

 

1つは「動物病院に飛び込む」、そしてもう一つは「家でそのまま看取る」です。

 

前者の場合には、通院中に、到着して待ち時間に、検査・処置中に、帰宅中に旅立ってしまうかもしれません。

 

また、安定して帰宅できたとしても、また同じ状態を繰り返します。

 

・元気だったのに急に...

・持病がわかっており急変した

・事故

 

回復後、また日常が戻ってくることを期待できるのであれば、緊急で通院させると思います。

 

ただ終末期では、緊急での通院の真逆に存在する、家で看取るという選択肢が多く選ばれている印象です。

 

これは決して諦めたというわけではなく、もう十分頑張ったと賞賛する気持ちで、強い覚悟を持って、家で看取る選択を選ばれています。

 

そして、「通院しない」=「何もできない」ではない、ということも覚えておいてください。

 

GENちゃんの場合には、ガクッと下がった時に医薬品を飲ませられなくなること、呼吸が苦しくなることが想定されました。

 

事前準備として酸素発生装置を準備し、大型犬であることもあり、直接吹きかけによる酸素運用を提案させていただきました。

 

なお、未使用であるうちは1台のみとし、使用開始と同時に追加1台とすることとしました。

 

酸素環境の構築は、犬猫の在宅終末期ケアにとって重要項目の1つです。

 

GENちゃんの最後の時間を、少しでも苦しくないように過ごせるように、これで酸素環境の完成です。

 

内服ができない時に使用できる皮下点滴セットも組んでいき、ガクッと下がっても医薬品を投与できる準備は完了です。

 

2023年11月5日、GENちゃんの在宅終末期ケアが始まりました。

 

急変:ペットの在宅終末期ケア6日目

診察の度に、心嚢水、胸水などの貯留があるのかを評価していました。

 

前日の診察まで貯留はなく、一般状態と言われる元気、食欲、排便、排尿の全てにおいて経過良好でした。

 

なんなら、ご飯をガツガツ食べる姿まで見せてくれ、本当に強い子ですと話していました。

 

しかし、翌日の11月10日に急変しました。

 

直前までキッチンでご飯を食べていたのに、違和感を感じたと思ったら、急に倒れてしまい、そのまま立てなくなりました。

 

診察にて心嚢水が溜まっていることを確認し、抜去することになりました。

 

往診での心嚢水抜去は腹水や胸水と比べ危険性が高く、往診で実施してもらうことは通常の往診専門動物病院では難しいかもしれません。

 

実施する獣医師と、保定、外回りを担当する愛玩動物看護師が必要になるため、少なくても2人以上の愛玩動物看護師の存在が求められると考えています。

 

この心嚢水抜去は、胸郭に針を刺すため、腹水抜去と比べて痛いんです。

 

通常であれば、鎮静処置を施すレベルなのに、GENちゃんはじっと耐えてくれました。

 

刺す瞬間だけピクッとしますが、取り乱すこともなく、横になったまま受け入れてくれていました。

 

この日は190ml抜去することができました。徐々に増えてきました。

 

抜去後にリビングで「もう立てないかもしれない」と話していたところ、キッチンから元気を取り戻したGENちゃんがスタスタ歩いてきました!

 

心嚢水が貯留すると、心臓を握られるような痛みと苦しさがあり、血流が阻害されるので顔色は真っ白に、そして苦しくなります。

 

抜去してこの圧迫を解除すると、見る見るうちに可視粘膜と言われる歯茎や舌の赤みが戻ってきます。

 

この日から13日間、安定しながら過ごすことができ、11月17日を超えることができ、この時点ではすごい食欲と元気で、散歩にも行ける、いつものGENちゃんでした。

 

③.png

 

急変:ペットの在宅終末期ケア18日目

また急に、ばたっと倒れてしまい、立ち上がれなくなりました。

 

この日も同じように心嚢水が貯留しており、抜去することで回復すると思っていました。

 

しかし、予想は違っていました。

 

抜去しても抜去しても、どんどん溜まっていくのを確認しました。

 

300mlを超えた段階で、「もうやめましょう」とお話しさせていただき、針を抜きました。

 

今夜お別れがやってくる可能性が高いため、最後に会わせて上げたい方を集めていただくようお願いします。

 

もし呼吸があれば、翌早朝にお伺い予定としました。

 

④.png

 

最後の日:ペットの在宅終末期ケア19日目

朝になり、連絡がなかったのでまだ頑張ってくれていると思い、みんなで訪問しました。

 

すると、頑張って全身で呼吸をするGENちゃんと、そんなGENちゃんをずっとそばで見守ってくれたお母さんがいました。

 

昨日の診察終了後からきっと今の今まで、酸素マスクで酸素を嗅がせてあげていたのだと感じました。

 

エコーで心嚢水を確認すると、今まで以上に溜まっており、顔面蒼白、意識も薄くなっていました。

 

実施するかどうか、想像できないほどたくさんの葛藤があったと思います。

 

そして、こんなに苦しいのなら、もう繰り返させずにこのまま旅立たせてあげたいというお母さんの覚悟を受け、抜去を中止としました。

 

せめて最後に安定剤だけでも打ってあげようと準備し打とうとした瞬間、その時がやってきました。

 

死戦期呼吸です。

 

結果何もせず、全ての手をとめ、今まさに旅立とうとしていることをお伝えし、反応の全てが停止するまで抱きしめていただきました。

 

死戦期呼吸が始まって5分ほどで、体の全ての反応が停止しました。

 

最後は本当に眠るように、ただゆっくりとした時間の流れる、そんな時間でした。

 

GENちゃんのご冥福を心からお祈り申し上げます。

 

わんにゃん保健室

江本宏平、スタッフ一同

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家でペットを看取るということは、決して楽なことではないです。

 

刻一刻と変化するペットの症状を把握し、どう解釈し、何をすべきなのか。

 

日中ならまだしも、この変化は24時間起こります。

 

もし発作が始まったらどうしよう。

 

急に呼吸が苦しそうになったらどうしよう。

 

吐いてしまったら、吐血してしまったら、下血してしまったら。

 

そんな不安を抱えながら、1分1秒を共に過ごさなければいけません。

 

もしそれが日中で、かかりつけの動物病院が診療時間内であれば、電話して相談するkとができるでしょう。

 

ただ、この変化は24時間起こります。

 

そうなった時、あなたは何ができますか?

 

そうなる前に、あなたは何を準備しておきたいですか?

 

今回お話しする猫ちゃんは、念入りな事前準備を行い、酸素環境をバッチリ整え、在宅終末期ケア(ターミナルケア)を走り抜きました。

 

今回と次回の2つで、そのターミナルケアを事細かに描かせていただきます。

 

2023年7月9日に当院と出会い、約3ヶ月間にわたる終末期ケアの末、2023年10月3日、家族が見守る中、静かに眠りにつきました。

 

【2日目(ペット在宅終末期ケア)】

診療の時に皮下点滴を実施したところ、その後は雰囲気的に楽そうにしていたとのことでした。抗不安薬を少し使用してあげることにしたのが、功を奏したのかもしれませんね。

 

少し軟便気味になったこともあり、お薬の種類を変更させてもらい、各種頓服を準備していきました。

 

内服が難しい犬猫、特に猫ちゃんでは、終末期ケア(ターミナルケア)のステージで内服で頑張るという選択肢はないと思ったほうがいいです。

 

この場合、内服ができないからと諦めるのではなく、在宅での皮下点滴をできるようになることが求められます。

 

点滴と言っても何十分も時間がかかるようなものではなく、おおよそ5分未満、早ければものの数秒ほどということもあります。

 

脱水補正を目的に皮下点滴をする場合はある程度の時間がかかりますが、投薬だけを目的とした場合には、ほんの数秒〜30秒以内くらいですので、是非挑戦してあげてください。

 

お母さんの日誌には、ももたろうちゃんのほぼほぼ24時間の動きが全て記載されていました。

 

その日誌の内容からも、ももたろうちゃんが頑張っている姿が手に取るようにわかりました。

 

そして何より、お母さんが最後まで体力も精神力も保てるのかが心配になるほどでしたが、お母さんは最後までやり抜きました。

 

続きます。

 

 

【5日目(ペット在宅終末期ケア)】

嘔吐が見られたこともあり、嘔吐を止める薬の量を増やすことで調整しました。

 

嘔吐を止める薬は、大きく分けて気持ち悪さを緩和させるものと、吐くこと自体を抑制するものに分かれます。

 

状況次第ではありますが、どちらか一方だけでなく、併用することで相乗効果を図ることが、犬猫の在宅終末期ケア(ターミナルケア)では多々あります。

 

下痢が止まったので、下痢止めは以後頓服薬として準備しておき、軟便傾向になった時に、次の皮下点滴のタイミングで一緒に使用してもらうようにお伝えさせていただきました。

 

また、ご飯も食べたそうにするするけど、口に入れるとひどい咳をしてしまう状況なため、食欲は尊重しつつも、無理に食欲を出させることはしない方針としました。

 

食欲を出させるために使用される医薬品は、錠剤タイプもあれば、軟膏タイプもあります。

 

軟膏タイプのものであれば、個人輸入することができるため、診察しないで飼い主様個人の判断で購入し、使用してしまっている事例を多く見受けます。

 

ただ、本当にそれをすべきかどうかは、ペットの状態で大きく違いが生じます。

 

無闇に使用することで、かえって苦しめてしまうことが十分起こり得ますので、個人輸入するとしても、必ず獣医師の判断を仰ぐようにしてください。

 

当院では、他院処方や個人輸入医薬品医対する説明は、あまりしないようにしています。

 

他院の場合、処方決定した獣医師がなぜそれをその用法用量で処方したのかがわからないため、無責任なことを言えないという背景があります。

 

また、個人輸入のものに関しては、その医薬品が正規品なのかの保証を誰もしてくれないので、求めたい投与量にズレが出てしまうことを懸念します。そのため、購入した場合には、全部自己責任になることをご理解ください。

 

当院の在宅終末期ケア(ターミナルケア)では、できる限りご家族様に寄り添った診療プランをご提案させていただきます。

 

上記の医薬品処方に関する注意事項はお伝えした上で、ただもしそれがこう言った用途であれば、これが正規品であれば、今のこの子に対してはこのように使用するのを推奨します、と言ったことはアドバイスさせていただいています。

 

最良の診療プランはご家族様ごとで異なるため、都度じっくりとヒヤリングさせていただきながら、方針を柔軟に決めています。

 

【9日目(ペット在宅終末期ケア)】

皮下点滴の時、いつもより痛そうにしていたとのことでした。

 

もしかすると、やや便に血が混じるというお話があったことから、止血剤を処方していました。

 

これは経験的な話ですが、色のついた医薬品はしみる傾向にあると思います。

 

また、pHが高いものはしみるようです。

 

とはいえ、必要であればどうにか痛みを紛らわせるような手法を相談しながら頑張っていただくこともあれば、その反応にペットがひどく反応してしまう場合には、削除することもあります。

 

ペットによっては、特別反応せずに受け入れてくれる場合も多々あるため、その反応すら個性として考えることが、緩和ケア、特に終末期ケアでは必要となってきます。

 

問診の時に、事細かに全部お伺いさせてくださいね^^

 

全身状態から判断し、この日から止血剤をカットすることとしました。

 

また、初診から1週間ほど経過したので、再度血液検査と超音波検査を実施することとしました。

 

平常時から呼吸状態が悪い子に対し検査を入れる場合には、何よりも呼吸管理が重要です。

 

酸素コントロールには、当院では酸素ボンベを常備しておりますので、ボンベを解放することで酸素濃度をあげて呼吸悪化を防いでいます。

 

なお、ここで重要なもう一つのことが、保定です。

 

保定って簡単に見えるかもしれませんが、かなり高度な技術であることを知ってください。

 

保定の仕方一つで、その場で呼吸を止めてしまうこともあれば、医療事故を引き起こしてしまうこともあります。

 

よくご家族様に保定をお願いする獣医師がいるかと思いますが、状態が悪い時のペットの保定をお願いされた場合には、かなり慎重に対応することを忘れないでください。

 

「どこをどのくらいの力で抑えればいいのか」

「どこは押さえちゃいけないのか」

 

この2つだけは明確にしておきましょう。

 

なぜここで保定を取り上げたかというと、ももたろうちゃんは保定されるのが大嫌いで、その都度容易にチアノーゼを発症してしまうんです。

 

そのため、保定には常時2人を揃え、酸素ボンベの管理はお母さんにお願いすることも想定しておかなければいけませんでした。

 

この日は愛玩動物看護師が2人、動物看護スタッフが1人を揃えて往診に向かったので、全ての検査を安心して実施することができました。

 

在宅医療を求める状況にあるペットの多くが、すでに終末期ケア(ターミナルケア)のステージにいることが多いです。

 

往診専門動物病院のほとんどが、残念なことに獣医師一人で運営されていることがほとんどなため、必ず保定してくれる看護スタッフの動向が可能かを聞いてください。

 

もしかすると、知り合いの動物病院から看護スタッフを派遣してもらえるかもしれないので、諦める前に、同行してもらうことが可能かどうかを相談することをお勧めします。

 

検査の時は、状態や性格に応じてネッカー(カラー)を装着するのですが、ももたろうちゃんの首の状態(下顎リンパ節腫瘍)もあり、首のところは広がりが持てるように遊びを持たせた作りがベストだと話し、次回再度調整することとしました。

 

【15日目(ペット在宅終末期ケア)】

今日はネッカー(エリザベスカラー)の再調整を予定していたのですが、なんとお母さんがももたろうちゃん専用のカラーを作ってくれました!

 

 

ももたろう①③s.jpg

 

 

すごいですね!愛のパワーですね^^

 

設計はバッチリなので、あとは装着するだけ...なのに...

 

前肢を器用に使って、カラーを外してしまいました。。。

 

この仕様でもダメならもう仕方ないので、カラーなしで検査に臨むことで検査指針立てていきました。

 

長くなりすぎたので、続きは次回です^^

 

猫ちゃんの終末期ケアは、投薬とご飯選びの勝負です。

 

1つがダメでも次の手を考えておくことが大切です。

 

これって決めてずっとそのまま進んでくれるなんてことはあり得ません。

 

状態に応じ、都度相談しながら一緒にプランを考えていきましょう。

 

次回は状態低下に伴う処方プラン変更のお話です^^

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終末期を迎えた犬猫に対して、「(治療に関しては)何もできないので、そのまま看取ってください」と言ってしまう獣医師がいます。

 

この言葉には、「治療の手段がない」という思いが強く隠れていますが、言葉足らずで伝わってしまった結果、とても冷たく伝わってしまった典型的なケースであると考えています。

 

かかりつけの獣医師からの心無い言葉で傷つく飼い主様はたくさんいます。

 

ただ、もし今受け入れられる心の余裕がございましたら、その背景には、全ての命を平等に助けたいと考え、毎日死に物狂いで働いている先生の言葉足らずを許してあげてください。

 

今回ご紹介するのは、通院から往診に切り替え、しかしその往診が動物病院のオプションだったことから、在宅医療に特化した当院に転院された、頸部腫瘍を抱える猫のももたろうちゃんのお話です。

 

2023年7月9日に当院と出会い、約3ヶ月間にわたる終末期ケアの末、2023年10月3日、家族が見守る中、静かに眠りにつきました。

 

 

【初診時のももたろうちゃん】

食欲はまだあったのですが、飲み込むのが難しい病態なため、食皿の前でじーっと見つめて考える仕草が胸に刺さるとのことでした。

 

しばらく考えて一口食べては、ゼェゼェしてやめて、また考えては一口食べて、を繰り返しているとのことでした。

 

ご飯はドライフードをすり潰し、a/d缶などのウェットフードと混ぜているとのことでした。お皿が汚れないよう、頻繁に交換してあげているとのことでした。

 

ウェットはいろんな種類のものを準備し、騙し騙しローテーションしているとのことでした。(猫ちゃんあるあるですね^^)

 

あまり動けなくなってきたが、もともと体も大きくあまり動かないタイプとのことで、運動量の変化は大きく感じていないとのことでした。

 

それでも知らない私たちが触ると怒る仕草を見せて抵抗しましたが、頑張って血液検査、超音波検査をさせてくれました。

ももたろう①.jpeg

 

 

常備薬としてセレニアとプリンペラン、レメロンが準備されていましたが、これらも全て別の医薬品、剤形変更にて対応し、ももたろうちゃんにあった常備薬として準備させていただきました。

 

飲み込むのが辛い猫ちゃんに、食欲増進剤を出し続けるのはかわいそうかなと思い、一応別の薬で代用できるように準備はするが、使用するかどうかはお任せですとお伝えしました。

 

皮下点滴はビタミン入りのソルラクト輸液を2023年5月から1日1回180mlで投与していたので、1日2回90mlずつと分けることで、本人の負担だけでなく、実施するご家族様の負担を軽減することができました。

 

ご家族様ごとで何が負担なのかは異なります。

 

その負担な箇所を把握し改善案を提示すること、そしてそれを実施できるようにお手伝いすることが、ペットの在宅終末期ケアでは必須となってきます。

 

腫瘍に対してステロイドを使用しない理由を伺ったところ、以前に医原性糖尿病を発症したことがあったことから、かかりつけ獣医師から、ももたろうちゃんにはステロイドを使用しないと言われてしまったため、今回も出してもらえなかったとのことでした。

 

インスリン療法によって糖尿病を克服できたものの、その後も再発を繰り返していたとのことでした。

 

初診時に行った検査結果と日を追うごとに変化するももたろうちゃんの病状に合わせた処方を都度変更しながら調整していきます。

 

この日から、ももたろうちゃんの在宅終末期ケアが始まりました。

 

次回はももたろうちゃんの終末期ケア(ターミナルケア)の様子をなるべく鮮明にお伝えしていこうと思います。

 

もしお近くで、通院が難しいとされる犬猫と暮らすご家族様がいらっしゃいましたら、往診専門動物病院があることを教えてあげてください。

 

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最後の時間を、皆さんはどのように過ごさせてあげたいですか?

 

もし在宅での緩和ケア、在宅での終末期ケアを希望されるのであれば、早めに往診専門動物病院を探しておきましょう。

 

今回ご紹介するのは、通院から往診に切り替え、しかしその往診が動物病院のオプションだったことから、在宅医療に特化した当院に転院された、頸部腫瘍を抱える猫のももたろうちゃんのお話です。

 

2023年7月9日に当院と出会い、約3ヶ月間にわたる終末期ケアの末、2023年10月3日、家族が見守る中、静かに眠りにつきました。

 

【初診時の問診】

もともとは通院が苦手であり、往診専門動物病院で診てもらっていたが、その獣医師の方で施設を有する通常の動物病院を開設してしまったため、今までみたいに往診がしづらくなってしまったとのことでした。

 

ももたろう②.jpg

 

そこで、終末期を迎えるにあたり、在宅での終末期ケアを得意とする往診専門動物病院を再度探され、当院を見つけてくれました。

 

既往歴には、膵炎、腎臓病、医原性糖尿病、頸部腫瘍がありました。

 

2022年12月頃に左下顎のあたりに小さなしこりを見つけ、それが半年くらいで大きくなってきたとのことでした。

 

当時にかかりつけ獣医師の話だと、今から手術をするには、ももたろうちゃん腎機能から考えると麻酔のリスクが高いことと、大きな範囲を切除するため大手術になることを示唆されたとのことでした。

 

動物病院を開設されてからの先生は少し変わってしまったところもあり、言葉の節々にあしらうような雰囲気が醸し出されおり、それによってご家族様が傷ついてしまったとのことでした。

 

ご家族様には先代猫で経験した辛い記憶がありました。

 

悪性腫瘍で入院させて治療を受けさせた結果、退院後1週間ほどで亡くなってしまったとのことでした。

 

お見舞いに行く度に、ケージの中で辛そうにご家族様を見つめていたとのこと。

 

最後の朝はしゃっくりして、痙攣を起こして旅立ったとのことでした。

 

最後どうなるのか、夜間はどうしたらいいのかなどを相談して見たところ「自分で探せば?」と言われ、内服薬が飲めなかったことを伝えると「じゃー飲ませないでいい」、って突き放されました。

 

獣医師の多くが、治療に関しては知識が豊富でも、終末期に悩むご家族様に寄り添った提案をし続けてくれるのは、ごく少数であると感じています。

 

「治療ができないなら家で看取ってください」ではなく、それ以外にもまだこんな方法もあるよって提案し続け、ご家族様の心の変化に柔軟に対応しながら最後まで寄り添っていくのが終末期ケアです。

 

かかりつけ獣医師も意識せずに放ってしまった言葉だと思いますが、きっと動物病院での入院管理に手術、基本夜間の往診となれば、精神的に滅入ってしまって当然だと思います。

 

ペットの全ての悩みに応えたい一心で突き進まれた末、結果としてその皺寄せがどこかに出てしまうという場面だったのだと思いました。

 

往診専門動物病院は、本来は簡易的な処置や、動物病院の休診に伴うスポット的な役割を担うのではなく、在宅医療の訪問医療に特化すべきです。今よりももっと、慢性疾患の緩和ケアや、余命を見据えた終末期ケアこそ、ペットを飼っているご家族様が求める最大の診療分野であると考えています。

 

多くの往診専門動物病院が自身のライフワークバランスを考えた運営を行なっています。

 

ライフワークバランス考えた往診専門動物病院ではなく、ちゃんとご家族様に寄り添える体制の整った往診専門動物病院が増えてくれることを切に願います。

 

ももたろうちゃんは、手術を希望しませんでした。

 

ペットの在宅終末期ケアでは、通常の問診だけでなく、もっとパーソナルなこと、生活環境を把握するために十分な情報など、多岐にわたって把握しなければいけません。

 

「内服が苦手なこと」

「洋服やサポーターを身につけるのが嫌いなこと」

「いつも奥の部屋とトイレのあたりを行き来しながら生活していること」

「お父さんが晩酌の時に缶を開ける音でリビングに来ておつまみをねだること」

「お母さんがほぼ24時間体制で見ていてくれること」

 

まだまだあります。

 

ももたろうちゃんがどうやってこの家族と出会い、どんな生活をしてきたのか。

 

家族として何をどこまでしてあげたいのか。

 

現実問題として、何ができるのか。

 

獣医学として絶対に正しいと言えなくとも、大きく間違っていなければ、ご家族様の気持ちを形にしてあげたいと考えています。

 

もしそれで、ご家族様の心が落ち着くのであれば、結果として、その先にいるペットの心も落ち着くであろうと信じています。

 

在宅での皮下点滴方法も確認したところ、複雑な手法を指示されていましたので、全て変更させていただきました。

 

ももたろう①③.jpg

 

獣医師によって、皮下点滴一つとっても、その方法が異なる場合があります。

 

何度もシリンジ(注射器)を交換しながら、ご家族様だけで皮下点滴をしてもらうには、少し煩雑すぎるかなと感じています。

 

付け替えの度に漏れてしまったり、気泡が入ってしまったり、その刺激でペットが動いてしまったりなど、在宅での皮下点滴の運用方法としてはやさしくないです。

 

獣医師であればその運用は簡単ですが、ご家族様にとってはそうではないことを理解して処方しなければいけないと思っています。

 

全体的なお話を伺い、いよいよももたろうちゃんの今の状態について診ていきました。

 

このように、初診時にはペットの状態だけでなく、ご家族様の悩みがどこにあるのか、生活環境的にどこまで対応できそうかなどを想像しながら、さまざまなお話を伺っていきます。

 

その中で、ここはこんなことができるかも、ここはどうしようもない、などを少しずつ明確にしながら、終末期をご家族様と一緒に歩んでいきます。

 

ペットの在宅終末期ケアという考え方は、ペットと暮らすご家族様にとって必要となる可能性が高いです。

 

最後まで入院治療ではなく、家の中で余生をすごさせてあげたいとお考えのご家族様は、ペットがぐったりする前に在宅医療プランを一緒に作っていきましょう。

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急に愛猫がふらついたら、皆さんは何を疑いますか?

 

●もう高齢だからふらついただけだろう

●腰が痛いのかな

●足が痛いのかな

●爪が伸びてて歩きづらいのかな

●足裏の毛で滑っただけかな

 

動物病院への通院を苦にしない猫ちゃんであれば、すぐに通院して検査してもらうという選択ができると思いますが、多くの猫ちゃんはキャリーに入ることすら容易ではありません。

 

そのため、ご家族様判断で様子見を選択しがちです。

 

しかしこのふらつきには、実は怖い病気が潜んでいて、これから暴れ出すかもしれないという予兆になる可能性があることを知っておいてください。

 

今回ご紹介する症例は、ふらつきを様子見をした結果、1ヶ月ほどで食欲がなくなり、呼吸が一気に悪なったことをきっかけに往診のご連絡をいただき、ギリギリ投薬が間に合ったため状態が安定し、緩和ケアに入ることができた猫ちゃんです。

 

原因は甲状腺機能亢進症で、それに伴う心臓病の発症と増悪。緩和ケア、ターミナルケアと1年5ヶ月に渡る在宅医療の末、最後は家族が寝静まった夜のこと、音を立てずに静かに旅立ちました。

 

もし初診の時にもう少し様子を見ていたら、きっと数日後には旅立っていたと思います。

 

往診専門動物病院は、ご家族様が最後の時間をご自宅で最愛のペットとどう過ごしていくのかを、医療面だけでなく精神面や生活面からサポートしていきます。

 

通常の診察ではお伺いできない事細かな日常のことの中に、緩和ケアのヒントが隠されていることがあります。

 

診察時間をゆっくり時間をとって、全部私たちに教えてください。

 

一緒に愛犬、愛猫の最後の時間を、どこでどんな風に過ごさせたいのか、考えていきましょう。

 

今回紹介する症例は、14歳の去勢雄、猫丸ちゃんについてです。

 

2022年1月6日に当院を食欲廃絶と呼吸促迫を主訴に受診し、甲状腺機能亢進症に伴う心筋症の併発と判断され緩和ケアを開始。2023年4月3日からターミナルケアに移行し、2023年6月1日に大好きだったご自宅のリビングの大きな窓の下で、静かに眠りにつきました。

 

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【初診】

猫丸ちゃんはとても人懐こく、太々しい表情がとても可愛い男の子でした。

 

猫丸ちゃんのご家族様も、この表情がなんとも言えないくらい愛らしいと、よく診察で話していました。

 

最初に出会った時は本当に苦しそうで、大きくお腹を動かす呼吸をしながら、少し歩くと開口呼吸してしまうような状態でした。

 

今までの経緯を伺うと、最初のワクチン接種と去勢手術をきっかけに、普段はおとなしい性格の猫丸ちゃんが、キャリーを見せた瞬間に豹変してしまう姿を見て以来、動物病院への通院は断念したとのことでした。

 

初診時は明らかに呼吸状態が悪いことから、超音波検査のみ、しっかりと酸素管理をしながら、呼吸状態に細心の注意を払い、獣医師1人と動物看護師2人で臨みました。

 

胸水、腹水ともに貯留を認めないこと、また多飲多尿などの症状がないことからも、所見でおそらく甲状腺機能亢進症が隠れていると感じました。

 

ただ、ホルモン系の疾患は採血である程度判断がつきますが、採血なくして治療を開始するにはあまりにも博打過ぎてしまうため、まずは対症療法を行い、在宅酸素管理環境を徹底することとしました。

 

酸素発生装置2台、酸素ボンベ完備の状態を作り、安定させる処置だけを行い、翌日の再診としました。

 

【再診】

昨日と比べて格段と状態が上がってきており、運動をしても開口呼吸をしないところまで改善を認めました。

 

やっぱり生き物は、「水」と「酸素」が重要なんだと感じさせられる現場でした。

 

状態も安定したことから、血液検査を実施し、甲状腺機能亢進症、心臓病の併発を確認しました。

 

甲状腺機能亢進症をコントロールしてあげることで、猫丸ちゃんはみるみる回復していき、1週間ほどで状態が上がり、2週間後の再診では通常通りの生活ができるまで改善することができました。

 

在宅酸素環境を一旦解除し、また必要な時に同じように運用できるように、ご自宅での酸素運用の流れをメモしてお渡しさせていただきました。

 

甲状腺機能亢進症の症例では、薬用量の変更を伴う場合には2週間後、伴わない場合には1ヶ月後、さらに安定していれば以降3ヶ月ごとの検診を、当院の在宅医療では目安としています。

 

採血することが猫にとって負担であることはもちろんですが、それによって適当な医薬品の選択及び生活環境の変更ができるならば、天秤にかけ、実施してあげることを検討してあげたいと考えています。

 

血液検査、尿検査、超音波検査、便検査など、在宅医療でも専門検査機関と連携していることが多いため、ご自宅にいながらも、愛犬、愛猫に適切な医療を届けてあげることが可能です。

 

また、もし測定することで評価でき、コントロールすることで今の生活が楽になるのであれば、この子たちのためにも、まずは一度往診専門動物病院までお問い合わせください。

 

動物病院へ通院ができるのであれば通院を優先し、もし難しい場合には、諦める前に往診専門動物病院へ相談しましょう。

 

猫丸ちゃんは、その後も安定した生活を過ごせていました。

 

2022年1月6日に当院を受診し、1月7日に検査を行い、1月8日から甲状腺機能亢進症の治療及び心臓病の緩和ケアを開始。

 

2023年4月に入ると少しずつ体調不良を認め、腎臓の数値が上がってきたことと、心臓の数値が上がってきたことから酸素環境の再設置を行い、日常は大気中で過ごし、苦しい時のみ吹きかけ、または酸素室管理としました。

 

2023年5月28日からは、基本的には酸素室内で管理となっていましたが、酸素チューブを駆使することで、酸素管理されながらもリビングで一緒に過ごすことができるような環境を構築して過ごすことができました。

 

2023年5月31日の朝に、お母さんの手からマグロを少し食べてくれ、少し状態が上がってくるかもと思った夜中、ちょうど日付が回った頃に、静かに眠りにつきました。

 

最後はご家族様が寝落ちしてしまった、ほんの10分くらいのことだったとのことでした。

 

猫丸ちゃんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。

 

わんにゃん保健室 スタッフ一同

 

【まとめ】

高齢になった犬猫の症状を、一過性の症状だ、いつものだから放っておけば治るなど、安易に判断しないほうがいいです。

 

若齢の頃は、大体の症状が3日もすれば消えると言われればそうかもしれませんが、高齢期では3日待てば、その時間でどんどん衰弱していってしまいます。

 

いつから高齢期なのか、という質問があれば、それは「運動機能や生理機能が下がった時」からです。

 

●下痢しない子が下痢しやすくなった

●食事の量が減ってきた

●ソファーに飛び乗らなくなった

●鳴き声が変わった

●吐く頻度が増えた

●よく水を飲む

●トイレによくいく

●おしっこの量が増えた

 

あげればキリがないですが、何かしらの体調不良のサインを見逃さないであげましょう。

 

全てはご家族様次第です。

 

不調のサインを受け取り、僕ら獣医師にパスしてください。

 

動物病院への通院が難しい場合には、諦める前に、必ず往診専門動物病院までご連絡ください。

 

当院は、東京23区を中心に、東京都下、千葉、埼玉、神奈川まで往診しています。

 

お近くで、通院ができなくて困っている犬猫と暮らすご家族様がいらっしゃいましたら、往診専門動物病院の存在を教えてあげてください。

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猫の乳腺腫瘍の多くは悪性です。

 

乳腺腫瘍に関しての記事はたくさんweb上に溢れていますので、もし犬猫の乳腺腫瘍に関する治療方法や外科の術式、抗がん剤の話や余命の話などは、是非そちらを探してお読みいただければと思います。

 

私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、病気を抱えたが、手術や抗がん剤などの攻めた治療を望みたくはないが、せめて残された時間を少しでも緩和的に過ごさせてあげたいとお考えのご家族様のお力になれます。

 

過去にも、乳腺腫瘍の記事を書いていますので、もしお時間がございましたら一読いただければと思います。

■乳腺腫瘍の高齢犬

■乳腺腫瘍末期の高齢猫

 

今回ご紹介する症例は、乳腺腫瘍を患った猫ちゃんです。

 

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【既往歴】

2021年2月10日に乳腺のしこりを認め、すぐに2次医療施設にて片側の乳腺全部と所属リンパ節の切除を行いました。

 

だいぶ痛そうな術後だったとのことでしたが、病気を乗り越え退院することがで、つい先日まで、いつも通り過ごせていたとのことでした。

 

定期検診も3ヶ月に1回、苦手な通院でしたが意を決して動物病院に通院し、血液検査、X線検査、超音波検査としっかりと診ていました。

 

直前の検査では問題なかったとされた中、その1ヶ月後の2023年4月3日夜に咳、ふらつき、食欲低下を認め、動物病院に行って再度検査してみたところ、肺に腫瘍病変を確認されました。

 

抗がん剤や外科手術はすでに不可とされ、自宅で見守るようにと内服薬と坐薬をもらいましたが、お薬を飲ませることができず、日に日に弱々しく、また咳も激しくなり、ふらつきも強くなってしまったため、もう在宅医療に切り替えてあげたいと考えたとのことでした。

 

【初診時】

普段から通院できる性格の猫ちゃんということもあり、診察にお伺いすると、スリスリしに出てきてくれました。

 

話しかけてくれて、撫でてとせがまれるのですが、その呼吸状態は荒々しく、急ぎ酸素環境の準備が必要であることと、この状態だと血液検査などのストレスがかかることは避けた方がいいとお伝えしました。

 

呼吸状態が悪い犬猫に対して、通常は酸素を嗅がせ、呼吸を安定させながら検査や処置を実施しています。

診療時には保定してもらうことが必須になりますが、当院では動物看護師を含めた複数のスタッフと一緒にお伺いしているため、診療の補助の全ては、基本的に必要ありません。

呼吸状態を管理しながらの保定業務は、訓練を積んだ専門チームに任せるべきですが、多くの往診専門動物病院が獣医師1人でお伺いしていることから、この業務をご家族様が担わなければいけません。

胸を強く押さえてしまうことで、呼吸を悪化させてしまい、最悪致命的なことになってしまうことを避けるためにも、もし往診専門動物病院を始めてご利用される場合には、必ず動物看護師が同行しているのかを確認するようにしましょう。

 

その場で酸素発生装置、酸素ボンベ、酸素ハウスの手配完了し、運用方法を簡単にご説明させていただきました。

 

翌日の診療までに全部が揃うこととなりましたので、詳しい運用方法はそこでご説明させていただくこととしました。

 

超音波検査にて特記すべき所見は認めませんでした。

 

処置は皮下点滴を実施したのですが、液体量を極力なくし、なるべく早く処置を完了させてあげることが優先であると判断しました。

 

猫ちゃんに特に多くみられる腎臓病など病気では、脱水補正の観点からも皮下点滴の輸液量をちゃんと多く入れます。

 

もちろん貧血(腎性貧血など)や心臓の状況、高血圧はどうなのか、そもそも皮下点滴に耐えられるのかなど、多岐にわたる情報整理を一瞬で行い、できる限り負担のない、かつ多めの量を投与してあげるよう専念します。

 

しかし、呼吸器疾患や腫瘍性疾患などでは、腎機能はそもそもダメージを受けていないケースが多く、その場合には少量であってもしっかりと腎臓が機能してくれます。

 

ペットの在宅終末期ケアでは、その子がいかにして普段の慣れ親しんだ環境で、他に邪魔されることなく悠々自適に過ごさせてあげられるかを考えてあげたいです。

 

そのため、ご家族様だけで処置の全てを完結できるようなプランを構築することに、私たち往診専門動物病院は特化しています。

 

この日の診察では、過去の血液検査結果や既往歴、今までどんな経過を歩んでこられたかなどを幅広くヒヤリングさせていただき、明日の診療までの暫定的な診療プランを組みました。

 

【再診】

初診時とは変わり、足並みも軽やかであり、食欲も上がってきたとのことでした。

 

もちろん病気が治ったわけではなく、症状が緩和されただけとわかっているものの、昨日よりも元気そうな姿が本当に微笑ましかったです。

 

酸素環境を整える道具も全て揃っており、この日は酸素環境の構築および運用皮下点滴トレーニングの2つをご説明させていただきました。

 

呼吸状態から、まずは酸素運用方法を吹きかけによることで、日常コントロールとしました。

 

また、当院としておすすめしている酸素ハウスは、見栄えは良くはないものの、機能性重視でご紹介させていただいています。

 

酸素ハウス.jpg

 

 

呼吸状態に合わせて、酸素吹きかけから初めていき、酸素ハウス内での管理となっていきます。

 

酸素室内での管理となっても、掃除のタイミングやご飯のタイミングなどで酸素ハウスを開閉する必要があります。

 

その時に登場するのが酸素ボンベです。

在宅酸素ボンベ.jpg

 

わんにゃん保健室では、常に呼吸状態の悪化を想定した診療を心が変えており、常時酸素ボンベを数本揃えています。

呼吸状態が悪い犬猫、または検査や処置で呼吸状態が悪くなりそうな場合には、使用することにご同意いただいております。

 

酸素室内の酸素濃度が下がってきたら、酸素ボンベでブーストしてあげることで、酸素発生装置だけでの酸素コントロールよりも酸素ボンベを併用した方が、より利便性高く運用することが可能です。

 

そして、皮下点滴のトレーニングをしました^^

 

【まとめ】

今回のように、呼吸状態が悪い犬猫の症例で、いかにして呼吸状態を悪化させないのかが鍵になってくると考えています。

 

そのためには、詳しいヒヤリングと既往歴、今までの経緯や犬猫の性格など、詳細に把握しておくに越したことはありません。

 

今回の症例では、初診におおよそ2時間半ほどかかりましたが、この猫ちゃんの性格や病状をしっかりと把握できたこともあり、スムーズに診療に入ることができました。

 

乳腺腫瘍、特に猫ちゃんの乳腺腫瘍は悪性の可能性が高く、発見された時点で、すでに末期であるということはかなり多くあります。

 

まずは普段からのコミュニケーションの中で、乳腺にしこりがないかを入念に確認し、もしあった場合には、外科手術を選択するのか、または痛い思いをさせるくらいなら運命を受け入れ、在宅での終末期ケアにするのかを考えましょう。

 

保定業務は、呼吸状態が悪い犬猫においてかなり高度な洞察力が求められます。

 

健康診断程度であればまだしも、病気でもうぐったりしている場合には、動物看護師に保定業務が頼めるのか、必ず担当される動物病院に確認するようにしましょう。

 

往診専門動物病院のほとんどが、獣医師一人で運営しています。

 

動物看護師をアテンドしてくれるのか、往診専門動物病院が初めての場合には、必ず電話などで確認をとりましょう。

 

乳腺腫瘍は怖い病気です。

 

もし乳腺にしこりが見つかった場合には、まずは獣医師にご相談ください。

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犬猫の終末期ケアは、通院で行うのか、往診(在宅医療、訪問医療)で行うかの2つがあります。

 

終末期ケアは、動物病院ごと、もっと言えば、担当する獣医師ごとで違ってくることが予想されるほど、まだまだ確立されておりません。

 

私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、犬猫の在宅における終末期ケアを確立させるため、ペットの在宅終末期ケアに特化した訪問診療を行っています。

 

この子たちが、一番安心できる環境で、大好きなご家族様と一緒に最後の時間を過ごし、その腕の中で眠りにつくその日まで、私たちが全力でサポートしていきます。

 

今回は前回に引き続き、急に立てなくなってしまった大型犬の蛍ちゃんです。

2023年5月28日の初診でエコー検査にて肝臓がんを認め、2023年6月25日にご家族様のもとで、鳴き声をあげることなく、静かな眠りにつきました。

 

【再診2日目(2023年5月29日)】

状態は上がってきて、昨日はできなかったヘッドアップを見せてくれ、ご飯も食べられ、お水も十分に飲めているとのことでした。

 

この調子であれば、内服薬への切り替えを視野に入れられると考えられるくらい、状態改善を見せてくれたことがとても嬉しかったです。

 

この日も昨日に引き続き、皮下点滴による処置を実施しました。

 

 

【再診3日目(2023年5月30日)】

調子も上がってきたこともあり、この日に毛刈りを実施しました。

 

ペットの緩和ケア及び終末期ケアでは、日常の介護がどうしても切り離せません。

今後予想される介護トラブルは、事前に対策を練っておくことで、いざその時を迎えた時にスムーズに対処できる準備をしておくことが肝心です。

 

なお、調子も上がってきていることと、食欲もだいぶ戻ってきてくれたこともあり、内服薬処方に挑戦することとしました。

 

また、便が3日間出ていないということがあったので、排便を促すシロップを処方しました。

 

本日も皮下点滴での処置を行い、明日の診察前に内服に挑戦していただき、飲めたかどうかによって注射薬プランで行くか、内服薬プランで行くかを決めることとしました。

 

 

【再診4日目(2023年5月31日)】

立ち上がりました!

 

初めて蛍ちゃんが立ち上がっている姿を見ることができました。

 

わんにゃん保健室スタッフ一同、飛び上がるように嬉しかったです。

 

この日から内服薬プランに切り替え、まずは3日後に再診を組んでいき、そこで再度検査を実施してモニタリングしていくこととしました。

蛍ちゃん③.png

 

 

【再診8日目(2023年6月4日)】

立ち上がれたのは前回の診察の時だけであり、以降立ち上がれないとの事でした。

 

ただ食欲はあり、たくさんのお薬でしたが、蛍ちゃんは魚肉ソーセージが大好きなため、その中に隠すことで飲ませられているとの事でした^^

 

 

【再診14日目(2023年6月10日)】

もともとお尻のあたりや後肢を触られるのを嫌がる性格ではありましたが、その嫌がり具合が上がってきてしまい、お尻のあたりを触ると怒るようになってしまったとの事でした。

 

介護が必要なステージになると、排泄物による汚れの付着をいかにして取り除いてあげるか、いかにして付着し辛くするか、そして、いかにしてシンプルかつ簡略化するか、がとても重要になってきます。

 

小型犬や猫ちゃんなど、比較的触ったり持ち上げたりすることが容易なサイズの子たちならまだしも、怒りやすい子や、体重が大きい大型犬となると、その対策はとても重要となってきます。

 

蛍ちゃんは大型犬のため、移動させるにはお腹の下にタオルを入れるなどして持ち上げる取っ掛かりを作ってあげなければいけないため、その取っ掛かりをつけるためにお尻や後肢を持ち上げます。

 

この行為が蛍ちゃんは苦手なため、その対策を練っていましたが、もしかしたら関節や神経に痛みがあるのかもしれないと考え、痛み止めでどこまで抑え込めるかを評価することとなりました。

 

 

【再診21日目(2023年6月17日)】

痛み止めが功を奏したようで、ハンドリングの時もそこまで嫌がらなくなったとの事でした。

 

介護が必要なステージでは、痛みに関して常に評価してあげることをお勧めします。

 

「どこを触ると嫌がるのか」

 

「どれくらい嫌がるのか」 など

 

痛みは生活の質を低下させる要因の一つです。

 

医薬品で緩和できるのであれば、体調に合わせた医薬品を使ってあげましょう。

 

また、疼痛緩和には投薬以外にも、もしかすると物理的な圧迫などによって生じる痛みであれば、介護によって緩和できるはずです。

 

大型犬の蛍ちゃんの介護はかなり難易度が高く、考えなければいけないことが多々ありましたが、ご家族様がみんなで力を合わせていただけたからこそ、さまざまな緩和プランを組むことができました。

 

 

【再診28日目(2023年6月24日)】

朝方に鳴いて呼ばれたので、痛いのかなと思って痛み止めを飲ませてあげたところ、1時間くらいで未消化物の嘔吐があったとの事でした。

 

急にガクッと下がったとの事から、もう内服薬を飲ませていくことが困難であると判断し、可能な限りを注射薬に切り替えました。

 

ペットの在宅終末期ケアでは、できる限りペットの負担を減らしてあげるため、どうしても内服薬でしか投与できないもの以外は、すべて注射薬切り替えを行ってあげたいと考えています。

 

また、終末期ケアのステージでは、嘔吐によって大きく状態が下がってしまうこと、またその時に救急で通院することがすでにできないこともあり、早めから毎日服用していただいています。

 

そんな中、すでに吐き止めを飲んでいるにもかかわらず嘔吐を認めることがあります。

 

物理的な要因も考えられますが、多くの場合、旅立ちを示唆しているケースが多いです。

 

この日は朝と夜に訪問し、皮下点滴にて投薬処置をしました。

 

 

【再診29日目(2023年6月25日)】

昨日よりもさらに弱々しくなった蛍が玄関で迎えてくれました。

 

もう何も食べられていないとの事でした。

 

朝の処置をして、また夜に訪問することとしました。

 

そして夜に訪問したところ、もうほとんど意識のない蛍ちゃんがそこにいました。

 

静かに眠っているようで、ご家族様と相談した上で、夜の処置はせず、このまま静かに旅立たせてあげることで合意しました。

 

この日の夜中、家族みんなが寝静まった頃に、鳴き声も上げず静かに旅立っていきました。

 

きっとあの姿のまま、穏やかに静かに眠りについたのだと思っています。

 

 

【蛍ちゃんの在宅終末期ケアのまとめ】

急に立てなくなったことを主訴に始まった往診でしたが、その症状は一過性のものではなく、隠れていた大きな持病から来るものでした。

 

初診時に実施した血液検査、超音波検査で膵炎と肝臓腫瘍、脾臓腫瘍が確認され、この日から始まった在宅終末期ケア。

 

昨日まではいつも通り、ご飯も食べられていたし、トイレもできたし、何ならお散歩だっていけていました。

 

最初の3日間は注射薬を用いた皮下点滴プランとし、その後安定してきたので内服薬のプランに変更。

 

立ち上がれなくなり、介護が必要になることを見越して、毛刈りなどのお手入れを早期から実施。

 

便秘があればシロップ剤で対処し、逆に軟便気味になれば下痢止めで対処。

 

痛みが強くなってくれば、多方面からの疼痛緩和。

 

内服薬が難しくなった時が来たら、注射薬を用いた皮下点滴プランに戻す。

 

蛍ちゃんは40kgクラスの大型犬でしたので、介護は本当に大変だっただろうと思っていますが、ご家族様の愛情あるケアのもと、終末期を走り抜くことができました。

 

2010年2月に、まだ3ヶ月齢の頃に保護された蛍ちゃんは、2023年6月25日、大好きなご家族様がクラスご自宅で、静かに眠りにつきました。

 

蛍ちゃんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室

江本宏平、スタッフ一同

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大型犬で多く見られる病気は、なんといっても腫瘍(がん)です。

 

慢性疾患で旅立つ大型犬もいますが、小型犬と比べて大型犬では、腫瘍(がん)で旅立っていく子が、肌感的に高い気がしています。

 

そして、大型犬の終末期特有の最も問題になることに、運動機能の衰えである「歩けない(歩行不全)」「立ち上がれない(起立不能)」が挙がります。

 

小型犬であれば抱き上げて動物病院に連れていくことが叶いますが、大型犬の場合、抱っこして動物病院まで行くことは、体重的にほぼほぼ不可能です。

 

もし持ち上がるのであれば、、、

 

車に乗せて上げられ、少し遠くの動物病院まで通院させることはできると思います。

 

そこまでの持ち上げは難しい場合に、台車などに乗せて通院するという方法もあります。

 

健康なわんちゃんと比べて熱中症を起こしやすいことが予想されますので、暑さ対策はしっかりしておきましょう。

 

ただ、それすらも難しいというケースがあります。

 

もし「痛み」を伴っている場合には、患部を触れられることを嫌がります。

 

例えば腰や膝、骨盤のあたりに痛みがある時には、下半身を触れられることが嫌であり、尚且つ、お尻のあたりや手足の先を触られるのが嫌いな犬猫の場合には、腰を立たせることすら至難の技になる場合もあります。

 

犬猫にとって、足先は生命維持にとって欠かせないものですので、結構触れられること自体に敏感で、意図せず歯を剥き出しにしてしまうことも多々あります。

 

大型犬の場合には、普段から抱っこに慣れていないことが多いので、この時期に下半身に触れられて持ち上げられたりすることを嫌がる傾向があるため、普段からトレーニングしておくことをお勧めします。

 

ペットが終末期を迎えるにあたり行われる終末期ケア、特に在宅終末期ケアでは、ペットだけでなくご家族様の負担もできる限り緩和していくことが必要であると考えています。

 

そのため、ペットの在宅終末期ケアでは、「犬猫が抱える症状の緩和」だけでなく、「寄り添うご家族様のケア」も同じくらい大切だと考えています。

 

もし愛犬の大型犬が立ち上がれなくなったり、歩けなくなってしまった場合には、通院という選択肢以外にも、往診という選択肢があることを、頭の片隅に置いておいていただければ幸いです。

 

今回お話する症例は、急に立てなくなってしまった大型犬の蛍ちゃんです。

 

2023年5月28日の初診でエコー検査にて肝臓がんを認め、2023年6月25日にご家族様のもとで眠りにつきました。

 

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【初診(2023年5月28日)】

蛍ちゃんは2010年2月に、まだ3ヶ月齢の頃に保護され、家族として迎えられました。

異食癖のあるやんちゃな女の子で、靴下やビニールを食べてしまったこともありましたが、いつもちゃんと便で出てきたらしいです^^

 

5月26日からはあまり立ちたくない様子でしたが、5月27日になると明らかに状態が悪そうで食欲は無くなり(食欲廃絶)、5回ほど吐き出し(頻回嘔吐)、終始うつ伏せになろうとしていたとのことでした。

 

ただ、お散歩にはいくことはでき、いつも通り40分くらいお散歩したので、少し様子を見てあげたとの事でした。

 

しかし夜になると急激に立てなくなってしまったため(起立困難)、翌朝の5月28日に近医へ通院させようと思っていたのですが、大型犬ということもあり動かすことができないため、往診にて訪問診療をご希望されました。

 

お伺いすると、自力での飲水はできているものの、いつもよりも飲む水の量が少ないとのことでした。

 

ただ、飲水後に排便があり、排便すると、少し元気が出てきたようだとのこ事でした。

 

排尿量は、以前からとても多かったとのことでした。

 

血液検査と超音波検査を実施し、肝臓と脾臓に腫瘍があることを認めました。

 

当院の在宅医療における緩和ケア及び終末期ケアでは、初診時に血液検査と超音波検査のスクリーニングを実施しています。

 

また、何度も検査を重ねることでペットの体調を悪化させることを回避するため、1回の検査で幅広く十分な範囲を検査で見させていただいています。

 

今後立ち上がれなくなることを想定し、その場合には介護が必須になると考えられるため、今のうちから汚れを落としやすくしてあげることを考えて、少し安定してきたら予防的に毛刈りすることを検討していくこととなりました。

 

この日から3日間連続での処置をして、安定してきたら内服薬が苦手ではないという条件のもと、大型犬であれば内服薬に切り替えられる可能性は十分高いと考えるとお伝えさせていただきました。

 

次回は再診2日から最後の日までを書かせていただきます。

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往診専門獣医師として診療を開始してから、たくさんの症例と、その横で献身的に看病にあたっているご家族様に出会い、見送ってきました。

 

その中には、壮絶な最後を遂げた犬猫もいれば、本当に静かに、ろうそくの火が消えるように旅立っていった犬猫もいました。

 

傾向としては、若齢の犬猫よりも高齢の犬猫の方が、終末期に見られる症状が大きくない印象を受けています。

 

年齢がわかっているのであれば、高齢だからと、ある程度年齢的なところで終末期を受け入れるご家族様が多いですが、出会ったときにすでに成猫であるというご家族様が多くいます。

 

「一体この子は何歳なんだろう。」

 

かかる獣医師ごとで言っていることが違うということは本当によくあることで、結局ところ、1歳未満だろうな、いやかなりの高齢だ、以外はよくわかりません。

 

今回お話の続きを書かせていただく猫のタマちゃんも、実は年齢がわかりません。

 

ただ、最後を過ごす場所をここと決めてご家族様に出会い、生涯を全うされました。

 

猫の鼻腔内リンパ腫の在宅終末期ケアの後半です。

 

2022年10月27日に出逢い、出会って間もない2023年4月22日に左鼻腔内リンパ腫と診断され、抗がん剤を実施。

しかし、体力的にも精神的にも負担が大きかったため断念し、往診での在宅終末期ケアに変更。

毎日の看病の末、2023年7月15日、お母さんの腕の中で眠るように、静かに旅立ちました。

 

タマちゃん③.png

 

【在宅終末期ケア4日目(6月9日)】

初診後の初めての診察で、嬉しいことに、ご飯を食べてくれたとのご報告を受けました。

 

おそらく苦かくて飲ませられなかったステロイドが、皮下点滴の中に混ぜる形で投与できたため、苦さを耐え抜く必要なく効果を発揮してくれたのだと考えられました。

 

ステロイドというと、とても怖い印象が先行しがちですが、使い方や使うタイミングなど、獣医師の指導のもと的確に使用することで、ペットの終末期ケアにおいては強い味方になってくれることが多いです。

 

ステロイド以外の医薬品においても、もし不安がある場合には、必ず処方してくれた獣医師に相談するようにしましょう。

 

なお、鼻腔内リンパ腫のため匂いがわかりづらいことを考慮し、お母さんが「くさや」をトッピングしたとのこと、ガツガツ食べ出したということもあり、医薬品が全てではないかもしれませんが。^^

 

また、状態が下がった日以来の排便も認めたとのことでした。

 

食べてくれたことで腸が刺激されたのだと思われます。

 

なお、その後少し下痢気味になってしまったので、頓服で準備しておいた下痢止めを点滴に混ぜて使用できたとのことでした。

 

 

【在宅終末期ケア16日目(6月21日)】

6月19日から少し食欲が下がり、鼻水も出てきたとのことでした。

右の腋窩リンパ節の腫脹に伴い、右前肢の浮腫みと破行も始まりました。

浮腫みに対しては、マッサージで流すことで対策を打ち、おそらく腫瘍からくる病状の進行であると判断し、この日から薬を少し強くしました。

 

 

【在宅終末期ケア20日目(6月25日)】

前回の薬用量調整によって、食欲が回復したとのことでした。

 

ただ、ご飯とトイレ以外の時間は、ベッドルームに引きこもってしまうとのことでした。

 

皮下点滴が吸収できていないような雰囲気がありましたが、問診と触診によってちゃんと吸収されていることがわかり、1回の輸液量は変更せずに様子見としました。

 

輸液もちゃんと吸収、代謝でき、ご飯も食べ、トイレもできる。

 

タマちゃんらしく、余生をゆっくり過ごせているようでとても嬉しかったです。

 

 

【在宅終末期ケア26日目(7月1日)】

ふらつきが強くなり、食欲も低下してきました。

むくみが強くなり、この日から輸液量の減量、そして利尿剤の使用を開始しました。

 

いろんな種類の利尿剤がありますが、今回使用した利尿剤はカリウムの排泄を促してしまいます。

 

そのため、ご飯が食べられていない今、使用するべきか悩みましたが、前肢の浮腫みが重度であり、後肢の浮腫みも認めたことから使用しました。

 

少しでも浮腫みが改善され、無駄に貯留してしまった水分を体外排泄させられれば、また体が楽になって元気さを少しでも取り戻してくれるかもしれないと、みんなで祈っていました。

 

 

【在宅終末期ケア29日目(7月4日)】

朝くしゃみしたら口から大量に出血があり、訪問させていただきました。

 

取り乱していそうなお母さんを想像しながらご自宅に到着すると、ケロッとしたタマちゃんがそこにいて、連絡の後に出血は止まったとのことでした。

 

念の為、糖尿病が発症していないかを確認し、問題がなかったため、処方内容の変更なしで様子見としました。

 

また、呼吸状態が少し下がっていることもあり、酸素発生装置の手配を進めました。

 

ペットの在宅終末期ケアでは、酸素発生装置や酸素ボンベは、必ずと言っていいほどに登場してくる、とても頼りになる存在です^^

 

酸素発生装置が設置されることで、もし今後呼吸状態が悪化した時には、酸素を嗅がせていただくか、酸素空間を作ってそこに止まらせて呼吸安定を図るかなどの選択肢が生まれます。

 

呼吸状態に不安を感じる疾患を抱えている犬猫と暮らしているご家族様は、早めに酸素発生装置について、かかりつけ動物病院に相談しておくことをお勧めします。

 

 

【在宅終末期ケア34日目(7月9日)】

もうお水しか飲めておらず、ただ先代の猫ちゃんが最後に飲んでくれた「昆布水」を準備したところ、ガツガツと飲んでくれたとのことでした。

 

先代猫ちゃんがお母さんに残してくれた経験からの発想でしたが、こんなにも気に入ってくれるのなら、今後の終末期ケアの現場で、病状に応じて推奨しようと思います^^

 

お水を飲めなくなってきた、または飲水量が明らかに減ったことを確認した場合に、利尿剤を半量にしていただくこと、排尿を認めなくなった段階で利尿剤を中止する予定であることをお伝えし、この日の診察を終了としました。

 

 

【在宅終末期ケア40日目(7月15日)】

徐々に立てられなくなり、トイレまでも行けなくなってしまいましたが、それでも自力でなんとか立ち上がり、トイレまで行こうとするのが猫ちゃんです。

 

タマちゃんも同じで、頑張って頑張って一歩二歩、間に合わずにその場で、という日を迎えていました。

 

最後の排尿を認めたのが7月14日であり、かなりぐったりしている様子もあったことから、ご連絡をいただきました。

 

状況をお伺いし、利尿剤は中止としました。

 

おそらく本日が山であることをお伝えし、もし夜になってもまだ意識があるようであれば、皮下点滴を少量で投与するようお伝えさせていただきました。

 

お電話の後少しして、タマちゃんは眠りにつきました。

 

その瞬間は、お母さんの腕の中であり、おろしてあげた時におしっこが流れ出てきたことに違和感を感じて呼吸状態を確認したところ、呼吸が止まっていたとのことでした。

 

お母さんのお仕事の都合もちゃんと把握していたのか、忙しくなる前にちゃんとお別れの時間を取ってもらえるように、この日を選んだようでした。

 

本当によく頑張りました。

 

タマちゃんのご冥福を心からお祈り申し上げます。

 

わんにゃん保健室

スタッフ一同

 

【まとめ】

ペットの終末期における在宅医療切り替えは、ペットだけでなく、ご家族様にとっても、通院のストレスを軽減できること以上に、最後に残された時間を家族だけでゆっくり過ごしていくための、とても有意義な選択になると考えています。

 

このステージの犬猫にとって、高頻度での通院や待合室での他ペットとの遭遇など、健康で元気な頃であれば何気なかったことが、かなりのストレスとなってしまうことがあります。

 

そして、在宅医療に変更する大きなメリットは他にもあり、その一つが生活環境に対するアドバイスを的確に行えることがあります。

 

ペットの終末期における生活環境の整備は、医療面や栄養面と同じくらい大切になってきます。

 

トイレの位置、高さや広さ、寝床からトイレまでの動線について。

 

床はどんな素材にすべきで、どのくらいの長さ、幅で対策を打つべきなのか。

 

好きだったソファーの上は、本当にもう登らせられないのか。

 

キャットタワーはどうしたらいいのか。

 

ご飯皿の高さやご飯あげ方、種類など、栄養に対してどう向き合えばいいのか。

 

何をとっても、全てがその子その子の性格や体格、抱えている症状によって異なってきます。

 

終末期を迎えるペットと暮らしているご家族様へ

犬猫がいつ通院できないくらいまで体調を崩してしまうのかは、誰にもわかりません。

 

ただ、健康状態を把握しているかかりつけの獣医師であれば、ある程度の目安を立ててくれると思います。

 

もしそうなった場合に、往診で診てもらえるのか、または紹介できる往診専門動物病院はあるのかを、早い段階で聞いておきましょう。

 

何事においても、転ばぬ先の杖です。

 

準備と対策を講じておけば、突然くるペットの終末期にも、心乱れる中、ちゃんと歩みを止めずに、初動に移れると信じています。

 

東京、埼玉、千葉、神奈川であれば、往診専門動物病院わんにゃん保健室がご家族様のお力になれます。終末期の前段階、10歳を過ぎてきたら、そもそも通院が苦手な犬猫であれば、突然訪れる終末期の前に、一度往診について検討しておきましょう。

 

※タマちゃんの初診までの経緯はこちら

 

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猫の癌(がん)と言えば「リンパ腫」が最も知られているかと思います。

 

リンパ腫と言っても、発生部位や悪性度など、同じようでも全く違うもののように、犬猫の余生に対し影響してきます。

 

今回ご紹介するのは、東京葛飾区にお住まいのタマちゃんです。

 

2022年10月27日に出逢い、ご自宅のペット許可申請を完了し、正式に迎えたのは12月2日でした。

2023年4月22日にCT検査にて左鼻腔内リンパ腫と診断され、抗がん剤を実施しましたが、体力的にも精神的にも負担が大きかったため断念し、往診での在宅終末期ケアに変更しました。

毎日の看病の末、2023年7月15日、お母さんの腕の中で眠るように、静かに旅立ちました。

 

タマちゃん③.png

 

【初診(2023年6月9日)】

最初に違和感に気づいたのは、2023年4月初旬のことでした。

 

鼻血(鼻出血)が出ていたので、家の近くにある動物病院に通院してみたところ、口内炎があるので、おそらくは口内炎が原因で鼻血が出たのだろうとされたとのことでした。

 

症状が改善しないこともあり、4月下旬にCT検査を実施したところ、左鼻腔内リンパ腫と診断されました。

 

ただ、食欲は旺盛だったため、ステロイドの量もどんどん漸減できていたのですが、5月31日から一気に食欲がなくなり、この頃は高頻度で通院させていたですが、もう体力的にも厳しいと判断し、在宅医療での終末期ケア(ターミナルケア)に切り替えました。

 

ご飯の匂いを嗅ぐけど食べないというような感じで、強制給餌をするべきなのかの相談も含めて、往診でご相談させていただきました。

 

また、同日に終末期ケアに入るための検査を実施しました。

 

酸素化しながらの血液検査と超音波検査を実施し、全身状態を把握していきます。

 

かなり嫌がることを想定していたのですが、タマちゃんは理解しているようで、かなり強力的に検査に臨んでくれました。

 

動物病院に連れて行くと、診察台の上では借りてきた猫のように固まってしまうタイプの猫ちゃんでも、実際に家の中では全く異なった性質を見せます。

 

診察室では怖くて取り乱してしまう猫ちゃんでも、在宅環境なら比較的落ち着いて受け入れてくれたり、その逆も然りです。

 

当院では、異常興奮に伴う呼吸悪化を防ぐ意味からも、酸素ボンベを常に持ち込み、緊急時の備えはもちろんのこと、検査時などにも呼吸に注意しながら、看護師人数を揃えてお伺いさせていただいております。

 

タマちゃんのケースでは、すでに自宅にてお母さんによる皮下点滴を実施できていることもあり、投薬経路は確保されているため、注射薬内容を調整することで点滴準備は整いました。

 

投薬のための点滴なのか、少しでも水分補正を狙ったものなのか、この量の輸液を一回に入れても代謝できる状態なのか、今まで合わなかった医薬品は、どれがしみるのか、などを説明した上で、プラン決定をしていきます。

 

強制給餌に関しては、やってあげたい気持ちもありますが、ただ頑張れば頑張るほど、きっとタマちゃんは怖がり、心の距離ができてしまうかもしれないことをお伝えさせていただきました。

 

ただ、その上で実施をご希望される場合や、やり方だけを知っておきたいといった場合には、強制給餌トレーニングを一緒にさせてただき、使用するフードの種類や1回量、ご飯の濃度や流し込む位置、速さ、そしてペットの押さえ方や顔のキープの仕方など、細かくお伝えさせていただきます。

 

この日は、まず治療経過を追ってみて、医薬品では改善できないとした場合に、また考えましょうということとしました。

 

検査、処置、暫定的なプランを決定し、終了としました。

 

タマちゃん①.png

 

【初診までのまとめ】

本日は、猫のタマちゃんとの出会いから、初診での深いヒアリング、暫定的な方針決定までのお話を書かせていただきました。

 

通院できる犬猫だとしても、終末期を迎えると移動することがとても辛くなってきます。

 

無理に通院させるのではなく、もう余生を見据えた在宅医療に切り替えたいと感じましたら、お早めにかかりつけの動物病院にご相談してください。

 

動物病院によっては、定期的に時間を設けて、しっかりと往診にて訪問診療を組み立ててくれる獣医師もいるかと思います。

 

往診はその場その場での診察であるのに対し、訪問診療は組まれたプランに沿って行う在宅医療です。

 

完全に訪問診療とはいきませんが、多少の臨機応変さを兼ね揃えた訪問診療を提供してくれる獣医師と、1家族でも多くの方が出会えることを祈っています。

 

東京、埼玉、千葉、神奈川であれば、往診専門動物病院わんにゃん保健室がご家族様のお力になれます。

 

当院の往診をご希望のご家族様は、まずは在宅医療切り替えが可能かどうか、当院までお問い合わせください。

 

次回は、タマちゃんの経過から旅立ちまでの在宅終末期ケアです。

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ペットの終末期ケアは、ペットの病気だけを考えていけばいいわけではなく、その横で必死に看病しているご家族様の心の変化にも気づかなければいけません。

 

毎日が不安との戦いであり、体力的も精神的も摩耗していることに気づき、今目の前で病気と戦っているペットの状態について、どんな言葉を使って、どんなトーンで、早さで伝えるべきなのか。

 

そんなことを考えながら、日々の診療と向き合っています。

 

治療の結果「回復が見込める」症例であれば、今は辛いけど一途の光り輝く可能性を見て歩き出せると思います。

 

では、「回復が見込めない」症例、慢性疾患をずっと検査と薬でコントロールし続けている症例や病末期の場合は?

 

その光がないのに、どうやって病気と向き合っていけばいいのだろうか。

 

もしその光が安らかな旅立ちであれば、それまでの時間をいかに穏やかに過ごさせてあげられるかを考え、私たちが一緒に同じゴールに向かって歩いていきます。

 

診療で出会えるご家族様は、物理的に東京近郊となっているため、きっと今終末期ケアで困っているご家族様のほんの一部分しか、直接的なサポートはできません。

 

そのため、SNSを用いて広く情報を発信しますので、是非参考にしてみてください。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室の終末期ケアは、医療面だけでなく環境面にもアシストすることで、ペットとご家族様が安心して最後の時間を家で過ごせるように、そしてその最後の瞬間がご家族様のもとであることを目指しています。

 

今回ご紹介する症例、コーギーの風太くんは、肝臓がんの末期で当院を2023年5月4日に受診し、2023年7月9日の夜中、ご家族様が寝静まったときを見て、静かに眠りました。

 

初診の様子や、再診の様子などは、前回、前々回のブログで書かせていただきましたので、文書の最後にリンクを貼っておきますね^^

 

【在宅終末期ケア52日目(6月25日)】

もうほとんど立ち上がれなくなり、食欲も無くなってきました。

 

でも、ただ寝かせているだけでなく、大好きな抱っこをしてあげると笑顔になり、少しするとリンゴを1口、ドライフードを2粒食べてくれたとのことでした^^

 

飲水量も体力的に厳しいことから低下したこともあり、尿量も減ってきました。

 

しかし、まだまだちゃんと排尿も排便も出来ていました。

 

【在宅終末期ケア55日目(6月28日)】

この3日間で体調は著しく低下してきており、酸素マスクがないと呼吸するのが辛そうな様子でした。

 

それでも、りんご、ささみ、白菜、そしてヨーグルトを少量ずつ食べてくれたとのことでした。

 

酸素マスクありきですが、できる限り抱っこしたり、外を見せてあげたりと、終末期だからこそ、してあげられることを最大限やってあげたいと考えています。

 

お母さんとお父さんが力を合わせて、抱っこして外を見せてあげられたとのことでした。

 

鈴木風太⑤.png

 

【在宅終末期ケア59日目(7月2日)】

食欲旺盛の風太くんは、なんとデビフの馬肉スープ煮缶、デビフの牛肉ミンチ缶、デビフの牛肉の角切り缶を、1日合計で2缶くらい食べてくれたとのことでした^^

 

最初は水分の多いリンゴ(ジョナゴールド)をあげて見て、缶詰を食べさせて、食べたらヨーグルトをあげて、最後にお水をあげているとのことでした。

 

お水からあげると先にお腹いっぱいになってご飯を食べないことを考えると、この順番はおすすめですね!

 

呼吸が荒い時もあれば、安定している時もあり、寝たなと思うと、意識が戻ってこないくらいの深い眠りのような時もあったりと、常に細心の観察をされていました。

 

意識レベルの低下には、鼻先に息を吹きかけたり、上下まぶたの内側と外側をツンツンしたりして、反応を確かめます。

もし反応がなければ、その時はおそらく嚥下はできないと思われますので、経口のすべてはストップしましょう。

 

【在宅終末期ケア65日目(7月8日)】

昨夜から、もう1段階状態が下がったような感じがするとのことでした。

目も開け辛くなっていましたが、綺麗に洗浄してあげたら、クリクリのお目目がパチっと開いて、視線で追いかけてくれました^^

 

看病はほぼほぼ24時間付きっきりで行われ、風太くんの側にずっといてくれていました。

 

7月9日10:50、お母さん、お父さんがたまたま少し寝落ちしていた間を狙って、静かに眠りにつきました。

 

声もあげず、眠っている姿は、笑っているようにも思えたとのことでした。

 

向日葵の黄色がとっても似合う、コーギーの風太くんでした^^

 

ご冥福を心からお祈り申し上げます。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室

スタッフ一同

鈴木風太⑥.png

 

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