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ターミナルケアのお話の最近のブログ記事

猫ちゃんの乳腺腫瘍は、わんちゃんの乳腺腫瘍と比べて悪性率が高いです。

 

猫ちゃんの乳腺腫瘍が発見されたら、通院ができる猫ちゃんであればすぐに動物病院へ通院し、可能であれば2次医療施設へかかりつけ獣医師から紹介していただき、CT検査+手術、そして抗がん剤治療へシフトすることが多いように感じます。

 

ただ、通院できない猫ちゃんや、すでに末期の状態の猫ちゃんであれば、治療プランというよりは、看取りを見据えたターミナルケアを検討していきます。

 

ターミナルケアとは、緩和ケアの最終段階であり、どこまで何をしてあげたいのか、実際問題として何がしてあげられるのかなどを明確にして、最後の日まで一緒に歩んでいきます。

 

今回ご紹介するのは、乳腺腫瘍を抱えた12歳の猫ちゃんです。

 

乳腺腫瘍は、避妊手術をしていても発症することがある疾患です。

 

毎日のスキンシップで乳腺領域(脇から足の付け根まで)にしこりがあるのを感じた場合には、迅速に獣医師に相談するようにしましょう。

 

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症例:乳腺腫瘍末期で肺転移を発症した猫ちゃん(東京荒川区)

往診依頼のきっかけ

5年ほど前に、お胸のあたりにしこりがあるのを感じて、近所にある動物病院に通院させたところ、乳腺腫瘍の可能性があるとされて所属リンパ節までの切除を行ったとのことでした。

しかし、6ヶ月ほど前にまたしこりがあるのを感じ、通院させたところ、すでに肺転移していることがわかり、かかりつけの動物病院ではこれ以上治療方法はないとされ、また、家での看取りを見据えた在宅医療を勧められ、当院を紹介されたとのことでした。

 

 

往診当日の様子

紹介元の動物病院からいただいた血液検査結果では特別異常な値は認めませんでした。

X線検査データもCD-ROMでいただくことができ、肺転移も確認できました。

呼吸状態はやや促迫気味であり、元気食欲も通常時の半分くらいとのことでしたが、まだご家族様の中でどうしていくべきなのかを判断しかねている様子でした。

猫ちゃん自身はとても怖がりだと伺っていたのですが、不思議と私たちのことは受け入れてくれたのか、状況を把握している間、終始出てきてスリスリして鼻を鳴らしてくれていました。

 

愛犬、愛猫ともうすぐお別れが来るということを受け入れるには、時間が短すぎるのが常です。

治る病気であればまだしも、もしがん(腫瘍)と考えられた場合には、その事実を理解し、どうすればいいのかを決めていくには、時間もなければ、精神的な余裕もないかと思われます。

一人で悩まずに、必ず専門家に相談しましょう。

通院+入院で最後まで頑張っていくか、もっと体調が下がってから在宅医療に切り替えるか、もう早い段階で在宅医療に切り替えてあげるか、などの選択から、ご家族様の意思にもっとも近いものをご選択していただくのがいいと思われます。

 

猫ちゃんの性格

内服薬は苦手で、子猫のときからちゅ〜るやピルポケットみたいなのを使用しても絶対飲んでくれなかったとのこと。

選り好みがある性格で、ウェットフードを食べないで、ドライフードのみとのこと。

 

ドライフード派の投薬イヤイヤ猫ちゃんです。

よくあるパターンですが、もしどうしても投薬が難しい場合には、ターミナルケアでは毎日のことになるため、内服ではなく、全て注射薬として準備し、皮下点滴で投薬していきます。

皮下点滴のやり方は一緒にトレーニングさせていただきますので、この性格の猫ちゃんでは内服という選択肢はあってないようなものです。

泡を吹いて抵抗している猫ちゃんに対して毎日押さえて投薬するのは、猫ちゃんにとってだけでなく、ご家族様にとっても、あまりいい環境とは言えません。

このような場合には、最初から皮下点滴の練習を希望されるご家族様が多い印象です。

今回も、投薬が苦手であることから、皮下点滴という投薬方法を用いて、どこまでしてあげられるのかについて、お話を進めていきました。

 

 

各種検査

肺転移があるためどの部位の肺が拡張し辛い状況なのかを、右左の肺を合わせて24箇所ほど聴診することで把握していきます。

この段階においては、右肺と比較して左肺の方が拡張しづらいと判断できました。

血液検査は紹介元のデータが3日前のものだったため、そのまま参考資料とさせていただき、同日での採血はなしとしました。

超音波検査では腹水、胸水の貯留の有無を確認しましたが、両方とも貯留なしでしたので、呼吸を阻害する要因は肺腫瘍のみと考えられました。

 

870827.jpg

 

 

診療プラン

ここで最大のポイントとなるのは、ご家族様の考える最後の描き方についてです。

延命を望むのであれば救急飛び込める動物病院を調べておく必要がありますが、経験上、このステージのご家族様で救急に飛び込む方は現状ではいないようです。

元気だったペットが急におかしくなってしまった場合には、ほぼ全ご家族様が救急に飛び込み命が救われることを祈られると思いますが、ターミナルケアでは、命が繋がったとしてもまた苦しい日々が続くのであれば、もうこのまま旅立たせてあげたいと考えられる方が多いです。

とはいうものの、旅立つその日まではできる限り苦しくなく過ごさせてあげるために何ができるのかを一緒に考え、内服が難しいのであれば、全て注射薬で処方し、皮下点滴で投薬してあげれば、針刺も1度で済みます。

今回は、全て皮下点滴での投薬とし、医薬品の種類は6種類、頓服として発作止めを1種類処方していきました。

 

そして、頓服薬の準備です。

頓服薬には、目的や手段によって様々なものがありますが、今回は疼痛に対する頓服と、発作に対する頓服です。

今回の疼痛に対する頓服薬は、皮下点滴で使用している医薬品と同じものを準備しました。状態に応じて、追加投与するためです。

しかし、この痛み止めにも上限値があり、一定の量を超えると効果がそれ以上は見込めないものとなっています。

まずは中間くらいの処置用量で使用していただき、それでも痛みが強い場合には、用量の増加を目的として追加していただくようになっています。

 

次が発作止めです。

乳腺腫瘍の病態では、発作は起きづらいと考えています。

しかし、乳腺腫瘍が起因して、別の病気を発症してしまった際に、その病気がトリガーとなって発作がでる可能性もあります。

もし通院ができる猫ちゃんであれば、救急で通院させて発作止めしの処置をしてもらえますが、すでに在宅での見取りを視野に入れた場合には、無理に連れて行くのではなく、できる限り家の中で、かつご家族様だけで完結させることが望まれています。

そのため、使用するかどうかは未確定であったとしても、今後起こりうる可能性と対処できる方法があるのであれば、事前に準備しておくことが先決です。

 

最後に酸素環境の準備です。

酸素室の手配もご自宅でおこなっていきます。

酸素室と言っても、そんなに大掛かりなことではなく、家の中に簡易の酸素発生装置+酸素ボンベ、簡易酸素室(ビニール製)を準備するだけです。

費用はかかってしまうのですが、医薬品の準備と同じかそれ以上に求められるのが、この病気では酸素環境です。

実際のところ、悲しいのですが、最初のうち、もしくは重篤な呼吸悪化までは酸素室に基本的に入りません。

この猫ちゃんもまた、入ってくれませんでした。。。

とはいうものの、酸素室から酸素を垂れ流しにしておき、自由に出入りできるようにしてあげておくことが大切ですので、チャックは全部閉めないで置いておいてあげましょう。

ちなみに、準備から1ヶ月ほどで徐々に入るようになり、2ヶ月が経つと、苦しいその中に寝ていることが多くなりました。

酸素室だと呼吸が楽なので、熟睡できるようです。

 

現在も1日1回の皮下点滴注射薬、頓服薬の準備、酸素室設置の3つで、食欲は通常時の半分以下になってはいますが、マイペースに過ごせています。

 

現在は、2週間に1回の往診で、超音波検査にて胸水と腹水貯留のみをモニタリングしています。

 

もし貯留した場合には、難しいながらも医薬品を使用して胸水を散らしていくか、沈静をかけながら針を刺して胸水抜去していくかを検討中です。

 

このように、ターミナルケアにはその子の病気と病態、状態だけでなく、ご家族様が何をどこまでしてあげたいかなど、細かなことにおいても明確な方針を決めていかなければいけません。

 

時間はかかりますが、ゆっくりと時間をとることで、本当に実現したい最後の形を伺い、できる限りその意思に沿えるようなプランをご提案させていただきます。

 

もしご自宅での看取りを視野に入れた緩和ケアやターミナルケアをご希望されるご家族様は、愛犬、愛猫の状態が悪化する前に、お早めにご連絡ください。

 

通常であれば、ご連絡をいただいてから2〜3日で診療予約を組めるかと思われますので、できる限りお早めにご連絡ください。

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東京台東区の動物病院 わんにゃん保健室です。

「腎臓病の猫ちゃんの看取りを知る」の5回目の記事です。
ターミナルケアの時期に入った場合、飼い主の皆様が愛するペットの最期をどのように看取るのかを考えなければなりません。

わんにゃん保健室では、ペットの安心や安全は勿論ですが、飼い主様の心に寄り添う診療を行いたいと考えています。
つらい病状で、見ていることが苦しくなる場面もあるかもしれません。
懸命に生きるわんちゃん・ねこちゃんに、飼い主様ができることを一緒に考えていきましょう。

 

 

病気が進行し、いよいよお別れが視野に入ってきた頃になると、今までのようにご飯をいっぱい食べたり、お散歩に行けなくなったりするどころか、家の中を自由に動き回ることすらままならなくなり、トイレだって間に合わずに粗相をしてしまうようになります。

 

・大好きだったご飯も食べられないのに、このまま長らえても、本当にこの子にとって幸せなのか。

・治療しても良くならないのであれば...もう何もしないで自然のまま旅立たせてあげたい。

・いっそ安楽死だって考えたい...

・でも、お別れはしたくない。もっと一緒にいたい。寂しい...

 

人間は矛盾した感情を持ち合わせた、一番複雑な動物なんだと思います。

 

だからこそ、悩んで苦しんで当たり前です。

 

お別れを視野に入れたプランを、私たちはターミナルケアと呼んでいます。

 

このステージになると、家族としてよりももっと小さい単位である、家族一人一人の「あなたはどうしたいのか」について、直球で考えてもらうこととなります。

そして、最終的には、家族としての方針を固めていきます。

ターミナルケア①.png

 

 

食卓を囲んで和気藹々とはいかないと思いますが、大切な家族の最後についての方針決めなので、必ず1度立ち止まって、みんなで向き合う機会をとってもらうことを強くお勧めします。

 

マインドセットをするということ

元気な時ではなく、もう病気は治らないとされ、残りの時間が後わずかである時、看取りを見据えたターミナルケアに入ります。

 

最後の日まで緩やかに下がっていき、ロウソクの火が消えるように、最後は苦しむことなくスッと旅立ってほしいと願うものです。

 

しかし、見取りはそんなに甘くなく、たった1時間の間ですら状態が急激に状態が下がることもあり、そのまま下がっていくのかと思いきや、また持ち直し、また下がる、を繰り返します。

 

もうこのまま眠っていいんだよって何度も声をかけても、まだ生きたい意志があるならば、きっとまた意識を戻してくるかもしれません。

 

ご家族様は肉体的にも精神的にも疲弊していき、もしかすると正常な判断ができなくなっているかもしれません。

 

それが、「看取りを視野に入れたターミナルケア」を実施するということです。

 

Q.急変しますか?

A.急激に状態が下がることはあると思います。

 

 

Q.急変したどうしたらいいでしょうか?

 

この質問を決めるのが、1つ目の課題です。

 

延命という言葉について、皆さんはどうお考えでしょうか?

 

言葉の定義などはさておき、この言葉について、あなた自身の答えを出さなければいけません。

 

現在の獣医療では、人間の救急車のようなものは存在しないため、状態がグッと下がった時には、この子を抱いて救急対応をしている動物病院へ駆け込まなければいけません。

 

そして、もしそれが夜間であれば、夜間救急を対応している動物病院になることでしょう。

 

この場合、夜間救急で命を繋ぎ、昼間の動物病院で状態を安定させ、退院できるのを待つ、という流れです。

 

これは、延命でしょうか?

 

事故とか、急性の病気・病状であれば、この道筋を描くことで、また一緒に暮らせるようになるかもしれませんので、できることなら連れていきましょう。

 

ただ、ターミナルケアでは、「そのまま家で看取る」という選択肢が並行してあります。

 

もし命がつながっても、また状態が急激に下がります。

 

そしてまた入院させるのでしょうか?

 

ターミナルケアの時期に入ったのであれば、私個人の経験上、ほとんどのご家族様が延命を希望されません。

 

「もう十分頑張ったし、十分幸せな時間をくれました。だから、このまま家で看取ってあげたいです。」

 

つい先日、ターミナルケアを実施しているご家族様からの言葉です。

 

 

Q.延命しない場合、何もしないで見ているしかできないのでしょうか?

 

これが2つ目です。

 

家で看取ることを選択されたとしても、今後起こると想定される症状に対して使える頓服薬をご自宅に準備していきます。

 

どんな症状があった時に、それをどのように解釈し、どの薬を、どの量で、どの方法で投与するのか、その間隔はどのくらいは最低でも開けなければいけないのか、などを細かく指導させていただきます。

 

 

その症状については、きっと参考になる写真や動画などをインターネット上から見つけることができると思いますが、この時の心境であったり、またそれが自分の子だったりすると、冷静さを失うほどの恐怖を感じると思います。

 

しかし、その場にはきっとあなたしかいません。

 

いかに冷静に対処できるかが求められるため、全てをシンプルに、そしてご理解いただけるまで説明させていただきます。

 

 

Q.ご飯を食べなくなったらどうしたらいいですか?

 

必ずぶつかる3つ目の課題です。

 

何は最後の最後までご飯を食べてくれる食欲旺盛な子もいますが、ほとんどの子で段々とご飯が食べられなくなります。その姿をみて、とても辛い気持ちになると思います。

 

この段階での食事の摂らせ方として、強制給餌や鼻カテーテル設置という方法もありますが、もう無理に食べさせない、という選択肢もあります。

 

強制給餌をすると、間違いなく嫌われます。長年築き上げてきた関係性が、一気に崩れるような気がして、少なくない数の飼い主様が、途中で断念しています。

 

ただ、食べなければ栄養価が下がってくることは事実なため、するべきなのか、食べないのであれば無理にあげる必要はないと判断するかは、ご家族様次第です。

 

ご家族様の意思決定に沿ったプランをご説明させていただきます。

 

 

Q.薬はいつまで飲ませるのでしょうか?

 

これが最後、4つ目です。

 

薬に関しては、可能な限り最後まで飲ませていただきたいと考えています。

 

最後とは、嚥下機能がなくなるとき、を表しています。

 

ただ、こちらもご家族様の意向を汲ませていただくため、まずは家族としての意見を伺わせていただきます。

 

 

・救急か看取りかの選択

・状態低下時の対応

・食欲廃絶時の対応

・投薬中止の判断

 

 

これら全部に対して、家族一人一人に考えていただき、そして家族として方針を決定していただきます。

 

これが、犬猫の在宅ターミナルケアにおけるマインドセットです。

 

もちろんこれで全てではないのですが、大きなポイントであるこの4点を、ターミナルケアだけでなく、緊急事態に備えて、是非日常生活においても話し合っておくことをお勧めします。

 

ターミナルケア②.png

 

 

今回、こちらのご家族様は、以下のような選択となりました。

・状態急変時は、動かしてさらに苦しい思いをさせたくないので、このまま家で看取る。

・強直性発作に対してのみ発作止めを使用する。

・嚥下ができるうちは内服薬のシロップを継続させる。

・ご飯を食べないのであれば、それは本人の選択として捉え、強制給餌はしない。

・皮下点滴による投薬は、最後まで行う。

 

 

以上、マインドセットでした。

 

次は、「看取りからお別れ、そしてご葬儀」です。

 

​猫の腎臓病についての解説ページ
猫の腎不全

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みなさんは、『貧血』について、ご存じでしょうか?

 

貧血とは、赤血球に含まれるヘモグロビンという物質が少なくなった状態です。

血液検査をしたときに、ヘマトクリット値などを用いて正常値より低いので貧血ですね、など言われたことがあるかもしれません。

 

貧血っていうと、鉄剤を飲ませるとか、ビタミンを摂ろうなどいろんな話が出てきますが、今回は再生不良性貧血っていう重度な病気で、白血球、赤血球、血小板など全てが減少してしまう疾患を抱えた、ゴールデンレトリバーの元気くんのお話です。

 

2022年8月6日現在、元気くんは内服薬を苦にせず飲んでくれるため、週1回の往診と1日2回の内服薬で頑張っています。

 

8月12日がお誕生日で12歳を迎えます。元気くんと、そしてご家族様が、この日を迎えられることを祈っています。

 

元気くん②.jpg

 

【往診依頼のきっかけ】

病気が発覚したのは、お散歩中、急に立ち上がれなくなってしまったことがきっかけでした。

 

それまでも、定期的に健康診断を受けていたのですが、この病気に関連したことは一切言われていなかったようです。

 

ただ、この病気に関しては、健康診断を定期的に行なっていたとしても見逃されやすく、気づいた頃には... ということも多い病気であり、また診断するにも骨髄検査を行うため、麻酔をかけなければいけません。

 

麻酔をかけることが悪いわけではないですが、診断したら、治療が始まり、その治療の全てを受け入れなければいけないという覚悟は、なかなか過酷です。

 

初めて迎えた子であれば、どこまでも追いかけなきゃという気持ちが高いかもしれませんが、先代を看取ったことのあるご家族様であれば、『攻める苦しさ』を知っています。

知っているからこそ、もう無理をさせたくないという気持ちで、攻めない選択を選ぶことも多いです。

 

元気くんは30kg弱のゴールデンレトリバーの男の子です。

元気なうちは難なく通院できますが、具合が悪くなり、自力で長時間歩けなくなったら、頻度の高い通院は、ペットだけでなくご家族様にとっても大きな負担になってきます。

 

本来は週1回通院されていたのですが、もう厳しいと判断されて、往診専門である当院までご連絡をいただきました。

 

【診察の様子】

お伺いすると、尻尾を振って私たちを迎えてくれる元気くんの姿があり、『あれ?元気そう?』って思うほどでした。

 

事前に病気のお話を電話でお伺いしていたので、興奮して呼吸レベルが下がらないかどうかを見ながら、元気くんへの挨拶を済ませ、お母さんから詳しいお話を伺いました。

 

この時、すでにヘマトクリット値も10%ギリギリだったこともあり、挨拶してくれた後は、テーブルの横で横になり、重度の貧血ながらもリラックスできているように見えました。

 

普段は屋内で歩いた後、バギーに乗せて散歩の場所まで行き、降ろしてあげると15分程度歩いているとのことでした。

この状態でもトイレは外でなければしないため、今も頑張って外に出ています。徐々に歩ける距離が短くなったものの、お外が好きなタイプの子たちは、最後の最後まで、できれば連れ出してあげてほしいと思っています。

 

奇跡的に食欲も普段通りにあり、ご飯の中に薬を入れてもしっかりと食べてくれるとのことでした。

薬は体重に準じて投与量が増えてしまうため、大型犬だとかなりの量になりますが、元気くんはそれをものともせずに、しっかりと食べてくれているようです。

 

採血も超音波検査(エコー検査)難なく受け入れてくれて、診察が終わると体力を振り絞って玄関まで見送りに来てくれました。

 

酸素環境も家の中に整えることができ、呼吸が苦しくなった時のみ使用していただきます。

酸素環境の構築には、①酸素発生装置の設置だけでなく、②酸素ボンベの設置、そして③酸素ハウスの設置の3つを考えなければいけません。またいつか、在宅における酸素環境については書かせていただきます。

 

そしてなんと、まだまだ歩けるんだよ!って姿を見せたいのか、お外まで出てきてくれて、トイレしている姿も見せてくれました。

 

本当に心の優しい、ゴールデンレトリバーの元気くんでした。

 

【今後の診療プラン】

診療プランは週1回程度の訪問で、血液検査とエコー検査を実施していきます。

内服薬を基本としますが、食欲が下がってしまい内服が難しい時期がきたら、皮下点滴による投薬に切り替えています。

 

緩和ケアの後半以降〜ターミナルケアでは、ほとんどのわんちゃん、猫ちゃんが内服薬を飲むことができません。

食欲もなく、ご飯も一切受け付けない時期がやってきたら、早々にプラン変更し、在宅でも実施可能な処置・処方プランをご提案させていただきます。

 

もし、今のかかりつけ動物病院にて、飲めないのに内服を出され続けている、ということがございましたら、ちゃんと話し合うことをお勧めします。

飲めない間にどんどん事態は悪化し、致命的な結果になってしまう前に、対策を相談し合うことが大切です。

ご家族様から言われないと気付けないため、むしろ早く相談してほしいと獣医師も思ってい流はずですので、心置きなく相談しましょう^^

 

また来週、お会いできることを楽しみにしています。

 

元気くん③.jpg

 

 

2022年08月13日(土) 追記

 

ゴールデンレトリバーの元気くん、昨日12歳を迎えることができました^^

 

本日往診でお伺いすると、インターフォンの音で玄関まで迎えにきてくれました。

 

今日もご飯をいっぱい食べてくれて、薬も全部そのまま食べてくれています。

 

本日は血液検査と増血剤の注射、超音波検査を行い、終始機嫌良く受け入れてくれました。

 

12歳のお誕生日にもらったおもちゃを持ってきて、音を鳴らして遊ぶ姿を見せてくれました。

 

次回は来週です。

 

写真は12歳のお誕生日の日の写真です^^

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東京の往診専門、わんにゃん保健室です。
ペットの往診を専門としている動物病院となっており、病院嫌いのわんちゃん・ねこちゃんのご自宅へお伺いし医療を提供しています。

「腎臓病の猫ちゃんの看取りを知る」の4回目の記事となります。
当院では、腎臓病(腎不全)を抱えた猫ちゃんに対して、適切な治療を行います。

 

 

本日で連続お伺い3日目で、結果もある程度揃ってきたこともあり、今後の方針決定に入ります。

 

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初診日、昨日と処置を入れたこともあり、状態としては落ち着いているものの、やはり食欲は一口舐めた程度だったとのことでした。

シロップの薬は飲めたとのことでしたので、本日は皮下点滴指導を行い、明日からはお母さんたちだけで実施してもらいます。よく頑張りましたね^^

 

全部の結果が揃った段階で、病態を考慮すると痙攣発作を起こす可能性があることをお伝えしました。

 

腎臓病が進行すると、胃潰瘍腸潰瘍口内炎だったり高血圧に伴う網膜剥離だったりと考えることはたくさんあるのですが、その一つが尿毒症による痙攣発作です。

 

痙攣発作は、急に見られる症状なのですが、正直最初は気が動転するくらい焦ることと思われます。

猫ちゃんに腎臓病はつきものですので、痙攣発作の動画をYoutubeなどで事前に確認し、どのようなものなのかを知っておくことが重要です。

 

痙攣発作が起きた時の考え方、生活環境として取ることができる行動指針、実際の対処法などをお伝えさせていただます。

 

そして、少しでも、残された家時間を快適に過ごさせてあげるために、猫ちゃんの生活環境の改善策(床の工夫、トイレの高さ、ご飯皿など)など、アドバイスできることがあればできる限りさせていただきます。

 

今回のケースでは、内服薬を1種類のみシロップで1日1回投与、皮下点滴は状態に合わせた医薬品を混ぜ1日1回実施、1週間に1回の検査、発作止めは5回分お渡しし、使用したらご連絡をもらうこととしました。

 

最後に、とても重要なことです。

 

医療プランや生活環境の見直しなどの側面をお話ししてきましたが、実は同じくらい大切なことに、マインドセット(覚悟を決めること)があります。

次は、「延命と看取りを考える」「ターミナルケアを知る」の2つの視点から書かせていただきます。

 

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前回は腎臓病の猫ちゃんの「問い合わせから在宅医療の初診内容」を書かせていただきました。

初診当日は、今までの経緯をお伺いするのにおおよそ30分〜2時間程度と、通常の診療と比べて長く十分な時間をとって、今までの経緯をゆっくりと教えてください。

 

翌日の診療となる今日は、昨日採取した検体から暫定的に得られたデータをもとに診療内容を組んでいきます。

 

もちろん、ここでも問診は必須です。

 

問診猫.png

 

Q. 昨日から今日にかけて、元気さ(運動性)に変化はありましたか?

A. ふらつきが強くなってきたことが気になっていたのですが、昨日の点滴を打ってから2時間くらいしてゆっくり眠ってくれて、起きた時の足取りが、なんとなく軽くなっていたように感じました。

 

Q. 食欲はどうでしたか?

A. 昨日の夜、少しですが食べてくれました。もう食べれないと思っていたので涙が出るほど嬉しかったです。

 

Q. 排便・排尿はどうでしたか?

A. おしっこは変わらずよくしています。うんちは出ていません。

 

Q. 嘔吐はありましたか?

A. 吐き気止めを入れてもらったおかげで、久しぶりに丸1日吐いていません。

 

Q. 咳はありましたか?

A. なかったです。

 

最初の見立てと検査結果が一致していたというのもありますが、処置を入れるのが遅すぎない限り、最初の方は結構な確率で状態が上がってきてくれています。

 

この猫ちゃんも同様で、見立てから腎臓病が第一優先でしたので、処置内容が合致してとても嬉しかったです。

ここで、昨日行った検査結果の暫定的なものをご説明させていただきました。

 

高齢猫ちゃんの腎臓病といえば、往診では以下の項目をよく用います。

 

血液検査

・BUN(尿素窒素)

・CRE(クレアチニン)

・IP(リン)

・SDMA

・Na-K-Cl(電解質)

・血球計算(貧血の評価など)

 

腹部超音波検査

・腎臓の左右差、大きさ、血流など

 

この猫ちゃんの検査結果はBUN、CRE、IPが重度に高値であり、貧血も軽度に起こしていました。

 

電解質には、そこまでの大きな乱れはありませんでした。

 

尿検査ではタンパク尿が認められましたので、これらのことから、皮下点滴+内服薬の処方プランを立てていきます。

 

皮下点滴は今後ご自宅でお母さんたちにお願いすることも視野に入れ、ご自宅で実施可能かどうか伺ったところ、「やるしかないのでやります!」、と力強いお言葉をいただけました^^

 

家族だけでは心配だという場合であれば、慣れるまでの間をスケジュールを組んでお伺いさせていただくこともあれば、私たちの方で皮下点滴を実施していくというプランにすることもあります。

 

内服薬もシロップ状にして飲ませてあげるやり方を同日指導させてもらい、明日の診察までに明日分の内服シロップ飲ませに挑戦してもらい、できたかできなかったか、できなかったとしたら何が難しかったのか、などをお伺いする予定であることをお伝えさせていただきました。

 

さて、ここまでで初診日、その翌日、その翌々日と3日間のスケジュールを組んでいきます。

 

今回のケースでは、初日は詳しい問診と詳しい身体検査を主体とした処置内容の決定と検査を行い、翌日は検査結果に沿った暫定的な治療プランを組んでいきました。

 

最終的に処方プランや検査プランを決めていくのは翌日の3日目が多いですが、おおよそのイメージをこの段階でお伝えしています。

 

当院では、腎臓病の猫ちゃんでコントロールが聞いていないうちは週1回程度の検査を実施しています。安定してしまえば、3ヶ月に1回程度の訪問で、検診を行なっていきます。

 

明日、処方プランを最終的に決めていきますが、ここで重要なのは、「内服を飲ませることはできるのか」です。ちなみに、内服薬の上げ方はたくさんあります。

 

・例えば錠剤の場合

  • 錠剤のまま飲ませる
  • 細かく砕いて投薬用のカプセルに入れて飲ませる
  • 細かく砕いてウェットや投薬用のおやつなどで包んで飲ませる
  • 粉にしてウェットや投薬用のおやつなどで包んで飲ませる
  • 粉にして水などの液体を少量(飲ませられる液体量は1ショット0.5ml以内にするのがおすすめ)

薬剤形.png

きっと上記以外にもあるかと思いますが、とりあえず5パターンのご紹介でした^^

 

ちなみに、フィルムや糖衣でコーティングされている薬は、粉にしてシロップにすると、全体がとてつもなく苦くなることがあるので、そういった薬は①〜③がおすすめです。

 

明日の診察で、シロップを飲ませられたかどうかで処方プランが変わっていきますので、明日の診察に期待です^^

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今回ご紹介するのは、東京渋谷区にお住まいの16歳の日本猫の女の子、徐々に食べる量が減ってはきていたが、ここ1週間ほどご飯をほとんど食べられていない、という主訴でした。

 

②用.png

 

訪問してみると、脱水してそうな顔つきの猫ちゃんがカーペットの上で寝そべっており、いかにも気だるそうな雰囲気でした。

口をくちゃくちゃしており、気持ち悪んだろうな、または口が痛いのかな?という素振りを見せてくれました。

キャットタワーもありましたが、もう登れていないとのことでした。

ただ、高いところが好きなのか、よく下から眺めているとのことでした。

もともとは体重が6kgくらいあった大柄の猫ちゃんだったとのことでしたが、測定すると体重は3.2kgと、半分近くまで下がっていました。

 

初診では、こんなお話を伺いました。動物病院に行った時も、きっと同じようなことを質問されると思いますので、普段から答えられるようにトレーニングしておきましょう^^

 

Q. ご飯を食べる量が減ってきたのはいつくらいからでしょうか?

A. ここ半年くらい、徐々に下がってきていましたが、ドライフードからウェットフードに切り替えたら食べてくれていました。それが、今月に入って一気に食べる量が減ってきて、それでもチュールなら食べてくれていて、1日3本くらい食べてくれていました。しかし、ここ1週間くらいから全く食べてくれなくなってしまいました。

 

Q. 元気さ(運動性)はいかがでしょうか?キャットタワーにはいつくらいまで登っていましたか?

A. 年齢もあってか、ずっと寝っぱなしの猫なんです。朝から夜までカーペットの上で寝ていて、たまに起きてトイレに行き、また寝るといった感じです。ここ最近、寝ている時間が増えた気がします。キャットタワーは、もう1年ほど前ですね。上を眺めているので乗せたいが、落ちたら危ないと思って何もできていません。

 

Q. トイレ(排便状況/排尿状況)について教えてください。

A. 排便はだんだんと便秘傾向になったのか、もともと1日1回は出ていたものが、最近では3日に1回とかだったと思います。硬いコロッとしたものを1〜2個程度でした。食べなくなってからは、もう1週間ほど排便を見てないです。おしっこは回数としては変化はないですが、全体として量(尿量)が増えていました。

 

Q. お水は飲めていますか?

A. すごい飲みます。このお皿で(おそらく200ml程度入るもの)で、朝入れておくと夜にはほとんどなくなっていることが多いです。

 

Q. 吐き戻し(嘔吐)はいかがですか?

A. もともと吐き戻し(嘔吐)をしないタイプの猫だったんですが、言われてみると、やっぱり1年くらい前からたまに(1〜2日に1回程度)吐くようになって、1ヶ月前くらいからは1日1回くらいは吐いていたような気がします。今もそのくらいです。

 

Q 咳はありますか?

A. 咳はないですが、くしゃみはたまにしています。

 

上記のような質問を繰り返し、今までの経緯やどんな形を望んでいるのかなど、かなり幅広くお話を伺っていきます。

おおよそ30分〜2時間程度かけて、今まで溜まっていた心のうちを一つずつ、一緒に紐解いていきます。

 

今回は、上にある内容から推察するに、腎臓病をまずは第一優先で調べていくことを考えるべきと判断しました。

また、その治療の過程で皮下点滴が必要になる可能性があるため、心臓の評価も合わせて行うことしました。

また、1年ほど前までは食欲があったこと、キャットタワーも登れていたことが、もしかすると代謝の異常亢進があったことも考え、甲状腺機能検査も実施しました。

 

血液検査を含めた各種検査に関しての考え方は動物病院ごとで大きく差があります。

往診では、次回診察までの期間でどんなことが起こるかを推測し、それに対しても事前に対策を練らなければいけません。

そのため、在宅医療における緩和ケアやターミナルケアに入ったわんちゃん、猫ちゃんに対しては、何度も針刺をして細かく検査するよりも、初診で必要であろうと判断される項目を全て検査しています。負担を最小限に考えつつも、集められるデータというパーツ集め、それをもとに大きめのデータの地図を広げ、どんなことが起こりうるかをご説明させていただいた上で、その時の対策を一緒に練っていきます。

 

今回は、血液検査に合わせて、腹部超音波検査を実施することになりました。なお、実施中に尿を漏らしてくれたため、その尿を採取して尿検査も実施することができました。

 

まずは症状に合わせた注射薬を選定し、皮下点滴として投薬していきます。

 

今回は、当日、翌日、翌々日と診療プランを組み、結果が出たものから順次評価していき、その結果に沿った治療を実施していきます。

 

点滴は初めてだったようで、モゾモゾ動いていましたが、ここは獣医師と動物看護師がチームで伺っておりますので、安心して全量きちんと投与を完了し、本日は終了です。

 

次回は検査プランと処方プランのお話です^^

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腎臓病の猫ちゃんの看取りを知る①

猫ちゃんの腎臓病って、本当に多いんです。

経験的には、10歳以上になればほとんどの猫ちゃんで腎臓が悪くなっていて、以下のような症状を認めています。

 

・お水をよく飲むようになった。(多飲)

・尿量が増えた。(多尿)

・痩せてきた。(削痩)

・後肢がふらついてきた。(筋力低下)

 

そのほかにもたくさんありますが、まずはこんなところです。

 

猫ちゃんって、どうしても動物病院へ通院するのが苦手な性格の子が多く、きっかけは最初の避妊去勢のあたりかなと思っています。

 

これを機に、キャリーに入れて外出すると、キャリーに入れて持ち上げただけで、またはキャリーを見るだけで、発狂してしまったり、失禁・脱糞、泡を吹くなど、全力で嫌がるようになってきます。

 

図1.png

 

 

ご家族様も、そんなに嫌がるなら、「健康診断程度で通院させなくていいのではないか?」という感じで、通院をしないことを選択されるようになります。

 

少しくらいの体調不良も、私たちと同様で、大体数日経てば治ったりします。

 

そんな経験もあってか、かなり多くの猫ちゃんが、動物病院離れをしているのが、この世の中の現状です。

 

そんな猫ちゃんも高齢になり、数日程度でいつもは改善していた体調が治らないだけでなく、徐々に進行してるような気がしてきた段階で、覚悟を決めて通院に踏み出すはずです。

 

ここで問題なのは、そもそも通院ストレスでおかしくなってしまいそうな猫ちゃんに対して、「体調が悪いのにさらにストレスをかけてもいいのか?」ということです。

 

ご家族様の中には、それでも通院させることを選択できる方もいれば、いっそのことこのまま家で看取りを視野に入れて、ゆっくりと過ごさせてあげたいと考える方もいます。

 

動物病院へ通院させることができるのであれば、待たないですぐにでも連れて行ってあげてください。

若齢の頃と比べ、高齢、特に10歳を過ぎての体調不良は、放っておくと致命的な結果になるかも知れません。

 

そして、通院を断念し、家で看取りを視野に入れようとお考えのご家族様、一度「往診/獣医/動物病院/犬/猫」などで、ご自宅まで来てくれる往診専門動物病院を検索してみましょう。

 

東京都内であれば複数の往診専門獣医師がいますので比較的見つけやすいかと思いますが、他の地域では、往診専門動物病院の数自体がかなり少ないことが予想されるため、万が一の時に備えて、先に調べておくことをお勧めします。

 

これは猫ちゃんだけでなく、いよいよペットを連れて動物病院へ通院させることが難しい時期がくることを想定し、わんちゃんの飼い主さんも検索しておくことをお勧めします。

 

検索ワードのおすすめは、「往診/犬/東京」、「往診/猫/東京」など、目的/対象動物/地域で調べるのがいいかと思われます^^

 

携帯画面+猫.png

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室の往診は、自宅での緩和ケアと呼ばれる苦痛をできる限り軽減して余生を過ごさせてあげることを目的とした治療、看取りが迫ったことを想定したターミナルケアに特化しています。

 

・病気に合わせた在宅医療プラン作成

・急変時の考え方と対処方法

・家で看取るということに対する心構え

 

生活環境とその子自身の性格などを考慮し、家族みんなの意思決定のもと、その方針に沿った、できる限り苦痛のない時間を過ごさせてあげるプランを作成していきます。

 

・ご飯のあげ方や種類

・トイレの位置や高さ

・床の簡易的な加工方法

 

状況に応じ、臨機応変にご提案させていただき、ご家族様と一丸となって、在宅ケアから家での看取りまで、一歩ずつゆっくりと一緒に歩んで行きます。

 

まだできることをあるはずです。諦める前に、必ずご相談ください^^

 

今回は、腎臓病の猫ちゃんの初診相談、緩和ケア〜看取り(ターミナルケア)までのお話です。

 

・問い合わせから在宅医療の初診内容

・検査プランと処方プランの立て方

・今後の方針決定

・延命と看取りを考える

・緩和ケアとターミナルケアのご飯の考え方

・看取りからお別れ、ご葬儀まで

 

猫ちゃんだけでなくわんちゃんであっても、最後を意識することで、今ある幸せにもっと気付けるようになれればなと思います^^

 

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命を迎えるということは、見送るということです。

今回お話しさせていただくのは、わんにゃん保健室で在宅ターミナルケアを実施した、高齢犬で保護犬だったバウちゃんです。愛の溢れるご家族様に見守られながら、2021年10月23日、虹の向こうにお引越しされました。

高齢犬と暮らしているご家族様はもちろん、元気いっぱいのわんちゃん、猫ちゃんとくらいしている方、さらにはこれから命を迎え入れようとお考えのご家族様。

その子たちを全力で愛してあげてください。そして最後は、笑顔で送り出してあげましょう。

常に考えておいて欲しいこと:急変は常に起こりうる、ということ

1週間前までは普段と同じようにご飯を食べてくれて、一緒にお散歩にも行けていたのに、急に足腰に力が入らなくなったのか、お散歩はおろかご飯を食べることすら辛そうになってしまう。

高齢になったわんちゃん、猫ちゃんと暮らしているご家族様は、常にこの急な変化を予想していなければいけません。

この変化は、実は急に出たものではなく、徐々に進行していたものが、ある一定水準を超えたところでパツッと糸が切れかのように症状を出すのだと考えています。

おそらく1週間前もそれなりに痛く、気持ちが悪かったのかもしれないですし、それでも大好きなご飯やお散歩への精神が勝り、肉体を凌駕していたのかもしれません。

日々の変化をこまめにチェックし、些細な変化だとしても、実は些細な変化ではなく決定的な所見かもしれませんので、診察の際に担当獣医師に前回診察からの変化をお伝えしてください。

ポイントは、元気(運動性)、食欲(どのくらい食べたのか、普段の何割くらいなのか)、排便(便の状態、頻度など)、排尿(尿の色や臭い、頻度や量など)です。

大変だと思いますが、ご家族様しかできないことです。一緒に頑張っていきましょう!

ペット往診依頼までの経緯

もともと体が丈夫だったこともあり、健康診断程度でしか動物病院にかからないで13歳までこれたという中・大型犬のバウちゃん。

パピーの頃に保護されたバウちゃん、ご家族様の元に引き取られ、愛情をいっぱい注がれてすくすくと育ってきました。 お姉さんのお部屋が好きとのことで、リビングで生活し、寝るときはお姉さんのお部屋だったそうです。

かかりつけの動物病院にて、2019年頃に乳腺の病気を確認したのですが、このまま様子を見ていくこととなり、その後もずっと安定していたとのことでした。

それがここ数日で、乳腺の病気が急に大きくなってきてしまい、自壊して出血してしまったとのことでした。

昼夜鳴いて、お母さんたちを呼ぶとのことでした。

呼吸も苦しそうだったのですが、2日前までは食事ができていることから、このままゆっくり過ごさせてあげようと考えていたのですが、徐々に弱ってきたバウちゃんを前に、最後に何かしてあげられることはないかと思い、当院まで往診のご連絡をいただきました。

初診時の診療内容

初診では、今までの経緯を伺い、今考えられることと検査プラン、処置・処方プラン、そしてご家族様のご意向をしっかりとヒアリングさせていただき確認した上で、今後の診療プランを立てていきます。

わんにゃん保健室では、通常診療の初診は1時間~1時間半程度、緩和ケア・ターミナルケアの初診は1時間半~2時間程度の時間をかけて、今までの経緯、ペットの状態確認およびご家族様のご意向をしっかりとお伺いさせていただいた上で診療を行なっております。

通常の動物病院との大きな違いは、ゆっくりとお話しできるところです。バウちゃんの初診では、おおよそ2時間ほどお時間をいただきました。

1週間ほど前までは普通にご飯を食べ、散歩に出かけられていたが、急に歩けなくなり、ぐったりしてしまったとのことでした。

乳腺の病気(乳腺腫瘍疑い)のところから出血してしまい、お母さんのTシャツを着せて生活していたとのことでした。呼吸も苦しそうで、一番の問題は昼夜鳴いてしまうので、痛いのか苦しいのかってずっと考えてしまっていることです。

高齢犬の特徴で、「夜鳴き」がありますが、夜鳴き=認知症!と判断するのではなく、それは要求吠えである可能性も非常に高いと考えています。

実際に、処置を入れた後から夜鳴きが止まったことを考え、バウちゃんも何かを訴えていたのだと判断しました。

何を訴えていたのかは定かではありませんが、要求吠えが止まりぐっすり眠れていたことから、体が楽になったのは間違いないと考えています。

初診では、乳腺腫瘍の大きさと症状から乳腺腫瘍の全身転移を疑い、もうご自宅から移動させて精査するのは難しいことから、ご自宅でゆっくりと残りの時間を過ごさせてあげるためのターミナルケアの診療プランを組ませていただきました。

検査内容は、血液検査と超音波検査を酸素ボンベから純酸素を流しながら酸素化した状態を作り、呼吸に負荷の少ない環境を作って実施しました。

今ある異常所見を負担のない範囲で把握し、限定されたデータではありますが、そのデータの中から最良と考えられる処置・処方プランを構築していきます。

自壊した乳腺の保護の仕方を検討し、薬は注射薬を用いて皮下点滴と一緒に背中の中に流し込みました。

できるだけ快適に、かつご家族様に負担がかからないようなプランを構築していきます。

初診の翌日

翌日にお伺いすると、処置内容が功を奏したのか、昨日の診察後から鳴きがなくなり呼吸も落ち着いて、いびきかいて寝ていたとのことでした。ぐっすり眠れていたのはひさしぶりで、とても嬉しかったとのことでした。

それを聞いて、私たちも本当に嬉しかったです。

何気ない愛犬・愛猫の幸せそうな寝顔を見れることを、今は当たり前だと思っていますが、そうじゃない時期がやってくるということを、犬猫と生活されているご家族様方へ、この掛け合いからお伝えできればと思います。

食事に関しては、ドライもウェットフードも食べてくれなかったが、おやつはすごい食べてくれたとのことでした。

嘔吐や吐き気を示す所見をなかったとのことでした。

自力でお水を飲み、おしっこもしてくれたとのことでした。

ご家族様がいる間はいいのですが、やはり一人になると、乳腺のところをずっとなめてしまっていたとのことでした。

皮膚バリアが崩壊した状態にある部位は、犬猫からすれば気になってずっと舐めてしまうのは当たり前であり、おそらく野生の本能だと思います。

しかし、口腔内にはたくさんの雑菌がいるため、なめれば舐めるほど悪化してきます。

そのため、本来であれば物理的な障壁を作成し、舐められなくする必要があります。例えば、エリザベスカラーのようなものです。

回復期の犬猫であれば、間違いなくエリザベスカラーの設置や専用の洋服を着せるなどして、ある程度ペットグッズとして市場にある商品を使用することができるのですが、高齢犬・高齢猫において、自分の体を支えることすらままならない状態の子に対してどこまで耐えられるのかは、結構至難の技です。

経験上、ほぼ全てがご家族様によるDIYになっています。また、既製品で対応できそうなものがあれば都度ご紹介させていただきますが、結局DIYになっているというのが現状です。

今回は、自壊した乳腺に対して出血のコントロールとカバーをメインに考え、母乳パットと手ぬぐい、その上からお母さんの洋服を着せるというプランで進めていきました。

新しい洋服を着ると、なんとなく気分がよさそうなバウちゃんでした。

その後、呼吸の苦しさが少し増したことから、ご自宅に大型の酸素発生装置を設置しました。

呼吸状態が悪い子に対して、酸素供給ができることは、何より大切であると考えています。

少しでも楽に、残りの時間を過ごそうね!

その後の経過

その後は安定し、ご飯も少しではあるのですが食べてくれ、夜鳴きもなく初診の頃よりは快適に過ごせているとのことでした。ただ、10日間ほど便が出ていないことが気になっていました。

排便を促すことを目的に、シロップ剤を使用することになりました。

診察開始から一番いい顔を見せてくれていたバウちゃんでした。

この日も血液検査と超音波検査を実施し、ご自宅で使用してもらう皮下点滴内容をお渡しさせていただきました。

最初の頃と比べ、ご家族様がどんどん強くなっていくのを、診療を通じてひしひしと感じました。

急変と旅立ち

血液検査結果は一向に良化せずでしたが、全身状態として元気を取り戻しつつあったバウちゃんでしたが、10月22日の夜に急にぐったりしてしまい、23日早朝に往診にお伺いさせていただいたところ、右目が開きづらいような状態で、可視粘膜(唇の粘膜の色や舌色)が白さを大きく増していて、全身で出血が起きたことが疑われました。

診療時に排尿し、尿は黄色さを超え、おそらくオレンジ色であることから黄疸尿であると考えました。この日に実施した血液検査で黄疸が出ていたことから、もう体は限界だという合図だったのかもしれません。

久しぶりの排便を、診療時に少し認めたのですが、少し黒さを含んだ緩い便が出てきました。もしかすると黒色便かもしれないと疑いました。

黒い海苔の佃煮みたいな軟便~水っぽい下痢が出てきたら、それは旅立ちの合図になるかもしれません。治療中のわんちゃん・猫ちゃんであれば、緊急入院を視野に入れて動物病院へ駆け込む覚悟をしましょう。

実際のところ、貧血が大幅に進行していました。DICと言われる、体が限界の状態だったのかもしれません。

その日の診療を終え、安定することを祈っていた矢先、夕方にお電話をいただき、旅立ったことを教えていただきました。

最後は、お母さん、お兄さん、お姉さんに見守られながら、静かに眠りについたとのことでした。

予定よりも駆け足になった虹の向こうへのお引越しでした。

不思議なことに、わんちゃん、猫ちゃんってお別れの日を選べるんじゃないかなって思うことが多々あります。

また、あの日に見せた元気そうな姿は安定していたのでなく、エンジェルタイムだったのかなって思いました。そして、きっと最後は、安心して旅立てたのだと思っています。

バウちゃん、そして闘病を必死に支えてくれたご家族様、本当にありだとうございました。
一緒に頑張れたことを、スタッフ一同光栄に思います。
バウちゃんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。

最後に

ペットを迎えるということは、命の責任を取るということであり、それは簡単なことではないです。
そして、迎えるということは、見送るということです。
お別れは必ずやってきます。その日まで、全力で幸せにしてあげてください。

なかなか通院させられないタイプのわんちゃん、猫ちゃんには、往診という選択肢があります。また、往診は動物病院に付随するものでなく、時間の融通がきくことを考えると、できれば往診専門の動物病院がおすすめです。

なお、緩和ケアやターミナルケアでは、通常の往診よりも密な診療プランを組む必要性が出ることから、その往診専門動物病院の診療体制で選ばれるのがいいかと思われます。

往診専門動物病院わんにゃん保健室は、犬猫の在宅緩和ケア及びターミナルケアに特化してチーム医療をおこなっています。 いつから往診にすればいいのか、どんな時に往診を呼ぶべきなのか、など、参考となるページを作成しましたので、今後往診に切り替えたい、家で看取ってあげたいなどをお考えのご家族様は、是非そちらを一読いただければと思います。

通院できないからと諦める前に、まずは往診専門動物病院までご連絡ください。

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本日は、東京中央区にお住まいのミィちゃん、16歳の女の子の腎臓病のお話です。

ミィちゃんは1年半に及ぶ緩和ケアと19日間のターミナルケアの末、2020年8月3日、お母さんの膝の上で旅立ちました。

ミィちゃんの軌跡をお話することで、きっと何かしら、猫ちゃんを飼われている方に有益な情報として届くことを信じています。

図1.png

 

どんな猫ちゃんだったのか

ミィちゃんは優しい性格で、人間が大好きな猫ちゃんでした。

生後間もない、まだ目が見えていない時に親猫と離れてしまい、衰弱しきっているところを、今のご家族様に保護されました。

一命を取り留めましたが、子猫の時は体が弱く、何度も動物病院に通院する日々だったとのことです。そんなこともあり、ミィちゃん自身、通院は苦手ではなかったとのことでした。

食は元々細く、ガツガツ食べている姿は見たことがなかったとのことです。

そんなミィちゃんが14歳を過ぎたあたりから具合が悪そうになり、食欲の低下や元気もなくなってきたとのことでした。

 

往診を選択したきっかけ

ミィちゃんのように、動物病院に通院できている猫ちゃんは珍しく、お母さんの気持ちとしても、当初は最後までかかりつけの動物病院で診てもらうつもりだったとのことでした。

しかし、動物病院で検査を行い腎臓機能が下がっていることを知り、定期的な通院が必要とされたとき、治る病気であれば通院させたいが、そうでないのであれば家の中で過ごさせてあげたいと思ったので、往診に切り替えたとのことでした。

 

往診変更時の通院頻度

ミィちゃんの場合は、調子がある程度安定していることから、月1回の通院検査で、血液検査を実施しているとのことでした。

往診でも血液検査をすることができることを知り、検査内容に差がないことから、往診がいいなと思ったとのことでした。

 

動物病院での検査内容

動物病院での検査内容は、血液検査、尿検査(持参したもの)に加えて、3ヶ月に1回はX線検査と超音波検査(エコー検査)だったとのことでした。

往診では、X線検査のような大きな医療機器は持ち込めませんが、この中からであればX線検査以外の全てを実施することかができることを知り、検査に関しても往診でお願いしたいと希望されました。

 

初診時の検査

初診時は、問診で45分程度、血液検査、尿検査、腹部超音波検査などを実施し、ミィちゃんの全体像を把握させていただきました。

処置には皮下点滴に複数の注射薬を合わせ、一気に処置を終わらせました。血液検査の結果、腎不全がかなり悪化した状態であることがわかり、尿素窒素(BUN)、クレアチン(CRE)は大きく参考基準値を超えていました。

 

診療プラン(緩和ケア)

診療プランは、1週間集中的に訪問して皮下点滴を実施し、安定したことがわかれば、徐々に頻度を下げていくというものでした。

ミィちゃんの場合、飼い主様の判断が早かったおかげで、すぐに状態が安定したため、次のステップである「飼い主様指導」を開始しました。

目標は、飼い主様自身でご自宅で皮下点滴ができることです。

無事にトレーニングを終え、内服薬2種類+週2回程度の皮下点滴としました。

 

往診頻度(緩和ケア期間)

緩和ケアの時は、基本的には1ヶ月〜3ヶ月に1回の往診を行い、そこで血液検査や尿検査、超音波検査などを行い、前回と比べてどのくらい変化したのかを評価していきます。

日を追うごとに、少しずつ腎臓の機能が下がっていくのを検査データから読み解き、少しずつ皮下点滴の頻度が増えていき、内服薬の量も増えてきました。

 

ターミナルケアへの転機

緩和ケアを開始して1年半ほど経った2020年7月中旬、ミィちゃんが急変したとの連絡を受けました。

変化の内容は、以下です。是非参考にしてください。

・昨日までご飯を食べれていたが、今朝から全く食べなくなった。

・今朝から急にふらつきが強くなった。

・吐き戻し(嘔吐)が始まった

・下痢になってしまった

 

夜に点滴をされていたこともあり、夜の点滴は一旦保留として夕方すぎにお伺いすると、ミィちゃんはぐったりしていて、呼びかけに対しても反応がやや薄くなっていました。

この日は血液検査で幅広い項目を確認し、超音波検査にて腹水、そして胸水が溜まっていうないかを確認したところ、腹水と胸水の貯留はありませんでした。

血液検査結果では、腎臓の数値が飛んでいること、黄疸の数値が高いこと、炎症の数値も高く、貧血が一気に進行していることなど、いよいよ来たなっていう結果を認めました。

ご家族様に説明させていただき、酸素室をご自宅に設置、呼吸が苦しそうなときはこの中で管理するか、または酸素チューブを顔の前に持っていって嗅がせてあげるように指導しました。

この日から1~2日に1回の往診が始まり、19日後の2020年8月3日、お母さんの膝の上で静かに眠りにつきました。

 

腎臓病は、多くの高齢猫ちゃんで認められる病気であり、治療法はなく、症状の緩和や、状態を安定させる目的で、食事内容調整、内服薬、そして皮下点滴を行います。

 

よく飼い主様から、

 

「治るのであれば治してあげたいけど、一生でしょ?一生投薬するのは可哀想だ。」

 

と伺います。

 

はい、そうです。

一生症状を緩和して、然るべき時を待つ、という表現であっているかなって思っています。

 

コントロールできる症状であれば、緩和してあげた方が、わんちゃん、猫ちゃんにとって苦しみの時間は短いのではないかと思います。

コントロールするためにも、まずは検査してデータを揃えることがとても大切です。

もちろん検査が全てではありません。

検査に耐えられそうにないと判断することも多々あります。

そんな時は、たくさんの情報をご家族様から引き出すことで、想定できる可能な限りのことを考えていき、その環境で、この家族構成で、今のその子の状態でできる最大限のことをご提案させていただきます。

 

愛犬、愛猫をおうちで看取ってあげたいと考えられているご家族様、大きく体調を崩してしまう前に、まずはご連絡ください。

 

一緒にその環境でできる最良の選択肢を考えていきましょう。

 

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往診専門動物病院わんにゃん保健室では、さまざま症例に対して最良の往診獣医療を模索し、提案し、提供することを大切にしています。

 

今まで出会った症例のほんの一部分ですが、以下に抜粋してみました。

・動物病院に通院することが本当に苦手

・通院ではなく、家で皮下点滴をしたい(腎不全などの慢性疾患)

・とにかく通院ストレスを無くしたい

・酸素室から出すことができない

・最後の日を一番大好き家の中で迎えさせてあげたい(ターミナルケア)

 

ご家族様の心の中に溜まっている言葉がたくさんあればあるほど、初診時の問診は長くなる傾向があります。十分な時間を割かせていただき、長いときには2時間以上かけることも多々あります。

わんちゃん・猫ちゃん、そしてそのご家族様が何を求めているか、そしてどこまでできそうか、生活環境などを踏まえ、現段階で最良と思われる診療方針をご説明させていただきます。

この時決めた診療方針が絶対ではなく、時間の経過とともにペットの状態も然り、飼い主様のしてあげたいことにも変化が出てきますので、その時には都度ご相談いただき、臨機応変に違う方針をご提案させていただきます。

 

今回ご紹介するのは、慢性腎不全の猫のうーちゃんのお話です。

出会って1年7ヶ月、18歳を迎える少し前に、最後の時間を大好きなお母さん、お父さんに見守られながら、目を閉じました。とても静かな最後だったと伺っております。

 

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初診 うーちゃんとの出会い

うーちゃんとの出会いは、2019年5月13日でした。元気食欲はまだありそうだが、少し下がってきていて、便秘気味だとのことでご連絡をいただきました。

かかりつけの動物病院では、2016年5月に慢性腎臓病と診断を受けており、頻繁に動物病院への通院を指示されており、通院すると1時間ほど待って診察室で皮下点滴をしてもらい、30分ほど待合室でお会計を待つというもので、移動時間も含めるとおおよそ4時間程度、緊張して震えている猫のうーちゃんを拘束しておかなければいけないことが辛かったとのことでした。

猫ちゃんの多くは、避妊去勢手術を境に、キャリーに入ることを怖がるようになります。それでも最初の頃はどうにかキャリーに押し込めて通院させられるのですが、持病を抱えてくるとそうはいきません。

猫のうーちゃんの場合、慢性腎臓病で血圧も高いことが疑われていましたので、過度のストレスが病体急変につながることも容易に考えられます。

しかし、動物病院で今まで診察してきてもらったので、急に切り替えることが、今まで診察してくれた担当の獣医師を裏切ることになるんじゃないかと心配される飼い主様が多くいますが、決してそんなことはありません。

飼い主様しか、愛犬・愛猫のことに関して決断できる人はいませんので、勇気を持って最善だと思う選択をしていきましょう。

 

今回の場合は、飼い主様からかかりつけの動物病院に事前に相談していたため、初診時に紹介状と今までの経緯をまとめたものをご用意していただけていました。

 

初診時には、過去に行った検査データがあればあるほど参考になりますので、是非検査データを動物病院で受け取ったら捨てずに取っておいてください。

 

初回となる今回は、採血を行い、腎臓の数値を含めたスクリーニング検査を行うとともに、腎臓の薬がなくなっていたのでその補充をさせていただきました。

 

採血の間もおとなしく、うーちゃんは比較的嫌なことをじっと我慢するタイプだということがわかりました。

 

再診 2日目以降

結果から、尿素窒素(BUN)とクレアチニン(CRE)、リン(IP)がかなり高値で、カリウム(K)が2.5までとかなりの低値を示していました。

この日を境に、少しの間集中的に皮下点滴(注射薬あり)を実施しました。

状態が安定するまでは1日1回の往診で皮下点滴を実施していきました。

最初の1週間は毎日、次の3週間は1日おきに皮下点滴を行い、お母さんの覚悟が決まりましたので、いよいよ皮下点滴指導に入ります。

毎日私たち獣医療チームが訪問し皮下点滴を打つと費用がかなり嵩んでしまう為、できる限りご家族様だけで皮下点滴が打てるようになることを推奨しています。もちろん、できるまで指導させていただきます

うーちゃんのお母さんの場合には、2回練習をしたら、3回目には一人で皮下点滴が打てるようになり、そのまま1ヶ月単位での診察に切り替えることができました。

なお、この時もまだ、2日に1回の皮下点滴(注射薬なし)でした。

 

経過観察 1ヶ月ごとの診察(医薬品の補充と検査)

毎月1回程度の訪問で、血液検査をメインとした診察を行っていきます。診察にも慣れてくれたようで、いつも「もう終わったでしょ。早くご飯出して。」と言わんばかりの表情と鳴き声でアピールしていきます。

初診のころが嘘のように元気になり、キャットタワーにも登るようになりました。

時々嘔吐や食欲不振などで、当日予約にてお伺いすることはありましたが、比較的ずっと安定してご自宅で過ごせていました。

 

経過観察 貧血傾向と食事量の低下(酸素室開始)

2020年の夏頃から、血液検査結果ではそこまで大きな崩れはないものの、ヘマトクリット(Hct%)が前回値からガクッと下がりました。この時から、なんとなく猫のうーちゃんの様子も変わり、1日通して運動量が少なくなったことと、食事も残すようになったとのことでした。

もしかすると、急激に貧血までのヘマトクリットに下がった可能性も疑い、ご家族様に酸素室設置をご提案させていただきました。

お父さんもお母さんも即決で、即日手配を完了させ、ご自宅に酸素発生装置を設置することができました。しかし、猫のうーちゃんにとっていつもの自分の部屋が落ち着くようだったので、酸素ケージは設置せず、いつも使っているお部屋にビニールなどを巻いてもらい、うーちゃん専用の酸素ハウスが完成しました。これはうまくいき、うーちゃんも抵抗なく入ってくれました。

すると、酸素室内だとご飯を残さず食べてくれ、酸素室を出て少しの間は結構元気に動き回るとのことでした。

ずっと酸素室内で生活させるのも可哀想ですし、この程度の病状であれば、必要な時だけ酸素を稼働させてもらうよう指示をだし、基本的には使用しない都度使用としました。

上手に使用していただき、うーちゃんの生活の質が改善されました。

しかし、この頃から、調子が悪くなった時に使用する頓服薬も一緒にお渡しするようになり、状態が下がったら使用してもらうという頻度がちょっとずつ狭くなってきました。

 

体調悪化

2020年12月28日に体調が全然上がって来ず、投薬できていないことを相談されたため、急遽ご自宅での投薬指導をさせていただきました。獣医師と動物看護師数人でお伺いし、状況を整理し、お母さんにやり方をご説明させていただき、挑戦してもらいました。最初は手が震えるくらい緊張していたお母さんでしたが、回数を重ねるごとにみるみる上達していき、5回目くらいには楽々できるまでの進化を遂げました。

往診で緩和ケアを実施しているなかで、一番感じるのは飼い主様の看護技術の向上です。できなかったことができるようになり、時間が経つにつれてただできるようになった状況から、上手にスムーズにできるようになっている姿を見ると、愛情ってすごいなと、心の底から思います。

こうして、その子専用24時間待機の動物看護師となっていただけました。

 

体調急降下

2021年1月8日に体調の低下の相談を受け、状況を整理させていただき処置内容をお伝えさせていただきました。

翌日に広く検査を行い、複数の注射薬を混ぜた皮下点滴を実施し、状態安定を目指しました。

この段階で排尿がなくなって24時間くらいとのことでした。

超音波検査では、膀胱内に尿が貯留しているのを確認はしていたので、尿はまだかろうじて作れているのだと考えました。

皮下点滴後には、ちゅ〜るを少し舐めて酸素室に戻り、その後ご飯を少し食べてくれたのですが、ふらつきやなんとなくの倦怠感は残っているように感じるとご連絡をいただきました。

その後、状態がグッと下がり、翌朝6時頃、呼吸状態がゆっくりと深くなり、静かに旅立ったとのことでした。

最後にご飯を食べてくれたのは、もしかするとエンジェルタイムだったのかもしれません。ありがとうご気持ちを込めて、お母さんとお父さんの手からご飯をもらったのかもしれません。

 

しかし、最後の日までしっかりと投薬できたことで、長い時間苦しむことなく吐くこともなく、静かに眠りにつけたのだろうと考えています。

 

何より、すぐ横に大好きなお父さんとお母さんがいてくれたからだと思っています。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室では、ペットの本当幸せってなんだろうといつも考えながら診療にあたっています。

現状、私たちの考える幸せな最後は、大好きなご家族様に見守られながら、ずっと住んでいた家で最後の時間を迎えることだと思っています。

痛みや吐き気は薬を使用することで緩和できる場合が多いです。

飲み薬が苦手なわんちゃん・猫ちゃんであれば注射薬で投与することもできます。

もし動物病院で、家で看取ってくださいと言われ、内服薬を渡されたが飲ませられなかった時は、もう何もできないと諦めてしまう前に、まずは私たちにご連絡ください。

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肝性脳症と戦った猫(東京荒川区/猫/発作)

久しぶりのブログとなる本日は、最後までご自宅で病気と向き合ったご家族様の姿と、毎日の投薬を甘んじて受け入れてくれた猫のみーちゃんのお話です。

 

2021年1月11日に出会い、往診による在宅緩和ケアおよびターミナルケアを実施し、2021年1月26日にご家族様の見守る中旅立ちました。

短い期間でしたが、とても内容は濃く、ご家族様とわんにゃん保健室スタッフ全員が一丸となって戦い抜くことができました。

 

猫のみーちゃんと往診で出会うまでの経緯

猫のみーちゃんは、2020年12月下旬に急にお腹がパンパンに腫れ(腹囲膨満)、もともと食欲旺盛だったことが嘘かの様に食欲は廃絶し、浅い呼吸になってしまったため、救急を対応している動物病院に行かれました。

 

救急の動物病院につくや否や、ご家族様がトラウマになるほどの嫌がりようで、動物病院スタッフの方々にはご尽力いただいたと伺いました。

なんとかみんなで必死に押えて処置をしてもらい、少しの間入院精査をしました。

検査の結果、門脈圧亢進症による腹水貯留を疑い、アンモニア高値、猫伝染性腹膜炎(FIP)陰性であり、更なる検査に望むのではなく、ご自宅での内科療法を選択され、当院までご連絡をいただきました。

 

往診初日 みーちゃん家族と初対面

1月11日にお電話にて状況を確認し、当日予約にて17:30から診察に向かいました。

とても明るい笑顔で迎えてくれたお母さんの右手首には痛々しい包帯がしっかりと巻かれていました。

往診で伺う少し前に、誤って手首を思いっきり噛まれてしまったようです。

そのケガを見た瞬間、今日は激しい診療になるかもなと、猫手袋というある程度頑丈なグローブを握りしめたことを覚えています。

お部屋に入ると、想像していた怖がりで威嚇を続けている猫ちゃんではなく、静かに好きな場所で隠れてこちらを覗いている、比較的穏やかな印象の猫ちゃんがそこにはいました。

お母さんたちからお話を伺っている中で、みーちゃんがお母さんの手を噛んでしまったのは、発作が原因だと考えました。

普段から人懐っこい性格だったということから、病気がみーちゃんにそのような行動をさせたのだと、順を追って、あくまで仮説の域を超えませんが、ゆっくりとご説明させていただきました。

 

発作が継続している状況だと、小さな刺激(撫でるや声を掛けるなど)にも敏感に反応し、本人の気持ちに反して攻撃してしまうことがあります。

瞳孔がまんまるでいつもよりも明らかに黒目が大きく感じる(瞳孔散大)、ピクピクしている、動きが奇怪、涎を垂らしている(流涎)など、普段との違いに気づいたら、声をかけるのではなくかかりつけの獣医師に連絡し、状況を伝え判断を仰ぎましょう。

安全対策は、ご家族様だけでなく、一緒にいるわんちゃん・猫ちゃんのためにもなります。

 

この時のみーちゃんは、思ったよりも落ち着いている印象でした。

今までの経緯と今後の診療プランを一緒に決めていき、この日の状態から、今は内服薬を飲ませることは誤嚥の恐れがあるため賢明ではないと考え、この日の往診では内服薬は一切使用せず、皮下点滴(複数の注射薬を混ぜたもの)のみを実施しました。

 

すると、処置後すぐに瞳孔散大を示し、動きも奇怪な感じで、よだれをたらし始めるといった、まさにこれから発作を起こします!という症状を認めました。

案の定、その数分後に発作が始まり、全身が硬って震えてしまう強直性痙攣を起こしました。

強直性痙攣を初めて目の当たりにしたご家族様は、その姿に混乱してしまうことと思います。しかし、愛犬・愛猫が発作を起こした時こそ、冷静な判断と行動が必要です。

 

準備していた痙攣止めの薬をご家族様と一緒に打ち、発作が止まるまでの流れを経験していただきました。

 

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今後も発作を繰り返す可能性が高いことを伝え、家の中にデジタル時計を複数個おき、発作の長さを客観的に把握すること、発作後には痙攣止めの注射を打ち、後頭部を冷やしてあげるなどのアフターケアについて、私たち往診獣医療チームが退室した後に飼い主様だけになってからでも、的確な判断と行動が取れるように何度もお伝えさせていただきました。

 

この日を境に、旅立つ最後の日までの集中的な往診診療が始まりました。

 

往診2日目 診療方針の決定

翌日には、前日まで入院していた救急の動物病院から検査結果と経過報告書をいただき、今の状況をより把握させていただきました。

 

朝までは食事ができていませんでしたが、昼くらいにはご飯を食べられるようになったとのことでした。薬の効果が出てきたのだと思います。

検査結果から、発作が発生した時に酸素が身近にあったほうがいいと判断し、ご家族様の許可をいただいて酸素発生装置を同日、準備させていただきました。

 

ご自宅に酸素発生装置がありますので、呼吸が苦しそうになった時は使用していただけるようになりました。

家の中でもあまり動き回らない老犬・老猫ちゃんであれば広めの酸素ケージを用意し、その中にトイレからご飯台などを設置して、イメージで言うところの1Kのホームみたいな環境を作り上げます。

しかし、猫のみーちゃんは状態がいい時は家の中を散歩し、天気がいい時には日向ぼっこをするのが大好きなタイプであったため、酸素ケージは準備せず、ご家族様の介抱ありきでの用途使用とさせていただきました。

 

こたつの中も好きでしたので、もしこたつの中で酸素を使用する場合には、必ずこたつの電源は切るようにお願いしました。(※引火の恐れがあります)

 

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状態が安定し、この日から内服薬も開始しました。たくさんのお薬を使用しましたが、幸いにもみーちゃんは食欲旺盛な猫ちゃんでしたので、内服薬は思っていたよりもちゃんと飲むことができ、1日2回のものは食事に混ぜて、3回のものや1回のものは、訪問時にシロップ状にして飲ませてあげることで、全部飲ませることに成功していました。

 

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状況と投薬プランから、毎日の訪問を診療プランとさせていただきました。

毎日訪問することが決まっていれば、前日の診療から翌日までの変化、投薬状況を細かく確認でき、朝飲ませられなかった薬は訪問時に飲ませることができます。

 

何より、飼い主様にとって、そして私たちにとっても一番安心できる診療プランを組ませていただきました

 

往診3日目 自宅での腹水抜去開始

前日の処置後から、高濃度酸素空間で久しぶりにぐっすり眠れていたとのことでした。

2~3時間で目を覚まし、少し飲食をして、3~4時間寝て、起きると大量にご飯を食べてくれたとのことでした。しかし、呼吸は苦しそうだとのことでした。腹囲膨満(腹水貯留所見)が著しく進行していることから、緩和目的で腹水抜去を実施しました。

 

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腹水に関しては、あまり抜去しないという場合も多々あります。抜去するかしないかは、今回の場合、みーちゃんの生活の質を著しく下げてしまっているかどうかでした。

 

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前回、近医や救急動物病院では結構暴れてしまったということがあったので、ご自宅での腹水抜去についてはとても不安そうだったご家族様でしたが、みーちゃんのここ2日間の診療中の落ち着き様を信じて実施してみると、ほぼ抵抗せずに腹水抜去に応じてくれました。むしろ、途中から呼吸が楽になったのか、眠そうな表情すら見せてくれました。

 

5.JPG

 

この日の腹水は1000mlで、抜き終わるといつもの場所まで歩いて行き、身軽になったせいか気持ちよさそうに眠ってしまいました。

 

この日も診察後に少し眠り、起きると大量にご飯を食べるという、みーちゃんの食いしん坊な姿を見せてくれたとのことでした。

 

往診4日目〜14日目 日常のケアと毎日の処置内容

ご家族様にお願いしている内容は大きく3つでした。

 

1. 処置後から翌日の診察までのみーちゃんの様子と投薬状況の共有

2. 発作時には専用の注射を打ってもらい、ご連絡をいただくこと

3. 適宜、酸素を使用してもらう

 

往診では、ご家族様の役割や生活環境を細かく伺うことができますので、誰がどんな担当をされているのか、またはするのか、それをどこでやるのか、もしこの環境ならどうするかなど、診察室ではアドバイスできない箇所までお伝えさせていただいています。ご家族様によっては、全てをお母さんが担当している場合もありますが、負担は関わる家族みんなで少しずつでも分担しなければ、介護疲れで倒れてしまいます。そのため、みんなで病気と向き合うことを心からお勧めします。

 

腹水を抜くと状態は安定し、また腹水が溜まってくると苦しくなるので抜去するということの繰り返しですが、それによってみーちゃんが苦しくなく生活できていたのは明らかでした。

 

ご家族様が、入院でずっと処置してもらうのではなく、家でできることを最大限やって家の中で安心させて過ごさせてあげたいという大きな覚悟のおかげで、みーちゃんも通院ストレスなく、ご自宅で過ごせていました。

 

最後の日

前日までは元気よく、ご飯もいっぱい食べていると伺っており、わんにゃん保健室のスタッフ全員安堵に包まれていました。

ここまでよく頑張ってくれたなという思いと、これからも頑張っていこうねという思いが込み上げていました。

しかし、病状は急変し、1月26日の朝、ご家族様の見守る中旅立ちました。

夜中2時くらいから急変を示し、お渡ししていた注射を打っていただき、それでも安定せずにさらに追加で注射をしてもらいました。

ご家族様の中で、もう一度緊急に連れて行くべきか、それとも連れて行かないでここで発作止めを打って見守ってあげるべきなのかの相談をされたと伺いました。

 

 

飼い主様の覚悟と決断

究極の2択です。

連れて行ければ、もしかしたらを臨めるかもしれません。しかし、連れていく準備をしている間に、キャリーに入れている間に、移動中に、動物病院内での処置中に、検査中に、入院中に…、もしかしたら旅立ってしまうかもしれません。

みーちゃんは通院することが苦手で、キャリーの中に入れられることも怖く、揺さぶられている間は大きな不安の中に居たのかもしれません。

みーちゃんのご家族様は、みーちゃんが大好きなご自宅で、家族みんなで見守ることを決断されました。

その結果、家族みんなで看取られて、静かに旅立つことができました。

旅立つ瞬間をどこで迎えさせてあげるのか、最終的な判断をするのは飼い主様です。

どんな選択をしても、少なからず後悔はついてくるものだと考えています。

しかし、最後の瞬間を看取ることができたことは奇跡であり、最後までできることをしてあげられたという実績は紛れもない事実として、ご家族様の胸の中に刻まれることと思います。

 

お別れの日に、お花をお持ちすることができました。

眠りについたみーちゃんと、病気と最後まで向き合い戦い抜いた素敵なご家族様がそこにはいました。

精神も体力も限界まですり減らしながら一緒に戦ってくれたご家族様に最大の敬意を払います。

 

 

犬猫をこれから迎えようとお考えのご家族様へ

ペットを家族として向かい入れるということは、送り出すということであることを忘れないでください。

楽しいことだけでなく、これから辛いことも同じくらい起きることを知っていてください。それでも、消して逃げ出さないで向き合ってあげることが、その子たちにとっては何よりも嬉しいことです。

動物病院に通院させることが難しくなったのであれば、往診専門動物病院に連絡しましょう。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室では、わんちゃん・猫ちゃんが最後の瞬間をご家族様のもとで過ごせるよう、最大限寄り添った最良の往診獣医療を最後まで提供していくことをモットーに、日々診療と向き合っております。

 

慢性疾患(猫の腎不全など)のコントロールや緩和ケア、ターミナルケアをできる限りストレスを軽減し負担を少なくし、ご自宅で過ごさせてあげたいとお考えのご家族様、まずはご連絡ください。

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