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2021年12月アーカイブ

年末のご挨拶

2021年もたくさんの命と出逢い、その命を囲んで奮闘を繰り広げるご家族様をわんにゃん保健室のスタッフ総出でサポートさせていただきました。

 

2020年、2021年はコロナ禍ということもあり、診療数に制限をかけていたこともあり、ご連絡いただいた全てのご家族様のもとへお伺いできたわけではないのが心苦しい年でした。

世の中の雰囲気を見て、2022年はきっと明るい光が差すことを信じ、スタッフ一同、各々の健康管理に徹底し、全力で診療に励みます。

 

診療報告

新たに出逢った緩和ケア総数:62

見送った命の数(ターミナルケア含む):42頭

スヤスヤ猫.jpg

 

 

情報発信

2022年は、在宅での緩和ケアやターミナルケアに関する情報を発信にも力を入れていきます。

instagramを中心に、具体的な事例紹介や高齢期に役立つ情報や、緩和ケア・ターミナルケアの時に考えなければいけないこと、マインドセットについてなど、できる限り多くのことをお伝えできればと考えています。

事例紹介:@wannyan_hokenshitsu公式アカウント

当院で診ている子たちの在宅緩和ケア、在宅ターミナルケア(看取り)の様子を発信していきます。

情報発信:@koheiemoto 院長のつぶやき

高齢期に考えなければいけないこと、もしも時の覚悟、あったらいいな、など高齢期に特化した情報を発信していきます。

 

年始の診療に関するお知らせ

2022年1月4日午後から、通常診療を開始します。

電話やメールは通じますので、年始の診療予約はお気軽にご連絡ください。

 

では、また来年^^

 

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腎不全の猫(食欲がない)

猫ちゃんは気分屋な生き物で、昨日まで大好きだったご飯を、今日は全く見向きもしない、といったことが日常茶飯事かと思います。

 

猫ちゃんで有名なフレーズで、“3日間食べないと肝臓の病気になる”というものがあります。

 

これはどういうことかというと、ご飯を食べないことによって飢餓状態になると、糖分の不足が起き、どこからか生命維持をするためのエネルギー供給源を探す必要があります。

 

そこで、身体が探し出したエネルギー共有源は脂肪であり、それを分解することでエネルギーを作り出します。

 

その過程で、肝臓にダメージが蓄積してしまい、脂肪肝のような状態へと移行していきます。

 

肝臓のダメージは不可逆性のような印象でいた方がよく、発症してしまったら、いかにして維持し症状を出させないかに尽力していきます。

 

ほとんどの場合、翌日には食べてくれますし、またはご飯を変えることによって「そうそう、これこれ」というように、悩んでいるご家族様を嘲笑うかのうようにガツガツ食べてくれたりもするので、食べてくれないという現象に慣れてしまうようになります。

 

しかし、上記のように“3日間食べないと肝臓の病気になる”ということを常に考えていなければいけませんし、異常かもと思って毎回動物病院に連れ出すのは、猫ちゃんのストレスが気になることと思います。

 

そのため、もし猫ちゃんが通院好きなタイプであれば例外としますが、そうでなければご家族様側が「小さな変化」に気づき、冷静に判断する必要があります。

 

本当に食欲低下だけでしょうか?

普段と比べて、運動性が下がっていませんか?

以前は大丈夫だったその“以前”は、何年も前のことではないですか?

 

経験からの期待的観測は危険です。

 

その結果、致命的なものとならないように、私たち人間が過去から学んであげる必要があります。

 

今回は、経験的観測により長く「食欲低下」を見逃してしまった猫ちゃんのお話です。

 

変化に対しては、無理矢理でもある種の指標を立て、感情的ではなく客観的に評価する。

 

そんなきっかけになればと思います。

図1.jpg

 

違和感に気づくきっかけ

東京足立区にお住まいの、くるみちゃん12歳、食ムラの多い性格とのことでした。

 

普段はご飯の種類を3~4パターン変えるだけで大体食べてくれたのが、ここ最近は準備しても全く興味を示してくれなかったとのことでした。

 

しかし夜になると1~2口だけ食べてくれた後があるので、少しでも食べてるなら大丈夫と判断してしまったとのことでした。

 

その状態で1ヶ月ほど経ってしまい、丸3日ご飯を全く食べなかったため、これはおかしいと思ったとのことでした。

 

ポイント:柔軟な姿勢で向き合う

こういった猫ちゃんへの対策は、これを食べなきゃあげない!という強硬姿勢を取るより、柔軟にご飯を選んであげることが大切です。

そのため、ご飯の種類をたくさん準備しておく必要があるので、ここで注意しなければいけないのが、食物アレルギーの存在です。

ご飯を食べて、体調に異変があった場合には獣医師に相談しましょう。

 

往診を予約したきっかけ

家の中ではゴロゴロなくるみちゃんですが、キャリーの中に入れるとものすごい勢いで鳴き叫んでしまい、それがトラウマで動物病院離れしてしまったという背景もあり、通院ではなく往診でお願いしたとのことでした。

 

当初は近隣の動物病院でも往診をしているとのことだったので、電話して相談してみたところ、すでに継続診療をしている子に限って往診をしていると言われてしまったり、別の動物病院では往診では何もできないから連れてきてくださいと言われて切られてしまったなどあったとのことでした。

 

調べてみたところ、当院を発見し、ご連絡いただいとのことです。

 

ポイント:動物病院に付属する“往診”はオプションサービス

動物病院は午前・午後診療時間以外に入院患者のケアや検査、手術などを行っています。

例えば10:00診療開始であれば、もしかしたらスタッフの出勤は8:00とかで、そこから入院動物たちのケアを行い、中にはギリギリで生きている子たちもいるため、朝からアクセル全開で仕事に臨んでいます。

午前診療が終わると、昼オペと精密検査、午後の診療が終わると入院動物のケアと夜オペの準備、夜オペ、更には病院清掃業務など、多岐に渡り、かつそのどれもが重たい作業です。そんな中に往診をどう盛り込めるかが勝負ですが、多くの場合、まずは通院・入院している目の前の犬猫を助けることで精一杯のはずです。

それでも往診をしてくれるのは、先生方の優しさからであると思ってあげてください。

そのため、怪我などの1回で済む治療以外は、往診専門動物病院まで連絡するようにしましょう。

 

3-③ 食欲が下がった.JPG

 

問診内容

食欲不振というお話以外は、普段と変わりないですとのことで伺っていましたが、状況は違いました。

 

元気はなく(運動性低下)、食欲は廃絶、嘔吐も1日1回以上あり、便秘気味、排尿はできていますがその臭いはほとんどありませんでした。

 

爪を見てみると太くなっていて、長い間爪研ぎができていなかったこともあり、おそらく長く体調が悪かったのだと考えました。

 

毛並み、皮膚の状態もあまり良くなく、重度の脱水を起こしていると判断しました。

 

ポイント:先入観ほど怖いものはない

往診では、元気、食欲、排尿、排便、嘔吐の5点をまずは一般状態の確認でお伺いしています。

日常的に繰り返していたり、または長い年月をかけて起きた変化だったりすると、ご家族様側に耐性ができているため、“まぁ、今回も大丈夫でしょ”という先入観を持ってしまう傾向があります。

動物病院に連れて行けない犬猫と生活していると、ある程度先入観を持たざるを得ないと思いますが、できれば専門家に相談できる環境を作ってあげましょう。

 

検査

①全身の状態チェック(一般身体検査)

体重は3.5kgで、全盛期が6.8kgあったことを考えると半分近くまで下がっていました。

削痩状態であり、危険な状態だと判断しました。

目はうっすら黄色く、また耳の内側も若干黄色味を帯びていました。

 

②腹部超音波検査

肝臓は全体的にザラザラしており、胆嚢には泥が軽度に貯留していましたが、特記すべき所見は認めませんでした。

腎臓の大きさは、左が右に比べて少し小さめであり、また左の構造が崩れていて血流もかなり弱いことが確認されました。

右も構造が変化しており、血流は確認できたものの、やはり弱くなっていました。

 

③血液検査

BUN >140mg/dL

CRE 14.3 mg/dL

Ca 6.5mg/dL

IP >15.0mg/dL

Na 170mEq/L

K 2.5mEq/L

Cl 127mEq/L

SDMA 35μg/dL

Hct 25.6%

(※ここでは腎不全と相関性の高い数値のみ記載しています。)

 

④尿検査

比重 1.035

黄疸(+)

タンパク(+)

(※採血時に漏らしてくれたので、それを採取したものを使用しています。)

 

以上の検査結果から、腎不全ステージ4ということがわかりました。

 

今後の診療プラン

本来であれば入院管理をしてガンガン点滴を流したり、できることであれば腎臓の透析をおこなっている動物病院もあるので、そこで入院治療を行うことも選べるのですが、そうは言っていられないのが猫ちゃんです。

もともと動物病院への通院が苦手で、さらに知らない環境で数日間の入院、知らない人に囲まれ、知らない臭いがたくさんする中で、具合の悪いこの子を入院させられないと考えるご家族様がほとんどです。

それであれば、看取りを視野に入れてでも、家でできる範囲で全力でやってあげたいと希望されましたので、1日2回の皮下点滴を開始しました。

 

3日後の血液検査で、奇跡的に大幅な改善を認めました。

その後、点滴頻度を1日1回、そして2日に1回と漸減し、現在は1週間に2回+内服薬2種類でコントロールしています。

図2.jpg

 

 

まとめ

単なる食欲不振だと思っていたら、腎不全だった猫ちゃんは、往診という診療形態であることから、かなり多く出会います。

先入観からの判断はかなり危険ですが、それでも毎回動物病院に連れて行くには、そのストレスでおかしくなっちゃうんじゃないかと考えられるかと思います。

それであれば、選択肢は1択で、ご家族様が専門的な知識を得ることです。

専門的と言っても、飼い猫ちゃんに特化した専門知識です。

 

猫ちゃんを迎えたということは、通院できない前提で、ご家族様が家で何ができるのかを先に考えておくことが大切です。

 

できる限り心残りがないように、できることを事前にできる分だけやっていきましょう。

 

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腎不全の猫(元気がないような気がする)

“…元気がない”

 

これには指標がないため、判断するのが非常に難しい症状の一つになるかと思われます。

 

元気があるかないかの判断には、“日常の普通”を把握している必要があり、その判断ができるのはご家族様です。

 

例えばこんな変化が、「元気がなさそう」に入ります。

 

□好きだったキャットタワーに登らなくなった

□鳴いて甘えてきたのに甘えてこなくなった

□呼びかけに対して反応が遅くなった、ないし反応しなくなった

□ご飯の音で近づいてきたのに、来なくなった

□寝てる時間が多くなった

□一箇所から動かなくなった

□動かないのに、目をあけて寝ていないような気がする

□普段は抱っこが嫌いなのに、静かに抱っこさせてくれた

 

などなど、挙げればキリがないですが、さまざまな角度から見て「元気がなさそう」と判断していきます。

 

猫ちゃんの“元気がなさそう”は、ちゃんと具合が悪い証拠だと考えてもらった方がいいです。

 

今日は、元気がなさそうだという主訴から、検査結果、腎不全ステージ4だった猫ちゃんのお話です。

 

何気なく気づいてしまったその違和感、無視していませんか?

 

スライド2.jpeg

 

違和感に気づくきっかけ

東京千代田区にお住まいの、トラちゃん18歳、年齢の割に元気で、キャットタワーの上り下りと、お父さんの膝の上が大好きで、夕食の時間になると、いつも飛び乗って甘えていたとのことでした。

 

しかし、お母さんには強気で、「撫でろ」とお腹を見せてはくれるのですが、抱っこしようとすると怒って逃げてしまうという、気難しいキャラクターだったとのことです。

 

ある日お仕事から戻ると、なんとなく動きが悪い、というよりは冷たい床の上で寝そべったまま移動していなさそうだなという違和感を感じたとのことでした。

 

以前にも、少し動きが悪いなという日はあったのですが、その時は放っておいても大丈夫そうという感じがして、案の定3日程度で復活したという経験はあったとのことでしたが、今回の違和感は「何か変だな」っていう怖い感覚を覚えたらしく、急いで往診を予約したとのことでした。

 

 

往診を選んだきっかけ

動物病院へ通院させることもできそうなのですが、普段から抱っこが嫌いだったということもあり、あまり無理に抱きかかえてストレスを与えるくらいであれば、家でまず見てもらいたいと思ったとのことでした。

現に、採血時に低血圧を疑うほどに血管が見えにくかったので、この選択は英断でした。

 

 

問診内容

ぱっと見ふさふさで、ガリガリだったり顔が浮腫んでいたりなどの所見はなかったのですが、伺っている性格との違いは明らかで、わんにゃん保健室のスタッフが近づいても逃げることなく、じっとしていました。

食欲は普段の30%以下くらい、水は結構飲んでいるとのことでした。

トイレの回数は減ったとのことでした。

 

ポイント:“性格の変化には要注意”

年齢を重ねて丸くなったなど、加齢と共にある程度の変化は伴ってきます。

ここで重要なのは、「急激な変化」です。

急激な変化とは、昨日と今日で雰囲気が変わったなど、明らかな違和感として気づく変化です。例えば、昨日まではシャーシャーで触れなかった猫ちゃんが、今日は触っても、抱っこしても怒らない、などです。逆も然りで、普段は温厚な猫ちゃんが、急に怒りん坊になったというのも注意が必要です。

前者であれば、単純に具合が悪いか、持病が悪化して症状を伴ったのかなど。

後者であれば甲状腺機能亢進症や脳神経系疾患、どこかが痛いなどが考えられます。

 

スライド1.jpeg

 

検査

①全身の状態チェック(一般身体検査)

お母さんからの連絡が早期だったため、トラちゃんは削痩することなく、診察を受けることができました。

腰仙部と言われる腰椎と仙椎の関節部分(腰の辺り)に、圧痛があること以外、大きな所見は認めませんでした。

 

ポイント: “高齢猫ちゃんで、腰仙部の圧痛はよくあること”

猫ちゃんは、体の構造上、腰仙部に長い間負荷がかかってしまいやすい生き物です。

猫ちゃんが運動するときは、全身の筋肉と関節をうまく使用してしなやかに、かつ瞬発力のある動きを見せますが、ちゃんと体には負担がかかっているということですね。

対策や予防など、元気な時には基本的に考えないでいいです。高いところにのぼらせないなど、教科書的な判詞はあっても、現実問題キャットタワーとか高いところは猫ちゃんの大好物なわけなので、それを取り上げて逆にストレスを加えるのは、そっちの方が体に良くないと考えています。

元気がないなと感じた時に、その部分を圧迫すると皮筋がピクピクしたり、腰が下がったりなどの反応があれば圧痛ありと判断できます。

しかし、もし椎間板ヘルニアなどの病気があった場合に、むやみに刺激を加えたことが致命傷になりかねないので、違和感を感じたら、獣医師に相談しましょう。

 

 

②腹部超音波検査

肝臓はやや白くなっていて、軽度の脂肪肝はありそうではありましたが、特記すべき所見は認めませんでした。

腎臓の大きさも左右対象で、左右共に腎臓の血流が弱いことがわかりました。

 

 

③血液検査

続いて血液検査です。

血液検査では、BUN >140mg/dL、 CRE 7.5 mg/dL、 C a 10.5mg/dL、IP >15.0mg/dL、 Na 162mEq/L、 K 3.0mEq/L、 Cl 117mEq/L、 SDMA 32μg/dL、 Hct 38.1%でした。

(※ここでは腎不全と相関性の高い数値のみ記載しています。)

 

 

④尿検査

比重 1.013、タンパク(−)

(※尿は翌日の診察で、その日の朝に採取してもらったものを使用しています。)

 

 

以上の検査結果から、腎不全ステージ4ということがわかりました。

 

今後の診療プラン

腎不全ステージ4でタンパク尿陰性ということなので、当院では内服薬2種類に併せて皮下点滴プランを組みました。

食欲が下がっていることもありますが、血液検査で腎臓の数値が飛んでいることを考えると、すぐに手放しはできないと考え、最初の3日間は朝・夜の皮下点滴で訪問し、3日後の検査でデータが安定してきたことと、食欲が上がってきて元気になってきたこともあり、1日1回の皮下点滴とさせていただきました。

また、この段階でご家族様だけで皮下点滴をお渡しも可能だったのですが、お父さんの出張と重なってしまってしまったため、帰宅までの2週間は毎日お伺いして実施し、戻られてから皮下点滴トレーニングを行い、お渡しという流れになりました。

 

・最初は1日2回の皮下点滴

・3日後の血液検査と尿検査で改善傾向を認め、1日1回の皮下点滴に変更

・1週間後の血液検査と尿検査でさらに改善傾向を認め、2日に1回の皮下点滴に変更

・1週間後の血液検査と尿検査でさらに改善傾向を認め、週2回の皮下点滴に変更

・1ヶ月に1回の血液検査と尿検査で安定しているため、プランを維持

 

 

まとめ

今回は、何よりお母さんの初動の速さが功を奏したと思います。

もう少し放っておくと、嘔吐が止まらなくなり、重度の貧血を起こし、また腎不全末期まで進行してしまい、皮下点滴では対応できず入院するか家で看取りを視野に入れての集中的なケアをしてあげるかの選択を迫られていたと思われます。

 

腎不全って腎臓の病気なのですが、腎臓の病気って進行性の病気なため、早期発見・早期治療が何より重要とされています。

気づきに対する対策としては定期健診なのですが、猫ちゃんという生き物である手前、そう簡単に検査に連れ出すことが難しく、結果動物病院離れを起こしてしまっている状況が多く見られます。

動物病院へ通院できるうちは、また連れ出せる性格の猫ちゃんであれば、定期的な検査をしてもらうようにしましょう。頻度は、年2回が目安です。さらに、10歳を超えてきたら、すこなくとも年4回(3ヶ月おき)は検査を受けさせてあげ、異常値が見つかったら早期から何ができるのかを獣医師と相談しましょう。

 

通院が難しい場合には、お近くの往診専門動物病院に、まずは相談してみましょう。

東京23区とその近郊であれば、私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室が全力でサポートさせていただきます。

 

 

ペットの緩和ケアと看取りのお話

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今後、もし慢性疾患など、治療による根治ではなく、症状や病状のコントロールのみと診断された場合、通院で今後も診てもらうか、在宅に切り替えるべきかを考える参考にしていただければと思います。

 

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腎不全の猫(最近ふらつくようになった)

“猫ちゃんは腎不全を患ってしまう”

 

という印象があります。

 

※毎回前置きになってしまうのですが、腎不全は診断名としては不適なのですが、一般的に使われている言葉ですので、web上ではなるべく腎不全に統一させて表記していますので、ご了承ください。※

 

しかし、猫ちゃんからすれば、一体何をきっかけに腎不全と気づいてもらえるのでしょうか?

 

定期健診の中で、たまたま測定して血液検査結果や尿検査結果などをみて気づくのでしょうか?

 

多くの猫ちゃんが動物病院に通院することを苦手としているという背景を考えると、定期的な健康診断の中で発覚するという、教科書的な理想の実現は難しいと思われます。

 

なら何から気づくのでしょうか?

 

答えは、「症状」からです。

 

症状?と言われると、少し抵抗を感じるかと思いますが、大切なのはなんとなく感じる“違和感”に素直に反応することです。

 

違和感を感じるためには、日常の普通を把握しておく必要がありますので、普段から食事内容や量、運動性やトイレ事情などを肌で感じておきましょう。

 

今回は、「最近ふらつくことが多くなった気がする」というお話から、腎不全が発覚した猫ちゃんのお話です。

 

ふらつく猫1.png

 

違和感に気づくきっかけ

東京中央区にお住まいの、三郎くん16歳、年齢からなのか動きも鈍く、たまにふらつくということを数ヶ月前から認めていたとのことでした。

特に寝起きに多いことから、年齢からくる変化であり、人間も高齢になればいきなり起き上がれないということは日常的によくあることですので、あまり気にしていなかったとのことでした。

ふらつきがある以外には、食事も摂るし、トイレだって粗相しないし、嘔吐も特別目立ってはないかなったとのことでした。

 

 

往診を予約したきっかけ

16歳の誕生日を迎え、ネットの記事で猫ちゃんが16歳になったら腎不全を発症するかもっていうのを見たらしく、安心のためにご連絡をいただいたとのことでした。

また、動物病院への通院も考えたのですが、お母さんたち自体がご高齢であることから、キャリーに入れて持ち歩ことが難しいと判断したため、往診を選ばれました。

 

問診内容

元気は普段と変わらず、食欲も旺盛で、排便や排尿にも問題はないとのことでした。

しかし、ふらつきはだんだん目立ってきたので「関節が痛いんだと思っていた」、とのことで伺いました。トイレの頻度に大きな変化はないとのことでした。

 

ポイント:“日常の緩徐的な変化は見逃されやすい”

ふらつきがいつ頃から始まったのかを伺うと、3ヶ月前くらいからとのことでしたが、もっと詳しく話を伺うと、本当にふらつきが始まったのは、おそらく2 週間程度前だということがわかりました。3ヶ月前は寝起きだけふらついていたのに対して、2週間ほど前から普通歩いていて転ぶことがあるとのことでしたので、おそらくこの時点で病気が変わったか、あるいは発症したのかと考えます。

 

 

一般身体検査・血液検査・腹部超音波検査・尿検査検査

①全身の状態チェック(一般身体検査)

削痩といって、高齢の猫ちゃんであったり、病気を抱えている猫ちゃんだったりすると、全盛期と比べて大きく痩せていることから、背骨のあたりが目立ってくる子が多くいます。しかし、三郎くんはそんな様子はなく、また手足に浮腫みもなければ足腰の関節に痛みを伴うこともありませんでした。

この年齢の猫ちゃんにしては、奇跡的に丈夫な骨格の持ち主だなと感心されます。

背中のお肉を少しつねって放し、皮膚の戻りをチェックする方法で脱水状態を確認するのですが、軽度に脱水がある程度で、そこまで明らかな脱水はなさそうでした。

 

②腹部超音波検査

肝臓はやや白くなっていて、軽度の脂肪肝はありそうではありましたが、猫ちゃんで高齢であれば、大体同じような所見ですので、あまり気にする必要はないと考えています。

腎臓の大きさも左右対象でしたが、左の腎臓の血流が弱かったことがわかり、ある日を境に、右の腎臓で頑張っていたんじゃないかと推測されました。

 

ポイント: “腎臓の機能は、左右2つ合わせた合計”

片方が機能0%であったとしても、もう片方が100%機能していれば、全体では50%です。ちなみに腎不全は腎臓の機能が残り25%未満にならないと数値として評価できないことを考えると、もしかすると見逃されてしまっているかもしれません。

 

③血液検査

続いて血液検査です。

血液検査では、BUN 104mg/dL、 CRE 4.8 mg/dL、 C a 9.2mg/dL、IP 7.5mg/dL、 Na 160mEq/L、 K 4.2mEq/L、 Cl 124mEq/L、 SDMA 20μg/dL、 Hct 20.1%でした。

(※ここでは腎不全と相関性の高い項目のみ記載しています。)

 

ポイント:“血液検査中は声をかけないでください”

三郎くんはずっしりした姿勢の持ち主であったということもあり、びっくりするくらい抵抗せずにすんなり採血に応じてくれました。押さえられることが非常に苦手なのが猫ちゃんという生き物ですので、この時ギャ〜ッて鳴くのですが、お母さんたちが必死に声をかけてくれることがあります。しかし、これはかえって感情を煽ってしまったり、またはお母さんたちも嫌なことをするグループの一人として認識されてしまう恐れがあります。

そのため、心を鬼にして離れて見守ってあげてください。

 

④尿検査

比重 1.014、タンパク(−)

(※尿は翌日の診察で、その日の朝に採取してもらったものを使用しています。)

 

ポイント:“尿検査はできる限り新鮮尿で”

尿検査には、尿の採取が必要なのですが、採取方法として自然排尿または医療的な採尿に分かれます。医療的な処置であれば、圧迫排尿、カテーテル採尿、穿刺尿がありますが、どうしても急ぎ検査しなければいけない場合を除き、往診では自然排尿で採取した尿で検査することをおすすめしています。猫ちゃんはストレスに弱い生き物です。できる限り、ストレスが少ない方を選んでいきましょう!ちなみに、細菌感染の判定は、自然排尿の尿では可となってしまいますので、どんな尿がいいのかを獣医師と相談しましょう。

 

以上の検査結果から、腎不全ステージ3ということがわかりました。

 

今後の診療プラン

腎不全ステージ3タンパク尿陰性ということなので、当院では内服薬2種類に併せて皮下点滴プランを組みました。ご飯も食べれているということと、ふらつき以外に大きな支障が生活に出ていないことを考慮して、皮下点滴は週2回程度として、1ヶ月後に再検査としました。

その結果、血液検査結果上、優位に改善を認め、三郎くんのふらつきがなくなったということでした。

 

 

まとめ

単なるふらつきであっても、ふらつくタイミングや頻度、その度合いなどから、高齢猫ちゃんの単なる関節炎などの老齢性変化だけでなく、そこには腎不全が隠れているかもしれません。

 

日常の中に潜む何気ない違和感、あなたは見逃していませんか?

 

ペットの緩和ケアと看取りのお話

ペットの緩和ケアやターミナルケアをお考えのご家族様向けに参考ページを作成しました。

今後、もし慢性疾患など、治療による根治ではなく、症状や病状のコントロールのみと診断された場合、通院で今後も診てもらうか、在宅に切り替えるべきかを考える参考にしていただければと思います。

 

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