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「心臓血管肉腫」という病気をご存知でしょうか。

 

血管肉腫は血管内皮由来の細胞が腫瘍化することで発生する悪性腫瘍です。

 

心臓にできる腫瘍の多くが血管肉腫であり、「運動量が減った」「呼吸が苦しそう」「顔色が白っぽい」「急に立てなくなった」「失神した」などの所見から発覚することが多いです。

 

この病気になると、心臓と心臓を覆う膜(心嚢膜)の間に液体が貯留し、心臓を外からギュッと握られたような、胸部を強く圧迫されたような感覚になる「心タンポナーデ」を発症することがあります。

 

解除する方法は、この貯まってしまった液体を抜去しなければいけません。

 

そして、この抜去には胸郭に針を刺さなければいかないため痛みを伴い、そして胸水抜去と比べて危険度は高くなります。

 

心臓の血管肉腫を抱えた場合には、外科手術をしても生存率はかなり低いことから、貯留した場合に繰り返し抜去するという選択肢を選ばれる方が多い印象があります。

 

今回ご紹介する症例は、心臓血管肉腫を抱えたゴールデンレトリバーのGENちゃんです。

 

2023年11月2日に急に立てなくなってしまったことを主訴に頑張って通院したところ、心嚢水の貯留と心臓腫瘍が見つかり、在宅終末期ケアに切り替え、11月24日の朝、お母さんの腕の中で眠りにつきました。

 

GENちゃんの在宅終末期ケアについて、お話させていただきます。

①.jpg

 

 

今までの経緯

人が大好きなゴールデンレトリバーのGENちゃんは、毎月お母さんと一緒に動物病院へ通院していました。

 

倒れるほんの数日前の2023年10月29日は、河川敷を自由に走り回って遊んでいたほど元気でした。

 

11月1日の夕方もいつも通り散歩に行くことができていました。しかし、この日の夕食時から異変が起きました。

 

食欲旺盛なGENちゃんが、ご飯皿を前に、一瞬だけ固まったとのことでした。ただ、その後普通に平らげてくれたので、安心していましたが、その夜寝ようと横になった時に明らかにぐったりしたため、夜間救急で動物病院に飛び込みました。

 

動物病院での検査で、心臓腫瘍心嚢水貯留が確認され、心タンポナーデに伴う症状と考えられ、心嚢水抜去を行いました。

 

この時、心嚢水が60mlほど抜けたとのことでした。

 

年齢や病気、生活環境など考慮し、抗がん剤を攻めていくよりも、在宅で緩和ケアをしてあげることを望まれ、当院までご連絡いただきました。

 

初診(ペットの在宅終末期ケア1日目)

動物病院での心嚢水抜去後、元気ないまま過ごしていたGENちゃんでしたが、徐々に元気を取り戻してきて、この日は15分ほどですがお散歩にもいけたとのことでした。

 

食欲も上がってきて、この日は遂に完食するほどまでに回復していました。

 

少し軟便気味だったので下痢止めを継続的に飲ませていただき、先日の抜去以降、やや頻尿気味とのことでした。

 

呼吸状態も安定しており、全身状態としては良好でした。

 

超音波検査のみを実施し、液体の貯留がないことを確認し、医薬品8種類の内服薬でのコントロールとしました。

 

余命は2週間といわれており、11月17日がその日です。

 

この残された時間を、いかにGENちゃんにとって、そしてご家族様にとって心穏やかに過ごせるように、在宅終末期ケアのプランを組んでいきます。

②.png

 

急変時のアクションプラン

終末期に急変はつきものであり、今状態が安定していたとしても、数分後はわかりません。

 

そして、その時すぐ駆けつけることができる救急車は動物医療には存在せず、また私たちが駆けつけることができる保証もありません。

 

ペットの在宅終末期ケアは、いわゆる「在宅医療」であることから、救急でのお伺いは叶わないことが多いです。

 

診療時間外では電話も繋がらないため、その時には目の前で起きている事象に対して、ご家族様自身で判断し、行動しなければいけません。

 

選択肢は大きく分けて2つ。

 

1つは「動物病院に飛び込む」、そしてもう一つは「家でそのまま看取る」です。

 

前者の場合には、通院中に、到着して待ち時間に、検査・処置中に、帰宅中に旅立ってしまうかもしれません。

 

また、安定して帰宅できたとしても、また同じ状態を繰り返します。

 

・元気だったのに急に...

・持病がわかっており急変した

・事故

 

回復後、また日常が戻ってくることを期待できるのであれば、緊急で通院させると思います。

 

ただ終末期では、緊急での通院の真逆に存在する、家で看取るという選択肢が多く選ばれている印象です。

 

これは決して諦めたというわけではなく、もう十分頑張ったと賞賛する気持ちで、強い覚悟を持って、家で看取る選択を選ばれています。

 

そして、「通院しない」=「何もできない」ではない、ということも覚えておいてください。

 

GENちゃんの場合には、ガクッと下がった時に医薬品を飲ませられなくなること、呼吸が苦しくなることが想定されました。

 

事前準備として酸素発生装置を準備し、大型犬であることもあり、直接吹きかけによる酸素運用を提案させていただきました。

 

なお、未使用であるうちは1台のみとし、使用開始と同時に追加1台とすることとしました。

 

酸素環境の構築は、犬猫の在宅終末期ケアにとって重要項目の1つです。

 

GENちゃんの最後の時間を、少しでも苦しくないように過ごせるように、これで酸素環境の完成です。

 

内服ができない時に使用できる皮下点滴セットも組んでいき、ガクッと下がっても医薬品を投与できる準備は完了です。

 

2023年11月5日、GENちゃんの在宅終末期ケアが始まりました。

 

急変:ペットの在宅終末期ケア6日目

診察の度に、心嚢水、胸水などの貯留があるのかを評価していました。

 

前日の診察まで貯留はなく、一般状態と言われる元気、食欲、排便、排尿の全てにおいて経過良好でした。

 

なんなら、ご飯をガツガツ食べる姿まで見せてくれ、本当に強い子ですと話していました。

 

しかし、翌日の11月10日に急変しました。

 

直前までキッチンでご飯を食べていたのに、違和感を感じたと思ったら、急に倒れてしまい、そのまま立てなくなりました。

 

診察にて心嚢水が溜まっていることを確認し、抜去することになりました。

 

往診での心嚢水抜去は腹水や胸水と比べ危険性が高く、往診で実施してもらうことは通常の往診専門動物病院では難しいかもしれません。

 

実施する獣医師と、保定、外回りを担当する愛玩動物看護師が必要になるため、少なくても2人以上の愛玩動物看護師の存在が求められると考えています。

 

この心嚢水抜去は、胸郭に針を刺すため、腹水抜去と比べて痛いんです。

 

通常であれば、鎮静処置を施すレベルなのに、GENちゃんはじっと耐えてくれました。

 

刺す瞬間だけピクッとしますが、取り乱すこともなく、横になったまま受け入れてくれていました。

 

この日は190ml抜去することができました。徐々に増えてきました。

 

抜去後にリビングで「もう立てないかもしれない」と話していたところ、キッチンから元気を取り戻したGENちゃんがスタスタ歩いてきました!

 

心嚢水が貯留すると、心臓を握られるような痛みと苦しさがあり、血流が阻害されるので顔色は真っ白に、そして苦しくなります。

 

抜去してこの圧迫を解除すると、見る見るうちに可視粘膜と言われる歯茎や舌の赤みが戻ってきます。

 

この日から13日間、安定しながら過ごすことができ、11月17日を超えることができ、この時点ではすごい食欲と元気で、散歩にも行ける、いつものGENちゃんでした。

 

③.png

 

急変:ペットの在宅終末期ケア18日目

また急に、ばたっと倒れてしまい、立ち上がれなくなりました。

 

この日も同じように心嚢水が貯留しており、抜去することで回復すると思っていました。

 

しかし、予想は違っていました。

 

抜去しても抜去しても、どんどん溜まっていくのを確認しました。

 

300mlを超えた段階で、「もうやめましょう」とお話しさせていただき、針を抜きました。

 

今夜お別れがやってくる可能性が高いため、最後に会わせて上げたい方を集めていただくようお願いします。

 

もし呼吸があれば、翌早朝にお伺い予定としました。

 

④.png

 

最後の日:ペットの在宅終末期ケア19日目

朝になり、連絡がなかったのでまだ頑張ってくれていると思い、みんなで訪問しました。

 

すると、頑張って全身で呼吸をするGENちゃんと、そんなGENちゃんをずっとそばで見守ってくれたお母さんがいました。

 

昨日の診察終了後からきっと今の今まで、酸素マスクで酸素を嗅がせてあげていたのだと感じました。

 

エコーで心嚢水を確認すると、今まで以上に溜まっており、顔面蒼白、意識も薄くなっていました。

 

実施するかどうか、想像できないほどたくさんの葛藤があったと思います。

 

そして、こんなに苦しいのなら、もう繰り返させずにこのまま旅立たせてあげたいというお母さんの覚悟を受け、抜去を中止としました。

 

せめて最後に安定剤だけでも打ってあげようと準備し打とうとした瞬間、その時がやってきました。

 

死戦期呼吸です。

 

結果何もせず、全ての手をとめ、今まさに旅立とうとしていることをお伝えし、反応の全てが停止するまで抱きしめていただきました。

 

死戦期呼吸が始まって5分ほどで、体の全ての反応が停止しました。

 

最後は本当に眠るように、ただゆっくりとした時間の流れる、そんな時間でした。

 

GENちゃんのご冥福を心からお祈り申し上げます。

 

わんにゃん保健室

江本宏平、スタッフ一同

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家でペットを看取るということは、決して楽なことではないです。

 

刻一刻と変化するペットの症状を把握し、どう解釈し、何をすべきなのか。

 

日中ならまだしも、この変化は24時間起こります。

 

もし発作が始まったらどうしよう。

 

急に呼吸が苦しそうになったらどうしよう。

 

吐いてしまったら、吐血してしまったら、下血してしまったら。

 

そんな不安を抱えながら、1分1秒を共に過ごさなければいけません。

 

もしそれが日中で、かかりつけの動物病院が診療時間内であれば、電話して相談するkとができるでしょう。

 

ただ、この変化は24時間起こります。

 

そうなった時、あなたは何ができますか?

 

そうなる前に、あなたは何を準備しておきたいですか?

 

今回お話しする猫ちゃんは、念入りな事前準備を行い、酸素環境をバッチリ整え、在宅終末期ケア(ターミナルケア)を走り抜きました。

 

今回と次回の2つで、そのターミナルケアを事細かに描かせていただきます。

 

2023年7月9日に当院と出会い、約3ヶ月間にわたる終末期ケアの末、2023年10月3日、家族が見守る中、静かに眠りにつきました。

 

【2日目(ペット在宅終末期ケア)】

診療の時に皮下点滴を実施したところ、その後は雰囲気的に楽そうにしていたとのことでした。抗不安薬を少し使用してあげることにしたのが、功を奏したのかもしれませんね。

 

少し軟便気味になったこともあり、お薬の種類を変更させてもらい、各種頓服を準備していきました。

 

内服が難しい犬猫、特に猫ちゃんでは、終末期ケア(ターミナルケア)のステージで内服で頑張るという選択肢はないと思ったほうがいいです。

 

この場合、内服ができないからと諦めるのではなく、在宅での皮下点滴をできるようになることが求められます。

 

点滴と言っても何十分も時間がかかるようなものではなく、おおよそ5分未満、早ければものの数秒ほどということもあります。

 

脱水補正を目的に皮下点滴をする場合はある程度の時間がかかりますが、投薬だけを目的とした場合には、ほんの数秒〜30秒以内くらいですので、是非挑戦してあげてください。

 

お母さんの日誌には、ももたろうちゃんのほぼほぼ24時間の動きが全て記載されていました。

 

その日誌の内容からも、ももたろうちゃんが頑張っている姿が手に取るようにわかりました。

 

そして何より、お母さんが最後まで体力も精神力も保てるのかが心配になるほどでしたが、お母さんは最後までやり抜きました。

 

続きます。

 

 

【5日目(ペット在宅終末期ケア)】

嘔吐が見られたこともあり、嘔吐を止める薬の量を増やすことで調整しました。

 

嘔吐を止める薬は、大きく分けて気持ち悪さを緩和させるものと、吐くこと自体を抑制するものに分かれます。

 

状況次第ではありますが、どちらか一方だけでなく、併用することで相乗効果を図ることが、犬猫の在宅終末期ケア(ターミナルケア)では多々あります。

 

下痢が止まったので、下痢止めは以後頓服薬として準備しておき、軟便傾向になった時に、次の皮下点滴のタイミングで一緒に使用してもらうようにお伝えさせていただきました。

 

また、ご飯も食べたそうにするするけど、口に入れるとひどい咳をしてしまう状況なため、食欲は尊重しつつも、無理に食欲を出させることはしない方針としました。

 

食欲を出させるために使用される医薬品は、錠剤タイプもあれば、軟膏タイプもあります。

 

軟膏タイプのものであれば、個人輸入することができるため、診察しないで飼い主様個人の判断で購入し、使用してしまっている事例を多く見受けます。

 

ただ、本当にそれをすべきかどうかは、ペットの状態で大きく違いが生じます。

 

無闇に使用することで、かえって苦しめてしまうことが十分起こり得ますので、個人輸入するとしても、必ず獣医師の判断を仰ぐようにしてください。

 

当院では、他院処方や個人輸入医薬品医対する説明は、あまりしないようにしています。

 

他院の場合、処方決定した獣医師がなぜそれをその用法用量で処方したのかがわからないため、無責任なことを言えないという背景があります。

 

また、個人輸入のものに関しては、その医薬品が正規品なのかの保証を誰もしてくれないので、求めたい投与量にズレが出てしまうことを懸念します。そのため、購入した場合には、全部自己責任になることをご理解ください。

 

当院の在宅終末期ケア(ターミナルケア)では、できる限りご家族様に寄り添った診療プランをご提案させていただきます。

 

上記の医薬品処方に関する注意事項はお伝えした上で、ただもしそれがこう言った用途であれば、これが正規品であれば、今のこの子に対してはこのように使用するのを推奨します、と言ったことはアドバイスさせていただいています。

 

最良の診療プランはご家族様ごとで異なるため、都度じっくりとヒヤリングさせていただきながら、方針を柔軟に決めています。

 

【9日目(ペット在宅終末期ケア)】

皮下点滴の時、いつもより痛そうにしていたとのことでした。

 

もしかすると、やや便に血が混じるというお話があったことから、止血剤を処方していました。

 

これは経験的な話ですが、色のついた医薬品はしみる傾向にあると思います。

 

また、pHが高いものはしみるようです。

 

とはいえ、必要であればどうにか痛みを紛らわせるような手法を相談しながら頑張っていただくこともあれば、その反応にペットがひどく反応してしまう場合には、削除することもあります。

 

ペットによっては、特別反応せずに受け入れてくれる場合も多々あるため、その反応すら個性として考えることが、緩和ケア、特に終末期ケアでは必要となってきます。

 

問診の時に、事細かに全部お伺いさせてくださいね^^

 

全身状態から判断し、この日から止血剤をカットすることとしました。

 

また、初診から1週間ほど経過したので、再度血液検査と超音波検査を実施することとしました。

 

平常時から呼吸状態が悪い子に対し検査を入れる場合には、何よりも呼吸管理が重要です。

 

酸素コントロールには、当院では酸素ボンベを常備しておりますので、ボンベを解放することで酸素濃度をあげて呼吸悪化を防いでいます。

 

なお、ここで重要なもう一つのことが、保定です。

 

保定って簡単に見えるかもしれませんが、かなり高度な技術であることを知ってください。

 

保定の仕方一つで、その場で呼吸を止めてしまうこともあれば、医療事故を引き起こしてしまうこともあります。

 

よくご家族様に保定をお願いする獣医師がいるかと思いますが、状態が悪い時のペットの保定をお願いされた場合には、かなり慎重に対応することを忘れないでください。

 

「どこをどのくらいの力で抑えればいいのか」

「どこは押さえちゃいけないのか」

 

この2つだけは明確にしておきましょう。

 

なぜここで保定を取り上げたかというと、ももたろうちゃんは保定されるのが大嫌いで、その都度容易にチアノーゼを発症してしまうんです。

 

そのため、保定には常時2人を揃え、酸素ボンベの管理はお母さんにお願いすることも想定しておかなければいけませんでした。

 

この日は愛玩動物看護師が2人、動物看護スタッフが1人を揃えて往診に向かったので、全ての検査を安心して実施することができました。

 

在宅医療を求める状況にあるペットの多くが、すでに終末期ケア(ターミナルケア)のステージにいることが多いです。

 

往診専門動物病院のほとんどが、残念なことに獣医師一人で運営されていることがほとんどなため、必ず保定してくれる看護スタッフの動向が可能かを聞いてください。

 

もしかすると、知り合いの動物病院から看護スタッフを派遣してもらえるかもしれないので、諦める前に、同行してもらうことが可能かどうかを相談することをお勧めします。

 

検査の時は、状態や性格に応じてネッカー(カラー)を装着するのですが、ももたろうちゃんの首の状態(下顎リンパ節腫瘍)もあり、首のところは広がりが持てるように遊びを持たせた作りがベストだと話し、次回再度調整することとしました。

 

【15日目(ペット在宅終末期ケア)】

今日はネッカー(エリザベスカラー)の再調整を予定していたのですが、なんとお母さんがももたろうちゃん専用のカラーを作ってくれました!

 

 

ももたろう①③s.jpg

 

 

すごいですね!愛のパワーですね^^

 

設計はバッチリなので、あとは装着するだけ...なのに...

 

前肢を器用に使って、カラーを外してしまいました。。。

 

この仕様でもダメならもう仕方ないので、カラーなしで検査に臨むことで検査指針立てていきました。

 

長くなりすぎたので、続きは次回です^^

 

猫ちゃんの終末期ケアは、投薬とご飯選びの勝負です。

 

1つがダメでも次の手を考えておくことが大切です。

 

これって決めてずっとそのまま進んでくれるなんてことはあり得ません。

 

状態に応じ、都度相談しながら一緒にプランを考えていきましょう。

 

次回は状態低下に伴う処方プラン変更のお話です^^

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終末期を迎えた犬猫に対して、「(治療に関しては)何もできないので、そのまま看取ってください」と言ってしまう獣医師がいます。

 

この言葉には、「治療の手段がない」という思いが強く隠れていますが、言葉足らずで伝わってしまった結果、とても冷たく伝わってしまった典型的なケースであると考えています。

 

かかりつけの獣医師からの心無い言葉で傷つく飼い主様はたくさんいます。

 

ただ、もし今受け入れられる心の余裕がございましたら、その背景には、全ての命を平等に助けたいと考え、毎日死に物狂いで働いている先生の言葉足らずを許してあげてください。

 

今回ご紹介するのは、通院から往診に切り替え、しかしその往診が動物病院のオプションだったことから、在宅医療に特化した当院に転院された、頸部腫瘍を抱える猫のももたろうちゃんのお話です。

 

2023年7月9日に当院と出会い、約3ヶ月間にわたる終末期ケアの末、2023年10月3日、家族が見守る中、静かに眠りにつきました。

 

 

【初診時のももたろうちゃん】

食欲はまだあったのですが、飲み込むのが難しい病態なため、食皿の前でじーっと見つめて考える仕草が胸に刺さるとのことでした。

 

しばらく考えて一口食べては、ゼェゼェしてやめて、また考えては一口食べて、を繰り返しているとのことでした。

 

ご飯はドライフードをすり潰し、a/d缶などのウェットフードと混ぜているとのことでした。お皿が汚れないよう、頻繁に交換してあげているとのことでした。

 

ウェットはいろんな種類のものを準備し、騙し騙しローテーションしているとのことでした。(猫ちゃんあるあるですね^^)

 

あまり動けなくなってきたが、もともと体も大きくあまり動かないタイプとのことで、運動量の変化は大きく感じていないとのことでした。

 

それでも知らない私たちが触ると怒る仕草を見せて抵抗しましたが、頑張って血液検査、超音波検査をさせてくれました。

ももたろう①.jpeg

 

 

常備薬としてセレニアとプリンペラン、レメロンが準備されていましたが、これらも全て別の医薬品、剤形変更にて対応し、ももたろうちゃんにあった常備薬として準備させていただきました。

 

飲み込むのが辛い猫ちゃんに、食欲増進剤を出し続けるのはかわいそうかなと思い、一応別の薬で代用できるように準備はするが、使用するかどうかはお任せですとお伝えしました。

 

皮下点滴はビタミン入りのソルラクト輸液を2023年5月から1日1回180mlで投与していたので、1日2回90mlずつと分けることで、本人の負担だけでなく、実施するご家族様の負担を軽減することができました。

 

ご家族様ごとで何が負担なのかは異なります。

 

その負担な箇所を把握し改善案を提示すること、そしてそれを実施できるようにお手伝いすることが、ペットの在宅終末期ケアでは必須となってきます。

 

腫瘍に対してステロイドを使用しない理由を伺ったところ、以前に医原性糖尿病を発症したことがあったことから、かかりつけ獣医師から、ももたろうちゃんにはステロイドを使用しないと言われてしまったため、今回も出してもらえなかったとのことでした。

 

インスリン療法によって糖尿病を克服できたものの、その後も再発を繰り返していたとのことでした。

 

初診時に行った検査結果と日を追うごとに変化するももたろうちゃんの病状に合わせた処方を都度変更しながら調整していきます。

 

この日から、ももたろうちゃんの在宅終末期ケアが始まりました。

 

次回はももたろうちゃんの終末期ケア(ターミナルケア)の様子をなるべく鮮明にお伝えしていこうと思います。

 

もしお近くで、通院が難しいとされる犬猫と暮らすご家族様がいらっしゃいましたら、往診専門動物病院があることを教えてあげてください。

 

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最後の時間を、皆さんはどのように過ごさせてあげたいですか?

 

もし在宅での緩和ケア、在宅での終末期ケアを希望されるのであれば、早めに往診専門動物病院を探しておきましょう。

 

今回ご紹介するのは、通院から往診に切り替え、しかしその往診が動物病院のオプションだったことから、在宅医療に特化した当院に転院された、頸部腫瘍を抱える猫のももたろうちゃんのお話です。

 

2023年7月9日に当院と出会い、約3ヶ月間にわたる終末期ケアの末、2023年10月3日、家族が見守る中、静かに眠りにつきました。

 

【初診時の問診】

もともとは通院が苦手であり、往診専門動物病院で診てもらっていたが、その獣医師の方で施設を有する通常の動物病院を開設してしまったため、今までみたいに往診がしづらくなってしまったとのことでした。

 

ももたろう②.jpg

 

そこで、終末期を迎えるにあたり、在宅での終末期ケアを得意とする往診専門動物病院を再度探され、当院を見つけてくれました。

 

既往歴には、膵炎、腎臓病、医原性糖尿病、頸部腫瘍がありました。

 

2022年12月頃に左下顎のあたりに小さなしこりを見つけ、それが半年くらいで大きくなってきたとのことでした。

 

当時にかかりつけ獣医師の話だと、今から手術をするには、ももたろうちゃん腎機能から考えると麻酔のリスクが高いことと、大きな範囲を切除するため大手術になることを示唆されたとのことでした。

 

動物病院を開設されてからの先生は少し変わってしまったところもあり、言葉の節々にあしらうような雰囲気が醸し出されおり、それによってご家族様が傷ついてしまったとのことでした。

 

ご家族様には先代猫で経験した辛い記憶がありました。

 

悪性腫瘍で入院させて治療を受けさせた結果、退院後1週間ほどで亡くなってしまったとのことでした。

 

お見舞いに行く度に、ケージの中で辛そうにご家族様を見つめていたとのこと。

 

最後の朝はしゃっくりして、痙攣を起こして旅立ったとのことでした。

 

最後どうなるのか、夜間はどうしたらいいのかなどを相談して見たところ「自分で探せば?」と言われ、内服薬が飲めなかったことを伝えると「じゃー飲ませないでいい」、って突き放されました。

 

獣医師の多くが、治療に関しては知識が豊富でも、終末期に悩むご家族様に寄り添った提案をし続けてくれるのは、ごく少数であると感じています。

 

「治療ができないなら家で看取ってください」ではなく、それ以外にもまだこんな方法もあるよって提案し続け、ご家族様の心の変化に柔軟に対応しながら最後まで寄り添っていくのが終末期ケアです。

 

かかりつけ獣医師も意識せずに放ってしまった言葉だと思いますが、きっと動物病院での入院管理に手術、基本夜間の往診となれば、精神的に滅入ってしまって当然だと思います。

 

ペットの全ての悩みに応えたい一心で突き進まれた末、結果としてその皺寄せがどこかに出てしまうという場面だったのだと思いました。

 

往診専門動物病院は、本来は簡易的な処置や、動物病院の休診に伴うスポット的な役割を担うのではなく、在宅医療の訪問医療に特化すべきです。今よりももっと、慢性疾患の緩和ケアや、余命を見据えた終末期ケアこそ、ペットを飼っているご家族様が求める最大の診療分野であると考えています。

 

多くの往診専門動物病院が自身のライフワークバランスを考えた運営を行なっています。

 

ライフワークバランス考えた往診専門動物病院ではなく、ちゃんとご家族様に寄り添える体制の整った往診専門動物病院が増えてくれることを切に願います。

 

ももたろうちゃんは、手術を希望しませんでした。

 

ペットの在宅終末期ケアでは、通常の問診だけでなく、もっとパーソナルなこと、生活環境を把握するために十分な情報など、多岐にわたって把握しなければいけません。

 

「内服が苦手なこと」

「洋服やサポーターを身につけるのが嫌いなこと」

「いつも奥の部屋とトイレのあたりを行き来しながら生活していること」

「お父さんが晩酌の時に缶を開ける音でリビングに来ておつまみをねだること」

「お母さんがほぼ24時間体制で見ていてくれること」

 

まだまだあります。

 

ももたろうちゃんがどうやってこの家族と出会い、どんな生活をしてきたのか。

 

家族として何をどこまでしてあげたいのか。

 

現実問題として、何ができるのか。

 

獣医学として絶対に正しいと言えなくとも、大きく間違っていなければ、ご家族様の気持ちを形にしてあげたいと考えています。

 

もしそれで、ご家族様の心が落ち着くのであれば、結果として、その先にいるペットの心も落ち着くであろうと信じています。

 

在宅での皮下点滴方法も確認したところ、複雑な手法を指示されていましたので、全て変更させていただきました。

 

ももたろう①③.jpg

 

獣医師によって、皮下点滴一つとっても、その方法が異なる場合があります。

 

何度もシリンジ(注射器)を交換しながら、ご家族様だけで皮下点滴をしてもらうには、少し煩雑すぎるかなと感じています。

 

付け替えの度に漏れてしまったり、気泡が入ってしまったり、その刺激でペットが動いてしまったりなど、在宅での皮下点滴の運用方法としてはやさしくないです。

 

獣医師であればその運用は簡単ですが、ご家族様にとってはそうではないことを理解して処方しなければいけないと思っています。

 

全体的なお話を伺い、いよいよももたろうちゃんの今の状態について診ていきました。

 

このように、初診時にはペットの状態だけでなく、ご家族様の悩みがどこにあるのか、生活環境的にどこまで対応できそうかなどを想像しながら、さまざまなお話を伺っていきます。

 

その中で、ここはこんなことができるかも、ここはどうしようもない、などを少しずつ明確にしながら、終末期をご家族様と一緒に歩んでいきます。

 

ペットの在宅終末期ケアという考え方は、ペットと暮らすご家族様にとって必要となる可能性が高いです。

 

最後まで入院治療ではなく、家の中で余生をすごさせてあげたいとお考えのご家族様は、ペットがぐったりする前に在宅医療プランを一緒に作っていきましょう。

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急に愛猫がふらついたら、皆さんは何を疑いますか?

 

●もう高齢だからふらついただけだろう

●腰が痛いのかな

●足が痛いのかな

●爪が伸びてて歩きづらいのかな

●足裏の毛で滑っただけかな

 

動物病院への通院を苦にしない猫ちゃんであれば、すぐに通院して検査してもらうという選択ができると思いますが、多くの猫ちゃんはキャリーに入ることすら容易ではありません。

 

そのため、ご家族様判断で様子見を選択しがちです。

 

しかしこのふらつきには、実は怖い病気が潜んでいて、これから暴れ出すかもしれないという予兆になる可能性があることを知っておいてください。

 

今回ご紹介する症例は、ふらつきを様子見をした結果、1ヶ月ほどで食欲がなくなり、呼吸が一気に悪なったことをきっかけに往診のご連絡をいただき、ギリギリ投薬が間に合ったため状態が安定し、緩和ケアに入ることができた猫ちゃんです。

 

原因は甲状腺機能亢進症で、それに伴う心臓病の発症と増悪。緩和ケア、ターミナルケアと1年5ヶ月に渡る在宅医療の末、最後は家族が寝静まった夜のこと、音を立てずに静かに旅立ちました。

 

もし初診の時にもう少し様子を見ていたら、きっと数日後には旅立っていたと思います。

 

往診専門動物病院は、ご家族様が最後の時間をご自宅で最愛のペットとどう過ごしていくのかを、医療面だけでなく精神面や生活面からサポートしていきます。

 

通常の診察ではお伺いできない事細かな日常のことの中に、緩和ケアのヒントが隠されていることがあります。

 

診察時間をゆっくり時間をとって、全部私たちに教えてください。

 

一緒に愛犬、愛猫の最後の時間を、どこでどんな風に過ごさせたいのか、考えていきましょう。

 

今回紹介する症例は、14歳の去勢雄、猫丸ちゃんについてです。

 

2022年1月6日に当院を食欲廃絶と呼吸促迫を主訴に受診し、甲状腺機能亢進症に伴う心筋症の併発と判断され緩和ケアを開始。2023年4月3日からターミナルケアに移行し、2023年6月1日に大好きだったご自宅のリビングの大きな窓の下で、静かに眠りにつきました。

 

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【初診】

猫丸ちゃんはとても人懐こく、太々しい表情がとても可愛い男の子でした。

 

猫丸ちゃんのご家族様も、この表情がなんとも言えないくらい愛らしいと、よく診察で話していました。

 

最初に出会った時は本当に苦しそうで、大きくお腹を動かす呼吸をしながら、少し歩くと開口呼吸してしまうような状態でした。

 

今までの経緯を伺うと、最初のワクチン接種と去勢手術をきっかけに、普段はおとなしい性格の猫丸ちゃんが、キャリーを見せた瞬間に豹変してしまう姿を見て以来、動物病院への通院は断念したとのことでした。

 

初診時は明らかに呼吸状態が悪いことから、超音波検査のみ、しっかりと酸素管理をしながら、呼吸状態に細心の注意を払い、獣医師1人と動物看護師2人で臨みました。

 

胸水、腹水ともに貯留を認めないこと、また多飲多尿などの症状がないことからも、所見でおそらく甲状腺機能亢進症が隠れていると感じました。

 

ただ、ホルモン系の疾患は採血である程度判断がつきますが、採血なくして治療を開始するにはあまりにも博打過ぎてしまうため、まずは対症療法を行い、在宅酸素管理環境を徹底することとしました。

 

酸素発生装置2台、酸素ボンベ完備の状態を作り、安定させる処置だけを行い、翌日の再診としました。

 

【再診】

昨日と比べて格段と状態が上がってきており、運動をしても開口呼吸をしないところまで改善を認めました。

 

やっぱり生き物は、「水」と「酸素」が重要なんだと感じさせられる現場でした。

 

状態も安定したことから、血液検査を実施し、甲状腺機能亢進症、心臓病の併発を確認しました。

 

甲状腺機能亢進症をコントロールしてあげることで、猫丸ちゃんはみるみる回復していき、1週間ほどで状態が上がり、2週間後の再診では通常通りの生活ができるまで改善することができました。

 

在宅酸素環境を一旦解除し、また必要な時に同じように運用できるように、ご自宅での酸素運用の流れをメモしてお渡しさせていただきました。

 

甲状腺機能亢進症の症例では、薬用量の変更を伴う場合には2週間後、伴わない場合には1ヶ月後、さらに安定していれば以降3ヶ月ごとの検診を、当院の在宅医療では目安としています。

 

採血することが猫にとって負担であることはもちろんですが、それによって適当な医薬品の選択及び生活環境の変更ができるならば、天秤にかけ、実施してあげることを検討してあげたいと考えています。

 

血液検査、尿検査、超音波検査、便検査など、在宅医療でも専門検査機関と連携していることが多いため、ご自宅にいながらも、愛犬、愛猫に適切な医療を届けてあげることが可能です。

 

また、もし測定することで評価でき、コントロールすることで今の生活が楽になるのであれば、この子たちのためにも、まずは一度往診専門動物病院までお問い合わせください。

 

動物病院へ通院ができるのであれば通院を優先し、もし難しい場合には、諦める前に往診専門動物病院へ相談しましょう。

 

猫丸ちゃんは、その後も安定した生活を過ごせていました。

 

2022年1月6日に当院を受診し、1月7日に検査を行い、1月8日から甲状腺機能亢進症の治療及び心臓病の緩和ケアを開始。

 

2023年4月に入ると少しずつ体調不良を認め、腎臓の数値が上がってきたことと、心臓の数値が上がってきたことから酸素環境の再設置を行い、日常は大気中で過ごし、苦しい時のみ吹きかけ、または酸素室管理としました。

 

2023年5月28日からは、基本的には酸素室内で管理となっていましたが、酸素チューブを駆使することで、酸素管理されながらもリビングで一緒に過ごすことができるような環境を構築して過ごすことができました。

 

2023年5月31日の朝に、お母さんの手からマグロを少し食べてくれ、少し状態が上がってくるかもと思った夜中、ちょうど日付が回った頃に、静かに眠りにつきました。

 

最後はご家族様が寝落ちしてしまった、ほんの10分くらいのことだったとのことでした。

 

猫丸ちゃんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。

 

わんにゃん保健室 スタッフ一同

 

【まとめ】

高齢になった犬猫の症状を、一過性の症状だ、いつものだから放っておけば治るなど、安易に判断しないほうがいいです。

 

若齢の頃は、大体の症状が3日もすれば消えると言われればそうかもしれませんが、高齢期では3日待てば、その時間でどんどん衰弱していってしまいます。

 

いつから高齢期なのか、という質問があれば、それは「運動機能や生理機能が下がった時」からです。

 

●下痢しない子が下痢しやすくなった

●食事の量が減ってきた

●ソファーに飛び乗らなくなった

●鳴き声が変わった

●吐く頻度が増えた

●よく水を飲む

●トイレによくいく

●おしっこの量が増えた

 

あげればキリがないですが、何かしらの体調不良のサインを見逃さないであげましょう。

 

全てはご家族様次第です。

 

不調のサインを受け取り、僕ら獣医師にパスしてください。

 

動物病院への通院が難しい場合には、諦める前に、必ず往診専門動物病院までご連絡ください。

 

当院は、東京23区を中心に、東京都下、千葉、埼玉、神奈川まで往診しています。

 

お近くで、通院ができなくて困っている犬猫と暮らすご家族様がいらっしゃいましたら、往診専門動物病院の存在を教えてあげてください。

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猫の乳腺腫瘍の多くは悪性です。

 

乳腺腫瘍に関しての記事はたくさんweb上に溢れていますので、もし犬猫の乳腺腫瘍に関する治療方法や外科の術式、抗がん剤の話や余命の話などは、是非そちらを探してお読みいただければと思います。

 

私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、病気を抱えたが、手術や抗がん剤などの攻めた治療を望みたくはないが、せめて残された時間を少しでも緩和的に過ごさせてあげたいとお考えのご家族様のお力になれます。

 

過去にも、乳腺腫瘍の記事を書いていますので、もしお時間がございましたら一読いただければと思います。

■乳腺腫瘍の高齢犬

■乳腺腫瘍末期の高齢猫

 

今回ご紹介する症例は、乳腺腫瘍を患った猫ちゃんです。

 

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【既往歴】

2021年2月10日に乳腺のしこりを認め、すぐに2次医療施設にて片側の乳腺全部と所属リンパ節の切除を行いました。

 

だいぶ痛そうな術後だったとのことでしたが、病気を乗り越え退院することがで、つい先日まで、いつも通り過ごせていたとのことでした。

 

定期検診も3ヶ月に1回、苦手な通院でしたが意を決して動物病院に通院し、血液検査、X線検査、超音波検査としっかりと診ていました。

 

直前の検査では問題なかったとされた中、その1ヶ月後の2023年4月3日夜に咳、ふらつき、食欲低下を認め、動物病院に行って再度検査してみたところ、肺に腫瘍病変を確認されました。

 

抗がん剤や外科手術はすでに不可とされ、自宅で見守るようにと内服薬と坐薬をもらいましたが、お薬を飲ませることができず、日に日に弱々しく、また咳も激しくなり、ふらつきも強くなってしまったため、もう在宅医療に切り替えてあげたいと考えたとのことでした。

 

【初診時】

普段から通院できる性格の猫ちゃんということもあり、診察にお伺いすると、スリスリしに出てきてくれました。

 

話しかけてくれて、撫でてとせがまれるのですが、その呼吸状態は荒々しく、急ぎ酸素環境の準備が必要であることと、この状態だと血液検査などのストレスがかかることは避けた方がいいとお伝えしました。

 

呼吸状態が悪い犬猫に対して、通常は酸素を嗅がせ、呼吸を安定させながら検査や処置を実施しています。

診療時には保定してもらうことが必須になりますが、当院では動物看護師を含めた複数のスタッフと一緒にお伺いしているため、診療の補助の全ては、基本的に必要ありません。

呼吸状態を管理しながらの保定業務は、訓練を積んだ専門チームに任せるべきですが、多くの往診専門動物病院が獣医師1人でお伺いしていることから、この業務をご家族様が担わなければいけません。

胸を強く押さえてしまうことで、呼吸を悪化させてしまい、最悪致命的なことになってしまうことを避けるためにも、もし往診専門動物病院を始めてご利用される場合には、必ず動物看護師が同行しているのかを確認するようにしましょう。

 

その場で酸素発生装置、酸素ボンベ、酸素ハウスの手配完了し、運用方法を簡単にご説明させていただきました。

 

翌日の診療までに全部が揃うこととなりましたので、詳しい運用方法はそこでご説明させていただくこととしました。

 

超音波検査にて特記すべき所見は認めませんでした。

 

処置は皮下点滴を実施したのですが、液体量を極力なくし、なるべく早く処置を完了させてあげることが優先であると判断しました。

 

猫ちゃんに特に多くみられる腎臓病など病気では、脱水補正の観点からも皮下点滴の輸液量をちゃんと多く入れます。

 

もちろん貧血(腎性貧血など)や心臓の状況、高血圧はどうなのか、そもそも皮下点滴に耐えられるのかなど、多岐にわたる情報整理を一瞬で行い、できる限り負担のない、かつ多めの量を投与してあげるよう専念します。

 

しかし、呼吸器疾患や腫瘍性疾患などでは、腎機能はそもそもダメージを受けていないケースが多く、その場合には少量であってもしっかりと腎臓が機能してくれます。

 

ペットの在宅終末期ケアでは、その子がいかにして普段の慣れ親しんだ環境で、他に邪魔されることなく悠々自適に過ごさせてあげられるかを考えてあげたいです。

 

そのため、ご家族様だけで処置の全てを完結できるようなプランを構築することに、私たち往診専門動物病院は特化しています。

 

この日の診察では、過去の血液検査結果や既往歴、今までどんな経過を歩んでこられたかなどを幅広くヒヤリングさせていただき、明日の診療までの暫定的な診療プランを組みました。

 

【再診】

初診時とは変わり、足並みも軽やかであり、食欲も上がってきたとのことでした。

 

もちろん病気が治ったわけではなく、症状が緩和されただけとわかっているものの、昨日よりも元気そうな姿が本当に微笑ましかったです。

 

酸素環境を整える道具も全て揃っており、この日は酸素環境の構築および運用皮下点滴トレーニングの2つをご説明させていただきました。

 

呼吸状態から、まずは酸素運用方法を吹きかけによることで、日常コントロールとしました。

 

また、当院としておすすめしている酸素ハウスは、見栄えは良くはないものの、機能性重視でご紹介させていただいています。

 

酸素ハウス.jpg

 

 

呼吸状態に合わせて、酸素吹きかけから初めていき、酸素ハウス内での管理となっていきます。

 

酸素室内での管理となっても、掃除のタイミングやご飯のタイミングなどで酸素ハウスを開閉する必要があります。

 

その時に登場するのが酸素ボンベです。

在宅酸素ボンベ.jpg

 

わんにゃん保健室では、常に呼吸状態の悪化を想定した診療を心が変えており、常時酸素ボンベを数本揃えています。

呼吸状態が悪い犬猫、または検査や処置で呼吸状態が悪くなりそうな場合には、使用することにご同意いただいております。

 

酸素室内の酸素濃度が下がってきたら、酸素ボンベでブーストしてあげることで、酸素発生装置だけでの酸素コントロールよりも酸素ボンベを併用した方が、より利便性高く運用することが可能です。

 

そして、皮下点滴のトレーニングをしました^^

 

【まとめ】

今回のように、呼吸状態が悪い犬猫の症例で、いかにして呼吸状態を悪化させないのかが鍵になってくると考えています。

 

そのためには、詳しいヒヤリングと既往歴、今までの経緯や犬猫の性格など、詳細に把握しておくに越したことはありません。

 

今回の症例では、初診におおよそ2時間半ほどかかりましたが、この猫ちゃんの性格や病状をしっかりと把握できたこともあり、スムーズに診療に入ることができました。

 

乳腺腫瘍、特に猫ちゃんの乳腺腫瘍は悪性の可能性が高く、発見された時点で、すでに末期であるということはかなり多くあります。

 

まずは普段からのコミュニケーションの中で、乳腺にしこりがないかを入念に確認し、もしあった場合には、外科手術を選択するのか、または痛い思いをさせるくらいなら運命を受け入れ、在宅での終末期ケアにするのかを考えましょう。

 

保定業務は、呼吸状態が悪い犬猫においてかなり高度な洞察力が求められます。

 

健康診断程度であればまだしも、病気でもうぐったりしている場合には、動物看護師に保定業務が頼めるのか、必ず担当される動物病院に確認するようにしましょう。

 

往診専門動物病院のほとんどが、獣医師一人で運営しています。

 

動物看護師をアテンドしてくれるのか、往診専門動物病院が初めての場合には、必ず電話などで確認をとりましょう。

 

乳腺腫瘍は怖い病気です。

 

もし乳腺にしこりが見つかった場合には、まずは獣医師にご相談ください。

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犬猫の終末期ケアは、通院で行うのか、往診(在宅医療、訪問医療)で行うかの2つがあります。

 

終末期ケアは、動物病院ごと、もっと言えば、担当する獣医師ごとで違ってくることが予想されるほど、まだまだ確立されておりません。

 

私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、犬猫の在宅における終末期ケアを確立させるため、ペットの在宅終末期ケアに特化した訪問診療を行っています。

 

この子たちが、一番安心できる環境で、大好きなご家族様と一緒に最後の時間を過ごし、その腕の中で眠りにつくその日まで、私たちが全力でサポートしていきます。

 

今回は前回に引き続き、急に立てなくなってしまった大型犬の蛍ちゃんです。

2023年5月28日の初診でエコー検査にて肝臓がんを認め、2023年6月25日にご家族様のもとで、鳴き声をあげることなく、静かな眠りにつきました。

 

【再診2日目(2023年5月29日)】

状態は上がってきて、昨日はできなかったヘッドアップを見せてくれ、ご飯も食べられ、お水も十分に飲めているとのことでした。

 

この調子であれば、内服薬への切り替えを視野に入れられると考えられるくらい、状態改善を見せてくれたことがとても嬉しかったです。

 

この日も昨日に引き続き、皮下点滴による処置を実施しました。

 

 

【再診3日目(2023年5月30日)】

調子も上がってきたこともあり、この日に毛刈りを実施しました。

 

ペットの緩和ケア及び終末期ケアでは、日常の介護がどうしても切り離せません。

今後予想される介護トラブルは、事前に対策を練っておくことで、いざその時を迎えた時にスムーズに対処できる準備をしておくことが肝心です。

 

なお、調子も上がってきていることと、食欲もだいぶ戻ってきてくれたこともあり、内服薬処方に挑戦することとしました。

 

また、便が3日間出ていないということがあったので、排便を促すシロップを処方しました。

 

本日も皮下点滴での処置を行い、明日の診察前に内服に挑戦していただき、飲めたかどうかによって注射薬プランで行くか、内服薬プランで行くかを決めることとしました。

 

 

【再診4日目(2023年5月31日)】

立ち上がりました!

 

初めて蛍ちゃんが立ち上がっている姿を見ることができました。

 

わんにゃん保健室スタッフ一同、飛び上がるように嬉しかったです。

 

この日から内服薬プランに切り替え、まずは3日後に再診を組んでいき、そこで再度検査を実施してモニタリングしていくこととしました。

蛍ちゃん③.png

 

 

【再診8日目(2023年6月4日)】

立ち上がれたのは前回の診察の時だけであり、以降立ち上がれないとの事でした。

 

ただ食欲はあり、たくさんのお薬でしたが、蛍ちゃんは魚肉ソーセージが大好きなため、その中に隠すことで飲ませられているとの事でした^^

 

 

【再診14日目(2023年6月10日)】

もともとお尻のあたりや後肢を触られるのを嫌がる性格ではありましたが、その嫌がり具合が上がってきてしまい、お尻のあたりを触ると怒るようになってしまったとの事でした。

 

介護が必要なステージになると、排泄物による汚れの付着をいかにして取り除いてあげるか、いかにして付着し辛くするか、そして、いかにしてシンプルかつ簡略化するか、がとても重要になってきます。

 

小型犬や猫ちゃんなど、比較的触ったり持ち上げたりすることが容易なサイズの子たちならまだしも、怒りやすい子や、体重が大きい大型犬となると、その対策はとても重要となってきます。

 

蛍ちゃんは大型犬のため、移動させるにはお腹の下にタオルを入れるなどして持ち上げる取っ掛かりを作ってあげなければいけないため、その取っ掛かりをつけるためにお尻や後肢を持ち上げます。

 

この行為が蛍ちゃんは苦手なため、その対策を練っていましたが、もしかしたら関節や神経に痛みがあるのかもしれないと考え、痛み止めでどこまで抑え込めるかを評価することとなりました。

 

 

【再診21日目(2023年6月17日)】

痛み止めが功を奏したようで、ハンドリングの時もそこまで嫌がらなくなったとの事でした。

 

介護が必要なステージでは、痛みに関して常に評価してあげることをお勧めします。

 

「どこを触ると嫌がるのか」

 

「どれくらい嫌がるのか」 など

 

痛みは生活の質を低下させる要因の一つです。

 

医薬品で緩和できるのであれば、体調に合わせた医薬品を使ってあげましょう。

 

また、疼痛緩和には投薬以外にも、もしかすると物理的な圧迫などによって生じる痛みであれば、介護によって緩和できるはずです。

 

大型犬の蛍ちゃんの介護はかなり難易度が高く、考えなければいけないことが多々ありましたが、ご家族様がみんなで力を合わせていただけたからこそ、さまざまな緩和プランを組むことができました。

 

 

【再診28日目(2023年6月24日)】

朝方に鳴いて呼ばれたので、痛いのかなと思って痛み止めを飲ませてあげたところ、1時間くらいで未消化物の嘔吐があったとの事でした。

 

急にガクッと下がったとの事から、もう内服薬を飲ませていくことが困難であると判断し、可能な限りを注射薬に切り替えました。

 

ペットの在宅終末期ケアでは、できる限りペットの負担を減らしてあげるため、どうしても内服薬でしか投与できないもの以外は、すべて注射薬切り替えを行ってあげたいと考えています。

 

また、終末期ケアのステージでは、嘔吐によって大きく状態が下がってしまうこと、またその時に救急で通院することがすでにできないこともあり、早めから毎日服用していただいています。

 

そんな中、すでに吐き止めを飲んでいるにもかかわらず嘔吐を認めることがあります。

 

物理的な要因も考えられますが、多くの場合、旅立ちを示唆しているケースが多いです。

 

この日は朝と夜に訪問し、皮下点滴にて投薬処置をしました。

 

 

【再診29日目(2023年6月25日)】

昨日よりもさらに弱々しくなった蛍が玄関で迎えてくれました。

 

もう何も食べられていないとの事でした。

 

朝の処置をして、また夜に訪問することとしました。

 

そして夜に訪問したところ、もうほとんど意識のない蛍ちゃんがそこにいました。

 

静かに眠っているようで、ご家族様と相談した上で、夜の処置はせず、このまま静かに旅立たせてあげることで合意しました。

 

この日の夜中、家族みんなが寝静まった頃に、鳴き声も上げず静かに旅立っていきました。

 

きっとあの姿のまま、穏やかに静かに眠りについたのだと思っています。

 

 

【蛍ちゃんの在宅終末期ケアのまとめ】

急に立てなくなったことを主訴に始まった往診でしたが、その症状は一過性のものではなく、隠れていた大きな持病から来るものでした。

 

初診時に実施した血液検査、超音波検査で膵炎と肝臓腫瘍、脾臓腫瘍が確認され、この日から始まった在宅終末期ケア。

 

昨日まではいつも通り、ご飯も食べられていたし、トイレもできたし、何ならお散歩だっていけていました。

 

最初の3日間は注射薬を用いた皮下点滴プランとし、その後安定してきたので内服薬のプランに変更。

 

立ち上がれなくなり、介護が必要になることを見越して、毛刈りなどのお手入れを早期から実施。

 

便秘があればシロップ剤で対処し、逆に軟便気味になれば下痢止めで対処。

 

痛みが強くなってくれば、多方面からの疼痛緩和。

 

内服薬が難しくなった時が来たら、注射薬を用いた皮下点滴プランに戻す。

 

蛍ちゃんは40kgクラスの大型犬でしたので、介護は本当に大変だっただろうと思っていますが、ご家族様の愛情あるケアのもと、終末期を走り抜くことができました。

 

2010年2月に、まだ3ヶ月齢の頃に保護された蛍ちゃんは、2023年6月25日、大好きなご家族様がクラスご自宅で、静かに眠りにつきました。

 

蛍ちゃんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室

江本宏平、スタッフ一同

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大型犬で多く見られる病気は、なんといっても腫瘍(がん)です。

 

慢性疾患で旅立つ大型犬もいますが、小型犬と比べて大型犬では、腫瘍(がん)で旅立っていく子が、肌感的に高い気がしています。

 

そして、大型犬の終末期特有の最も問題になることに、運動機能の衰えである「歩けない(歩行不全)」「立ち上がれない(起立不能)」が挙がります。

 

小型犬であれば抱き上げて動物病院に連れていくことが叶いますが、大型犬の場合、抱っこして動物病院まで行くことは、体重的にほぼほぼ不可能です。

 

もし持ち上がるのであれば、、、

 

車に乗せて上げられ、少し遠くの動物病院まで通院させることはできると思います。

 

そこまでの持ち上げは難しい場合に、台車などに乗せて通院するという方法もあります。

 

健康なわんちゃんと比べて熱中症を起こしやすいことが予想されますので、暑さ対策はしっかりしておきましょう。

 

ただ、それすらも難しいというケースがあります。

 

もし「痛み」を伴っている場合には、患部を触れられることを嫌がります。

 

例えば腰や膝、骨盤のあたりに痛みがある時には、下半身を触れられることが嫌であり、尚且つ、お尻のあたりや手足の先を触られるのが嫌いな犬猫の場合には、腰を立たせることすら至難の技になる場合もあります。

 

犬猫にとって、足先は生命維持にとって欠かせないものですので、結構触れられること自体に敏感で、意図せず歯を剥き出しにしてしまうことも多々あります。

 

大型犬の場合には、普段から抱っこに慣れていないことが多いので、この時期に下半身に触れられて持ち上げられたりすることを嫌がる傾向があるため、普段からトレーニングしておくことをお勧めします。

 

ペットが終末期を迎えるにあたり行われる終末期ケア、特に在宅終末期ケアでは、ペットだけでなくご家族様の負担もできる限り緩和していくことが必要であると考えています。

 

そのため、ペットの在宅終末期ケアでは、「犬猫が抱える症状の緩和」だけでなく、「寄り添うご家族様のケア」も同じくらい大切だと考えています。

 

もし愛犬の大型犬が立ち上がれなくなったり、歩けなくなってしまった場合には、通院という選択肢以外にも、往診という選択肢があることを、頭の片隅に置いておいていただければ幸いです。

 

今回お話する症例は、急に立てなくなってしまった大型犬の蛍ちゃんです。

 

2023年5月28日の初診でエコー検査にて肝臓がんを認め、2023年6月25日にご家族様のもとで眠りにつきました。

 

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【初診(2023年5月28日)】

蛍ちゃんは2010年2月に、まだ3ヶ月齢の頃に保護され、家族として迎えられました。

異食癖のあるやんちゃな女の子で、靴下やビニールを食べてしまったこともありましたが、いつもちゃんと便で出てきたらしいです^^

 

5月26日からはあまり立ちたくない様子でしたが、5月27日になると明らかに状態が悪そうで食欲は無くなり(食欲廃絶)、5回ほど吐き出し(頻回嘔吐)、終始うつ伏せになろうとしていたとのことでした。

 

ただ、お散歩にはいくことはでき、いつも通り40分くらいお散歩したので、少し様子を見てあげたとの事でした。

 

しかし夜になると急激に立てなくなってしまったため(起立困難)、翌朝の5月28日に近医へ通院させようと思っていたのですが、大型犬ということもあり動かすことができないため、往診にて訪問診療をご希望されました。

 

お伺いすると、自力での飲水はできているものの、いつもよりも飲む水の量が少ないとのことでした。

 

ただ、飲水後に排便があり、排便すると、少し元気が出てきたようだとのこ事でした。

 

排尿量は、以前からとても多かったとのことでした。

 

血液検査と超音波検査を実施し、肝臓と脾臓に腫瘍があることを認めました。

 

当院の在宅医療における緩和ケア及び終末期ケアでは、初診時に血液検査と超音波検査のスクリーニングを実施しています。

 

また、何度も検査を重ねることでペットの体調を悪化させることを回避するため、1回の検査で幅広く十分な範囲を検査で見させていただいています。

 

今後立ち上がれなくなることを想定し、その場合には介護が必須になると考えられるため、今のうちから汚れを落としやすくしてあげることを考えて、少し安定してきたら予防的に毛刈りすることを検討していくこととなりました。

 

この日から3日間連続での処置をして、安定してきたら内服薬が苦手ではないという条件のもと、大型犬であれば内服薬に切り替えられる可能性は十分高いと考えるとお伝えさせていただきました。

 

次回は再診2日から最後の日までを書かせていただきます。

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往診専門獣医師として診療を開始してから、たくさんの症例と、その横で献身的に看病にあたっているご家族様に出会い、見送ってきました。

 

その中には、壮絶な最後を遂げた犬猫もいれば、本当に静かに、ろうそくの火が消えるように旅立っていった犬猫もいました。

 

傾向としては、若齢の犬猫よりも高齢の犬猫の方が、終末期に見られる症状が大きくない印象を受けています。

 

年齢がわかっているのであれば、高齢だからと、ある程度年齢的なところで終末期を受け入れるご家族様が多いですが、出会ったときにすでに成猫であるというご家族様が多くいます。

 

「一体この子は何歳なんだろう。」

 

かかる獣医師ごとで言っていることが違うということは本当によくあることで、結局ところ、1歳未満だろうな、いやかなりの高齢だ、以外はよくわかりません。

 

今回お話の続きを書かせていただく猫のタマちゃんも、実は年齢がわかりません。

 

ただ、最後を過ごす場所をここと決めてご家族様に出会い、生涯を全うされました。

 

猫の鼻腔内リンパ腫の在宅終末期ケアの後半です。

 

2022年10月27日に出逢い、出会って間もない2023年4月22日に左鼻腔内リンパ腫と診断され、抗がん剤を実施。

しかし、体力的にも精神的にも負担が大きかったため断念し、往診での在宅終末期ケアに変更。

毎日の看病の末、2023年7月15日、お母さんの腕の中で眠るように、静かに旅立ちました。

 

タマちゃん③.png

 

【在宅終末期ケア4日目(6月9日)】

初診後の初めての診察で、嬉しいことに、ご飯を食べてくれたとのご報告を受けました。

 

おそらく苦かくて飲ませられなかったステロイドが、皮下点滴の中に混ぜる形で投与できたため、苦さを耐え抜く必要なく効果を発揮してくれたのだと考えられました。

 

ステロイドというと、とても怖い印象が先行しがちですが、使い方や使うタイミングなど、獣医師の指導のもと的確に使用することで、ペットの終末期ケアにおいては強い味方になってくれることが多いです。

 

ステロイド以外の医薬品においても、もし不安がある場合には、必ず処方してくれた獣医師に相談するようにしましょう。

 

なお、鼻腔内リンパ腫のため匂いがわかりづらいことを考慮し、お母さんが「くさや」をトッピングしたとのこと、ガツガツ食べ出したということもあり、医薬品が全てではないかもしれませんが。^^

 

また、状態が下がった日以来の排便も認めたとのことでした。

 

食べてくれたことで腸が刺激されたのだと思われます。

 

なお、その後少し下痢気味になってしまったので、頓服で準備しておいた下痢止めを点滴に混ぜて使用できたとのことでした。

 

 

【在宅終末期ケア16日目(6月21日)】

6月19日から少し食欲が下がり、鼻水も出てきたとのことでした。

右の腋窩リンパ節の腫脹に伴い、右前肢の浮腫みと破行も始まりました。

浮腫みに対しては、マッサージで流すことで対策を打ち、おそらく腫瘍からくる病状の進行であると判断し、この日から薬を少し強くしました。

 

 

【在宅終末期ケア20日目(6月25日)】

前回の薬用量調整によって、食欲が回復したとのことでした。

 

ただ、ご飯とトイレ以外の時間は、ベッドルームに引きこもってしまうとのことでした。

 

皮下点滴が吸収できていないような雰囲気がありましたが、問診と触診によってちゃんと吸収されていることがわかり、1回の輸液量は変更せずに様子見としました。

 

輸液もちゃんと吸収、代謝でき、ご飯も食べ、トイレもできる。

 

タマちゃんらしく、余生をゆっくり過ごせているようでとても嬉しかったです。

 

 

【在宅終末期ケア26日目(7月1日)】

ふらつきが強くなり、食欲も低下してきました。

むくみが強くなり、この日から輸液量の減量、そして利尿剤の使用を開始しました。

 

いろんな種類の利尿剤がありますが、今回使用した利尿剤はカリウムの排泄を促してしまいます。

 

そのため、ご飯が食べられていない今、使用するべきか悩みましたが、前肢の浮腫みが重度であり、後肢の浮腫みも認めたことから使用しました。

 

少しでも浮腫みが改善され、無駄に貯留してしまった水分を体外排泄させられれば、また体が楽になって元気さを少しでも取り戻してくれるかもしれないと、みんなで祈っていました。

 

 

【在宅終末期ケア29日目(7月4日)】

朝くしゃみしたら口から大量に出血があり、訪問させていただきました。

 

取り乱していそうなお母さんを想像しながらご自宅に到着すると、ケロッとしたタマちゃんがそこにいて、連絡の後に出血は止まったとのことでした。

 

念の為、糖尿病が発症していないかを確認し、問題がなかったため、処方内容の変更なしで様子見としました。

 

また、呼吸状態が少し下がっていることもあり、酸素発生装置の手配を進めました。

 

ペットの在宅終末期ケアでは、酸素発生装置や酸素ボンベは、必ずと言っていいほどに登場してくる、とても頼りになる存在です^^

 

酸素発生装置が設置されることで、もし今後呼吸状態が悪化した時には、酸素を嗅がせていただくか、酸素空間を作ってそこに止まらせて呼吸安定を図るかなどの選択肢が生まれます。

 

呼吸状態に不安を感じる疾患を抱えている犬猫と暮らしているご家族様は、早めに酸素発生装置について、かかりつけ動物病院に相談しておくことをお勧めします。

 

 

【在宅終末期ケア34日目(7月9日)】

もうお水しか飲めておらず、ただ先代の猫ちゃんが最後に飲んでくれた「昆布水」を準備したところ、ガツガツと飲んでくれたとのことでした。

 

先代猫ちゃんがお母さんに残してくれた経験からの発想でしたが、こんなにも気に入ってくれるのなら、今後の終末期ケアの現場で、病状に応じて推奨しようと思います^^

 

お水を飲めなくなってきた、または飲水量が明らかに減ったことを確認した場合に、利尿剤を半量にしていただくこと、排尿を認めなくなった段階で利尿剤を中止する予定であることをお伝えし、この日の診察を終了としました。

 

 

【在宅終末期ケア40日目(7月15日)】

徐々に立てられなくなり、トイレまでも行けなくなってしまいましたが、それでも自力でなんとか立ち上がり、トイレまで行こうとするのが猫ちゃんです。

 

タマちゃんも同じで、頑張って頑張って一歩二歩、間に合わずにその場で、という日を迎えていました。

 

最後の排尿を認めたのが7月14日であり、かなりぐったりしている様子もあったことから、ご連絡をいただきました。

 

状況をお伺いし、利尿剤は中止としました。

 

おそらく本日が山であることをお伝えし、もし夜になってもまだ意識があるようであれば、皮下点滴を少量で投与するようお伝えさせていただきました。

 

お電話の後少しして、タマちゃんは眠りにつきました。

 

その瞬間は、お母さんの腕の中であり、おろしてあげた時におしっこが流れ出てきたことに違和感を感じて呼吸状態を確認したところ、呼吸が止まっていたとのことでした。

 

お母さんのお仕事の都合もちゃんと把握していたのか、忙しくなる前にちゃんとお別れの時間を取ってもらえるように、この日を選んだようでした。

 

本当によく頑張りました。

 

タマちゃんのご冥福を心からお祈り申し上げます。

 

わんにゃん保健室

スタッフ一同

 

【まとめ】

ペットの終末期における在宅医療切り替えは、ペットだけでなく、ご家族様にとっても、通院のストレスを軽減できること以上に、最後に残された時間を家族だけでゆっくり過ごしていくための、とても有意義な選択になると考えています。

 

このステージの犬猫にとって、高頻度での通院や待合室での他ペットとの遭遇など、健康で元気な頃であれば何気なかったことが、かなりのストレスとなってしまうことがあります。

 

そして、在宅医療に変更する大きなメリットは他にもあり、その一つが生活環境に対するアドバイスを的確に行えることがあります。

 

ペットの終末期における生活環境の整備は、医療面や栄養面と同じくらい大切になってきます。

 

トイレの位置、高さや広さ、寝床からトイレまでの動線について。

 

床はどんな素材にすべきで、どのくらいの長さ、幅で対策を打つべきなのか。

 

好きだったソファーの上は、本当にもう登らせられないのか。

 

キャットタワーはどうしたらいいのか。

 

ご飯皿の高さやご飯あげ方、種類など、栄養に対してどう向き合えばいいのか。

 

何をとっても、全てがその子その子の性格や体格、抱えている症状によって異なってきます。

 

終末期を迎えるペットと暮らしているご家族様へ

犬猫がいつ通院できないくらいまで体調を崩してしまうのかは、誰にもわかりません。

 

ただ、健康状態を把握しているかかりつけの獣医師であれば、ある程度の目安を立ててくれると思います。

 

もしそうなった場合に、往診で診てもらえるのか、または紹介できる往診専門動物病院はあるのかを、早い段階で聞いておきましょう。

 

何事においても、転ばぬ先の杖です。

 

準備と対策を講じておけば、突然くるペットの終末期にも、心乱れる中、ちゃんと歩みを止めずに、初動に移れると信じています。

 

東京、埼玉、千葉、神奈川であれば、往診専門動物病院わんにゃん保健室がご家族様のお力になれます。終末期の前段階、10歳を過ぎてきたら、そもそも通院が苦手な犬猫であれば、突然訪れる終末期の前に、一度往診について検討しておきましょう。

 

※タマちゃんの初診までの経緯はこちら

 

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猫の癌(がん)と言えば「リンパ腫」が最も知られているかと思います。

 

リンパ腫と言っても、発生部位や悪性度など、同じようでも全く違うもののように、犬猫の余生に対し影響してきます。

 

今回ご紹介するのは、東京葛飾区にお住まいのタマちゃんです。

 

2022年10月27日に出逢い、ご自宅のペット許可申請を完了し、正式に迎えたのは12月2日でした。

2023年4月22日にCT検査にて左鼻腔内リンパ腫と診断され、抗がん剤を実施しましたが、体力的にも精神的にも負担が大きかったため断念し、往診での在宅終末期ケアに変更しました。

毎日の看病の末、2023年7月15日、お母さんの腕の中で眠るように、静かに旅立ちました。

 

タマちゃん③.png

 

【初診(2023年6月9日)】

最初に違和感に気づいたのは、2023年4月初旬のことでした。

 

鼻血(鼻出血)が出ていたので、家の近くにある動物病院に通院してみたところ、口内炎があるので、おそらくは口内炎が原因で鼻血が出たのだろうとされたとのことでした。

 

症状が改善しないこともあり、4月下旬にCT検査を実施したところ、左鼻腔内リンパ腫と診断されました。

 

ただ、食欲は旺盛だったため、ステロイドの量もどんどん漸減できていたのですが、5月31日から一気に食欲がなくなり、この頃は高頻度で通院させていたですが、もう体力的にも厳しいと判断し、在宅医療での終末期ケア(ターミナルケア)に切り替えました。

 

ご飯の匂いを嗅ぐけど食べないというような感じで、強制給餌をするべきなのかの相談も含めて、往診でご相談させていただきました。

 

また、同日に終末期ケアに入るための検査を実施しました。

 

酸素化しながらの血液検査と超音波検査を実施し、全身状態を把握していきます。

 

かなり嫌がることを想定していたのですが、タマちゃんは理解しているようで、かなり強力的に検査に臨んでくれました。

 

動物病院に連れて行くと、診察台の上では借りてきた猫のように固まってしまうタイプの猫ちゃんでも、実際に家の中では全く異なった性質を見せます。

 

診察室では怖くて取り乱してしまう猫ちゃんでも、在宅環境なら比較的落ち着いて受け入れてくれたり、その逆も然りです。

 

当院では、異常興奮に伴う呼吸悪化を防ぐ意味からも、酸素ボンベを常に持ち込み、緊急時の備えはもちろんのこと、検査時などにも呼吸に注意しながら、看護師人数を揃えてお伺いさせていただいております。

 

タマちゃんのケースでは、すでに自宅にてお母さんによる皮下点滴を実施できていることもあり、投薬経路は確保されているため、注射薬内容を調整することで点滴準備は整いました。

 

投薬のための点滴なのか、少しでも水分補正を狙ったものなのか、この量の輸液を一回に入れても代謝できる状態なのか、今まで合わなかった医薬品は、どれがしみるのか、などを説明した上で、プラン決定をしていきます。

 

強制給餌に関しては、やってあげたい気持ちもありますが、ただ頑張れば頑張るほど、きっとタマちゃんは怖がり、心の距離ができてしまうかもしれないことをお伝えさせていただきました。

 

ただ、その上で実施をご希望される場合や、やり方だけを知っておきたいといった場合には、強制給餌トレーニングを一緒にさせてただき、使用するフードの種類や1回量、ご飯の濃度や流し込む位置、速さ、そしてペットの押さえ方や顔のキープの仕方など、細かくお伝えさせていただきます。

 

この日は、まず治療経過を追ってみて、医薬品では改善できないとした場合に、また考えましょうということとしました。

 

検査、処置、暫定的なプランを決定し、終了としました。

 

タマちゃん①.png

 

【初診までのまとめ】

本日は、猫のタマちゃんとの出会いから、初診での深いヒアリング、暫定的な方針決定までのお話を書かせていただきました。

 

通院できる犬猫だとしても、終末期を迎えると移動することがとても辛くなってきます。

 

無理に通院させるのではなく、もう余生を見据えた在宅医療に切り替えたいと感じましたら、お早めにかかりつけの動物病院にご相談してください。

 

動物病院によっては、定期的に時間を設けて、しっかりと往診にて訪問診療を組み立ててくれる獣医師もいるかと思います。

 

往診はその場その場での診察であるのに対し、訪問診療は組まれたプランに沿って行う在宅医療です。

 

完全に訪問診療とはいきませんが、多少の臨機応変さを兼ね揃えた訪問診療を提供してくれる獣医師と、1家族でも多くの方が出会えることを祈っています。

 

東京、埼玉、千葉、神奈川であれば、往診専門動物病院わんにゃん保健室がご家族様のお力になれます。

 

当院の往診をご希望のご家族様は、まずは在宅医療切り替えが可能かどうか、当院までお問い合わせください。

 

次回は、タマちゃんの経過から旅立ちまでの在宅終末期ケアです。

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ペットの終末期ケアは、ペットの病気だけを考えていけばいいわけではなく、その横で必死に看病しているご家族様の心の変化にも気づかなければいけません。

 

毎日が不安との戦いであり、体力的も精神的も摩耗していることに気づき、今目の前で病気と戦っているペットの状態について、どんな言葉を使って、どんなトーンで、早さで伝えるべきなのか。

 

そんなことを考えながら、日々の診療と向き合っています。

 

治療の結果「回復が見込める」症例であれば、今は辛いけど一途の光り輝く可能性を見て歩き出せると思います。

 

では、「回復が見込めない」症例、慢性疾患をずっと検査と薬でコントロールし続けている症例や病末期の場合は?

 

その光がないのに、どうやって病気と向き合っていけばいいのだろうか。

 

もしその光が安らかな旅立ちであれば、それまでの時間をいかに穏やかに過ごさせてあげられるかを考え、私たちが一緒に同じゴールに向かって歩いていきます。

 

診療で出会えるご家族様は、物理的に東京近郊となっているため、きっと今終末期ケアで困っているご家族様のほんの一部分しか、直接的なサポートはできません。

 

そのため、SNSを用いて広く情報を発信しますので、是非参考にしてみてください。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室の終末期ケアは、医療面だけでなく環境面にもアシストすることで、ペットとご家族様が安心して最後の時間を家で過ごせるように、そしてその最後の瞬間がご家族様のもとであることを目指しています。

 

今回ご紹介する症例、コーギーの風太くんは、肝臓がんの末期で当院を2023年5月4日に受診し、2023年7月9日の夜中、ご家族様が寝静まったときを見て、静かに眠りました。

 

初診の様子や、再診の様子などは、前回、前々回のブログで書かせていただきましたので、文書の最後にリンクを貼っておきますね^^

 

【在宅終末期ケア52日目(6月25日)】

もうほとんど立ち上がれなくなり、食欲も無くなってきました。

 

でも、ただ寝かせているだけでなく、大好きな抱っこをしてあげると笑顔になり、少しするとリンゴを1口、ドライフードを2粒食べてくれたとのことでした^^

 

飲水量も体力的に厳しいことから低下したこともあり、尿量も減ってきました。

 

しかし、まだまだちゃんと排尿も排便も出来ていました。

 

【在宅終末期ケア55日目(6月28日)】

この3日間で体調は著しく低下してきており、酸素マスクがないと呼吸するのが辛そうな様子でした。

 

それでも、りんご、ささみ、白菜、そしてヨーグルトを少量ずつ食べてくれたとのことでした。

 

酸素マスクありきですが、できる限り抱っこしたり、外を見せてあげたりと、終末期だからこそ、してあげられることを最大限やってあげたいと考えています。

 

お母さんとお父さんが力を合わせて、抱っこして外を見せてあげられたとのことでした。

 

鈴木風太⑤.png

 

【在宅終末期ケア59日目(7月2日)】

食欲旺盛の風太くんは、なんとデビフの馬肉スープ煮缶、デビフの牛肉ミンチ缶、デビフの牛肉の角切り缶を、1日合計で2缶くらい食べてくれたとのことでした^^

 

最初は水分の多いリンゴ(ジョナゴールド)をあげて見て、缶詰を食べさせて、食べたらヨーグルトをあげて、最後にお水をあげているとのことでした。

 

お水からあげると先にお腹いっぱいになってご飯を食べないことを考えると、この順番はおすすめですね!

 

呼吸が荒い時もあれば、安定している時もあり、寝たなと思うと、意識が戻ってこないくらいの深い眠りのような時もあったりと、常に細心の観察をされていました。

 

意識レベルの低下には、鼻先に息を吹きかけたり、上下まぶたの内側と外側をツンツンしたりして、反応を確かめます。

もし反応がなければ、その時はおそらく嚥下はできないと思われますので、経口のすべてはストップしましょう。

 

【在宅終末期ケア65日目(7月8日)】

昨夜から、もう1段階状態が下がったような感じがするとのことでした。

目も開け辛くなっていましたが、綺麗に洗浄してあげたら、クリクリのお目目がパチっと開いて、視線で追いかけてくれました^^

 

看病はほぼほぼ24時間付きっきりで行われ、風太くんの側にずっといてくれていました。

 

7月9日10:50、お母さん、お父さんがたまたま少し寝落ちしていた間を狙って、静かに眠りにつきました。

 

声もあげず、眠っている姿は、笑っているようにも思えたとのことでした。

 

向日葵の黄色がとっても似合う、コーギーの風太くんでした^^

 

ご冥福を心からお祈り申し上げます。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室

スタッフ一同

鈴木風太⑥.png

 

肝臓は沈黙の臓器と言われるくらい、症状を示さないことで有名です。

 

肝臓がダメージを受けると、なんとなく倦怠感があったりする程度であり、なんとなく食欲が少なめのような、寝ている時間が長いような気がするといった感じが多いです。

 

明確な症状として気づくのは、黄疸が出た頃かなと思います。

 

ただ、肝臓がんの場合は別です。

 

今回の症例は、ふらつきをきっかけに肝臓腫瘍が見つかり、通院にて抗がん剤を頑張り、最後は在宅にて終末期ケアを実施しました。

 

定期検診をしていても見逃されやすい肝臓疾患ですが、とはいえ定期検診は最重要項目ですので、犬猫と暮らしているご家族様は、必ず実施してあげるように心がけてくださいね!

 

今回は、前回に続いて、肝臓腫瘍の終末期ケアを迎えた風太くんのお話です。

 

初診までの流れはこちらをどうぞ^^

 

【在宅終末期ケア2日目(5月5日)】

昨日の処置に反応してくれたため、この日はとても調子がいいとのことでした。

そのため、少し早いですが皮下点滴の指導を行い、ご家族様だけでの在宅点滴に切り替えることができました。

 

皮下点滴の実施前後も含め、風太くんはちゃんとわかってくれているのか、そこまで嫌がらずに受け入れてくれていました。

 

そんな風太くんを前に、お母さんもお父さんも安心してトレーニングに集中することができました。

 

皮下点滴指導は、ご家族様だけでの在宅皮下点滴への切り替えプランを組み込む前に、当院では必ず行なっています。

もしすでに家での皮下点滴ができるご家族様の場合には、一度流れを見させていただき、問題がなければそのままお渡しさせていただいています。

ちなみに、もとも多く見かける誤認操作は、「空気抜き不足」や「道具の使い回し」です。

皮下点滴ですので多少の空気であれば問題になることは少ないですが、大量に入ってしまうと大変です。

道具の使い回しに関して、50mlシリンジ(注射器)などを何度も繰り返し使用している方がいます。

基本的にディスポーザブルと言って「使い捨て」であるため、衛生面を考えて再利用は控えた方が無難です。

 

診察2日目をもって、ご家族様だけでの在宅皮下点滴ができるようになりました^^

 

また、この日は酸素発生装置も準備されていました。

 

この時点での酸素発生装置の運用方法は、呼吸が辛い時に、都度嗅がせてもらうこととしていました。

 

酸素発生装置の準備と聞くと、「ずっと酸素室の中で生活させないといけない」と思いがちですが、そんなことはなく、生活の補助としてご使用いただきます。

苦しそうな時に鼻先に吹きかけるのか、風があたるのが苦手ならば、簡易的は囲いなどを作って多少の充満空間を構築するのか。

犬猫ごとに、酸素発生装置の運用方法は異なってきます。

もしかかりつけの動物病院で酸素発生装置を準備してもらいましたら、酸素発生装置の運用方法について詳しく習うことをお勧めします。

 

鈴木風太③.png

 

【在宅終末期ケア3日目(5月7日)】

前回の診察からの2日間、昼間は元気そうに過ごせているものの、夜になると辛そうにするとのことでした。

 

明け方まで顔をあげて全身で呼吸していたので、付きっきりで酸素を嗅がせてあげていたとのことです。

 

酸素発生装置が家に準備されていたので、苦しくなっても安心して対策を打つことができ、落ち着いてからはぐっすりと寝てくれていたとのことです。

 

まるで夢を見ているような、ここ数日の中で一番楽そうに寝ていたとのことでした^^

 

終末期ケアの中で見える、この子たちの幸せそうな寝顔は、近くで看病してくれているお父さん、お母さんの心をどれだけ潤してくれるか。

ペットの終末期ケアは、決して辛いだけじゃなく、向き合い方さえ理解できれば、心温かい時間として深く想い出に刻まれることと思っています。

 

風太くんはお外が大好きなため、できる限りお外に出してあげるような指示を出させていただきました。

 

終末期だからといって、ずっと家の中で塞ぎ込んでいなければいけないわけではなく、少しでもペットにとって嬉しいこと幸せな時間をプレゼントできるようなプラン組みを目指しています。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室では、終末期で酸素室から出せないくらい呼吸状態が悪くなったとしても、リビング内であれば動き回れる可能性を残してあげるため、酸素をうまく利用しながらの生活環境構築を、ご家族様と一緒に目指していきます。

 

鈴木風太④.png

 

【在宅終末期ケア23日目(5月27日)】

徐々にお散歩できる距離が1km、500m、400m、300mと徐々に短くなってきました。

 

夜にお父さんが帰宅すると嬉しくて興奮してしまい、そのまま倒れて伏せてしまうようなことが続いたとのことでした。

 

ただ、食欲は健在で、いつもの量を完食してくれていました。

 

その後、再度お散歩に行けるか試そうとしたが、難しそうだと判断し、お散歩を断念したとのことでした。

 

診察時には、可視粘膜の白さがさらに増しており、酸素なしの大気中で生活できている時間があることが不思議なくらいでした。

 

お話をお伺いすると、夜に皮下点滴をしてあげていて、翌日の夕方くらいから少し体調が下がってくるとのことが伺え、もしかすると薬の効果が短くなってきていることが疑われました。

 

終末期ケアでは、少しでも苦しくない時間を過ごせるよう、常に細かくヒアリングさせていただき、対策が打てることがないかをご家族様と検討していきます。

 

ご相談の上、この日から皮下点滴回数を1日1回から2回に増やしました。

 

【在宅終末期ケア30日目(6月3日)】

この1週間の間、医薬品の頻度をあげることで、倒れることなく過ごせたとのことでした^^

このまま少しでも安定した日々が続くことを祈りました。

 

【在宅終末期ケア44日目(6月17日)】

もう外出させるのは難しくなり、ハーネスをつけて出してはみたものの、手足で体重を維持することはできなかったとのことでした。

 

食事量は少し減ってしまったものの、まだまだ食べてくれていて、ご飯皿から外にこぼして食べるという、風太くんなりの食事ルーティンを作っていたとのことでした^^

 

立てなくなってしまったことから、医薬品の量を増やし、許容上限まであげて様子を見ることとしました。

 

終末期における医薬品を、ある種のドーピングのように捉えられている方も少ないと思います。

しかし、用途を絞り、ターゲットとなる症状を明確にすることで、弱々しくなる体の反応を維持したり、吐き気や痛みなどを緩和したりすることが期待されます。

 

【ここまで】

終末期ケアを在宅で迎えることは、決して楽なことではないです。

 

目の前で弱りゆく大切な愛犬、愛猫を前に、心強く最後まで寄り添っていく。

 

通常の回復が期待できる病気の介護や看病と大きくのは、「回復しない」ということです。

 

何をしても、必ず病状は進行していき、努力や期待とは裏腹に、苦しそうな表情を見せるこの子たちの顔を見ていなければいけません。

 

もし今お一人で悩まれているご家族様がいらっしゃいましたら、まずはかかりつけの動物病院に相談し、もし難しいようであれば往診専門動物病院までお問い合わせください。

 

東京23区とその近郊であれば、私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室が、ご家族様のもとに駆けつけます。

 

次回、看取りまでのお話です。

 

※前回のブログはこちら【肝臓腫瘍のターミナルケア①】

 

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犬猫が亡くなる原因のトップは、私たち人間と同じく、腫瘍性疾患(がん)です。

 

腫瘍(がん)を患っていることを宣告された瞬間、きっと頭の中が真っ白になると思います。

 

だからこそ、検査結果をご説明するときには、ご家族様の目の動きや、理解レベルを把握しながら、慎重に言葉選びをしなければいけません。

 

腫瘍と一言で言っても、

 

それはどんな腫瘍なのか

 

どんな特性があるのか

 

どんな治療方法があって

 

この子には何ができるのか

 

どんなことが起こることが予想されるのか

 

そのときどういう判断を強いられるのか

 

など、多岐にわたる説明が必要であり、経過とともに訪れる変化に対しての心構えをして頂かなければいけません。

 

私たち獣医師の言葉が、どこまでご家族様の頭の中に残るのかは、獣医師の説明力にかかっています。

 

今回ご紹介する症例は、コーギーの風太くん12歳。

 

近医にて2022年1月6日に脾臓血管肉腫を克服し、2022年9月7日に2次医療施設で肝臓腫瘍が末期の状態で発覚。

 

抗がん剤は2クール目までは順調だったものの、3クール目にはBUN、CREが優位に上昇してしまい、もう抗がん剤は難しいとされ、再び近医での診察に戻りました。

 

しかし、症状がどんどん進行してしまい、通院することが難しくなってしまったことから、往診に切り替え、在宅での終末期ケアに臨みました。

 

2023年5月4日に初診で伺い、2023年7月9日の夜中、ご家族様が寝静まったときを見て、静かに旅立っていきました。

 

鈴木風太①.png

 

Day1(初診)2023年5月4日

肝臓癌に伴う重度の貧血とヘッドアップ(頭を上げること)できないくらいぐったりしていることを主訴に、もう通院が厳しいと判断され、往診への切り替えのためにご連絡をいただきました。お電話にて状況を確認し、同日に訪問することができました。

 

お伺いすると、人が大好きな風太くんは、まさかの力強いお出迎えをしてくれました!^^

 

【既往歴】

既往歴として、2022年1月6日に脾臓血管肉腫を発症し、かかりつけの動物病院にて脾臓摘出をしたとのことでした。

 

摘出後、定期的な検診を繰り返しており、再発を認めずに、ゆっくりと過ごせていたとのことでした。

 

状態に異変を感じたのは、2022年9月3日の夜からでした。

 

昼間までは元気であり、いつも通り遊びに行っていたのに、急にふらつきが出たとのことでした。

 

ただ、その他はいたって普通だったとのことでした。

 

翌朝(2022年9月4日)、ふらつきからの転倒、失禁を認め、食欲はかろうじてありそうだが飲み込めないような雰囲気だったとのことでした。

 

急遽かかりつけ動物病院に通院したところ、すぐに2次医療施設を紹介してくれましたが、2022年9月7日に大きな動物病院でのCT検査結果で、末期の肝臓腫瘍とされました。

 

すでに外科不適で抗がん剤のみの提案でした。

 

抗がん剤開始後、2クール目までは副反応も特になく割と元気に過ごせていたのでしたが、3クール目で極端に散歩の距離が短くなり、血液検査からはBUN、CREの上昇を認めたため、抗がん剤はもう無理だとされました。

 

大きな変化が出たのは2023年4月23日の午後でした。

 

この日もドッグカフェに連れて行けるくらい普通だったのですが、14:00くらいにサークルの中で引き付けを起こし、ふらつき、鼻を上げながら鳴き叫び、バタッと倒れたとのことでした。

 

動かせないと判断し、かかりつけ動物病院に電話相談し対応してもらっていたのですが、やはりずっと通院で診てもらうには限界があると判断し、当院まで連絡をいただきました。

 

【初診時】

到着したのが夜であり、夕方くらいにご飯をたくさん食べてくれたとのことでした。

 

排便は前日の朝9:30にして以来出ておらず、排尿に関してはマナーパンツを履かせてくれていました。

 

飲水は自力でできており、呼吸状態もやや促迫気味ではあったものの、前日苦しそうだった時よりも断然楽に過ごせているとのことでした。

 

顔色は白く、可視粘膜と言われる口の中の色なども真っ白であり、重度の貧血があることが疑われました。

 

また、2週間前に他院で実施した検査結果からも、すでに重度の貧血(Ht 19.4%)があったことを確認しましたが、経験上、おそらく10%未満になっている可能性すら疑えるほどの蒼白感もあるため、無理に再検査して呼吸状態を悪化させるよりも、今あるデータで終末期ケアプランを組むべきであると判断し、採血は断念しました。

 

緩和ケア及び終末期ケアでは、プラン決定のためにも状態を客観的に把握するためにデータ採取は必要であると考えています。

しかし、このように、すでに負荷をかけることによって全身状態の悪化が懸念されている場合には、メリットとデメリットを天秤にかけて判断して行きます。

検査のために状態を悪化させるくらいなら検査をしないで盲目に投薬プランを組んでいくのか、最初だけでも検査をすべきかは、担当する獣医師としっかりと相談しましょう。

 

この日は超音波(エコー)検査のみを実施し、胸水と腹水の貯留がないかをチェックしました。

 

この2つであれば、特段押さえ込まなくても評価できます^^

 

皮下点滴に注射薬6種類を併せて投与し、この日の処置は完了です。

 

続いて、緊急時の対応についてです。

 

想定される症状としては、卒倒と呼吸困難、下血、発作、喀血です。

これらの全てを説明し、何ができて、何ができないのかを一つ一つ明確にしていくのが、終末期ケアの導入だと考えていただければと思います。

 

酸素発生装置を手配し、今日実施した内容を再度ご説明し、明日実施予定の内容を説明し、本日の診察を終了としました。

 

帰りも、お見送りをしてくれた風太くんでした^^

 

次回は風太くんの経過を再診で得た所見をもとに書かせていただきます。

 

P.S.

風太くんが生きた軌跡をしっかり書かせてもらうから、向こうで読んでくれると嬉しいな^^

鈴木風太②.png

 

 

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犬猫の往診専門動物病院
わんにゃん保健室
 
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かかりつけの動物病院で、最初から最後まで診てもらいたいと希望されるご家族様はたくさんいます。

 

ただ、なかなかこの希望が叶うのは珍しいと考えています。。。

 

それは、ご家族様が求める「医療内容」と、動物病院が提供できる「医療サービス」に、ステージごとで徐々に違いが出るからです。

 

今回は、どんな違い(ズレ)が、ご家族様と動物病院、獣医師の間で起こるのかを書かせていただき、ペットが終末期に差し掛かった時に、往診切替という選択肢を選ぶタイミングはいつなのか、についてお話しさせていただきます。

 

最後まで通院で行くと考えているご家族様でも、犬猫のライフステージごとに考えなければいけないことを書かせていただきましたので、是非参考のためにも、ご一読いただければと思います^^

 

【かかりつけ動物病院=家から近いところ】

家から近い.png

 

SNSが普及しているため、単純に家から近いからと選ばれるご家族様は減少傾向にありますが、それでも通院距離は動物病院選びの優先事項に位置しています。

 

パピー期、キトン期では特にこの傾向が強く、健康診断やワクチン接種、健康診断や日常ケアといった内容だけで完結する時期は、『家から近い』ため、その動物病院をかかりつけにされています。

 

時間が経つのは早く、なんとなく体調が悪そうな日が増えてきた頃、動物病院選びは次のステージに入っていきます。

 

【かかりつけ動物病院=口コミがいい】

1559730.png

 

家から近いという利便性を捨ててまで遠くにある動物病院に行く理由は、その動物病院が何かに優れているからです。

 

もちろん、知人や友人からの紹介というケースもありますが、紹介先として名前が挙がるような動物病院であれば、きっと信頼を置ける動物病院だと思います。

 

ただ、口コミがいい動物病院の多くが、「名医」という雰囲気を醸し出していますが、そんなことはないです。

 

飼い主様から支持されている本当の理由は、意外と別のところにあるかもしれません。

 

人気の理由①:人当たりがいい動物病院

人間の病院でも同じかもしれませんが、もちろん治療技術や実績に富んでいる場合もありますが、中には人当たりのいい先生であり、よく話を聞いてくれるという長所が口コミの高評価につながっていることもあります。

 

待ち時間が長いのは人気のある証拠ですが、ある程度の規模の動物病院であれば、昨今の予約システムの普及によって、昔みたいに何時間も待たされたなどの長時間の待合室トラブルは少なくなっているように思われます。

 

ただ、飛び込みですぐに診てもらいたい場合には、予約システムがしっかりしている動物病院では融通が効かないこともあるので、注意しましょう。

 

人気の動物病院であれば、ある程度の待ち時間は許容し、もしかしたら検査が入る可能性もあるので、丸1日通院のために空けておくくらいの時間配分を心がけたほうがいいです。

 

人気の理由②:設備システムの豊富さ

とはいえ、人気があっていい先生でも、動物病院のほとんどが小規模であるため、24時間診療をやりたいけどできないのが現状です。

 

朝診ていたペットが夜に急変し、夜通しその対応をした場合、翌朝に待機しているペットの診療が厳かになってしまうという、負のスパイラルが起きてしまうため、多くの動物病院が夜は診療をしていません。

 

獣医師も人間なため、最初は精神が肉体を凌駕するということもありましたが、そんな無理は長くは続かず、判断能力が下がってしまっては本末転倒なため、苦渋の決断として、夜は受け付けないのがほとんどです。

 

中には、再診のみで夜間救急を受け付けている動物病院もありますが、できれば夜間は夜間救急に飛び込めるように、ご家族様自身で、現状の既往歴、処置や処方内容など、初めて診てもらう動物病院でも情報が伝わるような準備をしておきます。

 

大病院.png

 

これら以外にもまだまだありますが、大体こんなところだと思います。

 

いよいよ大きな病気を患う頃になると、今度はこのまま通院し続けのか、往診に切り替えるべきかで悩む時期がやってきます。

 

【往診切り替えのタイミング】

往診切り替えのタイミングは、「治療が見込めないと判断された時」と、セミナーなどではお伝えしています。

 

この「治療が見込めない」には2つの意味があります。

・医学的に、すでに治療不可な状態

・負担を考えると攻めた治療ではなく緩和的な処置のみを希望したいとした状態

・通院させること自体が環境的に難しい状態

・通院させられないくらい弱ってしまった状態

 

例えば以下のような事例があります。

 

■猫、18歳、慢性腎臓病で毎日の内服、週数回の皮下点滴で通院している。定期検診は月1回くらいだが、通院自体がストレスになってしまい、もう通院ではなく在宅に切り替えたい。

疲れた猫.jpg

 

■犬/猫、腫瘍(がん)で抗がん剤など攻めた治療はしたくない。できる限り負担なく、家でゆっくり過ごさせてあげたい。

 

■大型犬で歩行が難しくなり、車に乗せるのも難しいため、往診で診てもらいたい。

図1.png

 

このように、医学的な側面だけでなく、環境的な側面、犬猫の性格などを加味して考えていくと、いつまで通院を選ぶのかが決まっていきます。

 

最後まで通院で行くという選択も一つですし、もう通院が難しいと判断し、往診に切り替えるのもまた一つです。

 

【わんにゃん保健室の往診(在宅医療)】

当院が提供している診療は、終末期と言われる、余命を見据えた最後の医療を、ご自宅で最後まで提供していく、終末期ケア特化型の在宅医療です。

 

当院の往診では、初診時に2時間枠を設けてじっくりとお話をお伺いさせていただき、ご家族様が何を不安に感じていて、何をしてあげたいのか、また、現実問題として何ができるのか、などをご相談させていただきます。

 

内服薬が飲めない性格の犬猫に対しては、内服ではなく注射薬処方プランをご提案したり、実際に看病にあたる方の日常のスケジュールを伺うことで、投薬プランが決められたりなど、リアルな生活環境を加味しながらのプランニングをしていきます。

 

往診を選ぶにしても、獣医師1人でくる簡易的な往診を希望されるか、当院のように体制を整えた往診を希望されるかなどで、在宅での検査プランや治療プランも変わってくるかと思います。

 

まずは、ご自宅まで来てくれる往診を調べておくことから始めましょう。

 

その上で、いつまで通院で、どこからの在宅切り替えがおすすめなのか、かかりつけの獣医師とご相談しておくことを覚えておきましょう!

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ご紹介【わんちゃんホンポ】

「わんちゃんホンポ」というwebサイトを見たことはありますか?

 

わんにゃんとの生活に特化したもので、ペットライフに関する情報サイトです。

 

アプリも作られているので、使い勝手も良さそうです^^

 

犬を飼うための知識やしつけ、お手入れ、仕草でわかる気持ちなどが掲載されています。

 

・しつけの仕方
・散歩の仕方
・グッズ紹介
・どの犬種が合っているのか
・留守番のさせ方
・老犬との生活
・日常ケア

 

こんなカテゴリがありました^^

 

カテゴリも幅広く、情報も豊富ですね。

 

当院が監修しているわけではないのですが、いろいろな獣医師が記事監修をしていることもあり、しっかりとしたサイトになっている印象です。

 

犬の病気の情報、食べてはいけないものなど、様々な記事が出ていますので、お時間のある時に是非立ち寄ってみてください^^

>「わんちゃんホンポ」ウェブサイトはこちら

往診専門動物病院の存在を知ってもらう上で大切なことは、「一体何ができるのか」ですよね。

 

当院は犬猫の往診専門動物病院なため、今回は犬猫を専門とする往診(当院)と通常の動物病院を比較しながらお話しさせていただきます。

 

通常の動物病院をどう標準化してお話しするかですが、小規模の動物病院(獣医師1人、動物看護師2〜4人、血液検査機器、X線検査機器、超音波検査機器まで)を比較対象としていきます。

 

ちなみに、内視鏡を保有している動物病院は一般的ではないので、かかりつけの動物病院で内視鏡対応ができなければ、できる病院がどこにあるのか獣医師に事前確認しておきましょう。

 

万が一誤食してしまった場合、胃腸切開ではなく、内視鏡が備わっていれば、内視鏡下による摘出が選択肢に生まれてくるかもしれません^^

 

では、比較していきましょう。

 

【人数規模】

スタッフ数の差はないです。(※往診専門動物病院わんにゃん保健室の場合のみ)

 

当院の場合、獣医師(私)が1人、愛玩動物看護師が3人、動物ケアスタッフが1人の計5人体制ですので、今回比較する動物病院の規模と比較してもほぼほぼ一緒です。

 

ただ、通常の往診専門動物病院では、獣医師1人で運営しているところが大多数を占めていますので、当院がむしろ特殊なのかもしれません。

 

どんな診察においても、常に万が一の事態が起きることを想定していなければいけません。

 

その時のことを考えれば、ある程度のスタッフ人数規模が安全性の指標にもつながると、私個人としては強く考えています。

 

外回りと言われる、フリーな状態で臨機応変に動けるスタッフが1人、その場にいられるかどうかで、緊急時の初動速度に大きな差が生まれてきます。

 

もちろん熟練度は必須ですが、そこは外部からでは見ることができないため、比較しようがないため、客観的な数字だけで、まずは評価していきましょう。

 

 

【保定技術】

保定技術は、求められる能力によって異なりますが、基本的に相違ないです。

 

獣医師も保定に参加しますが、基本は補助スタッフである愛玩動物看護師にお願いすることが多く、彼らの保定能力は専門技術と言えるくらい高度なものです。

 

押さえ方一つで犬猫を興奮させてしまったり、不安にさせてしまったり、痛い思いをさせてしまったり...

 

そして、状態の悪い犬猫の保定はさらに難易度が高く、採血の保定一つをとっても、血圧も低く血管も細く潰れやすくなってしまった老体に対して、ゆっくりと十分量を採取するため、数分間全く動かさないくらいの覚悟ある保定が必要です。

 

令和5年4月1日に、動物看護師さんの資格が国家資格化したこともあり、ようやくこの専門的な能力を理解していただけるような社会になったんだなと思っています。

 

保定をご家族様にお願いすることは基本的にはないのですが、お母さん、お父さん抱っこの方が落ち着いて診察させてくれる場合もありますので、その際にはお声かけさせていただきます。

 

その場合にも、ご家族様の隣には必ず動物看護師が付きますので、安心して取り組んでいただけますので、一緒に頑張っていきましょう。

 

【問診】

往診は、飼い主様の声をヒアリングする問診に、特に力を入れています。

 

通常の動物病院では、初診時問診であって15分程度であることに対し、往診では1時間以上かけて、今までの経緯の全てをお伺いさせていただきます。

 

過去の検査結果がお手元にあれば、参考資料として、その場で見させていただきます。

 

当院の往診は、特にターミナルケアという終末期の医療としてご依頼いただくことが多いため、今までどんなことがあって、その時何をして、どうなったのか、その時どう感じたのかなど、時系列に沿ってできるだけ多くの情報をヒアリングさせていただき、今何ができるのかを考えていきます。

 

ご家族様のお話を最後まで伺い、やってあげたいことは何なのか、誰がそれをできるのか、現実問題実施可能なのか、などなどを一緒に考えていきます。

 

とはいうものの、緩和ケアやターミナルケアではなく、単純な処置のみでのお伺いを希望されることもありますので、状況次第で変化させていきます。

 

【検査】

大きな違いで言えば、X線検査と内視鏡検査は施設がある通常の動物病院でなければ実施できません。血液検査、尿検査、便検査など、その場に大型医療機器がなければ実施不可能ではない検査の多くは実施可能です。

検査結果はその場で出るものもあれば、持ち帰って検査結果を得られるものもあり、その場で結果を見て急ぎ方針を立てなければいけない病態を急性期といいますが、急性期であれば往診を待つのではなく、入院覚悟で急いで通院させましょう。

 

【処置と処方】

処方できる医薬品は動物病院の方針に依存しているため差はなく、全身麻酔をかけた処置を除いた内容では、できることに大きな差はないです。ただ、あえて書かせていただきたい大きな違い、それが「リスク」です。

 

万が一の時に挿管して人工呼吸器に繋ぐという一連の動作は、動物病院で設備が整っていなければいけません。

 

往診でのリスク説明が必須となってくると考えられる処置に、胸水抜去があります。

 

胸水抜去は、肋間に針を刺して胸腔から貯留してしまった液体を抜去してあげるのですが、肋間を針が通過する時に強い痛みがあり、ペットが大きく動いてしまうことが想定されます。

 

また、この状態の犬猫では呼吸状態が悪いことが予想されるため、当院では酸素環境を整え、信頼できる動物看護師を2人以上揃えてから、胸水抜去に挑んでおります。

 

万が一ペットが動いてしまって、肺を切ってしまうようなことが起こらないよう、準備できるものは万全にしておくことで、往診専門動物病院として7年目となる2023年現在においても、安全に胸水抜去が行えております。

 

まとめ

今回は、往診専門動物病院と小規模の動物病院とを比較して、往診専門動物病院とは一体どんなものなのかを説明させていただきました。

 

とどのつまり、ご家族様が動物病院選びをするときに必要なことは、外からしか判断ができないことを考えると、まずは医療設備がどんなものがあるのか、スタッフ体制や人数、といったことを病院のwebページで確認しましょう。

 

先生の力量は私たちから見てもわからないため、そこを判断基準に入れて考えると、きっと迷走してしまうと思われます。

 

治療を求めるのであれば通院、緩和を求めるのであれば往診。

 

診断を求めるのであれば検査が必要で、X線検査を含めた検査を希望するならば通院、猫の腎臓病などで血液検査と尿検査が必要なだけであれば、往診で十分対応可能です。

 

ペットの性格を加味して、診療形態を通院にするか、往診にするかを選んであげましょう。

 

まだまだ書き足りないことが山ほどあるので、これからもどんどん描いていきますので、お楽しみ^^

 

前回のブログ

往診専門動物病院を知る①(往診の現状と保定は専門技術ということ)

 

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当院の往診は、一過性の症状に対する治療にも対応しております。

在宅医療特化型の犬猫往診を東京23区を中心に近隣地区までお伺いし、慢性疾患に対する検査-処方コントロール、および緩和ケアと看取りまでのターミナルケアに対しては、専門的に取り組んでおります。

わんちゃん、猫ちゃんの在宅医療でお困りのご家族様、まずはご相談ください。(03-4500-8701 / 10:00-19:00 / 不定休)

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休診のお知らせ(東京/犬/猫/往診)

代表獣医師の江本です。

 

5月22日(月)、23日(火)は、社内総会のため休診とさせていただきます。

 

4月以降、終末期ケアを希望される診察で混み合ってしまい、通常の時間枠での予約が取りづらい状況となっております。

 

可能な限り診療時間外の枠も開放し、順次対応させていただいておりますので、診療をご希望される飼い主様は様子見してからではなく、お早めにご連絡ください。

 

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皆さんは、往診専門動物病院を利用されたことはございますか?

 

そもそも往診という診療形態は、従来から存在しており、人間では専門分野として確立されていますが、獣医療業界では、まだまだ通常の動物病院の診療サービスのオプションとして存在している程度でしか浸透していません。

 

施設を有する通常の動物病院の往診は、基本はずっと通院していたペットに対し、もう通院が難しいからと判断した時に、診療時間の合間を縫って処置のみで伺うことが多いとされています。

 

ポータブルの検査機器を準備されていれば、飼い主様のご自宅にて検査を実施することは可能ですが、通常診療の中で往診を求められる頻度が極端に少ないこともあり、ポータブルに特化した検査機器を完備しているところは少ないです。

 

もしかすると、ニーズはたくさんあるにもしても、動物病院では手術や検査などに時間を優先的に割かなければいけないという経営的な観点から、往診に対して消極的な対応となっているという側面が大きいのかもしれません。

 

なお、診察の時には保定」と言って、検査や処置の間できる限り動かないように抑える行為を診療を、専門技術を有する動物看護師にお願いするのですが、診察室にある診察台の上で行う保定と、ご自宅で行う保定では、同じようですが全然違うものを要求されます。

 

写真②(エコー+酸素).JPG

 

基本はご自宅の床上で行うため、体の柔軟性や失禁・脱糞・肛門腺を飛ばしてしまうなどの事象に対し、事前準備と飼い主様への説明であったり、その場合にどうするべきなのかなどを常に意識していなければいけません。

 

また、往診を希望されるペットの状態は、基本的には病気の末期で体力が極端に消耗していたりと、重体であることがほとんどです。

 

ましてや呼吸状態が悪いペットの保定には、どこをどれくらいの力で押さえるべきなのかがとても重要なため、それをご自宅の床上でやりながら、さらに言えば呼吸状態の変化に対して酸素供給の動線確保などを考えなければいけないなど、多岐にわたる意識分散が必要となってきます。

 

この状態のペットの保定を、通常であれば飼い主様に強いるようなことはしないのですが、獣医師が一人でお伺いするような往診診療を行なっている場合には、飼い主様自身でこの保定業務を行わなければいけません。

 

そのようなことが起きる場合には、細心の注意を払うのはもちろん、万が一胸やお腹を圧迫してしまって呼吸困難を引き起こしてしまった時に、どう対処したらいいのかなど、事前に獣医師に確認して万全の体制で臨みましょう。

 

最終的に、全ての判断を委ねられるのは、飼い主であるご家族様です。

 

できれば動物看護師を連れてきてもらえるよう、しっかりとお願いすることをお勧めします。

 

 

このようなことから、普段から在宅での診療を意識した準備をしていなければ、ペットの往診では、いろんなところにトラブルが潜んでいます。

 

しかし、実際の現場では、往診を希望されるシニア期のペットと暮らしているご家族様が多くいて、潜在ニーズとしては、往診を希望されるご家族様が多くいると考えています。

 

ただ、忙しく診療されている担当の獣医師や院長に、往診にきてほしいとなかなか言いづらいために、ペットに鞭打って通院させなければいけないような雰囲気を過ごしてしまっているのもまた、悲しい事実です。

 

そんな中、ペットが病気の末期で、もう動かすことすら厳しい状態になって初めて往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡をいただき、覚悟を持って終末期医療(ターミナルケア)の往診切り替えを希望されています。

 

月間で多い時だと初診数で20件ほどを受けていますが、今後はより診療件数が増えてくることが予想されるため、もし今後往診での緩和ケアやターミナルケアを希望される場合には、早期から一度ご連絡をいただき、カルテ作成と現状把握をさせていただくことをお勧めします。

 

もう少し早くご連絡をいただければという症例も多々ある中で、ご家族様にとって動物病院への通院は日常に存在するものですが、往診は非日常的な存在であると考えています。

 

そのため、ペットの往診専門が存在することすら知らなかったというご家族様が、当院初診時の大半を占めています。

 

写真③(皮下点滴写真).JPG

 

往診専門動物病院が、一体どんな性質の動物病院なのか、何ができるのか、実際の診療の雰囲気はどんなものなのかは、ブログやインスタなどで発信してはいるものの、ご家族様だけでなく、実は動物病院で働く獣医師や動物看護師の方たちもまだまだ知られていないのも事実です。

 

これからも、どんどん往診専門動物病院の実態について発信していきますので、往診を将来的に利用されるかもしれないと考えているご家族様、紹介先として往診専門動物病院を差がされている動物医療関係者の方々は、是非当院のブログを見ていただければと思います。

 

前置きが長くなってしまいましたが、次のブログでは【往診専門動物病院でできることとできないこと】を書かせていただきます。

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当院の往診は、一過性の症状に対する治療にも対応しております。

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緩和ケアをご存知でしょうか?

 

人の医療の方では、十分にその分野が周知されつつありますが、ペットの医療である獣医療業界では、まだまだその認知度は低いです。

 

緩和ケアとは、『慢性疾患やがんなど、もう治すことはできない病気に対して、苦痛をできる限り軽減することを最大の目的とした行為』です。(※個人的な見解ですが、このように考えています。)

 

緩和ケアと治療の違いは、以前ブログで書かせていただきましたので、本ブログの最後にリンクを載せておきます。後ほどご一読いただけたら幸いです。

 

今回は、この『ペットの緩和ケア』について、動物病院への通院と往診による在宅医療では、どんなメリット・デメリットがあるのかを書かせていただきます。

 

愛犬・愛猫が病気になった時、最初はもちろん治療を望みます。

 

治せる病気であれば、治療に踏み切ることを推奨します。

 

もしその病気が急性疾患ならば... 入院治療で良くなるならば...

 

動物病院に通院させ、入院管理による集中的な医療を選択される方は多くいます。

 

ただ、もしその病気が慢性疾患や癌などで、治療ではなく定期的な検診による毎日の投薬によるコントロールが重要とされる状態であれば、もう通院ではなく往診に切り替えたいと考えられるご家族様もいます。

 

通院なのか、往診なのか。

 

選択の参考になれればと思います。

 

今回は、以下のような症例で検討していきます。

 

【症例】

日本猫、16歳、慢性腎臓病(腎不全)。

1ヶ月ほど前からの食欲不振を主訴に動物病院へ通院したところ、慢性腎臓病(腎不全)のステージ4とされ、現在は月1回の血液検査で経過観察し、内服薬2種類と2日に1回の皮下点滴でコントロール中。

 

【通院のメリット】

通院でのメリットは、その場で幅広い検査結果が出るということと、必要に応じてX線検査を実施できることが挙げられます。

また、血液検査結果が大きく悪化していて、静脈点滴を推奨される状況だった場合に、ご家族様の同意のもと、集中的に静脈点滴を入院管理下で実施できるので、急性期には最適と考えられます。

 

【通院のデメリット】

通院と往診の大きな違いに、「通院させなければいけない」という通院ストレスの存在は大きくあります。

緩和ケアのステージでは高い頻度での通院が求められるため、帰宅するとぐったりしてしまうタイプの犬猫には、早期からの往診切り替えを検討するといいかと思われます。

 

【往診のメリット】

往診のメリットは、何といっても「自宅にいながら医療を受けられる」、そして「診療後すぐに好きな場所に隠れられる」です。

血液検査や尿検査などであれば、通院しなくても往診で可能です。

今回の症例で、もしこの猫ちゃんが通院が苦手な性格だとするならば、早期から往診に切り替えましょう。

 

【往診のデメリット】

往診は救急に不適なため、万が一に急変や入院を必要としているような場合には、往診では対応できません。

このような場合に、動物病院へ飛び込むか、もう通院させることがこの子にとって歩単位なるのでさせたくないと考える場合には、事前に今後起こりうる症状に対する対策を打っておくことで、ご自宅でいかにして過ごせるかを議論しておく必要があります。

また、往診は通院と比べて診療費がかかることは忘れてはダメです。

動物病院が家に来て、2時間ほど診療に時間を費やすため、通常の動物病院での診療がおおよそ10分間だとすると、単純に12倍ほどかかる可能性があります。

おそらく、この症例であれば、1ヶ月単位での検査と処方ですので3〜5倍程度かもしれませんが、往診は通院と比べると費用が嵩むことは覚えておきましょう。

ただ、その分色々な相談ができたり、生活環境を加味した最適な診療プランを組んでもらえるという最大のメリットがあることもあるため、ペットの負担を減らしてあげたいと感じた時に、一度往診専門動物病院へ相談してみるといいかと思われます^^

 

まとめ

今回紹介したケース「猫の慢性腎臓病(腎不全)」は、通院よりも往診での検診と処方が最適になりやすい症例です。

 

ただ、同じケースだとしても猫ではなくて犬の場合、費用面や検査設備面などから、往診よりも通院が好まれると考えます。

 

わんちゃんの多くがお散歩に出かける習慣があるため、連れ出すことが容易なことから、通院も難なくこなせる子が多いです。(中には、動物病院が苦手すぎる犬もいます...)

 

一緒に暮らすペットの性質を見極めて、ご家族様が判断してあげましょう。

 

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当院の往診は、一過性の症状に対する治療にも対応しております。

在宅医療特化型の犬猫往診を東京23区を中心に近隣地区までお伺いし、慢性疾患に対する検査・処方コントロール、および緩和ケアと看取りまでのターミナルケアに対しては、専門的に取り組んでおります。

わんちゃん、猫ちゃんの在宅医療でお困りのご家族様、まずはご相談ください。(03-4500-8701 / 10:00-19:00 / 不定休)

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次回は往診専門動物病院選択の注意点についてです^^

 

 

前回の記事

前回の記事は、以下からお読みいただけます。

・治療と緩和ケアの違い

 

 

 

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最近話題になっている【OpenAI】を使って、当院について聞いてみました^^

 

なんか面白かったので、共有させていただきます^^

 

Q. 往診専門動物病院では、どんな診療ができるのですか?

往診専門の動物病院では、獣医師が患者の自宅を訪れて診療を行います。これは、特にペットが病院に連れて行くのが困難な場合や、ストレスを軽減したい場合に便利です。往診専門の動物病院で行われる一般的な診療内容は以下の通りです。

1. 健康診断:ペットの健康状態をチェックし、病気や問題の早期発見を目指します。

2. 予防接種:犬や猫に必要なワクチンを接種し、感染症の予防に努めます。

3. 内科診療:呼吸器、消化器、循環器、内分泌器、泌尿器などの内科的疾患の診断と治療が行われます。

4. 外科診療:軽度の外科手術が可能な場合もありますが、重度の手術は通常、病院で行われます。

5. 歯科診療:歯石除去や歯周病の治療が行われます。

6. 皮膚診療:皮膚病の診断と治療が行われます。

7. 行動診療:ペットの行動問題に対処するためのアドバイスや指導が提供されます。

ただし、往診専門の動物病院では、設備や治療範囲が限定されるため、より専門的な診療や検査、手術が必要な場合は、通常の動物病院を受診することが推奨されます。往診獣医師の専門分野やサービスは個々に異なるため、具体的な診療内容については、事前に往診獣医師に確認することが重要です。

 

・・・・なるほど!外科や歯科は、基本的に往診では受けるべきではないと考えていますが、ほぼほぼずれなく回答が返ってきました^^

当院では、歯科治療は犬猫の歯科専門または歯科に精通した獣医師がいる動物病院を紹介受信していただくよう手配しています。外科に関しては、もし必要な場合には、歯科同様、信頼できる動物病院をご紹介させていただいています^^

紹介先は近隣からかんとうけんまでと幅広く、ご家族様のニーズに合う動物病院を一緒に選定しています^^

 

Q. 江本宏平(院長)について教えてください。

江本宏平先生は、日本で往診専門の動物病院での在宅医療を確立した第一人者であり、ペットの在宅緩和ケアやターミナルケア(終末期医療)の先駆者です。2017年2月に東京台東区であさくさワンニャン保健室を設立し、2018年3月16日に往診専門動物病院わんにゃん保健室を開設しました。

 

江本先生はまた、2022年11月に『猫の介護ハンドブック』を出版し、日本におけるペットの介護分野の発展に貢献しています。先生の専門知識や活動は、ペットと飼い主にとって非常に重要であり、ペット医療の進歩に大きく寄与しています。

 

どこで仕入れた情報なのか、びっくりしました。

AIに評価していただけて嬉しいです^^

 

Q. わんにゃん保健室って知ってる?

はい、「わんにゃん保健室」とは、往診専門の動物病院であり、犬や猫を対象として診療を行うクリニックです。以前の会話で触れられた江本宏平先生が開設した往診専門動物病院わんにゃん保健室は、ペットの在宅緩和ケアやターミナルケア(終末期医療)に特化した診療を提供しています。

このような往診専門の動物病院は、ペットのストレス軽減や飼い主の負担を軽くするために重要です。自宅での診療により、病院への移動が困難なペットや、高齢・障害のあるペットに対しても適切なケアが提供されることになります。江本先生が開設したわんにゃん保健室は、ペットと飼い主にとって非常に有益なサービスを提供していると言えます。

 

質問をしていくたびに、どんどん知識が深まっているような回答が返ってきます...!

 

Q. わんにゃん保健室の緩和ケアについて教えてください。

わんにゃん保健室で提供されている緩和ケアは、ペットの痛みや不快感を軽減し、生活の質を向上させることを目的としたケアです。緩和ケアは、主に慢性疾患やがんなどの重度の疾患を抱えるペットに対して行われます。具体的な緩和ケアの内容は、ペットの状況や病気によって異なりますが、以下にいくつかの例を挙げます。

 

疼痛管理:痛みを和らげるための薬物療法や、必要に応じて鎮痛剤の投与などが行われます。

闘病生活のサポート:ペットの日常生活を楽にするための工夫やアドバイスが提供されます。たとえば、食事の工夫や運動プログラムなどが含まれます。

通院が困難なペットのケア:自宅での診療により、ペットのストレスを軽減し、飼い主の負担も軽くします。

症状の緩和:呼吸困難や消化不良などの症状を緩和するための治療が行われます。

ターミナルケア:終末期にあるペットのケアや、飼い主への精神的サポートが提供されます。

緩和ケアは、ペットが快適で安らかな生活を送ることができるように、症状や状態に応じた適切なケアが行われます。これにより、ペットと飼い主の心身の負担が軽減され、ペットの生活の質が向上します。

 

うん、なんだか文明の進化に触れたような気がしました。

 

動物医療の今後の進歩には、IT分野をどうやって取り入れるのかが課題となっていると考えます。

 

往診という診療形態は、最大のアナログ診療ではあるものの、システムとしてITを活用しないとと思える今日この頃でした。

 

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犬猫の往診専門動物病院
わんにゃん保健室
 
猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
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