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「ペットの緩和ケアって、具体的にどんなことをするんだろう?」

「治療をあきらめるということなの?」

こういった疑問をお持ちのご家族も少なくありません。緩和ケアは、ペットが病気や老化に伴う苦痛を軽減し、最期の時間を安心して過ごせるようにサポートするケアです。そして、それはペットだけでなく、ご家族の心の支えとなる重要な役割も果たします。

ペットが穏やかに過ごすことは、ご家族にとっても大きな安心感となり、「最期まで一緒にいられた」という実感を与えます。このブログでは、ペットの緩和ケアがどのようにペットとご家族を支えるのか、具体的な内容や事例を交えながらお伝えします。

ペットとの時間を大切にしたいと考えるすべてのご家族に向けて、緩和ケアという選択肢を知っていただければと思います。

 

 

1. ペットの緩和ケアとは:最期を穏やかに過ごすために

ペットの緩和ケアとは、病気や老化に伴う苦痛を和らげ、最期の時間を穏やかに過ごせるようにするためのケアです。ペット自身の体や心に寄り添うだけでなく、ご家族がその時間を悔いなく過ごせるようにサポートすることも、緩和ケアの大切な目的のひとつです。

 

病気や老化による苦痛を和らげるケア

病気が進行すると、痛みや呼吸困難、食欲低下など、ペットの生活に大きな負担がかかる症状が現れます。緩和ケアでは、こうした苦痛を少しでも和らげるために、以下のようなケアを行います。

  • 痛みを和らげるための鎮痛剤や皮下点滴の活用
  • 呼吸が苦しいときの酸素環境の整備
  • 食欲が落ちたときの特別な食事や栄養補助の工夫

これらのケアは、ペットが「その瞬間」を少しでも快適に過ごせるよう、病状や性格に合わせて柔軟に対応します。

 

ペットの「今」に寄り添うとは

緩和ケアの本質は、ペットが持つ「今」を大切にすることにあります。治療の延命効果を追求するのではなく、ペットが穏やかに、そして安心して過ごせる時間を最大限に引き出すことを目的としています。

例えば、治療のために負担が大きい検査や処置を繰り返すのではなく、ご自宅でペットがリラックスできる環境の中でケアを行うことで、ペット自身のストレスを軽減することができます。

ペットの緩和ケアは「治すこと」が目的ではありません。それでも、ペットが最期の時間を穏やかに過ごし、ご家族と安心して過ごせることを目指す、大切な選択肢です。

 

 

 

2. 緩和ケアでペットが得られる穏やかな時間

ペットの緩和ケアは、病気や老化による苦痛を軽減し、「穏やかな時間」を作るために行われます。緩和ケアを受けたペットは、身体的な負担が減るだけでなく、精神的にも落ち着きを取り戻すことができるのです。ここでは、緩和ケアがもたらす具体的な効果についてご紹介します。

 

痛みや苦しみを軽減する具体的な方法

病気が進行すると、痛みや苦しみがペットの生活に影響を与えます。緩和ケアでは、以下のような方法でこれらを和らげます。

  1. 痛みを抑える鎮痛薬や皮下点滴
    症状や病気の種類に合わせて、ペットができる限り快適に過ごせるよう、痛みを和らげる薬を使用します。内服薬が難しくなった場合には、皮下点滴で薬を投与することも可能です。

  2. 呼吸が苦しいときの酸素環境整備
    胸水貯留や肺への負担がある場合には、酸素発生装置を用いて呼吸を助ける環境を整えます。酸素濃度を保つことで、ペットが呼吸を楽に行えるようサポートします。

  3. 寝床や生活スペースの工夫
    ペットの体が楽になるように、寝床の素材や温度管理を工夫します。特に高齢のペットでは、床ずれや関節の負担を軽減するためのマットやブランケットが役立ちます。

 

呼吸が苦しいときの酸素環境整備

呼吸困難はペットにとって非常に辛い症状です。緩和ケアでは、酸素発生装置を活用して酸素環境を整え、ペットが呼吸しやすい状況を作ります。具体的には以下のような取り組みを行います。

  • 酸素発生装置の導入と運用
  • ペットの状態に応じた酸素濃度の調整
  • 鼻先に酸素を吹きかけるなどの負担が少ない方法の採用

これにより、ペットは呼吸の負担が軽減し、安らぎを取り戻します。

 

食欲が落ちたときのサポート

食欲低下は、病気が進行したペットによく見られる症状です。緩和ケアでは、食事をサポートするために以下のような工夫を行います。

  • ペットが好む特別な食事を用意
  • 水分補給がしやすい形での食事提供
  • 栄養補助食品や流動食の活用

これらの工夫によって、ペットは少量でも栄養を摂取でき、体力を維持しやすくなります。

 

ペットの緩和ケアは、痛みや苦しみを軽減し、穏やかで快適な時間を過ごせるようサポートするものです。

 

 

3. ご家族の心を支える緩和ケアの役割

ペットの緩和ケアは、ペットだけでなく、ご家族にとっても大きな支えとなります。病気や老化が進行し、ペットが苦しそうな姿を見ることは、ご家族にとって心の負担が非常に大きいものです。緩和ケアは、その苦しみを和らげ、ペットとの時間を大切に過ごせるようにするためのサポートでもあります。

 

ペットの苦しみを軽減することで心の負担を軽くする

ご家族が最も辛いと感じるのは、ペットが痛みや苦しみを感じているときです。緩和ケアでは、ペットの症状を客観的に捉え、適切な方法で苦痛を和らげます。

例えば、呼吸困難が起きた場合に酸素環境を整えることで、ペットが苦しそうな様子が和らぎます。このように具体的なケアを行うことで、ご家族も「ペットの苦しみを軽減できている」という安心感を持つことができます。

 

ご家族が「最期まで一緒にいられる」安心感

緩和ケアを受けることで、ペットが自宅で最期の時間を過ごすことができるようになります。通院や入院のストレスから解放され、慣れ親しんだ環境で穏やかに過ごすペットの姿を見ることは、ご家族にとっても大きな安心感につながります。

ご家族からは、「最期まで家で一緒にいられたことで、後悔がありません」というお言葉をいただくことが多くあります。この安心感は、在宅緩和ケアならではの大きなメリットです。

 

ペットとの時間を最大限に活用するために

緩和ケアでは、ペットとの時間をより大切に過ごせるようにサポートします。例えば、ペットがリラックスできる環境を整えたり、好きな食べ物を用意したりすることで、ペットが穏やかに過ごせる時間を増やすことができます。

さらに、緩和ケアを行うことで、ご家族は「今」という時間に集中しやすくなります。病気の進行に目を向けるだけではなく、ペットとの日々を楽しむことができるようになるのです。

 

緩和ケアは、ご家族にとって「ペットと共に歩む最後の時間」を支える重要な役割を果たします。

 

 

4. 緩和ケアでよくある誤解とその解消

緩和ケアに対して、「治療をあきらめることでは?」という誤解を持たれる方も少なくありません。しかし、緩和ケアはあきらめではなく、ペットとご家族が穏やかに過ごせる時間を作るための重要な選択肢です。ここでは、緩和ケアに対する誤解とその正しい理解について解説します。

 

「緩和ケアはあきらめではない」という考え方

緩和ケアの目的は、病気を「治すこと」ではなく、ペットが感じる苦痛を和らげ、最期の時間を穏やかに過ごせるようにすることです。

例えば、進行した腫瘍や老化に伴う症状では、治療の効果が期待できないこともあります。その場合でも、ペットが快適に過ごせる環境を整え、症状を管理することで、ペットとご家族が一緒に過ごせる大切な時間を作り出すことができます。

 

治療を継続しながらの緩和ケアも可能

緩和ケアは治療と完全に切り離されるものではありません。症状が軽減できる治療を併用しながら緩和ケアを行うことも可能です。

例えば、腫瘍が進行している場合には、抗がん剤を少量だけ投与することで症状を抑える治療を行いながら、痛みの緩和や呼吸のサポートを行うことがあります。このように、ペットの状態に応じて柔軟に対応するのが緩和ケアの特徴です。

 

緩和ケアを始めるタイミングとは?

緩和ケアは「治療がもうできない」と言われたときだけの選択肢ではありません。むしろ、以下のようなタイミングで始めることをお勧めします。

  • ペットの通院が難しくなったとき
  • 病状が進行し、症状がつらそうに見えるとき
  • ペットの負担を減らしてあげたいと思ったとき

早い段階で緩和ケアを取り入れることで、ペットとご家族がゆっくりと穏やかに過ごせる時間を増やすことができます。

 

緩和ケアは、ペットとご家族にとって大切な選択肢のひとつです。

 

 

5. 実際に緩和ケアを選択したご家族の声

緩和ケアを選択することで、ペットとご家族がどのような時間を過ごせるのか、具体的な事例を通じてご紹介します。緩和ケアを通じて得られた穏やかな時間や安心感は、多くのご家族にとって忘れられない大切な思い出となっています。

 

「家で穏やかに過ごせた」:猫の事例

心筋症を抱えていた15歳の猫ちゃんのご家族は、通院のたびにぐったりする愛猫の姿に胸を痛めていました。そこで往診での緩和ケアを選択。酸素発生装置や皮下点滴を使ったケアを中心に、ご自宅での診療を続けました。

「苦しい時間が減り、最期まで一緒にいられたことが本当に嬉しいです。愛猫がリラックスしている姿を見るたびに、緩和ケアを選んでよかったと思いました」と語るご家族。最後の時間まで、自宅で穏やかに過ごせたことが心の支えになったそうです。

 

「心穏やかに送り出せた」:大型犬の事例

ゴールデンレトリバーのロイくん(10歳)は、腫瘍が進行し、呼吸が苦しい状態が続いていました。ご家族は在宅緩和ケアを選択し、酸素発生装置の導入や頓服薬の指導を受けながら、ロイくんと向き合いました。

「緩和ケアを始めるまでは、不安と悲しみでいっぱいでした。でも、往診の先生が親身に寄り添ってくれたおかげで、私たちも冷静に対応できるようになりました。ロイが苦しむことなく、穏やかな顔で眠りにつけたのが何よりの救いです」と語るご家族の言葉が印象的でした。

 

「緩和ケアが支えとなった時間」

緩和ケアを受けたご家族の多くが、「自宅で過ごせる時間がペットとの絆を深める機会になった」とお話しされています。最期の時間を大切にすることは、ご家族自身の心の整理にもつながります。

 

 

6. 緩和ケアを支える往診サービスの価値

ペットが高齢や病気の進行によって通院が難しくなると、往診サービスによる在宅緩和ケアが大きな力を発揮します。通院のストレスや体力消耗を避け、ご自宅で穏やかに過ごせる環境を整えることが、ペットとご家族の負担を大幅に軽減します。

 

通院が難しいペットとご家族の負担を軽減

通院が難しいペットの場合、キャリーや車への移動だけでも大きなストレスとなります。特に大型犬の場合、体を持ち上げる作業や車への積み込みはご家族にとっても一苦労です。また、通院中の待ち時間や帰宅後のぐったりした様子を見て、心を痛めるご家族も少なくありません。

往診サービスでは、獣医師が直接ご自宅に訪問し、診療やケアを行うため、ペットは安心できる自宅で過ごすことができます。これにより、ペットのストレスを減らし、ご家族も安心してケアに集中できる環境を作ることができます。

 

ご自宅で行える診療やケア内容

往診による在宅緩和ケアでは、通院とほぼ同等の診療やケアを行うことが可能です。具体的には、以下のようなケアが含まれます。

  • 酸素発生装置や酸素環境の整備
    呼吸が苦しいペットに合わせた酸素供給を行います。
  • 胸水や心嚢水の抜去
    必要に応じて専門的な処置を在宅で行います。
  • 皮下点滴や頓服薬の投与
    内服薬が難しくなった場合の対応も可能です。
  • ご家族へのケア指導
    日常的なケアや緊急時の対応方法を丁寧にお伝えします。

 

ご家族とペットに合わせた柔軟なケアプラン

往診サービスでは、ペットの症状やご家族の希望に合わせて、柔軟なケアプランを作成します。緩和ケアにおいては、ご家族の心のサポートも重要な要素のひとつです。そのため、獣医師がペットの状態だけでなく、ご家族の不安や希望にも耳を傾けながらケアを進めていきます。

 

 

7. ペットの緩和ケアを検討するタイミング

ペットの緩和ケアは、病気の進行や高齢による体力の低下が見られるタイミングで考え始めることが大切です。「まだ大丈夫」と先延ばしにしてしまうと、緩和ケアを始めるタイミングを逃してしまい、ペットとご家族が苦しい時間を過ごすことにもつながりかねません。

 

病状が進行したとき

例えば、腫瘍や心臓病などの病気が進行し、以下のような症状が現れたときは、緩和ケアの検討を始めるサインです。

  • 痛みや呼吸困難が見られる
  • 食欲が落ち、体重が減少している
  • 活動量が減り、疲れやすくなった

これらの症状がある場合、治療の継続だけではなく、ペットが少しでも穏やかに過ごせるケアが求められます。

 

ペットの負担を減らしたいと感じたとき

ペットが通院を嫌がったり、移動中にぐったりしてしまう様子を見て「もっと楽に過ごさせてあげたい」と感じることがあるかもしれません。このようなとき、往診による在宅緩和ケアが非常に有効です。

通院が必要なくなることで、ペットが慣れ親しんだ環境でストレスを感じることなくケアを受けることができます。また、ご家族の負担も大幅に軽減されるため、ペットとの時間をより穏やかに過ごすことができるようになります。

 

ご家族が安心して選べるように

緩和ケアを検討する際には、獣医師との十分な相談が重要です。ペットの状態やご家族の希望を共有し、一緒に最適なケアプランを考えることで、後悔のない選択ができます。

緩和ケアは、ペットとご家族が最期の時間を穏やかに過ごせるための大切な手段です。「まだ早いかも」と思わず、少しでも気になることがあれば、ぜひ専門家に相談してみてください。

 

 

8. わんにゃん保健室が提供する緩和ケアの特徴

わんにゃん保健室では、通院が難しいペットとご家族のために、在宅緩和ケアを中心とした診療を行っています。ペットの最期の時間を穏やかに過ごせるよう、ペットとご家族の負担を軽減し、安心できるサポートを提供しています。

 

ペットの「今」と「これから」に寄り添う診療

わんにゃん保健室の在宅緩和ケアは、ペットの状態やご家族の希望に合わせたオーダーメイドのケアを特徴としています。以下のようなサービスを提供しています。

  • ペットの症状に応じた柔軟なケアプラン
    痛みの緩和や呼吸のサポートなど、病状に応じた具体的なケアを行います。
  • ご家族への丁寧な説明と相談
    ペットの状態をわかりやすく説明し、不安や疑問に寄り添いながら対応します。
  • 訪問時の細やかな診療
    酸素環境の整備や皮下点滴など、専門的な処置もご自宅で行うことができます。

 

東京23区を中心とした往診サービス

わんにゃん保健室は、東京23区を中心に往診サービスを提供しています。通院が難しいペットとご家族が、住み慣れた環境で安心してケアを受けられるようサポートしています。

特に、通院が困難な大型犬や高齢のペットにとって、自宅でケアを受けられることは大きなメリットとなります。診療に関するご相談や予約は、電話やウェブサイトの問い合わせフォームから受け付けています。

 

ご家族が笑顔で見守れる最期をサポート

緩和ケアの目的は、ペットとご家族が笑顔で過ごせる時間を作ることです。ペットが安心して穏やかに過ごせる環境を整え、ご家族が「一緒にいて良かった」と感じられる時間をサポートします。

「ペットの最期の時間を大切にしたい」とお考えの方は、ぜひわんにゃん保健室にご相談ください。一緒に最善のケアプランを考え、ペットとご家族の笑顔を守るお手伝いをさせていただきます。

お問い合わせはお気軽にどうぞ。ペットとご家族の安心できる時間を、一緒に作っていきましょう。

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犬猫の往診専門動物病院
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ゴールデンレトリバーの男の子(8歳)を飼っている東京江戸川区在住のご夫婦から、こんな相談をいただきました。

「散歩が大好きだった子が、最近疲れやすくなって、呼吸も浅く速い気がします。検査をしてみたら、胸水が溜まっていると診断されました。これからの通院が難しくなりそうで、在宅でのケアができないかと考えています」

腫瘍が胸腔内に転移し、胸水貯留を繰り返す状況になると、通院そのものが犬にとって大きな負担になることがあります。特に大型犬は体重が重いため、移動させることが飼い主さん自身の負担も重なります。

この記事では、通院から在宅緩和ケアに切り替えたゴールデンレトリバーの実例をもとに、胸水貯留に対応するための具体的なケア方法や酸素環境の整備について詳しくお話しします。在宅緩和ケアは、ペットとご家族が安心して穏やかな時間を過ごせる選択肢の一つです。江戸川区をはじめとする東京23区での往診サービスに興味がある方にとっても、参考になる情報をお届けします。

 

 

1. 腫瘍の胸腔内転移と胸水貯留の発覚から在宅緩和ケアへの切り替え

ゴールデンレトリバーの男の子(8歳)は、東京江戸川区の河川敷を歩くのが大好きな、元気いっぱいの大型犬でした。しかし、ここ最近、散歩を途中で嫌がるようになり、帰宅後に息が荒くなることが増えました。さらに、伏せたまま立ち上がるのを躊躇する様子が見られるようになり、高齢のご夫婦は心配して動物病院を受診しました。

診断結果は「腫瘍の胸腔内転移」と「胸水貯留」でした。腫瘍が胸腔内に広がることで液体が溜まり、肺を圧迫して呼吸が苦しくなっていたのです。胸水は一度抜いても再び溜まることが多く、今後は定期的に胸水抜去が必要になるとのことでした。

 

通院のハードルが上がる大型犬の特性

大型犬の場合、歩行が困難になると一気に通院が難しくなります。車に乗せるだけでも、体重があるため高齢のご夫婦にとって大きな負担です。また、動物病院では待ち時間が長くなることもあり、犬が疲れてしまう様子を見ると「本当にこれが最善なのだろうか」と悩むようになりました。

ご夫婦が往診の選択肢を検討し始めたのは、動物病院での診察中に疲れ切って伏せている愛犬の姿を見たときでした。「これ以上無理をさせたくない」という思いが強まり、往診専門の動物病院に相談することを決意されました。

 

在宅緩和ケアを選択した理由

在宅緩和ケアでは、犬が自宅でリラックスした状態で診療を受けられるため、通院時のストレスが大幅に軽減されます。また、頻繁な胸水抜去や内服薬の調整も、往診なら負担を最小限に抑えて行うことが可能です。特に、大型犬では一度歩けなくなると移動そのものが難しくなるため、早めの段階で往診に切り替えることで、飼い主さんと犬双方の負担を減らせます。

ご夫婦は「自宅でケアが受けられるなら」と在宅緩和ケアを選択し、まずは胸水抜去や酸素環境の準備を中心にしたケアプランをスタートしました。

 

 

2. 在宅緩和ケア開始後の診療内容と環境整備

在宅緩和ケアを選択したロイくんとご夫婦は、初めての往診診療の日を迎えました。この診療では、ロイくんの現在の状態を細かく把握し、今後のケアプランを慎重に立てることが目標でした。

 

内服薬からのスタートと皮下点滴への準備

診療開始時、ロイくんはまだ自力で食事を取ることができていました。そのため、腫瘍性胸水を抑えるための薬や心臓の負担を軽減する薬など、内服薬を中心とした治療プランが導入されました。大型犬であるロイくんは、比較的内服薬を問題なく飲める状況にありましたが、同時に「今後内服が難しくなる可能性」についても説明を行いました。

ご夫婦には、「内服薬が飲めなくなった際に備えて皮下点滴を準備しておく」ことを提案しました。腫瘍症例の場合、最後の1週間ほどで内服から皮下点滴への切り替えが必要になるケースが多いため、あらかじめ皮下点滴の方法や薬剤の準備を進めることで、ご家族の不安を軽減することができました。

 

酸素環境の構築と工夫

胸水貯留による呼吸の負担を軽減するため、酸素発生装置を導入しました。ロイくんのような大型犬では、猫や小型犬のように酸素ハウスを作るのが難しいため、鼻先に酸素を吹きかける方法が採用されました。この方法では、酸素発生装置を2台使用し、風量を増やして効率よく酸素を供給します。

さらに、ご夫婦と相談しながら簡易的な酸素マスクをDIYで作成しました。段ボールを加工してロイくんの顔全体をカバーできるように工夫し、その中に酸素を送り込む仕組みを整えました。酸素環境の効果はすぐに現れ、呼吸が浅かったロイくんも、穏やかに息ができる時間が増えました。

酸素環境を整えることで、ご夫婦は「呼吸が苦しそうになっても対応できる」という安心感を持てるようになり、ロイくんと穏やかな時間を過ごすことができました。

 

 

3. 胸水貯留の進行と胸水抜去:ゴールデンレトリバーのケアの工夫

在宅緩和ケアを始めて数週間後、ゴールデンレトリバーのロイくんの胸水貯留が再び目立つようになりました。大型犬では、胸水が溜まると肺が圧迫され、呼吸が浅く速くなる「努力呼吸」の症状が現れます。この時期から胸水抜去を定期的に行うことが、ロイくんの生活の質を維持するための重要なケアとなりました。

 

胸水抜去のタイミングと頻度

初回の胸水抜去は、往診診療の際に実施しました。この処置では、細い針を胸に刺して溜まった液体を排出します。ロイくんの場合、約300mlの胸水が抜け、直後に呼吸が安定し、顔色も戻るほどの効果が見られました。

大型犬の胸水抜去では、猫や小型犬に比べて体格が大きい分、処置中の安定性が求められます。しかし、ゴールデンレトリバーのような痛みに強い犬種の場合、鎮静処置を行わずに実施できることが多いです。ロイくんも、処置中は大きな動きも見せず、穏やかに対応してくれました。

胸水抜去の頻度は、ロイくんの症状に応じて変化しました。最初は2~3週間に1回程度の頻度でしたが、症状が進行するにつれて週1回、最終的には2~3日に1回の処置が必要となりました。ご家族には「胸水が溜まるタイミングを見逃さないこと」が重要であると説明し、呼吸状態を常に観察するようお願いしました。

 

胸水抜去をスムーズに行うための工夫

胸水抜去は体への負担を伴うため、ロイくんの状態を確認しながら慎重に進めました。以下の工夫を取り入れることで、負担を軽減しながらケアを続けることができました。

  1. 診療前の準備
    酸素発生装置を稼働させ、処置前に十分な酸素を吸入して呼吸を安定させる。

  2. ご家族の協力
    ご夫婦には、ロイくんがリラックスできる環境を整えていただき、診療中も優しく声をかけてもらいました。

  3. 負担の少ない処置
    胸水抜去の際には、処置時間を短縮し、可能な限りストレスを与えないよう工夫しました。また、処置後には十分な休息時間を確保し、ロイくんの体力を回復させることを重視しました。

胸水抜去は、ゴールデンレトリバーのような大型犬の在宅緩和ケアにおいて重要な役割を果たします。処置が成功するたびに、ロイくんの呼吸が楽になる様子を見たご夫婦は「在宅ケアを選んで本当によかった」と感じたとお話ししていました。

 

 

4. 酸素環境の活用とゴールデンレトリバーへの対応方法

胸水貯留が進行し、呼吸が苦しくなる時間が増える中で、ロイくんの生活を支える上で欠かせなかったのが酸素環境の整備でした。大型犬であるゴールデンレトリバーには、小型犬や猫と異なる酸素管理の工夫が必要でした。

 

酸素発生装置の設置と工夫

ロイくんには酸素発生装置を2台導入し、十分な酸素供給が可能な環境を作りました。大型犬では、酸素ハウスのような閉じた空間を作ることが難しいため、鼻先に酸素を直接吹きかける方法を採用しました。

さらに、段ボールを加工してロイくんの頭部を覆える簡易的な酸素マスクをDIYで作成しました。このマスク内に酸素を送り込むことで、効率的に酸素濃度を高めることができました。また、ご夫婦には酸素装置の運用方法を丁寧に説明し、酸素濃度をモニタリングしながら調整する方法もお伝えしました。

 

大型犬に特化した酸素環境の注意点
  1. 風量の確保
    大型犬の肺容量に対応するためには、酸素発生装置の風量が重要です。ロイくんの場合、1台では不十分だったため、2台を並行稼働させました。

  2. 酸素濃度の調整
    鼻先に酸素を吹きかける方法では、吹きかける位置や方向によって濃度が変わるため、常に犬の状態を観察しながら適切な濃度を保つ必要があります。

 

ご家族のサポートで生まれた安心感

酸素環境を整えたことで、ロイくんは息苦しさが軽減し、呼吸が安定する時間が増えました。また、「呼吸が乱れたときにどうすればいいのか」をご夫婦が把握できたことで、不安も和らいだようでした。

「酸素があるだけで、ロイが楽になっているのがわかります。本当に助かりました」と、ご夫婦からもお声をいただきました。大型犬のケアには独自の課題がありますが、酸素環境を整えることでその多くを解決することが可能です。

 

 

5. ターミナル期に向けたケアとご家族の心構え

在宅緩和ケアが進む中で、ロイくんの状態は少しずつ変化していきました。胸水の貯留頻度が増え、内服薬を飲むのが難しくなってきたタイミングで、ご夫婦と一緒にターミナルケアへの準備を進めることになりました。この時期は、ロイくんが安心して過ごせるよう、ご家族の協力がこれまで以上に重要となりました。

 

最期の1週間で必要な準備

ロイくんのような大型犬のターミナル期では、以下の準備が特に重要です。

  1. スケジュールの調整
    「最期の時間を家族全員で見守りたい」というご夫婦の希望を受け、仕事や予定を調整していただき、ロイくんに寄り添う時間を確保してもらいました。

  2. 皮下点滴への切り替え
    内服薬が難しくなったロイくんには、皮下点滴での薬剤投与を開始しました。腫瘍症例の場合、水分補正が不要なことが多いため、少量の輸液剤を希釈液として使用し、負担を最小限に抑えました。この方法により、ロイくんは穏やかな状態を保つことができました。

  3. 酸素環境の強化
    胸水の再貯留が進む中、酸素発生装置の設定を見直し、より効率的に酸素を供給できるよう調整しました。特に呼吸が苦しそうなときには、酸素の吹きかけを強化するようご家族に指導しました。

 

ご家族の心構えとサポート

ターミナルケアでは、ペットと過ごす時間が限られていることを実感し、ご家族が不安や悲しみに押しつぶされそうになることがあります。そのため、この期間中は以下のようなサポートを行いました。

  1. 事実と感情を分けて考える
    「苦しいのはペット自身である」という事実を改めてご家族に共有し、その苦しみを軽減するための行動に専念していただくようにしました。

  2. 冷静さを保つアドバイス
    症状が現れた際には「今の状態で必要な対応」に目を向けてもらい、頓服薬や酸素の使い方など、具体的な対処法を冷静に実践してもらえるよう支援しました。

  3. 最期の時間を大切に
    「最期に何をしてあげたいか」をご家族と話し合い、ロイくんが好きだったおやつやリラックスできるアイテムを用意していただきました。この時間は、ロイくんが安心して過ごせるだけでなく、ご家族にとっても心に残るひとときとなりました。

 

ターミナルケアで感じたご家族の思い

「最初は不安ばかりでしたが、在宅緩和ケアのおかげで、ロイと最後まで一緒に過ごせたことに感謝しています」と、ご夫婦は話していました。ロイくんが最期まで安心して過ごせる環境を作れたことが、ペットとご家族双方にとって大きな支えになったようです。

 

 

6. ロイくんが過ごした最期の時間と在宅緩和ケアの総括

ターミナル期に入り、ロイくんの状態は徐々に穏やかな時間と厳しい時間が交互に訪れるようになりました。それでも、ご夫婦とロイくんが築いた在宅緩和ケアの環境は、最期まで大きな役割を果たしました。

 

最期の時間を穏やかに迎えるための準備

ロイくんの呼吸が浅くなり、胸水が再び貯留していることが確認されましたが、ご夫婦は無理に胸水抜去を繰り返すのではなく、酸素環境と皮下点滴でのケアを中心に進める選択をされました。この時期、ロイくんの負担を最小限に抑え、ご家族が寄り添える時間を大切にしました。

ロイくんの最期の数日間に行った主なケア:

  1. 酸素供給の強化
    呼吸が苦しい時間帯には、酸素発生装置をフル稼働させ、鼻先に酸素を吹きかける方法で呼吸を支えました。

  2. 頓服薬の使用
    必要に応じて、安定剤や鎮痛剤を皮下点滴で投与し、ロイくんが苦しまずに過ごせるよう調整しました。

  3. 穏やかな環境づくり
    ご家族にはロイくんの周りで穏やかに過ごしてもらい、彼が安心できるように優しく声をかけたり、リラックスできる音楽を流したりしていただきました。

 

2024年12月27日の朝、ロイくんは穏やかな表情のまま、ご夫婦に抱かれながら眠りにつきました。その場には、これまで支え続けてきたご夫婦と、ロイくんが好きだったおもちゃやおやつがそっと置かれていました。

最期の瞬間、ロイくんは大きな苦しみを見せることなく、ただ穏やかに呼吸が止まりました。その姿を見たご夫婦は、「ロイが安心して旅立てたことが何より嬉しいです」と語り、愛犬と最期まで共にいられたことに感謝されていました。

 

在宅緩和ケアがもたらした安心感

ロイくんが通院ではなく、自宅で最期まで過ごせたことで、ご夫婦は「在宅ケアを選んで本当に良かった」と感じていました。往診による在宅緩和ケアは、犬が慣れ親しんだ環境で過ごせるだけでなく、ご家族がペットとの絆を深める時間を持てる選択肢でもあります。

 

 

7. わんにゃん保健室が提供する在宅緩和ケアの特徴

わんにゃん保健室では、通院が難しくなったペットとご家族の負担を軽減するため、在宅緩和ケアを中心とした診療を行っています。特に、大型犬や高齢のペットの緩和ケアには、ご家族とペット双方の心と体に寄り添った対応が欠かせません。

 

通院が難しい大型犬に特化したケア

ゴールデンレトリバーのような大型犬は、通院が困難になることが多いため、往診による在宅ケアが非常に有効です。以下のような特徴を活かし、診療を提供しています。

  1. 酸素環境の整備
    呼吸が苦しいペットには、酸素発生装置や簡易的な酸素マスクを活用し、個々の状況に合わせた酸素供給を行います。特に、大型犬は鼻先への酸素吹きかけが有効であり、機器の運用方法も丁寧にご説明します。

  2. 胸水抜去や皮下点滴への対応
    胸水が貯留した際の抜去や、内服薬が難しくなった場合の皮下点滴の準備・実施も往診で対応可能です。鎮静や鎮痛処置を適切に用いることで、ペットの負担を最小限に抑えます。

  3. ご家族の心に寄り添ったアプローチ
    診療のたびに、ご家族の希望や心配を丁寧にお伺いし、ペットが穏やかに過ごせるプランを一緒に考えます。最後の瞬間まで後悔のないケアを目指して、サポートを続けます。

 

東京23区を中心とした往診サービス

わんにゃん保健室では、東京23区を中心に往診サービスを提供しています。通院が難しい状況にあるペットとご家族が、安心して在宅での緩和ケアを受けられるよう、必要なサポートを全てお届けします。

また、初めて往診を利用される方にも安心していただけるよう、診療内容や料金についてのご質問にも丁寧に対応いたします。

 

大切な家族との時間をサポートします

在宅緩和ケアは、ペットとご家族にとって、穏やかで安心できる選択肢です。通院が難しいと感じたら、無理をせずにご相談ください。わんにゃん保健室は、最後の時間まで寄り添い、ペットとご家族の絆を守るお手伝いをいたします。

お問い合わせは、お電話またはウェブサイトのフォームからお気軽にどうぞ。
ペットが安心して過ごせる在宅ケアを一緒に考えていきましょう。

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ペットの病気が進行し、治療ではなく「今を穏やかに過ごすこと」を選ぶとき、ご家族は多くの不安や葛藤を抱えます。特に、猫の心筋症は進行性の病気であり、呼吸困難や胸水貯留といった症状が現れることがあり、通院そのものが負担になるケースも少なくありません。

この記事では、実際に心筋症を抱えた12歳の猫ちゃんが通院から在宅緩和ケアに切り替えた経緯を追いながら、具体的なケア内容や、在宅で得られる安心感についてお話しします。

ペットの「今」に寄り添う在宅緩和ケアは、治すことを目的とする医療とは異なり、ペットとご家族が一緒に穏やかな時間を過ごすための選択肢です。この記事が、同じように悩むご家族にとって少しでも参考になれば幸いです。

 

 

1. 心筋症の発覚と通院から在宅緩和ケアへの切り替え

12歳の健康診断で、猫ちゃんに心筋症が発覚しました。超音波検査と血液検査の結果、心臓に負担がかかりやすい状態であることが分かり、かかりつけの動物病院から「中央生存期間は3年程度」との説明を受けました。その日から、ご家族はできる限りのケアを始めました。心筋症を管理するための内服薬やサプリメント、食事管理がスタートし、当初は3ヶ月に1回の定期検査を行っていました。

最初の頃、猫ちゃんは通院にも慣れていて、特に問題なく動物病院に通えていました。しかし、心臓の数値が少しずつ悪化し、1ヶ月に1回の検査が必要になった頃から、通院後の疲れが目立つようになりました。キャリーケースに入れられると緊張し、帰宅後はぐったりして食欲が落ちることもありました。この状況を見たご家族は、通院による負担が猫ちゃんの状態を悪化させるリスクになると感じ始めました。

通院のたびに疲れ果てた姿を見るのは、ご家族にとっても辛いものでした。「もっと穏やかに過ごさせてあげられる方法はないか」という思いから、在宅緩和ケアへの切り替えを検討するようになりました。

在宅緩和ケアでは、通院のストレスがない状態で診療を受けられるため、猫ちゃんにとってもご家族にとっても大きな安心感があります。私たちの訪問診療では、まず初回の診察で猫ちゃんの状態を丁寧に確認し、ご家族と相談しながら、必要なケアを段階的に進めていくプランを立てました。

 

 

2. 在宅緩和ケア開始後の生活と診療

通院から在宅緩和ケアに切り替えた猫ちゃんは、自宅で穏やかに過ごせる時間が増えました。慣れた環境での診療は、猫ちゃんにとってストレスが少なく、ご家族にとっても安心できるものでした。

 

最初の診療では、全身状態を確認するための超音波検査を行いました。負担を最小限にすることを重視し、診療時間を短く設定しつつ、必要なデータをしっかりと収集しました。その後の診療でも、心臓の状態や呼吸の安定性を定期的に評価し、そのデータに基づいて内服薬やサプリメントの処方を調整しました。

 

内服薬の管理は、猫ちゃんの性格や状態に合わせてプランを組むことが重要です。ご家族の協力もあり、初期段階ではご飯に混ぜる方法で無理なく投薬を続けることができました。しかし、心臓の数値が悪化し始めた頃、呼吸状態の不安定さが目立つようになり、内服薬が負担となる可能性が高まったため、皮下点滴による薬の投与を開始しました。呼吸が苦しい猫ちゃんに無理に薬を飲ませることは逆効果となる場合もあるため、猫ちゃんの状態に合わせた柔軟なケアが求められます。

 

在宅緩和ケアでは、猫ちゃんが少しでも快適に過ごせる環境を整えることが重要です。私たちは、ご家族と相談しながら、自宅でのケア方法について細かくアドバイスを行いました。例えば、猫ちゃんがリラックスできる場所を確保し、静かで温度や湿度が適切な環境を作ることがポイントです。また、ご家族の希望や不安にも耳を傾けながら、日々のケアが無理なく続けられるようにサポートしました。

 

 

3. 胸水貯留の始まりと初期対応

在宅緩和ケアを始めてから半年後、猫ちゃんの呼吸状態に明らかな変化が見られました。呼吸が浅く速くなる頻呼吸や、お腹を大きく動かす努力呼吸の症状が目立ち始め、胸水貯留が疑われました。診察の結果、心筋症の進行による胸水貯留が確認され、早急に対応が必要な状況でした。

 

胸水が溜まると肺が圧迫され、酸素が十分に取り込めなくなるため、猫ちゃんにとって呼吸が非常に苦しくなります。この状況を緩和するため、初回の診療で胸水抜去を行いました。細い針を胸に刺して胸水を排出するこの処置は、猫ちゃんにとって負担がかかるため、慎重に鎮静と鎮痛を行いながら進めました。このとき、約50mlの胸水を抜去することができ、処置後は呼吸状態が大きく改善しました。

 

胸水抜去を行った後、呼吸の安定を維持するため、酸素環境の構築が必要になりました。酸素発生装置を設置し、猫ちゃんの状態に応じて酸素濃度を調整できる環境を整えました。酸素発生装置を導入することで、猫ちゃんが自宅で快適に呼吸を続けられるようになり、緊急時にも安心して対応できる体制が整いました。

 

胸水貯留は、心筋症が進行すると繰り返し発生することがあります。そのため、初回の胸水抜去後も定期的に診療を行い、胸水の量をチェックしながらケアプランを調整しました。2週間に1回だった胸水抜去の頻度は、猫ちゃんの状態が変化するにつれて徐々に増え、最終的には2~3日に1回の処置が必要となりました。

 

 

4. 酸素環境の構築と胸水貯留進行中のケア

胸水貯留が始まると、呼吸を楽にするための酸素環境が欠かせませんでした。私たちは、猫ちゃんの状態を見ながら酸素発生装置を導入し、細やかに運用方法を調整しました。  

 

酸素環境を整える際には、酸素発生装置を設置するだけでなく、猫ちゃんが快適に過ごせる場所を確保することが重要です。最初はリビングの一角に酸素ハウスを設置し、出入り自由にして猫ちゃん自身が入りやすい環境を作りました。呼吸がさらに苦しくなった段階では、酸素濃度を高めた密閉型の酸素室での管理に切り替えました。  

 

酸素発生装置の運用では、ご家族にも使い方を丁寧に説明しました。例えば、日中は酸素濃度を一定に保ちながら吹きかけで対応し、夜間は酸素ハウス内で管理する方法を採用しました。酸素濃度のモニタリングも行い、猫ちゃんの呼吸状態が安定する範囲を常に確認しながら運用を続けました。  

 

胸水貯留が進行する中、頻繁な胸水抜去が必要となる一方で、体力を消耗させないよう配慮したケアも重要でした。胸水抜去の頻度が2~3日に1回に増えた頃には、処置を無理なく続けられるように以下のような工夫をしました。  

 

1. 診療の際に必ず事前の鎮静と鎮痛を行うことで、猫ちゃんのストレスを最小限に抑える  

2. 胸水抜去後の休息時間を確保し、体力の回復を優先する  

3. 内服薬から皮下点滴への切り替えを進め、呼吸状態が悪化している猫ちゃんに負担をかけないよう調整  

 

ご家族の協力を得ながら、猫ちゃんが少しでも穏やかに過ごせる環境を維持しました。酸素環境と適切なケアによって、呼吸の安定が保たれた時間が多く、猫ちゃんも安心した様子を見せてくれることが増えました。  

 

 

5. ターミナルケアへの移行と最期の時間

胸水抜去の頻度が増え、2日に1回のペースになった頃、ご家族と相談しながらターミナルケアへの移行を進めました。この時期は、猫ちゃんにとってもご家族にとっても、大切な時間を穏やかに過ごすための準備期間でした。  

 

胸水が抜去した翌日には再び貯留が見られることが増えたため、頻繁な処置が猫ちゃんの体力を奪う可能性があると判断しました。そこで、ご家族と相談の上、酸素環境をさらに強化し、胸水抜去の間隔を少し広げる形を取りました。酸素濃度を調整しながら、猫ちゃんが楽に過ごせるよう配慮を続けました。  

 

ターミナルケアにおいて最も重要だったのは、猫ちゃんとご家族が心穏やかに時間を共有することでした。  

 

1. ご家族と猫ちゃんがリラックスして過ごせる空間を整えるため、酸素ハウスの位置をリビングの中心に設置し、常に目が届くようにしました。  

2. 呼吸が苦しくなる兆候が見られた際には、すぐに酸素濃度を上げるようご家族にお伝えし、適切に対応していただけるよう準備を整えました。  

3. 猫ちゃんが快適に過ごせるよう、必要に応じて鎮痛剤や安定剤を使用し、痛みや不安を最小限に抑えるよう努めました。  

 

最期の1週間は、猫ちゃんが自力で食事を取るのが難しくなりましたが、強制給餌は行わずに様子を見てあげることとしました。この時期、ご家族は「どんな選択が猫ちゃんにとって最善なのか」と悩む時間が多かったようです。しかし、最終的には「無理に処置を増やすのではなく、穏やかに過ごしてほしい」というご家族の希望に寄り添う形でケアを進めました。  

 

2024年12月27日、ご家族全員が見守る中、猫ちゃんは静かに眠りにつきました。最期の時間は呼吸も安定しており、苦しむ様子は見られませんでした。ご家族がそばで声をかけながら撫でていたことで、猫ちゃんも安心感に包まれていたように感じます。  

 

 

6. 在宅緩和ケアがもたらした安心と心の変化

在宅緩和ケアを選んだことで、ご家族と猫ちゃんにとって大きな変化がありました。それは「通院という負担から解放され、自宅で安心して過ごせるようになったこと」です。  

 

猫ちゃんが通院していた頃は、キャリーケースに入れるたびに緊張し、帰宅後にはぐったりと疲れてしまう姿を見るのが辛いとご家族はおっしゃっていました。しかし、在宅緩和ケアを始めてからは、慣れた環境で診療を受けることができ、猫ちゃん自身も穏やかに過ごせるようになりました。

 

ご家族は「自宅で診療を受けられるという選択肢があることを知り、もっと早く相談すればよかった」と振り返っています。また、獣医師と直接相談しながら、猫ちゃんの状態に合わせた柔軟なケアプランを立てることで、「これでいいんだ」という安心感を持ってケアに向き合えるようになりました。  

 

呼吸が苦しくなることが多かった猫ちゃんですが、酸素発生装置を導入したことで、日常的な安心感が大きく向上しました。酸素環境を整えることで呼吸が安定し、「いつでも適切なケアができる」という自信が、ご家族の心の負担を軽くしてくれたようです。  

 

最期の時間を穏やかに迎えることができたのも、在宅緩和ケアのおかげと感じています、とご家族はおっしゃっていました。猫ちゃんが苦しむことなく静かに旅立つ姿を見届けることができ、ご家族も心を込めて最期の時間を見守ることができたことに安堵の表情を浮かべていました。  

 

在宅緩和ケアは、ペットだけでなくご家族にとっても大きな安心感をもたらします。

 

 

7. わんにゃん保健室の在宅緩和ケア

わんにゃん保健室では、東京23区を中心に往診専門の在宅緩和ケアを提供しています。ペットが自宅で穏やかに過ごせるように、ご家族の不安や悩みに寄り添いながら、心のこもったケアを行っています。  

 

在宅緩和ケアは、通院が難しくなったペットや、緩和ケアを希望するご家族にとって、大きな助けとなる選択肢です。当院では、以下の特徴的なサービスを提供しています。  

 

1. ご家族に寄り添った柔軟なケアプラン

ペットの体調やご家族の希望に合わせて、個別のケアプランを作成します。内服薬や注射薬、皮下点滴などの医薬品管理を含め、最適な方法で対応します。  

 

2. 酸素環境の構築と運用サポート

呼吸困難を抱えるペットのために、酸素発生装置や酸素ボンベの導入をサポートします。使用方法の説明や状態に合わせた調整も丁寧に行います。  

 

3. 愛玩動物看護師とのチーム診療

獣医師だけでなく、愛玩動物看護師が同行することで、診療のサポートや保定などを適切に行い、ペットの負担を最小限に抑えます。  

 

4. 緊急時の相談と事前準備

急変時に備えたアクションプランを事前にご家族と共有します。特にターミナル期では、急な呼吸困難や食欲低下などに適切に対応できるよう、薬の準備や酸素運用を含めたサポートを行います。  

 

診療区域は東京23区全域をカバーしており、ペットの体調や緊急性に応じて迅速に訪問します。また、千葉、神奈川、埼玉の近隣地区までであれば、ご家族が少しでも安心してペットと過ごせるよう日程調整の上で訪問し、最善を尽くします。  

 

在宅緩和ケアについてお困りのことがあれば、まずはご相談ください。通院が難しい状態や、ペットの体調に不安がある場合、事前の相談を通じて最適なケアプランを一緒に考えさせていただきます。  

 

在宅緩和ケアやターミナルケアをご検討中のご家族様は、ぜひ一度わんにゃん保健室へお問い合わせください。

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犬猫の往診専門動物病院
わんにゃん保健室
 
猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
電話番号:03-4500-8701(往診本部直通)
 
 
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ペットが終末期を迎えたとき、「今、自分に何ができるのか」と悩むご家族は多いのではないでしょうか。
緩和ケアは、病気を治すことを目的とするのではなく、ペットが苦痛なく、安心して過ごせるように寄り添うケアです。特に、通院が難しいペットや体力の低下が見られる犬や猫にとって、自宅でのケアは重要な選択肢となります。

この記事では、ペットの緩和ケアの基本から、在宅医療の具体的な内容、そしてご家族ができることについて解説します。最後には、東京23区で対応可能な当院のサポート内容もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

 

1. 緩和ケアとは:ペットに寄り添うための医療

 
緩和ケアの目的:苦痛を減らし安心できる時間をつくる
緩和ケアは、病気を抱えたペットが最期まで苦痛なく過ごせるようにするためのケアです。病気の治療や延命を目的とするのではなく、**ペットが安心して快適に過ごすこと**を重視します。  
 
例えば、こんな状況で緩和ケアが役立ちます。
 
病気の進行による痛みや不快感がある場合
- 鎮痛剤や安定剤を使って体を楽にします。  
 
呼吸が苦しい場合
 - 酸素環境を整え、呼吸をサポートします。  
 
食欲や体力が低下している場合
 - 無理なく栄養を補給し、体に負担をかけないケアを行います。  
 
緩和ケアは、病気の症状だけでなく、ペットの気持ちやストレスにも寄り添い、心と体の両方をサポートする方法といえます。  
 
 
治療とは違う「今を支えるケア」
治療は病気を治すことを目的としますが、緩和ケアは病気を抱えながら「今、この瞬間」を大切にするケアです。
 
治療ではなく、生活の質(QOL)を重視
- 病気を完全に治せなくても、穏やかに過ごせる時間を目指します。  
 
ペットの気持ちを尊重
- 無理に薬を飲ませたり、ストレスを与える処置を避けることも重要です。  
 
緩和ケアを取り入れることで、ご家族とペットが安心して寄り添える時間をつくり、「最期まで一緒にいる」という選択が可能になります。  
 
 

2. 痛みを和らげる:苦痛を最小限に抑える方法

 
緩和ケアでの痛み管理の重要性
ペットが終末期を迎えると、病気の進行に伴う痛みや不快感が現れることがあります。この痛みはペット自身だけでなく、ご家族にとっても大きな心配の種です。緩和ケアでは、ペットの苦痛を和らげることを最優先とし、以下のような方法でサポートしていきます。
 
1. 鎮痛剤の使用
   - 痛みを軽減するために、適切な内服薬や注射薬を処方します。  
   - ペットの状態に合わせて投与量を調整し、負担を減らします。  
 
2. 安定剤でリラックスをサポート
   - 不安感や興奮を鎮めることで、落ち着いた状態を保つことができます。  
   - 特に呼吸が苦しい場合には、安定剤が効果的です。  
 
3. 物理的なケア
   - 温かいタオルやクッションを使い、体を支える姿勢をサポートします。  
   - 痛みを感じやすい部位を避けて優しく撫でることで、安心感を与えます。  
 
呼吸が苦しい場合の酸素供給の重要性
呼吸が浅く速くなる、努力呼吸が見られるなどの症状がある場合、酸素供給を行うことで大きな改善が期待できます。緩和ケアでは、以下のような方法を考えていきます。
 
1. 酸素発生装置の使用
   - 在宅で酸素濃度を高めることができ、ペットが少ない呼吸回数でも体に必要な酸素を取り込めるようになります。  
 
2. 酸素ボンベの活用
   - 急な呼吸状態の悪化に対応するために、酸素ボンベを併用することもあります。  
 
3. 直接吹きかけによる酸素供給
   - 大型犬など、酸素ハウスの利用が難しい場合には、酸素を鼻先に直接吹きかけてサポートします。  
 
症状に応じた柔軟な対応
ペットの痛みや呼吸状態は、その日の体調や病気の進行具合によって変化します。緩和ケアでは、毎回の診療で状態を評価し、その都度必要な対応を行います。
- 痛みが強い場合には鎮痛薬の調整。  
- 呼吸が苦しい場合には酸素供給の強化。  
- その他の症状(下痢や嘔吐など)への適切な対応。  
 
ペットが「痛くない、苦しくない」という安心感を持つことで、穏やかな時間を過ごせるようにするのが緩和ケアの目的です。  
 
 

3. 食べられなくなったときのケア

 
無理に食べさせない選択肢とは
ペットが終末期を迎え、食欲が低下するのは自然な体の変化の一部です。このとき、「何とかして食べさせたい」と考えるご家族も多いですが、無理に食べさせることが必ずしもペットにとって良い結果をもたらすとは限りません。  
 
無理に食べさせることで考えられるデメリットを知っておきましょう。
 
1.ペットのストレス
   - 強制給餌は、ペットに恐怖や不快感を与え、心の負担になることがあります。
 
2. 誤嚥のリスク
   - 無理に食べさせることで、食べ物が気管に入り、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。 
 
3. 体の負担
   - 食べ物を消化するための体力が残っていない場合、無理に食事を摂ることで体がさらに疲れてしまうことがあります。  
 
緩和ケアでは、ペットが無理なく過ごせる方法を重視します。  
 
 
水分補給や皮下点滴でのサポート
食事が難しくなった場合でも、水分補給は体を支えるために重要です。ご家庭で簡単にできる工夫や医療的なサポート方法を、自宅環境を踏まえて考えていきます。
 
1. スプーンやシリンジで水分を少量ずつ与える
   - ペットが自分で飲めない場合でも、無理なく喉を潤すことができます。
 
2. 皮下点滴で水分と栄養を補給
   - 食事が取れないときは、皮下点滴を活用することで脱水を防ぎ、最低限の栄養を補うことが可能です。
 
3. 好みのスープやフードを少量提供
   - 香りが強く飲みやすいスープを与えることで、ペットが少しだけでも食事を楽しむことができます。  
 
これらの方法を組み合わせることで、ペットが無理なく水分や栄養を摂れる環境を整えます。  
 
ペットが楽しめる「少しだけ特別な食事」
食欲がわずかに残っている場合、ペットが好きだったものや香りの良いフードを用意することで、食事が「特別な時間」になります。  
 
 
1. お気に入りのフードを少量だけ提供
   - 特別なご褒美として与えることで、ペットが少しでも喜ぶ姿を見ることができます。
 
2. 温かい食事を用意する
   - 温めることで香りが強まり、食欲を刺激することがあります。
 
3. 液体やペースト状のフードを選ぶ
   - 固形物が食べにくい場合、飲み込みやすい形に変えることで負担を軽減します。  
 
ペットの「食べたい」という気持ちを尊重しながら、無理のない範囲でサポートしていきましょう。  
 
 

4. ストレスを減らす環境づくり

 
ペットがリラックスできる空間の作り方
終末期のペットにとって、ストレスの少ない環境はとても大切です。安心できる空間を整えることで、ペットが穏やかに過ごせるようになります。以下のポイントをまとめてみました。
 
1. 静かで落ち着いたスペースを確保する
   - 騒音が少ない場所を選び、ペットが安心して休める環境を整えます。  
   - 家族の気配を感じられる場所に寝床を用意するのも効果的です。  
 
2. 寝床の配置と素材に配慮
   - 柔らかいクッションやブランケットを使用して、体が痛くならないようにします。  
   - 寒さや暑さを避けるため、寝床の位置を季節に合わせて調整します。  
 
3. 安全で自由な動きができるスペース
   - ペットが立ち上がったり歩いたりできる範囲を確保し、家具や物を整理して安全性を高めます。  
 
 
温度や湿度、静かな環境の工夫
ペットが快適に過ごせるよう、室内環境を適切に整えることも重要です。  
 
1. 適切な温度管理
   - 犬や猫が体温を維持しやすい環境を作ります(20~25℃が理想的)。  
   - 寒い場合はヒーターやブランケットを使用し、暑い場合はエアコンや扇風機を活用します。  
 
2. 湿度の調整
   - 湿度が高すぎると呼吸が苦しくなり、低すぎると喉や鼻が乾燥してしまいます。50~60%の湿度を目安に加湿器や除湿器を使いましょう。  
 
3. 穏やかな音と光を提供
   - テレビやラジオの音を抑え、静かな環境を保ちます。  
   - 照明は柔らかい間接照明を使い、ペットがリラックスできる雰囲気を作ります。  
 
 
ご家族との触れ合いで安心感を高める
ご家族との触れ合いは、ペットにとって大きな安心材料です。
終末期を迎えたペットに対して、漠然とした不安や恐怖などからスキンシップを避けるようになってしまうことが考えられます。
そんなことはないですので、ぜひ積極的に触れ合ってあげてください。
 
1. 優しく撫でる
   - ペットが触られて心地よい場所(頭、背中など)を軽く撫でます。  
   - 痛みのある部位には触れず、ペットの様子を見ながら対応します。  
 
2. 声をかける
   - 穏やかなトーンで名前を呼んだり話しかけることで、ペットに安心感を与えます。  
 
3. 一緒に過ごす時間を増やす
   - 忙しい中でも少しの時間を割いてそばにいてあげるだけで、ペットに安心を与えることができます。  
 
 

5. 最期の時間をどう過ごしたいかを考える

 
ご家族とペットが共有する最後の時間
ペットの終末期には、限られた時間をどのように過ごすかを考えることが重要です。特に「最期の瞬間をどう迎えたいか」は、ご家族それぞれで異なる考え方がありますが、共通して大切にしたいのは、ペットが安心して穏やかな時間を過ごせることです。  
 
1. 無理をせず寄り添う
   - 病院への無理な通院を避け、ペットが慣れた自宅でリラックスできる環境を選ぶ。  
   - ご家族がそばにいるだけで、ペットにとって大きな安心感となります。  
 
2. ペットのペースを尊重する
   - 起きる、休む、触れられるといった行動を、ペットの意思に任せる。  
   - 無理に何かをさせるのではなく、自然なペースで過ごす時間を作る。  
 
3. 最後まで愛情を伝える
   - 名前を呼んだり、そばで優しく話しかけたりすることで、愛情を感じさせてあげましょう。  
 
 
穏やかな最期を迎えるためのケア
最期の時間を穏やかに過ごすためには、緩和ケアやターミナルケアのサポートが重要です。
 
1. 呼吸が苦しい場合のサポート
   - 酸素発生装置や酸素ボンベを用いて、呼吸を助ける環境を整えます。  
 
2. 苦痛を和らげる薬の使用
   - 鎮痛剤や安定剤を適切に使用し、ペットが痛みや不安を感じることがないようにします。  
 
3. ご家族の心の準備
   - 獣医師から、ペットが最期を迎える際の変化や注意点をあらかじめ聞いておくことで、落ち着いて見守ることができます。  
 
家族全員でケアプランを考える
ペットの最期をどのように見守るかは、ご家族全員で話し合い、共有しておくことが大切です。  
 
1. ペットにとっての最善を考える
   - 病院で最期を迎えるのか、自宅で見守るのか、ご家族の価値観やペットの状態に合わせて選択します。  
 
2. 家族全員で役割を分担する
   - 誰が何をするかを事前に決めておくことで、いざというときに混乱を避けられます。  
 
3. 最後の時間を共有する
   - 最期に立ち会えるよう、家族全員がペットと過ごす時間を意識的に作ります。  
 
 

6. 在宅医療がもたらす安心感

 
通院が難しいペットへの負担軽減
体調が悪化したペットや高齢のペットにとって、動物病院への通院は大きな負担になります。特に、以下のような症状がある場合は、無理に移動することで病状が悪化するリスクがあります。
 
1. 呼吸が苦しい場合
   - キャリーケースや車内での緊張が呼吸をさらに悪化させることがあります。  
 
2. 体力が著しく低下している場合
   - 通院中の移動や待ち時間で、ペットが疲れ果ててしまう可能性があります。  
 
3. 大型犬で歩行が困難な場合
   - 重量があるため、移動が難しく、ご家族の負担も大きくなります。  
 
在宅医療では、ペットが安心して過ごせる自宅に獣医師が訪問し、診療を行うため、ペットとご家族の負担を大幅に軽減できます。  
 
 
在宅ケアならではのメリットとは?
在宅医療を選択することで、ペットにとってもご家族にとっても多くのメリットがあります。
 
1. 慣れた環境で診療を受けられる
   - ペットが安心できる自宅で診療を行うため、ストレスが軽減されます。  
   - 通院による緊張や疲労がないため、ペットの体調を安定させやすくなります。  
 
2. 家族全員でケアに参加できる
   - 家族全員がその場に立ち会い、獣医師の診療を見守ることができます。  
   - ケアの方法や注意点をその場で学び、実践することが可能です。  
 
3. 緊急時の対応がスムーズ
   - 呼吸困難や急な体調変化に備えた酸素供給機器や皮下点滴など、在宅でのケアを整えることで、迅速な対応ができます。  
 
 
ご家族がケアに専念できるサポート体制
在宅医療では、ペットの状態に応じた柔軟なケアプランが提供されるため、ご家族が安心してケアに専念できる環境を整えます。  
 
1. 獣医師による定期的なフォローアップ
   - ペットの体調に応じて、週1回や2週間に1回の診療を行い、状態を評価します。  
 
2. 個別にカスタマイズされたケアプラン
   - 呼吸状態や食欲、体力に合わせたオーダーメイドのケアプランを提供します。  
 
3. 飼い主様へのアドバイスとサポート
   - 緊急時の対処法や、ペットのケアで困ったときの相談にも対応します。  
 
 

7. 緩和ケアがもたらすご家族の心の変化

 
「やりきった」と思える選択の大切さ
終末期のケアでは、「自分の選択が正しかったのか」と悩む瞬間が訪れることもあります。しかし、緩和ケアを通じてペットと向き合う中で、「自分ができる限りのことをした」という達成感や安堵感を得ることができます。  
 
1. 最期までそばにいてあげられる安心感
   - 在宅緩和ケアでは、ご家族がペットと一緒にいる時間を大切にできます。最期まで寄り添うことで、後悔を減らし、思い出を共有できます。  
 
2. ペットとの絆を深める時間
   - ケアを行いながら、ペットとの絆がさらに深まることを感じられます。優しく撫でたり、声をかけたりする小さな行動が、ペットにもご家族にも大きな安心感を与えます。  
 
3. 「ありがとう」を伝える時間を持てる
   - ペットへの感謝や愛情を伝える時間を確保できることが、心の整理につながります。  
 
 
獣医師と連携することで得られる安心感
緩和ケアでは、獣医師との連携が重要です。専門家と協力することで、ご家族が抱える不安や疑問が解消され、ペットへのケアに集中することができます。  
 
1. 緊急時の相談が可能
   - 症状の変化や急な対応が必要なときでも、獣医師が具体的なアドバイスを提供します。  
 
2. 最善の選択肢を提案
   - ペットの状況に応じたケアプランを提案してもらえるため、「これで大丈夫なのか」という不安が軽減されます。  
 
3. ケアの実践方法を学べる
   - 日常のケアや急変時の対応について丁寧に教えてもらえるため、ご家族も安心してケアを続けることができます。  
 
 
ペットと過ごす最後の時間を見守る意義
緩和ケアを選択することで、ペットの最期の時間を穏やかに見守ることができます。この時間は、ペットだけでなく、ご家族にとっても大切な意味を持ちます。  
 
1. ペットの安心を優先した選択
   - 病院のストレスを避け、安心できる自宅で過ごせる環境を提供します。  
 
2. 家族全員で迎える時間
   - 家族全員が集まり、ペットとの時間を共有することで、心の整理をするきっかけになります。  
 
3. 「最期まで愛情を注げた」という満足感
   - 緩和ケアを通じてペットに寄り添うことで、「自分たちができる最善を尽くした」という気持ちが心に残ります。  
 
 

8. わんにゃん保健室の在宅緩和ケアとは

 
往診で叶えるペットとご家族の安心
「わんにゃん保健室」では、東京中央区を中心に東京23区全域で往診を行い、ペットとご家族が安心して過ごせる環境を提供しています。
在宅緩和ケアでは、ペットの苦痛を最小限に抑え、ご家族とペットが穏やかな時間を過ごせるようサポートします。  
 
当院が選ばれる3つの理由
 
1. 通院不要でペットの負担を軽減
   - 通院が難しいペットに、自宅で診察・治療を提供します。慣れた環境でのケアは、ペットのストレスを大幅に軽減します。  
 
2. ペットの状態に合わせた柔軟な対応
   - 心嚢水抜去や酸素環境の整備、皮下点滴など、在宅でも対応可能な幅広いケアを行います。飼い主様のご希望に沿ったケアプランをオーダーメイドで提供します。  
 
3. 獣医師と看護師の専門チームで訪問
   - 当院では獣医師だけでなく、愛玩動物看護師が同行します。専門チームがケアを提供することで、保定や緊急対応も安心です。  
 
 
診療エリアと対応内容
当院は東京23区全域で往診を行っています。特に以下のケアが私たちの特徴です。
 
在宅緩和ケア
  - ペットの苦痛を和らげ、安心できる時間を提供します。  
 
在宅ターミナルケア
  - 最期の時間を穏やかに過ごすためのケアプランを作成します。  
 
酸素環境の徹底構築
  - 酸素発生装置や酸素ボンベの設置を含めた呼吸サポート。  
 
事前予測と準備
  - 在宅医療の経験から培った知識と経験から、疾患や状態ごとに今後起こりうる変化を予想して、準備を進めていきます。言葉ではうまく説明できないのですが、なんとなくこの症状であればこうなるだろうという経験的な知見からのアドバイスだったり、教科書的な変化に関する説明だったりと、症例だけでなくご家族の求める情報の提供に尽力します。急変時に備えたアクションプランの作成も特徴だと思っています。
 
 
まずはご相談ください
在宅緩和ケアやターミナルケアに興味がある、通院が難しくなってきた、ペットの状態が気になる――そんなご家族のために、当院が全力でサポートします。  
 
 
東京中央区をはじめ、東京23区全域で往診可能です。
まずはお電話または問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。ペットの状態やご希望をお聞きし、最適なケアプランをご提案いたします。  
 
 
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ペットが終末期に入り、ご飯を食べなくなる場面に直面したとき、ご家族の心には「何かできることはないのか」と不安が募るかもしれません。特に犬や猫のご飯を食べる姿は、「元気の象徴」ともいえる日常の一コマ。食べない姿を見てしまうと、戸惑いや悲しみを感じるのは自然なことです。

 

しかし、終末期において「食べない」という行動は、その子にとって自然な体の変化の一部かもしれません。このブログでは、ペットの終末期にご飯を食べなくなる理由と、それに対してどのような選択肢があるのかを解説します。また、在宅緩和ケアやターミナルケアという視点から、犬や猫の苦痛を減らし、穏やかな最期を迎えるためにご家族ができることをお伝えします。

 

もし、ご家族が「何がその子にとって最善なのか」を悩んだときに、今回の記事が少しでも道しるべになることを願っています。最後には、在宅医療や往診対応についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。

 

1. 終末期のペットに訪れる変化とは?

 
ご飯を食べなくなる理由:自然な体の変化
終末期に近づくと、犬や猫などのペットがご飯を食べなくなる場面が見られることがあります。この変化は、ご家族にとって大きな不安や戸惑いをもたらしますが、決して珍しいことではありません。  
 
体の中では、次のような自然な変化が起きています:  

1. 代謝機能の低下

   - 終末期にはエネルギーの必要量が減少します。これに伴い、体が栄養を求めなくなるのです。  
 

2. 消化機能の衰え

   - 食べ物を消化する力が弱くなり、食べる行為そのものが体に負担になることがあります。  

3. 病気の進行

   - がんや慢性疾患など、体力や臓器の機能が著しく低下することで、食べ物を受け付けなくなることがあります。  
 
これらは病気の進行や体の自然な終末期プロセスの一部であり、「何かを間違えたのではないか」というご家族の不安とは無関係であることを理解しておきましょう。  
 
 
無理に食べさせることが与えるストレス
「ご飯を食べないと弱ってしまう」という考えから、無理に食べさせようとすることがペットにストレスを与えることがあります。例えば:  
 

1. 経鼻チューブによる強制給餌

   チューブを鼻から通すことで、栄養を直接胃に送り込む方法です。しかし、装着時の不快感が強く、ペットにとって大きなストレスとなる場合があります。  
 

2. 無理やりの給餌(=強制給餌)

   口を無理に開けて流動食を与えることは、ペットに恐怖心や拒否反応を与え、関係性にも影響を及ぼすことがあります。  
 
ペットの体が必要としない状況でこれらの対応を行うことは、結果的にペットの生活の質(QOL)を低下させる可能性があるため、慎重な判断が必要です。  
 
 
「食べない」ということを受け入れる視点
終末期において、ご飯を食べないことは、体が「次のステージ」へ移行するサインともいえます。この時期に重要なのは、ペットの体の声に耳を傾け、ご家族がその変化を受け入れる準備を整えることです。  
 
ご飯を無理に食べさせるのではなく、ペットが安心できる環境や寄り添う時間を増やすことが大切です。  
次のセクションでは、どのような選択肢を考えるべきか、そしてその選択に向き合う方法について詳しくお伝えします。
 
 
 

2. 選択肢と向き合う:何がその子にとって最善か?

 
経鼻チューブや強制給餌のメリットとデメリット
ご家族が「何とかして食べさせたい」と考えるのは自然なことです。特に、経鼻チューブや強制給餌といった方法は、栄養を補給する手段として考えられることがあります。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、慎重な判断が必要です。  
 
1. 経鼻チューブ  
   - メリット:栄養を直接胃に送ることができ、消化吸収が比較的スムーズに行われる。  
   - デメリット:装着時の不快感や違和感が大きく、ペットがストレスを感じることが多い。  
 
2. 強制給餌  
   - メリット:少量でも栄養を摂取させることができる。  
   - デメリット:口を無理やり開ける行為がペットにとって恐怖となり、拒否反応を強める可能性がある。  
 
これらの方法は、一時的に栄養を補給する手段として役立つ場合もありますが、終末期のペットにとって「苦痛を伴わないか」を軸に選択を検討することが大切です。  
 
 
 
ご家族の覚悟と選択の重要性
終末期のケアでは、ペットの体の状態だけでなく、ご家族の気持ちや覚悟も重要な要素です。「最善の選択」とは、ご家族がペットの声に耳を傾け、どんな時間を共有したいかを真剣に考えることで導かれます。  
 
1. 命を優先するか、苦痛を減らすか
   - チューブや強制給餌で栄養を補給することがその子にとって苦痛となる場合、あえて「何もしない」という選択肢も考えられます。  
 
2. できる限り穏やかな時間をつくる
   - 栄養の補給よりも、ペットがリラックスできる環境を整えることで、安心して最期の時間を過ごせるようにします。  
 
 
「何もしない」という選択肢も尊重する
時には、「無理をしない」という選択が、ペットとご家族にとって最善となる場合があります。例えば:  
- 無理に食べさせるのではなく、ペットが望むように過ごさせる。  
- 食べられる間はお気に入りの食事を少量でも楽しませる。  
 
これらの選択肢は、「諦める」わけではなく、ペットの自然な体の変化を受け入れ、ご家族が寄り添うという意味があります。  
 
次のセクションでは、ペットが食べられなくなったとき、どのように最期の時間を過ごすか、その具体的な方法をご紹介します。
 
 

3. 最後の時間をどう過ごしたいかを考える

 
食事が取れない時期にできること
ペットがご飯を食べられなくなった終末期では、食事以外で「その子にできること」を考えることが重要です。この時期に注目すべき点は、栄養の補給ではなく、生活の質(QOL)をいかにして守るかです。  
 
1. 水分の補給を優先する
   - 喉が渇いているような仕草が見られた場合、小さなスプーンやシリンジで水や薄めたスープを与えることができます。  
   - 皮下点滴を活用し、脱水を防ぐことも選択肢の一つです。  
 
2. リラックスできる環境を整える
   - 静かで落ち着いた場所に寝床を用意し、ペットが自分のペースで休めるようにします。  
   - 温度や湿度を調整し、快適な環境を提供します。  
 
3. 好きなものに触れさせる
   - おもちゃやタオルなど、ペットが愛用していたものをそばに置くことで安心感を与えます。  
   - ご家族の声や匂いを感じられる時間を増やします。  
 
 
ペットが安心して過ごせる環境作り
終末期のペットにとって、最も大切なのは「心が落ち着ける場所」です。以下のような方法で、安心できる環境を提供しましょう:  
 
1. 視覚と聴覚に配慮する
   - 照明を柔らかくし、静かな音楽やご家族の優しい声で安心感を与えます。  
   - 過剰な刺激を避け、穏やかな雰囲気を保ちます。  
 
2. 触れることで伝える愛情
   - 優しく撫でたり、背中を包み込むように触れることで、言葉では伝えられない安心感を与えられます。  
   - 体調が許せば、一緒に横になるのも良い方法です。  
 
3. ペットのペースを尊重する
   - 食べる、休む、撫でられるなど、すべてペットが望むペースで進めることが重要です。  
   - 無理に起こしたり、触れることは避けましょう。  
 
 
家族全員で見守ることの大切さ
ペットにとって、ご家族がそばにいることは何よりも大きな安心感を与えます。以下のような行動が、ペットとご家族の絆を深める時間構築に役立つと考えています。 
 
1. 一緒に過ごす時間を増やす
   - 忙しい時間を少しだけペットに割いて、そばに寄り添うようにします。  
   - 特別なことをしなくても、ただ一緒にいるだけでペットの心が落ち着きます。  
 
2. 最後の時間を全員で共有する
   - 家族全員が順番に話しかけたり触れたりすることで、ペットが愛されていると感じられる時間を作ります。  
 
3. 静かで温かい空間を保つ
   - 笑顔と優しい声を絶やさず、ペットが最期まで安心していられるよう心がけます。  
 
次のセクションでは、「一度選んだ道を変えることもできる」という視点から、選択に迷ったときの再検討やケアの見直し方法についてお伝えします。
 
 

4. 一度選んだ道を変えることもできる

 
選択に迷ったときに振り返るポイント
終末期のケアでは、「これが正しい選択なのか」と迷う瞬間が必ず訪れます。最初に選んだ道が、その子にとってベストだと思ったとしても、病状の変化や状況によって選択を変えることは決して間違いではありません。  
 
以下のポイントを振り返りながら、選択を見直すことも大切です。
 
1. ペットの体の声を聞く
   - 痛みや苦しみが強い場合は、ケアの方針を緩和ケアやターミナルケアに切り替えるタイミングかもしれません。  
   - 呼吸が荒い、無理をしている様子があれば、より負担の少ない方法を検討します。  
 
2. ご家族自身の気持ちを確認する
   - 「もっとこうしてあげた方が良いのでは」という不安がある場合は、その思いをご相談ください。  
   - ケアを見直すことで、心の負担が軽減される場合もあります。  
 
3. 専門家に相談する
   - 獣医師や往診の専門家に相談し、今後のケアプランを再構築するのも一つの方法です。  
 
獣医師との相談でケアの方針を再調整
ケアの方向性に迷ったときは、一人で悩まず、専門家と話し合うことが重要です。以下のような内容を獣医師に相談することで、状況を再確認できます。
 
1. 現在の状況についての評価
   - ペットの病状や苦痛の程度を共有し、医療的な対応が必要かを確認します。  
 
2. 現実的なケアの選択肢
   - 現在のケアがその子にとって最善か、別の方法があるのかを具体的に話し合います。  
 
3. 在宅でできるケアの幅を広げる
   - 往診や在宅緩和ケアの導入を検討し、ご家族が無理なく続けられるケアプランを提案してもらいます。  
 
 
「やり直せる」から安心して選択を
一度選んだケアの方針を変えることは、決して「間違いを認めること」ではありません。それはむしろ、その子に寄り添い続ける愛情の証です。  
 
1. 柔軟に対応する気持ちが大切
   - ペットの状況は日々変化します。選択肢を柔軟に変えることが、ペットの生活の質を高めることに繋がります。  
 
2. どの選択肢も愛情からのもの
   - チューブや給餌を選んでも、あえてしない選択をしても、すべてはペットを思ってのことです。その気持ちを大切にしましょう。  
 
3. 不安をため込まない
   - ケアを変更する際に生じる迷いや不安は、獣医師やご家族と共有し、解消する努力を続けることで、安心して進むことができます。  
 
 
次のセクションでは、在宅緩和ケアやターミナルケアの具体的な内容について詳しく解説し、ご家族がペットと穏やかに過ごせる環境づくりを提案します。
 
 

5. 在宅緩和ケアとターミナルケアのすすめ

 
在宅緩和ケアでできること
在宅緩和ケアでは、ペットが慣れ親しんだ自宅という安心できる環境で、終末期を穏やかに過ごせるようサポートします。ご家族がペットの苦痛を和らげ、心穏やかに過ごすためには次のようなケアが可能です。
 
1. 痛みや不快感の緩和
   - 鎮痛剤や安定剤を使用し、苦痛を最小限に抑えます。  
   - 呼吸が苦しい場合は酸素発生装置を導入し、呼吸をサポートします。  
 
2. 食べられないときの栄養管理
   - 内服薬が難しくなった場合には、皮下点滴で水分や薬剤を補給します。  
   - 無理に食事を与えるのではなく、ペットの状態に合わせた柔軟な対応を行います。  
 
3. 生活の質(QOL)を守るための工夫
   - 静かで落ち着いたスペースを用意し、ペットが安心して過ごせる環境を整えます。  
   - ご家族がそばにいる時間を増やし、声をかけたり撫でたりすることで、愛情を伝えます。  
 
 
ターミナルケアの意義
ターミナルケアは、ペットの最期を迎える時間を、できるだけ穏やかで温かなものにするためのケアです。
 
1. 体調の変化に対応する準備
   - 呼吸が苦しくなる可能性がある場合、酸素供給の準備を整えます。  
   - 急な体調変化に備え、内服薬が使えない場合に対応できる注射薬を用意します。  
 
2. 最期の時間を大切にする
   - 飼い主様がペットのそばに寄り添い、ペットが安心して旅立てる環境を提供します。  
   - 穏やかな時間を保つために、獣医師からの具体的なアドバイスを受けることができます。  
 
3. 心の準備を支えるサポート
   - ペットの最期に向き合うための心構えや、見守り方についてアドバイスを提供します。  
   - 最期を迎えた後の心のケアもサポートします。  
 
 
ご家族とペットが穏やかに過ごすために
在宅緩和ケアやターミナルケアを選ぶことで、ペットとご家族が過ごす最後の時間を穏やかなものにすることができます。このケアは、以下の点でご家族の負担を軽減しつつ、ペットの生活の質を守ります。
 
1. 往診による負担軽減
   - 通院のストレスをなくし、自宅で必要なケアを受けることができます。  
 
2. 柔軟な対応
   - ペットの状態やご家族の希望に合わせたオーダーメイドのケアを提供します。  
 
3. 飼い主様の不安を軽減
   - ケアの方法や緊急時の対応を詳しく説明し、安心して見守ることができるようサポートします。  
 
次のセクションでは、東京23区での往診対応について、当院が提供する具体的なサービスをご紹介します。
 
 

6. 東京23区での在宅ケアなら当院へ

 
往診専門の在宅緩和ケアでペットの安心をサポート
当院では、東京中央区をはじめとした東京23区全域で、犬や猫の在宅緩和ケアやターミナルケアを行っています。通院が難しいペットや終末期のケアが必要なご家族に寄り添い、自宅でできる最善の医療を提供することを目指しています。  
 
1. 通院が困難なペットに対応
   - 高齢のペットや、体調が悪化しているペットにとって、通院は大きな負担となります。当院の往診サービスなら、ペットが慣れた環境で診察や治療を受けられます。  
 
2. 柔軟なケアプランを提案
   - 飼い主様のご希望やペットの状態に合わせて、ケアプランを柔軟に設計します。酸素環境の整備や皮下点滴の導入など、在宅でできることを最大限活用します。  
 
3. 急変時のアクションプランをサポート
   - 心嚢水や胸水の貯留が予測される場合、適切な処置と家族が取るべき行動を事前にお伝えします。  
 
 
往診が選ばれる理由
往診を選ぶことで、ご家族とペットに次のようなメリットがあります:  
 
1. ペットのストレスを最小限に
   - 自宅での診療は、ペットにとって最もリラックスできる環境です。特に終末期では、穏やかな時間を保つために大きな役割を果たします。  
 
2. 移動の負担を軽減
   - 大型犬や高齢猫にとって、通院の移動は体力を消耗するだけでなく、病状を悪化させる可能性があります。往診なら、その負担を完全に取り除くことができます。  
 
3. 診療内容の充実
   - 当院では、在宅でも超音波検査や心嚢水抜去、皮下点滴などの専門的な処置が可能です。  
 
 
当院の診療区域と対応可能なケア
東京中央区を中心に、東京23区全域で往診を行っています。対応可能なケア内容は以下の通りです。
 
1. 在宅緩和ケア
   - 内服薬や注射薬、酸素環境の整備を通じて、ペットの苦痛を軽減します。  
 
2. ターミナルケア
   - 最期の時間を安心して迎えられるよう、緩和的なケアを提供します。  
 
3. 診療後のサポート
   - ケアの方法や不安な点について、診療後もご相談を受け付けています。  
 
 
穏やかな時間を大切にするために
終末期を迎えたペットにとって、安心できる環境で家族と過ごすことが何よりも大切です。通院が難しい、在宅ケアを検討しているというご家族の方は、ぜひ一度ご相談ください。  
 
東京中央区をはじめ、23区全域で往診対応可能です。
まずはお電話またはお問い合わせフォームから、ペットの状況についてお聞かせください。一緒に最善のケアを考えていきましょう。  
 
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1. 突然歩けなくなった大型犬で考えられる原因とは

 

大型犬が急に歩けなくなる原因で何が考えられるのか?

大型犬が急に歩けなくなる原因としては、神経系、筋骨格系、循環器系の問題が挙げられます。特に高齢の大型犬では、次のような疾患がよく見られます。

 

1. 椎間板ヘルニアや脊椎疾患

背骨に負担がかかり、神経が圧迫されることで、後肢が麻痺することがあります。これも結構多い印象で、早期であれば高用量のステロイドなどによる対応で改善することが望めますが、その重症度をまずは評価してあげたいことから、CT、MRIを撮ることができる施設への通院をお勧めします。

 

2. 関節炎や股関節形成不全

大型犬に多い疾患で、関節の炎症や変形によって痛みが生じ、歩行が困難になることがあります。股関節形成不全はゴールデンレトリバーでよく見る印象です。お尻を振るような歩き方(モンローウォーク)をしている大型犬と暮らしているのであれば、いつか必ず関節炎を発症して、歩きづらさが出てくるというのは覚えておいてあげましょう。急に歩けなくなるほどの関節炎や股関節形成不全は甘利見たことないですが、もしかしたら積み重ねで一気に痛みが出てしまった結果、立ち上がることを拒否してしまうのかもしれません。

 

3. 心臓病や血管の問題

心臓血管肉腫や心タンポナーデのように循環器系の疾患が進行すると、突然立てなくなる場合があります。大型犬で持病がなかったのに、急に失神を起こしてしまった場合には、心タンポナーデが発症している可能性があります。心嚢水が貯留してしまい発症するものですが、その原因で最も厄介なのが心臓血管肉腫です。心臓血管肉腫のゴールデンレトリバーの症例報告ブログをあげていますので、是非ご一読ください。

 

病気のサインを見逃さないために

歩けなくなる前に見られる小さなサインを見逃さないことが大切です。例えば散歩を嫌がるということがあります。急に散歩に行きたがらなくなるのは、痛みや体力の低下が原因かもしれません。次によろけたり、ふらついたりなど、転ぶことが増えることがあります。これは筋力低下や神経障害の兆候です。そのほかにも、もし心臓病が関与している場合であれば、呼吸が浅く速いなどの息苦しそうな様子が見られることがあります。これらのサインを早期に発見することで、適切な診療プランの決定が神族に行われ、その後の時間のQOL(生活の質)に大きく影響します。

 

気づいたときにすべき第一歩

大型犬が急に立てなくなった場合、慌てずに次のステップを踏むことが重要です。

 

1. 呼吸や意識の確認

息苦しそうな様子や意識がもうろうとしている場合は、直ちに動物病院に相談しましょう。 もしかするとそのまま入院管理になることもあるため、緊急で動物病院にいく場合には、入院になるかもしれないことを頭に入れておきましょう。

 

2. 歩行補助

移動が必要な場合は、抱き上げたりスリングを使って犬を安全に支えましょう。

 

3. 早めの診察

色々書きましたが、まずはかかりつけの動物病院に連絡して、最短でいつ診てもらえるのかを確認しましょう。もし移動が難しいと判断した場合には、往診専門動物病院に連絡します。東京23区内にお住まいの場合は、当院(わんにゃん保健室)が訪問できますが、すぐに対応できるかと聞かれると、往診という形態上、今すぐのお伺いは難しいことをご理解ください。待てるのかどうかはご家族の判断となりますが、大型犬で起立困難となると、往診を依頼することで、わんちゃんだけでなくご家族にとっても移動の負担を減らす選択肢になります。  

 

突然の体調不良は飼い主様にとっても驚きと不安が伴いますが、冷静に対応することで、犬にとって最善のケアを行うことができます。  

 

次のセクションでは、東京中央区で急に立ち上がれなくなってしまったゴールデンレトリバーの犬吉くんについてご紹介します。

 

急に立てなくなったゴールデンレトリバーの犬吉くん

 

散歩好きな大型犬が見せた突然の異変

犬吉くんは、東京中央区で暮らす明るく元気な大型犬でした。毎日の散歩を何より楽しみにしており、家族の誰よりも早起きして散歩の準備をするほどでした。ところが、ある日、散歩の途中で急に足を止め、そのまま動けなくなってしまいました。  

 

飼い主様は最初、「疲れただけかな?」と思っていたそうですが、その後も歩きたがらない様子が続き、不安を感じて動物病院に連れて行きました。  

 

動物病院での診断と心配な症状

動物病院での診察の結果、犬吉くんは心臓の病気と神経障害の可能性を指摘されました。さらに、血液検査とエコー検査で、心臓周囲に液体が溜まる心嚢水貯留が確認され、すぐに抜去処置が必要とされました。

 

心嚢水貯留が進んだ犬には顔色(歯茎の色)の変化(白っぽくなる、もしくは青白くなる)特に横になりたがらず、呼吸が浅く速くな理、座ったままでいることが多くなり、特に横になりたがない印象です。 好物に興味を示さなくな理、元気や食欲の低下が著しく起こります。

 

もしこれらの症状が現れた場合、直ちに医療対応が必要です。

 

ご家族の想いと在宅医療の選択

診断後、動物病院で心嚢水の抜去処置が行われましたが、病状が進行する可能性を考慮し、飼い主様は通院ではなく在宅医療に切り替える選択をしました。大型犬の場合、通院は体力的にも負担が大きく、呼吸が苦しい状況での移動は非常に危険です。  

 

犬吉くんの飼い主様は、「少しでも穏やかな時間を家で過ごさせてあげたい」という想いから、往診専門の動物病院に相談し、在宅医療の準備を始めることにしました。  

 

次のセクションでは、急な体調不良時にどのような初期対応が必要か、そして早めの診察がいかに重要かをご紹介します。

 

3. 初動の速さが重要

 

「急に立てなくなった」に対する初期対応

大型犬が急に歩けなくなったり立てなくなった場合、初期対応が犬の命を守るうえで非常に重要です。以下のポイントを押さえて、冷静に行動しましょう。

 

1. 状況と状態を冷静に観察

大前提として、緊急時ほど冷静になることを意識しましょう。いつからの症状なのか、兄をしているときにそれが起きたのか、そして呼吸状態はいかがでしょうか。呼吸が浅く速くなっているか、または苦しそうな様子がないか確認します。歯茎や舌の色を見て、蒼白や青白い場合は緊急性が高い可能性があります。

 

2. 安静を保つ

無理に動かそうとせず、静かで落ち着いた場所に犬を寝かせましょう。この時、過剰に触ったり、無理に歩かせようとしないように注意します。急いで動物病院に連れて行きたい気持ちは山々ですが、その時点で胸部を圧迫してしまうと、致命的な結果になってしまうかもしれないので、注意しましょう。

 

3. 動物病院への連絡

緊急で受診できる動物病院に連絡し、状況を伝えて指示を仰ぎます。東京中央区を含む23区内では、夜間救急に対応可能な病院も複数ありますが、全国になると地域ごとで夜間も診療してくれる獣医師もいれば、全くいないということもあると思います。もしものことすぎるため、事前に動物病院と連携をとっておくことも難しいと思いますので、ご家族がアクションプランを決めておきましょう。

 

動物病院での検査とその後の流れ

動物病院では、身体検査や炎症や貧血の有無を調べるための血液検査、心臓や関節、脊椎など、内部の状態を確認するためのX線検査や超音波検査(エコー検査)などの画像検査、心嚢水や胸水が貯留している場合には鎮静処置を伴った抜去処置が行われるのが一般的です。

 

初期対応で重要なのは、早期に適切な診断と治療を受けることです。特に心嚢水貯留が疑われる場合、早めの抜去が犬の体調を大きく改善させる可能性があります。  

 

早めの在宅医療で生活の質を守る

診断後、通院でのケアが難しい場合は、早めに在宅医療(在宅緩和ケア)を検討することも大切です。在宅緩和ケアでは犬の体力を温存させるだけでなく、通院によるご家族の負担を回避できます。動や待ち時間が不要になることで、ケアに集中できます。そして、自宅での在宅ケアや介護のお話をさせていただき、ご家族のニーズに合わせた診療計画が立てられます。  

 

在宅医療では、定期的な往診を通じて症状を管理し、急変時に備えた準備を進めることが可能です。早めに体制を整えることで、犬と飼い主様が穏やかな時間を過ごすサポートができます。  

 

次のセクションでは、在宅医療を開始した犬吉くんの診療プランについて具体的にご紹介します。

 

4. 在宅医療の始まり(犬吉くんの診療プラン)

 

自宅でできるケアの準備(環境整備のポイント)

犬吉くんの在宅医療を開始するにあたり、まずは自宅での日常ケアと介護などの環境を整えることが重要でした。大型犬の場合、快適な環境を作るためには次のような点に注意が必要です。

 

1. 安静を保つスペースの確保

滑りにくいマットやカーペットを敷き、犬がリラックスして横になれる場所を準備します。部屋の温度や湿度も病態た状態によって適宜調整し、少しでも過ごしやすい環境へと進化させていきます。

 

2. 移動の補助器具の準備

ハーネスやスリングを用意し、立てなくなったときに安全に移動できるようにします。

 

3.必要な医療器具の配置

酸素発生装置や皮下点滴セットなど、緊急時に対応できる医療資材や機材をご自宅に設置していきます。今後起こりうる症状などに対し、その時ご家族が緊急通院以外を選択できるように、ご自宅の中に対策を残して行きます。

 

呼吸、食欲、排泄状態をモニタリングする方法

在宅医療では、犬の体調を日々観察することが欠かせません。以下のポイントを飼い主様に共有し、犬の健康状態を把握していただきました。

 

1. 呼吸状態のチェック

呼吸が浅く速い場合や、苦しそうにしている場合は、すぐに酸素を供給します。鼻や歯茎の色が蒼白または青白くなった場合も注意が必要です。  

 

2. 食欲の観察

食べる量や食事への興味を毎日確認します。食欲がない場合は早めに報告いただきました。 

 

3. 排泄の管理

排尿・排便の頻度や量、形状などを記録し、異常があれば診察時に伝えていただきます。

 

ご家族と連携した柔軟な診療プラン

犬吉くんの在宅医療では、ご家族との密な連携が診療プランの中心でした。次のような計画を立てて進めました。

 

1. 定期的な往診

最初のうちは1〜3日に1回の往診で経過観察と検診、医薬品投与による反応を評価していき、落ち着きを取り戻してきた頃からは、週1回程度の往診で、心嚢水や胸水の状態をチェックし、内服薬の調整を行いました。

 

2. 急変時の対応準備

在宅緩和ケアにおいて、症状の急激な悪化はつきものです。この時、回復を望む場合には緊急で動物病院に飛び込むことをお勧めします。しかし、移動中に苦しむこと、そして改善してもまた繰り返すのが、この緩和ケア期の後半〜ターミナルケア期です。もう通院は厳しいとした場合に何もできないという状況にならないように、酸素環境や注射薬の準備を整え、緊急時に備えた具体的な対応策を共有しました。  

 

3. 家族と相談しながらのケア

犬吉くんの体調やご家族の希望に合わせて柔軟にケアプランを調整し、犬と家族が安心して過ごせる環境をサポートしました。  

 

在宅医療を開始することで、犬吉くんは自宅で安心して穏やかな日々を過ごせるようになりました。次のセクションでは、急変時に必要なアクションプランと飼い主様ができる対応について詳しくご紹介します。

 

5. 緊急時のアクションプラン(家族がその時できること)

 

急変時に役立つ在宅緩和ケアの知識

大型犬の在宅医療では、症状が急変したときに家族がどのように対応するかが重要です。特に呼吸困難や突然の虚脱といった緊急事態に備えるため、事前に必要な知識と準備を整えておくことをおすすめします。以下のポイントを基に、犬吉くんの飼い主様にも対応をお伝えしました。

 

1. 犬の状態を冷静に観察する

呼吸が浅く速い、もしくは呼吸のリズムが乱れている場合は緊急対応が必要です。歯茎や舌の色が白っぽくなる、冷たくなるなどの変化をチェックします。

 

2. 慌てずに安静を保つ

急に動かしたり、無理に立たせようとせず、犬がリラックスできる体勢を維持します。

 

3. すぐに酸素供給を開始する

酸素発生装置を利用して呼吸をサポートします。大型犬の場合、鼻先に酸素を直接吹きかける方法が現実的です。

 

酸素供給や皮下点滴での対応準備

急変時には、酸素環境や注射薬を活用したケアが効果的です。酸素発生装置や酸素ボンベを設置し、使用方法を家族全員が理解しておくことで、急な呼吸状態の悪化に備えて酸素環境が整備されます。酸素を使い始めたら、犬の呼吸状態がどのように変化するかを観察し、獣医師に状況を共有しましょう。

そして、おそらくこの後からは内服薬が飲めないと思われます。内服薬が飲めなくなった場合に備え、皮下点滴で薬剤を投与できる体制を整えます。犬吉くんのお母さん、お父さんには、皮下点滴の方法を事前に練習していただきました。犬吉くんは何の不安もなさそうに皮下点滴を受けてくれ、まるで全部を理解しているような雰囲気でした。

緊急時に家族の誰が何をするのか役割を決めておくと、スムーズに対応できます。  

 

動物病院へ連れていくべきか判断する基準

急変時、動物病院に連れていくか在宅で見守るかの判断は、症状や犬の状態によります。以下の基準を参考に、適切な選択を行いましょう:  

 

この話からはズレてしまいますが、まだ治療中であり回復を望める場合には、通院という手段を消さないほうがいいです。ただ、もう厳しいと判断された以降は、もう通院をさせないで、家で看取ってあげる前提の上で判断をすることになると思います。酸素供給や皮下点滴を行っても呼吸状態が改善しない場合には、医薬品の内容変更や用量変更を行い、明らかに痛みを伴っている場合や苦しそうな鳴き声を出す場合には、痛み止めを追加使用するなど、在宅でできる緊急時の苦痛緩和用の医薬品は、ご自宅に事前準備することは可能です。

 

犬吉くんの飼い主様も、酸素供給や注射薬の準備を整えたことで、急変時にも落ち着いて対応できました。次のセクションでは、往診を活用した在宅医療の具体的な内容について詳しくご紹介します。

 

6. 在宅医療でできること(往診による柔軟なケア)

 

自宅での診療がもたらす犬の安心感

大型犬が通院する際の負担は非常に大きいため、自宅で診療を受けられる往診は、犬にとっても飼い主様にとっても安心できる選択肢です。犬吉くんのケースでも、次のようなメリットがありました。

 

1. 慣れた環境でストレスを軽減

犬吉くんは、自宅の落ち着いた環境で診療を受けることで、動物病院の通院後の疲れた表情がなく、きっと通院ストレスが緩和されたんだと思います。家の中での訪問診療中もリラックスした様子を見せてくれることが多く、診察がスムーズに進みました。

 

2. 体力温存に寄与

動物病院への通院だと、絶対に必要となる移動や待ち時間がなくなり、体力が温存されたような印象だと、ご家族から伺いました。往診であれば、呼吸が苦しい状態でも、移動の負担を感じることなく診療を受けることができました。

 

3. 飼い主様との一体感

家族が診療中もずっとそばにいてくれる安心感が、犬吉くんを精神的に支えてくれたからなのか、終始落ち着いて診察を受けてくれました。診療全体を通して、ご家族も安心した表情で診察に立ち会ってくれて、説明もわかりやすかったと話してくれました。

 

内服薬の調整と注射薬による症状コントロール

在宅医療では、犬の状態に応じた柔軟な治療プランが可能です。犬吉くんの場合は、症状に応じて利尿薬や心臓サポート薬を調整し、症状の進行を抑えました。大型犬は比較的内服薬を受け入れやすい傾向があり、犬吉くんも治療初期は内服薬で安定した生活を送ることができました。また、常に内服薬を飲めなくなった場合に備えておくことも欠かせません。犬吉くんでも同様に、内服薬が飲めなくなった場合に備え、皮下点滴による薬剤投与を準備しました。ご家族に点滴の方法を事前トレーニングを持って覚えていただき、急変時にも対応可能な体制を整えました。そして、呼吸困難が見られる場合には、酸素供給を組み合わせたケアを実施しました。また、痛みが強い場合には、どこをどう判断することで痛みなのかどうかが判断できるとお伝えし、痛みを確認した場合に使用できるように、鎮痛剤を準備させていただき、苦痛を和らげました。

 

定期的な往診で見守る大型犬の生活

犬吉くんの場合、週に1回の定期往診を実施し、状態の確認と治療プランの見直しを行いました。往診のたびに次の点を評価しました:  

 

1. 呼吸状態の確認

心嚢水や胸水の貯留の有無を超音波検査で確認し、必要に応じて抜去を実施しました。

 

2. 生活の質(QOL)

1週間を通じての食欲や排泄の状況を把握し、日常生活の質を維持するためのアドバイスを行いました。

 

3. ご家族のマインド

家族の不安や質問に丁寧に対応し、一緒に治療プランを調整しました。プラン構築の上で最も重要なことは、ご家族の心を把握することです。何をどんな風に悩んでいるのかを常に意識しながら状況説明を行うと、意外な言葉にご家族の反応が見えることがあり、その場合には別角度から同じような説明をしたりなどで、マインド把握を図ります。

 

往診による在宅医療は、犬の状態に応じた柔軟なケアを可能にし、飼い主様と犬が安心して穏やかな時間を過ごせる環境を提供します。次のセクションでは、犬吉くんが在宅医療でどのように穏やかな日々を過ごしたのか、その最期の時間についてご紹介します。

 

7. 犬吉くんの穏やかな道のり

 

ご家族との時間を大切にした在宅ケアの取り組み

在宅医療が始まってからの犬吉くんは、自宅という安心できる環境で、家族と特別な時間を過ごしました。通院の負担がなくなり、食欲が少しだけ回復したことで「らしさ」を取り戻してくれました。犬吉くんは、在宅医療の開始後にお気に入りのフードを再び楽しむようになりました。心嚢水抜去による呼吸の改善や内服薬の調整により、体調が安定し、今まで通りの家族時間が戻ってきたようだとお話しされていました。大型犬の心臓血管肉腫に伴う急な症状は、心嚢水の抜去が完了すると、次の瞬間からいつも通りの元気さが戻ってくることが多いです。もちろん、いきなり元気に走り回るかというと違いますが、起き上がれなかったのが家の中を普通に歩けるくらいまで回復し、ご飯だって食べてくれるようになります。

 

「もう一度散歩を」の願いが叶った日

抜去した日の昼過ぎに、家族の支えのもと、短い散歩に出ることができました。ゆっくりとしたペースでしたが、大好きな近所の公園で風を感じることができたその日は、家族全員にとって忘れられない思い出となったそうです。

本来であれば、ぐったりするたびに動物病院に連れて行かなければいけなかったのが、往診と出会うことができて以来、通院の必要なく、すべてが家の中で行えていました。

自宅で過ごす時間は、犬吉くんにとっても家族にとっても、かけがえのないものです。家族が交代でそばに座り、撫でたり話しかけたりする中で、犬吉くんはリラックスして眠る姿を見せてくれました。

 

最期を自宅で迎えることがもたらす安心感

犬吉くんの最期の時間は、家族全員に見守られながら、本当に穏やかで静かなものでした。心タンポナーデが進行する中でも、酸素供給による呼吸のサポートや安定剤の使用により、犬吉くんが苦しまずに過ごせていました。苦痛は最小限に抑えることで、治療ではない緩和ケアによって、緩やかな最後を描いてくれました。

 

家族との深い時間と後悔のないお見送り準備

家族全員が犬吉くんを囲み、話しかけたり、好きだったおもちゃやタオルをそばに置いたりして、犬吉くんにとって安心感のある時間を作りました。最期の瞬間は少し苦しそうでしたが、家族に見守られながら旅立つことができました。

病状の進行や予想される変化について事前に共有していたことで、ご家族は心の準備を整え、最後の呼吸が始まった時も、犬吉くんに寄り添い続けることができました。見送った後も、「自宅で一緒に過ごす選択ができて良かった」という思いを語ってくださいました。  

 

穏やかに過ごすための心の準備

在宅医療では、犬の体調管理だけでなく、家族が心穏やかに愛犬を見送るためのサポートも重要です。犬吉くんのケースでは、次のような取り組みを行いました。

 

1. 病状の進行についての丁寧な説明

ご家族が、今自分の子がどんなん状態で、今後何が起こりうるのかを知っておくことが重要です。心嚢水が再び貯留した際の兆候や、最期が近づくと見られる変化について具体的にお伝えしました。症状の一つひとつをご家族と共有することで、ご家族が抱える漠然とした不安の軽減を図りました。

 

2.最期の時間の過ごし方の提案

ご飯を食べられなくなった時は強制給餌をするのか、食べないことで餓死してしまうのでは、いつまで皮下点滴を打つのか、打たないほうが枯れるように亡くなるとどこかのブログでみた、など多岐にわたる質問を受けるのが、私たちが専門的に取り組んでいる在宅緩和ケア、そしてターミナルケアです。医療面のことはもちろん、できるだけわかりやすい言葉でシンプルにお伝えすることで、「わからない不安」を減らして行きます。また、「声をかけ続ける」「触れてあげる」など、犬が安心できる接し方をアドバイスしました。家族ができることに集中できる環境を整えることで、心の準備を後押ししました。

 

犬吉くんの在宅医療の取り組みは、家族と犬が互いに支え合いながら、特別な時間を過ごすことを可能にしました。次のセクションでは、当院の往診を紹介させていただきます。東京23区での訪問による在宅緩和ケアを検討されているご家族は、まずは当院がどのようなサポートを提供しているのかをご覧いただける内容となっています。

 

8. 東京23区での在宅医療なら往診専門動物病院わんにゃん保健室へ

 

東京23区を中心に近隣地域までの広範囲対応

当院では、東京23区を中心に、近隣地区まで在宅医療を提供しています。特に大型犬のように移動が困難な場合、往診は犬の体力や飼い主様の負担を軽減する最適な選択肢です。  

 

1. 東京23区全域をカバーした往診専門動物病院

多くの往診専門動物病院が、地域を限定しての訪問としており、地区を越えてまでの往診を定期的に提供できるところは希少です。私たちは、中央区、江東区、品川区などの都心部から足立区や葛飾区といったエリアまで対応しています。また、診療時間も飼い主様の生活スタイルに合わせた時間帯にできるだけ柔軟に対応しています。

 

2. 酸素環境や医療機器の導入サポート

酸素環境にここまで力を入れている動物病院は、出会ったことがないですが、最後の時間に酸素発生装置があることはかなり便利です。どんな環境で管理するかによって、酸素発生装置1台ではなく2台にするか、または酸素ボンベがあったほうがいいか、などを考えています。もし呼吸を苦しがっているような症状があれば、ご家族から直接レンタルできる酸素発生装置よりも、処方箋を出さないと入手できないもののほうが、実際に使ってみて使いや水です。

当院では、酸素環境を整えたいご家族の場合に、在宅での使用方法を丁寧に説明し、急変時にも対応できるようサポートさせていただいています。  

 

大型犬も安心の在宅医療サービス

大型犬は、小型犬に比べて通院の負担が大きく、特に歩行が難しくなった段階での往診が強く推奨されます。当院では、大型犬の在宅医療において次のようなサービスを提供しています。

 

1. 心嚢水や胸水の抜去はご自宅で可能

状況に応じて、自宅で心嚢水や胸水の抜去を実施し、呼吸の負担を軽減します。保定業務は経験豊富な愛玩動物看護師が行うため、飼い主様が負担する必要はなく、わんちゃんへの負担も最小限に抑えます。  

 

2. 診察中の呼吸悪化に対する対応準備

胸水貯留や心嚢水貯留などの症例では、処置時のストレスで呼吸状態が容易に悪化します。そのため、保定には十分に注意を払うのはもちろんのこと、呼吸状態悪化を回避するために、常に酸素ボンベを携帯しています。酸素供給を迅速に行える環境下で処置することで、通常の往診に比べて安心して対応できる環境を提供します。

 

3. 内服薬や注射薬による症状コントロール

こちらも通常の動物病院と比べると差はほとんどないのですが、往診専門動物病院と比較すると、当院は複数の内服薬を保持しています。その分柔軟に医薬品変更の対応が可能であり、わんちゃんの状態に合わせて、注射薬変更も可能という柔軟な処方対応を行います。  内服薬が飲めなくなった場合でも、注射薬であれば皮下点滴に混ぜることで投与が可能です。

 

飼い主様に寄り添う柔軟な診療プラン

当院では、ご家族の不安を軽減し、わんちゃんもご家族も穏やかに過ごせる環境を提供することを目指しています。  

 

1. 十分な時間枠による安心空間での診察

診療空間は家の中であり、実際の生活環境の中に改善点があればアドバイスをさせていたいています。診療時間枠も、通常の動物病院での診療では難しい時間枠にて、しっかりと診察させていただきます。初診では1時間半〜2時間半ほど、再診でも30分〜1時間ほどと、予約枠は状況次第で変動しますが、ゆっくりと十分な時間を取ることを大切にしています。

定期訪問の頻度やケア内容を都度調整し、飼い主様と一緒に最適な方法を探ります。  

 

2. 在宅医療の経験豊富なスタッフ

獣医師と動物看護師がチームとなり連携を密に取り合うことで、全症例を全員で診ていきます。医療面だけでなく、日常ケアや介護、食事などの悩みも、すべて把握させtいただいております。生活環境を見させていただくことで、どこに不安を感じているのか、どんな悩みがありそうか、など、獣医師、動物看護師の観点から見つめられるのも強みです。

飼い主様との密なコミュニケーションを大切にし、不安や疑問に丁寧にお答えすることで、質の高いケアを提供します。  

 

3. 穏やかな最期を迎えるためのサポート

わんちゃんとご家族が最後まで安心して過ごせるよう、緩和ケアからターミナルケアまで一貫してサポートします。最期の時間をご家族と共に穏やかに過ごせるよう、心の準備やケア方法をお伝えします。

 

お気軽にお問い合わせください

大型犬の在宅医療に関してお困りの際は、ぜひ当院までご相談ください。東京以外でも対応可能ですので、移動の負担を減らしたい、愛犬が最後まで安心して暮らせる環境を構築してあげたい、治療ができなくても苦痛だけは緩和してあげたい、など、診療にて全力でサポートさせていただきます。まずはお電話または問い合わせフォームから、現在の状況をお聞かせください。  

 

わんちゃんだけでなく、その横で必死に向き合ってくれているご家族にとっても、残された時間を少しでも穏やかに過ごしていただけるよう、最善のケアについて一緒に考えていきましょう。  

 

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1. 心臓血管肉腫とは(進行性の悪性腫瘍)

 

血管肉腫とは?(血管内皮由来の疾患)

心臓血管肉腫は、大型犬に多く見られる進行性の悪性腫瘍で、血管内皮細胞が腫瘍化することで発生します。この病気では、腫瘍の破裂や進行によって血液や液体が心臓周囲に漏れ出し、心タンポナーデと呼ばれる状態を引き起こすことがあります。

 

心タンポナーデとは、心臓とその周囲を覆う膜(心嚢膜)の間に液体が溜まり、心臓が正常に動けなくなる状態です。この結果、呼吸困難や失神、急な衰弱といった症状が現れ、適切な処置が必要となります。

 

心臓に発生する血管肉腫と心タンポナーデの影響

心臓血管肉腫は症状が進行するにつれて、次のような症状が見られることが多いです。

いつも元気な犬が散歩を嫌がる、疲れやすくなるなどの変化(運動量の低下)、安静時でも呼吸が浅く速くなる(呼吸が苦しそうになる)、歯茎が白っぽくなるなど、貧血の兆候(顔色の変化、可視粘膜蒼白など)、そして急な体調不良を起こし、突然立てなくなる、失神することもあります。

 

心タンポナーデを解除するためには、心嚢水抜去と呼ばれる処置が必要です。この処置では、心臓周囲に溜まった液体を針で抜くことで心臓の圧迫を緩和します。ただし、心嚢水抜去は、往診で対応できる往診専門動物病院は多くないかもしれません。当院では、鎮静処置を行なった上で実施していますが、大型犬の場合には比較的痛みにとても強い子が多いので、無処置で心嚢水抜去に耐えてくれることも多くあります。

 

外科手術や積極的な治療は難しい

心臓血管肉腫の治療では、外科手術や抗がん剤が選択肢として挙げられることがありますが、多くの場合、効果を期待するのが難しいとされています特に大型犬では、以下の理由から在宅緩和ケアへの移行が選ばれることが多いです。心臓血管肉腫は進行が早く、緩和ケアで穏やかな生活を目指す選択が重要視されます。特に大型犬では、動かすことがそもそも小型犬と比べて重さの観点から難しい場合が多く、動物病院への高頻度な通院に耐えられず、在宅緩和ケアへの移行を選ばれることが多いです。

大型犬は比較的内服薬を受け入れてくれるため、週1回程度の定期検査、状態のよって内服薬の用量や種類を変更するなど、これらはほとんどの往診専門動物病院で管理が可能だと思います。

 

大型犬の場合、歩行が難しくなった段階で往診を検討するのが良いタイミングだと思います。心臓血管肉腫では、症状が進むと週1回以上の検査や内服薬の調整が必要になるため、無理な通院を避けるためにも、早めの往診切り替えが推奨されます。

 

次のセクションでは、実際の症例を基にした在宅緩和ケアの経過について詳しくご紹介します。

 

2. 大型犬の心臓血管肉腫(ゴールデンレトリバー)

 

病気の発覚(呼吸困難と急な失調症状)

大型犬で心臓血管肉腫が見つかるきっかけは、急な体調変化が多い傾向にあります。例えば、次のような症状から病気が発覚することが一般的です。

 

①散歩中に急に立ち止まり、動けなくなる  

②普段と違う浅い呼吸や疲れやすい様子が見られる  

③食欲旺盛だった犬が食事中に戸惑うような行動を見せる  

④失神や突然の衰弱  

 

これらの症状が出現した場合、緊急で動物病院を受診すると、心嚢水の貯留が確認され、心タンポナーデを起こした可能性が多いです。心嚢水の貯留が進むと心臓が圧迫され、正常な血液循環が阻害されるため、迅速な対応(心嚢水抜去)が必要になります。

 

心嚢水抜去で一時的に安定を取り戻す

心嚢水が貯留している場合、心嚢水抜去という処置が行われます。この処置では、心嚢膜に針を刺して溜まった液体を抜くことで、心臓の動きを改善します。抜去後は、呼吸が楽になる、顔色が戻り元気を取り戻す、そして抜去後には食欲や行動が一時的に改善するなどが期待できます。

 

ただし、心嚢水の貯留は繰り返し起こることが多いため、1回の処置だけで完治するものではありません。症状が再発するたびに抜去を行う場合、頻繁な通院が必要になるため、大型犬では体力面の負担が大きくなります。

 

在宅緩和ケアへの切り替えとその背景

通院が難しくなる段階で、在宅緩和ケアを選択する飼い主様も多くいらっしゃいます。特に、大型犬では次の理由から在宅ケアが選ばれることが一般的です。

 

①体力の低下に伴う通院リスク

心嚢水や胸水が貯留し始めた段階では、頻繁な検査や内服薬の調整が必要になります。大型犬の場合、これらを通院で対応するのは犬と飼い主様双方にとって大きな負担です。体力的な負担の増大と時間的な拘束は、直接的に精神面の崩壊を招いてしまうかもしれない、ということを忘れないでくださいね。

 

②緊急時の対応準備

心嚢水の貯留が急激に悪化した場合、自宅での酸素環境整備や注射薬の準備が重要となります。内服薬が飲めなくなることを想定し、皮下点滴の準備も行うことで、緊急時の対応がスムーズになります。もちろん、寝たきりの大型犬を動物病院まで連れて行ける環境があるのであれば、おかしいと判断したらすぐに動物病院に連れて行きましょう。

 

③穏やかな最期を目指したケア

終末期では、苦痛を最小限に抑えたケアが重視されます。飼い主様と犬が安心して過ごせる環境を整えるため、在宅ケアが選ばれるケースが増えています。  

 

大型犬の場合、比較的内服薬をしっかり受け入れてくれるため、症状が安定している間は薬でのコントロールが可能です。しかし、心嚢水や胸水が貯留し始めたら週1回以上の検査と内服薬の調整が必要になるため、早めに往診を利用し、飼い主様が適切にケアできる体制を整えることが推奨されます。

 

次のセクションでは、在宅緩和ケアで具体的にどのような対応が行われるかについて詳しくご紹介します。

 

 

3. 在宅緩和ケアの具体的な実施内容

 

初期対応とご自宅でのケアプラン

心臓血管肉腫を抱える大型犬にとって、在宅緩和ケアの最初のステップは症状の安定化と家の中でご家族様だけでできる在宅ケアプランの作成です。特に心嚢水や胸水が貯留し始めた場合、定期的な検査と緊急時の対応準備が不可欠です。

 

1. 酸素環境の整備

呼吸が苦しい場合、酸素濃度を高めた環境を整えることが重要です。在宅での酸素環境には、

酸素発生装置と酸素ボンベの適宜設置及び運用によって、犬の状況に合わせた酸素環境を構築していきます。

酸素発生装置は、基本的にはずっと酸素を供給できる装置であり、維持することを目的に使用していきます。地域によっては酸素ボンベの設置が可能な場合があります。

東京23区であれば、私たちの方から診療で必要だと判断した場合に処方箋を作成することで、ご自宅に酸素ボンベを設置することが可能です。

急激な呼吸状態の悪化時に即座に酸素を補給するための準備は欠かさないようにしましょう。また、大型犬の場合には、酸素ハウス内で管理することは、経験上行われないことが多いです。

大型犬が入り、なおかつ中で動きがとれるくらいの快適さを酸素ハウスに求めた場合、それだけの空間を酸素化することはかなり難しくなってきます。

ただ、ご希望があれば、私たちが酸素環境を構築させることは可能ですので、往診の時にご相談ください。

入らなかった場合には、直接吹きかけてあげることで、酸素供給を目指します。大型犬の場合、酸素を直接鼻先に吹きかける方法が現実問題として最も選ばれる手法だと思われます。  

 

2. 内服薬と皮下点滴の準備

大型犬では、比較的内服薬をしっかり受け入れてくれるケースが多いです。

これを活かし、症状のコントロールには、症状に応じて利尿薬や心臓をサポートする薬を中心に据えつつ、急変で内服薬が飲めなくなった場合に備え、家の中での皮下点滴を導入しましょう。皮下点滴を準備しておくことで、幅広い医薬品の投与が可能になります。

 

急変時の対応方法

心嚢水や胸水が貯留し始めた場合、症状の急変が避けられないケースもあります。在宅ケアでは、急変時に飼い主様が適切に対応できるよう、事前の準備とアクションプランが重要です。  

 

1. 心嚢水抜去の検討

心嚢水が急激に貯留した場合、速やかに心嚢水抜去を行う必要があります。

当院では、獣医師だけでなく愛玩動物看護師が同行し、保定を含む適切な対応を提供します。

鎮静後に心嚢水抜去を行いますが、大型犬では痛みにとても強い場合が多いため、無鎮静で実施できている印象を受けています。

当院以外の往診専門動物病院でも、状況次第では心嚢水抜去が可能なこともあると思いますが、抜去ができないために内服や注射薬で貯留した心嚢水が減少するかを見守るとされた場合には、別の往診専門動物病院を検討しましょう。

 

2. 家族ができるアクションプラン

飼い主様には、緊急時にどのように対応するべきかを具体的にお伝えしています。

呼吸が苦しい場合には、事前に準備された酸素運用を行い、まずは酸素の供給をサポートしてもらいます。

飲食ができなくなった場合には、内服薬を無理に飲ませるのではなく、皮下点滴や注射薬で対応することをお勧めします。

なお、もし動物病院まで連れて行けるのであれば、動物病院へ連れていくべきか、在宅で見守るべきかの判断基準を事前に話し合っていただきます。  

 

終末期のサポート(ターミナルケア)

在宅緩和ケアの目的は、愛犬ができるだけ苦しまずに、家族と穏やかな時間を過ごせるよう支えることです。終末期(ターミナル期)では緩和ケア期と比べて、より具体的に別れを意識した取り組みをさせていただきます。

 

例えば呼吸状態の管理で、酸素を十分に嗅がせていても呼吸状態が悪化していく場合には、安定剤や鎮痛剤を適切に使用し、少しでも今という時間を楽に過ごしてもらうのかを考えていきます。

ただ、この先の数分後、数十分後に訪れるのは、お別れになると思います。それでも最後の苦しい時間を短くしてあげたいと考え、実施されるご家族様もいます。

 

最後の時間を、少しでも不安や苦しみが少ないように、家族の不安を軽減するためにも、状況に応じた具体的なアドバイスを行います。  

 

在宅緩和ケアは、大型犬の体調や家族の状況に合わせて柔軟に対応できるケア方法です。

次のセクションでは、大型犬において通院が難しい理由と、往診を選ぶメリットについて詳しくご紹介します。

 

4. 呼吸が苦しい大型犬に往診を選ぶ理由

 

通院のリスクと体力消耗の危険性

大型犬にとっても、心臓血管肉腫の進行に伴う通院は、体力面・精神面で大きな負担となります。

特に呼吸が苦しい場合や心嚢水、胸水が貯留している場合、通院によるストレスが病状をさらに悪化させる可能性があります。

 

通院時のリスク

移動中の体力消耗がまずは大きいです。

持ち上げるにも、移動させるにも、胸郭の圧迫や興奮は避けなければいけません。

また、車の揺れも胸水貯留や心嚢水貯留を伴う犬猫には大きなストレスとして影響を与える可能性があります。次に待ち時間によるストレスです。

これは、毎回の積み重ねで、犬だけでなくご家族様の精神的な負担につながってきます。

ただし、心嚢水貯留をすでに起こしているわんちゃんが失神した場合などは別で、心嚢水抜去が可能な往診獣医師を待つことができなければ、動物病院に急ぐ連れていくことを検討しましょう。

 

往診専門動物病院でも酸素環境構築指示、心嚢水抜去、皮下点滴は可能

往診を利用することで、大型犬に必要なケアを自宅で受けられる環境を整えることができます。

特に次のようなケアは、往診の利点を活かして実施可能です。

 

1. 酸素供給の環境整備

自宅での酸素環境の構築により、通院せずに呼吸困難を緩和できます。酸素発生装置や酸素ボンベを利用した適切な運用方法を指導します。

 

2. 心嚢水や胸水の抜去

必要に応じて心嚢水や胸水の抜去を往診で実施します。これには鎮静処置が必要な場合があるので、事前に往診専門動物病院に確認しておきましょう。この時の保定には十分な知識と技術が必要なため、必ず動物看護師にお願いしましょう。

 

3. 内服薬や注射薬の調整

状態に応じた内服薬の調整を行い、犬が無理なく服用できる形でサポートします。心嚢水貯留が見られる犬猫では急変はつきものですので、急変時のために皮下点滴や注射薬を準備し、対応力を高めましょう。

 

在宅ケアの安心感

往診で行う在宅緩和ケアは、飼い主様と犬にとって多くの安心感を提供します。

 

1.犬の負担軽減

慣れ親しんだ自宅環境で診察やケアを受けることで、大型犬のストレスを最小限に抑えられます。

 

2.ご家族様の安心

大型犬を連れて通院する負担がないため、飼い主様が犬に集中してケアを続けられます。

 

3. 緊急時の対応力向上

酸素環境や注射薬の準備を事前に整えることで、急変時にも冷静に対応できます。

 

往診は大型犬の終末期ケア(ターミナルケア)に最適な選択肢

大型犬の心臓血管肉腫は、進行とともに通院が難しくなり、より頻繁なケアが求められる病気です。往診は、犬のストレスを最小限に抑えつつ、飼い主様が安心してケアを続けられる体制を提供します。

 

次のセクションでは、これらの取り組みがもたらす穏やかな最期と、在宅緩和ケアの重要性についてまとめてご紹介します。

 

5. まとめ:在宅緩和ケアがもたらす安心と穏やかな最期

 

呼吸状態の安定がもたらす生活の質(QOL)の向上

心臓血管肉腫の進行に伴い、大型犬は呼吸困難や体力の低下といった症状に苦しむことが多くなります。在宅緩和ケアでは、呼吸状態を安定させる環境を整えることで、犬が少しでも穏やかに過ごせる時間を増やすことが期待できます。  

 

生活の質を高めるポイント

1. 酸素環境の整備により、呼吸が苦しい時間を減らせます。  

2. 内服薬や皮下点滴を利用することで、症状をコントロールしつつ快適な生活を維持します。  

3. 自宅でのケアが可能になることで、飼い主様と犬が安心して過ごせる環境を作ります。  

 

大型犬の在宅ケアにおける往診の価値

特に大型犬では、通院による体力消耗やストレスが重篤な症状を悪化させる可能性があります。往診を利用することで、犬に必要なケアを自宅で受けられるだけでなく、飼い主様がケアに集中できる環境が整います。  

 

往診が選ばれる理由

心嚢水や胸水が貯留し始めた際に必要となる週1回以上の検査や内服薬の調整を通院なしで実施できます。また、酸素供給や注射薬を事前に用意しておくことで、急変時にも柔軟に対応可能です。さらに、慣れ親しんだ自宅でケアを行うことで、犬がよりリラックスした状態で治療を受けられます。

 

大切な家族を見守る選択肢としての在宅ケア

在宅緩和ケアは、病気と闘うだけではなく、犬と家族が穏やかな時間を過ごすための選択肢でもあります。通院が難しい状態になったとしても、「何もできない」ということではありません。酸素供給や鎮痛剤の使用を通じて、犬の苦しみを軽減し、穏やかな最期を迎えるサポートが少しでもできるようにしておきましょう。最期の時間を自宅で過ごせることで、飼い主様と犬が特別な絆を再確認する機会になります。

 

在宅緩和ケアを検討されている方へ

大型犬の心臓血管肉腫や終末期ケアにおいて、往診による在宅緩和ケアは、犬と飼い主様にとって負担の少ない最適な選択肢です。病気の進行に伴い、通院が難しくなる前に往診を検討し、必要な準備を進めておくことで、安心してケアに取り組むことができます。

 

もし、呼吸状態の悪化や心嚢水の貯留などでお困りの際は、ぜひ一度、往診専門動物病院までご相談ください。愛犬の穏やかな時間を守るために、私たちは全力でサポートさせていただきます。  

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

愛犬の健康を守るための在宅ケアについて、少しでもお力になれる情報をお届けできていれば幸いです。

 

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1. 猫の乳腺腫瘍と在宅緩和ケアの重要性

乳腺腫瘍の多くは悪性

猫ちゃんの乳腺腫瘍は、特に高齢の猫ちゃんに多く見られる病気で、その約80~90%が悪性とされています。このため、早期発見が重要であり、乳腺にしこりや腫れを見つけた際には、すぐに獣医師に相談することが大切です。  

 

乳腺腫瘍は進行すると肺への転移が起こりやすく、肺転移が確認されると、呼吸が苦しくなる症状が見られることがあります。また、胸の中に液体が溜まる胸水貯留が発生し、呼吸困難を引き起こすこともあります。

 

治療法の選択肢と終末期ケアの考え方

乳腺腫瘍の治療には外科手術が選ばれることが一般的ですが、高齢の猫ちゃんや進行した状態では手術が難しい場合があります。また、「残りの時間を穏やかに過ごさせたい」という飼い主様の意向から、積極的な治療を避けるケースも少なくありません。  

 

その場合、在宅緩和ケアが重要な役割を果たします。在宅緩和ケアでは、猫ちゃんが安心できる自宅で、苦痛を軽減しながら過ごせる環境を整えることが目的です。治療を継続する場合でも、終末期ケアを選ぶ場合でも、猫ちゃんの体調や飼い主様の希望に寄り添ったプランを構築することが大切です。

 

なぜ在宅緩和ケアが乳腺腫瘍において重要なのか

乳腺腫瘍が進行し、呼吸が苦しくなったり食欲が低下したりする猫ちゃんにとって、通院は大きな負担となります。キャリーケースでの移動や病院での待ち時間は、体力を消耗させるだけでなく、病状を悪化させるリスクも伴います。

 

在宅緩和ケアには次のようなメリットがあります。

①安心できる環境でのケア

猫ちゃんが慣れ親しんだ自宅で診察や処置を受けられるため、ストレスを大幅に軽減できます。  

②柔軟な対応が可能

猫ちゃんの状態に応じて、皮下点滴や酸素ハウスの導入、胸水抜去などの処置を在宅で行うことができます。  

③飼い主様との時間を大切に

通院の時間を削減し、猫ちゃんと一緒に過ごす時間を増やせます。

 

乳腺腫瘍は進行の早い病気であり、特に猫ちゃんの場合、その多くが末期段階で発見されることが多いです。だからこそ、早期のケアプラン作成や往診による在宅ケアが飼い主様と猫ちゃんの負担を減らし、穏やかな日々を実現する第一歩となります。

 

次のセクションでは、呼吸状態が悪化する猫ちゃんに必要なケア、胸水貯留への対応策について詳しくご紹介します。

 

 

2. 呼吸状態が悪化する猫ちゃんのケア:胸水貯留と対応策

胸水貯留とは?猫ちゃんの呼吸が苦しくなる原因

乳腺腫瘍が進行し、肺に転移が起こると、胸の中に液体(胸水)が溜まる胸水貯留が発生することがあります。胸水が溜まると肺が圧迫され、猫ちゃんが十分に息を吸い込めなくなり、次のような症状が現れることが一般的です。

 

①呼吸が浅く速くなる(頻呼吸)

②お腹を使った苦しそうな呼吸(努力呼吸)

③横にならず、座ったままの体勢で過ごすことが多くなる

④食欲不振や動きたがらない状態

 

胸水貯留が進行すると猫ちゃんの体力を大きく消耗するため、早急な対応が必要です。

 

胸水抜去と医薬品:利尿剤が効きにくい場合の対処法

胸水貯留の治療には、溜まった胸水を直接排出する胸水抜去が効果的です。細い針を胸に刺して胸水を抜くことで、呼吸がすぐに楽になる効果が期待できます。ただし、胸水抜去は一時的な効果であり、乳腺腫瘍による胸水は再び溜まることが多いため、継続的な管理が必要です。  

 

また、心臓病由来の胸水とは異なり、乳腺腫瘍に伴う胸水貯留では利尿剤が効きにくい場合がほとんどです。そのため、以下のようなアプローチが考えられます。

 

1.胸水抜去を適切に繰り返す

猫ちゃんの呼吸状態を見ながら、必要に応じて胸水抜去を行います。この際、鎮静薬や鎮痛薬を用いることで猫ちゃんの負担を軽減します。

 

2.酸素環境の整備

酸素濃度の高い環境を整えることで、呼吸をサポートします。具体的には、酸素ハウス、酸素発生装置や酸素ボンベの導入を検討します。

 

呼吸を楽にする酸素ハウスの導入と活用

呼吸が苦しい猫ちゃんには、酸素濃度を高めた環境が重要です。酸素ハウスは、簡易的な酸素室を作るための設備で、猫ちゃんが安心して過ごせるスペースを提供します。  

 

酸素ハウスのメリット

①呼吸のサポート

人だと人工呼吸器がありますが、犬猫では空間ごと酸素化する必要があります。酸素ハウスを用いることで、酸素室内の酸素濃度が上がり、猫ちゃんが少ない呼吸回数でも体内に必要な酸素を取り込めるようになります。

 

②自宅での運用が可能

病院に行かずとも、自宅で継続的に呼吸管理ができます。  

 

③ストレスを軽減

通院の必要がなくなるため、猫ちゃんのストレスを最小限に抑えられます。  

 

酸素ハウスの活用方法

①酸素ハウスを出入り自由にする

閉鎖空間になると分かれば、酸素室内に入ってくれないのが常です。まずは酸素を垂れ流し状態にし、出入りが自由であることを理解してもらいましょう。

 

②酸素室でしっかり管理

いよいよ酸素室外では苦しくなってきましたら、酸素室内で管理を始めます。酸素濃度がどのくらいで猫ちゃんの呼吸が落ち着くのかを評価するためにも、酸素濃度測定器の設置が重要です。

 

③酸素ボンベの併用

酸素ハウス内の酸素濃度が下がった際に、ブーストをかける意味合いで使用することが可能です。酸素ボンベを使用して素早く濃度を回復させます。ただし、酸素ボンベの準備ができない地域もあるため、酸素業者に確認しておきましょう。

 

 

呼吸が苦しい猫ちゃんにとって、胸水抜去や酸素環境の整備は命を守るための重要なケアです。ただし、それらの処置が猫ちゃんに過剰なストレスを与えないよう、獣医師と連携して計画的に進めることが大切です。  

 

次のセクションでは、飼い主様が在宅でできるケアやトレーニング、安心できる環境作りについて詳しくご紹介します。

 

3. 在宅終末期ケアでできること:飼い主様に寄り添うプラン

猫ちゃんの負担を軽減する皮下点滴の導入

乳腺腫瘍を抱える猫ちゃんでは、体力を維持し、病状の進行による症状を緩和するために皮下点滴が重要な役割を果たします。脱水を防ぐ目的で選択する手法ですが、ここでは、まず投薬を目的に皮下点滴を実施していきます。投薬ができれば、食欲の改善や全体的な元気の維持が期待できます。

 

皮下点滴は、輸液を皮下に注入する方法で、猫ちゃんに負担をかけずに必要な水分や医薬品の投与が可能です。往診で獣医師が実施するだけでなく、飼い主様が自宅で行えるようにトレーニングを受けることで、以下のようなメリットが得られます。

 

1.実践をより具体的に想定した皮下点滴トレーニング

実際に自宅環境で皮下点滴のトレーニングを行うため、より具体性を持って皮下点滴トレーニングに取り組んでいただけます。自宅のどの場所で、誰がどのように保定して、どのように投与して行くのかを、家族様だけで実施できるようにゆっくりと理解していただけます。

 

2.状態悪化時も家族で対応可能な環境を作る

内服薬ができる猫ちゃんでも、急に内服薬を飲めなくなる時がやってきます。その時に、注射薬を準備しておけば、獣医師の指示のもとに、皮下点滴による医薬品の投与が可能ですので、医薬品によって症状を緩和できることが期待できます。特にターミナルケアの時は、急激に症状が悪化することがあります。その時に、何もできない状況を作らないため、事前に皮下点滴のトレーニングをしておきましょう。

 

3.通院の必要性を考え直せる

在宅医療で検査と処置、処方が可能なため、万が一の時の選択的通院以外の通院ストレスを大幅に軽減できます。そのため、本当に必要な時だけ動物病院に通院、他は在宅にて対処ができることを知ることで、より心穏やかな緩和ケア期、そしてターミナルケア期を迎えることができます。

 

ご家族でできるケアのためのトレーニング

在宅終末期ケアでは、飼い主様が日常的に猫ちゃんの状態を確認し、適切なケアを行えるようサポートすることが大切です。当院では、以下のようなトレーニングを通じて、飼い主様の不安を軽減し、自信を持ってケアに取り組めるようお手伝いします。

 

1.皮下点滴の練習

獣医師が針の刺し方や輸液の量、猫ちゃんを落ち着かせる方法を丁寧に指導します。必要な器具や衛生管理についても詳しく説明させていただくことで、道具の使い方や今からやることの意義を理解して、これからの在宅ケア、皮下点滴に臨めます。

 

2.呼吸状態の観察方法

呼吸数や努力呼吸の兆候を観察し、「何がどうなったら何をすればいいのか」をお伝えします。完全に酸素室内管理で行くのか、酸素の垂れ流しで出入り自由な環境で経過観察を進めるのかなど、状態と性格に応じてアドバイスさせていただきます。この時、酸素濃度測定器を使った評価方法もサポートします。

 

3. 薬の投与方法

内服薬が苦手な猫ちゃんには、注射薬や投薬補助おやつを使った工夫を提案します。また、すでに内服は難しいと判断した場合には、注射薬での処方に切り替えさせていただきます。投薬のタイミングや投薬経路、1日1回の投薬なのか2回、3回なのかなど、飼い主様の生活スタイルに合ったものをご提案させていただいています。

 

安心して過ごせる環境作りと在宅ケアの基本

乳腺腫瘍を抱える猫ちゃんが穏やかに過ごすためには、猫ちゃんにとって少し絵も快適に過ごせる環境作りが欠かせません。在宅ケアでは、以下のポイントを意識することが大切です。

 

1. 酸素室の設置場所は落ち着ける場所で 

猫ちゃんがリラックスできるよう、いつもの環境の中に酸素環境を作ってあげること心掛けています。お気に入りのクッションや毛布を用意することで、安心感が増します。

 

2.食事や水分補給の場所を酸素室内に

飲み込む過程で呼吸を一時的に止めるのですが、呼吸状態が悪い犬猫に対してそれを期待するのは難しいです。その場合に、ご飯皿と水皿を酸素室内にも設置してあげることで、気づくと食べてくれた、というような現象が見られるかもしれません。

 

3.症状に合わせた温度と湿度の管理

呼吸が苦しい場合や体温調節が難しい場合には、エアコンや加湿器などを使って快適な室温・湿度を保つことが重要です。一概に加湿がいい、除湿したほうがいい、寒いほうがいい、暑いほうがいいなどは言えず、全て病気とその時点での症状から判断させていただきます。

 

飼い主様と猫ちゃんが共に安心できるケアを

在宅終末期ケアでは、猫ちゃんの症状を緩和するだけでなく、飼い主様が安心してケアを続けられる環境作りを目指します。当院では、飼い主様が無理なく猫ちゃんを支えられるよう、柔軟なケアプランとサポートを提供しています。

 

次のセクションでは、往診ならではの強みや、猫ちゃんの負担を最小限に抑える保定業務について詳しくご紹介します。

 

4. 保定には専門的な技術が必要

呼吸状態を悪化させないために

猫ちゃんの診察や処置を行う際、保定(動物の体を押さえて安全に診療すること)は欠かせません。しかし、乳腺腫瘍が進行し、胸水貯留や肺転移によって呼吸が苦しい猫ちゃんの場合、不適切な保定はかえって危険です。特に、胸を強く押さえつけてしまうと、猫ちゃんの呼吸状態をさらに悪化させてしまい、その場で亡くなるリスクも十分にあります。

 

状態が悪い猫の保定には専門的な知識と技術が必要不可欠

多くの往診専門動物病院では獣医師1名で訪問し、必要に応じてご家族様に保定をお願いすることと思われます。ただ、単純な採血やエコー検査などであればまだしも、呼吸状態が悪い猫ちゃんの布袋となると、専門的な知識と技術が必要です。当院では愛玩動物看護師が必ず同行するチーム体制を整えています。これにより、次のようなメリットを提供できます。

 

1.猫ちゃんの負担を最小限に

訓練を積んだ愛玩動物看護師が、猫ちゃんの状態に応じた優しい保定を行います。呼吸が苦しい猫ちゃんに無理をさせないよう、慎重に対応します。また、呼吸だけでなく、関節を痛がる猫ちゃんであっても、関節に負担をかけないような保定を行い、安全かつ安心の保定で診察をスムーズに受けていただけます。

 

2.ご家族様も安心して診察に立ち会えます

保定を飼い主様にお願いすることは、基本的にはありません。愛玩動物看護師や動物看護師といって保定のプロが対応することで、猫ちゃんと飼い主様の双方にかかるストレスを軽減します。

 

3.安全でスムーズな診療を実現

獣医師が診察や処置に集中できるため、短時間で安全にケアを行うことが可能です。

 

なぜ自宅でのケアが選べれるのか

自宅での往診ケアは、猫ちゃんにとってだけでなく、飼い主様にとっても多くのメリットがあります。

 

1.通院によるストレスを解消

キャリーケースへの移動や病院での待ち時間がなくなるため、猫ちゃんの精神的・肉体的負担を大幅に軽減できます。  

 

2.生活環境を踏まえた診療プランが立てられる

自宅というリラックスした環境で診察を行うことで、猫ちゃんの本来の状態を正確に観察できます。病院で緊張して隠れてしまう症状を見逃す心配がありません。また、生活環境に潜んでいる落とし穴に気づくことができれば、より具体的なアドバイスができます。

 

3.環境に合わせた具体的なアドバイスが可能

猫ちゃんが生活している環境を直接確認し、食事の場所や水飲み場の配置、酸素ハウスの設置場所など、具体的で実践的なアドバイスを行います。

 

当院が特化する「ペットの在宅緩和ケア」の強み

当院は、乳腺腫瘍をはじめとする進行性疾患や終末期ケアに特化した往診専門動物病院です。猫ちゃんと飼い主様に最適なケアを提供するため、以下の点にこだわっています:  

 

①柔軟なケアプランの提案

何よりも、まずは柔軟さが必要であると考えています。ご家族様の希望する内容だったり、悩まれている内容だったりと、事前に決まっているものはほとんどありません。重点的に問診を行い、猫ちゃんだけでなく、ご家族様にとっても最良となるプランを構築し、状況に応じて柔軟に調整します。

 

②経験豊富なスタッフ

在宅緩和ケアにおける豊富な症例経験を持つ獣医師と愛玩動物看護師が連携し、安心感のある診療を提供します。

 

③アフターフォローの徹底

往診後も、猫ちゃんの状態や飼い主様の不安に対してきめ細かいフォローを行います。診療にて、獣医師から今後起こりうる症状や事象、それに対する受け止め方や評価、対処法までをご説明させていただきます。その上で、まだご不安が残っていたり、またはこれってどうなってたかな?など、電話またはメールにてサポートさせていただきます。

 

保定業務は愛玩動物看護師に任せましょう

保定業務は、猫ちゃんの命を守るための重要なポイントです。不適切な保定は呼吸状態を悪化させるリスクがあるため、熟練したプロが行うことが不可欠です。自宅で安心してケアを受けられる往診のメリットを最大限活用し、猫ちゃんと飼い主様にとって最善の環境を整えましょう。  

 

もし獣医師一人で対応する往診専門動物病院にお願いする場合には、愛玩動物看護師をアテンドできるかどうかを事前に確認することをおすすめします。特に呼吸が苦しい猫ちゃんや体力が低下しているケースでは、適切な保定が命を守るために必要不可欠です。安心して依頼できる、往診体制の整った往診専門動物病院を選びましょう。

 

次のセクションでは、当院が選ばれる理由と、広範囲にわたる対応エリアについて詳しくご紹介します。

 

5. 当院が選ばれる理由:猫ちゃんとご家族様の未来を守るために

緩和ケアに特化した専門性

当院は、猫ちゃんの乳腺腫瘍をはじめとする進行性疾患や終末期ケアに特化した往診専門動物病院です。緩和ケアは、ただ病気と闘うのではなく、猫ちゃんとご家族様が一緒に穏やかな時間を過ごせるようサポートする医療です。私たちは、その時間を守るために、次のような取り組みを行っています。  

 

1.ご家族様の思いに寄り添った柔軟なプラン作成

乳腺腫瘍は進行が早い病気です。そのため、猫ちゃんの状態や飼い主様の希望を詳細に伺い、一匹一匹に最適なケアプランを提案します。例えば、呼吸状態の安定を目指した酸素ハウスの導入や、投薬や皮下点滴の指導によるご家族様でのケアの実現や、猫ちゃんの負担を最小限に抑えた処置や診療の実施などです、

 

2.経験豊富なスタッフによる安心のケア

当院の獣医師と愛玩動物看護師は、緩和ケアの専門的な知識と経験を持っています。乳腺腫瘍による胸水貯留や肺転移などの複雑な病態にも対応可能です。  

 

3.豊富な症例経験

数多くの在宅緩和ケア症例を通じて、猫ちゃんの症状に応じた適切な診療を提供しています。

 

4.丁寧でスムーズな対応

ご家族様に安心していただけるよう、診察時には猫ちゃんへの配慮を第一に考え、迅速かつ安全なケアを実施します。また、アピアランスも需要視しており、清潔感のある服装や佇まいを意識しています。

 

5. 広範囲にわたる対応エリア

当院は、東京、千葉、埼玉、神奈川を対象に往診を行っています。都市部の忙しいご家庭や移動が困難な場合でも、自宅で専門的な診療を受けられる環境を整えています。  

 

6. 飼い主様への手厚いサポート

往診時の診療だけでなく、診療後のフォローアップも徹底しています。例えばすでに当院で緩和ケア中場合には、ペットの負担を考えて、無理に高頻度で往診せず、電話にて状況を把握し、獣医師が対応しています。ご家族様が安心してケアに入れるため、いつでも相談できる体制を整備しております。

 

なぜ当院が選ばれるのか

多くの飼い主様が当院を選ばれる理由は、私たちが最も大切にしている「深いヒアリング力とご家族様の心を理解しようとする姿勢」、そして「動物たちと最後の時間を過ごしたい飼い主様に寄り添った在宅医療」を提供しているからだと考えています。乳腺腫瘍や胸水貯留などの症状に対して、一概に教科書的な話だけでなく、今までの経験から得た変化に対する知識と対策から最善の方法を共に考え、猫ちゃんの生活の質(QOL)を高めるお手伝いをしています。

 

乳腺腫瘍と診断され、外科手術での完治が望めないと宣告されることは、とても辛いことです。医療面で詰まったから終了ではなく、宣告後もご家族様と猫ちゃんの時間は続きます。専門的なサポートを受けることで、きっと今よりも安心して穏やかな時間を過ごすことができると信じています。

もしも乳腺腫瘍や呼吸困難、胸水貯留などでお悩みの際は、ぜひ当院にご相談ください。一緒に最後までの道を考えていきましょう。

 

 

今後在宅緩和ケアを検討されているご家族様へ

きっといつかは在宅緩和ケアになるだろうな、またはすでに治療ではなくて緩和ケアを選択したいご家族様は、事前の在宅緩和ケア相談をお勧めしています。いざ必要となった時に急いで探すのではなく、事前に相談しておくことで、どんな先生が来てくれるのかを知ることができます。特に、往診専門動物病院を選択する場合には、自宅のエリアまで来てくれる獣医師がいるのかどうか、どんな風な診療プランになるのかなど、事前に相談することである程度把握することができ、不安が一つ減るかもしれません。

 

わんにゃん保健室の対応エリア

当院は、東京、千葉、埼玉、神奈川を中心に往診を行っております。これらのエリアで「通院が難しい」「猫ちゃんの負担を減らしたい」と感じている飼い主様に、安心してご利用いただける往診ケアをご提供しています。

 

早めのご相談で、万全の準備を

乳腺腫瘍やリンパ腫、心筋症や腎臓病(腎不全)などの進行性疾患を抱える猫ちゃんのケアでは、飼い主様と獣医師が事前に連携し、今後の症状変化に備えることが非常に重要です。  

 

猫ちゃんの体調が大きく悪化してから急いで往診を依頼すると、対応可能な動物病院が限られたり、飼い主様のご希望に合う診療プランを構築する時間が十分に取れない場合があります。そこで、以下のようなことを感じ始めましたら、お早めにご相談いただくことをおすすめします。

 

①通院に負担を感じ始めた

②在宅緩和ケアに切り替えを検討している

③乳腺腫瘍や胸水貯留、肺転移の症状が見られる

 

診療を早めに受けることでできること

1.体調変化に備えたケアプランの構築

猫ちゃんの状態やご家族様の生活スタイルに合わせ、事前に緩和ケアのプランを作成します。病気の診断がついている場合には、今後起こりうる変化についてお話しさせていただき、その時どうするのかをご説明させていただきます。

 

2.急な悪化時の対応準備

酸素ハウスの手配や皮下点滴の導入、薬の調整を早めに進めることで、万が一の急な体調悪化時に、何もできない状況ではなく、何かできる環境をご自宅の中に構築することが可能です。

 

3.猫ちゃんとご家族様の負担軽減

症状が安定しているうちから診療を受けておくことで、後々の通院や対応の負担が大幅に減少します。いつまで動物病院に通院するのが良くて、何がどうなったら在宅緩和ケアを開始するのかなど、具体的な症状ごとのタイミングをお話しさせていただきます。決まったタイミングがない中で判断をしなければいけないため、ご家族様がどのような医療を望まれるのかを深くヒアリングさせていただいた上で、今後の診療プランをお話しさせていただきます。

 

まずはお気軽にご相談ください

通院が難しくなった時、あるいは在宅緩和ケアを検討されている飼い主様は、ぜひ一度当院にご相談ください。  

大切な猫ちゃんの穏やかな日々を守るために、早めの診療と準備が何よりの支えとなります。お気軽にお電話や問い合わせフォームからご連絡いただき、現在の状況をお聞かせください。  

 

私たちが全力でサポートさせていただきます。

 

 

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犬猫の往診専門動物病院
わんにゃん保健室
 
猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
電話番号:03-4500-8701(往診本部直通)
 
 
受付時間:10:00~19:00
休診日:不定休診療カレンダー
 
〒111-0036
東京都台東区松が谷3-12-4 マスヤビル5F
 
【わんにゃん保健室】
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本年も、多くのご家族様と動物たちのご縁をいただき、心より感謝申し上げます。

 
 
当院は2017年2月の開業以来、在宅緩和ケアを通じて、動物たちとそのご家族様に寄り添う診療を目指してまいりました。
 
年々、在宅緩和ケアを希望されるご家族様の数が増加していることは、私たちにとって大変意義深い事実です。
 
この傾向は、ペットを「家族」として捉え、最期の時まで穏やかに過ごしてほしいという願いがより広く共有されている証と考えております。
 
その信頼にお応えするため、より質の高いケアを提供する責任を改めて感じております。
 
2024年は、東京213症例、千葉18症例、神奈川10症例、埼玉12症例、茨城2症例、合計255症例の在宅緩和ケアに携わらせていただきました。
 
通常の往診のご予約以上に、在宅緩和ケアのニーズの高さを感じる年となりました。
 
その中で、81症例についてはターミナルケアを実施し、動物たちの最期の時間をご家族様とともに見届けることができました。
 
一つひとつの出会いに心を動かされ、また学びを深めることができた1年でした。
 
2025年は、1月4日より診療を開始いたします。
 
予約の受付は随時、問い合わせフォームにて承っておりますので、お気軽にご連絡ください。
 
本年も変わらぬご支援を賜りましたこと、深く感謝申し上げますとともに、来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 
皆様にとって、新しい年が笑顔と健康に満ちた一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。  
良いお年をお迎えくださいませ。  
 
往診専門動物病院わんにゃん保健室
院長 江本宏平

年末年始の診療案内

2024年の年末年始の診療のお知らせ

 

休診期間 2024年12月28日〜2025年1月3日

 

2025年も宜しくお願い致します。

 

わんにゃん保健室 スタッフ一同

1. 猫の心筋症と胸水貯留:症状とケアの基本

 

心筋症による胸水貯留とは?

猫ちゃんの心筋症は、高齢の猫ちゃんや特定の遺伝的要因を持つ猫ちゃんに多く見られる病気で、心臓の機能が徐々に低下していく疾患です。

 

この病気が進行すると、心臓のポンプ機能が弱まることで血液循環が悪化し、胸の中に液体(胸水)が溜まる胸水貯留が起こることがあります。

 

胸水貯留は、猫ちゃんの肺を圧迫し、呼吸を難しくするため、以下のような症状が現れることが一般的です。

 

①呼吸が浅く早くなる(頻呼吸)  

②お腹を使って呼吸をする(努力呼吸)  

③動きたがらず、ぐったりした様子になる  

④食欲の低下や元気の消失  

 

これらの症状が見られた場合、早急な対応が必要です。

 

胸水抜去の役割とその効果

胸水貯留が確認された場合、緊急措置として胸水抜去を行うことがあります。

 

胸水抜去とは、細い針を胸に刺して溜まった液体を排出する処置のことです。この方法には以下のようなメリットがあります。

 

①呼吸がすぐに楽になる

胸水による肺の圧迫が解消され、猫ちゃんが落ち着いて呼吸できるようになります。  

 

②短時間で効果を実感できる

処置後、即座に呼吸状態の改善が見られることが多いです。

 

ただし、この処置は猫ちゃんにとって少なからず痛みを伴うため、鎮静や鎮痛の薬を併用してストレスを最小限に抑えることが重要です。

 

一方で、状態が悪化して鎮静に耐えられない場合には、鎮静なしで胸水抜去を行うことも選択肢の1つとなります。

 

医薬品でのコントロールが可能な場合

胸水貯留が心筋症によるものであれば、医薬品で胸水の貯留を抑えられることが多くあります。

 

特に利尿剤を使うことで、体内の余分な液体を排出し、胸水の量を減らすことが期待できます。医薬品によるコントロールには以下のような利点があります。

 

①非侵襲的(針を使わない)

猫ちゃんに針を刺さずに済むため、痛みやストレスを減らせます。  

 

②家庭でのケアが可能

往診で処方された薬を自宅で投与することで、病院に頻繁に通う必要がなくなります。

 

ただし、医薬品でのコントロールは、猫ちゃんの体質や病状によって効果に差が出るため、獣医師による継続的な経過観察が必要です。

 

また、使用する医薬品にもよりますが、カリウムの喪失が著しく目立つことがあるため、週1回は血液検査で電解質を確認することをお勧めします。

 

胸水が減っていくかどうかを定期的に確認し、必要に応じて薬の量や種類を調整することで、より良い状態を維持できます。

 

猫の心筋症と胸水貯留の基礎知識

猫ちゃんの心筋症による胸水貯留は、進行性の心臓病の一環として発生することが多いですが、適切なケアを行うことで猫ちゃんの呼吸を楽にし、穏やかな日々を過ごさせてあげることが可能です。

 

次のセクションでは、在宅緩和ケアにおける「往診」の役割や具体的なケアの方法について詳しくご紹介します。

 

 

 

2. 在宅緩和ケアがもたらす安心

 

通院の負担を減らす「往診」のメリット

猫ちゃんにとって、通院は大きなストレスになることが多いです。

 

キャリーケースに入れられること、移動中の振動や音、病院の待合室で感じる緊張感など、すべてが猫ちゃんの負担になります。

 

特に心筋症を抱えた猫ちゃんは、体力が低下していること、そして持続的な興奮は心臓へのダメージが懸念されます。

 

通院によるストレスは持続的な興奮状態を作ってしまうことから、病状を悪化させるリスクになってしまうこともあります。  

 

一方で、動物病院への通院の必要がない在宅医療(往診など)であれば、猫ちゃんにとって通院のストレスを与える必要がないので、以下のような点で、動物病院への通院と比較すると、より安心した環境で診察を受けさせてあげることが可能です。

 

①慣れた環境で診察を受けられる

猫ちゃんが普段過ごしている自宅での診察は、ストレスを最小限に抑えます。  

 

②移動のリスクを排除

キャリーケースや車での移動が不要になり、呼吸状態が悪い時でも安心です。  

 

③猫ちゃん本来の状態を観察できる

緊張せずリラックスした猫ちゃんの様子を獣医師が確認できると言いたいところですが、実際は緊張していると思います。

 

ただし、生活環境を見ることができるので、普段の姿をより想像しやすく、それによってアドバイスも変化していきます。

 

猫ちゃんのストレスを最小限にするケアの工夫

在宅緩和ケアでは、猫ちゃんが抱えるストレスや苦痛を軽減することが最も重要です。

 

心筋症や胸水貯留を抱える猫ちゃんにとって、ストレスの軽減は病状の安定にもつながります。

 

具体的な工夫には次のようなものがあります。

 

①薬の味や形状を工夫する

内服薬が苦手な猫ちゃんには、より飲みやすい無味無臭のものだったり、薬の形状、注射薬など、幅広く柔軟に提案します。  

 

②診察時の配慮

獣医師が猫ちゃんの落ち着いた状態を保つため、診察や処置の際にゆっくりと時間をかけて接します。

 

③鎮静・鎮痛薬の活用

胸水抜去などの処置が必要な場合には、可能な限り少量の鎮静や鎮痛薬を使い、猫ちゃんが感じる痛みや不安を減らします。

 

これらの工夫を行うことで、猫ちゃんと飼い主様の双方にとって、より穏やかなケアが実現します。

 

鎮静と鎮痛の重要性:胸水抜去時の配慮

胸水抜去は、猫ちゃんにとって一時的な痛みや不快感を伴う処置ですが、呼吸を楽にするためには非常に重要なケアです。

 

在宅緩和ケアでは、胸水抜去を行う際に次のようなことに注意しながら進めていきます。

 

①鎮静で痛みと恐怖を減らす

胸水抜去の際には強い痛みを感じるため、鎮静薬と併せて鎮痛薬を併用することで、処置後の鈍痛や不快感を軽減します。

 

また、猫ちゃんが怖がらないよう少量の鎮静薬を使うことで、処置中の緊張や恐怖を最小限に抑えることができます。

 

②飼い主様への手順説明

これから何が行われるのかが不明なままだと、見守るご家族様も不安が高まることと思います。

 

鎮静をかける前に、鎮静処置についてまずはご説明させていただき、実際に鎮静をかけた後にどのくらいの時間で何が起きて、処置はどんな道具でどんなことをするのか、目が覚めるのはどのくらい経ってからか、その後のことなど、手順ごとに詳細に説明させていただきます。

 

ご家族様が安心することで、猫ちゃんの感じる緊張感も和らぎます。

 

在宅緩和ケアは安心の味方

在宅緩和ケアは、猫ちゃんと飼い主様ができる限り穏やかに日々を過ごせるように設計されたケア方法です。

 

次のセクションでは、医薬品による胸水のコントロールや、事例から学ぶ緩和ケアの選択肢について詳しくお伝えします。

 

 

 

3. 胸水貯留と医薬品での対応

 

医薬品の効果が期待できる心臓病由来の胸水貯留

猫ちゃんの心筋症に伴う胸水貯留では、利尿剤をはじめとする医薬品によって、胸水の量を減らすことが期待できます。

 

心臓病が原因の場合、胸水の原因は体内の血液循環の滞りにあります。そのため、体に溜まった余分な液体を尿として排出することで、胸水を減らし、呼吸を楽にすることができます。

 

以下のようなタイミングで利尿剤を用いた治療をすることがあります。

 

①初期段階の胸水貯留

胸水貯留の出始めだったり、初期段階であれば、医薬品の効果で胸水抜去を行わずとも胸水が減少〜消失することがあります。

 

食欲が維持できいて、胸水もコントロールできていれば、胸水抜去を実施せずに、内服薬だけでの長期的なコントロールが期待できます。

 

②中等度以上の胸水貯留

呼吸状態を改善させないと食欲などの一般状態の改善は見込めないと判断した場合に、まずは胸水抜去してあげます。その後、利尿剤を使用することで、胸水の再貯留を防ぎ、呼吸状態を安定させることが期待できます。

 

 

腫瘍が原因の場合:医薬品治療と家族の選択肢

胸水貯留は心筋症以外にも、腫瘍が原因で発生することがあります。

 

例えば乳腺腫瘍などで、腫瘍が進行した場合に胸腔内に転移を起こし、血混じりの胸水を引き起こすことがあります。

 

ただ腫瘍性の胸水では、利尿剤などの医薬品の効果が限定的であることが多いです。

 

「できるだけ猫ちゃんの負担を減らしたい」「薬で対応できるところまで頑張りたい」といったご家族様の意向に沿った治療計画を立てます。

 

まずは病状を説明させていただき、どこまで何をしてあげたいのかを教えてください。

 

その上で、最良となるプランを一緒に考えます。

 

心筋症と同じように、胸水抜去による呼吸状態の一時的な改善、その後に医薬品で胸水の再貯留をコントロールするという方法を取ることもあります。

 

このように、腫瘍が原因の場合でも、猫ちゃんやご家族様の希望に応じたケアを行うことで、負担を軽減しつつ最善の対応を目指します。

 

猫の心筋症による胸水貯留を起こした6症例

2024年に在宅緩和ケアで看取った猫ちゃんで、心筋症由来の胸水貯留と戦う6症例では、医薬品で管理したところ、全ての猫ちゃんで胸水の量が減少し、呼吸状態が改善しました。

 

この結果からわかることは、猫ちゃんの病状や体質に応じた医薬品の使用が非常に効果的であるということです。

 

猫ちゃんの状態に合わせた医薬品の使い方を検討することで、無理に痛いこと(胸水抜去)をしなくても、胸水のコントロールができる可能性が期待できました。

 

医薬品治療の注意点

利尿剤やその他の薬は、適切な量と頻度で使用しないと効果が弱まったり、副作用が出ることがあります。定期的に獣医師の診察を受け、薬の調整を行うことが大切です。

 

内服薬が難しい場合には、注射薬や皮下投与という選択肢もあります。

 

飼い主様が自宅で投与できるよう、往診時に具体的な指導を行います。

 

胸水貯留は抜去と医薬品の併用で

 

心筋症に伴う胸水貯留に対する内服薬などの医薬品の投与は、猫ちゃんの状態を大きく改善させる可能性が期待できます。

 

内服が苦手な猫ちゃんであれば内服薬だけでなく注射薬での投与を選択し、ご自宅で皮下点滴に混ぜて実施していくことで、投与が可能となります。

 

また、胸水抜去を併用することで、即時的な呼吸状態の改善が見込まれますが、胸水抜去には強い痛みを伴います。

 

鎮静下で行うなど、猫ちゃんとご家族様に最も負担の少ない方法を選ぶことが重要です。

 

次のセクションでは、内服薬や注射薬を用いたケアの工夫について、さらに詳しくご紹介します。

 

 

 

4. 内服薬が苦手な猫ちゃんでも安心のケアプラン

 

内服薬が苦手な猫ちゃんの課題

猫ちゃんは基本的に警戒心が強く、知らない物や嫌な味のする物を嫌がる傾向があります。

 

そのため、内服薬を与えることが飼い主様にとって大きなストレスになる場合が多いです。

 

特に心筋症や胸水貯留などの疾患を抱える猫ちゃんは体力が落ちているため、投薬そのものが負担になることもあります。

 

よくある内服薬の課題としては以下のようなものがあります。

 

①薬を嫌がり、口をしっかり閉じてしまう。

②投薬後に唾液を垂らす、吐き出す。

③投薬のたびに猫ちゃんがストレスを感じ、隠れてしまう。

④飼い主様自身が薬を飲ませることに不安を感じる。

 

こうした問題を解決するためには、内服薬に頼りすぎないケアプランを構築することが大切です。

 

内服薬と注射薬を使い分ける工夫

内服薬が苦手な猫ちゃんでも、医薬品を適切に投与する方法はいくつかあります。

 

重要なのは、猫ちゃんと飼い主様の負担を最小限にするために、薬の形状や投与方法を工夫することです。

 

比較的飲みやすい内服薬を選ぶ

①動物薬は結構飲ませやすい

動物薬は人薬と比較して、動物たちに取った飲ませやすいものになっています。

 

基本的には、苦味を抑えており、動物が好きなフレーバーを加味しているような印象です。

 

ただ、そのフレーバーが嫌で食べない場合もあるので要注意です。

 

②できることなら口腔内崩壊錠を選ぶ

使いたい医薬品にもよるのですが、通常の錠剤と比べて水に溶けやすく、また苦味がほとんどないのが特徴です。

 

普段動物病院で使用している医薬品と比べて、口腔内崩壊錠をお願いすると費用が高くなるので、費用感との兼ね合いで相談してみましょう。

 

③お薬のお供を選定する

投薬補助おやつは、ペット市場において大きくなっている分野の一つです。

 

つまり、それだけたくさんのご家族様が、ペットへの投薬に手をこまねているという証拠です。

 

特に、猫ちゃん用となると、本当にたくさんあります。

 

猫ちゃんが気に入る投薬補助用のペーストやおやつが見つかれば、そのおやつに混ぜるだけで、自然に薬を摂取してくれるようになります。

 

猫ちゃんの好みに出会えることを祈っています。

 

 

内服が難しい場合は注射薬を選択

内服薬を完全に拒否する猫ちゃんには、皮下点滴に混ぜる注射薬が効果的です。

 

これにより、薬のストレスを軽減しながら必要な治療を継続できます。  

 

動物病院であれば診察代の上で、往診であればご自宅の中で獣医師が皮下投与の方法を飼い主様に指導します。

 

適切な器具の使い方や猫ちゃんを落ち着かせる方法を学ぶことで、自宅での投与がスムーズになります。

 

ストレス軽減のための皮下投与環境の構築

皮下投与を成功させるためには、猫ちゃんと飼い主様の双方が安心できる環境を整えることが重要です。

 

以下のポイントを抑えることで、投与時のストレスを最小限に抑えられます:

 

①猫ちゃんの安心できる場所で投与

猫ちゃんがリラックスできる環境を構築することで、成功率は上がります。

 

お気に入りのクッションやバスタオルなどで動きをある程度制限してあげることも大切です。

 

②1回あたりの処置時間はなるべく短く

手際よく投与を終えることで、猫ちゃんに余計なストレスを与えません。  

 

③投与後のフォローをしっかり行う

投与後におやつや撫でる時間を設けることで、猫ちゃんに「処置が終わるといいことがある」と感じてもらいます。

 

ただし、嫌なことの後に、例えばチュールをあげると、嫌な思い出と繋がってしまい、チュールを食べなくなってしまう、ということも起こる可能性があります。

 

そのため、もし皮下点滴などの嫌な思いをさせた場合には、一番好きなものではなく二番目以降にまぁまぁ好きなものなどで機嫌を取ってあげることをお勧めします。

 

飼い主様の負担を減らすためにできること

猫ちゃんのケアを続ける上で、飼い主様が無理なく投薬や治療を行えるようにすることも重要です。

 

在宅緩和ケアでは、次のような工夫を行います:

 

①相談しやすい環境の提供

「薬を飲ませられない」「注射が難しい」といった悩みを獣医師に気軽に相談できる体制を整えます。

 

②定期的な往診で調整(在宅医療に切り替える)

内服薬や注射薬の効果を定期的に確認し、猫ちゃんの状態に合わせた薬剤や投与頻度を調整しましょう。  

 

③ケアプランの柔軟な変更

飼い主様の状況や猫ちゃんの体調に合わせてケアプランを見直し、負担を軽減します。

 

 

安心のケアプランを在宅医療で構築使用

内服薬が苦手な猫ちゃんでも、投薬方法を工夫すれば、治療を無理なく継続することが可能です。

 

次のセクションでは、心筋症や胸水貯留における往診の役割と、その具体的なメリットについて詳しくご紹介します。

 

 

 

5. 猫の心筋症に往診を選んだ方がいい理由

 

通院ではなく往診を選ぶべき理由

心筋症や胸水貯留を抱える猫ちゃんにとって、通院は大きな負担となります。

 

特に症状が進行して呼吸が苦しい猫ちゃんや体力が落ちている猫ちゃんにとって、キャリーケースに入ることや病院までの移動、待ち時間そのものが大きなストレスを生み出します。

 

通院ではなく往診の方が適している理由は以下です。

 

①慣れた自宅で診察が受けられる

猫ちゃんは環境の変化に敏感な動物です。

 

病院の待合室での緊張や、知らない匂いや音に囲まれることは猫ちゃんにとって非常にストレスフルです。

 

往診では、猫ちゃんがリラックスできる自宅で診察や処置を受けられるため、猫ちゃんの体調への悪影響を最小限に抑えられます。

 

②呼吸が苦しい猫ちゃんにも安心

胸水貯留によって呼吸が苦しい猫ちゃんにとって、通院そのものが命に関わるリスクになることもあります。

 

往診であれば移動のリスクを完全に排除できるため、体調が不安定な時でも安心してケアを受けられます。

 

酸素室が必要な状況になった場合には、もう動物病院に通院することができないと思った方がいいです。

 

今後、呼吸状態が悪化した場合に、かかりつけの獣医師が往診してくれるのかどうかは、事前に伺っておくことをお勧めします。

 

③高頻度のケアも対応可能

心筋症や胸水貯留では、状態に応じて頻繁な診察や胸水抜去が必要になることがあります。

 

毎日のように通院するのは飼い主様にとっても猫ちゃんにとっても大きな負担ですが、往診であれば頻繁なケアも、通院の負担なく行えます。

 

④生活環境に合わせたアドバイスが可能

往診では、猫ちゃんが生活する環境を直接確認できます。

 

水飲み場や食事の配置、猫ちゃんが過ごしているスペースの様子を見ながら、具体的で実践的なアドバイスを行えるのも大きなメリットです。

 

自宅環境を見ながら診療を行えるというのは、往診ならではの強みです。

 

⑤飼い主様と猫ちゃんに寄り添ったケア

通院の場合、病院での診察時間が限られているため、細かな相談やケア方法の説明が不十分になることもあります。

 

往診では診療時間枠を十分に取り、飼い主様とじっくり話し合い、猫ちゃんの状態や飼い主様のご希望に合わせた最適なケアプランを提案できます。

 

なぜ当院が選ばれるのか?

往診を行う動物病院は増えていますが、当院が多くの飼い主様に選ばれる理由にはいくつかのポイントがあります。

 

①犬猫の在宅緩和ケアに特化した専門性

当院は、心筋症や胸水貯留を含む慢性疾患や終末期ケアに特化した診療を行っています。

 

緩和ケアにおいては、ただ病気を治すだけではなく、猫ちゃんと飼い主様ができるだけ穏やかな日々を過ごせるようなケアを目指しています。

 

②丁寧で柔軟なケアプランの提供

猫ちゃんの状態や飼い主様の生活状況に合わせた、柔軟で実現可能なケアプランを提供します。

 

例えば、内服薬が苦手な猫ちゃんには注射薬や皮下点滴を提案し、家庭でのケアがスムーズに行えるようサポートします。

 

一度決めた方針を変えたい場合には、都度診療時にご相談いただければ、柔軟に変更させていただくことが可能です。

 

③高い技術と豊富な経験

胸水抜去や皮下点滴など、猫ちゃんにとって重要な処置を数多く行ってきた経験を活かし、状態に応じた安心で確実な在宅緩和ケアを提供します。

 

必要に応じて鎮静や鎮痛を行い、猫ちゃんが感じる痛みや不安を最小限に抑えます。

 

④飼い主様との信頼関係を重視

往診では、飼い主様とのコミュニケーションが非常に重要です。

 

当院では、飼い主様の不安や疑問に丁寧にお答えし、猫ちゃんと飼い主様の双方にとって安心できるケア環境を整えることを心掛けています。

 

⑤東京・千葉・埼玉・神奈川をカバーする広範な対応エリア

当院は通常の往診専門動物病院と比べて、広範なエリアでの往診に対応しており、多くの飼い主様のご自宅へ訪問しています。

 

遠方の方でも気軽にご相談いただける体制を整えています。

 

在宅緩和ケアを通じて猫ちゃんと飼い主様の心を守る

心筋症や胸水貯留などの疾患を抱える猫ちゃんにとって、どのケアを選択するかは、体調や生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。

 

当院の往診では、通院による負担を減らし、猫ちゃんと飼い主様が穏やかな時間を過ごせるようにするための最適な選択をご提案させていただきます。

 

私たちの目標は、病気と向き合う猫ちゃんだけでなく、その猫ちゃんを支える飼い主様も含めて、心から安心できるケアを提供することです。

 

ぜひ、お気軽にお問い合わせいただき、あなたの猫ちゃんに最適なケアを一緒に考えさせてください。

 

私たちがお力になれることを心より願っております。

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犬猫の往診専門動物病院
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猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
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腎臓病は高齢の猫で非常に多く見られる疾患です。

 

慢性腎臓病(CKD)は完治が難しい病気であり、進行を遅らせるためには定期的なケアが欠かせません。

 

しかし、通院そのものが猫にとってストレスとなることが多く、治療を続ける上での大きなハードルになる場合があります。

 

この記事では、「猫の腎臓病ケアを通院から往診に切り替えるべき理由」を中心に、往診で可能なケアやそのメリットをご紹介します。飼い主様が猫ちゃんと穏やかに過ごせる日々をサポートするための一助になれば幸いです。

 

 

猫の腎臓病における通院から往診への切り替えが有効な理由5つ

 

1. 通院が猫にとって大きなストレス

通院時にキャリーケースへ入れる、移動する、待合室で待つなど、猫にとっては多くのストレスがかかります。

 

腎臓病の猫は体力が低下していることが多く、通院によるストレスがさらに体調を悪化させる原因になることもあります。

 

2. 定期的なケアが必要なため、往診の方が継続しやすい

腎臓病の管理では、定期的な検査や治療が必須です。

 

最初は3ヶ月に1回の検査頻度であっても、状態が進行するにつれ、1ヶ月に1回、場合によってはそれ以上の頻度でのケアが必要になります。

 

往診であれば、通院の手間を減らし、治療を継続しやすくなります。

 

3. 自宅でリラックスした状態で診察可能

往診では、猫が自宅でリラックスした状態で診察を受けることができます。

 

キャリーケースや病院の待合室で緊張することなく、猫本来の状態を観察できるため、より適切な診断と治療が可能です。

 

4. 自宅環境に合わせたケアの提案が可能

往診では、猫が生活している環境を直接確認できます。

 

たとえば、食事の場所、水の配置、トイレの状況などを把握し、それに基づいた具体的なケアやアドバイスを提供することができます。

 

5. 移動リスクがないため体調が悪化している場合も対応可能

腎臓病が進行すると、猫は体力が低下し、移動が大きな負担になることがあります。

 

往診なら移動リスクを完全に排除できるため、体調が悪い時期でも適切なケアを提供できます。

 

 

定期検査の必要性と往診での対応

腎臓病の管理には、定期的な血液検査や尿検査が重要です。

 

これらの検査は、腎機能の状態を把握し、治療の効果を確認しながら進行を遅らせるために欠かせません。

 

検査内容

【血液検査】

BUN(尿素窒素)、クレアチニン、リン、SDMAなどの腎機能を示す値を確認します。

 

【尿検査】

尿比重や尿タンパク、尿中の細菌や結晶の有無を調べます。

 

これらの検査は、すべて往診で対応可能です。ご自宅で採血や採尿を行い、ストレスを最小限に抑えながら必要なデータを収集します。

 

検査頻度

【初期段階】

症状が安定している場合、3ヶ月に1回の検査を推奨。

 

当院では、腎臓病のステージ2〜3の始まりくらいが、ここに該当する印象です。

 

ただし、ご家族様の不安な様子やご希望に沿って、その頻度を上げることも可能ですし、逆に下げることもご相談いただけます。

 

【進行段階】

症状が進行した場合、1ヶ月に1回、場合によってはそれ以上の頻度で検査を行います。

 

ステージ4以降はここに該当すると思われます。

 

そのくらい日々の変化が激しくなり、また食欲減退や嘔吐、下痢または便秘などの消化と排泄の機能低下、機能異常が伴うのもこの頃です。

 

症状の変化が著しいため、ご家族様の心がついて来れないのも、またこの時期です。

 

今を受け入れるために、今がどんな状態なのかを都度ご説明し理解していただき、これから訪れる未来の変化について、対策を打っていくのもこの時期です。

 

 

皮下点滴の指導と処方の対応

 

腎臓病の猫において、皮下点滴は治療および緩和ケアの重要な柱となります。

 

腎臓の機能が低下すると脱水状態になりやすく、これを補うために定期的な点滴が必要です。

 

皮下点滴のメリット

腎臓病(腎不全)では、猫ちゃんは脱水傾向がより進行します。

 

皮下点滴を行うことで、経口補水(水を飲むこと)では補い切れない水分量をサポートし、脱水補正を図ることで、腎臓への負担を軽減します。

 

症状が悪化する速度を遅らせ、猫の生活の質(QOL)を向上させることを目的に、実施計画を作っていきましょう。

 

往診での対応

【皮下点滴の実施

最初は獣医師が点滴を実施し、その後飼い主様自身で行えるよう指導します。

 

器具の提供

点滴セットや必要な器具をお渡しします。

 

具体的な指導

針の刺し方や点滴の量、猫が嫌がる場合の対処法など、基本的な実践的アドバイスを行います。

 

実施するのは診察台の上ではなく、ご自宅の中です。

 

実際に実施する環境や、家の中にあるもので、どこでどんな態勢で皮下点滴を打つといいのかなども、環境を見ながらご相談いただけます。

 

皮下点滴のトレーニングをしっかり受けることで、飼い主様が自信を持って実施できるようになります。点滴の量や頻度は猫の状態に応じて調整します。

 

 

内服薬や注射薬の処方も往診で対応可能

 

腎臓病の治療では、薬剤の投与が不可欠です。

 

多くの場合、以下のような薬剤が使用されます。

 

内服薬の種類

【リン吸着剤】

腎臓でのリンの処理能力が低下するため、食事中のリンの吸収を抑える薬です。

 

【血管拡張薬】

腎臓への血液供給を改善し、腎臓の負担を軽減します。

 

【胃腸薬】

腎臓病による嘔吐や胃腸の不調を改善します。

 

このほかにも、BUNを下げる(生成させないことを目的とした)サプリのようなものもあれば、吐くことを止める目的で使用する薬、血圧自体を下げてあげる薬、そして血栓予防など、幅広く存在します。

 

基本的には、どこの動物病院でも医薬品会社から購入することは可能。

 

往診切り替えの時には、今どんな薬をどのくらいの量と頻度で飲んでいるのか、また腎臓病に対する内服薬の投与経歴などをまとめておくと、より方針立てに役立ちますのでおすすめです。

 

往診での内服薬処方のメリット

猫ちゃんにとって飲みやすい形状(粉、液体、投薬補助おやつと組み合わせる方法など)を提案するだけでなく、少し単価は上がってしまいますが、苦味の少ない医薬品を選択し、ご提案させていただきます。

 

注射薬の使用

進行した腎臓病では、内服薬だけでは効果が不十分な場合があります。

 

この場合に、できる限り注射薬に変更し、皮下点滴に混ぜて投与することが可能です。

 

皮下点滴の頻度は投薬頻度に合わせて調整するため、基本的には1日2回になることが多いですが、1回量は少量の点滴になるため、皮下点滴時間は10秒程度で終えられます。

 

腎臓病は徐々に進行する病気です。

 

その過程で、貧血を起こすことがあります。

 

その場合には、当院だと造血ホルモン製剤を週1回の間隔で皮下投与していきます。

 

輸血も選択肢としてありますが、若い猫ちゃんであればまだしも、高齢猫ちゃんの場合には、輸血の負担を考え、体力的にも望まない猫ちゃんがほとんどです。

 

 

ここまでのまとめ

腎臓病の猫にとって、通院はストレスが大きく、治療の継続が難しくなることがあります。そのため、往診に切り替えることで、猫ちゃんと飼い主様双方の負担を軽減しながら、適切な治療を続けることが可能になります。

 

【往診のメリット】

1. 通院ストレスを回避し、猫ちゃんがリラックスした状態でケアを受けられる。

2. 自宅での生活環境を考慮したアドバイスが可能。

3. 定期検査や皮下点滴、薬剤の処方がすべて往診で完結。

4. 移動のリスクがなく、体調が悪い時でも適切なケアが受けられる。

5. 飼い主様がケアを継続しやすい仕組みを提供。

 

腎臓病を抱える猫ちゃんに穏やかで快適な日々を過ごしてもらうために、ぜひ往診を選択肢の一つとしてご検討ください。私たち往診専門動物病院は、飼い主様と猫ちゃんが安心して治療を続けられるよう、全力でサポートいたします。

 

続いて、実際の症例について、1つ書かせていただきます。

 

 

日本猫のミミちゃん、18歳、腎臓病(腎不全)

 

東京足立区の静かな住宅街で暮らす、日本猫のミミちゃん、18歳。

 

家族構成はお母さんとお父さんの二人暮らしで、おこさんが巣立った後、御夫婦二人にとって、ミミちゃんはかけがえのない家族となっていました。

 

元々体は強く、目立った病気になったこともなく過ごしてきましたが、数年ほど前から徐々に体重が減り、食欲にムラが出始めました。

 

動物病院で診察を受けたところ、慢性腎臓病(CKD)と診断されました。

 

「老猫ちゃんに多い病気」と聞いて驚いたお母さんは、腎臓病の治療に力を入れることを決意し食事療法を始め、毎月一度の検診に通う生活がスタートしました。

 

通院が生むストレス

最初のうちは通院も順調でした。

 

ミミちゃんはおとなしくキャリーに入り、病院での検査も問題なく受けていました。

 

しかし、月日が経つにつれ、通院後のミミちゃんに変化が見られるようになりました。

 

帰宅後のぐったり感が強く、ほとんど動かずに寝ていたり、食欲が落ち、翌日まで元気が戻らない日も出てきました。

 

病院での待ち時間が増えると、キャリーの中で不安そうに鳴くようになったとのことでした。

 

お母さんは「この通院自体がミミちゃんにとって負担になっているのではないか」と感じ始めましたが、動物病院の獣医師に相談したところ、往診は空いている時間に行うことはできるが、基本的には予約を受けていないし、最近はほとんどやってないと言われたとのことでした。

 

そんな時、往診での腎臓病ケアを紹介する記事を目にし、迷うことなく往診切り替えを希望してくれたとのことでした。

 

基本的にはどこの動物病院でも往診対応していると思います。

 

ただ、検査や手術、術後のペットの状態管理など幅広い業務が動物病院には課されているため、単発の往診であればまだしも、定期的な往診を希望されるご家族様のニーズに答えることはできないと思っていた方がいいです。

 

もし往診を希望される場合には、迷わずに往診専門動物病院を探すようにしましょう。

 

初めての往診

ミミちゃんは病院に行くストレスがないせいか、普段通りリラックスした様子で、いつものお気に入りの場所である窓辺のクッションに座っていました。

 

初診では、今までの長い経緯をしっかりと伺い、腎臓病の進行具合を把握するための血液検査と尿検査生活環境の確認、水を飲む頻度、トイレの回数、食事量のチェックなどの生活環境の確認、定期的な皮下点滴を在宅でご家族様だけで実施できるように、皮下点滴トレーニング、という流れでした。

 

全体でおおよそ2時間半ほどとなりましたが、終始ミミちゃんは落ち着いた様子だったこともあり、お母さんもお父さんも安心して診察に専念してくれたとのことでした。

 

日々の変化

往診を始めてからの生活は、ミミちゃんにとっても家族にとっても穏やかなものとなりました。

 

皮下点滴も、最初は獣医師が行う専門的なことのように思っていたとのことでしたが、実際に家の中で家族だけでできるなんても思ってもいなかったとのことでした。

 

実施自体は決して難しくはないです。

 

あえて言うなら保定が必要な場合や、痩せ細った状態の猫ちゃんですと、ハードルが少し上がりますが、それでもみんななんとか頑張れている印象を受けています。

 

ミミちゃんのお母さんも、3回目までは不安が残っていたが、今は問題なくお母さん一人でリビングのソファーの上で腰掛けながら、実施できるようになったとのことでした。

 

診察の時は嫌がるそぶりが大きかったミミちゃんでしたが、家族だけの空間であれば、お伝えしたとおり、ミミちゃんも受け入れる姿勢で嫌がらずに受けてくれたと、お母さんが話してくれました。

 

すでに腎臓病ステージ4だったため、毎月1回の往診で血液検査を行い、腎臓病の進行具合を細かくチェックし、データに基づいて、皮下点滴量や頻度、食事や内服薬の調整もこまめに行いました。

 

水皿の配置を増やし、食事は腎臓病用のウェットフードに変更することで食欲を維持し、ミミちゃんの好みに合わせて温める工夫も加えました。

 

ドライフードしか食べないタイプの猫ちゃんもたくさんいます。

 

ただ、高齢期になると投薬が始まることが多いので、その時にドライフード1つだと投薬が難しくなると思われます。

 

若齢のうちから、ウェットフードやウェットタイプのおやつなどを食べる練習を行なっておくと、投薬が始まった時にスムーズに内服薬プランが立てられると思いますので、あげすぎない程度あげておきましょう。

 

大きな体調悪化と最後の時間

初診から1年8ヶ月後の2024年11月13日、ミミちゃんは食欲が急激に落ち、動きも少なくなりました。

 

検査では腎臓病の進行が明らかで、貧血も進んでいました。

 

造血剤の提案をしましたが、造血剤は投与後に2-3日ぐったりするくらい体力を持っていかれる可能性が高いことをお伝えしたところ、もう負担となる処置はしたくないとのことから、全身状態を安定させる医薬品プランのみとしました。

 

皮下点滴と一部の内服薬で体調を保ちながらも、嘔吐などの症状を一切起こさずに、自宅で穏やかな時間を過ごしていました。

 

一度は食欲が上がってきた雰囲気を見せてくれたミミちゃんでしたが、大きく回復することなく、2024年12月2日、大好きなお母さんの膝の上で、お母さんとお父さんに撫でてもらいながら静かに眠りにつきました。

 

ミミちゃんの診察を通じて

ミミちゃんのように高齢で腎臓病を患う猫ちゃんにとって、通院は治療の一環であると同時に、大きな負担ともなります。

 

病院までの移動、待ち時間、診察台での緊張など、猫ちゃんがストレスを感じる場面は多く、その結果、治療後にぐったりしてしまうことも珍しくありません。

 

腎臓病の治療では、定期的な検査やケアを継続していくことが何よりも重要です。そのため、治療そのものが猫ちゃんにとって快適であることが、治療を成功に導く鍵となります。

 

往診は、こうした通院による負担を軽減するだけでなく、猫ちゃんとそのご家族が一緒に穏やかな日々を過ごすための大きなサポートとなります。

 

獣医師が直接ご自宅に訪問することで、猫ちゃんは慣れ親しんだ環境で診察を受けられ、飼い主様もリラックスした状態で猫ちゃんのケアに専念することができます。

 

往診のメリットを改めて考える

猫ちゃんにとってのメリットは、通院がなくなることで、キャリーケースに入るストレスや、移動中の不安が一切なくなります。

 

また、自宅という安心できる環境で診察を受けるため、病院での緊張がなく、本来の体調や行動を獣医師に見せることができます。

 

これにより、より正確な診断と適切な治療が可能になります。

 

飼い主様にとってのメリットは、往診によって病院までの移動時間が省けるだけでなく、待ち時間や猫ちゃんのケアに対する心配も減少します。

 

また、獣医師が生活環境を直接確認し、適切なアドバイスを提供することで、飼い主様が行うケアの質も向上します。

 

結果として、治療の継続性が高まると思っています。

 

腎臓病の治療では定期的な血液検査や尿検査、皮下点滴などが必要になりますが、往診ではこれらがすべて自宅で完結します。

 

特に高齢の猫ちゃんや体調が悪化している猫ちゃんにとっては、この「移動しなくてよい」という点が治療を継続するうえで大きな利点となります。

 

家族だけで過ごす穏やかな時間

往診の大きな魅力は、猫ちゃんが家族と共に過ごす時間を最大限に延ばせることです。

 

腎臓病の治療では、病気を完全に治すことが難しい場合も多く、どれだけ穏やかな時間を過ごせるかが治療の目的となることもあります。

 

ミミちゃんが往診に切り替えたことで、最期の瞬間まで大好きな家族と一緒に安心した状態で過ごせたのは、飼い主様にとっても大きな喜びでした。

 

飼い主様の膝の上でくつろぐ姿や、お気に入りの窓辺で日向ぼっこする姿を見守る時間は、何ものにも代えがたい価値があります。

 

こうした日々を積み重ねるためにも、猫ちゃんの治療が負担ではなく、生活の一部として無理なく続けられる環境を整えることが大切です。

 

往診はこんな飼い主様に往診をおすすめ

「猫ちゃんがキャリーケースを嫌がる、移動中に不安そうに鳴くことが多い。」

「病院に行った後、ぐったりするなど体調が悪化することがある。」

「高齢で体力が落ちているため、通院の負担を減らしたい。」

「猫ちゃんが腎臓病などの慢性疾患を抱えており、定期的な検査や治療が必要。」

「自宅でケアを続けたいが、皮下点滴や内服薬の方法に不安がある。」

 

往診は猫ちゃんと家族にとっての安心を届ける選択肢

猫ちゃんの腎臓病ケアにおいて、往診はただの代替手段ではなく、猫ちゃんと飼い主様にとって最善の治療環境を提供する方法です。

 

自宅で診察を受けることで、猫ちゃんのストレスを減らし、家族と一緒に過ごす穏やかな時間を大切にすることができます。

 

ミミちゃんの物語が示しているように、往診を選ぶことで猫ちゃんのQOL(生活の質)を大幅に向上させることが可能です。

 

もし、通院による負担や治療の継続性に不安を感じているのであれば、ぜひ往診という選択肢を検討してみてください。

 

あなたの大切な猫ちゃんにとって、穏やかで安心できる時間を作るために、往診専門の動物病院が全力でサポートいたします。

 

「猫ちゃんが家で安心して過ごす姿を守りたい」

 

往診はその願いをかなえる第一歩です。

 

東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、当院がご自宅までお伺いし、残された時間をできる限り苦痛なく過ごせるサポートをさせていただきます。

 

現在、動物病院への通院で悩んでいるご家族様は、まずはお気軽にご相談ください。

 

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猫の心臓病と聞くと、多くの飼い主様が「肥大型心筋症(HCM)」を思い浮かべるのではないでしょうか。

 

確かにHCMは猫に最も多く見られる心疾患です。

 

しかし、猫でも僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Valve Disease, MVD)が発生することをご存知でしょうか?

 

この疾患は犬では一般的ですが、猫では稀なケースとされています。

 

今回の記事では、13歳の猫ちゃんがこの疾患に罹患し、在宅緩和ケアを通じて最期の時間を穏やかに過ごした実例をご紹介します。

 

このケーススタディを通じて、猫ちゃんの心臓病ケアの可能性と、在宅緩和ケアがいかに重要であるかを詳しくお伝えします。

 

 

僧帽弁閉鎖不全症(MVD)とは?

 

僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室を隔てる僧帽弁が正常に閉じなくなることで、血液が逆流する疾患です。

 

この疾患により心臓への負担が増大し、最終的には心不全を引き起こす可能性があります。

 

犬では加齢とともに僧帽弁の変性が進行することで発症することが多いですが、猫ではその発生メカニズムが十分に解明されておらず、非常に稀なケースです。

 

僧帽弁閉鎖不全症の主な症状

 

呼吸が速くなる(頻呼吸):安静時でも呼吸数が多くなる。

食欲低下:食事を摂ることが難しくなる場合も多い。

倦怠感や活動性の低下:動くことを嫌がり、長時間横になっている。

胸水貯留:胸腔内に液体が溜まり、呼吸困難を引き起こす。

 

肥大型心筋症との違い

肥大型心筋症は心筋が肥厚して硬化することで、心臓の収縮や血液の循環に影響を及ぼします。

 

一方、MVDは弁の機能不全が主因であり、血液が逆流することによって心不全のリスクが高まります。

 

 

症例紹介:13歳の猫ちゃん(僧帽弁閉鎖不全症による胸水貯留)

 

今回の症例は、13歳の去勢雄の猫ちゃんです。

 

この猫ちゃんは、呼吸が速いこと、そして食欲不振を主訴として飼い主様が東京中央区日本橋付近の動物病院に連れて行きました。

 

検査の結果、僧帽弁閉鎖不全症と胸水貯留が確認されました。

 

動物病院での対応

 

動物病院では、胸水抜去を提案され、鎮静下で胸水を抜去し、呼吸状態の改善を図りました。

 

また、状態の改善及び安定を目的として、心臓病治療に必要な内服薬が処方されました。

 

しかし、猫ちゃん問いこともあり、内服薬を全く受け付けてくれませんでした。

 

投薬のたびに拒否され、結果的に呼吸状態が再び悪化。

 

再度の通院を試みたものの、キャリーに入れる段階で開口呼吸となり、通院自体が困難な状況となりました。

 

在宅緩和ケアへの決断

飼い主様は非常に悩まれましたが、通院が猫ちゃんのストレスになり、病状を悪化させてしまう様子を目の当たりにして、「もう通院は無理だ」とすでに感じていたそうです。

 

そのような中、SNS(インスタグラム)で当院の情報を見つけ、往診による在宅緩和ケアを希望されました。

 

飼い主様のご希望

往診による在宅緩和ケアを希望されるご家族様の希望は全て同じで、猫ちゃんの苦しみやストレスを最小限に抑えたい、そして通院や投薬のストレスを減らし、穏やかな余生を過ごさせたい、というものです。

 

往診初診時のアプローチ

 

初診では、以下のような流れで診察を行いました。

 

1. 現場の把握と飼い主様の希望の確認

訪問時には、まず猫ちゃんの生活環境と症状の確認を行いました。

 

呼吸数や体重の測定、胸水の有無の確認などを行いながら、飼い主様の希望を丁寧にヒアリングしました。

 

特に、「どのような最期の時間を過ごさせてあげたいのか」を共有することを大切にしました。

 

2. 緩和ケアプランの説明

在宅で可能なケアの選択肢を提示しました。

 

主に以下の内容についてご説明させていただきました。

 

呼吸管理については酸素発生装置の導入と使用法の説明をして、投薬方法の工夫としては投薬補助おやつや経口薬を拒否する場合の代替案を、そして皮下点滴という手法を用いた、注射薬を使用した薬剤投与の実践などです。

 

3. 呼吸環境の整備

胸水が溜まると呼吸が悪化しやすいため、酸素発生装置を用いて、猫ちゃんが快適に過ごせる呼吸環境を構築しました。

 

また、使用方法やトラブル時の対処法もご説明しました。

 

4. 今後の事前準備

急変時に備えた対応策を共有。

 

呼吸数や食欲の変化など、飼い主様が日々観察すべきポイントを明確化。

 

 

投薬問題への対応

 

この猫ちゃんの最大の課題は、「内服薬が飲めない」ことでした。以下の工夫を行いました。

 

1. 投薬補助食品の活用

投薬用のおやつは市販のものを複数試しましたが、食べてくれない場合もあります。

 

そのため、特別なサンプル品を診察時に提供しました。

 

その結果、猫ちゃんが食べてくれる製品を見つけることができました。

 

2. 内服薬が完全に無理な場合

どうしても内服薬が無理な場合、皮下点滴での薬剤投与を提案しました。

 

この方法は、飼い主様の協力が必要ですが、内服に伴うストレスを軽減できる大きなメリットがあります。

 

訪問ケアでの今後のプラン

最初は2〜3日に1回の頻度で訪問し、徐々に状態が安定してきたため、訪問間隔を週1回、2週間に1回と広げることができました。

 

この間、猫ちゃんは穏やかで安定した日々を過ごすことができました。

 

症状の悪化と最期のケア

約3ヶ月が経過した頃、再び呼吸状態が悪化。

 

胸水貯留が進行したため、在宅で鎮静下での胸水抜去を行いました。

 

食欲も低下したため、皮下点滴に注射薬を混ぜて投与を続けました。

 

最期の1ヶ月

胸水の溜まる速度が徐々に増し、最終的には3日に1回の胸水抜去が必要となりました。

 

それでも、猫ちゃんは穏やかに生活を続け、2024年10月3日、飼い主様の腕の中で静かに息を引き取りました。

 

発作を起こすことなく、眠るように旅立ったとのことでした。

 

 

緩和ケアの意義と可能性

このケースからわかるように、在宅緩和ケアは猫ちゃんと飼い主様に大きな安心感を与えるものです。

 

在宅緩和ケアの利点

ペットの在宅緩和ケアには、動物病院で行う、いわゆる通院型の緩和ケアと違い、通院や待ち時間におけるペットのストレス軽減が期待できます。

 

この通院の負担は、通院頻度の高まりを見せる緩和ケアの後半になると、通院させるご家族様にとっても負担が大きくなってきます。

 

その負担を軽減することで、わんちゃん、猫ちゃん、そしてご家族様にも、残された時間を少しでも穏やかに過ごせることと思います。

 

呼吸管理や投薬方法をペットの性格や状態だけでなく、生活環境などの周囲環境を考慮した調整が可能です。

 

 

まとめ

僧帽弁閉鎖不全症をはじめとする慢性疾患や腫瘍を抱える猫ちゃんにとって、在宅緩和ケアは非常に重要な選択肢です。

 

治療が難しい場合でも、その子らしい穏やかな時間を作ることが最も大切です。

 

東京、千葉、神奈川、埼玉で在宅緩和ケアを希望される方は、ぜひ往診専門動物病院にご相談ください。

 

私たちは、一緒に最善のケアを考え、少しでも後悔のない時間を過ごせるよう全力でサポートします。

 

少しでも多くの猫ちゃんと飼い主様が穏やかな日々を送れますように。

 

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犬猫の往診専門動物病院
わんにゃん保健室
 
猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
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今日は腎臓病を抱えた猫ちゃんの通院からの在宅切り替え相談がありましたので、そのお話です。

 

猫ちゃんは動物病院に通院することが苦手なことを理解して上で、それでも月に1回以上、または週3回とか4回とか通院の指示を出されて、皮下点滴だけで通院しているというご家族様からの在宅切り替え(転院希望、在宅緩和希ケア望)のご相談を受けました。

 

猫ちゃんのほとんどが腎臓病(腎不全)になる印象を持たれているご家族様も多くいらっしゃいますが、あながち間違っていません。

 

高齢猫、特に10歳以上であれば、尿素窒素やクレアチニン、リンなどの腎臓評価の指標となる項目に異常が見え始めます。

 

腎臓病が発覚すると、まずは腎臓病に適した食事指導から始めります。

 

ほとんど獣医師が食事には詳しくないこともあり、大体が療法食で腎臓サポートやk/dなどを提案されることかと思います。

 

腎臓病用のご飯って、美味しくないんですよね…

 

それもあってか、腎臓病が進行していてご飯を食べないのか、それとも嗜好性が合わなくて食べないのかは、実際に診て、検査しないとなんともいえません。

 

ただ、食事療法1つとっても、そもそも食べてくれないと意味がないため、どうしてもダメな場合には、一般食などなんでもいので栄養をとってもらったほうがいいです。

 

腎臓病も進行してきて、多飲多尿などの症状が見えてきた頃、多分腎臓はステージ2以降である事が多いです。

 

腎臓病(腎不全)の定期検診(血液検査、尿検査、腹部超音波検査)は往診で

腎臓病の定期検診は、安定していれば3ヶ月に1回程度、安定していなければ2週間〜1ヶ月程度のスパンで検査を行っていきます。

 

検査項目でもっとも大切なのは血液検査だと思っています

 

でも血液検査のために頑張って通院させた結果、通院後ぐったりしてしまうということがあれば、通院が負担になっていることを獣医師に相談してみましょう

 

もしかしたら往診で検査してくれるかもしれませんので、聞きづらいかもしれませんが、猫ちゃんのためにも伺ってみましょう。

 

また、往診はやっていないとされた場合には、早めから往診専門動物病院探しを始めることをお勧めします。

 

往診でも血液検査を行うことは可能ですし、項目も同じように広く見ることができます。

 

また、血液検査以外にもエコー検査、尿検査など、X線検査以外のことであれば、往診で行う事が可能です。

 

腎臓病が発覚した時点で、もっといえば高齢期の過ごし方の準備として、往診専門動物病院を探しておくことをお勧めします。

 

腎臓病(腎不全)の皮下点滴や内服薬処方は往診で十分

腎不全というと、療法食の話から始まり、内服薬やサプリメントのお話、そして皮下点滴へと続き、腎性貧血などが始まれば増血剤をどうするかなどという相談が始まってきます。

 

犬の腎不全であれば、通院がそこまで負担になることは少ないと思います。

 

ただし、それでも頻繁に動物病院へ行くことで精神的なストレスが蓄積すると考えると、できれば検査以外での通院は避け、皮下点滴はご自宅で打てるようにしたほうがいいです。

 

自宅での皮下点滴は、ペットの固定さえうまくできて仕舞えば1人でも可能ですし、もし2人以上いるのであれば、ある程度の性格の子で実施することが可能です。

 

一人が保定、一人が皮下点滴を実施してあげる、といった流れです。

 

輸液量や犬猫の体調などを踏まえて、実施の仕方にも工夫を凝らしてあげることで、体にもより負担がないように在宅皮下点滴プランを組んでいきます。

 

猫の腎臓病(腎不全)の皮下点滴は1回量に細心の注意を!

次は猫ちゃんの腎不全における皮下点滴についてです。

 

動物病院としては、本来であれば毎日分散して皮下点滴を打ってあげたいですが、猫ちゃんのストレスやご家族様の負担を考えて、週3-4回くらいにしましょうと伝える事があります。

 

そして、週3-4回と頻度を下げた分、1回量をたくさん入れるという事があり、体力があるうちなら代謝できるかもしれませんが、高齢期で、例えばすでに痩せ細ってきている腎臓病ステージ4とかであれば、浮腫や胸水への漏れ出しに細心の注意を払いましょう。

 

このステージになると、貧血まではいかないもののヘマトクリット値と言われる数値が下がってきている事が多く、また心臓への負担もかかっている事もあります。

 

そんな中でたくさんの輸液を1度に入れてしまうことで、過剰輸液を起こしてしまい、結果として皮下点滴を実施したことで苦しい思いをさせてしまった、という症例をたくさんみてきました。

 

「皮下点滴して帰宅してから呼吸が速くなってしまい、ご飯を食べられなくなってしまった」

 

この主訴で訪問して、この日を境に在宅医療(在宅緩和ケア)を実施することが多いです。

 

このように、皮下点滴一つをとっても、本音と建前が混在してしまう事があるため、もし獣医師に訪ねるのであれば、「なぜ今は週3-4回の皮下点滴でいいのか。本当なら毎日のほうがいいのか。」など、質問してみてくださいね。

 

犬猫は自分から選択できないため、ご家族様が判断するしかありません。

 

言いづらいことだとしても、動物病院側にちゃんと伝えることで、思ってもみなかった回答をいただけるかもしれませんし、それによって、今抱えている悩みの突破口が見えるかもしれません。

 

腎臓病なら在宅医療(在宅緩和ケア)切り替えを検討しましょう
 

みんな病院は好きじゃないです。

 

ましてや犬猫からすれば、動物病院はできれば行きたくない場所だと思います。

 

日常ケアの時ならまだしも、毎回嫌な思いをするのがこの持病を抱え始めたステージです。

 

慢性疾患のコントロール(定期検診と薬剤調整など)は、どちらにせよやってあげたほうがいいですが、そのためにかかるストレスをどこまで許容させるのかは、一度考えてあげましょう。

 

愛犬、愛猫にとって、そしてご家族様にとっても最良となる選択肢を見つけましょうね。

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前回の続きです。

 

前回の記事は、こちら動物病院の転院方法①から読めますので、まだ読まれていない方は、順番に読むことをお勧めします。

 

ここまでくると、今までは絶対的な信頼をおいていた動物病院に対して、最近「ん?」と感じた理由が見えてきたと思います。

 

もし違和感を感じていた場合には、転院の準備を進めましょう。

 

転院の準備

転院するにあたってあった方がいい情報は、犬猫が健康体であるならば、基本的にないです。

 

既往歴があれば、どんな病気をいつ発症し、どんな検査とどんな治療(投薬など含める)をした結果、いつ治ったのか、または医薬品のアレルギーや投与後に体調を壊した事があるのか、をまとめておきましょう。

 

もし今現在も継続治療している病気があればそれはいつ発症し、どんな治療をしながら経過観察をしていて、今どんな状態なのか、をまとめておきましょう。

 

各種検査結果は、全部持っておくといいですが、大体は手元にある分で十分だと思います。

 

なぜかというと、転院先で必ず再検査を行うからです。

 

このような内容をまとめておくと、転院先にスムーズに状況を理解してもらう事ができると思います。

 

これは一般的な転院の話であり、もし動物病院への通院から、往診による在宅医療への切り替えを検討したい場合については、上記内容とは異なるのかというご質問を多くいただきますが、全く一緒で大丈夫です。

 

動物病院に通院していて在宅医療へ切り替えるケースでは、基本的には診断がついており、すでにその病気に対して何かしらのアプローチをかけている最中だと思います。

 

いくつか例を出してご説明していきます。

 

猫の慢性腎臓病の往診切り替え

慢性腎臓病の場合には、定期的な血液検査と、高い頻度での皮下点滴が求められることとなりますが、基本的には慢性腎臓病(腎不全)に関しては往診切り替えが可能です。

 

血液検査も超音波検査も、皮下点滴の指導や処方なども全部、往診で可能です。

 

皮下点滴もやり方さえわかれば、ムチ打ってキャリーに入れて通院させる必要はなくなりますし、検査後にキャリーの中で震えることもなくなります。

 

慢性腎臓病ステージ1と言われた時点から、これから高頻度での通院が予想できますので、もし通院が苦手であれば、早期からの往診切り替えをお勧めします。

 

 

猫の消化器型リンパ腫の往診切り替え

リンパ腫といえば抗がん剤による化学療法が効果的であることは有名ですが、その副反応によって急な経過を遂げてしまったという症例もたくさん見てきました。

 

もう抗がん剤ではなく、リンパ腫などの病気からくる不調や苦痛を緩和させながら、余生を可能な限り負担なく過ごさせてあげたいと考えた場合に、往診切り替えをお勧めします。

 

この2つ以外にもたくさんありますが、大切なことは「愛犬、愛猫の余生をどのように過ごさせてあげたいのか」を、ご家族様で決めておくことです。

 

方針さえ決まって仕舞えば、あとはその方針を軸に進めていくだけです。

 

最近は、早期から往診切り替えを希望され、初診時から予想される未来に向けた在宅緩和ケアの相談ができるため、より不安少なく病状の変化を受け入れることができるかもしれません。

 

在宅緩和ケアを希望されるご家族様(東京/千葉/埼玉/神奈川)

在宅緩和ケアという考え方は、まだ浸透していないこともあり、かかりつけの動物病院では受け入れてもらえないかもしれません。

 

そのため、もし在宅緩和ケアをご希望される場合には、往診専門動物病院に相談するようにしましょう。

 

東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室がご自宅まで訪問し、在宅緩和ケアプランを構築させていただき、余生を最後までサポートしていきます。

 

まずは事前にご連絡をいただき、体調がグッと下がる前にペットの状態とご家族様の意向を把握させてください。

 

転院することは決して悪いことではなく、むしろ正しい判断だと思います。

 

感じた違和感をスルーしてしまうのではなく、まずはセカンドオピニオンから始めていきましょう。

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愛犬、愛猫を迎えた日、譲り受け元からの動物病院の紹介があったり、近所にある動物病院を探してみたり、口コミサイトを見てみたりと、どこの動物病院を愛犬、愛猫のかかりつけとするかを期待と不安の中で探されたと思います。

 

身体検査から予防接種、定期的な健康診断や日常ケアなどで、たくさんの時間をかかりつけの動物病院でお世話になったことと思います。

 

きっとそこには今までの愛犬、愛猫の検査データが集まっており、万が一の体調不良でも、担当してくれる獣医師も、サポートしてくれる愛玩動物看護師も、動物病院の建物や空間のどれをとっても、初めての動物病院に行くのと比べれば、幾分かは緊張しないことと思います。

 

それは犬猫も同じで、慣れている環境の方が、比較的安心して終始診察を受けてくれる印象です。

 

きっとそれは、同行されたご家族様の緊張感なども相まっての事なのかもしれません。

 

町にある動物病院は全部ある程度ならできる

この「かかりつけの動物病院」は、いわゆるジェネラリストと呼ばれる総合臨床を得意とする獣医師で構成されており、幅広い軽度な病気に対して専門的な検査なしで簡易的に診断を下して、治療していくことに特化しています。

 

ちなみに予防医療とされる避妊手術や去勢手術などは、各種専門医と比較しても引けは取らないどころか、一般の臨床医、特に開業医とされる院長の腕前はピカイチだったりします。

 

ただ、ここで覚えて欲しいことは、総合臨床を得意としているため、専門的な知見はそこまで強くない可能性がある、ということです。

 

人の医療では、各科が細分化されているのに対し、動物医療に関しては、最近になってようやく細分化され始めた程度です。

 

しかし、まだペットの飼い主側がその細分化になかなか着いてこれてないこともあってか、結果として全診療を1つの動物病院で、1人の獣医師が診ているのが大多数だと思います。

 

どんなに口コミが良くても、それは予防医療の範疇であったり、子犬子猫の話だったり、大きな病気を抱える前だったりと、本当に今の愛犬、愛猫の状態に対しての評価かどうかは分かりません。

 

そのため、覚えておいて欲しいことは、セカンドオピニオンは正義であるということです。

 

積極的にセカンドオピニオンを

現在継続している治療内容に疑問があったり、なかなか治らない、または効果が見えにくいと感じた場合には、同じような症例を扱ったことがある動物病院を探し、セカンドオピニオンに伺った方がいいです。

 

ただこれは、かなりハイレベルな検索が必要になると思いますので、現在の治療に違和感を覚えた場合には、専門医が集う二次医療施設を紹介受診することがお勧めです。

 

この場合に、かかりつけの動物病院からの紹介状が必要になるため、担当の獣医師にやんわりと相談してみましょう。

 

本来であれば、子犬、子猫の時期から、高齢犬、高齢猫までずっと一貫して1つの動物病院で、1人の獣医師(おそらく院長)が診ていくことが理想ですが、基本的には叶わないと思います。

 

途中で別の動物病院を挟みつつ、最終的には元の動物病院で余生を全うするまでお世話になるということはあるかもしれませんが、その動物病院が緩和ケアについてどこまで理解を持ってくれているのかは分かりません。

 

もちろん緩和ケアを選ばなければいけないわけではないので、最後まで病気の治療に専念しても、決して間違いではないです。

 

ただ、それがご家族様のやりたいことであれば、です。

 

転院することは悪くない

獣医師に忖度し、本来の答えとは違う方向に診療が進んでしまうと、きっと大きな後悔が残るかもしれないです。

 

昔は良かったが、今は違う感じがすると思った時は、それはきっとご家族様の求めるものが変わった可能性もあると思っています。

 

・日常ケアやしつけなどを知りたかった時期

・嘔吐下痢などの一過性の症状を治して欲しかった時期

・大きな病気の精査と治療を求めたい時期

・余生を負担なく過ごさせたい時期。

 

きっとこの4つで大きな分類はできると思っています。

 

今ご家族様の悩みがどこに位置しているかで、かかりつけの動物病院に求める像は異なり、それが意味するのは「転院」です。

 

転院したからといって、もう戻ってはいけないわけではないですし、お薬の注文などをしていないのであれば、特別転院の挨拶はする必要はないですが、また戻ってくるかもしれないと思っている場合には、一言挨拶しておくのもいいと思います。

 

 

最後は人

何を求めるかによって、その先にあるものは異なるのに対して、動物病院側はサービス内容を増やしたとしても、スタッフや院長が変わるわけではないです。

 

もう治療ではなく緩和ケアを希望したいけど、かかりつけの動物病院に通院させると治療の話をされるのが辛い、または一番辛いケースとして知らない間に治療薬を投与されていた、ということを伺っています。

 

ご家族様の同意のもとで行なったとは思いますが、きっと獣医師からの説明を理解できないまま事が進んでしまった結果、認識の齟齬が発生したのだと思います。

 

また、通院での緩和ケアか、もう通院のストレスや待合室で待つストレスもかわいそうだと感じた場合には、在宅緩和ケアを選択することができます。

 

在宅緩和ケアを希望されるご家族様(東京/千葉/埼玉/神奈川)

在宅緩和ケアをご希望される場合には、往診専門動物病院が強い味方になってくれると思われます。

 

東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、私たちがご自宅まで訪問し、在宅緩和ケアプランを構築させていただき、余生を最後までサポートしていきます。

 

まずは事前にご連絡をいただき、体調がグッと下がる前にペットの状態とご家族様の意向を把握させてください。

 

さて、長くなりましたので、今日はここまでとして、次はもし転院を検討している場合には、何を準備しておけばいいのかについて書いていきます。

 

続きはこちら【動物病院の転院方法②

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皆さんは、ペットにも緩和ケアがあることをご存知でしょうか。

 

当院は犬猫専門であるため、ここでは犬猫の在宅切り替えのタイミングについてお話しさせていただきます。

 

大きく3パターンに分類されます。

 

1.がん(腫瘍)、腎臓病や心臓病などの慢性疾患の病末期

一つ目は、病末期などでもう通院ができないとされた時です。

 

当院では、このステージでの往診相談を受けることが最も多いです。

 

しかし、往診と救急は相性がとても悪いため、すぐにお伺いすることが難しい場合があります。

 

今日からぐったりしたので急ぎ来て欲しい、というご要望にお応えできる日もありますが、基本的にはご予約の電話またはメールをいただいてから翌日以降になることが多いです。

 

そのため、ガクッと体調が下がり切ってしまう前にご相談いただくことをお勧めします。

 

持病とその時点での状態や、血液検査結果などのデータを参考に、今後起こりうる症状についてお伝えし、その時にどんなアクションを取ればいいのかなど、事前にご説明した上で、各種資材や医薬品などを、ご自宅に準備していきます。

 

また、ご家族様の心が、愛犬、愛猫の旅立ちを受け入れるためにも時間が必要です。

 

日々生じる愛犬、愛猫の変化を徐々に受け入れながら、今がどんな状態なのかをご説明させていただき、少しずつ理解を広げていきましょう。

 

2.余生を見据えての在宅緩和ケア切り替え(診断後)

二つ目は、通常の動物病院診断である程度の診断がつき、治療ではなく緩和ケアを実施してあげたいという意向のもと、往診での在宅緩和ケアを希望される時です。

 

この選択をされるご家族様の特徴としては、先代の愛犬、愛猫での経験がある方、そしてペットが腫瘍(がん)を患ってしまい、抗がん剤などの積極的な治療ではなく緩和ケアを希望したい方がほとんどです。

 

「最後まで動物病院に通院させた結果、その頻繁な通院によるストレスで、逆にかわいそうな思いをさせてしまった。」

 

「先代ペットの時に、良かれと思って選択した抗がん剤でぐったりしてしまい、そのまま旅立たせてしまった。朝は元気だったのに。」

 

「腎臓病(腎不全など)で頻繁に皮下点滴と血液検査で通院させた結果、もう通院は厳しいとなった時に、最後の数日間をどう過ごしたらいいのかを教えてもらえなかった。」

 

このように、先代ペットで抱えたトラウマを背景に、この選択をされる方が多いです。

 

もちろん、初代の犬猫だったとしても、ご家族様の意向で積極的な治療ではなく、穏やかに苦しみ少ない時間を過ごさせてあげたいと希望される場合もあります。

 

抗がん剤は強い味方になることもあれば、抗がん剤の投与を機にぐったりしてしまい、朝までお散歩に行くこともできたわんちゃんが、キャットタワーにも登れた猫ちゃんが、動物病院から帰宅してまもなく動けなくなってしまった、ということは十分に起こり得ます。

 

とはいえ、抗がん剤は腫瘍細胞を叩いて命を伸ばすためには必須アイテムだと思っていますので、もし積極的にがん治療を希望される場合には、かかりつけの動物病院でがん治療を開始するのではなく、腫瘍専門の動物病院を探して相談することを、本当に強くお勧めします。

 

また、腎臓病は慢性疾患であり、定期的な血液検査、そして腎臓病のステージにもよりますが内服薬の用量や種類調整、皮下点滴の頻度や1回量の調整などが必要です。

 

皮下点滴も、本来であれば1日1回必要だとしても、毎日通院させるには負担だというご家族様の意向を見て、獣医師から3日に1回でいいですよ、といった話が出てしまいがちですが、それは対策次第で家族にもペットにも優しい医療プランに変更が可能です。

 

なお、慢性腎臓病で必要な検査、処置、処方などを含めたプランのすべては、ご自宅で実施することができます。

 

心臓病、腎臓病、肝臓病やてんかんなどの脳神経系の疾患などが該当する慢性疾患や、積極的な治療を望まないリンパ腫や肥満細胞腫、肝臓がん、腎臓がん、乳がんなどのがん(腫瘍)症例であれば、当院であれば、基本的に全症例で在宅に切り替えることが可能です。

 

3.通院していなかった犬猫の高齢期

三つ目は、元々動物病院が苦手で通院させることができていなかった症例です。

 

主に、猫ちゃんがこの三つ目に該当します。

 

最後に通院したのは避妊去勢手術をした子猫の時であり、以降通院が本当に苦手だったことから、ずっと動物病院と距離をとってしまい、結果高齢期になって具合が悪くなってきたことを機に、往診専門動物病院を探して連絡をいただく、というパターンです。

 

ペットも人と同じように年を取りますが、平均寿命から考えれば、人より早く体の中は年を取っていくと考えてあげましょう。

 

「食欲がなくなっても、いつもなら3日くらいで少しずつ食べ出すのに、今回は1週間経っても食べてくれない。」

「元気がないなぁとは思っていたが、みるみるうちに動けなくなってしまった。」

「元気ではあるし、ご飯もよく食べるけど、なんとなく痩せてきたような気がする。」

 

まだまだこのカテゴリに該当する症例の主訴はありますが、「成功経験からご家族様の判断で様子見をした結果さらに状態が悪化している」、ということがよく起こりうるのが、犬猫の高齢期です。

 

小型犬、猫であれば、ざっくりと10歳を基準に考えてあげる、と言うキーワードだけ覚えておきましょう。

 

基本的には、体力のある時期であれば、体調不良が起きたとして、人と同じように放っておいても回復するだろうと考えています。

 

しかし、中には鼻が詰まってしまい食欲が戻らないなど、体調を下げている要因を取りのぞかないとダメな場合にもあったりします。

 

人との違いは、「食べて」と言っても食べてくれない、ということです。

 

体調不良が病気を作ってしまうと言うことが犬猫ではよく起こり得ますので、ご家族様の判断だけでなく、必ず獣医師の判断を仰ぐようにしましょう。

 

まとめ

今回は在宅医療への切り替えタイミングについて書かせていただきました。

 

三つ目に関しては、動物病院への通院からの切り替えというよりは、民間療法からの切り替えというものが近いと思います。

 

犬猫は自分で医療を選択することができません。

 

ご家族様が、愛犬、愛猫の性格をしっかりと把握した上で、余生をどのように過ごさせてあげたいのかを決めてあげましょう。

 

専門的な知見は獣医師からもらうことで、より具体的に想像できるようになると思います。

 

その過程の中で、往診切り替えを検討している場合には、事前相談をお勧めします。

 

往診は獣医師と愛玩動物看護師などの看護スタッフがペアでご自宅にお伺いし、現状を把握することと、今後起こりうる変化に対して、何が起きたらどうするのか、などを組み立てていくことが可能です。

 

体調が安定しているうちに、お早めに在宅医療の相談をしましょう。

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往診専門動物病院わんにゃん保健室の江本です。

 

本日は、腎臓腫瘍を抱えた小型犬のお話です。

 

ポン助ちゃん①.png

 

少しだけ、腎臓腫瘍の症例と出会うときの入り口の話をさせてください。

 

そもそも腎臓腫瘍は、犬の腫瘍の中では1.7%、猫の腫瘍の中では2.5%と言われており、そこまで多い病気ではないため、検査を積極的に行わない動物病院をかかりつけとしている場合には、軽度から中等度の腎臓病とされ、腎臓病の治療を行なわれている可能性も大いにあり得ます。

 

なぜかというと、腎臓腫瘍の症状には特異的なものがなく、血尿や体重減少などの別の鑑別診断がたくさんありそうな症状を呈していることがほとんどだからです。

 

しかし、画像検査、特にエコー(超音波)検査やX線検査などを行えば、画像所見として、腎臓の違和感を検知することができます。

 

腎臓腫瘍では、第一選択が外科手術ですが、発見した頃にはすでに体力的に麻酔や手術に耐えれないということが多々あります。

 

腎臓腫瘍は腫瘍であることもあり、高齢になればなるほど発症しやすくなりますが、犬で9歳くらい、猫で10歳くらいと言われています。

 

年齢的にも、慢性疾患である腎臓病(腎不全)を発症しやすい頃ですので、通常の腎臓病だと思い込み、定期検診の血液検査結果で尿素窒素やクレアチニンといった腎臓の数値が安定していたのに、突然痙攣発作が起き、亡くなるということが起こるかもしれません。

 

犬も猫も人と同じように、高齢期に差し掛かったのであれば、高い頻度での定期検診と画像検査を含めた包括的な検査を心がけましょう。

 

前置きが長くなりましたが、今回は通常の腎臓病の治療経過の中で、もうぐったりしてしまったことから家で看取る覚悟をして、当院まで在宅緩和ケアの相談をいただいた犬の話です。

 

 

チワワ×ポメラニアン、16歳

初診時はすでに弱り切っていましたが、こちらのわんちゃんは、とても繊細なタイプの性格で、診察で歯が出てしまうことから、迷惑をかけちゃまずいと考え、なかなか動物病院に近づけずにいたとのことでした。

 

最初に訪れた動物病院の対応だったのかもしれませんが、歯が出てしまうタイプの犬猫でも、ある程度であれば対応することができます。

 

事前に安定剤を服用してもらうなど、状態に応じて獣医師が提案してくれると思いますので、もし動物病院に通院するとすごく攻撃性が高くなってしまうなどで通院を断念されている場合には、獣医師に相談してみましょう。

 

今までの経緯として、5年ほど前に、普段なら数日で回復するはずなのに1週間近く体調が悪そうにしていたことを機に、満を持して動物病院に駆け込んだところ、画像検査は実施してもらえず、血液検査で軽度の腎臓病と言われたとのことでした。

 

そのため、ずっと腎臓病だと思い、腎臓病の療法食をひたすら与え続けていたとのことでした。

 

ポン助ちゃん②.png

 

おそらくこの時点では、画像検査をしても、腎臓腫瘍は検出されなかったと思いますし、軽度の腎臓病が疑われたのであれば、腎臓系の療法食に切り替えてあげて正解だったと考えます。

 

2024年8月に咳が酷かったことを主訴に、頑張って動物病院に通院させてみたところ、腎臓と肝臓が悪いと言われた、在宅での皮下点滴を指示され、この日は動物病院で皮下点滴をして帰ってきたところ、全身が震えてしまうような痙攣をしてしまったとのことでした。

 

翌日からは在宅での皮下点滴実施を支持されましたが、通常の量よりもかなり少ない量を複数回に渡って投与するように指示が出されており、何度も針刺しを行うことや、動物病院でプロである獣医師による皮下点滴で具合が悪くなってしまったこともあって、在宅での皮下点滴はかなり消極的になっていたようでした。

 

医薬品は用いていないとのことから、この痙攣の原因は不明なままでしたが、おそらくストレス性と考え、皮下点滴のやり方や準備の仕方など、一連の動作を再度確認させていただき、ストレスがかかりづらい方法をレクチャーさせていただき、様子を見ることとしました。

 

その結果、そのような全身の身震いはなかったことから、ストレスの蓄積が全ての原因だった可能性をお伝えし、安心して在宅での皮下点滴に挑戦していただきました。

 

ただ、この日行った超音波検査(エコー検査)で、腎臓に腫瘍病変が検出され、腎臓や肝臓の数値が悪くなってしまった原因は、腎臓腫瘍である可能性をお伝えしました。

 

すでに尿素窒素やクレアチニン、リンと言われる腎パネルは、すでに上限値を超えており、今日明日の可能性が高い状態であることが、初日の検査にてわかりました。

 

鎮痛、鎮静など準備を進めていきます。

 

腫瘍症例では、その発生箇所によって痛みを伴う可能性が高い場所やそうでもない場所などが、ある程度予想できます。

 

この後、高頻度で痙攣発作が誘発される可能性があることを理解していただき、その時に備えて環境やマインドの準備を進め、いざという時に向き合えるように一緒に学んでいただきました。

 

高齢期や病末期における緩和ケア中の発作に対する考え方は、通常の特発性てんかんなどの犬猫に対する頓服対策と似て非なるものかもしれません。

 

ただ、医薬品を含めた環境準備、そしてマインドを強く持つことが、ペットの緩和ケアや終末期ケアと言われるターミナルケアでは最も大切になります。

 

その4日後、このわんちゃんは眠りにつきました。

 

ポン助ちゃんと最後に出会えたことに、心から感謝しています。

 

ご冥福を、心からお祈り申し上げます。

 

ポン助ちゃん③.jpg

 

ご自宅での在宅緩和ケアを検討中のご家族様

 

東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、当院が訪問することが可能ですので、まずはお電話ないし問い合わせフォームから、今のご状況を教えてください。

 

ぐったりしてしまう前に、事前にご状況を把握させていただき、いざという日に備えた環境整備などから、一緒にやっていきましょう。

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猫の腎不全、末期がん(腫瘍)、診断後の慢性疾患、酸素室設置、家での皮下点滴など、お気軽にご相談ください!
電話番号:03-4500-8701(往診本部直通)
 
 
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猫の心筋症では、途中から胸水が貯留することがあります。

 

このケースでの胸水貯留では、針を胸に刺して胸水を抜去する胸水抜去という方法以外に、医薬品を用いて対応できる場合があります。

 

胸水抜去を実施すれば、その場で感じる痛み、また抜去後に刺入部に残る軽度の鈍痛や肋間神経の痛みと引き換えに、すぐに呼吸が楽になるという最大のメリットがあります。

 

この時の痛みはとても強いため、在宅緩和ケアの観点からは少量でも鎮静と鎮痛効果のある薬を使用し、猫ちゃんが感じるストレスを最小限にしてあげることを大切にしています。

 

ただし、状態がとても悪く、痛みのストレスよりも、鎮静処置に耐えられそうにない場合には、鎮静処置なしで胸水抜去を実施することもあります。

 

この「胸水」ですが、猫ちゃんで胸水貯留を認めた場合には、心臓病か腫瘍かの2つをまずは疑っていきます。

 

心臓病からくる胸水であれば、内服薬または同等の効果の注射薬などの使用で、胸水の貯留量がどんどん減弱し、たくさん溜まっていて胸水も、3日間ほどで軽度貯留まで減り、1週間ほどで消滅しました。

 

ちなみに腫瘍が原因で貯留した胸水では、医薬品での効果はなかなか期待できませんが、それでも胸水抜去ではなく医薬品を用いて様子を見てあげることを希望された場合には、その意向に合わせたプランを構築していきます。

 

猫ちゃんが心臓病の進行によって貯留してしまった胸水に対して、医薬品を用いたコントロールは、直近の6症例のうち、全ての症例で胸水の貯留量が減り、呼吸状態の改善が認められました。

 

ただし、心臓病などの病気では、使用する医薬品の数も量も増えがちなため、内服薬が得意な猫ちゃんであれば内服薬でのコントロールが叶いますが、ほとんどの猫ちゃんで内服薬が苦手です。

 

その場合には、比較的飲みやすい医薬品は内服で残し、それ以外を注射薬として、在宅にて皮下投与してもらうような環境を構築していきます。

 

それによって、苦手な内服投与の医薬品はできる限り少量とし、他を注射薬とすることで、猫ちゃんが抱えるストレスと、ご家族様が抱える投薬できないストレスが軽減できます。

 

心筋症による胸水貯留は、心筋症の後半の方で起こります。

 

胸水貯留が始まると、胸水抜去のために高い頻度で、下手すれば毎日の通院が必要となってきます。

 

もし猫ちゃんの心筋症などの心臓病で、動物病院に頑張って通院している場合には、いつかくるその日に備えて、一度在宅医療が可能な往診専門獣医師に相談しておくことをお勧めします。

 

体調を大きく崩してから、急いで往診専門の動物病院を探し出すと、もしかするとなかなか見つからなかったり、思っていた先生と違う像の獣医師にお願いすることになってしまった、ということも多くあります。

 

東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、当院が訪問することが可能ですので、まずはお電話ないし問い合わせフォームから、今のご状況を教えてください。

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大型犬は一般的に、小型犬と比べて寿命が短いです。

 

猫と比べ犬では品種ごとで、平均寿命が大きく異なることから、今時点で愛犬が高齢なのかどうかは、それぞれの犬種の平均寿命を参考に考えてあげましょう。

 

小型犬で平均寿命が15歳程度であり、よく10歳からは高齢期ですとお伝えしていることを考えると、平均寿命の2/3程度を過ぎた頃からは、いつ何が起きてもおかしくないという心持ちでいたほうがいいです。

 

今回お話しするのは、東京江東区に済むゴールデンレトリバーのレンくんのお話です。

 

急に立ち上がれなくなった

ゴールデンレトリバーのレンくんは、11歳8ヶ月、48kgの元気な男の子でした。

 

いつも通り散歩に出ていたところ、急に座り込んでしまい、そこから動かなくなってしまったとのことでした。

 

どうにか家の前まで近所の方の力を借りて持って来れましたが、玄関から部屋の中に運ぶのもかなりの力が必要で、またレンくん自体も元気がなくなってきてしまったことから、通院は難しいと考え、急遽往診のご連絡をいただきました。

 

当日予約の受付枠が確保できたため、2時間ほどでご到着することができ、状況を詳しくヒヤリングさせていただきました。

 

健康診断では問題なかった

3ヶ月ほど前に、1年健診でかかりつけの動物病院で詳しく検査してもらっていましたが、その時には何も異常は認めなかったとのことでした。

 

血液検査結果を見させていただきましたが何も異常所見はなく、この年齢のゴールデンレトリバーにしては、肝臓や腎臓、心臓など含めてもとてもいい数値をキープできていました。

 

健康診断はその時点でのデータであり、意味するのは未来ではなく過去であり、それまでの通信簿だと思っていただいたほうがいいとお伝えしました。

 

触診にて複数箇所のリンパ節が腫れていることを受け、多中心型リンパ腫が最も可能性が高いと考えました。

 

在宅緩和ケアプランの構築

抗がん剤治療の選択もありますが、環境的にも毎週通院させることは難しいだろうということと、もうこの年までよく頑張ってくれたので、あとは苦しくないように余生を家の中で過ごさせてあげたいというご家族様の意向を受け、在宅緩和ケアプランを構築していきました。

 

内服薬プランと注射薬プラン、注射薬併用プランの3つから選択することができ、お薬は飲ませられるとのことから内服薬プランで進めることとしました。

 

ただし、もし急に飲めなくなることがあるため、その時は注射薬にて投与できるように、3回分の注射薬セットを準備し、常備させておくことで急な変化にも家族だけで対応できる環境を構築しておきました。

 

内服薬は6種類でしたが、体重が大きい分錠数も増えてしまいましたが、それでも簡単にご飯と一緒に平らげてくれるので、ご家族様も不安なく投薬を開始することができました。

 

体調低下からの1週間

初診から4週間ほど経った日、急にお薬を飲めなくなったので注射薬を使います、というご連絡をご家族様から受けました。

 

診察予定日を前倒しし、急遽夜間の時間帯で訪問したところ、レンちゃんはだいぶ弱々しくなっていました。

 

今朝から急にご飯も食べなくなり、もう厳しのかなと思ったとのことでした。

 

血液検査では黄疸数値の上昇を強く認め、肝臓、腎臓ともに大きく悪化していることを認めました。

 

超音波検査では、胸水貯留はなかったのですが、腹水が貯留しており、ただ抜去するほどではありませんでした。

 

利尿剤の使用を検討し、膀胱にカテーテルを留置することで、そこからおしっこを引き抜いてあげることで、動かすことが難しい場合にも、尿による汚染を予防することができます。

 

おそらくもう長くないことを宣告し、この日から皮下点滴を用いた医薬品の皮下投与プランにシフトチェンジさせ、そして最後の日まで走り抜けました。

 

家の中に空いた大きな空間

レンくんが旅立った後の家の中は、とても静かで、部分部分に違和感のある広いスペースがありました。

 

そこはレンくんのおもちゃ箱だったり、トイレ、寝床やご飯の位置だったと伺いました。

 

診察はいつも1階の客室で行っていたこともあり、奥のリビングの生活環境は、この時初めて見せていただけました。

 

壁中に飾られたレンくんと、楽しそうに写っている家族みんなの笑顔から、過ごしてきた時間のやさしさを感じました。

 

ンくんとの別れは辛かったですが、先代も、その先代もずっとゴールデンレトリバーを迎えていたこともあり、迎えた時から最後の日のことを考えていたとのことでした。

 

最初の子は動物病院に入院中に旅立ち、2頭目は交通事故出なくなってしまったことから、レンくんは家の中でゆっくりと最後を迎えさせてあげたいという意向が最初からあり、それを実現できたことが何よりも嬉しかったと話してくれました。

 

最後の瞬間を見届けるのは辛いですが、それでも腕の中で眠らせてあげることができたことを誇りに思っているとのことでした。

 

勇気を持って決断する

どんな最後がやってくるのかは、誰も断言できません。

 

ただ、どんな最後にしてあげたいのかを考えることは、いつからでもできることです。

 

いざその時がやってきてから考えるには、大き過ぎる課題だと思います。

 

いつからでも早すぎることはないので、動物と暮らすご家族様には、是非考えておいてほしいと思っています。

 

レンくんのご冥福を心からお祈り申し上げます。

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