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腎不全(ここでは腎臓病の全てを“腎不全”と記載します)を抱えると、多飲多尿という飲水量の増加やおしっこの量が増えたというもの、食欲不振などの他にも、ふらつきのような、歩きづらいような、という運動器症状を示します。

 

なんとなく後肢がうまく支えていないというか、後ろ足が突っ張ったままで竹馬のような歩き方をしているとか、立っているだけで後ろ足が開いてしまうなど、その症状はバラバラです。

 

今回ご紹介するのは、後肢破行(後ろ足をひきづる)を主訴に診察した高齢猫ちゃんです。血液検査結果で腎不全(腎臓病)が発覚し、投薬生活を続け、今も元気食欲満載でソファーに飛び乗る元気を持ち合わせた、タロウくんのお話です。

 

吉田タロウくん①.jpg

 

往診依頼のきっかけ

往診を依頼するきっかけになった症状は、5年前くらいから続く口を気にする様子と、3年前からの左後肢破行とその進行です。

口に関しては、最初は壁に擦り付ける程度だったが、だんだんと手で口元をかいてしまい、激しい時には手に膿のような時もあるとのことでした。

左後肢破行は3年くらい前からでしたが、最近はフローリングだと踏ん張れなくて、足が開いてしまうとのことでした。

 

往診当日の様子

元気食欲は大きく下がっているわけではなく、年相応に寝ている時間は多いが、いまだにソファーに飛び乗っているとのことでした。

便はやや硬めで、頻度も2日に1回程度。尿に関しては、ベランダとお部屋の中にトイレのがあり、紙タイプのトイレを使用しているため色はわからないが、特段尿量が増えた印象はないとのことでした。

お水も飲んではいるが、こちらも特段多くなっている印象はないとのことでした。

嘔吐もなく、呼吸状態も安定しており、飲水時にむせることはあるが、基本的には咳はしないとのことでした。

 

既往歴

18年ほど前(2004年頃)にトイレに行くが出ないという症状があって通院させたところ、尿石症と診断されたとのこと。

 

これらの状況を踏まえ、血液検査と超音波検査を実施したました。

 

吉田タロウくん②.jpg

 

検査が始まると、太い大きな声で「ギャーッ!!」と物申し続け、これだけ声が出せる姿を見て、安心して検査を行えました。

高齢犬、高齢猫のほとんどが関節になんらかの疾患を持っていることが多いため、あまり関節を伸ばさないよう注意しながら保定しました。

 

「よく簡単に押さえられますね!私には無理でした…。」

とお声かけいただくのですが、保定技術は何年もかけて習得していくものですので、ご家族様ができなくても気になさらないでください。また、高齢の猫ちゃんでは心臓や血圧、肺の状態などにも異常がある可能性もあり、極力酸素化させながら、苦しくないように検査をするようにしています。

 

タロウちゃんの診察雰囲気は、当院公式instagramに動画投稿してありますので、是非見てみてください^^

 

血液検査結果では、BUN 59.5mg/dl、CRE 4.01mg/dl、SDM A 17pmol/L、SpecfPL 9.1μg/Lと検出され、慢性膵炎持ちであることと、腎不全があることが発覚しました。

 

超音波検査では、胃から十二指腸にかけての食滞、膀胱内の浮遊物、胆嚢の1/3程度を占める胆泥貯留、左右腎臓の血流低下と左腎の腎嚢胞を検出しました。

 

これらの検査結果から、複数の治療プランをご提案させていただき、いよいよ処方プランのスタートです。

 

ここで最大のポイントとなるのは、タロウくんが“何なら飲んでくれるのか”です。

 

往診では、飲めなかったらまたご連絡ください、などと悠長なことは言っていられず、これが飲めなければこっちを飲んでください。そしてこれがダメならこっちを…というように、たらればをいくつも想定して行かなければいけません。

 

そんなこんなを乗り越え、現在は腎臓の薬を2種類、便通を良くしてあげる薬を1種類、口の痛みに対する頓服薬を1種類とさせていただいています。

 

次回は6週間後に往診でお伺いし、経過観察と定期検査を実施していきます。

 

また頑張ろうね!

 

吉田タロウくん③.jpg

 

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こんにちは!

暑さ極める今日この頃、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

往診専門動物病院は、お盆のシーズンも休みなく診療を行っています。こんなご時世ですが、できる限りご自宅で待っている犬猫たちへ診療を届けたいと考えています。

往診専門動物病院わんにゃん保健室では、東京中央区と東京台東区に本拠点を構え、東京の東側である東京江戸川区、東京葛飾区も訪問しております。

愛犬・愛猫がふらつく、吐く、下痢した、食欲がないなど、普段と違う雰囲気を醸し出しましたら、すぐにかかりつけの獣医師に連絡し指示を仰いでください。

もしかかりつけがいない、または動物病院に連れて行けないなどがございましたら、諦めずに私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。

 

今回は発作を起こしてしまう高齢猫ちゃんのお話です。

発作というと、多くの方は脳が原因のてんかん発作をイメージするのではないでしょうか?

もちろん犬や猫でも脳が原因のこともありますが、内臓疾患からくる発作も必ず考えなければなりません。

例えば、高齢の猫ちゃんで特に多いのが、慢性腎不全による尿毒症によって発作が起こることがあります。

また、猫ちゃんでは食べられない期間が長くなると、体の中で代謝経路が変わってしまい肝臓に脂肪をため込んでしまいます。いわゆる脂肪肝です。

脂肪肝になってしまうと肝機能は一気に落ちてしまい、体にはアンモニアという毒素がたまってしまい、アンモニアが脳に作用して肝性脳症からの発作が起こることもあります。

 

このように、動物たちが発作を起こすのは脳の問題だけではありません。

今回はそんな発作を起こす高齢猫ちゃんのお話です。

 

肥大型心筋症猫.jpg

 

痙攣(けいれん)(発作/高齢猫/シニア猫/猫往診/東京江戸川区)

みーちゃんは先日まで別のご家庭で飼われていたそうですが、特別なご事情により今のご家族様のもとに引き取られました。

みーちゃんは、1年ほど前から時々全身性のけいれん発作を起こし、そのたびに動物病院に連れていき、抗けいれん薬の注射をしてもらっていたそうですが、当時の飼い主様が血液検査などをご希望されていなかったため、発作の原因は脳か、年齢的に腎機能の低下からかと言われていたそうです。

しかし、みーちゃんも筋力が弱くなってしまい、立てなくなってしまい、その後いまのご家族様の元にやってきました。

お家に来て数日で慣れたとのことでしたが、2、3日前から発作が連日で起こっているが、年齢的にも動物病院よりもお家で診察をしてほしい、そして腎機能の低下があるならお家でできることがあるなら、ということで、今回往診専門動物病院わんにゃん保健室にご連絡を頂きました。

 

お家にお伺いすると、みーちゃんはお部屋の端においてあるベッドの上で横なっていて、しっぽであいさつをしてくれました。

 

まずは最近の様子をお伺いさせていただくことにしました。

みーちゃんは支えがないと自力での歩行や自立は難しいらしいですが、支えてあげるとよく歩いてくれるとのこと。

ご飯は、ドライはほとんど食べず、腎臓用のリキッド(液体のごはん)やウェットを口に持っていくと食べてくれていて、ご飯の量は十分に取れていました。

お水も口に持っていくと飲んでくれるようです。元気食欲は変わらずなのですが、ここ2,3日連続で発作が起きているのが気になったとのことでした。

たしかに、以前の病院で言われていたように、高齢の猫ちゃんであれば慢性腎不全が進行して尿毒症になって発作が起こることがあります。

みーちゃんも腎臓の数値が高いのか見る必要性、腎臓以外の疾患によって発作が起こる可能性をご説明し、血液検査でわかる範囲の疾患を除外する必要性をご説明して、血液検査を実施することにご同意頂けましたので実施することとなりました。

 

続いて、身体検査です。

みーちゃんはとてもおりこうさんで、体を触っても全く怒ることなく受け入れてくれました。体はやや脱水しており、皮下点滴を行う必要があると判断されました。

口の粘膜色は問題なく、明らかな貧血はなさそうでした。

 

そして、いよいよ採血です。

横になって足を延ばしてもみーちゃんは全く嫌がるそぶりを見せず、ご家族様も驚かれていました。

素早く採血を終わらせて、脱水していたため皮下点滴のみ行いその日の診察は終了としました。

次回の診察は血液検査の結果が出てからということで、3日後に再診を予定しました。

 

血液検査では、腎臓の数値は高値ではありましたが、発作が起こるほど高いわけではなく、発作の原因は別のところにあると判断されました。

また、腎臓以外の数値に関しても、年齢を感じさせないほど良い数値で、今後は皮下点滴をご自宅で行い、発作が続くようであれば抗けいれん薬を飲むことをご提案させていただくことにしました。

 

再診の日、みーちゃんのお家にお伺いすると、相変わらずみーちゃんは横になって気持ちよさそうに寝ていました。

血液検査の結果をご説明し、発作はもしかすると脳からきているかもしれないというお話をさせていただきました。

ご家族様としては、高齢でもあるので、腎不全の治療薬や抗けいれん薬も含めて、できればお薬はあまり使いたくないとのことでしたので、まずはご自宅で皮下点滴を行っていただき、経過を見ていくということになりました。

そのため、この日は皮下点滴をご自宅で行っていただくご指導を行い、まとめて皮下点滴のセットを置かせていただきました。

往診専門動物病院わんにゃん保健室では、お家で皮下点滴を実施していただくことが多く、その際にはしっかりと看護師、あるいは獣医師から皮下点滴の方法をお伝えさせて頂いております。

 

この後みーちゃんは発作がない日々を過ごしてくれていて、今は1か月に1度の診察と検査で状態を維持してくれています。

 

このように、かなり高齢なために移動がストレスになってしまったり、お家での管理をご希望されるご家族様は往診専門動物病院わんにゃん保健室にご連絡ください。お家での管理の方法などもすべてご提案させていただきます。

 

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往診専門動物病院わんにゃん保健室 往診獣医師の江本宏平です。

当院では、腫瘍性疾患をかかりつけの動物病院で言い渡され、抗癌剤(化学療法)か外科手術を行うのかという選択肢を渡された中で、腫瘍に対しては積極的なアプローチをかけないで、ただ現れてくる症状を緩和してあげたいという想いの飼い主様が多いです。

当院は往診専門という特色もあり、猫ちゃんの診察を日々行っています。

猫ちゃんの腫瘍性疾患で、今回出会ったお腹の中に腫瘍を抱えてしまった症例です。

今日は猫ちゃんに多い、消化器型リンパ腫の猫ちゃんのお話です。リンパ腫とは、血液中のリンパ球という細胞がガン化してしまう疾患で、身体のさまざまなところで起こり得ますが、猫ちゃんではお腹の中、特に消化管で起こりやすいと言われています。

リンパ腫にも高分化型といって進行がゆっくりなものと、低分化型といって進行が速いものまで様々ですが、今回ご紹介するのは、進行が速い低分化型リンパ腫の猫ちゃんです。

 

今日は、東京江戸川区在住の13歳の高齢猫のダイちゃんです。

ダイちゃんは、かなり敏感な猫ちゃんで、動物病院に連れて行くと大興奮し、二人掛かりでの保定で、帰ってくるとかなり疲れてしまうそうです。

リンパ腫の緩和ケアをしたいとのご希望で、現在は好きなものは食べているが下痢をしてしまう状態で脱水気味とのことでしたので、お電話当日にお伺いさせて頂くこととなりました。

お伺いすると、同居猫のニャンちゃんがスリスリとしてきてくれましたが、ダイちゃんは別の部屋に隠れてしまっていて、まだ姿は見えません。

その間にご家族に詳しくお話をお伺いすることにしました。

ダイちゃんは、2週間ほど下痢を繰り返していてたまに嘔吐もしていたそうです。

そのためかかりつけの動物病院さんにて検査を行ったところ、低分化型の消化管型リンパ腫と診断されたそうです。

しかし、ダイちゃんは動物病院に行くとすごく興奮してしまい、疲弊してしまうため、病院での抗がん剤療法という選択はされず、緩和ケアをご希望され、往診を探していたところ、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室に出会い、お電話をいただいたとのことでした。

ダイちゃんは今はかかりつけの動物病院さんでもらったお薬を飲んでいて、食欲はありますが、下痢がなかなか良くならず、という状態でした。

幸い食欲があるので、内服薬を飲めているそうなのですが、下痢をしているため、吸収できていないことが予想されました。

活動性はいつもと変わらず、寝ている時間が多いそうですが、気になる程ぐったりしている様子はないとのことでした。

診断は出ているので、出来る限り下痢を止めてあげて、食欲がある状態を維持していこう、と思い治療に当たらせて頂きました。

やはり食べることは一つの楽しみでもあるので、それがなくなってしまうのは寂しいことです。

この日はまずは身体検査を行い、現在のお腹の消化管の状態やリンパ節のサイズなどを超音波検査でチェックし、皮下点滴と注射にてステロイド剤を使用していくことをご提案したところ、ご同意頂けましたので、ダイちゃんを抱っこしてきて頂きました。

ダイちゃんは初め、シャーっと怒ってはいましたが、暴れて処置ができない、ということはなく、やはりお家なので落ち着いているのかな、と感じました。

身体検査ではお腹の中に腫瘤が触知でき、おそらくリンパ節であると考えられました。

その後超音波検査検査では、腫瘤はリンパ節が腫れたもので、その周辺の消化管の構造も崩れてきていることが分かりました。またお腹の中にはまだ泥状便があり、これから下痢をしそうな像でした。

その後、ダイちゃんは点滴、注射を頑張ってくれて、その日の診察は終了となりました。最初に、病院ではどういう状態になるかをお伺いしていたので、病院での想像する状態に比べるとすごく落ち着いて頑張ってくれました。

ここで、リンパ腫の治療方法について少しお話していきます。

リンパ腫はさまざまな場所にできるとお話しましたが、リンパ腫の型もすごく大切で、型によって治療方法や予後は異なってきます。例えば悪性度が高い場合は進行がはやく、抗がん剤の効果が低いこともあります。

逆に、進行がはやいタイプでも、抗がん剤の効果がすごく高いこともあります。

その子によって副作用の出方や効果に違いがありますが、それ以上にリンパ腫の型によって効果が異なるので、最初の診断時にどういった型なのかを調べることが大切になってきます。

また、積極的に治療するなら抗がん剤、というようになりますが、やはり抗がん剤というのは状態が良くないとできません。

そして、副作用が強く出てしまう場合はストップすることもあります。

一方、年齢的にも抗がん剤を行わずに緩和ケアを行なっていく場合もよくあります。

緩和ケアでは主に高容量のステロイド剤を使用します。

これを使用することで、最初のうちはかなり楽になり、症状もかなり改善されます。

しかし、1ヶ月ほどで耐性ができて効果が減弱してしまい、徐々に効果が薄れてきて症状が出てきてしまいます。

そういった場合には、別のお薬を併用して、出来るだけ辛さを取り除いていく方向になります。

 

今回のダイちゃんは緩和ケアをご希望のため、高容量のステロイド剤を使用しました。

次の日にお伺いした時には、注射でしっかりと吸収されたのか、少し便が固まってきたとのことでしたので、3日間続けて注射を行なっていきました。

すると、便も完全に固まって、お腹のしこりも小さくなってきました。

その後は1週間ごとに内服薬をお渡しし、お薬が飲めなくなってしまった時にはお家で注射をして頂くか、往診をさせて頂くかご相談をする、ということで、現在ダイちゃんは元気に過ごしています。

しかし、ステロイドの効果が減るとがくんと状態が落ちてしまうことがあるので、今後も注意が必要です。

今回のダイちゃんのように、腫瘍が突然見つかった場合、ご家族様は急に治療の選択を迫られます。

しかし、どんな時でも、その子を思って出した答えは、緩和ケアでも積極的な治療でも間違いではないと思います。しかし、緩和ケアは病院だけでなく、安心できる場所であるお家で行うこともできるということも知って頂ければと思います。

そして、緩和ケアがどういうものか、ご不安な方も多いと思いますが、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、どういったことをしていくか、どういう方向性にしていくかをしっかりとご家族様とご相談して決めさせて頂きますので、緩和ケア、ターミナルケアをお考えの方、いつでもお気軽に往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。

 

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皆さんは、往診専門動物病院があることをご存知でしょうか?

往診専門動物病院は、通常の動物病院とは違い、獣医師と動物看護師が、わんちゃん・猫ちゃんたちが暮らすお家まで訪問し、診察を行います。

ワクチンなどの軽度医療も行なっておりますが、メインとなっている診療が、腎不全などの慢性疾患や、ご自宅での看取りまでを一緒に歩んでいくターミナルケアです。

緩和ケア、ターミナルケアでは、飼い主様の意向を十分な時間をかけてゆっくりとお伺いし、一緒に最良となる診療プランを立てていきます。

ご近所にある動物病院に今まではかかっていたが、もう動かすことが可哀想で、できれば家の中で苦痛を軽減しながら余生を過ごさせてあげたいという思いを抱いている飼い主様、まずはご連絡ください。日程調整を行い、お家までご訪問させていただきます。

 

子猫.jpg

 

今回は、連日お送りしているリンパ腫の話です。今回もまた、高齢猫ちゃんのお話です。

 

リンパ腫は抗がん剤がよく効く治療の1つではありますが、高齢で、腎不全がある猫ちゃんには抗がん剤は負担が大きいのであまり実施する事はありません。

そのため高齢のリンパ腫の猫ちゃんではターミナルケアを実施します。

今回は往診専門動物病院わんにゃん保健室にてターミナルケアを行ったリンパ腫の高齢猫の治療経過をお話しします。

 

症例は東京都江戸川区在住の15歳の高齢猫のサラちゃんのお話です。

 

私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室は、都内の東側にいくつかの拠点があります。

最近、東京江戸川区に江戸川区支部を設けました。

東京江戸川区には、江戸川区支部を設けてから頻繁に往診するようになりました。東京江戸川区は土地が広く、往診という診療形態ですので、駐車場がたくさんあるという利点をいつも嬉しく思っています。

往診車でサラちゃんが待つご自宅までお伺いすると、サラちゃんはリビングで待っていてくれました。

高齢猫のサラちゃんの鼻がズビズビしており、鼻血が出て、もう2ヶ月ほど鼻がつまっているとのことでした。

サラちゃんはかなりナーバスな猫ちゃんで、ご家族様も触るのが難しい猫ちゃんです。

そのため、動物病院には子猫のときにワクチンに行ったきり、行けておらず、健康診断なども行ったことがないということでした。

しかし、2ヶ月ほど前から鼻がつまり出してきて、最初は風邪かな?と思っていたそうですが、そのうちくしゃみとともに鼻血を出すようになって心配なってきたとのことでした。

とはいえ、サラちゃんをキャリーに入れて動物病院に連れて行くことは難しいため、様子を見ていたそうです。

すると、ここ最近は食欲も落ちてきてしまい、さすがに風邪だけではないと思い、往診での診察を探していたところ、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室を知ったとのことでした。

ここで、鼻血というのが気になるポイントでもありました。

鼻づまりがある場合、通常は鼻の感染症と腫瘍、骨格の問題、歯の感染などを考えます。

かし、鼻血が出るとなると、もちろん感染症でも鼻血が出ることはありますが、多くの場合腫瘍があると考えなければなりません。

高齢でもあるので、食欲不振が鼻の方から来ているのか、他の疾患から来ているのかも見ていく必要があるため、まずは身体検査と血液検査、腫瘍だった場合にお腹に転移などがないかどうかを見るために超音波検査をご提案させて頂きました。

ご家族様としては、今まで検査をしたことがないので、今日で出来る限りの検査をしてあげてほしいとのご希望でしたので、サラちゃんの様子を見つつ実施させて頂くこととしました。

 

サラちゃんのお部屋に入ると、とても威嚇していて、カーテンの裏側に隠れてしまっていました。

しかし、こういった場合にも往診専門動物病院わんにゃん保健室のスタッフは慣れています。

うまくサラちゃんをタオルで包んで保定して、まずは身体検査です。

身体検査では、鼻血の跡が見られ、左右ともに詰まってしまっている様子でした。また、体は削痩しており、脱水も見られました。

口の粘膜の色は薄く貧血も見られます。

 

次に採血です。

 

採血では、サラちゃんとても興奮していましたが、素早く終わらせてすぐに楽な姿勢に戻ってもらいました。最後に超音波検査です。

超音波検査では、お腹の臓器を一通り全て見ていきますが、肝臓や腎臓に転移と思われるような所見が認められました。

その日はまずは対症療法として、皮下点滴と吐き気どめや胃薬などを注射し、サラちゃんは解放しました。

 

これらの結果をご家族様にご説明し、やはり鼻の方は腫瘍の可能性が高いということをお伝えしました。

鼻の方をしっかりと見ていくためには、鼻は骨に覆われているため、レントゲンやCT検査を行って、どういった腫瘍かは細胞を取って検査をしなければ分からないことをお伝えさせて頂き、もし検査までご希望であれば二次診療施設をご紹介することもできるけれど、ということをご相談にさせて頂いたところ、それはかなりサラちゃんにとってストレスになるだろうということで、腫瘍に対するターミナルケアを実施していくこととしました。

そのため、もう一度だけサラちゃんを保定し、ステロイド剤を注射してその日の診察は終了とし、次の日もう一度お伺いさせて頂くこととしました。

ステロイド剤は、腫瘍によってはかなり効果を示してくれます。今回のサラちゃんにもそれを期待して使用していくこととしました。

 

血液検査では、白血球数、特にリンパ球や肝臓、腎臓の数値全てが上昇していました。

この結果からほぼリンパ腫の転移で間違いなく、骨髄まで転移が起こっていることが予測されました。

リンパ腫であればステロイド剤は初期はかなり効いてくれますが、かなり腎臓の数値も上がっているため、食欲がどこまで回復してくれるか心配なところでもありました。

 

次の日お伺いすると、サラちゃんは相変わらず別のお部屋にいて、ご飯はウェットフードを少量食べてくれた程度だったとのことでした。

昨日の結果をご説明し、どれぐらいステロイドの効果が出てくれるかとお伝えさせて頂いたところ、注射前よりは顔つきが良いとのことでした。

そのため、その日も点滴と注射を行い、1週間は連続でお伺いさせて頂くこととしました。

 

あと3日で1週間目となりますが、サラちゃんは少しずつ食べてくれています。

 

ご家族様のご希望としてはなんとか苦しむことなく最期を迎えさせてあげたいとのことでしたので、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室でも少しでもサラちゃんがしんどくないように願っています。

 

今回のサラちゃんのように、動物病院に連れていくどころか、ご家族様が触るのも難しいという猫ちゃんもよく出会います。

そういった場合には一度往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。

 

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こんにちは!

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室 往診獣医師の江本宏平です。

 

わんにゃん保健室では、東京の東側を中心に訪問依頼を受けることが多く、東京江戸川区や東京葛飾区などに頻繁に往診しています。

往診と言うと、やはり人間の医者による高齢者や病院に通院できない方のご自宅に往診に行っているイメージが強いですが、犬猫の場合も同じです。

ただ、おそらく違う点を挙げるとするならば、犬猫の往診はペットの性格や状態によっては、結構激しい現場になることです。

と言うのも、動物病院に連れていけないくらい状態が低い犬猫だけではなく、全く手がつけられないくらい怒って暴れる犬猫のケースもあるからです。

わんにゃん保健室では、状況に応じて動物看護師が1人〜3人同行し、わんちゃん・猫ちゃんの確保に尽力します。

確保できれば、あとは通常通り採血、採尿、腹部超音波検査などの各種検査を行い、内服薬が苦手な犬猫出会った場合には、複数の注射薬を皮下点滴に混ぜて1度に投与することをできますので、ペットにとっても飼い主様にとっても最小限の負担で治療を行うことができます。

動物病院に連れて行けないで困っている飼い主様、お気軽にお問い合わせください。

 

 

さて今回は、血栓症という、血栓ができて血管に詰まってしまう病気になってしまった猫ちゃんのお話をさせて頂きます。

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血栓症というのは、人でいうと脳梗塞や心筋梗塞が最もイメージしやすいかと思います。

これらの梗塞、というのは血栓が血管に詰まってしまいそこから先に血液が行かなくなってしまうことを意味します。

血液が行かないと、その先の組織は壊死してしまったり、例えば脳梗塞であれば、血液がいかない時間が長くなってしまうと脳の組織が虚血してしまい、神経麻痺が後遺症として残ってしまうことがあります。

わんちゃんや猫ちゃんでももちろん脳梗塞や心筋梗塞になる場合もありますがなかなかそこまでの診断ができることは多くはありません。

しかし、わんちゃん猫ちゃんでも血栓症が起こりやすくなってしまう疾患は沢山ありますそして、その詰まってしまった場所によって、症状にかなり差がありますが、今回は猫ちゃんで多い、足に血栓が詰まってしまった高齢猫についてお話していこうと思います。

 

症例は、東京江戸川区在住の18歳、高齢猫のシロちゃんです。

シロちゃんは1年ほど前に初めて往診に行かせていただき、そこから甲状腺機能亢進症、という高齢猫さんではよく見られる内分泌疾患の治療を続けており、内服薬で経過は良好でした。

しかし、ある日の朝、往診車で出発しようとしていると、シロちゃんからお電話がなりました。

お電話にて、シロちゃんが先ほどから急に悲鳴をあげて暴れまわっていて足がすごく痛そうですぐに往診をしてほしいとのご希望でした。その日は朝のご予約に余裕があり、甲状腺機能亢進症を治療中ということもあって、血栓の合併症が考えられたため、緊急と判断し、そのまますぐにシロちゃんのお家に向かわせて頂きました。

緊急処置が必要と感じられたので、お電話で詳しくお話をお伺いさせていただいたところ、今朝の直前までかなり元気に過ごしてくれていたそうなのですが、その後から急に暴れまわる状態になってしまい、ご家族様もかなり動揺されている様子でした。

お家に入るとシロちゃんはかなり興奮状態で、興奮することでかなり心拍数も上がってしまっていました。

足が突っ張ってしまいかなり痛そうでしたので、まず応急処置として鎮静剤、鎮痛剤を注射し、落ち着かせて痛みをまずは鎮めました。

しかし1回だけでは効果が弱く感じられましたので、追加で投与したところ、ようやく落ち着きを取り戻し少し眠そうな様子になってくれました。

そのまま薬が効いているうちに採血を行い、点滴を行なっていきました。

シロちゃんにはそのまま少し寝ていてもらい、心拍数など身体の状態を見つつ、飼い主様と再びお話させて頂きました。

急な変化ということと、興奮する様子を見たところ、血栓症の可能性がかなり高く思われ、鎮痛、鎮静剤を積極的に2日ほどは使っていき、様子次第で減らしていくことが良いかと思われました。

脳梗塞でも頭が急に痛くなるように、猫ちゃんも足に血栓が詰まってしまうとかなりの激痛が走ります。

そのため興奮してしまい、興奮しすぎてケガをしてしまったり、心拍数が上がりすぎてしまい、心臓に負担をかけてしまったり、と危険な状態になってしまいます。

そのため、まずは痛みを取ってあげて、同時に鎮静効果もあるため落ち着いてくれて、身体としては少し麻酔が入っているような状態になりますが、負担は減ってくれます。

しかし、痛みをとっても、血栓があるままであればその足はいずれ壊死していってしまう可能性があり、それに関しては注射で血栓溶解剤を入れたり、という治療がありますが、どこまで治療をしていくか、というところになってきます。

病状についてご家族様にお話させて頂いたところ、痛みを取ってあげたいが、年齢的にも無理はして欲しくないので、それ以上の治療は望まれていないということでしたので、いわゆる緩和ケアを行なっていくこととしました。

しかし、そのまま何もせず壊死していくことはかわいそうなので、血栓を溶かすように働いてくれるお薬も使っていくこととしました。

鎮痛剤や血栓のお薬は1日3回必要になってるので、お家でご家族様に入れて頂く必要があります。

それに関しては、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室の獣医師が丁寧にできるまでご指導させていただきました。

ここで、血栓症について少しお話です。わんちゃんではクッシング症候群という病気で血栓ができやすくなりますが、猫ちゃんでは冒頭でもお話させていただきました通り、甲状腺機能亢進症や心筋症などでも血栓ができやすくなってしまいます。

わんちゃんのクッシング症候群についてはまたべつの記事でお話させて頂きますので、今回は甲状腺機能亢進症で血栓ができやすくなる仕組みをお話させて頂きます。

甲状腺機能亢進症では身体の代謝がかなり上がってしまった状態になりますが、その中でもちろん心臓も心拍数が上がり血圧も上がります。

そうすると、心拍数が高すぎて、1回の拍動で出て行く血液量が減ってしまい、心臓の中に血液が残ってしまいます。そうするとそれが少しずつ固まって血栓を形成してしまうことがあるのです。

その血栓が心臓から出ていき、身体のどこかの血管で塞栓すると、その部分で症状が起きてしまいます。

今回のシロちゃんの場合はそれが足で、かなりの痛みを伴ったということです。

血液検査では、大きな異常はありませんでしたが、赤血球がかなり多くなっていて、興奮の度合いが予測されました。

次の日もう一度お伺いさせて頂いたところ、シロちゃんは昨日より落ち着いていて、お薬が効いているようでした。

引き続き同じお薬を使用し、明日も大丈夫そうであればお薬を少しずつ減らして行く方向でご家族様とお話させて頂きました。

 

今回のシロちゃんのように、基礎疾患があり、急に併発疾患が出てきてしまうこともありますが、動物病院にすぐに連れていけない、興奮しすぎるので外に連れ出せない、などの理由で動物病院に行けないご家族様はとってもたくさんいらっしゃいます。

自分の家の子だけかも、と心配なさらず、往診専門動物病院わんにゃん保健室までお気軽にご連絡ください。その子その子にあった、そのご家族様に合った治療をオーダーメイドでご提案させて頂きます。

 

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