皆さんは、往診専門動物病院があることをご存知でしょうか?
往診専門動物病院は、通常の動物病院とは違い、獣医師と動物看護師が、わんちゃん・猫ちゃんたちが暮らすお家まで訪問し、診察を行います。
ワクチンなどの軽度医療も行なっておりますが、メインとなっている診療が、腎不全などの慢性疾患や、ご自宅での看取りまでを一緒に歩んでいくターミナルケアです。
緩和ケア、ターミナルケアでは、飼い主様の意向を十分な時間をかけてゆっくりとお伺いし、一緒に最良となる診療プランを立てていきます。
ご近所にある動物病院に今まではかかっていたが、もう動かすことが可哀想で、できれば家の中で苦痛を軽減しながら余生を過ごさせてあげたいという思いを抱いている飼い主様、まずはご連絡ください。日程調整を行い、お家までご訪問させていただきます。
今回は、連日お送りしているリンパ腫の話です。今回もまた、高齢猫ちゃんのお話です。
リンパ腫は抗がん剤がよく効く治療の1つではありますが、高齢で、腎不全がある猫ちゃんには抗がん剤は負担が大きいのであまり実施する事はありません。
そのため高齢のリンパ腫の猫ちゃんではターミナルケアを実施します。
今回は往診専門動物病院わんにゃん保健室にてターミナルケアを行ったリンパ腫の高齢猫の治療経過をお話しします。
症例は東京都江戸川区在住の15歳の高齢猫のサラちゃんのお話です。
私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室は、都内の東側にいくつかの拠点があります。
最近、東京江戸川区に江戸川区支部を設けました。
東京江戸川区には、江戸川区支部を設けてから頻繁に往診するようになりました。東京江戸川区は土地が広く、往診という診療形態ですので、駐車場がたくさんあるという利点をいつも嬉しく思っています。
往診車でサラちゃんが待つご自宅までお伺いすると、サラちゃんはリビングで待っていてくれました。
高齢猫のサラちゃんの鼻がズビズビしており、鼻血が出て、もう2ヶ月ほど鼻がつまっているとのことでした。
サラちゃんはかなりナーバスな猫ちゃんで、ご家族様も触るのが難しい猫ちゃんです。
そのため、動物病院には子猫のときにワクチンに行ったきり、行けておらず、健康診断なども行ったことがないということでした。
しかし、2ヶ月ほど前から鼻がつまり出してきて、最初は風邪かな?と思っていたそうですが、そのうちくしゃみとともに鼻血を出すようになって心配なってきたとのことでした。
とはいえ、サラちゃんをキャリーに入れて動物病院に連れて行くことは難しいため、様子を見ていたそうです。
すると、ここ最近は食欲も落ちてきてしまい、さすがに風邪だけではないと思い、往診での診察を探していたところ、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室を知ったとのことでした。
ここで、鼻血というのが気になるポイントでもありました。
鼻づまりがある場合、通常は鼻の感染症と腫瘍、骨格の問題、歯の感染などを考えます。
しかし、鼻血が出るとなると、もちろん感染症でも鼻血が出ることはありますが、多くの場合腫瘍があると考えなければなりません。
高齢でもあるので、食欲不振が鼻の方から来ているのか、他の疾患から来ているのかも見ていく必要があるため、まずは身体検査と血液検査、腫瘍だった場合にお腹に転移などがないかどうかを見るために超音波検査をご提案させて頂きました。
ご家族様としては、今まで検査をしたことがないので、今日で出来る限りの検査をしてあげてほしいとのご希望でしたので、サラちゃんの様子を見つつ実施させて頂くこととしました。
サラちゃんのお部屋に入ると、とても威嚇していて、カーテンの裏側に隠れてしまっていました。
しかし、こういった場合にも往診専門動物病院わんにゃん保健室のスタッフは慣れています。
うまくサラちゃんをタオルで包んで保定して、まずは身体検査です。
身体検査では、鼻血の跡が見られ、左右ともに詰まってしまっている様子でした。また、体は削痩しており、脱水も見られました。
口の粘膜の色は薄く貧血も見られます。
次に採血です。
採血では、サラちゃんとても興奮していましたが、素早く終わらせてすぐに楽な姿勢に戻ってもらいました。最後に超音波検査です。
超音波検査では、お腹の臓器を一通り全て見ていきますが、肝臓や腎臓に転移と思われるような所見が認められました。
その日はまずは対症療法として、皮下点滴と吐き気どめや胃薬などを注射し、サラちゃんは解放しました。
これらの結果をご家族様にご説明し、やはり鼻の方は腫瘍の可能性が高いということをお伝えしました。
鼻の方をしっかりと見ていくためには、鼻は骨に覆われているため、レントゲンやCT検査を行って、どういった腫瘍かは細胞を取って検査をしなければ分からないことをお伝えさせて頂き、もし検査までご希望であれば二次診療施設をご紹介することもできるけれど、ということをご相談にさせて頂いたところ、それはかなりサラちゃんにとってストレスになるだろうということで、腫瘍に対するターミナルケアを実施していくこととしました。
そのため、もう一度だけサラちゃんを保定し、ステロイド剤を注射してその日の診察は終了とし、次の日もう一度お伺いさせて頂くこととしました。
ステロイド剤は、腫瘍によってはかなり効果を示してくれます。今回のサラちゃんにもそれを期待して使用していくこととしました。
血液検査では、白血球数、特にリンパ球や肝臓、腎臓の数値全てが上昇していました。
この結果からほぼリンパ腫の転移で間違いなく、骨髄まで転移が起こっていることが予測されました。
リンパ腫であればステロイド剤は初期はかなり効いてくれますが、かなり腎臓の数値も上がっているため、食欲がどこまで回復してくれるか心配なところでもありました。
次の日お伺いすると、サラちゃんは相変わらず別のお部屋にいて、ご飯はウェットフードを少量食べてくれた程度だったとのことでした。
昨日の結果をご説明し、どれぐらいステロイドの効果が出てくれるかとお伝えさせて頂いたところ、注射前よりは顔つきが良いとのことでした。
そのため、その日も点滴と注射を行い、1週間は連続でお伺いさせて頂くこととしました。
あと3日で1週間目となりますが、サラちゃんは少しずつ食べてくれています。
ご家族様のご希望としてはなんとか苦しむことなく最期を迎えさせてあげたいとのことでしたので、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室でも少しでもサラちゃんがしんどくないように願っています。
今回のサラちゃんのように、動物病院に連れていくどころか、ご家族様が触るのも難しいという猫ちゃんもよく出会います。
そういった場合には一度往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。
◆-----------------------------------◆