本日は、東京中央区にお住まいのミィちゃん、16歳の女の子の腎臓病のお話です。
ミィちゃんは1年半に及ぶ緩和ケアと19日間のターミナルケアの末、2020年8月3日、お母さんの膝の上で旅立ちました。
ミィちゃんの軌跡をお話することで、きっと何かしら、猫ちゃんを飼われている方に有益な情報として届くことを信じています。
どんな猫ちゃんだったのか
ミィちゃんは優しい性格で、人間が大好きな猫ちゃんでした。
生後間もない、まだ目が見えていない時に親猫と離れてしまい、衰弱しきっているところを、今のご家族様に保護されました。
一命を取り留めましたが、子猫の時は体が弱く、何度も動物病院に通院する日々だったとのことです。そんなこともあり、ミィちゃん自身、通院は苦手ではなかったとのことでした。
食は元々細く、ガツガツ食べている姿は見たことがなかったとのことです。
そんなミィちゃんが14歳を過ぎたあたりから具合が悪そうになり、食欲の低下や元気もなくなってきたとのことでした。
往診を選択したきっかけ
ミィちゃんのように、動物病院に通院できている猫ちゃんは珍しく、お母さんの気持ちとしても、当初は最後までかかりつけの動物病院で診てもらうつもりだったとのことでした。
しかし、動物病院で検査を行い腎臓機能が下がっていることを知り、定期的な通院が必要とされたとき、治る病気であれば通院させたいが、そうでないのであれば家の中で過ごさせてあげたいと思ったので、往診に切り替えたとのことでした。
往診変更時の通院頻度
ミィちゃんの場合は、調子がある程度安定していることから、月1回の通院検査で、血液検査を実施しているとのことでした。
往診でも血液検査をすることができることを知り、検査内容に差がないことから、往診がいいなと思ったとのことでした。
動物病院での検査内容
動物病院での検査内容は、血液検査、尿検査(持参したもの)に加えて、3ヶ月に1回はX線検査と超音波検査(エコー検査)だったとのことでした。
往診では、X線検査のような大きな医療機器は持ち込めませんが、この中からであればX線検査以外の全てを実施することかができることを知り、検査に関しても往診でお願いしたいと希望されました。
初診時の検査
初診時は、問診で45分程度、血液検査、尿検査、腹部超音波検査などを実施し、ミィちゃんの全体像を把握させていただきました。
処置には皮下点滴に複数の注射薬を合わせ、一気に処置を終わらせました。血液検査の結果、腎不全がかなり悪化した状態であることがわかり、尿素窒素(BUN)、クレアチン(CRE)は大きく参考基準値を超えていました。
診療プラン(緩和ケア)
診療プランは、1週間集中的に訪問して皮下点滴を実施し、安定したことがわかれば、徐々に頻度を下げていくというものでした。
ミィちゃんの場合、飼い主様の判断が早かったおかげで、すぐに状態が安定したため、次のステップである「飼い主様指導」を開始しました。
目標は、飼い主様自身でご自宅で皮下点滴ができることです。
無事にトレーニングを終え、内服薬2種類+週2回程度の皮下点滴としました。
往診頻度(緩和ケア期間)
緩和ケアの時は、基本的には1ヶ月〜3ヶ月に1回の往診を行い、そこで血液検査や尿検査、超音波検査などを行い、前回と比べてどのくらい変化したのかを評価していきます。
日を追うごとに、少しずつ腎臓の機能が下がっていくのを検査データから読み解き、少しずつ皮下点滴の頻度が増えていき、内服薬の量も増えてきました。
ターミナルケアへの転機
緩和ケアを開始して1年半ほど経った2020年7月中旬、ミィちゃんが急変したとの連絡を受けました。
変化の内容は、以下です。是非参考にしてください。
・昨日までご飯を食べれていたが、今朝から全く食べなくなった。
・今朝から急にふらつきが強くなった。
・吐き戻し(嘔吐)が始まった
・下痢になってしまった
夜に点滴をされていたこともあり、夜の点滴は一旦保留として夕方すぎにお伺いすると、ミィちゃんはぐったりしていて、呼びかけに対しても反応がやや薄くなっていました。
この日は血液検査で幅広い項目を確認し、超音波検査にて腹水、そして胸水が溜まっていうないかを確認したところ、腹水と胸水の貯留はありませんでした。
血液検査結果では、腎臓の数値が飛んでいること、黄疸の数値が高いこと、炎症の数値も高く、貧血が一気に進行していることなど、いよいよ来たなっていう結果を認めました。
ご家族様に説明させていただき、酸素室をご自宅に設置、呼吸が苦しそうなときはこの中で管理するか、または酸素チューブを顔の前に持っていって嗅がせてあげるように指導しました。
この日から1~2日に1回の往診が始まり、19日後の2020年8月3日、お母さんの膝の上で静かに眠りにつきました。
腎臓病は、多くの高齢猫ちゃんで認められる病気であり、治療法はなく、症状の緩和や、状態を安定させる目的で、食事内容調整、内服薬、そして皮下点滴を行います。
よく飼い主様から、
「治るのであれば治してあげたいけど、一生でしょ?一生投薬するのは可哀想だ。」
と伺います。
はい、そうです。
一生症状を緩和して、然るべき時を待つ、という表現であっているかなって思っています。
コントロールできる症状であれば、緩和してあげた方が、わんちゃん、猫ちゃんにとって苦しみの時間は短いのではないかと思います。
コントロールするためにも、まずは検査してデータを揃えることがとても大切です。
もちろん検査が全てではありません。
検査に耐えられそうにないと判断することも多々あります。
そんな時は、たくさんの情報をご家族様から引き出すことで、想定できる可能な限りのことを考えていき、その環境で、この家族構成で、今のその子の状態でできる最大限のことをご提案させていただきます。
愛犬、愛猫をおうちで看取ってあげたいと考えられているご家族様、大きく体調を崩してしまう前に、まずはご連絡ください。
一緒にその環境でできる最良の選択肢を考えていきましょう。
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