前回は腎臓病の猫ちゃんの「問い合わせから在宅医療の初診内容」を書かせていただきました。
初診当日は、今までの経緯をお伺いするのにおおよそ30分〜2時間程度と、通常の診療と比べて長く十分な時間をとって、今までの経緯をゆっくりと教えてください。
翌日の診療となる今日は、昨日採取した検体から暫定的に得られたデータをもとに診療内容を組んでいきます。
もちろん、ここでも問診は必須です。
Q. 昨日から今日にかけて、元気さ(運動性)に変化はありましたか?
A. ふらつきが強くなってきたことが気になっていたのですが、昨日の点滴を打ってから2時間くらいしてゆっくり眠ってくれて、起きた時の足取りが、なんとなく軽くなっていたように感じました。
Q. 食欲はどうでしたか?
A. 昨日の夜、少しですが食べてくれました。もう食べれないと思っていたので涙が出るほど嬉しかったです。
Q. 排便・排尿はどうでしたか?
A. おしっこは変わらずよくしています。うんちは出ていません。
Q. 嘔吐はありましたか?
A. 吐き気止めを入れてもらったおかげで、久しぶりに丸1日吐いていません。
Q. 咳はありましたか?
A. なかったです。
最初の見立てと検査結果が一致していたというのもありますが、処置を入れるのが遅すぎない限り、最初の方は結構な確率で状態が上がってきてくれています。
この猫ちゃんも同様で、見立てから腎臓病が第一優先でしたので、処置内容が合致してとても嬉しかったです。
ここで、昨日行った検査結果の暫定的なものをご説明させていただきました。
高齢猫ちゃんの腎臓病といえば、往診では以下の項目をよく用います。
血液検査
・BUN(尿素窒素)
・CRE(クレアチニン)
・IP(リン)
・SDMA
・Na-K-Cl(電解質)
・血球計算(貧血の評価など)
腹部超音波検査
・腎臓の左右差、大きさ、血流など
この猫ちゃんの検査結果はBUN、CRE、IPが重度に高値であり、貧血も軽度に起こしていました。
電解質には、そこまでの大きな乱れはありませんでした。
尿検査ではタンパク尿が認められましたので、これらのことから、皮下点滴+内服薬の処方プランを立てていきます。
皮下点滴は今後ご自宅でお母さんたちにお願いすることも視野に入れ、ご自宅で実施可能かどうか伺ったところ、「やるしかないのでやります!」、と力強いお言葉をいただけました^^
家族だけでは心配だという場合であれば、慣れるまでの間をスケジュールを組んでお伺いさせていただくこともあれば、私たちの方で皮下点滴を実施していくというプランにすることもあります。
内服薬もシロップ状にして飲ませてあげるやり方を同日指導させてもらい、明日の診察までに明日分の内服シロップ飲ませに挑戦してもらい、できたかできなかったか、できなかったとしたら何が難しかったのか、などをお伺いする予定であることをお伝えさせていただきました。
さて、ここまでで初診日、その翌日、その翌々日と3日間のスケジュールを組んでいきます。
今回のケースでは、初日は詳しい問診と詳しい身体検査を主体とした処置内容の決定と検査を行い、翌日は検査結果に沿った暫定的な治療プランを組んでいきました。
最終的に処方プランや検査プランを決めていくのは翌日の3日目が多いですが、おおよそのイメージをこの段階でお伝えしています。
当院では、腎臓病の猫ちゃんでコントロールが聞いていないうちは週1回程度の検査を実施しています。安定してしまえば、3ヶ月に1回程度の訪問で、検診を行なっていきます。
明日、処方プランを最終的に決めていきますが、ここで重要なのは、「内服を飲ませることはできるのか」です。ちなみに、内服薬の上げ方はたくさんあります。
・例えば錠剤の場合
- 錠剤のまま飲ませる
- 細かく砕いて投薬用のカプセルに入れて飲ませる
- 細かく砕いてウェットや投薬用のおやつなどで包んで飲ませる
- 粉にしてウェットや投薬用のおやつなどで包んで飲ませる
- 粉にして水などの液体を少量(飲ませられる液体量は1ショット0.5ml以内にするのがおすすめ)
きっと上記以外にもあるかと思いますが、とりあえず5パターンのご紹介でした^^
ちなみに、フィルムや糖衣でコーティングされている薬は、粉にしてシロップにすると、全体がとてつもなく苦くなることがあるので、そういった薬は①〜③がおすすめです。
明日の診察で、シロップを飲ませられたかどうかで処方プランが変わっていきますので、明日の診察に期待です^^
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