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2024年3月アーカイブ

犬猫を迎えた時から、いつか来るお別れに備えて、常に心の準備が必要です。

 

とはいえ、いざその時になってみなければ、覚悟なんてできないものです。

 

今回は、ゴールデンレトリバーのはるくん、11歳の元気でやんちゃな男の子のお話です。

 

2023年12月17日の夕方に急なふらつきを認め、かかりつけ動物病院、夜間救急の動物病院と通院し、肝臓腫瘍が見つかりました。

 

積極的な治療ではなく、余生を穏やかに過ごさせてあげるために、在宅医療に特化した当院の往診を希望され、2024年3月1日から在宅緩和ケアを開始し、3月7日の朝、リビングでそっと眠りにつきました。

 

はるちゃん①.jpg

 

既往歴

ガクッと状態が悪くなった2023年12月17日の朝までは、いつも通りお散歩にも行けたし、ご飯だってモリモリ食べられていたとのことでした。

 

夕方になるとなんとなく体調が悪そうになりふらつきも認め、夜になると、起き上がるのもギリギリなほどだったとのことでした。

 

翌日にかかりつけの動物病院(江戸川区)に連れて行ったところ、血腹を認め、そこでは精査できないとのことから、精査できる動物病院の紹介受診か様子見の2つからの選択を迫られ、頑張らせるのはもう可哀想だと判断し、内服薬で様子をみてあげることにしました。

 

2、3日すると元気さが戻り始め、1週間ほどで普段通りまで回復したとのことでした。

 

そのまま状態が安定した日々を過ごせていましたが、2ヶ月後の2月22日の夕方また突然立ち上がれなくなり、夜間救急受け入れが可能な動物病院に通院したところ、肝臓がんが発覚しました。

 

中高齢の大型犬で、急な体調不良を見せた時は、常に「がん」の可能性を疑ってあげましょう。

 

また、大型犬で立ち上がれない場合に、持ち上げて連れて行くことが難しい場合もあり、様子見してしまうことが多いと思います。

 

しかし、急激な変化は怖い場合が多いので、すぐに獣医師に診てもらうようにすることを推奨します。

 

もう十分頑張って幸せをくれたはるちゃんに無理させたくないと考え、攻めた治療ではなく、緩和ケアを選択されたとのことでした。

 

処方された内服薬を飲ませながらの緩和ケアが開始され、このまま家で看取る覚悟をされたとのことでした。

 

しかし、内服薬が徐々に飲ませづらくなってきて、体調の低下も著しくなり、今の状態を少しでも楽にさせてあげる方法はないかと考え、当院までご連絡をいただきました。

 

食欲廃絶、立ち上がれないということもあり、スケジュール調整ができたため、当日のうちにお伺いさせていただきました。

 

初診(往診1日目)

お伺いすると、玄関まで、なんと迎えにきてくれました。

 

人がとても好きだということもあり、血圧が上がってくれたのかもしれません。

 

一通り挨拶が終わると、ご飯まで食べてくれました。

 

食べてる姿を見せたかったのかもしれません。

 

お話をお伺いすると、徐々に元気さを取り戻してきて、散歩に行けるほどまでにも回復をするが、急にまたガクッと下がる、ということを繰り返しているようでした。

 

病態から考えて、おそらくガクッとしたタイミングで腹腔内出血を起こして貧血になっていると推測しました。

 

内服薬を飲ませられない可能性が高いこともあり、この日から、投薬を目的とした皮下点滴プランを作成しました。

 

大型犬で、体重も37kgくらいと大きいこともあり、内服薬にすると10粒以上は飲ませないといけません。

 

これがもし、注射薬への変更が可能なもので代用できるのなら、短時間の皮下点滴によるストレスだけで、何種類あってもほぼ100%投与することができます。

 

実際に皮下点滴で投与してもらうと、さすがの大型犬です。

 

全く動じずに受け入れてくれました。

 

朝夜2回の皮下点滴で、医薬品も複数種類使用しますが、これで状態が安定するならばと願い、この日の診察を終了しました。

 

血液検査も実施しましたが、全く動じずに受け入れてくれていました。

 

抱っこして体重測定を行うのですが、抱っこが一番嫌がっていましたね。

 

再診(往診2日目)

初診に続き、翌日も訪問させていただきました。

 

前日は夕方の訪問だったこともあり、朝分の皮下点滴が実施できたかどうか、もし難しかったのであれば、何が、どんな風に難しかったのかなどをヒアリングさせてもらいました。

 

朝分の皮下点滴、何事もなく実施できたとのことでした。

 

通常であれば、安定していることを確認すれば、この次の診察を数日あけてお伺いするのですが、はるちゃんの場合には鎮痛薬を微量に使用していることもあり、ふらつきや意識レベルの変化などを観察するために、また翌日の診察を組みました。

 

腹部に軽度の液体貯留、胸部に微量の液体貯留を認めましたが、特別穿刺などはしないこととしました。

 

再診(往診3日目)

症状もなく、安定して元気とのことでした。

 

この病気が発覚してから、毎日体調が悪そうだったのに対し、在宅医療を始めてからは元気さを取り戻し、お散歩に行ってトイレをしっかりするまでに戻れたとのことでした。

 

肝臓腫瘍からの出血が落ち着いていることと通院から在宅医療への切り替えは直線では繋がることはありませんが、穏やかな余生を過ごせていることと、在宅医療への切り替えは、あながちたまたまではないと感じています。

 

注射薬を用いた皮下点滴プランも無事にこなせるようになり、2日分をお渡しし、次回は2日後としました。

 

この日の超音波検査では、腹部の液体貯留がやや減少していることに対し、胸部の微量だった液体貯留が少し増加を認めました。

 

はるちゃん③.jpg

 

再診(往診5日目)

前日の夜から急に立てなくなってしまったとのことでした。

 

エコーを当てると、腹部の液体貯留が重度であることが認められました。

 

肝臓腫瘍からの出血による血腹です。

 

往診では、腹腔内出血を止めることはできません。

 

腹腔内出血の原因や、その時の状態、病気の種類や犬猫の年齢などによっては、開腹して出血点を探し出し、止血処置を施します。

 

しかし、在宅緩和ケアの現場では、血腹していても、それによってこれ以上出血が出づらくなっているのであれば、抜去処置は行わないこともあります。

 

ただ、今回の場合は、一部抜去してあげることで胃の圧迫や重さを軽くできることを期待し、腹水抜去を実施しました。

 

獣医師1人と愛玩動物看護師3人の全員体制で訪問できたこともあり、2人が保定、1人が酸素管理、1人が抜去の役割を担うことができました。

 

結果、1.3Lもの腹水を抜去するまでにとどめ、その性状はほぼ血液で間違いありませんでした。

 

緩和を目的とした抜去後、はるちゃんは立ち上がることができ、いつものお皿のところで身を飲む姿を見せてくれました。

 

3日後に診察を組み、この日の往診は終了としました。

 

はるちゃん②.JPG

 

この日から安定した時間が続き、ご飯もしっかりと食べてくれたとの事でした。

 

3月6日の朝までは元気さを取り戻しつつある姿を見せてくれていましたが、お父さんが帰宅される夕方にはガクッと下がっていたとの事でした。

 

そして翌日、の2024年3月7日の朝、家族が見守る中、静かに眠りにつきました。

 

たまたまお父さんがお休みで、一緒にいられる時間を選んだのかもしれません。

 

はるちゃん④.jpg

 

まとめ

 

大型犬を迎える以上、大型犬には腫瘍が多いこと、そして立ち上がれなくなった時には力が必要になることを想定していなければいけません。

 

もし人手がなく、立ち上がれなくなった場合にどうしようもできないと、今のうちから予想される場合には、早い段階で往診専門動物病院、または往診可能な動物病院で、一度診察を受けておくことをお勧めします。

 

この子たちの時間の最後が、当たり前の日常の中で過ごせるよう、ペットの在宅医療、在宅緩和ケアが広く普及されて行くことを願っています。

 

東京、千葉、埼玉、神奈川にお住まいの場合には、私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室がご自宅まで訪問させていただきます。

 

最後の時間を少しでも快適に過ごさせてあげられるように、一緒に頑張りましょう。

 

はるちゃん⑤.jpg

 

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猫ちゃんの多くは動物病院への通院が難しく、その中でも頑張って通院されるご家族様はたくさんいます。

 

ただ、もう治らない病気を抱えたり、体力的にキツくなった時には、在宅医療に切り替えてあげることも一つの手段です。

 

犬猫の在宅医療は発展途上であるのは確かであり、今後普及してくれるかどうかは、まだまだ不確かな状況です。

 

それでもかかりつけの動物病院に往診してくれるかどうかを確認し、難しいようであれば往診ができる動物病院を早々に探しておくことをお勧めします。

 

今回は、重度の黄疸を抱えた猫のはなちゃんの3回目です。

 

初診でぐったりしており、検査にて甲状腺機能亢進症が見つかり、その治療を実施したところ元気さを取り戻してきたことで、もしかしたらこのまま回復してくれるかもしれないと期待した矢先、状態が暗転しました。

 

2024年3月11日、お母さんの見守る中、眠るように旅立ちました。

 

はなちゃんの診療日誌、最終章を始めます。

 

はなちゃん①.jpg

 

再診(診察24日目)

前日から調子が悪かったこともあり、夜中にご連絡をいただきました。

 

折り返しができたのはこの日の朝で、調子が悪く、吐いてしまったというものでした。

 

日中はお仕事があるため、夕方のお時間で調整したところ、夜間の時間で予約をお受けすることができました。

 

その日の夜に往診で訪問すると、少し元気のないはなちゃんがいました。

 

お話をお伺いすると、前日からなんとなく体調の変化に気づいていたが、運動量としてはそこまで変わっていなかったとのことでした。

 

しかし、今朝になるとじっとして動かなくなり、朝2:00に少量のドライフードを多部田ことを最後に、食べたそうになくが食べられないという状況だったとのことでした。

 

排便も前日が最後で、尿量も減り、また濃い黄色のおしっこになったとのことでした。

 

飲水量も減っているということもあったので、利尿剤をカットしたこともあり、もしかすると尿量が減った原因は単純に利尿剤をカットしたからと考えたかったですが、黄疸尿を見たことがあるお母さんからのお話でしたので、また黄疸が始まったことを瞬時に悟りました。

 

また、制吐剤が入っているにもかかわらず、嘔吐を認めました。

 

超音波検査にて胃から十二指腸にかけて、内容物の鬱滞を確認し、腸管の動きが悪くなってきたことを考え、一部制吐関連の医薬品を変更し、腸管の動きが良くなることを期待しました。

 

同時にステロイドの用量を増やし、下がってしまった状態が、また安定を取り戻してくれるように祈りました。

 

翌日の朝までに1口も食べなかった場合には、翌日の夜間にお伺いすることとしたのですが、翌朝少しだけ食べてくれたことを認めたため、少し様子見としました。

 

再診(診察26日目)

前回の結果で、腎数値が大幅下がって参考基準値内に入っていました。

 

そして、肝数値が一気に上昇し、黄疸が出始めました。

 

超音波検査にて胃から十二指腸にかけての鬱滞に、変化はありませんでした。

 

ここまで急激に腎数値が改善するのは珍しいことであり、違和感を覚えました。

 

当初考えていた、甲状腺機能亢進症によって肝負荷が上がり肝障害を発症し、黄疸発症を起こした。また、慢性腎臓病はマスクされた状態だったこともあり、甲状腺機能亢進症のコントロールによって、慢性腎臓病が表に見えるようになった、というストーリーは否定的であると考えました。

 

血栓によって肝臓が障害され黄疸が発症し、次に腎臓が障害されて腎数値が一気に上がってきた、というストーリー変更が起こりました。

 

他の血液検査結果を踏まえ、腫瘍が隠れていることを考えました。

 

甲状腺機能亢進症は、別途発症していたにすぎなかったと結論づけました。

 

過去症例からの経験則から、肥満細胞腫とリンパ腫が挙げられますが、その両方ともに得られるはずの画像所見は認めませんでした。

 

ただ、精査が叶わないのが在宅医療であり、もう麻酔をかけた精査を求めないのが、ペットの終末期です。

 

状態が下がっていることから、無理に内服させなくてもいいサプリは休薬とし、ステロイドを増やして、回復してくれることを祈りました。

 

再診(診察29日目)

肝数値がさらに悪化していること、黄疸もさらに強くなっていることが発覚しました。

 

昨日から元気がなく、ご飯の催促も昨日少しだけであり、今日は全くないとのことでした。

 

前日の排便が最後で、少量のだけで出ていました。

 

2日前に嘔吐があり、エコーに写っていた胃の内容物が出てきたのだと思われました。

 

その分だけ胃に空間ができ、ご飯を食べられていたのだと考えました。

 

消化管の通過障害を伴う疾患はたくさんあります。

 

病気にもよりますが、完全閉塞を伴った場合でもう治る見込みがない場合、ご飯に対する考え方は異なります。

 

おそらく、多くの獣医師の意見は、食べても吐くだけであり、吐くのは辛いから、もう食べさせないであげましょう、というものです。

 

食べても吐くだけだとは思います。

 

それでも、食べたいという本人の意思を尊重してあげたいです。

 

在宅緩和ケアでは、動物たちがどうしたいのかに委ねるように伝えています。

 

強制給餌はしないほうがいいです。

 

ただ、食べたいのであれば、食べさせてあげてください。そのように伝えています。

 

はなちゃんも例外ではなく、食べられそうであれば食べさせてあげてくださいとし、この日の診察を終了しました。

 

再診(診察32日目)

 

2024年3月9日の土曜日の11時に訪問して、はなちゃんの様子を診させていただいました。

 

そこにいたのは、ぐったりしたはなちゃんでした。

 

はなちゃん3-①.png

 

こたつの中にいつも隠れているのに、この日はこたつから頭だけ出して、僕らの訪問を待っていてくれました。

 

もう何も食べなくなり、血圧も下がっていることを認め、検査をやめることとしました。

 

平日は朝から夜までお仕事のお母さんでしたが、翌週の月曜日はたまたまお休みが取れていたとのこともあり、今日から3日間は一緒にいられるとことでした。

 

次回の診察はその翌日の火曜とし、診察を終了しました。

 

 

2024年3月11日(月)の早朝

お母さんが見守る中、はなちゃんは眠りにつきました。

 

本当であればお仕事に向かわれてしまうはずだった月曜日。

 

きっとはなちゃんがこの日を選んで、お母さんがお休みを取れるように仕向けてくれたのかもしれません。

はなちゃん2-③.png

 

 

犬猫と暮らすご家族様へ

どんな命でも、いつかはお別れを迎えます。

 

そして、そこには旅立つ命以外に、置いて行かれた存在ができます。

 

食い止めることは不可能であることから、最後にどこまで、その子と向き合えたのかが大切だと思っています。

 

最後はどこで、どんな風に看取ってあげたいのか。

 

考えるのはいつからでもいいですが、早いに越したことはありません。

 

いつまで通院させるのか。

 

いつまで治療をするのか。

 

いつまで薬を飲ませるのか。

 

いつまでご飯を食べさせるのか。

 

誰がどこまで看病にあたれるのか。

 

いつも診察の時に、お母さんの目を見ています。

 

きっとみんな寝てないんだろうなという目をしていて、大丈夫ですか?、という問いかけに、みんな、大丈夫です。と言います。

 

簡単な最後なんてありません。

 

通院が難しくなることを想定し、近くにある往診可能な動物病院、または往診専門動物病院で、早めに一度診察を受けておくことをお勧めします。

 

通院から在宅に切り替えるタイミング、それは余生を楽に過ごさせてあげたいと考えた時からなのかもしれません。

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前回のブログでは、重度の黄疸を抱えた日本猫のはなちゃんに、甲状腺機能亢進症が見つかり、その治療を行うことで肝数値の改善と黄疸の消失までを認めることができたところまでを書かせていただきました。

 

前回のブログはこちら

 

状態も改善し、元気さを取り戻していた最中、今度は腎数値が徐々に上がってきて、その後急激に腎数値が改善したと思えば、同時にまた肝数値が一気に上がり、黄疸も進み、拡張した胃と十二指腸を確認しました。

 

そして、2024年3月11日、お母さんの見守る中、眠るように旅立ちました。

 

元気な姿をまた見られてからの状態悪化。

 

緩和ケアの現場では、1日1日の変化が大きく、また日内変動を見ても、とても大きいことが多々あります。

 

はなちゃんの最後の日までを描かせていただきます。

 

はなちゃんのご冥福を心から祈ります。

 

はなちゃん2-①.jpg

 

再診(診察8日目)

この日のはなちゃんは、前回よりも元気さが戻っており、キャットタワーやダイニングテーブルにも飛び乗れるようになっていたとのことでした。

 

食欲も旺盛であり、排便もやや軟便ではありましたが、ちゃんと出ていました。

 

おしっこの色も、黄色みが強かった(黄疸色)頃と比べ、だいぶ元の色に戻ってきているとのことでした。

 

前回の診察時、体重が急激に増加と、検査時に下側の前肢に浮腫あることを確認しました。

 

調子よく進んでいたものの、全身的にも浮腫があると判断されました。

 

追加した利尿剤の効果もあり、今日まで尿量は多かったとのことでしたが、お水もちゃんと飲めており、前回認めた浮腫も取れていることを確認しました。

 

在宅緩和ケアで実施している1日2回の皮下点滴の中に、利尿効果のある医薬品を使用することで、浮腫の改善を図ることに成功しました。

 

この浮腫改善対策が功を奏し、四肢のむくみもなく、また体重も通常の幅での増加となっており、体がちゃんと栄養吸収できていると判断しました。

 

ちなみに、初診時が2.1kg、4日後に2.6kgと急激な増加を認めなり、利尿効果を追加したこの日は2.4kgでした。

 

超音波エコー検査所見は、特別な変化なく、経過良好でした。

 

はなちゃん2-②.png

 

再診(診察12日目)

この日も大きな変化ななく、元気食欲も安定したはなちゃんに会えました。

 

前回行った血液検査では、肝数値は徐々に改善してきていましたが、腎数値が徐々に上がってきたことを認めました。

 

甲状腺機能亢進症がある場合には、甲状腺機能亢進症の薬を飲むことで、甲状腺ホルモンの生成を抑制します。

 

甲状腺ホルモンが高すぎたことで、異常な代謝が起こり、心臓への負荷、肝臓やその他臓器への負荷が上がることがネガティブ側面ですが、高齢の猫ちゃん、特に10歳以上の猫ちゃんでは、この病気によって活力をサポートしてもらっている、という雰囲気をよく見受けます。

 

そして、甲状腺機能亢進症が隠れている場合には、腎数値がそこまで悪くなく見えてしまうという現象を起こします。

 

今回、甲状腺機能亢進症のコントロールを始めていたこともあり、最初から腎臓の数値が上がってくることを想定し、内服薬や皮下点滴などによって、先に対策は打ててはいました。

 

ここで認めた腎数値の上昇は、かなり高かったものの、状態も安定していることから、大きく1回の皮下点滴量を増やすことなく、現状維持としました。

 

また、利尿剤は、腎臓病を悪化させる可能性があります。

 

ただ、はなちゃんのように、全身の浮腫を疑う症例では、すぐにカットすることは危険であると判断し、この日から半量まで下げることで、浮腫の再発が起こるかの様子を見つつも、腎数値悪化に対しての対策としました。

 

なお、腎臓のサプリとして2種類処方しました。

 

詳しくは書きませんが、1つはBUNを下げることが目的であり、もう2つはリンを下げることが目的です。

 

食べられるうちは頑張ってもらい、無理に飲ませないでいいので、ということで処方しています。

 

早期であれば、療法食だけでもコントロールが効きますが、緩和ケアの時は食欲の維持が何よりも大切なところだったりしますので、できれば療法食、でも無理は絶対にしないで、好きなもので食欲を刺激してあげます。

 

超音波検査所見は、特別な変化なく、経過良好でした。

 

はなちゃん2-③.png

 

再診(診察19日目)

この日のはなちゃんは、さらに元気さが増しており、高い棚の方までジャンプして登れていたとのことでした。

 

食欲も旺盛で、排便、排尿も問題ないとのことでした。

 

サプリメントも頑張って飲んでくれたこともあり、腎数値がやや改善してくれたことを受け、このまま安定してくれることを期待していました。

 

肝数値、黄疸数値ともに改善傾向でした。

 

この日から、利尿剤は頓服とし、常用から外すこととしました。

 

はなちゃんの場合、頓服使用としての利尿剤は、①浮腫を認めたとき、②急げきな体増加を認めた時、の2つの事象としました。

 

また、ステロイドの種類も変更し、カットできるようになることを目指して漸減していくこととしました。

 

超音波検査所見でも特別な変化なく、経過良好でした。

 

しかし、体調の変化が訪れたのは、この診察から4日後の2024年2月28日でした。

 

 

ここまでのまとめ

医薬品は選び方や使い方で期待される効果に大きな変化を起こします。

 

人であれば飲んでくださいと言えば、理性のある方であれば、飲んでくれるものです。

 

しかし、犬猫は違います。

 

特に猫ちゃんでは、内服薬のほとんどを受け付けてくれないものです。

 

少量であればおやつなどに混ぜて飲ませられるかもしれませんが、緩和ケア、特に終末期を見据えた時には、体から発せられる強いサインを押さえ込むのに、複数の医薬品を使わなければいけません。

 

体調の変化に合わせて、医薬品の種類や剤形などを選択するために、その時体調が安定していなければ、診察の間隔は短いものとなります。

 

また、ペットのことだけでなく、その横で必死に看病してくれるご家族様のメンタル面を支えなければいけません。

 

それが、私たちが目指す在宅緩和ケアです。

 

次回のブログで、診察24日目から最後の日までです。

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猫ちゃんの病気として有名なものに、甲状腺機能亢進症があります。

 

☑︎ご飯をよく食べる割には、痩せたような気がする。

 

☑︎毛並みが粗造になった気がする。

 

☑︎気が立ってるような気がする。

 

など、わかりやすい所見はいくつかありますが、中にはほとんど症状を表さないのに、甲状腺機能亢進症を発症している猫が一定数いる印象を受けています。

 

通常の動物病院では、血液検査項目をギリギリまで絞って検査されることが多いですが、これは診療費を抑え込むために、獣医師が必死に考えて項目を減らしてくれているからだと考えられます。

 

しかし、その分見落としが出るかもしれないことを理解していなければいけません。

 

追加検査が必要にあれば、また通院しなければいけないし、また針刺しという侵襲性のある行為を行わなければいけないので、できれば1回で広く検査してあげたいという方と、とはいえ金額の安さを重視する方と、二分されると思います。

 

通院頻度が高くなり、針刺し頻度も高くなることは、犬猫にとってストレスであることに間違い無いと考えています。

 

もし検査項目をもっと広く見てもらいたい場合には、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。

 

今回書かせていただく症例は、重度の肝障害と黄疸を伴い、かかりつけの動物病院からは何もできないのでこのまま旅立つのを待つしかないとされた猫のハナちゃん、14歳の女の子の緩和ケアについてです。

 

はなちゃん①.jpg

 

当院での在宅緩和ケアでは、最初に広く検査をさせていただきデータを集め、データに基づいて、在宅緩和ケアプランを構築していきます。

 

検査結果から、隠れていた病気が見つかり、毎日の点滴によって、状態が調子の良かった頃のように戻ってきてくれています。

 

検査項目を絞ることだけが正義じゃないかもしれません。

 

既往歴

2021年に腎臓の数値が悪いとされ、血管拡張薬の内服を開始と、2週間に1回の通院で、ビタミン剤などを入れた皮下補液を実施するように指示されていたとのことでした。

 

2024年1月20日の段階では2.6kgあった体重が、2月2日から急に食べなくなってしまったことを機にガクッと下がり、2月4日時点では2.1kgまで減っていました。

 

また、この日は検診日だったこともあり動物病院に通院させて検査したところ、肝臓の数値が著しく悪化していることを指摘され、余命1週間とされたとのことでした。

 

今まで肝臓について何も指摘されてなかったこともありましたが、今回も特別今後の方針を示してくれず、ただ余命だけを言われてしまったことから、もし厳しいのであれば、もう苦手な通院はさせないで、在宅緩和ケアに切り替えたいという想いで、当院までご連絡をいただきました。

 

初診(診察1日)

見るからにぐったりしていたこともありましたが、血圧がしっかりしていることから、採血、そして超音波検査を実施することを踏み切りました。

 

猫のはなちゃんは、特別大きく嫌がることなく終始検査に協力してくれたこともあり、検査にかかる時間は、おおよそ15分ほどで完了することができました。

 

検査後も、好きなお部屋にトコトコと歩いて行き、そこでくつろいでいてくれましたので、現在予想している内容と、今後の流れ、今後起こりうることやその時はどうすべきなのかなど、幅広くお話しすることができました。

 

また、すでに苦い内服薬を飲ませるには厳しい状況だったこともあり、苦味のほぼない内服薬のみで作成したシロップ剤を1種類、朝晩の投薬と補水を目的とした皮下点滴としました。

 

皮下点滴トレーニングも問題なく完了し、医薬品もお渡し、この日から猫のはなちゃんの在宅緩和ケアが開始されました。

 

はなちゃん②.jpg

 

再診(診察5日目)

状態がかなり安定しており、以前のはなちゃんとは別の猫ちゃんのような毛並みにまで回復している姿を見せてくれていました。

 

3日間も食べられなかったご飯を食べてくれ、お水も飲め、ジャンプまでできるほどまでに改善してくれたとのことでした。

 

初診時に実施した血液検査結果では、肝臓の数値がかなり高く、黄疸も強く出ていることがわかりました。

 

心臓の数値も高かったのですが、甲状腺の数値がかなり高いことが検出されました。

 

この日から、甲状腺の薬、心臓の薬を開始して、更なる安定を図ることとしました。

 

 

はなちゃんの在宅緩和ケア

 

もう治らない、余命1週間と言われて家に帰った後も、苦しい時間は続きます。

 

今どんな状態で、最後の日までの間にどんな変化が起こり、どんな症状を出すのか。

 

その時どう捉えて、何をしてあげられるのか。

 

治療が叶う状態であれば、ある程度の診療時点での説明で十分かもしれませんが、緩和ケア、時に終末期ケアの段階では、未来に起こり得る変化までをお伝えしておく必要があります。

 

本当に今の準備だけしかできないのか。

 

不安は募る一方であり、その不安は自然に減少することはないです。

 

猫のはなちゃんの場合には、たまたま東京世田谷区だったこともあって、私たちがお伺いすることができ、在宅緩和ケアプランを組むことができました。

 

もしお伺いできないエリアにお住まいの場合には、お薬だけを受け取って帰るのではなく、不安な気持ちを少しでも払拭できるように、かかりつけの獣医師に全部聞いてもらうようにしましょう。

 

きっとご家族様のお力になってくれるはずです。

 

最後まで粘り強く、少しでも緩和できるよう、方法を追求してあげましょう。

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