本年も、多くのご家族様と動物たちのご縁をいただき、心より感謝申し上げます。
2024年12月アーカイブ
2024年の年末年始の診療のお知らせ
休診期間 2024年12月28日〜2025年1月3日
2025年も宜しくお願い致します。
わんにゃん保健室 スタッフ一同
1. 猫の心筋症と胸水貯留:症状とケアの基本
心筋症による胸水貯留とは?
猫ちゃんの心筋症は、高齢の猫ちゃんや特定の遺伝的要因を持つ猫ちゃんに多く見られる病気で、心臓の機能が徐々に低下していく疾患です。
この病気が進行すると、心臓のポンプ機能が弱まることで血液循環が悪化し、胸の中に液体(胸水)が溜まる胸水貯留が起こることがあります。
胸水貯留は、猫ちゃんの肺を圧迫し、呼吸を難しくするため、以下のような症状が現れることが一般的です。
①呼吸が浅く早くなる(頻呼吸)
②お腹を使って呼吸をする(努力呼吸)
③動きたがらず、ぐったりした様子になる
④食欲の低下や元気の消失
これらの症状が見られた場合、早急な対応が必要です。
胸水抜去の役割とその効果
胸水貯留が確認された場合、緊急措置として胸水抜去を行うことがあります。
胸水抜去とは、細い針を胸に刺して溜まった液体を排出する処置のことです。この方法には以下のようなメリットがあります。
①呼吸がすぐに楽になる
胸水による肺の圧迫が解消され、猫ちゃんが落ち着いて呼吸できるようになります。
②短時間で効果を実感できる
処置後、即座に呼吸状態の改善が見られることが多いです。
ただし、この処置は猫ちゃんにとって少なからず痛みを伴うため、鎮静や鎮痛の薬を併用してストレスを最小限に抑えることが重要です。
一方で、状態が悪化して鎮静に耐えられない場合には、鎮静なしで胸水抜去を行うことも選択肢の1つとなります。
医薬品でのコントロールが可能な場合
胸水貯留が心筋症によるものであれば、医薬品で胸水の貯留を抑えられることが多くあります。
特に利尿剤を使うことで、体内の余分な液体を排出し、胸水の量を減らすことが期待できます。医薬品によるコントロールには以下のような利点があります。
①非侵襲的(針を使わない)
猫ちゃんに針を刺さずに済むため、痛みやストレスを減らせます。
②家庭でのケアが可能
往診で処方された薬を自宅で投与することで、病院に頻繁に通う必要がなくなります。
ただし、医薬品でのコントロールは、猫ちゃんの体質や病状によって効果に差が出るため、獣医師による継続的な経過観察が必要です。
また、使用する医薬品にもよりますが、カリウムの喪失が著しく目立つことがあるため、週1回は血液検査で電解質を確認することをお勧めします。
胸水が減っていくかどうかを定期的に確認し、必要に応じて薬の量や種類を調整することで、より良い状態を維持できます。
猫の心筋症と胸水貯留の基礎知識
猫ちゃんの心筋症による胸水貯留は、進行性の心臓病の一環として発生することが多いですが、適切なケアを行うことで猫ちゃんの呼吸を楽にし、穏やかな日々を過ごさせてあげることが可能です。
次のセクションでは、在宅緩和ケアにおける「往診」の役割や具体的なケアの方法について詳しくご紹介します。
2. 在宅緩和ケアがもたらす安心
通院の負担を減らす「往診」のメリット
猫ちゃんにとって、通院は大きなストレスになることが多いです。
キャリーケースに入れられること、移動中の振動や音、病院の待合室で感じる緊張感など、すべてが猫ちゃんの負担になります。
特に心筋症を抱えた猫ちゃんは、体力が低下していること、そして持続的な興奮は心臓へのダメージが懸念されます。
通院によるストレスは持続的な興奮状態を作ってしまうことから、病状を悪化させるリスクになってしまうこともあります。
一方で、動物病院への通院の必要がない在宅医療(往診など)であれば、猫ちゃんにとって通院のストレスを与える必要がないので、以下のような点で、動物病院への通院と比較すると、より安心した環境で診察を受けさせてあげることが可能です。
①慣れた環境で診察を受けられる
猫ちゃんが普段過ごしている自宅での診察は、ストレスを最小限に抑えます。
②移動のリスクを排除
キャリーケースや車での移動が不要になり、呼吸状態が悪い時でも安心です。
③猫ちゃん本来の状態を観察できる
緊張せずリラックスした猫ちゃんの様子を獣医師が確認できると言いたいところですが、実際は緊張していると思います。
ただし、生活環境を見ることができるので、普段の姿をより想像しやすく、それによってアドバイスも変化していきます。
猫ちゃんのストレスを最小限にするケアの工夫
在宅緩和ケアでは、猫ちゃんが抱えるストレスや苦痛を軽減することが最も重要です。
心筋症や胸水貯留を抱える猫ちゃんにとって、ストレスの軽減は病状の安定にもつながります。
具体的な工夫には次のようなものがあります。
①薬の味や形状を工夫する
内服薬が苦手な猫ちゃんには、より飲みやすい無味無臭のものだったり、薬の形状、注射薬など、幅広く柔軟に提案します。
②診察時の配慮
獣医師が猫ちゃんの落ち着いた状態を保つため、診察や処置の際にゆっくりと時間をかけて接します。
③鎮静・鎮痛薬の活用
胸水抜去などの処置が必要な場合には、可能な限り少量の鎮静や鎮痛薬を使い、猫ちゃんが感じる痛みや不安を減らします。
これらの工夫を行うことで、猫ちゃんと飼い主様の双方にとって、より穏やかなケアが実現します。
鎮静と鎮痛の重要性:胸水抜去時の配慮
胸水抜去は、猫ちゃんにとって一時的な痛みや不快感を伴う処置ですが、呼吸を楽にするためには非常に重要なケアです。
在宅緩和ケアでは、胸水抜去を行う際に次のようなことに注意しながら進めていきます。
①鎮静で痛みと恐怖を減らす
胸水抜去の際には強い痛みを感じるため、鎮静薬と併せて鎮痛薬を併用することで、処置後の鈍痛や不快感を軽減します。
また、猫ちゃんが怖がらないよう少量の鎮静薬を使うことで、処置中の緊張や恐怖を最小限に抑えることができます。
②飼い主様への手順説明
これから何が行われるのかが不明なままだと、見守るご家族様も不安が高まることと思います。
鎮静をかける前に、鎮静処置についてまずはご説明させていただき、実際に鎮静をかけた後にどのくらいの時間で何が起きて、処置はどんな道具でどんなことをするのか、目が覚めるのはどのくらい経ってからか、その後のことなど、手順ごとに詳細に説明させていただきます。
ご家族様が安心することで、猫ちゃんの感じる緊張感も和らぎます。
在宅緩和ケアは安心の味方
在宅緩和ケアは、猫ちゃんと飼い主様ができる限り穏やかに日々を過ごせるように設計されたケア方法です。
次のセクションでは、医薬品による胸水のコントロールや、事例から学ぶ緩和ケアの選択肢について詳しくお伝えします。
3. 胸水貯留と医薬品での対応
医薬品の効果が期待できる心臓病由来の胸水貯留
猫ちゃんの心筋症に伴う胸水貯留では、利尿剤をはじめとする医薬品によって、胸水の量を減らすことが期待できます。
心臓病が原因の場合、胸水の原因は体内の血液循環の滞りにあります。そのため、体に溜まった余分な液体を尿として排出することで、胸水を減らし、呼吸を楽にすることができます。
以下のようなタイミングで利尿剤を用いた治療をすることがあります。
①初期段階の胸水貯留
胸水貯留の出始めだったり、初期段階であれば、医薬品の効果で胸水抜去を行わずとも胸水が減少〜消失することがあります。
食欲が維持できいて、胸水もコントロールできていれば、胸水抜去を実施せずに、内服薬だけでの長期的なコントロールが期待できます。
②中等度以上の胸水貯留
呼吸状態を改善させないと食欲などの一般状態の改善は見込めないと判断した場合に、まずは胸水抜去してあげます。その後、利尿剤を使用することで、胸水の再貯留を防ぎ、呼吸状態を安定させることが期待できます。
腫瘍が原因の場合:医薬品治療と家族の選択肢
胸水貯留は心筋症以外にも、腫瘍が原因で発生することがあります。
例えば乳腺腫瘍などで、腫瘍が進行した場合に胸腔内に転移を起こし、血混じりの胸水を引き起こすことがあります。
ただ腫瘍性の胸水では、利尿剤などの医薬品の効果が限定的であることが多いです。
「できるだけ猫ちゃんの負担を減らしたい」「薬で対応できるところまで頑張りたい」といったご家族様の意向に沿った治療計画を立てます。
まずは病状を説明させていただき、どこまで何をしてあげたいのかを教えてください。
その上で、最良となるプランを一緒に考えます。
心筋症と同じように、胸水抜去による呼吸状態の一時的な改善、その後に医薬品で胸水の再貯留をコントロールするという方法を取ることもあります。
このように、腫瘍が原因の場合でも、猫ちゃんやご家族様の希望に応じたケアを行うことで、負担を軽減しつつ最善の対応を目指します。
猫の心筋症による胸水貯留を起こした6症例
2024年に在宅緩和ケアで看取った猫ちゃんで、心筋症由来の胸水貯留と戦う6症例では、医薬品で管理したところ、全ての猫ちゃんで胸水の量が減少し、呼吸状態が改善しました。
この結果からわかることは、猫ちゃんの病状や体質に応じた医薬品の使用が非常に効果的であるということです。
猫ちゃんの状態に合わせた医薬品の使い方を検討することで、無理に痛いこと(胸水抜去)をしなくても、胸水のコントロールができる可能性が期待できました。
医薬品治療の注意点
利尿剤やその他の薬は、適切な量と頻度で使用しないと効果が弱まったり、副作用が出ることがあります。定期的に獣医師の診察を受け、薬の調整を行うことが大切です。
内服薬が難しい場合には、注射薬や皮下投与という選択肢もあります。
飼い主様が自宅で投与できるよう、往診時に具体的な指導を行います。
胸水貯留は抜去と医薬品の併用で
心筋症に伴う胸水貯留に対する内服薬などの医薬品の投与は、猫ちゃんの状態を大きく改善させる可能性が期待できます。
内服が苦手な猫ちゃんであれば内服薬だけでなく注射薬での投与を選択し、ご自宅で皮下点滴に混ぜて実施していくことで、投与が可能となります。
また、胸水抜去を併用することで、即時的な呼吸状態の改善が見込まれますが、胸水抜去には強い痛みを伴います。
鎮静下で行うなど、猫ちゃんとご家族様に最も負担の少ない方法を選ぶことが重要です。
次のセクションでは、内服薬や注射薬を用いたケアの工夫について、さらに詳しくご紹介します。
4. 内服薬が苦手な猫ちゃんでも安心のケアプラン
内服薬が苦手な猫ちゃんの課題
猫ちゃんは基本的に警戒心が強く、知らない物や嫌な味のする物を嫌がる傾向があります。
そのため、内服薬を与えることが飼い主様にとって大きなストレスになる場合が多いです。
特に心筋症や胸水貯留などの疾患を抱える猫ちゃんは体力が落ちているため、投薬そのものが負担になることもあります。
よくある内服薬の課題としては以下のようなものがあります。
①薬を嫌がり、口をしっかり閉じてしまう。
②投薬後に唾液を垂らす、吐き出す。
③投薬のたびに猫ちゃんがストレスを感じ、隠れてしまう。
④飼い主様自身が薬を飲ませることに不安を感じる。
こうした問題を解決するためには、内服薬に頼りすぎないケアプランを構築することが大切です。
内服薬と注射薬を使い分ける工夫
内服薬が苦手な猫ちゃんでも、医薬品を適切に投与する方法はいくつかあります。
重要なのは、猫ちゃんと飼い主様の負担を最小限にするために、薬の形状や投与方法を工夫することです。
比較的飲みやすい内服薬を選ぶ
①動物薬は結構飲ませやすい
動物薬は人薬と比較して、動物たちに取った飲ませやすいものになっています。
基本的には、苦味を抑えており、動物が好きなフレーバーを加味しているような印象です。
ただ、そのフレーバーが嫌で食べない場合もあるので要注意です。
②できることなら口腔内崩壊錠を選ぶ
使いたい医薬品にもよるのですが、通常の錠剤と比べて水に溶けやすく、また苦味がほとんどないのが特徴です。
普段動物病院で使用している医薬品と比べて、口腔内崩壊錠をお願いすると費用が高くなるので、費用感との兼ね合いで相談してみましょう。
③お薬のお供を選定する
投薬補助おやつは、ペット市場において大きくなっている分野の一つです。
つまり、それだけたくさんのご家族様が、ペットへの投薬に手をこまねているという証拠です。
特に、猫ちゃん用となると、本当にたくさんあります。
猫ちゃんが気に入る投薬補助用のペーストやおやつが見つかれば、そのおやつに混ぜるだけで、自然に薬を摂取してくれるようになります。
猫ちゃんの好みに出会えることを祈っています。
内服が難しい場合は注射薬を選択
内服薬を完全に拒否する猫ちゃんには、皮下点滴に混ぜる注射薬が効果的です。
これにより、薬のストレスを軽減しながら必要な治療を継続できます。
動物病院であれば診察代の上で、往診であればご自宅の中で獣医師が皮下投与の方法を飼い主様に指導します。
適切な器具の使い方や猫ちゃんを落ち着かせる方法を学ぶことで、自宅での投与がスムーズになります。
ストレス軽減のための皮下投与環境の構築
皮下投与を成功させるためには、猫ちゃんと飼い主様の双方が安心できる環境を整えることが重要です。
以下のポイントを抑えることで、投与時のストレスを最小限に抑えられます:
①猫ちゃんの安心できる場所で投与
猫ちゃんがリラックスできる環境を構築することで、成功率は上がります。
お気に入りのクッションやバスタオルなどで動きをある程度制限してあげることも大切です。
②1回あたりの処置時間はなるべく短く
手際よく投与を終えることで、猫ちゃんに余計なストレスを与えません。
③投与後のフォローをしっかり行う
投与後におやつや撫でる時間を設けることで、猫ちゃんに「処置が終わるといいことがある」と感じてもらいます。
ただし、嫌なことの後に、例えばチュールをあげると、嫌な思い出と繋がってしまい、チュールを食べなくなってしまう、ということも起こる可能性があります。
そのため、もし皮下点滴などの嫌な思いをさせた場合には、一番好きなものではなく二番目以降にまぁまぁ好きなものなどで機嫌を取ってあげることをお勧めします。
飼い主様の負担を減らすためにできること
猫ちゃんのケアを続ける上で、飼い主様が無理なく投薬や治療を行えるようにすることも重要です。
在宅緩和ケアでは、次のような工夫を行います:
①相談しやすい環境の提供
「薬を飲ませられない」「注射が難しい」といった悩みを獣医師に気軽に相談できる体制を整えます。
②定期的な往診で調整(在宅医療に切り替える)
内服薬や注射薬の効果を定期的に確認し、猫ちゃんの状態に合わせた薬剤や投与頻度を調整しましょう。
③ケアプランの柔軟な変更
飼い主様の状況や猫ちゃんの体調に合わせてケアプランを見直し、負担を軽減します。
安心のケアプランを在宅医療で構築使用
内服薬が苦手な猫ちゃんでも、投薬方法を工夫すれば、治療を無理なく継続することが可能です。
次のセクションでは、心筋症や胸水貯留における往診の役割と、その具体的なメリットについて詳しくご紹介します。
5. 猫の心筋症に往診を選んだ方がいい理由
通院ではなく往診を選ぶべき理由
心筋症や胸水貯留を抱える猫ちゃんにとって、通院は大きな負担となります。
特に症状が進行して呼吸が苦しい猫ちゃんや体力が落ちている猫ちゃんにとって、キャリーケースに入ることや病院までの移動、待ち時間そのものが大きなストレスを生み出します。
通院ではなく往診の方が適している理由は以下です。
①慣れた自宅で診察が受けられる
猫ちゃんは環境の変化に敏感な動物です。
病院の待合室での緊張や、知らない匂いや音に囲まれることは猫ちゃんにとって非常にストレスフルです。
往診では、猫ちゃんがリラックスできる自宅で診察や処置を受けられるため、猫ちゃんの体調への悪影響を最小限に抑えられます。
②呼吸が苦しい猫ちゃんにも安心
胸水貯留によって呼吸が苦しい猫ちゃんにとって、通院そのものが命に関わるリスクになることもあります。
往診であれば移動のリスクを完全に排除できるため、体調が不安定な時でも安心してケアを受けられます。
酸素室が必要な状況になった場合には、もう動物病院に通院することができないと思った方がいいです。
今後、呼吸状態が悪化した場合に、かかりつけの獣医師が往診してくれるのかどうかは、事前に伺っておくことをお勧めします。
③高頻度のケアも対応可能
心筋症や胸水貯留では、状態に応じて頻繁な診察や胸水抜去が必要になることがあります。
毎日のように通院するのは飼い主様にとっても猫ちゃんにとっても大きな負担ですが、往診であれば頻繁なケアも、通院の負担なく行えます。
④生活環境に合わせたアドバイスが可能
往診では、猫ちゃんが生活する環境を直接確認できます。
水飲み場や食事の配置、猫ちゃんが過ごしているスペースの様子を見ながら、具体的で実践的なアドバイスを行えるのも大きなメリットです。
自宅環境を見ながら診療を行えるというのは、往診ならではの強みです。
⑤飼い主様と猫ちゃんに寄り添ったケア
通院の場合、病院での診察時間が限られているため、細かな相談やケア方法の説明が不十分になることもあります。
往診では診療時間枠を十分に取り、飼い主様とじっくり話し合い、猫ちゃんの状態や飼い主様のご希望に合わせた最適なケアプランを提案できます。
なぜ当院が選ばれるのか?
往診を行う動物病院は増えていますが、当院が多くの飼い主様に選ばれる理由にはいくつかのポイントがあります。
①犬猫の在宅緩和ケアに特化した専門性
当院は、心筋症や胸水貯留を含む慢性疾患や終末期ケアに特化した診療を行っています。
緩和ケアにおいては、ただ病気を治すだけではなく、猫ちゃんと飼い主様ができるだけ穏やかな日々を過ごせるようなケアを目指しています。
②丁寧で柔軟なケアプランの提供
猫ちゃんの状態や飼い主様の生活状況に合わせた、柔軟で実現可能なケアプランを提供します。
例えば、内服薬が苦手な猫ちゃんには注射薬や皮下点滴を提案し、家庭でのケアがスムーズに行えるようサポートします。
一度決めた方針を変えたい場合には、都度診療時にご相談いただければ、柔軟に変更させていただくことが可能です。
③高い技術と豊富な経験
胸水抜去や皮下点滴など、猫ちゃんにとって重要な処置を数多く行ってきた経験を活かし、状態に応じた安心で確実な在宅緩和ケアを提供します。
必要に応じて鎮静や鎮痛を行い、猫ちゃんが感じる痛みや不安を最小限に抑えます。
④飼い主様との信頼関係を重視
往診では、飼い主様とのコミュニケーションが非常に重要です。
当院では、飼い主様の不安や疑問に丁寧にお答えし、猫ちゃんと飼い主様の双方にとって安心できるケア環境を整えることを心掛けています。
⑤東京・千葉・埼玉・神奈川をカバーする広範な対応エリア
当院は通常の往診専門動物病院と比べて、広範なエリアでの往診に対応しており、多くの飼い主様のご自宅へ訪問しています。
遠方の方でも気軽にご相談いただける体制を整えています。
在宅緩和ケアを通じて猫ちゃんと飼い主様の心を守る
心筋症や胸水貯留などの疾患を抱える猫ちゃんにとって、どのケアを選択するかは、体調や生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。
当院の往診では、通院による負担を減らし、猫ちゃんと飼い主様が穏やかな時間を過ごせるようにするための最適な選択をご提案させていただきます。
私たちの目標は、病気と向き合う猫ちゃんだけでなく、その猫ちゃんを支える飼い主様も含めて、心から安心できるケアを提供することです。
ぜひ、お気軽にお問い合わせいただき、あなたの猫ちゃんに最適なケアを一緒に考えさせてください。
私たちがお力になれることを心より願っております。
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腎臓病は高齢の猫で非常に多く見られる疾患です。
慢性腎臓病(CKD)は完治が難しい病気であり、進行を遅らせるためには定期的なケアが欠かせません。
しかし、通院そのものが猫にとってストレスとなることが多く、治療を続ける上での大きなハードルになる場合があります。
この記事では、「猫の腎臓病ケアを通院から往診に切り替えるべき理由」を中心に、往診で可能なケアやそのメリットをご紹介します。飼い主様が猫ちゃんと穏やかに過ごせる日々をサポートするための一助になれば幸いです。
猫の腎臓病における通院から往診への切り替えが有効な理由5つ
1. 通院が猫にとって大きなストレス
通院時にキャリーケースへ入れる、移動する、待合室で待つなど、猫にとっては多くのストレスがかかります。
腎臓病の猫は体力が低下していることが多く、通院によるストレスがさらに体調を悪化させる原因になることもあります。
2. 定期的なケアが必要なため、往診の方が継続しやすい
腎臓病の管理では、定期的な検査や治療が必須です。
最初は3ヶ月に1回の検査頻度であっても、状態が進行するにつれ、1ヶ月に1回、場合によってはそれ以上の頻度でのケアが必要になります。
往診であれば、通院の手間を減らし、治療を継続しやすくなります。
3. 自宅でリラックスした状態で診察可能
往診では、猫が自宅でリラックスした状態で診察を受けることができます。
キャリーケースや病院の待合室で緊張することなく、猫本来の状態を観察できるため、より適切な診断と治療が可能です。
4. 自宅環境に合わせたケアの提案が可能
往診では、猫が生活している環境を直接確認できます。
たとえば、食事の場所、水の配置、トイレの状況などを把握し、それに基づいた具体的なケアやアドバイスを提供することができます。
5. 移動リスクがないため体調が悪化している場合も対応可能
腎臓病が進行すると、猫は体力が低下し、移動が大きな負担になることがあります。
往診なら移動リスクを完全に排除できるため、体調が悪い時期でも適切なケアを提供できます。
定期検査の必要性と往診での対応
腎臓病の管理には、定期的な血液検査や尿検査が重要です。
これらの検査は、腎機能の状態を把握し、治療の効果を確認しながら進行を遅らせるために欠かせません。
検査内容
【血液検査】
BUN(尿素窒素)、クレアチニン、リン、SDMAなどの腎機能を示す値を確認します。
【尿検査】
尿比重や尿タンパク、尿中の細菌や結晶の有無を調べます。
これらの検査は、すべて往診で対応可能です。ご自宅で採血や採尿を行い、ストレスを最小限に抑えながら必要なデータを収集します。
検査頻度
【初期段階】
症状が安定している場合、3ヶ月に1回の検査を推奨。
当院では、腎臓病のステージ2〜3の始まりくらいが、ここに該当する印象です。
ただし、ご家族様の不安な様子やご希望に沿って、その頻度を上げることも可能ですし、逆に下げることもご相談いただけます。
【進行段階】
症状が進行した場合、1ヶ月に1回、場合によってはそれ以上の頻度で検査を行います。
ステージ4以降はここに該当すると思われます。
そのくらい日々の変化が激しくなり、また食欲減退や嘔吐、下痢または便秘などの消化と排泄の機能低下、機能異常が伴うのもこの頃です。
症状の変化が著しいため、ご家族様の心がついて来れないのも、またこの時期です。
今を受け入れるために、今がどんな状態なのかを都度ご説明し理解していただき、これから訪れる未来の変化について、対策を打っていくのもこの時期です。
皮下点滴の指導と処方の対応
腎臓病の猫において、皮下点滴は治療および緩和ケアの重要な柱となります。
腎臓の機能が低下すると脱水状態になりやすく、これを補うために定期的な点滴が必要です。
皮下点滴のメリット
腎臓病(腎不全)では、猫ちゃんは脱水傾向がより進行します。
皮下点滴を行うことで、経口補水(水を飲むこと)では補い切れない水分量をサポートし、脱水補正を図ることで、腎臓への負担を軽減します。
症状が悪化する速度を遅らせ、猫の生活の質(QOL)を向上させることを目的に、実施計画を作っていきましょう。
往診での対応
【皮下点滴の実施】
最初は獣医師が点滴を実施し、その後飼い主様自身で行えるよう指導します。
【器具の提供】
点滴セットや必要な器具をお渡しします。
【具体的な指導】
針の刺し方や点滴の量、猫が嫌がる場合の対処法など、基本的な実践的アドバイスを行います。
実施するのは診察台の上ではなく、ご自宅の中です。
実際に実施する環境や、家の中にあるもので、どこでどんな態勢で皮下点滴を打つといいのかなども、環境を見ながらご相談いただけます。
皮下点滴のトレーニングをしっかり受けることで、飼い主様が自信を持って実施できるようになります。点滴の量や頻度は猫の状態に応じて調整します。
内服薬や注射薬の処方も往診で対応可能
腎臓病の治療では、薬剤の投与が不可欠です。
多くの場合、以下のような薬剤が使用されます。
内服薬の種類
【リン吸着剤】
腎臓でのリンの処理能力が低下するため、食事中のリンの吸収を抑える薬です。
【血管拡張薬】
腎臓への血液供給を改善し、腎臓の負担を軽減します。
【胃腸薬】
腎臓病による嘔吐や胃腸の不調を改善します。
このほかにも、BUNを下げる(生成させないことを目的とした)サプリのようなものもあれば、吐くことを止める目的で使用する薬、血圧自体を下げてあげる薬、そして血栓予防など、幅広く存在します。
基本的には、どこの動物病院でも医薬品会社から購入することは可能。
往診切り替えの時には、今どんな薬をどのくらいの量と頻度で飲んでいるのか、また腎臓病に対する内服薬の投与経歴などをまとめておくと、より方針立てに役立ちますのでおすすめです。
往診での内服薬処方のメリット
猫ちゃんにとって飲みやすい形状(粉、液体、投薬補助おやつと組み合わせる方法など)を提案するだけでなく、少し単価は上がってしまいますが、苦味の少ない医薬品を選択し、ご提案させていただきます。
注射薬の使用
進行した腎臓病では、内服薬だけでは効果が不十分な場合があります。
この場合に、できる限り注射薬に変更し、皮下点滴に混ぜて投与することが可能です。
皮下点滴の頻度は投薬頻度に合わせて調整するため、基本的には1日2回になることが多いですが、1回量は少量の点滴になるため、皮下点滴時間は10秒程度で終えられます。
腎臓病は徐々に進行する病気です。
その過程で、貧血を起こすことがあります。
その場合には、当院だと造血ホルモン製剤を週1回の間隔で皮下投与していきます。
輸血も選択肢としてありますが、若い猫ちゃんであればまだしも、高齢猫ちゃんの場合には、輸血の負担を考え、体力的にも望まない猫ちゃんがほとんどです。
ここまでのまとめ
腎臓病の猫にとって、通院はストレスが大きく、治療の継続が難しくなることがあります。そのため、往診に切り替えることで、猫ちゃんと飼い主様双方の負担を軽減しながら、適切な治療を続けることが可能になります。
【往診のメリット】
1. 通院ストレスを回避し、猫ちゃんがリラックスした状態でケアを受けられる。
2. 自宅での生活環境を考慮したアドバイスが可能。
3. 定期検査や皮下点滴、薬剤の処方がすべて往診で完結。
4. 移動のリスクがなく、体調が悪い時でも適切なケアが受けられる。
5. 飼い主様がケアを継続しやすい仕組みを提供。
腎臓病を抱える猫ちゃんに穏やかで快適な日々を過ごしてもらうために、ぜひ往診を選択肢の一つとしてご検討ください。私たち往診専門動物病院は、飼い主様と猫ちゃんが安心して治療を続けられるよう、全力でサポートいたします。
続いて、実際の症例について、1つ書かせていただきます。
日本猫のミミちゃん、18歳、腎臓病(腎不全)
東京足立区の静かな住宅街で暮らす、日本猫のミミちゃん、18歳。
家族構成はお母さんとお父さんの二人暮らしで、おこさんが巣立った後、御夫婦二人にとって、ミミちゃんはかけがえのない家族となっていました。
元々体は強く、目立った病気になったこともなく過ごしてきましたが、数年ほど前から徐々に体重が減り、食欲にムラが出始めました。
動物病院で診察を受けたところ、慢性腎臓病(CKD)と診断されました。
「老猫ちゃんに多い病気」と聞いて驚いたお母さんは、腎臓病の治療に力を入れることを決意し食事療法を始め、毎月一度の検診に通う生活がスタートしました。
通院が生むストレス
最初のうちは通院も順調でした。
ミミちゃんはおとなしくキャリーに入り、病院での検査も問題なく受けていました。
しかし、月日が経つにつれ、通院後のミミちゃんに変化が見られるようになりました。
帰宅後のぐったり感が強く、ほとんど動かずに寝ていたり、食欲が落ち、翌日まで元気が戻らない日も出てきました。
病院での待ち時間が増えると、キャリーの中で不安そうに鳴くようになったとのことでした。
お母さんは「この通院自体がミミちゃんにとって負担になっているのではないか」と感じ始めましたが、動物病院の獣医師に相談したところ、往診は空いている時間に行うことはできるが、基本的には予約を受けていないし、最近はほとんどやってないと言われたとのことでした。
そんな時、往診での腎臓病ケアを紹介する記事を目にし、迷うことなく往診切り替えを希望してくれたとのことでした。
基本的にはどこの動物病院でも往診対応していると思います。
ただ、検査や手術、術後のペットの状態管理など幅広い業務が動物病院には課されているため、単発の往診であればまだしも、定期的な往診を希望されるご家族様のニーズに答えることはできないと思っていた方がいいです。
もし往診を希望される場合には、迷わずに往診専門動物病院を探すようにしましょう。
初めての往診
ミミちゃんは病院に行くストレスがないせいか、普段通りリラックスした様子で、いつものお気に入りの場所である窓辺のクッションに座っていました。
初診では、今までの長い経緯をしっかりと伺い、腎臓病の進行具合を把握するための血液検査と尿検査生活環境の確認、水を飲む頻度、トイレの回数、食事量のチェックなどの生活環境の確認、定期的な皮下点滴を在宅でご家族様だけで実施できるように、皮下点滴トレーニング、という流れでした。
全体でおおよそ2時間半ほどとなりましたが、終始ミミちゃんは落ち着いた様子だったこともあり、お母さんもお父さんも安心して診察に専念してくれたとのことでした。
日々の変化
往診を始めてからの生活は、ミミちゃんにとっても家族にとっても穏やかなものとなりました。
皮下点滴も、最初は獣医師が行う専門的なことのように思っていたとのことでしたが、実際に家の中で家族だけでできるなんても思ってもいなかったとのことでした。
実施自体は決して難しくはないです。
あえて言うなら保定が必要な場合や、痩せ細った状態の猫ちゃんですと、ハードルが少し上がりますが、それでもみんななんとか頑張れている印象を受けています。
ミミちゃんのお母さんも、3回目までは不安が残っていたが、今は問題なくお母さん一人でリビングのソファーの上で腰掛けながら、実施できるようになったとのことでした。
診察の時は嫌がるそぶりが大きかったミミちゃんでしたが、家族だけの空間であれば、お伝えしたとおり、ミミちゃんも受け入れる姿勢で嫌がらずに受けてくれたと、お母さんが話してくれました。
すでに腎臓病ステージ4だったため、毎月1回の往診で血液検査を行い、腎臓病の進行具合を細かくチェックし、データに基づいて、皮下点滴量や頻度、食事や内服薬の調整もこまめに行いました。
水皿の配置を増やし、食事は腎臓病用のウェットフードに変更することで食欲を維持し、ミミちゃんの好みに合わせて温める工夫も加えました。
ドライフードしか食べないタイプの猫ちゃんもたくさんいます。
ただ、高齢期になると投薬が始まることが多いので、その時にドライフード1つだと投薬が難しくなると思われます。
若齢のうちから、ウェットフードやウェットタイプのおやつなどを食べる練習を行なっておくと、投薬が始まった時にスムーズに内服薬プランが立てられると思いますので、あげすぎない程度あげておきましょう。
大きな体調悪化と最後の時間
初診から1年8ヶ月後の2024年11月13日、ミミちゃんは食欲が急激に落ち、動きも少なくなりました。
検査では腎臓病の進行が明らかで、貧血も進んでいました。
造血剤の提案をしましたが、造血剤は投与後に2-3日ぐったりするくらい体力を持っていかれる可能性が高いことをお伝えしたところ、もう負担となる処置はしたくないとのことから、全身状態を安定させる医薬品プランのみとしました。
皮下点滴と一部の内服薬で体調を保ちながらも、嘔吐などの症状を一切起こさずに、自宅で穏やかな時間を過ごしていました。
一度は食欲が上がってきた雰囲気を見せてくれたミミちゃんでしたが、大きく回復することなく、2024年12月2日、大好きなお母さんの膝の上で、お母さんとお父さんに撫でてもらいながら静かに眠りにつきました。
ミミちゃんの診察を通じて
ミミちゃんのように高齢で腎臓病を患う猫ちゃんにとって、通院は治療の一環であると同時に、大きな負担ともなります。
病院までの移動、待ち時間、診察台での緊張など、猫ちゃんがストレスを感じる場面は多く、その結果、治療後にぐったりしてしまうことも珍しくありません。
腎臓病の治療では、定期的な検査やケアを継続していくことが何よりも重要です。そのため、治療そのものが猫ちゃんにとって快適であることが、治療を成功に導く鍵となります。
往診は、こうした通院による負担を軽減するだけでなく、猫ちゃんとそのご家族が一緒に穏やかな日々を過ごすための大きなサポートとなります。
獣医師が直接ご自宅に訪問することで、猫ちゃんは慣れ親しんだ環境で診察を受けられ、飼い主様もリラックスした状態で猫ちゃんのケアに専念することができます。
往診のメリットを改めて考える
猫ちゃんにとってのメリットは、通院がなくなることで、キャリーケースに入るストレスや、移動中の不安が一切なくなります。
また、自宅という安心できる環境で診察を受けるため、病院での緊張がなく、本来の体調や行動を獣医師に見せることができます。
これにより、より正確な診断と適切な治療が可能になります。
飼い主様にとってのメリットは、往診によって病院までの移動時間が省けるだけでなく、待ち時間や猫ちゃんのケアに対する心配も減少します。
また、獣医師が生活環境を直接確認し、適切なアドバイスを提供することで、飼い主様が行うケアの質も向上します。
結果として、治療の継続性が高まると思っています。
腎臓病の治療では定期的な血液検査や尿検査、皮下点滴などが必要になりますが、往診ではこれらがすべて自宅で完結します。
特に高齢の猫ちゃんや体調が悪化している猫ちゃんにとっては、この「移動しなくてよい」という点が治療を継続するうえで大きな利点となります。
家族だけで過ごす穏やかな時間
往診の大きな魅力は、猫ちゃんが家族と共に過ごす時間を最大限に延ばせることです。
腎臓病の治療では、病気を完全に治すことが難しい場合も多く、どれだけ穏やかな時間を過ごせるかが治療の目的となることもあります。
ミミちゃんが往診に切り替えたことで、最期の瞬間まで大好きな家族と一緒に安心した状態で過ごせたのは、飼い主様にとっても大きな喜びでした。
飼い主様の膝の上でくつろぐ姿や、お気に入りの窓辺で日向ぼっこする姿を見守る時間は、何ものにも代えがたい価値があります。
こうした日々を積み重ねるためにも、猫ちゃんの治療が負担ではなく、生活の一部として無理なく続けられる環境を整えることが大切です。
往診はこんな飼い主様に往診をおすすめ
「猫ちゃんがキャリーケースを嫌がる、移動中に不安そうに鳴くことが多い。」
「病院に行った後、ぐったりするなど体調が悪化することがある。」
「高齢で体力が落ちているため、通院の負担を減らしたい。」
「猫ちゃんが腎臓病などの慢性疾患を抱えており、定期的な検査や治療が必要。」
「自宅でケアを続けたいが、皮下点滴や内服薬の方法に不安がある。」
往診は猫ちゃんと家族にとっての安心を届ける選択肢
猫ちゃんの腎臓病ケアにおいて、往診はただの代替手段ではなく、猫ちゃんと飼い主様にとって最善の治療環境を提供する方法です。
自宅で診察を受けることで、猫ちゃんのストレスを減らし、家族と一緒に過ごす穏やかな時間を大切にすることができます。
ミミちゃんの物語が示しているように、往診を選ぶことで猫ちゃんのQOL(生活の質)を大幅に向上させることが可能です。
もし、通院による負担や治療の継続性に不安を感じているのであれば、ぜひ往診という選択肢を検討してみてください。
あなたの大切な猫ちゃんにとって、穏やかで安心できる時間を作るために、往診専門の動物病院が全力でサポートいたします。
「猫ちゃんが家で安心して過ごす姿を守りたい」
往診はその願いをかなえる第一歩です。
東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、当院がご自宅までお伺いし、残された時間をできる限り苦痛なく過ごせるサポートをさせていただきます。
現在、動物病院への通院で悩んでいるご家族様は、まずはお気軽にご相談ください。
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猫の心臓病と聞くと、多くの飼い主様が「肥大型心筋症(HCM)」を思い浮かべるのではないでしょうか。
確かにHCMは猫に最も多く見られる心疾患です。
しかし、猫でも僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Valve Disease, MVD)が発生することをご存知でしょうか?
この疾患は犬では一般的ですが、猫では稀なケースとされています。
今回の記事では、13歳の猫ちゃんがこの疾患に罹患し、在宅緩和ケアを通じて最期の時間を穏やかに過ごした実例をご紹介します。
このケーススタディを通じて、猫ちゃんの心臓病ケアの可能性と、在宅緩和ケアがいかに重要であるかを詳しくお伝えします。
僧帽弁閉鎖不全症(MVD)とは?
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室を隔てる僧帽弁が正常に閉じなくなることで、血液が逆流する疾患です。
この疾患により心臓への負担が増大し、最終的には心不全を引き起こす可能性があります。
犬では加齢とともに僧帽弁の変性が進行することで発症することが多いですが、猫ではその発生メカニズムが十分に解明されておらず、非常に稀なケースです。
僧帽弁閉鎖不全症の主な症状
呼吸が速くなる(頻呼吸):安静時でも呼吸数が多くなる。
食欲低下:食事を摂ることが難しくなる場合も多い。
倦怠感や活動性の低下:動くことを嫌がり、長時間横になっている。
胸水貯留:胸腔内に液体が溜まり、呼吸困難を引き起こす。
肥大型心筋症との違い
肥大型心筋症は心筋が肥厚して硬化することで、心臓の収縮や血液の循環に影響を及ぼします。
一方、MVDは弁の機能不全が主因であり、血液が逆流することによって心不全のリスクが高まります。
症例紹介:13歳の猫ちゃん(僧帽弁閉鎖不全症による胸水貯留)
今回の症例は、13歳の去勢雄の猫ちゃんです。
この猫ちゃんは、呼吸が速いこと、そして食欲不振を主訴として飼い主様が東京中央区日本橋付近の動物病院に連れて行きました。
検査の結果、僧帽弁閉鎖不全症と胸水貯留が確認されました。
動物病院での対応
動物病院では、胸水抜去を提案され、鎮静下で胸水を抜去し、呼吸状態の改善を図りました。
また、状態の改善及び安定を目的として、心臓病治療に必要な内服薬が処方されました。
しかし、猫ちゃん問いこともあり、内服薬を全く受け付けてくれませんでした。
投薬のたびに拒否され、結果的に呼吸状態が再び悪化。
再度の通院を試みたものの、キャリーに入れる段階で開口呼吸となり、通院自体が困難な状況となりました。
在宅緩和ケアへの決断
飼い主様は非常に悩まれましたが、通院が猫ちゃんのストレスになり、病状を悪化させてしまう様子を目の当たりにして、「もう通院は無理だ」とすでに感じていたそうです。
そのような中、SNS(インスタグラム)で当院の情報を見つけ、往診による在宅緩和ケアを希望されました。
飼い主様のご希望
往診による在宅緩和ケアを希望されるご家族様の希望は全て同じで、猫ちゃんの苦しみやストレスを最小限に抑えたい、そして通院や投薬のストレスを減らし、穏やかな余生を過ごさせたい、というものです。
往診初診時のアプローチ
初診では、以下のような流れで診察を行いました。
1. 現場の把握と飼い主様の希望の確認
訪問時には、まず猫ちゃんの生活環境と症状の確認を行いました。
呼吸数や体重の測定、胸水の有無の確認などを行いながら、飼い主様の希望を丁寧にヒアリングしました。
特に、「どのような最期の時間を過ごさせてあげたいのか」を共有することを大切にしました。
2. 緩和ケアプランの説明
在宅で可能なケアの選択肢を提示しました。
主に以下の内容についてご説明させていただきました。
呼吸管理については酸素発生装置の導入と使用法の説明をして、投薬方法の工夫としては投薬補助おやつや経口薬を拒否する場合の代替案を、そして皮下点滴という手法を用いた、注射薬を使用した薬剤投与の実践などです。
3. 呼吸環境の整備
胸水が溜まると呼吸が悪化しやすいため、酸素発生装置を用いて、猫ちゃんが快適に過ごせる呼吸環境を構築しました。
また、使用方法やトラブル時の対処法もご説明しました。
4. 今後の事前準備
急変時に備えた対応策を共有。
呼吸数や食欲の変化など、飼い主様が日々観察すべきポイントを明確化。
投薬問題への対応
この猫ちゃんの最大の課題は、「内服薬が飲めない」ことでした。以下の工夫を行いました。
1. 投薬補助食品の活用
投薬用のおやつは市販のものを複数試しましたが、食べてくれない場合もあります。
そのため、特別なサンプル品を診察時に提供しました。
その結果、猫ちゃんが食べてくれる製品を見つけることができました。
2. 内服薬が完全に無理な場合
どうしても内服薬が無理な場合、皮下点滴での薬剤投与を提案しました。
この方法は、飼い主様の協力が必要ですが、内服に伴うストレスを軽減できる大きなメリットがあります。
訪問ケアでの今後のプラン
最初は2〜3日に1回の頻度で訪問し、徐々に状態が安定してきたため、訪問間隔を週1回、2週間に1回と広げることができました。
この間、猫ちゃんは穏やかで安定した日々を過ごすことができました。
症状の悪化と最期のケア
約3ヶ月が経過した頃、再び呼吸状態が悪化。
胸水貯留が進行したため、在宅で鎮静下での胸水抜去を行いました。
食欲も低下したため、皮下点滴に注射薬を混ぜて投与を続けました。
最期の1ヶ月
胸水の溜まる速度が徐々に増し、最終的には3日に1回の胸水抜去が必要となりました。
それでも、猫ちゃんは穏やかに生活を続け、2024年10月3日、飼い主様の腕の中で静かに息を引き取りました。
発作を起こすことなく、眠るように旅立ったとのことでした。
緩和ケアの意義と可能性
このケースからわかるように、在宅緩和ケアは猫ちゃんと飼い主様に大きな安心感を与えるものです。
在宅緩和ケアの利点
ペットの在宅緩和ケアには、動物病院で行う、いわゆる通院型の緩和ケアと違い、通院や待ち時間におけるペットのストレス軽減が期待できます。
この通院の負担は、通院頻度の高まりを見せる緩和ケアの後半になると、通院させるご家族様にとっても負担が大きくなってきます。
その負担を軽減することで、わんちゃん、猫ちゃん、そしてご家族様にも、残された時間を少しでも穏やかに過ごせることと思います。
呼吸管理や投薬方法をペットの性格や状態だけでなく、生活環境などの周囲環境を考慮した調整が可能です。
まとめ
僧帽弁閉鎖不全症をはじめとする慢性疾患や腫瘍を抱える猫ちゃんにとって、在宅緩和ケアは非常に重要な選択肢です。
治療が難しい場合でも、その子らしい穏やかな時間を作ることが最も大切です。
東京、千葉、神奈川、埼玉で在宅緩和ケアを希望される方は、ぜひ往診専門動物病院にご相談ください。
私たちは、一緒に最善のケアを考え、少しでも後悔のない時間を過ごせるよう全力でサポートします。
少しでも多くの猫ちゃんと飼い主様が穏やかな日々を送れますように。
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今日は腎臓病を抱えた猫ちゃんの通院からの在宅切り替え相談がありましたので、そのお話です。
猫ちゃんは動物病院に通院することが苦手なことを理解して上で、それでも月に1回以上、または週3回とか4回とか通院の指示を出されて、皮下点滴だけで通院しているというご家族様からの在宅切り替え(転院希望、在宅緩和希ケア望)のご相談を受けました。
猫ちゃんのほとんどが腎臓病(腎不全)になる印象を持たれているご家族様も多くいらっしゃいますが、あながち間違っていません。
高齢猫、特に10歳以上であれば、尿素窒素やクレアチニン、リンなどの腎臓評価の指標となる項目に異常が見え始めます。
腎臓病が発覚すると、まずは腎臓病に適した食事指導から始めります。
ほとんど獣医師が食事には詳しくないこともあり、大体が療法食で腎臓サポートやk/dなどを提案されることかと思います。
腎臓病用のご飯って、美味しくないんですよね…
それもあってか、腎臓病が進行していてご飯を食べないのか、それとも嗜好性が合わなくて食べないのかは、実際に診て、検査しないとなんともいえません。
ただ、食事療法1つとっても、そもそも食べてくれないと意味がないため、どうしてもダメな場合には、一般食などなんでもいので栄養をとってもらったほうがいいです。
腎臓病も進行してきて、多飲多尿などの症状が見えてきた頃、多分腎臓はステージ2以降である事が多いです。
腎臓病(腎不全)の定期検診(血液検査、尿検査、腹部超音波検査)は往診で
腎臓病の定期検診は、安定していれば3ヶ月に1回程度、安定していなければ2週間〜1ヶ月程度のスパンで検査を行っていきます。
検査項目でもっとも大切なのは血液検査だと思っています。
でも血液検査のために頑張って通院させた結果、通院後ぐったりしてしまうということがあれば、通院が負担になっていることを獣医師に相談してみましょう。
もしかしたら往診で検査してくれるかもしれませんので、聞きづらいかもしれませんが、猫ちゃんのためにも伺ってみましょう。
また、往診はやっていないとされた場合には、早めから往診専門動物病院探しを始めることをお勧めします。
往診でも血液検査を行うことは可能ですし、項目も同じように広く見ることができます。
また、血液検査以外にもエコー検査、尿検査など、X線検査以外のことであれば、往診で行う事が可能です。
腎臓病が発覚した時点で、もっといえば高齢期の過ごし方の準備として、往診専門動物病院を探しておくことをお勧めします。
腎臓病(腎不全)の皮下点滴や内服薬処方は往診で十分
腎不全というと、療法食の話から始まり、内服薬やサプリメントのお話、そして皮下点滴へと続き、腎性貧血などが始まれば増血剤をどうするかなどという相談が始まってきます。
犬の腎不全であれば、通院がそこまで負担になることは少ないと思います。
ただし、それでも頻繁に動物病院へ行くことで精神的なストレスが蓄積すると考えると、できれば検査以外での通院は避け、皮下点滴はご自宅で打てるようにしたほうがいいです。
自宅での皮下点滴は、ペットの固定さえうまくできて仕舞えば1人でも可能ですし、もし2人以上いるのであれば、ある程度の性格の子で実施することが可能です。
一人が保定、一人が皮下点滴を実施してあげる、といった流れです。
輸液量や犬猫の体調などを踏まえて、実施の仕方にも工夫を凝らしてあげることで、体にもより負担がないように在宅皮下点滴プランを組んでいきます。
猫の腎臓病(腎不全)の皮下点滴は1回量に細心の注意を!
次は猫ちゃんの腎不全における皮下点滴についてです。
動物病院としては、本来であれば毎日分散して皮下点滴を打ってあげたいですが、猫ちゃんのストレスやご家族様の負担を考えて、週3-4回くらいにしましょうと伝える事があります。
そして、週3-4回と頻度を下げた分、1回量をたくさん入れるという事があり、体力があるうちなら代謝できるかもしれませんが、高齢期で、例えばすでに痩せ細ってきている腎臓病ステージ4とかであれば、浮腫や胸水への漏れ出しに細心の注意を払いましょう。
このステージになると、貧血まではいかないもののヘマトクリット値と言われる数値が下がってきている事が多く、また心臓への負担もかかっている事もあります。
そんな中でたくさんの輸液を1度に入れてしまうことで、過剰輸液を起こしてしまい、結果として皮下点滴を実施したことで苦しい思いをさせてしまった、という症例をたくさんみてきました。
「皮下点滴して帰宅してから呼吸が速くなってしまい、ご飯を食べられなくなってしまった」
この主訴で訪問して、この日を境に在宅医療(在宅緩和ケア)を実施することが多いです。
このように、皮下点滴一つをとっても、本音と建前が混在してしまう事があるため、もし獣医師に訪ねるのであれば、「なぜ今は週3-4回の皮下点滴でいいのか。本当なら毎日のほうがいいのか。」など、質問してみてくださいね。
犬猫は自分から選択できないため、ご家族様が判断するしかありません。
言いづらいことだとしても、動物病院側にちゃんと伝えることで、思ってもみなかった回答をいただけるかもしれませんし、それによって、今抱えている悩みの突破口が見えるかもしれません。
腎臓病なら在宅医療(在宅緩和ケア)切り替えを検討しましょう
みんな病院は好きじゃないです。
ましてや犬猫からすれば、動物病院はできれば行きたくない場所だと思います。
日常ケアの時ならまだしも、毎回嫌な思いをするのがこの持病を抱え始めたステージです。
慢性疾患のコントロール(定期検診と薬剤調整など)は、どちらにせよやってあげたほうがいいですが、そのためにかかるストレスをどこまで許容させるのかは、一度考えてあげましょう。
愛犬、愛猫にとって、そしてご家族様にとっても最良となる選択肢を見つけましょうね。
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前回の続きです。
前回の記事は、こちら「動物病院の転院方法①」から読めますので、まだ読まれていない方は、順番に読むことをお勧めします。
ここまでくると、今までは絶対的な信頼をおいていた動物病院に対して、最近「ん?」と感じた理由が見えてきたと思います。
もし違和感を感じていた場合には、転院の準備を進めましょう。
転院の準備
転院するにあたってあった方がいい情報は、犬猫が健康体であるならば、基本的にないです。
既往歴があれば、どんな病気をいつ発症し、どんな検査とどんな治療(投薬など含める)をした結果、いつ治ったのか、または医薬品のアレルギーや投与後に体調を壊した事があるのか、をまとめておきましょう。
もし今現在も継続治療している病気があれば、それはいつ発症し、どんな治療をしながら経過観察をしていて、今どんな状態なのか、をまとめておきましょう。
各種検査結果は、全部持っておくといいですが、大体は手元にある分で十分だと思います。
なぜかというと、転院先で必ず再検査を行うからです。
このような内容をまとめておくと、転院先にスムーズに状況を理解してもらう事ができると思います。
これは一般的な転院の話であり、もし動物病院への通院から、往診による在宅医療への切り替えを検討したい場合については、上記内容とは異なるのかというご質問を多くいただきますが、全く一緒で大丈夫です。
動物病院に通院していて在宅医療へ切り替えるケースでは、基本的には診断がついており、すでにその病気に対して何かしらのアプローチをかけている最中だと思います。
いくつか例を出してご説明していきます。
猫の慢性腎臓病の往診切り替え
慢性腎臓病の場合には、定期的な血液検査と、高い頻度での皮下点滴が求められることとなりますが、基本的には慢性腎臓病(腎不全)に関しては往診切り替えが可能です。
血液検査も超音波検査も、皮下点滴の指導や処方なども全部、往診で可能です。
皮下点滴もやり方さえわかれば、ムチ打ってキャリーに入れて通院させる必要はなくなりますし、検査後にキャリーの中で震えることもなくなります。
慢性腎臓病ステージ1と言われた時点から、これから高頻度での通院が予想できますので、もし通院が苦手であれば、早期からの往診切り替えをお勧めします。
猫の消化器型リンパ腫の往診切り替え
リンパ腫といえば抗がん剤による化学療法が効果的であることは有名ですが、その副反応によって急な経過を遂げてしまったという症例もたくさん見てきました。
もう抗がん剤ではなく、リンパ腫などの病気からくる不調や苦痛を緩和させながら、余生を可能な限り負担なく過ごさせてあげたいと考えた場合に、往診切り替えをお勧めします。
この2つ以外にもたくさんありますが、大切なことは「愛犬、愛猫の余生をどのように過ごさせてあげたいのか」を、ご家族様で決めておくことです。
方針さえ決まって仕舞えば、あとはその方針を軸に進めていくだけです。
最近は、早期から往診切り替えを希望され、初診時から予想される未来に向けた在宅緩和ケアの相談ができるため、より不安少なく病状の変化を受け入れることができるかもしれません。
在宅緩和ケアを希望されるご家族様(東京/千葉/埼玉/神奈川)
在宅緩和ケアという考え方は、まだ浸透していないこともあり、かかりつけの動物病院では受け入れてもらえないかもしれません。
そのため、もし在宅緩和ケアをご希望される場合には、往診専門動物病院に相談するようにしましょう。
東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室がご自宅まで訪問し、在宅緩和ケアプランを構築させていただき、余生を最後までサポートしていきます。
まずは事前にご連絡をいただき、体調がグッと下がる前にペットの状態とご家族様の意向を把握させてください。
転院することは決して悪いことではなく、むしろ正しい判断だと思います。
感じた違和感をスルーしてしまうのではなく、まずはセカンドオピニオンから始めていきましょう。
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愛犬、愛猫を迎えた日、譲り受け元からの動物病院の紹介があったり、近所にある動物病院を探してみたり、口コミサイトを見てみたりと、どこの動物病院を愛犬、愛猫のかかりつけとするかを期待と不安の中で探されたと思います。
身体検査から予防接種、定期的な健康診断や日常ケアなどで、たくさんの時間をかかりつけの動物病院でお世話になったことと思います。
きっとそこには今までの愛犬、愛猫の検査データが集まっており、万が一の体調不良でも、担当してくれる獣医師も、サポートしてくれる愛玩動物看護師も、動物病院の建物や空間のどれをとっても、初めての動物病院に行くのと比べれば、幾分かは緊張しないことと思います。
それは犬猫も同じで、慣れている環境の方が、比較的安心して終始診察を受けてくれる印象です。
きっとそれは、同行されたご家族様の緊張感なども相まっての事なのかもしれません。
町にある動物病院は全部ある程度ならできる
この「かかりつけの動物病院」は、いわゆるジェネラリストと呼ばれる総合臨床を得意とする獣医師で構成されており、幅広い軽度な病気に対して専門的な検査なしで簡易的に診断を下して、治療していくことに特化しています。
ちなみに予防医療とされる避妊手術や去勢手術などは、各種専門医と比較しても引けは取らないどころか、一般の臨床医、特に開業医とされる院長の腕前はピカイチだったりします。
ただ、ここで覚えて欲しいことは、総合臨床を得意としているため、専門的な知見はそこまで強くない可能性がある、ということです。
人の医療では、各科が細分化されているのに対し、動物医療に関しては、最近になってようやく細分化され始めた程度です。
しかし、まだペットの飼い主側がその細分化になかなか着いてこれてないこともあってか、結果として全診療を1つの動物病院で、1人の獣医師が診ているのが大多数だと思います。
どんなに口コミが良くても、それは予防医療の範疇であったり、子犬子猫の話だったり、大きな病気を抱える前だったりと、本当に今の愛犬、愛猫の状態に対しての評価かどうかは分かりません。
そのため、覚えておいて欲しいことは、セカンドオピニオンは正義であるということです。
積極的にセカンドオピニオンを
現在継続している治療内容に疑問があったり、なかなか治らない、または効果が見えにくいと感じた場合には、同じような症例を扱ったことがある動物病院を探し、セカンドオピニオンに伺った方がいいです。
ただこれは、かなりハイレベルな検索が必要になると思いますので、現在の治療に違和感を覚えた場合には、専門医が集う二次医療施設を紹介受診することがお勧めです。
この場合に、かかりつけの動物病院からの紹介状が必要になるため、担当の獣医師にやんわりと相談してみましょう。
本来であれば、子犬、子猫の時期から、高齢犬、高齢猫までずっと一貫して1つの動物病院で、1人の獣医師(おそらく院長)が診ていくことが理想ですが、基本的には叶わないと思います。
途中で別の動物病院を挟みつつ、最終的には元の動物病院で余生を全うするまでお世話になるということはあるかもしれませんが、その動物病院が緩和ケアについてどこまで理解を持ってくれているのかは分かりません。
もちろん緩和ケアを選ばなければいけないわけではないので、最後まで病気の治療に専念しても、決して間違いではないです。
ただ、それがご家族様のやりたいことであれば、です。
転院することは悪くない
獣医師に忖度し、本来の答えとは違う方向に診療が進んでしまうと、きっと大きな後悔が残るかもしれないです。
昔は良かったが、今は違う感じがすると思った時は、それはきっとご家族様の求めるものが変わった可能性もあると思っています。
・日常ケアやしつけなどを知りたかった時期
・嘔吐下痢などの一過性の症状を治して欲しかった時期
・大きな病気の精査と治療を求めたい時期
・余生を負担なく過ごさせたい時期。
きっとこの4つで大きな分類はできると思っています。
今ご家族様の悩みがどこに位置しているかで、かかりつけの動物病院に求める像は異なり、それが意味するのは「転院」です。
転院したからといって、もう戻ってはいけないわけではないですし、お薬の注文などをしていないのであれば、特別転院の挨拶はする必要はないですが、また戻ってくるかもしれないと思っている場合には、一言挨拶しておくのもいいと思います。
最後は人
何を求めるかによって、その先にあるものは異なるのに対して、動物病院側はサービス内容を増やしたとしても、スタッフや院長が変わるわけではないです。
もう治療ではなく緩和ケアを希望したいけど、かかりつけの動物病院に通院させると治療の話をされるのが辛い、または一番辛いケースとして知らない間に治療薬を投与されていた、ということを伺っています。
ご家族様の同意のもとで行なったとは思いますが、きっと獣医師からの説明を理解できないまま事が進んでしまった結果、認識の齟齬が発生したのだと思います。
また、通院での緩和ケアか、もう通院のストレスや待合室で待つストレスもかわいそうだと感じた場合には、在宅緩和ケアを選択することができます。
在宅緩和ケアを希望されるご家族様(東京/千葉/埼玉/神奈川)
在宅緩和ケアをご希望される場合には、往診専門動物病院が強い味方になってくれると思われます。
東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、私たちがご自宅まで訪問し、在宅緩和ケアプランを構築させていただき、余生を最後までサポートしていきます。
まずは事前にご連絡をいただき、体調がグッと下がる前にペットの状態とご家族様の意向を把握させてください。
さて、長くなりましたので、今日はここまでとして、次はもし転院を検討している場合には、何を準備しておけばいいのかについて書いていきます。
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皆さんは、ペットにも緩和ケアがあることをご存知でしょうか。
当院は犬猫専門であるため、ここでは犬猫の在宅切り替えのタイミングについてお話しさせていただきます。
大きく3パターンに分類されます。
1.がん(腫瘍)、腎臓病や心臓病などの慢性疾患の病末期
一つ目は、病末期などでもう通院ができないとされた時です。
当院では、このステージでの往診相談を受けることが最も多いです。
しかし、往診と救急は相性がとても悪いため、すぐにお伺いすることが難しい場合があります。
今日からぐったりしたので急ぎ来て欲しい、というご要望にお応えできる日もありますが、基本的にはご予約の電話またはメールをいただいてから翌日以降になることが多いです。
そのため、ガクッと体調が下がり切ってしまう前にご相談いただくことをお勧めします。
持病とその時点での状態や、血液検査結果などのデータを参考に、今後起こりうる症状についてお伝えし、その時にどんなアクションを取ればいいのかなど、事前にご説明した上で、各種資材や医薬品などを、ご自宅に準備していきます。
また、ご家族様の心が、愛犬、愛猫の旅立ちを受け入れるためにも時間が必要です。
日々生じる愛犬、愛猫の変化を徐々に受け入れながら、今がどんな状態なのかをご説明させていただき、少しずつ理解を広げていきましょう。
2.余生を見据えての在宅緩和ケア切り替え(診断後)
二つ目は、通常の動物病院診断である程度の診断がつき、治療ではなく緩和ケアを実施してあげたいという意向のもと、往診での在宅緩和ケアを希望される時です。
この選択をされるご家族様の特徴としては、先代の愛犬、愛猫での経験がある方、そしてペットが腫瘍(がん)を患ってしまい、抗がん剤などの積極的な治療ではなく緩和ケアを希望したい方がほとんどです。
「最後まで動物病院に通院させた結果、その頻繁な通院によるストレスで、逆にかわいそうな思いをさせてしまった。」
「先代ペットの時に、良かれと思って選択した抗がん剤でぐったりしてしまい、そのまま旅立たせてしまった。朝は元気だったのに。」
「腎臓病(腎不全など)で頻繁に皮下点滴と血液検査で通院させた結果、もう通院は厳しいとなった時に、最後の数日間をどう過ごしたらいいのかを教えてもらえなかった。」
このように、先代ペットで抱えたトラウマを背景に、この選択をされる方が多いです。
もちろん、初代の犬猫だったとしても、ご家族様の意向で積極的な治療ではなく、穏やかに苦しみ少ない時間を過ごさせてあげたいと希望される場合もあります。
抗がん剤は強い味方になることもあれば、抗がん剤の投与を機にぐったりしてしまい、朝までお散歩に行くこともできたわんちゃんが、キャットタワーにも登れた猫ちゃんが、動物病院から帰宅してまもなく動けなくなってしまった、ということは十分に起こり得ます。
とはいえ、抗がん剤は腫瘍細胞を叩いて命を伸ばすためには必須アイテムだと思っていますので、もし積極的にがん治療を希望される場合には、かかりつけの動物病院でがん治療を開始するのではなく、腫瘍専門の動物病院を探して相談することを、本当に強くお勧めします。
また、腎臓病は慢性疾患であり、定期的な血液検査、そして腎臓病のステージにもよりますが内服薬の用量や種類調整、皮下点滴の頻度や1回量の調整などが必要です。
皮下点滴も、本来であれば1日1回必要だとしても、毎日通院させるには負担だというご家族様の意向を見て、獣医師から3日に1回でいいですよ、といった話が出てしまいがちですが、それは対策次第で家族にもペットにも優しい医療プランに変更が可能です。
なお、慢性腎臓病で必要な検査、処置、処方などを含めたプランのすべては、ご自宅で実施することができます。
心臓病、腎臓病、肝臓病やてんかんなどの脳神経系の疾患などが該当する慢性疾患や、積極的な治療を望まないリンパ腫や肥満細胞腫、肝臓がん、腎臓がん、乳がんなどのがん(腫瘍)症例であれば、当院であれば、基本的に全症例で在宅に切り替えることが可能です。
3.通院していなかった犬猫の高齢期
三つ目は、元々動物病院が苦手で通院させることができていなかった症例です。
主に、猫ちゃんがこの三つ目に該当します。
最後に通院したのは避妊去勢手術をした子猫の時であり、以降通院が本当に苦手だったことから、ずっと動物病院と距離をとってしまい、結果高齢期になって具合が悪くなってきたことを機に、往診専門動物病院を探して連絡をいただく、というパターンです。
ペットも人と同じように年を取りますが、平均寿命から考えれば、人より早く体の中は年を取っていくと考えてあげましょう。
「食欲がなくなっても、いつもなら3日くらいで少しずつ食べ出すのに、今回は1週間経っても食べてくれない。」
「元気がないなぁとは思っていたが、みるみるうちに動けなくなってしまった。」
「元気ではあるし、ご飯もよく食べるけど、なんとなく痩せてきたような気がする。」
まだまだこのカテゴリに該当する症例の主訴はありますが、「成功経験からご家族様の判断で様子見をした結果さらに状態が悪化している」、ということがよく起こりうるのが、犬猫の高齢期です。
小型犬、猫であれば、ざっくりと10歳を基準に考えてあげる、と言うキーワードだけ覚えておきましょう。
基本的には、体力のある時期であれば、体調不良が起きたとして、人と同じように放っておいても回復するだろうと考えています。
しかし、中には鼻が詰まってしまい食欲が戻らないなど、体調を下げている要因を取りのぞかないとダメな場合にもあったりします。
人との違いは、「食べて」と言っても食べてくれない、ということです。
体調不良が病気を作ってしまうと言うことが犬猫ではよく起こり得ますので、ご家族様の判断だけでなく、必ず獣医師の判断を仰ぐようにしましょう。
まとめ
今回は在宅医療への切り替えタイミングについて書かせていただきました。
三つ目に関しては、動物病院への通院からの切り替えというよりは、民間療法からの切り替えというものが近いと思います。
犬猫は自分で医療を選択することができません。
ご家族様が、愛犬、愛猫の性格をしっかりと把握した上で、余生をどのように過ごさせてあげたいのかを決めてあげましょう。
専門的な知見は獣医師からもらうことで、より具体的に想像できるようになると思います。
その過程の中で、往診切り替えを検討している場合には、事前相談をお勧めします。
往診は獣医師と愛玩動物看護師などの看護スタッフがペアでご自宅にお伺いし、現状を把握することと、今後起こりうる変化に対して、何が起きたらどうするのか、などを組み立てていくことが可能です。
体調が安定しているうちに、お早めに在宅医療の相談をしましょう。
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往診専門動物病院わんにゃん保健室の江本です。
本日は、腎臓腫瘍を抱えた小型犬のお話です。
少しだけ、腎臓腫瘍の症例と出会うときの入り口の話をさせてください。
そもそも腎臓腫瘍は、犬の腫瘍の中では1.7%、猫の腫瘍の中では2.5%と言われており、そこまで多い病気ではないため、検査を積極的に行わない動物病院をかかりつけとしている場合には、軽度から中等度の腎臓病とされ、腎臓病の治療を行なわれている可能性も大いにあり得ます。
なぜかというと、腎臓腫瘍の症状には特異的なものがなく、血尿や体重減少などの別の鑑別診断がたくさんありそうな症状を呈していることがほとんどだからです。
しかし、画像検査、特にエコー(超音波)検査やX線検査などを行えば、画像所見として、腎臓の違和感を検知することができます。
腎臓腫瘍では、第一選択が外科手術ですが、発見した頃にはすでに体力的に麻酔や手術に耐えれないということが多々あります。
腎臓腫瘍は腫瘍であることもあり、高齢になればなるほど発症しやすくなりますが、犬で9歳くらい、猫で10歳くらいと言われています。
年齢的にも、慢性疾患である腎臓病(腎不全)を発症しやすい頃ですので、通常の腎臓病だと思い込み、定期検診の血液検査結果で尿素窒素やクレアチニンといった腎臓の数値が安定していたのに、突然痙攣発作が起き、亡くなるということが起こるかもしれません。
犬も猫も人と同じように、高齢期に差し掛かったのであれば、高い頻度での定期検診と画像検査を含めた包括的な検査を心がけましょう。
前置きが長くなりましたが、今回は通常の腎臓病の治療経過の中で、もうぐったりしてしまったことから家で看取る覚悟をして、当院まで在宅緩和ケアの相談をいただいた犬の話です。
チワワ×ポメラニアン、16歳
初診時はすでに弱り切っていましたが、こちらのわんちゃんは、とても繊細なタイプの性格で、診察で歯が出てしまうことから、迷惑をかけちゃまずいと考え、なかなか動物病院に近づけずにいたとのことでした。
最初に訪れた動物病院の対応だったのかもしれませんが、歯が出てしまうタイプの犬猫でも、ある程度であれば対応することができます。
事前に安定剤を服用してもらうなど、状態に応じて獣医師が提案してくれると思いますので、もし動物病院に通院するとすごく攻撃性が高くなってしまうなどで通院を断念されている場合には、獣医師に相談してみましょう。
今までの経緯として、5年ほど前に、普段なら数日で回復するはずなのに1週間近く体調が悪そうにしていたことを機に、満を持して動物病院に駆け込んだところ、画像検査は実施してもらえず、血液検査で軽度の腎臓病と言われたとのことでした。
そのため、ずっと腎臓病だと思い、腎臓病の療法食をひたすら与え続けていたとのことでした。
おそらくこの時点では、画像検査をしても、腎臓腫瘍は検出されなかったと思いますし、軽度の腎臓病が疑われたのであれば、腎臓系の療法食に切り替えてあげて正解だったと考えます。
2024年8月に咳が酷かったことを主訴に、頑張って動物病院に通院させてみたところ、腎臓と肝臓が悪いと言われた、在宅での皮下点滴を指示され、この日は動物病院で皮下点滴をして帰ってきたところ、全身が震えてしまうような痙攣をしてしまったとのことでした。
翌日からは在宅での皮下点滴実施を支持されましたが、通常の量よりもかなり少ない量を複数回に渡って投与するように指示が出されており、何度も針刺しを行うことや、動物病院でプロである獣医師による皮下点滴で具合が悪くなってしまったこともあって、在宅での皮下点滴はかなり消極的になっていたようでした。
医薬品は用いていないとのことから、この痙攣の原因は不明なままでしたが、おそらくストレス性と考え、皮下点滴のやり方や準備の仕方など、一連の動作を再度確認させていただき、ストレスがかかりづらい方法をレクチャーさせていただき、様子を見ることとしました。
その結果、そのような全身の身震いはなかったことから、ストレスの蓄積が全ての原因だった可能性をお伝えし、安心して在宅での皮下点滴に挑戦していただきました。
ただ、この日行った超音波検査(エコー検査)で、腎臓に腫瘍病変が検出され、腎臓や肝臓の数値が悪くなってしまった原因は、腎臓腫瘍である可能性をお伝えしました。
すでに尿素窒素やクレアチニン、リンと言われる腎パネルは、すでに上限値を超えており、今日明日の可能性が高い状態であることが、初日の検査にてわかりました。
鎮痛、鎮静など準備を進めていきます。
腫瘍症例では、その発生箇所によって痛みを伴う可能性が高い場所やそうでもない場所などが、ある程度予想できます。
この後、高頻度で痙攣発作が誘発される可能性があることを理解していただき、その時に備えて環境やマインドの準備を進め、いざという時に向き合えるように一緒に学んでいただきました。
高齢期や病末期における緩和ケア中の発作に対する考え方は、通常の特発性てんかんなどの犬猫に対する頓服対策と似て非なるものかもしれません。
ただ、医薬品を含めた環境準備、そしてマインドを強く持つことが、ペットの緩和ケアや終末期ケアと言われるターミナルケアでは最も大切になります。
その4日後、このわんちゃんは眠りにつきました。
ポン助ちゃんと最後に出会えたことに、心から感謝しています。
ご冥福を、心からお祈り申し上げます。
ご自宅での在宅緩和ケアを検討中のご家族様
東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、当院が訪問することが可能ですので、まずはお電話ないし問い合わせフォームから、今のご状況を教えてください。
ぐったりしてしまう前に、事前にご状況を把握させていただき、いざという日に備えた環境整備などから、一緒にやっていきましょう。
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猫の心筋症では、途中から胸水が貯留することがあります。
このケースでの胸水貯留では、針を胸に刺して胸水を抜去する胸水抜去という方法以外に、医薬品を用いて対応できる場合があります。
胸水抜去を実施すれば、その場で感じる痛み、また抜去後に刺入部に残る軽度の鈍痛や肋間神経の痛みと引き換えに、すぐに呼吸が楽になるという最大のメリットがあります。
この時の痛みはとても強いため、在宅緩和ケアの観点からは少量でも鎮静と鎮痛効果のある薬を使用し、猫ちゃんが感じるストレスを最小限にしてあげることを大切にしています。
ただし、状態がとても悪く、痛みのストレスよりも、鎮静処置に耐えられそうにない場合には、鎮静処置なしで胸水抜去を実施することもあります。
この「胸水」ですが、猫ちゃんで胸水貯留を認めた場合には、心臓病か腫瘍かの2つをまずは疑っていきます。
心臓病からくる胸水であれば、内服薬または同等の効果の注射薬などの使用で、胸水の貯留量がどんどん減弱し、たくさん溜まっていて胸水も、3日間ほどで軽度貯留まで減り、1週間ほどで消滅しました。
ちなみに腫瘍が原因で貯留した胸水では、医薬品での効果はなかなか期待できませんが、それでも胸水抜去ではなく医薬品を用いて様子を見てあげることを希望された場合には、その意向に合わせたプランを構築していきます。
猫ちゃんが心臓病の進行によって貯留してしまった胸水に対して、医薬品を用いたコントロールは、直近の6症例のうち、全ての症例で胸水の貯留量が減り、呼吸状態の改善が認められました。
ただし、心臓病などの病気では、使用する医薬品の数も量も増えがちなため、内服薬が得意な猫ちゃんであれば内服薬でのコントロールが叶いますが、ほとんどの猫ちゃんで内服薬が苦手です。
その場合には、比較的飲みやすい医薬品は内服で残し、それ以外を注射薬として、在宅にて皮下投与してもらうような環境を構築していきます。
それによって、苦手な内服投与の医薬品はできる限り少量とし、他を注射薬とすることで、猫ちゃんが抱えるストレスと、ご家族様が抱える投薬できないストレスが軽減できます。
心筋症による胸水貯留は、心筋症の後半の方で起こります。
胸水貯留が始まると、胸水抜去のために高い頻度で、下手すれば毎日の通院が必要となってきます。
もし猫ちゃんの心筋症などの心臓病で、動物病院に頑張って通院している場合には、いつかくるその日に備えて、一度在宅医療が可能な往診専門獣医師に相談しておくことをお勧めします。
体調を大きく崩してから、急いで往診専門の動物病院を探し出すと、もしかするとなかなか見つからなかったり、思っていた先生と違う像の獣医師にお願いすることになってしまった、ということも多くあります。
東京、千葉、埼玉、神奈川であれば、当院が訪問することが可能ですので、まずはお電話ないし問い合わせフォームから、今のご状況を教えてください。
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大型犬は一般的に、小型犬と比べて寿命が短いです。
猫と比べ犬では品種ごとで、平均寿命が大きく異なることから、今時点で愛犬が高齢なのかどうかは、それぞれの犬種の平均寿命を参考に考えてあげましょう。
小型犬で平均寿命が15歳程度であり、よく10歳からは高齢期ですとお伝えしていることを考えると、平均寿命の2/3程度を過ぎた頃からは、いつ何が起きてもおかしくないという心持ちでいたほうがいいです。
今回お話しするのは、東京江東区に済むゴールデンレトリバーのレンくんのお話です。
急に立ち上がれなくなった
ゴールデンレトリバーのレンくんは、11歳8ヶ月、48kgの元気な男の子でした。
いつも通り散歩に出ていたところ、急に座り込んでしまい、そこから動かなくなってしまったとのことでした。
どうにか家の前まで近所の方の力を借りて持って来れましたが、玄関から部屋の中に運ぶのもかなりの力が必要で、またレンくん自体も元気がなくなってきてしまったことから、通院は難しいと考え、急遽往診のご連絡をいただきました。
当日予約の受付枠が確保できたため、2時間ほどでご到着することができ、状況を詳しくヒヤリングさせていただきました。
健康診断では問題なかった
3ヶ月ほど前に、1年健診でかかりつけの動物病院で詳しく検査してもらっていましたが、その時には何も異常は認めなかったとのことでした。
血液検査結果を見させていただきましたが何も異常所見はなく、この年齢のゴールデンレトリバーにしては、肝臓や腎臓、心臓など含めてもとてもいい数値をキープできていました。
健康診断はその時点でのデータであり、意味するのは未来ではなく過去であり、それまでの通信簿だと思っていただいたほうがいいとお伝えしました。
触診にて複数箇所のリンパ節が腫れていることを受け、多中心型リンパ腫が最も可能性が高いと考えました。
在宅緩和ケアプランの構築
抗がん剤治療の選択もありますが、環境的にも毎週通院させることは難しいだろうということと、もうこの年までよく頑張ってくれたので、あとは苦しくないように余生を家の中で過ごさせてあげたいというご家族様の意向を受け、在宅緩和ケアプランを構築していきました。
内服薬プランと注射薬プラン、注射薬併用プランの3つから選択することができ、お薬は飲ませられるとのことから内服薬プランで進めることとしました。
ただし、もし急に飲めなくなることがあるため、その時は注射薬にて投与できるように、3回分の注射薬セットを準備し、常備させておくことで急な変化にも家族だけで対応できる環境を構築しておきました。
内服薬は6種類でしたが、体重が大きい分錠数も増えてしまいましたが、それでも簡単にご飯と一緒に平らげてくれるので、ご家族様も不安なく投薬を開始することができました。
体調低下からの1週間
初診から4週間ほど経った日、急にお薬を飲めなくなったので注射薬を使います、というご連絡をご家族様から受けました。
診察予定日を前倒しし、急遽夜間の時間帯で訪問したところ、レンちゃんはだいぶ弱々しくなっていました。
今朝から急にご飯も食べなくなり、もう厳しのかなと思ったとのことでした。
血液検査では黄疸数値の上昇を強く認め、肝臓、腎臓ともに大きく悪化していることを認めました。
超音波検査では、胸水貯留はなかったのですが、腹水が貯留しており、ただ抜去するほどではありませんでした。
利尿剤の使用を検討し、膀胱にカテーテルを留置することで、そこからおしっこを引き抜いてあげることで、動かすことが難しい場合にも、尿による汚染を予防することができます。
おそらくもう長くないことを宣告し、この日から皮下点滴を用いた医薬品の皮下投与プランにシフトチェンジさせ、そして最後の日まで走り抜けました。
家の中に空いた大きな空間
レンくんが旅立った後の家の中は、とても静かで、部分部分に違和感のある広いスペースがありました。
そこはレンくんのおもちゃ箱だったり、トイレ、寝床やご飯の位置だったと伺いました。
診察はいつも1階の客室で行っていたこともあり、奥のリビングの生活環境は、この時初めて見せていただけました。
壁中に飾られたレンくんと、楽しそうに写っている家族みんなの笑顔から、過ごしてきた時間のやさしさを感じました。
ンくんとの別れは辛かったですが、先代も、その先代もずっとゴールデンレトリバーを迎えていたこともあり、迎えた時から最後の日のことを考えていたとのことでした。
最初の子は動物病院に入院中に旅立ち、2頭目は交通事故出なくなってしまったことから、レンくんは家の中でゆっくりと最後を迎えさせてあげたいという意向が最初からあり、それを実現できたことが何よりも嬉しかったと話してくれました。
最後の瞬間を見届けるのは辛いですが、それでも腕の中で眠らせてあげることができたことを誇りに思っているとのことでした。
勇気を持って決断する
どんな最後がやってくるのかは、誰も断言できません。
ただ、どんな最後にしてあげたいのかを考えることは、いつからでもできることです。
いざその時がやってきてから考えるには、大き過ぎる課題だと思います。
いつからでも早すぎることはないので、動物と暮らすご家族様には、是非考えておいてほしいと思っています。
レンくんのご冥福を心からお祈り申し上げます。
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腫瘍(がん)に罹患した犬猫の多くは、血液検査などで評価できる腎臓や肝臓などの数値に、特別な異常所見を認めないことが多いです。
病気は同時に2つ以上生じないという考え方があり、2つ以上の病気が同時に存在するときには、おそらくストーリー性を持ってどちらかが先で、その結果次の病気を作っていると考えることが多いなという印象を持っています。
犬猫で在宅緩和ケアを選択で大切なことは、「後ろから考える」ことです。
これは、厳しい言葉になりますが、とても大切なことなので、是非覚えておいてほしいです。
①何か症状があったときには、②検査を行い、③検査結果を踏まえた治療プランを組んでいきます。
例えばその治療プランは、すでにもう望んでいないものであるのならば、その一つ前にある検査は、必要なのでしょうか。
もちろんまだ若く体力のある犬猫において、治療プランに全力で臨んでほしいと思っていますが、その治療プランの先には、まだまだ精査の過程で全身麻酔や侵襲性の高い組織生検など、いろんなことが構えているかもしれません。
しっかりと担当医から的確な情報をもらい、その内容を持ち帰って家族で話し合い、家族としての決断をしてください。
今回話すのは、高齢期の猫ちゃんで、乳腺腫瘍の肺転移が確認された症例についてです。
高齢猫(17歳)の乳腺腫瘍
1年ほど前に乳腺のしこりを見つけ、動物病院に通院したところ乳腺腫瘍と言われ、片側切除と所属リンパ節までの摘出を行いました。
広範囲の組織を摘出するため、痛みが強いこともありますが、何より猫ちゃんに恐怖が強く染み付いてしまったようで、キャリーを見るたびに震えて泡を吹くようになってしまったとのことでした。
そしてその2ヶ月後、反対側にもしこりが見つかり、おそらく乳腺腫瘍であるとされましたが、前回の手術の時のぐったり感がもう可哀想だと考え、外科を断念しました。
外科手術は断念しましたが、2週間に1回の検診で肺のX線検査(レントゲン検査)を行なっていたのですが、片側での乳腺腫瘍確認後3ヶ月で、肺転移を認める所見が、見つかりました。
まだ呼吸状態の悪化などが伴うことなく経過観察を行なっていた中での発見で、すでに通院後に元気がなくなるという所見はあったのですが、それが目立ってきたということもあり、抗がん剤や外科手術などを行わないのであればと、通院しないで済む「在宅緩和ケア」に切り替えたいと、ご相談を受けました。
ご自宅に訪問すると、まだ元気で食欲なども衰えていない様子でしたが、少しだけ呼吸に違和感を感じる様子を見受け、ご家族様にそのことを確認したところ、1週間ほど前からキャットタワーに登らなくなったことがわかりました。
猫の緩和ケアを進める上で大切なことは、①猫自身のストレスを最小限にする、②必要な検査は状態に応じて行う、③私たちのような外部の人間が猫と接触する頻度を下げる、ことだと考えています。
猫のストレスばかりを優先してしまうと、現状を把握することが叶わなくなり、結果として十分な緩和ケアを導入することができません。
例えば、最後まで皮下点滴をした結果苦しんだ、というブログをいろいろな場所で拝見しますが、おそらく循環や代謝を鑑みずに決められた液量で実施した結果だったと考えています。
肺転移を伴った猫ちゃんへの内服薬などの経口投与は、かなりハードルが高いと思って過言ではないです。
痛みが出始めたときや咳が始まった時、そして呼吸悪化を認めた時など、乳腺腫瘍の肺転移で予想できる体調の変化に対して、事前に何ができるのかなどを相談し準備することで、家族として「できる環境」を構築していきました。
酸素環境を徹底し、皮下投与に徹してもらい、最後まで一緒に走り抜けました。
当院の往診への在宅緩和ケア切り替えから105日目、お母さんの腕の中で眠りにつきました。
最後は少し苦しい時間を過ごさせてしまったけど、ほんの一瞬だけの苦しみで旅立てたことが何より嬉しかったと、お別れのご挨拶で伺った際に、ご家族様が言ってました。
肺転移では、何よりも酸素環境に徹することを推奨しています。
「酸素発生装置を1台レンタルして、酸素ハウスがあればもう大丈夫、むしろこれしか方法がない...」
そんなことはないです。
酸素環境について、またどこかで詳しく話せればと思います。
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年末年始の休診情報
●往診受付最終:2024年12月27日
●往診休診:2024年12月28日〜2025年1月3日
●往診受付開始:2025年1月4日
初診の方へ
最後の時間を見据え、早期から在宅緩和ケアに切り替えるご家族様からのご相談を多くいただいております。
緩和ケアに入るためには、まずは生活環境や家族環境の把握、そしてどこまで何をしてあげたいのかなどのヒヤリングによる方針決定が必要となってきます。
決められた方針に沿って進めて行きますが、途中でご家族様に心境の変化があった場合には、その都度ヒヤリングさせていただき、方針変更を行い、最後の日まで一緒に向き合って行きます。
例えば、がん(腫瘍)の症例では、腫瘍外科や化学療法(抗がん剤など)は使いたくないが、苦痛を少しでも減らす方法はないかとの相談をいただく機会が多いです。
腎臓病(腎不全など)の症例であれば、皮下点滴のために通院する必要がなくなることを目的に、在宅での皮下点滴トレーニングを希望される方が多い印象です。
検査は通院で行うか、もう検査から在宅で実施できるように、訪問医療への切り替えを行うかの2択から選択できます。
血液検査や超音波検査、尿検査などを定期的に行なっている場合には、それらの検査は家の中で実施することかが可能であり、X線検査が必要な場合には通院ができるかどうかにもよりますが、都度ご相談しながら方針決定の補助をさせていただいております。
なお、すでに持病を抱えていたり、通院は性格的、環境的に難しい場合、最終的には往診への切り替えを検討している場合には、体調が著しく低下し、もう何も食べない、動けないなど、ぐったりしてしまう前に、まずはご連絡ください。
事前に状況を把握させていただくことで、「急変時にどうしたらいいのか」をお手伝いさせていただきます。
もし年末年始の休診期間に入ってしまったとしても、そのタイミングぐったりしてしまいましたら、慌てずにまずはご連絡ください。
当院での処方管理期間中のご家族様
休診期間中にぐったりした場合には、まずはご連絡ください。
スタッフが待機しておりますので、お電話にて状況を詳しくお伺いさせていただきます。
なお、緩和ケア、終末期ケアに向けて、在宅での皮下点滴トレーニングがお済みの場合には、内服ができない状況でも、注射薬の処方にてご自宅で対応していただくことが可能です。
生活環境を踏まえた診療プランを組ませていただいておりますので、安心して年末年始をお過ごしいただければと思います。
2024年も残すところあと僅か。
今年も心穏やかに過ごせることを祈りましょう。
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本拠点:
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