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犬猫 在宅緩和ケア症例の最近のブログ記事

猫ちゃんの病気として有名なものに、甲状腺機能亢進症があります。

 

☑︎ご飯をよく食べる割には、痩せたような気がする。

 

☑︎毛並みが粗造になった気がする。

 

☑︎気が立ってるような気がする。

 

など、わかりやすい所見はいくつかありますが、中にはほとんど症状を表さないのに、甲状腺機能亢進症を発症している猫が一定数いる印象を受けています。

 

通常の動物病院では、血液検査項目をギリギリまで絞って検査されることが多いですが、これは診療費を抑え込むために、獣医師が必死に考えて項目を減らしてくれているからだと考えられます。

 

しかし、その分見落としが出るかもしれないことを理解していなければいけません。

 

追加検査が必要にあれば、また通院しなければいけないし、また針刺しという侵襲性のある行為を行わなければいけないので、できれば1回で広く検査してあげたいという方と、とはいえ金額の安さを重視する方と、二分されると思います。

 

通院頻度が高くなり、針刺し頻度も高くなることは、犬猫にとってストレスであることに間違い無いと考えています。

 

もし検査項目をもっと広く見てもらいたい場合には、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。

 

今回書かせていただく症例は、重度の肝障害と黄疸を伴い、かかりつけの動物病院からは何もできないのでこのまま旅立つのを待つしかないとされた猫のハナちゃん、14歳の女の子の緩和ケアについてです。

 

はなちゃん①.jpg

 

当院での在宅緩和ケアでは、最初に広く検査をさせていただきデータを集め、データに基づいて、在宅緩和ケアプランを構築していきます。

 

検査結果から、隠れていた病気が見つかり、毎日の点滴によって、状態が調子の良かった頃のように戻ってきてくれています。

 

検査項目を絞ることだけが正義じゃないかもしれません。

 

既往歴

2021年に腎臓の数値が悪いとされ、血管拡張薬の内服を開始と、2週間に1回の通院で、ビタミン剤などを入れた皮下補液を実施するように指示されていたとのことでした。

 

2024年1月20日の段階では2.6kgあった体重が、2月2日から急に食べなくなってしまったことを機にガクッと下がり、2月4日時点では2.1kgまで減っていました。

 

また、この日は検診日だったこともあり動物病院に通院させて検査したところ、肝臓の数値が著しく悪化していることを指摘され、余命1週間とされたとのことでした。

 

今まで肝臓について何も指摘されてなかったこともありましたが、今回も特別今後の方針を示してくれず、ただ余命だけを言われてしまったことから、もし厳しいのであれば、もう苦手な通院はさせないで、在宅緩和ケアに切り替えたいという想いで、当院までご連絡をいただきました。

 

初診(診察1日)

見るからにぐったりしていたこともありましたが、血圧がしっかりしていることから、採血、そして超音波検査を実施することを踏み切りました。

 

猫のはなちゃんは、特別大きく嫌がることなく終始検査に協力してくれたこともあり、検査にかかる時間は、おおよそ15分ほどで完了することができました。

 

検査後も、好きなお部屋にトコトコと歩いて行き、そこでくつろいでいてくれましたので、現在予想している内容と、今後の流れ、今後起こりうることやその時はどうすべきなのかなど、幅広くお話しすることができました。

 

また、すでに苦い内服薬を飲ませるには厳しい状況だったこともあり、苦味のほぼない内服薬のみで作成したシロップ剤を1種類、朝晩の投薬と補水を目的とした皮下点滴としました。

 

皮下点滴トレーニングも問題なく完了し、医薬品もお渡し、この日から猫のはなちゃんの在宅緩和ケアが開始されました。

 

はなちゃん②.jpg

 

再診(診察5日目)

状態がかなり安定しており、以前のはなちゃんとは別の猫ちゃんのような毛並みにまで回復している姿を見せてくれていました。

 

3日間も食べられなかったご飯を食べてくれ、お水も飲め、ジャンプまでできるほどまでに改善してくれたとのことでした。

 

初診時に実施した血液検査結果では、肝臓の数値がかなり高く、黄疸も強く出ていることがわかりました。

 

心臓の数値も高かったのですが、甲状腺の数値がかなり高いことが検出されました。

 

この日から、甲状腺の薬、心臓の薬を開始して、更なる安定を図ることとしました。

 

 

はなちゃんの在宅緩和ケア

 

もう治らない、余命1週間と言われて家に帰った後も、苦しい時間は続きます。

 

今どんな状態で、最後の日までの間にどんな変化が起こり、どんな症状を出すのか。

 

その時どう捉えて、何をしてあげられるのか。

 

治療が叶う状態であれば、ある程度の診療時点での説明で十分かもしれませんが、緩和ケア、時に終末期ケアの段階では、未来に起こり得る変化までをお伝えしておく必要があります。

 

本当に今の準備だけしかできないのか。

 

不安は募る一方であり、その不安は自然に減少することはないです。

 

猫のはなちゃんの場合には、たまたま東京世田谷区だったこともあって、私たちがお伺いすることができ、在宅緩和ケアプランを組むことができました。

 

もしお伺いできないエリアにお住まいの場合には、お薬だけを受け取って帰るのではなく、不安な気持ちを少しでも払拭できるように、かかりつけの獣医師に全部聞いてもらうようにしましょう。

 

きっとご家族様のお力になってくれるはずです。

 

最後まで粘り強く、少しでも緩和できるよう、方法を追求してあげましょう。

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猫の口腔内腫瘍で最も多いとされるのが、扁平上皮癌です。

 

扁平上皮癌を抱えると、口の動きに合わせて痛みや出血を伴う印象があり、ご飯を食べなくなり、動かなくなるという経過をよく見受けます。

 

また、発生場所にもよりますが、頬が腫れてくるように見えることから、歯の病気に分類される根尖部膿瘍を疑われ、根尖部膿瘍の治療に入ってしまう場合があります。

 

この場合にも、基本的には麻酔下での処置となるため、口腔内をしっかりと観察することができ、その違和感から細胞診などの実施を踏み切り、扁平上皮癌が発見されるというケースもあります。

 

また、初期であれば腫脹も軽度なため、もしその時に鼻風邪や鼻炎のような症状を伴っていた場合には、猫風邪などで様子見とされてしまうことが多いです。

 

猫風邪の治療に、もしプレドニゾロンなどのステロイドを使用されていた場合には、少し状態が改善してしまうということが起こってしまうかもしれません。

 

そのため、細胞診などの麻酔をかけた検査への踏み込みが遅れてしまい、猫風邪にしては症状が長く、改善したのに徐々に悪化してきておかしいとされ、ようやく麻酔に踏み切り口腔内を精査すると明らかな違和感を認め、検査、診断とつながるという、少し回り道をしてしまう可能性がありますので、注意が必要です。

 

この病気は、明らかな変化(頬の腫脹や鼻の形状変化など)を伴っていなければ、検査に麻酔が必要となることから踏み込まれづらいところがありますが、もし見つかれば腫瘍性疾患となり、可能であれば腫瘍を専門とする動物病院でがん治療に踏み込みましょう。

 

また、現状は慢性の猫風邪だと思い長期間の服薬をしている猫ちゃんの場合にも、一度セカンドオピニオンとして、腫瘍専門の動物病院で、がん専門医の診察を受けることをお勧めします。

 

今回書かせていただく症例は、東京江東区にお住まいのさぶちゃん、12歳の日本猫の男の子です。

 

現在も継続中の在宅緩和ケアについて書かせていただきます。

さぶちゃん1.png

 

今までの経緯

2023年12月に左頬からの排膿を認めてかかりつけの動物病院に通院したところ、その違和感から検査に踏み込み、扁平上皮癌と診断されました。

 

その状況から、内服薬での緩和治療とされていましたが、2024年2月を迎えると徐々に食欲が下がり、内服薬を受け付けてくれなくなりました。

 

もともとドライフードを好んでいましたが、この時はすでにチュールしか食べてもらえず、それの量も減ってしまっていました。

 

もう通院させるのは厳しいと判断され、2024年2月13日に当院までご連絡をいただきました。

 

 

初診(診察1日目)

お伺いすると、猫のさぶちゃんはリビングで伏せており、手をぴんと伸ばしたまま、終始じっとしていて動きませんでした。

 

目が開かないほどの左頬の腫脹もあり、毛並みもパサパサ、脱水も著しい状況でした。

 

過去の血液検査結果、かかりつけ動物病院での処方歴など、お母さんがお持ちだった全てのデータを見させていただき、現在までにどんなことがあり、何をされていたのかなどについて整理させていただきました。

 

血液検査結果では、腎臓や肝臓などに異常所見はなく、栄養状態なども含めて特記すべき所見は認めませんでした。

 

腫瘍疾患を抱えていて、特に肝臓転移や腹腔内腫瘤による障害などを伴わない場合には、血液検査結果がキレイなことが多いです。

 

そのため、肝臓や腎臓の機能は正常に残っていることから、現在の状態をサポートしてあげ、自力でご飯を食べたり、お水を飲んだりできるようになれれば、体を維持できることが期待できます。

 

お母さんのお話によると、まだ歩いて水を飲みに行っているが、全然飲めていないように感じるとのことがあり、おそらく扁平上皮癌によって、舌をうまく動かせていない可能性を疑いました。

 

食欲がないのも、痛みと口を動かすことが辛いのではないかと疑いました。

 

排便も、食欲の低下とともに徐々に少なくなり、ころっとした硬いものが少しでた程度とのことでした。

 

おしっこは出ていないとのことで、腎臓の問題で尿の生成ができていない、いわゆる腎不全の最終段階にある無尿期ではなく、単純に水が飲めていないことで、体内にある少量の水分をうまく運用して生命維持をしている可能性を疑いました。

 

そして、診察開始の少し前に吐血のような症状があり、結構な量の血が出ていたこともあってか、舌色はかなり白く、出血性の貧血を伴っている様子でした。

 

今の状態に出血が重なったこともあり、さぶちゃんはぐったりしていたと考えました。

 

状態から、同日に検査で負担をかけることは避けた方がいいと考え、今までのデータを持って在宅緩和ケアプランを組み立てていくこととし、脱水補正ではなく投薬を目的とした皮下点滴を1日2回実施してもらうこととしました。

 

在宅緩和ケアプランを組む上で大切なことは、病状だけでなく、この犬猫と暮らすご家族様の環境などをすることです。

 

具体的には、生活環境や家族構成、誰がペットの看護や介護に協力してくれるのか、その人たちの日常のスケジュールなどです。

 

猫のさぶちゃんでは、まずは皮下点滴をご自宅で実施していただくために、皮下点滴のトレーニングをしていただきました。

 

1つ1つの手順を一緒に、ゆっくりと指導させていただきますので、初めての方でもご自宅で、家族内で皮下点滴を実施できるようになります。

 

道具をお渡しし、次回診察を3日後としました。

 

薬の効果がどこまで出るかにもよりますが、状態が悪くなってから内服薬がうまく飲ませられていなかったことを考慮すれば、少し状態が上がってくることが期待できると考えました。

 

再診(診察4日目)

 

そこには、元気さを取り戻したさぶちゃんがいました。

 

さぶちゃん2.png

 

本当にびっくりするくらいまで状態が上がっており、遊んでって言わんばかりに猫じゃらしのおもちゃを持ってきては、戯れてくれていました。

 

ふらつきも強く、お水も飲めていなさそうだった初診の時とは打って変わり、動きも俊敏にあり、ジャンプまでするようになったとのことでした。

 

水もちゃんと飲めているようで、体重も増え、毛並みもだいぶ改善しており、もう見た目が別の猫ちゃんのようでした。

 

ご飯もチュールだけでなくウェットフードを食べてくれるようにあり、少し軟便が出ましたが、その後良便に戻りました。

 

さぶちゃん3.png

 

在宅緩和ケアの可能性

私たちが得意とする「犬猫の在宅緩和ケア」では、末期症状だった犬猫の状態を少しでも楽にしてあげることで、体の不自由左から諦めていた行動を、犬猫たちの意思によってまた時間を与えられる可能性があります。

 

また、緩和ケアは治療ではないため、延命かどうかの問いには答えられません。

 

しかし、少しでも楽に余生を過ごさせてあげたいと考えた場合、緩和ケアは最良の選択肢になりうると考えています。

 

犬猫は言葉を話せないため、送られてくるサインをどう受け取り、どう判断していくかの全ては、ご家族様次第です。

 

最後の時間を、できる限り家の中で過ごさせてあげたいとお考えの場合には、在宅緩和ケアをお勧めします。

 

ご自宅の地域まで往診で来てもらえる動物病院、または往診専門動物病院があるかどうかを、事前に調べておきましょう。

 

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猫の乳腺腫瘍の多くは悪性です。

 

乳腺腫瘍に関しての記事はたくさんweb上に溢れていますので、もし犬猫の乳腺腫瘍に関する治療方法や外科の術式、抗がん剤の話や余命の話などは、是非そちらを探してお読みいただければと思います。

 

私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、病気を抱えたが、手術や抗がん剤などの攻めた治療を望みたくはないが、せめて残された時間を少しでも緩和的に過ごさせてあげたいとお考えのご家族様のお力になれます。

 

過去にも、乳腺腫瘍の記事を書いていますので、もしお時間がございましたら一読いただければと思います。

■乳腺腫瘍の高齢犬

■乳腺腫瘍末期の高齢猫

 

今回ご紹介する症例は、乳腺腫瘍を患った猫ちゃんです。

 

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【既往歴】

2021年2月10日に乳腺のしこりを認め、すぐに2次医療施設にて片側の乳腺全部と所属リンパ節の切除を行いました。

 

だいぶ痛そうな術後だったとのことでしたが、病気を乗り越え退院することがで、つい先日まで、いつも通り過ごせていたとのことでした。

 

定期検診も3ヶ月に1回、苦手な通院でしたが意を決して動物病院に通院し、血液検査、X線検査、超音波検査としっかりと診ていました。

 

直前の検査では問題なかったとされた中、その1ヶ月後の2023年4月3日夜に咳、ふらつき、食欲低下を認め、動物病院に行って再度検査してみたところ、肺に腫瘍病変を確認されました。

 

抗がん剤や外科手術はすでに不可とされ、自宅で見守るようにと内服薬と坐薬をもらいましたが、お薬を飲ませることができず、日に日に弱々しく、また咳も激しくなり、ふらつきも強くなってしまったため、もう在宅医療に切り替えてあげたいと考えたとのことでした。

 

【初診時】

普段から通院できる性格の猫ちゃんということもあり、診察にお伺いすると、スリスリしに出てきてくれました。

 

話しかけてくれて、撫でてとせがまれるのですが、その呼吸状態は荒々しく、急ぎ酸素環境の準備が必要であることと、この状態だと血液検査などのストレスがかかることは避けた方がいいとお伝えしました。

 

呼吸状態が悪い犬猫に対して、通常は酸素を嗅がせ、呼吸を安定させながら検査や処置を実施しています。

診療時には保定してもらうことが必須になりますが、当院では動物看護師を含めた複数のスタッフと一緒にお伺いしているため、診療の補助の全ては、基本的に必要ありません。

呼吸状態を管理しながらの保定業務は、訓練を積んだ専門チームに任せるべきですが、多くの往診専門動物病院が獣医師1人でお伺いしていることから、この業務をご家族様が担わなければいけません。

胸を強く押さえてしまうことで、呼吸を悪化させてしまい、最悪致命的なことになってしまうことを避けるためにも、もし往診専門動物病院を始めてご利用される場合には、必ず動物看護師が同行しているのかを確認するようにしましょう。

 

その場で酸素発生装置、酸素ボンベ、酸素ハウスの手配完了し、運用方法を簡単にご説明させていただきました。

 

翌日の診療までに全部が揃うこととなりましたので、詳しい運用方法はそこでご説明させていただくこととしました。

 

超音波検査にて特記すべき所見は認めませんでした。

 

処置は皮下点滴を実施したのですが、液体量を極力なくし、なるべく早く処置を完了させてあげることが優先であると判断しました。

 

猫ちゃんに特に多くみられる腎臓病など病気では、脱水補正の観点からも皮下点滴の輸液量をちゃんと多く入れます。

 

もちろん貧血(腎性貧血など)や心臓の状況、高血圧はどうなのか、そもそも皮下点滴に耐えられるのかなど、多岐にわたる情報整理を一瞬で行い、できる限り負担のない、かつ多めの量を投与してあげるよう専念します。

 

しかし、呼吸器疾患や腫瘍性疾患などでは、腎機能はそもそもダメージを受けていないケースが多く、その場合には少量であってもしっかりと腎臓が機能してくれます。

 

ペットの在宅終末期ケアでは、その子がいかにして普段の慣れ親しんだ環境で、他に邪魔されることなく悠々自適に過ごさせてあげられるかを考えてあげたいです。

 

そのため、ご家族様だけで処置の全てを完結できるようなプランを構築することに、私たち往診専門動物病院は特化しています。

 

この日の診察では、過去の血液検査結果や既往歴、今までどんな経過を歩んでこられたかなどを幅広くヒヤリングさせていただき、明日の診療までの暫定的な診療プランを組みました。

 

【再診】

初診時とは変わり、足並みも軽やかであり、食欲も上がってきたとのことでした。

 

もちろん病気が治ったわけではなく、症状が緩和されただけとわかっているものの、昨日よりも元気そうな姿が本当に微笑ましかったです。

 

酸素環境を整える道具も全て揃っており、この日は酸素環境の構築および運用皮下点滴トレーニングの2つをご説明させていただきました。

 

呼吸状態から、まずは酸素運用方法を吹きかけによることで、日常コントロールとしました。

 

また、当院としておすすめしている酸素ハウスは、見栄えは良くはないものの、機能性重視でご紹介させていただいています。

 

酸素ハウス.jpg

 

 

呼吸状態に合わせて、酸素吹きかけから初めていき、酸素ハウス内での管理となっていきます。

 

酸素室内での管理となっても、掃除のタイミングやご飯のタイミングなどで酸素ハウスを開閉する必要があります。

 

その時に登場するのが酸素ボンベです。

在宅酸素ボンベ.jpg

 

わんにゃん保健室では、常に呼吸状態の悪化を想定した診療を心が変えており、常時酸素ボンベを数本揃えています。

呼吸状態が悪い犬猫、または検査や処置で呼吸状態が悪くなりそうな場合には、使用することにご同意いただいております。

 

酸素室内の酸素濃度が下がってきたら、酸素ボンベでブーストしてあげることで、酸素発生装置だけでの酸素コントロールよりも酸素ボンベを併用した方が、より利便性高く運用することが可能です。

 

そして、皮下点滴のトレーニングをしました^^

 

【まとめ】

今回のように、呼吸状態が悪い犬猫の症例で、いかにして呼吸状態を悪化させないのかが鍵になってくると考えています。

 

そのためには、詳しいヒヤリングと既往歴、今までの経緯や犬猫の性格など、詳細に把握しておくに越したことはありません。

 

今回の症例では、初診におおよそ2時間半ほどかかりましたが、この猫ちゃんの性格や病状をしっかりと把握できたこともあり、スムーズに診療に入ることができました。

 

乳腺腫瘍、特に猫ちゃんの乳腺腫瘍は悪性の可能性が高く、発見された時点で、すでに末期であるということはかなり多くあります。

 

まずは普段からのコミュニケーションの中で、乳腺にしこりがないかを入念に確認し、もしあった場合には、外科手術を選択するのか、または痛い思いをさせるくらいなら運命を受け入れ、在宅での終末期ケアにするのかを考えましょう。

 

保定業務は、呼吸状態が悪い犬猫においてかなり高度な洞察力が求められます。

 

健康診断程度であればまだしも、病気でもうぐったりしている場合には、動物看護師に保定業務が頼めるのか、必ず担当される動物病院に確認するようにしましょう。

 

往診専門動物病院のほとんどが、獣医師一人で運営しています。

 

動物看護師をアテンドしてくれるのか、往診専門動物病院が初めての場合には、必ず電話などで確認をとりましょう。

 

乳腺腫瘍は怖い病気です。

 

もし乳腺にしこりが見つかった場合には、まずは獣医師にご相談ください。

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在宅でリンパ腫と向き合う④

猫ちゃんとの暮らしは、わんちゃんとの暮らしと違い、お互いに独立した存在として生活を送られている方が多いように感じています。

 

しかし、最後が近づくに連れて、例外なく、人肌を恋しくなるのか、急に、または一段と甘えん坊になるようです。

 

①.png

 

最後はお皿から食べるなんてことはなくても、なぜかお母さんの手、お父さんの手からなら、少しだけ食べてくれるといった奇跡も見せてくれます。

 

その一口から、また力が湧き出てきて、ご飯を食べるようになったりとかもあり、奇跡っていつ起こるかわからないんだなと、非科学的なことに驚かされる毎日です。

 

今回の主役のみゆちゃんも、もうダメだと言われた2022年11月に、12月は迎えられないことを突きつけられながらも、そこからの快進撃はもう、その場にいるご家族様をはじめ私たち動物病院スタッフですら驚きを隠せませんでした。

 

リンパ腫は化学療法に反応する可能性が高いとされており、症状がコントロールされ、腫脹していたリンパ節や転移部位が小さくなっていることが見られれば、きっとどんどん攻めたくなると思います。

 

ただ、抗がん剤は通常の薬と違って、持ち合わせる副反応の強さが大きいものが多いです。

 

・・・今朝までは元気で、抗がん剤を投与した後、ぐったりしてしまった。

 

抗がん剤を継続を断念し、在宅医療にて緩和ケアを希望される相談電話で、最も多い事例です。

 

ぐったりしてしまうと、続けての抗がん剤投与はおろか、通院すら難しくなると思われます。

 

高齢猫だったみゆちゃんにとって、今回の在宅切替を選択されたことで高頻度での通院ストレス、待合室でのストレスなど、外出に伴うストレスの全てが軽減されたことだと思います。

 

診察の時は、必ずいつものかまくらの中にいてくれて、検査・処置が終わると、お母さんの寝室に移動し、僕らがちゃんと帰るのかを見定めるように、玄関の方をじ〜っと見つめていました。

 

採血や超音波検査は、在宅であったとしても全くストレスのない検査ではなく、保定されるストレスや針刺、お腹を押されるなど、通常の動物病院と同じようなストレスはあります。

 

しかし、その後すぐに好きな場所で自由に過ごせることで、きっと大きなストレスになることなく、2週間に1回の検査にも耐えられていたのだと考えています。

 

普通なら嫌がって、お腹に力が入り、腹圧が上がてくるのですが、みゆちゃんは腹圧を抜いてくれて、とてもリラックスしているような姿で検査を受けてくれました。

 

みゆちゃんはきっと、全部わかっているんだなと思いました。

 

再診113日目

 

この日はいつもの検診を予定していましたが、少し機嫌が悪そうな感じでした。

 

もしかしてと、可視粘膜と言われる口腔内粘膜や皮膚の薄い場所などを確認したところ、普段よりも黄色っぽい所見を確認しました。

 

おしっこの色も濃くなっているようで、おそらく黄疸が出てきたと判断しました。

 

採血の時にシリンジ(注射器)に入ってくる血液の性状に、感覚的に体がお別れの準備に入ったような感じを受けました。

 

そしてこの日、初めて鳴き声を聞きました。

 

みゆちゃんの声って、こんな声なんだって、変な話、その声が聞けて嬉しかったです。

 

検査が終わると、いつもならスタスタ歩いて寝室に向かいますが、この日はそんな体力はなく、保定が終わってもその場から動けずにいました。

 

みゆちゃんをお母さんが抱っこしてくれたのですが、お母さんにも怒っていました。

 

検査はずっと嫌だったけど、我慢してくれていたんだよね。

 

我慢して受けてくれてありがとね。

 

お薬も、点滴も、全部受け入れてくれて本当にありがとね。

 

この日の採血をした際に、極度の貧血が起きていることを感じ、同日酸素発生装置を手配しました。

 

翌日には届くことで酸素レンタル会社に相談できましたので、翌日の夜に再診を組み、この日を終了としました。

 

ただ、今夜が山であることをお伝えし、今日は一緒に過ごしていただくことをお勧めしました。

 

再診114日目

 

酸素発生装置がご自宅に届き、なかなか診療でお会いできなかったお父さんにも、久しぶりにお会いすることができました。

 

酸素発生装置の運用方法は、病気だけでなく、その子その子の生活環境や性格を考慮していくことが大切です。

 

酸素ハウスのサイズや素材、形状など、考えなければいけないことがたくさんあるのですが、多くの場合が急を要するため、相談しながらも最初の走り出しとしてのハウス設計をその場で決めていきます。

 

そして、知っておいていただきたいことは、酸素ハウスなんか誰も入りたいわけがない、と言うことです。

 

全く必要のない同居の犬猫にとっては、なぜか格好の巣穴になるのか、その中を好むと言うことが多く見られますが、本当に必要な犬猫ほど、酸素ハウス内での管理を嫌います。

 

今回は、みゆちゃんが好きなかまくらを酸素ハウスがわりになるようにDIYして、大体の酸素運用の運用骨格を知っていただきました。

 

結局、酸素ハウス内ではなく、ホースを嗅がせてあげる形になったようです^^

 

②.png

 

 

 

 

 

2023年3月15日

 

お母さんに頭を撫でてもらいながら、生涯に幕を閉じました。

 

苦しそうな素振りもなく、ただただ安心しながらゆっくりと呼吸が止まっていったとのことでした。

 

在宅医療切り替えは特別なことではなく、人と同じようにごくごく自然の流れです。

通院させられるうちは通院をさせてあげ、もう難しいと判断したらすぐに切り替えられるように、通院できるうちから将来を見据えて、最後の先生を選択しておくこと、是非全ての飼い主様に推奨させていただきます。

 

小さな箱になったみゆちゃんの横には、綺麗な桜の花が優しく咲いていました。

 

みゆちゃんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室

江本宏平 スタッフ一同

③.png

 

 

前回までの経過は、以下から読めます。

・在宅でリンパ腫と向き合う①(初診〜暫定方針決定まで)

・在宅でリンパ腫と向き合う②(再診からの経過変化とプラン変動)

 

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在宅でリンパ腫と向き合う③

高齢猫のみゆちゃんのブログの続きが書けましたので、是非読んでください^^

 

IMG_2904.JPG

 

リンパ腫を抱え、余命半月と言われて在宅切替を行なった2022年11月中旬。

 

本日は2023年3月3日のブログです。

 

不思議と、在宅医療に切り替えると、ストレスも少なくなるためなのか、みんな表情が穏やかになるような気がします。

 

みゆちゃんは、出会った昨年の11月から、ずっとおっとりした性格でしたが^^

 

前回までの続きは、ブログの最後にリンクを貼っておきますね^^

 

リンパ腫は、猫ちゃんが抱える病気としては比較的多いものであり、その病気から見られる症状の経過も、ある程度の道筋が決まっています。

 

もちろん、どの道を行くのかは、誰にもわかりません。

 

しかし、どんな道に進んだとしても、その時にどう対応して行くのかを事前に準備しておくことで、少しでも何かできる未来を目指すことが大切です。

 

もっというのであれば、知るだけでできなくてもいいです。

 

覚悟しておくことで、もし本当の最後の瞬間に立ち会えた瞬間、取り乱すだけでなく、少しでも心温かく過ごせればと、いつも願っています。

 

高齢猫のみゆちゃんのお話の続きが書けましたので、是非読んでください^^

 

本ブログの続きとなる再診は、おそらく2023年3月17日になると思います。

 

本日2023年3月10日、これから診察に向かうのですが、その前にあげさせていただきます。

 

 

再診96日目

この日はサラダチキン、カツオと一緒に、ご飯を少し食べているようだとのことでした。

 

便は相変わらず緩いが、体重も2.9kgから3.05kgまで増えたとのことでした。お水はお風呂場の洗面器から飲んでいます。

 

ただトイレに関しては、トイレには行くのですが、なぜかトイレの外にしてしまうという状況とのことでしたが、排泄できているということをとてもポジティブな視点で捉えてあげることしているとのことでした。

 

少しだけ嘔吐がありましたが、その後も大きく体調を崩すことなく、この日を迎えられたとのこと。

 

本日も血液検査と超音波検査を実施し、血液液検査結果、超音波検査結果通しても、大きな変化は認めませんでした。

 

病気が進行して苦しそうにしているというよりは、お迎えが来るその日を、ただマイペースに家の中で過ごしているという印象でした。

 

検査を終えると、いつも寝室に行き、玄関を眺めています。

 

また来週、その日が来ることを祈って、診察を終了としました。

 

 

再診106日目

状況は一進一退。

 

寝ている時間もさらに長くなり、ご飯もなかなか食べられなくなってきました。

 

数日前には複数回の水下痢、嘔吐もあり、もう覚悟したとのことでした。

 

しかし、たまたまあったカニを少し上げてみたところ、パクパク食べてくれ、それを切り目に鰹節のスープをのんでくれました。新しいものであれば、まだまだ食欲を出してくれるようです^^

 

高齢期、感覚的には慢性疾患の後半、特に15歳以上では、もう体重が増えることは少ないように感じています。

 

人間もそうですが、徐々に痩せていくものなんだなと、自然の摂理を感じつつも、文明の力である知識を用いて、吸収率の高いもの、栄養価が高いものを中心に上げるようにお伝えしています。

 

ただ、緩和ケアの後半からは、もうそんな話ではなく、なんでもいいので食べたいものを探してあげるようお伝えします。

 

ステーキが好きなら焼いてあげてください。

 

お刺身が好きなら最高のお刺身を準備してあげてください。

 

生クリームが好きなら舐めさせてあげてください。

 

何も悪いことはないです。

 

この子たちは、私たち人間が選んだものの中からしか、晩餐を選ぶことができません。

 

ご家族様側で療法食しかダメだと規制してしまっては、選びたくても選べないという状況を作ってしまいます。

 

お別れを覚悟したのであれば、個人としては、是非好きなものを探してあげ、一口でも食べてくれることを祈っています。

 

この日は超音波検査のみを実施し、胸水や腹水が溜まってくる頃かと嫌な気持ちも抱えつつ評価したのですが、この日も特別な変化を認めず、データ上は良好となりました。

 

また来週。

 

会えることを信じてるよ^^

 

前回までの経過は、以下から読めますので、どうぞ!

・在宅でリンパ腫と向き合う①(初診〜暫定方針決定まで)

・在宅でリンパ腫と向き合う②(再診からの経過変化とプラン変動)

 

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今回は、前回に引き続き、みゆちゃんのその後の経過についてです。

 

前回までの内容は、こちらの記事 から読んでいただけます^^

 

さて参りましょう。。。

 

猫ちゃんの腫瘍性疾患といえば、まず考えなければいけないのがリンパ腫です。

 

愛猫がリンパ腫を抱えた場合の主な流れは、大まかに以下の流れです。

 

1. 違和感に気づく or 健康診断で発覚

2. 動物病院にて腫瘍を疑う部位の細胞診

3. 細胞診で腫瘍を疑う結果だったため、麻酔をかけた外科処置が可能か判断するための精査(CTなど含む)

4. 腫瘍切除による病理検査

5. 確定診断と方針決定(腫瘍外科or/and 放射線 or/and 抗がん剤 or/and ・・・)

 

2までは負担が比較的少ないですが、3、4は麻酔が必要であり、また外科も実施となると、その身体的負担は膨大です。

 

そして、5から下、抗がん剤。

 

抗がん剤は、よく運転に例えられます。

 

通常の薬を普通車で一般道を走っているような表現とするのであれば、抗がん剤はF1レースのような印象です。

 

うまくいっているときはいいですが、トラブルがあった時の副反応は、通常の薬とは比べ物にならないくらい、ガクッと下がってきます。

 

そして、その対処に十分な対処ができるほどの抗がん剤に対する専門的な知識を持ち、副反応が出た際に理論的に向き合える獣医師がそこまで多くない、ということを知っておかなければいけません。

 

もし抗がん剤をしないならば、腫瘍外科は希望しないのであれば、3から下は必要ないと考えています。

 

積極的な治療よりも、緩和的にケアしてあげたいのか。

それとも2次医療センターなどに進み攻めていきたいのか。

 

そうは言っても、いきなり緩和ケアを選択するのは、少し薄情な印象もあるようで、初代の犬猫に対しては、攻める選択をされる方が多い印象です。

 

うまくいけばいいのですが、もし治療の過程で体力がもたないと判断されてから、また方針を切り替えて緩和ケアに切り替えることも可能です。

 

その時その時の、あなたの心を信じて突き進みましょう。

 

さて、長くなってしまいましたが、ここからは前回の続きです。

 

初診が終わり、初回処置に対してどこまで反応を示してくれたのかを評価する2日目からです。

 

IMG_2407.jpg

 

再診2日目

嬉しいことが起きました。

 

ほぼ寝たきりだったみゆちゃんは、昨日の皮下点滴後1時間半くらいで元気になってきたとのことでした。

 

今日は家の中をふらつきが多少ありながらも、スタスタ軽快に歩いて見せてくれました。

 

ほとんどなくなってしまった食欲も、一気に上がってきて、64gも食べてくれたと、嬉しそうにお話してくれました。

 

もちろんこれは薬の効果かもしれませんが、みゆちゃんに残された生命力の強さを目の当たりにしました

 

11月中か、もっても年内とされていたみゆちゃんでしたが、この改善幅を見る限り、もしかしたらまだ...って、その場にいた誰もが信じたくなりました。

 

このまま状態が上がってくれるかもしれないと判断し、同日ご家族様に皮下点滴指導をじっくりと入れさせていただき、今後はご家族様だけで皮下点滴が実施できるようになっていただきました。

 

再診3日目

昨日よりもさらに状態が上がり、今後のことを見据えて、血液検査と超音波検査を実施することとしました。

 

状態が改善したとはいえ、病気が病気なこともあるので、検査には十分な人数を揃え、酸素化しながら呼吸状態の悪化を防ぎつつ、保定していきました。

 

通常の猫ちゃんは、保定されるのがとにかく嫌いです。

 

ところが、みゆちゃんは全く嫌がらずに、身を委ねてくれました。

 

採血中、エコー検査中、一切嫌がる素振りも見せず、ただ横になって協力してくれました。

 

そして医薬品を本日お渡しとし、明日からはご家族様だけで皮下点滴をしていただくこととしました。

 

次回の診察は、3日後とし、状態が安定していれば4日後、7日後と間隔を延ばしていきました。

 

この時点では、1週間に1回程度検査を実施し、急激な数値変化が起こらないかを、慎重にモニタリングさせていただいていました。

 

IMG_1771.JPG

 

再診49日目

状態も安定してきていることから、注射プランから内服薬プランへの変更を検討させていただきました。

 

もし飲ませるのが難しかった場合には、注射薬プランにすぐに戻せる体制を整えつつ、内服に変更していきました。

 

内服薬6種類を全て苦くないものから選定し、シロップにして飲ませていただきます。

 

もし飲ませられれば、ここからは2週間に1回の検査までに減らすことができます。

 

うまくいくことを祈っていたところ、ちゃんと飲ませられたとの報告を受け、一安心でした。

 

このままの状態が長く続くことを、心から祈っていました。

 

再診71日目

少しずつ食欲が下がってしまったこともあり、内服薬プランのまま、1種類だけ皮下注射として追加処方させていただきました。

 

注射薬の量が少ないこともあり、ロードーズという細く小さい注射器に吸って準備することができましたので、刺される側も、刺す側もストレスが最小限で済みます。

 

インスリン注射の時に、よく使用される、細い針が注射器と一体になったものです。

 

状態が少しでも上がってくれることを信じ、次回も14日後の診察としました。

 

再診85日目

さらに下がってしまい、もう食欲増進の軟膏が反応しないようになりました。

 

基本は軟便だが、水っぽくなってしまったおきに下痢止めの注射を入れると、しっかりと反応してくれるとのことでした。

 

なお、下痢が止まっている日は調子がいいようです。

 

体重も少し下がっていましたが、直前の一番体調が悪そうだった日からは少し増えていました。

 

ヒレカツの中身、エビフライの中身、しらす、アジ、そして金目鯛...

 

食べてくれるなら、みゆちゃんが食べたいのなら、なんでもいいです。

 

キャットフードだけにこだわって食べられないのであれば、好きなものを好きなだけ食べてもらった方が、何倍もいいと考えています。

 

この日の超音波検査では、腸管の動きが普段よりも低下していて、拡張傾向のような所見を認めました。

 

消化管への浸潤が始まったのかもしれないと考えつつも、まだご飯を食べれば便が形成され、下痢止めにも反応を示すので、そこは様子見とさせていただきました。

 

この日から、内服薬を一部注射薬へと移行し、注射薬プランと内服薬プランを併用としました。

 

そして、診療間隔も、2週間に1回ではく、週1回とし、病状の変化を捉えていきます。

 

IMG_1764.JPG

 

今日のまとめ

医薬品を使用することで、状態が下がりすぎていない状況であれば、経験上2度だけ不快な状態が軽減し、少し楽そうに過ごしてくれることが多いです。

 

ただ、医薬品は万能ではないし、その効果は有限であり、必ず終わりはやってきます。

 

いつ体調が大きく下がってもおかしくない状態ではありますが、できることを一緒に頑張っていきましょう。

 

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猫ちゃんの病気というと、きっと多くの方で、「腎臓病」という言葉が最初に浮かんでくると思います。

 

もちろん、ほとんどの猫ちゃんで腎臓病を抱えますので、定期的な検査をしてあげることを推奨します。

 

ただ、猫ちゃんの多くで通院を苦手としているため、健康診断目的に通院させて、帰宅後にぐったりさせてしまうくらいなら、いっそのこと往診で在宅診療による健康診断を選択することも可能です。

 

往診では、血液検査、超音波検査、尿検査など、大型機器を必要としない検査は実施可能です。

 

また、検査は安全性を確保するため、獣医師と動物看護師1〜3名ほどでお伺いさせていただきます。

 

何事も手際よくスムーズに実施することで、猫ちゃんにかかるストレスを最小限まで下げてあげることを大切にし、開放後、速やかに安心できる場所に隠れさせてあげられるよう、動線確保にもご協力をいただいています。

 

本日は主疾患が腎臓病でははなく、私たち人間と同じ、旅立ち要因として最も多く挙げられる、腫瘍性疾患についてです。

 

かかりつけ動物病院にて、膵十二指腸リンパ節のFNA(細胞診)を実施し、大細胞性リンパ腫と診断された日本猫のみゆちゃんの在宅医療についてのお話です。

 

初診が2022年11月で、年越しは難しいとされていた中で、2023年1月初旬までは安定してくれて、そこから少しずつ状態が下がりつつも、2月13日現在、今日もお母さん、お父さんとゆっくりと過ごせています。

 

IMG_1750.jpg

 

初診時の問診内容

2022年3月くらいから徐々に体重が減少してきた感じはありましたが、まだまだ全身状態は良好でした。

 

この時通院していた動物病院では、体重減少に対して相談したところ、特別何もせずに様子見とされたとのことでした。

 

しかし2022年8月になると体調不良を訴え始め、ただ本格的に食欲がなくなってしまい、ご飯を食べられなくなってきたのは2022年10月9日からとのことでした。

 

2022年11月5日に状態がおかしいと感じ、11月7日に少し大きめの動物医療センターに転院し検査したところ、膵十二指腸リンパ節が腫脹していると指摘され、細胞診の結果悪性のリンパ腫と言われたとのこと。

 

このから2日間連続で抗がん剤治療を通院で行い、また毎日通院させて皮下点滴を打つようプランとされたとのことでした。

 

内服薬を4種類処方されており、ただ内服薬は状態が悪い中でも、まだ元気なうちしか飲ませられないため、今後どうすべきか悩まれていたとのことでした。

 

2022年11月17日、本来であればこの日も通院の予定でしたが、ぐったりとしている姿を見て、もう皮下点滴のために毎日通院することは体力的に難しいと判断し、在宅に切り替えて看取ってあげたいと考え、往診を希望されました。

 

 

初診時の様子

ほぼ寝たきりのみゆちゃんですが、まだお家の中を歩く体力はありそうでした。

 

食欲はもう無さそうで、排便もずっとできていませんでした。

 

それでも、お水は自分から飲みに行けて、おしっこも1日に3回は自力でトイレでできていました。

 

呼吸状態も安定しており、咳もありませんでした。

 

ただ、初診前夜に嘔吐をしてしまったとのことでした。

 

みゆちゃんが抱えている病気はリンパ腫であることから、今後もしかすると胸水が溜まってきてしまう可能性があります。

 

初診時検査

当院では、初診時に全身状態を把握するためにも血液検査を含めた、各種検査を実施しています。

 

しかし、今回は前日の検査結果が手元にあることもあり、大きく変化が出ていないとと判断したため、それらのデータを用いて診療プランを決定する、初回カウンセリングとして診療を進めました。

 

診断がついている病気であったり、また過去の検査結果が数日前のものであったりする場合には、無理に検査して負担をかけるより、まずはそのデータを持って今後のプランを組み立てたほうがいいとする場合があります。

 

ただ、もちろん検査が全てではないですが、できれば検査をしてあげたいと考えています。

 

とはいうものの、在宅での検査であっても、保定や捕獲などによるストレスは、多少なりともかかってしまうものです。

 

しかし、移動を伴わないため、検査・処置後に好きな場所にすぐ隠れられるという大きなメリットがあるので、通院が苦手な犬猫には、往診はおすすめです。

 

診療を進める上で、現状把握を優先すべきか、過去のデータと今得られる視診や望診、一般身体検査から得られたデータのみで診療を進めていくべきか、常に葛藤しています。

 

処置

今回みゆちゃんは、初回カウンセリングとして状況を判断し、皮下点滴に6種類の医薬品を混ぜて投与しました。

 

また、腫瘍性疾患であり、脱水補正のための皮下点滴ではないので、投与量も20ml/kg未満の50mlとしたこともあり、処置中もあまり嫌がることなく、静かに受けてくれました。

 

IMG_1771.JPG

 

今後のプラン

まずは3日間連続、1日1回の往診とし、状態に合わせて医薬品の量や種類を調整することとしました。

 

なお、内服薬は全部中止としました。

 

先述した通り、猫ちゃんで内服薬を飲めるのは、ほんの一部であり、また状態がまだいい時までです。

 

状態が下がってしまった時からは、できる限り注射にできる薬は注射で投与してあげ、どうしても内服でしかダメなものだけを経口投与するようにしましょう。

 

お薬の優先順位を立てて、全部飲めなくても良しとする心構えが大切になってくる時期です。

 

少しでも状態が安定し、お父さん、お母さんと一緒に過ごせる時間を今よりも快適にできればと祈りました。

 

なお現段階では、物理的な抜去は痛みを伴うこともあり、積極的に胸水抜去はしない方針としています。

 

胸水抜去の時には、特に猫ちゃんでは、往診だと鎮静麻酔をかけることが多いです。

 

そのくらい、肋間を針が貫くときに痛みがあるということです。

 

今回のまとめ

今回のブログでは、リンパ腫を抱えた猫ちゃんの在宅医療の初診について書かせていただきました。

 

いつまで攻めるべきなのか、抗がん剤を使用することが正しいのか、やめてしまうことが間違っているのか。

 

答えなんてありません。ただ言えるのは、最終的に判断するのはご家族様、ということです。

 

ご家族様と愛猫、愛犬との間には、深くて長いストーリーが存在します。

 

もしかしたら、今までの経緯の中に、今この段階で緩和に使える出来事があるかもしれません。

 

在宅での緩和ケアは医療面だけでなく、生活環境や介護面など多岐にわたる視点から実施することで、より良い診療プランを組むことができます。

 

そのため、初診ではご家族様の声をしっかりとヒアリングすることに重点を置いて、診療をおこなっています。

 

どんな悩みがあり、今この子たちに対して何をしてあげたいのか、現実問題としてどこまでできるのか、など、まずはお話をお伺いさせていただき、一緒に考えていきましょう。

 

次回は、在宅で【リンパ腫と向き合う②(その後の診療経過)】です^^

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