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在宅でリンパ腫と向き合う④

猫ちゃんとの暮らしは、わんちゃんとの暮らしと違い、お互いに独立した存在として生活を送られている方が多いように感じています。

 

しかし、最後が近づくに連れて、例外なく、人肌を恋しくなるのか、急に、または一段と甘えん坊になるようです。

 

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最後はお皿から食べるなんてことはなくても、なぜかお母さんの手、お父さんの手からなら、少しだけ食べてくれるといった奇跡も見せてくれます。

 

その一口から、また力が湧き出てきて、ご飯を食べるようになったりとかもあり、奇跡っていつ起こるかわからないんだなと、非科学的なことに驚かされる毎日です。

 

今回の主役のみゆちゃんも、もうダメだと言われた2022年11月に、12月は迎えられないことを突きつけられながらも、そこからの快進撃はもう、その場にいるご家族様をはじめ私たち動物病院スタッフですら驚きを隠せませんでした。

 

リンパ腫は化学療法に反応する可能性が高いとされており、症状がコントロールされ、腫脹していたリンパ節や転移部位が小さくなっていることが見られれば、きっとどんどん攻めたくなると思います。

 

ただ、抗がん剤は通常の薬と違って、持ち合わせる副反応の強さが大きいものが多いです。

 

・・・今朝までは元気で、抗がん剤を投与した後、ぐったりしてしまった。

 

抗がん剤を継続を断念し、在宅医療にて緩和ケアを希望される相談電話で、最も多い事例です。

 

ぐったりしてしまうと、続けての抗がん剤投与はおろか、通院すら難しくなると思われます。

 

高齢猫だったみゆちゃんにとって、今回の在宅切替を選択されたことで高頻度での通院ストレス、待合室でのストレスなど、外出に伴うストレスの全てが軽減されたことだと思います。

 

診察の時は、必ずいつものかまくらの中にいてくれて、検査・処置が終わると、お母さんの寝室に移動し、僕らがちゃんと帰るのかを見定めるように、玄関の方をじ〜っと見つめていました。

 

採血や超音波検査は、在宅であったとしても全くストレスのない検査ではなく、保定されるストレスや針刺、お腹を押されるなど、通常の動物病院と同じようなストレスはあります。

 

しかし、その後すぐに好きな場所で自由に過ごせることで、きっと大きなストレスになることなく、2週間に1回の検査にも耐えられていたのだと考えています。

 

普通なら嫌がって、お腹に力が入り、腹圧が上がてくるのですが、みゆちゃんは腹圧を抜いてくれて、とてもリラックスしているような姿で検査を受けてくれました。

 

みゆちゃんはきっと、全部わかっているんだなと思いました。

 

再診113日目

 

この日はいつもの検診を予定していましたが、少し機嫌が悪そうな感じでした。

 

もしかしてと、可視粘膜と言われる口腔内粘膜や皮膚の薄い場所などを確認したところ、普段よりも黄色っぽい所見を確認しました。

 

おしっこの色も濃くなっているようで、おそらく黄疸が出てきたと判断しました。

 

採血の時にシリンジ(注射器)に入ってくる血液の性状に、感覚的に体がお別れの準備に入ったような感じを受けました。

 

そしてこの日、初めて鳴き声を聞きました。

 

みゆちゃんの声って、こんな声なんだって、変な話、その声が聞けて嬉しかったです。

 

検査が終わると、いつもならスタスタ歩いて寝室に向かいますが、この日はそんな体力はなく、保定が終わってもその場から動けずにいました。

 

みゆちゃんをお母さんが抱っこしてくれたのですが、お母さんにも怒っていました。

 

検査はずっと嫌だったけど、我慢してくれていたんだよね。

 

我慢して受けてくれてありがとね。

 

お薬も、点滴も、全部受け入れてくれて本当にありがとね。

 

この日の採血をした際に、極度の貧血が起きていることを感じ、同日酸素発生装置を手配しました。

 

翌日には届くことで酸素レンタル会社に相談できましたので、翌日の夜に再診を組み、この日を終了としました。

 

ただ、今夜が山であることをお伝えし、今日は一緒に過ごしていただくことをお勧めしました。

 

再診114日目

 

酸素発生装置がご自宅に届き、なかなか診療でお会いできなかったお父さんにも、久しぶりにお会いすることができました。

 

酸素発生装置の運用方法は、病気だけでなく、その子その子の生活環境や性格を考慮していくことが大切です。

 

酸素ハウスのサイズや素材、形状など、考えなければいけないことがたくさんあるのですが、多くの場合が急を要するため、相談しながらも最初の走り出しとしてのハウス設計をその場で決めていきます。

 

そして、知っておいていただきたいことは、酸素ハウスなんか誰も入りたいわけがない、と言うことです。

 

全く必要のない同居の犬猫にとっては、なぜか格好の巣穴になるのか、その中を好むと言うことが多く見られますが、本当に必要な犬猫ほど、酸素ハウス内での管理を嫌います。

 

今回は、みゆちゃんが好きなかまくらを酸素ハウスがわりになるようにDIYして、大体の酸素運用の運用骨格を知っていただきました。

 

結局、酸素ハウス内ではなく、ホースを嗅がせてあげる形になったようです^^

 

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2023年3月15日

 

お母さんに頭を撫でてもらいながら、生涯に幕を閉じました。

 

苦しそうな素振りもなく、ただただ安心しながらゆっくりと呼吸が止まっていったとのことでした。

 

在宅医療切り替えは特別なことではなく、人と同じようにごくごく自然の流れです。

通院させられるうちは通院をさせてあげ、もう難しいと判断したらすぐに切り替えられるように、通院できるうちから将来を見据えて、最後の先生を選択しておくこと、是非全ての飼い主様に推奨させていただきます。

 

小さな箱になったみゆちゃんの横には、綺麗な桜の花が優しく咲いていました。

 

みゆちゃんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室

江本宏平 スタッフ一同

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前回までの経過は、以下から読めます。

・在宅でリンパ腫と向き合う①(初診〜暫定方針決定まで)

・在宅でリンパ腫と向き合う②(再診からの経過変化とプラン変動)

 

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猫ちゃんの病気というと、きっと多くの方で、「腎臓病」という言葉が最初に浮かんでくると思います。

 

もちろん、ほとんどの猫ちゃんで腎臓病を抱えますので、定期的な検査をしてあげることを推奨します。

 

ただ、猫ちゃんの多くで通院を苦手としているため、健康診断目的に通院させて、帰宅後にぐったりさせてしまうくらいなら、いっそのこと往診で在宅診療による健康診断を選択することも可能です。

 

往診では、血液検査、超音波検査、尿検査など、大型機器を必要としない検査は実施可能です。

 

また、検査は安全性を確保するため、獣医師と動物看護師1〜3名ほどでお伺いさせていただきます。

 

何事も手際よくスムーズに実施することで、猫ちゃんにかかるストレスを最小限まで下げてあげることを大切にし、開放後、速やかに安心できる場所に隠れさせてあげられるよう、動線確保にもご協力をいただいています。

 

本日は主疾患が腎臓病でははなく、私たち人間と同じ、旅立ち要因として最も多く挙げられる、腫瘍性疾患についてです。

 

かかりつけ動物病院にて、膵十二指腸リンパ節のFNA(細胞診)を実施し、大細胞性リンパ腫と診断された日本猫のみゆちゃんの在宅医療についてのお話です。

 

初診が2022年11月で、年越しは難しいとされていた中で、2023年1月初旬までは安定してくれて、そこから少しずつ状態が下がりつつも、2月13日現在、今日もお母さん、お父さんとゆっくりと過ごせています。

 

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初診時の問診内容

2022年3月くらいから徐々に体重が減少してきた感じはありましたが、まだまだ全身状態は良好でした。

 

この時通院していた動物病院では、体重減少に対して相談したところ、特別何もせずに様子見とされたとのことでした。

 

しかし2022年8月になると体調不良を訴え始め、ただ本格的に食欲がなくなってしまい、ご飯を食べられなくなってきたのは2022年10月9日からとのことでした。

 

2022年11月5日に状態がおかしいと感じ、11月7日に少し大きめの動物医療センターに転院し検査したところ、膵十二指腸リンパ節が腫脹していると指摘され、細胞診の結果悪性のリンパ腫と言われたとのこと。

 

このから2日間連続で抗がん剤治療を通院で行い、また毎日通院させて皮下点滴を打つようプランとされたとのことでした。

 

内服薬を4種類処方されており、ただ内服薬は状態が悪い中でも、まだ元気なうちしか飲ませられないため、今後どうすべきか悩まれていたとのことでした。

 

2022年11月17日、本来であればこの日も通院の予定でしたが、ぐったりとしている姿を見て、もう皮下点滴のために毎日通院することは体力的に難しいと判断し、在宅に切り替えて看取ってあげたいと考え、往診を希望されました。

 

 

初診時の様子

ほぼ寝たきりのみゆちゃんですが、まだお家の中を歩く体力はありそうでした。

 

食欲はもう無さそうで、排便もずっとできていませんでした。

 

それでも、お水は自分から飲みに行けて、おしっこも1日に3回は自力でトイレでできていました。

 

呼吸状態も安定しており、咳もありませんでした。

 

ただ、初診前夜に嘔吐をしてしまったとのことでした。

 

みゆちゃんが抱えている病気はリンパ腫であることから、今後もしかすると胸水が溜まってきてしまう可能性があります。

 

初診時検査

当院では、初診時に全身状態を把握するためにも血液検査を含めた、各種検査を実施しています。

 

しかし、今回は前日の検査結果が手元にあることもあり、大きく変化が出ていないとと判断したため、それらのデータを用いて診療プランを決定する、初回カウンセリングとして診療を進めました。

 

診断がついている病気であったり、また過去の検査結果が数日前のものであったりする場合には、無理に検査して負担をかけるより、まずはそのデータを持って今後のプランを組み立てたほうがいいとする場合があります。

 

ただ、もちろん検査が全てではないですが、できれば検査をしてあげたいと考えています。

 

とはいうものの、在宅での検査であっても、保定や捕獲などによるストレスは、多少なりともかかってしまうものです。

 

しかし、移動を伴わないため、検査・処置後に好きな場所にすぐ隠れられるという大きなメリットがあるので、通院が苦手な犬猫には、往診はおすすめです。

 

診療を進める上で、現状把握を優先すべきか、過去のデータと今得られる視診や望診、一般身体検査から得られたデータのみで診療を進めていくべきか、常に葛藤しています。

 

処置

今回みゆちゃんは、初回カウンセリングとして状況を判断し、皮下点滴に6種類の医薬品を混ぜて投与しました。

 

また、腫瘍性疾患であり、脱水補正のための皮下点滴ではないので、投与量も20ml/kg未満の50mlとしたこともあり、処置中もあまり嫌がることなく、静かに受けてくれました。

 

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今後のプラン

まずは3日間連続、1日1回の往診とし、状態に合わせて医薬品の量や種類を調整することとしました。

 

なお、内服薬は全部中止としました。

 

先述した通り、猫ちゃんで内服薬を飲めるのは、ほんの一部であり、また状態がまだいい時までです。

 

状態が下がってしまった時からは、できる限り注射にできる薬は注射で投与してあげ、どうしても内服でしかダメなものだけを経口投与するようにしましょう。

 

お薬の優先順位を立てて、全部飲めなくても良しとする心構えが大切になってくる時期です。

 

少しでも状態が安定し、お父さん、お母さんと一緒に過ごせる時間を今よりも快適にできればと祈りました。

 

なお現段階では、物理的な抜去は痛みを伴うこともあり、積極的に胸水抜去はしない方針としています。

 

胸水抜去の時には、特に猫ちゃんでは、往診だと鎮静麻酔をかけることが多いです。

 

そのくらい、肋間を針が貫くときに痛みがあるということです。

 

今回のまとめ

今回のブログでは、リンパ腫を抱えた猫ちゃんの在宅医療の初診について書かせていただきました。

 

いつまで攻めるべきなのか、抗がん剤を使用することが正しいのか、やめてしまうことが間違っているのか。

 

答えなんてありません。ただ言えるのは、最終的に判断するのはご家族様、ということです。

 

ご家族様と愛猫、愛犬との間には、深くて長いストーリーが存在します。

 

もしかしたら、今までの経緯の中に、今この段階で緩和に使える出来事があるかもしれません。

 

在宅での緩和ケアは医療面だけでなく、生活環境や介護面など多岐にわたる視点から実施することで、より良い診療プランを組むことができます。

 

そのため、初診ではご家族様の声をしっかりとヒアリングすることに重点を置いて、診療をおこなっています。

 

どんな悩みがあり、今この子たちに対して何をしてあげたいのか、現実問題としてどこまでできるのか、など、まずはお話をお伺いさせていただき、一緒に考えていきましょう。

 

次回は、在宅で【リンパ腫と向き合う②(その後の診療経過)】です^^

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