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2024年10月アーカイブ

ペットはただの動物ではなく、ご自宅で一緒に過ごしてきた家族であり、日々の生活の中で積み重ねた「家族の時間」は、かけがえのないものです。

 

今回ご紹介するのは、12歳6ヶ月の女の子の猫ちゃん。

 

とても優しく、飼い主様に甘えん坊な性格の猫ちゃんですが、外出や通院が極端に苦手で、キャリーに入れるだけで呼吸が乱れ、パニックを起こしてしまうほどでした。

 

この子に消化器型リンパ腫が見つかったのは、突然のことでした。

 

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診断後の決断。通院治療か、それとも在宅でのケアか

最初に症状が出始めたのは2024年8月。

 

少しずつ食欲が落ち、元気がなくなっていく猫ちゃんを見て、ご家族様はどこか「ただの食欲不振だろう」と楽観的に考えようとしていました。

 

しかし、その様子が日を追うごとに悪化し、体重も急激に減ってきたことで、意を決して近くの動物病院を受診。

 

そこで告げられたのは「消化器型リンパ腫」という病名でした。

 

通院を勧められたものの、移動が大きなストレスになる猫ちゃんにとって、抗がん剤治療を続けることは苦痛以外の何物でもないとすぐに判断されたそうです。

 

大好きな家族と一緒にいられることが、この子にとって何よりも大事だと考えたご家族様は、在宅でできる緩和ケアを探し、当院にたどり着きました。

 

初めてお会いしたとき、ご家族様は明るく振舞おうとしていましたが、心の内には深い不安が渦巻いているのを感じました。

 

「本当にこれでいいのだろうか」

 

「もっと積極的な治療を受けさせるべきでは?」

 

という葛藤。

 

そして何より、「この子の最期を、どう見守ってあげるべきか」という問いを胸に秘めているのが伝わってきました。

 

初診時に見えたご家族様の愛情と、私たちの責任

初診時、約1時間半の問診を行いました。

 

猫ちゃんの病状の変化を辿るのはもちろんのこと、ただその時間のほとんどは、ご家族様の想いを伺うことに費やされました。

 

診察室ではなく、自宅のリビングで、猫ちゃんがいつものベッドの上で丸まっている様子を見ながら、ご家族様はこれまでの日々の出来事や、診断を受けたときのショック、そして「どこまで治療すべきか」という迷いを、涙ながらに語られました。

 

「この子に負担をかけたくない。大好きな家で、できるだけ苦痛のないようにしてあげたい。でも、私たちの選択が、この子にとって正しいのかどうか……わからないんです。」

 

その言葉に、私たちも胸が締め付けられる思いでした。

 

病気と闘うか、それとも穏やかな時間を優先するか。

 

どちらを選んでもご家族様にとっては苦しい選択です。

 

それでも、最後にご家族様が出した結論は「自宅で見守りながら、できる限り穏やかな時間を過ごさせてあげたい」というものでした。

 

日々の診療を通して変わるご家族様の気持ち

初診時の検査結果に基づき、緩和ケアを中心に診療方針を立てました。治療計画には、通院を避けるための皮下点滴や自宅での注射投与が含まれ、ご家族様も積極的にケアに取り組まれました。

 

特に、注射の指導をする際は、最初は恐る恐るだったご家族様が、少しずつ自信をつけていかれるのを目の当たりにし、「この子のために私たちも頑張らなければ」と覚悟を決められた姿を見て、家族って本当にすごいなと思いました。

 

しかし、診療が進むにつれ、病状は日々変化していきました。

 

状態が落ち着いている日もあれば、急に呼吸が乱れ、不安な日々を過ごさなければならないこともありました。

 

その度に、ご連絡をいただいたり、往診の頻度を変動させ、注射薬の内容を調整し、ご家族様の不安を少しでも減らせるようにサポートを続けました。

 

中でも、特に印象に残っているのは、呼吸困難の兆候が強まったときのことです。

 

酸素室の設置を提案した際、ご家族様は一瞬だけ「ここまでしても、この子は喜ぶだろうか」と迷われました。

 

けれども、酸素室の中で眠る猫ちゃんの姿を見て、「これで、この子が少しでも楽になっているなら」と安堵された表情を見たとき、この診療方針が正しかったと強く感じました。

 

最期の瞬間、穏やかに眠りについた猫ちゃん

初診から18日が経った時の再診の際、ご家族様には「残された時間がもうわずかであること」をお伝えしました。

 

どこかで覚悟はされていたものの、やはりそれを直接伝えられると、ご家族様の表情には悲しみが色濃くにじみました。

 

それでも、「家でこの子を見守ってあげたい」という想いに変わりはなく、最後まで家族と一緒に過ごせるよう、ご家族様は決意を新たにされたようでした。

 

「もし発作が起きたときのために」とお渡しした頓服薬を手にしたとき、ご家族様は静かに頷きながら「何があっても、しっかりと受け止めます」とおっしゃったのが忘れられません。

 

最期の時が訪れたのは、それから2日後の夜でした。

 

家族に見守られながら、穏やかに息を引き取ったというご報告をメールでいただきました。

 

最後に少しの痙攣は見られたものの、それ以外は本当に安らかで、まるで「今までありがとう」と伝えるように、静かに目を閉じたとのことでした。

 

自宅でできるケアの意義

在宅医療は、時として通院治療よりも飼い主様にとって大きな決断を伴います。

 

目の前で愛するペットが苦しむ姿を見るのは、ご家族様にとっても辛いことです。

 

それでも、自宅での診療が持つ意味は、ペットにとっても、ご家族様にとっても、かけがえのないものです。

 

今回のケースでは、ご家族様が一歩ずつ決断を重ね、ご自身の手で猫ちゃんを支える覚悟を決めたことが、最期の穏やかな時間につながったのだと思います。

 

私たちは、その過程を支え、ご家族様が少しでも安心して最期の時間を迎えられるようサポートできたことを心から誇りに思います。

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肥大型心筋症(HCM)は、猫の心臓病の中でも非常に一般的な病気です。

 

特に高齢猫に発症することが多く、症状が進行すると呼吸困難や倦怠感、食欲不振といった症状が現れます。

 

この記事では、12歳の猫とともに過ごすご家族様の事例をもとに、猫ちゃんが最期を迎えるまでの緩和ケアについてご紹介します。

 

飼い主の皆さんが、猫にできるだけストレスをかけず、心穏やかな時間を過ごせるようなケアを中心に解説します。

 

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ご家族様と猫ちゃんの状況

今回登場する猫ちゃんは、9歳で肥大型心筋症と診断を受け、内服薬でずっとコントロールできていました。

 

しかし、12歳になって時から呼吸状態の悪化が著しくなり、かかりつけの動物病院にて胸水貯留を確認し、かかりつけの動物病院までタクシーで向かい、抜去してもらいました。

 

これで安心かと思っていたのですが、またすぐ3日後には貯留を認め、高い頻度での胸水抜去が必要とされた今、通常でも通院が苦手な性格の猫ちゃんでしたので、さらに強い痛みを伴う胸水抜去を通院で繰り返すのは難しいと判断され、在宅での治療を希望されました。

 

家族構成は、お母さん、お父さんの2人で、積極的な治療は望まないが、ただ苦しさだけは軽減させてあげたい、残された時間を家で過ごさせルコとを希望されました。

 

お父さんはカレンダー通りのお仕事で、かつ出張を伴うことから、在宅ワークをされているお母さんを中心に、1人でもできる範囲で最適な環境構築をしていく方針で進めました。

 

環境を整えることで、薬や処置以外の面でも猫ちゃんの負担をできるだけ軽減できるよう、在宅緩和ケアで幅広く見ていきます。

 

1. 在宅ケアの基本方針

在宅緩和ケアでは、猫ちゃんのQOL(生活の質)を最大限に尊重しつつ、その上で猫ちゃんの隣で戦うご家族様のQOLも大切にしていきます。

 

治療ではなく、症状のコントロールや痛みの緩和、快適な環境の提供が主な目的です。

 

ここでは、以下のポイントを重視していくことが多いです。

 

a. 痛みと不快感の管理

肥大型心筋症は、進行すると呼吸困難や胸水貯留などで猫が非常に苦しむことがあります。

 

呼吸困難を和らげるため、酸素療法の導入が考えられます。

 

往診の際に、酸素濃縮器や酸素ボックス、時には酸素ボンベの自宅設置における使用方法について説明し、ご家庭で安心して運用できるサポートを行います。

 

また、呼吸困難時に使用できる利尿剤や、呼吸を楽にするための鎮静剤、鎮咳薬(咳止め)などの処方も検討します。

 

b. 食欲の維持と栄養管理

どのステージにいるのかで、栄養に対する考え方は異なってきます。

 

緩和ケアに入りたての頃であれば、栄養管理は頑張ってあげたいものですが、ターミナルケアのステージであれば、話は変わります。

 

もしご家族様が強制給餌の実施をご希望されるのであれば、実施する時の猫ちゃんの姿勢や保定方法、使用するご飯について、また1口の量や1回の食事に許容できる容量、頻度など、状態と環境に合わせて徹底的に指導させていただきます。

 

そしてターミナルケアに入った時には、もう何も食べられないことが多いため、それでも食べさせたいのか、それとも無理に食べさせないことを選択したいのかを、客観的な所見や私たちの在宅緩和ケアの経験を交えてご説明し、ご家族様に選択していただきます。

 

c. ストレスの軽減

猫ちゃんはストレスにとても敏感な動物です。

 

環境を変えるだけでも体調が悪くなるともあるほどです。

 

そして、この緩和ケアのステージでは、多くの場合には病気を抱えており、常時ストレス下に晒されています。

 

検査や必要に応じた処置、処方などもまた、ストレスの一因であると思われます。

 

ただ、苦痛を緩和するために必要なもののため、他の箇所でいかにしてストレスを減らしてあげられるかが大切です。

 

家の中に、猫ちゃんが落ち着けるスペースはあるのでかなど、そのスペースをもっと豊かにすることは可能なのかなどを模索していきます。

 

2. 往診専門動物病院でのサポート内容

在宅緩和ケアをサポートするために、定期的な訪問による検査、処置、処方や指導が行われます。往診では、肥大型心筋症の猫ちゃんについては、次のような検査や処置が行われます。

 

a. バイタルサインのチェック

猫ちゃんの呼吸状態や心拍、歩様や食事などの変化などを定期的にモニタリングし、症状の進行具合を把握します。

 

これにより、状態が急変した場合の早期対応が可能になります。

 

b. 薬の処方と投与指導

緩和ケアの一環として、肥大型心筋症を抱えた猫ちゃんの場合には、利尿剤や鎮痛剤、酸素療法を行う場合の薬剤の使用方法を飼い主に丁寧に指導します。

 

自宅での薬の投与に関する不安を軽減するため、実際に飼い主の目の前で投薬方法を示し、実践してもらうことも大切です。

 

なお、内服薬が苦手な猫ちゃんが多いため、皮下点滴の指導を行い、ご自宅で皮下点滴という手法を用いて投薬をしてもらうことも可能です。

 

c. 胸水の管理

肥大型心筋症に伴う胸水貯留が見られる場合は、必要に応じて往診時に胸水を抜くことが可能です。

 

胸水を抜くことで、肺の拡張が担保誰、猫ちゃんの呼吸困難を一時的に改善させることが期待されます。

 

また、胸水抜去の時には、猫ちゃんの場合、軽度な鎮静処置をしてあげることを推奨しています。

 

胸水抜去の時は、肋骨の間から針を刺して胸腔内にアプローチをかけるため、腹水抜去や採血、皮下点滴などと比べると、強い痛みを伴います。

 

また、胸水は1回抜けば大丈夫なのではなく、またすぐに溜まってくることも予想されます。

 

痛かった思い出が積み重ならないように、状態に応じて、できれば少しでも鎮静をかけてあげることを検討してあげましょう。

 

3. 在宅でのケア方法

ご家族様が自宅で行うケアには、以下のようなものがあります。

 

a. 猫のコンディションモニタリング

呼吸困難の兆候(呼吸が荒い、口を開けて呼吸する)や、食欲の低下、活動量の減少を毎日確認します。

 

特に呼吸状態の悪化は、写真や動画などを合わせてご連絡いただくなど、注意深く観察することが重要です。

 

食欲などを含めた全身状態が一気に悪化したのか、それともゆっくりと悪化してきたいるのかなど、診察時にゆっくりとお伺いさせていただきます。

 

b. 快適な環境作り

温度や湿度の管理は肥大婦型心筋症を抱えた猫ちゃんにとって、とても重要です。

 

猫ちゃんの呼吸状態に合わせて、適切な室温を適宜お伝えさせていただきます。

 

多くの場合、ご家族様が涼しい〜寒いと感じるくらいの温度指定になることが多いです。

 

また、猫ちゃん自身で温度管理ができるように、暖かい場所の設置など、環境に合わせて考案させていただきます。

 

湿度は不快ではないくらいの50〜60%に維持することが推奨されます。

 

なお、心臓に負担をかけないために、過度な温度変化は避けましょう。

 

c. 投薬のサポート

毎日の投薬は、猫ちゃんにとって負担になりやすい部分です。

 

できるだけ猫ちゃんがリラックスできる方法で行うことがポイントです。

 

錠剤をピルポケットやおやつに包んで与えるなど、工夫をすることも役立ちます。

 

また、私たちの経験から、この薬ならこうすれば飲めるかもしれない、などの知識提供を都度させていただき、できる限り内服薬で投薬できるように、一緒に考えていきます。

 

もしどうしても内服薬が難しい場合には、皮下点滴などの手法を用いた方法で、注射薬で代替できる医薬品は代替していくことも検討します。

 

4. ご家族様への精神的なサポート

猫ちゃんの看護や看病は、ご家族様にとって体力的な負担だけでなく、精神的な負担になります。

 

これから起こりうるであろう症状や事象について先にご説明させていただき、その時にどう捉えて、何ができるのかなどのアクションプランを決定することで、先に起こる混乱に対して事前準備を徹底的に進めておきましょう。

 

精神的なサポートは、事実と感情を分けることで見えてきます。

 

まずは診察でしっかりとお話をお伺いさせていただき、何にどれだけの不安を抱えているのかを探っていき、その事象が起きた時、何をどうしたらいいのかなどを事前に対策を練っておきます。

 

多くの症状の変化は、事前に状態を把握していればある程度想定できます。

 

準備を整えておくことで、何もできない不安を払拭し、その猫ちゃん専用の動物看護師になっていただき、最後まで一緒に戦うマインド形成をお手伝いさせていただきます。

 

ここからは必ず状態は悪くなり、そしてお別れの日がやってきます。

 

少しでも後悔のない最期を迎えられるよう、在宅緩和ケアに特化した私たちが、最後まで伴走させていただきます。

 

まとめ

肥大型心筋症の猫ちゃんに対する在宅緩和ケアは、治療ではなく、猫ちゃんができるだけ快適に過ごせるようにすることを重視しながら、ご家族様が希望する最後の時間の構築を目指します。

 

痛みの管理、環境の整備、ご家族様のケアを含む全体的なサポートが、猫ちゃんとその家族にとって最良の結果をもたらせるように、最後までサポートさせていただきます。

 

東京を中心に、千葉、埼玉、神奈川などの近隣地区までは、私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室が対応可能です。

 

ご家族様が猫ちゃんとともに穏やかな時間を過ごせるよう、往診を活用しつつ、適切な在宅緩和ケアを提供してあげましょう。

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