往診専門動物病院わんにゃん保健室 往診獣医師の大東です。
私たち獣医療チームは、東京中央区と東京江東区、東京台東区に拠点を構え、近隣地区である東京墨田区や東京葛飾区、東京千代田区などをメインに東京23区を日々往診しています。
基本は獣医師と動物看護師の2人で往診車に乗って、ペットのいるご自宅まで訪問し、ご自宅で診察を行います。ご自宅に持ち運べる医療機器(超音波検査機器や簡易血液検査機器など)や注射、内服薬など、小さな動物病院をそのまま持ち込めますので、ご自宅にいながら安心して獣医療をペット(犬・猫)に提供することができます。
動物病院に通院できないで困っている犬猫の飼い主様、お気軽にご相談ください。
さて、今回ご紹介させて頂こうと思っている子は、飼い主様が外出中に大量出血していた高齢犬のまるちゃんです。家のわんちゃんが外出中に出血していたらびっくりしますよね。
まるちゃん(東京墨田区在住/高齢犬/シニア犬)
東京墨田区在住のまるちゃんは、ご家族様が外出中に、ビデオにてまるちゃんの様子を確認したところ、部屋の中が血だらけになっていて、急いで帰ってきたとのことで、お電話を頂きました。お家にお伺いすると、まるちゃんはベッドの上でお迎えしてくれました。知らない人たちが来た、という感じでソワソワ落ち着かず。
先に詳しくお話をお伺いしたところ、数日前に、やや元気がなかったため、別の往診専門動物病院の往診獣医師に来てもらい、関節痛疑いで痛み止めを処方されたとのことでしたが、食欲はあり、様子もいつもと変わらないが、出血量がかなり多かったため、転院にて当院の診察をご希望されたとのことでした。
出血痕がついたペットシーツを見させていただいたところ、かなりの出血で、ペットシーツ1枚分ほどあり、かなり血餅(血の塊)も入っていました。
このような場合通常どこからの出血か、身体検査で確認していきます。まず、一番疑ったのが口の中からの出血でした。歯石がつき、歯周病が進行していると、歯の根元が溶けて、歯が抜け、そこから出血することがよくあります。特に小型犬では歯周病の子が多く、奥の臼歯が抜けてしまいます。
しかし、シニア犬のまるちゃん(東京墨田区在住)の場合、歯周病はかなり重度でしたが、口腔内からの出血点は確認できず、歯周病による出血の可能性は低いと考えました。
また、肛門や手足、耳なども出血は見られないことから、消化管内からの出血、それによる吐血が最も可能性が高かったです。
しかし、消化管内からの出血を確認するためには、内視鏡で消化管内部を確認する必要があり、内視鏡にはもちろん麻酔が必要になってきます。
今回、まるちゃんは高齢で心臓に雑音があることも考慮すると、麻酔のリスクは高く、あまりお勧めは出来ない状況でした。しかし、出血量も多いことから貧血になっていないか、また、消化管出血によって上昇する項目もあるので、それらを確認するために、血液検査をお勧め致しました。ご家族様にそういったことをご相談したところ、血液検査は行い、内視鏡検査はとりあえず見送る、という形になり、まるちゃんには採血を頑張ってもらうこととなりました。
採血自体は、細い針で行うので痛みはほとんどないのですが、手足を持たれるのがみんな嫌いでバタバタもがきます。もちろんまるちゃんも例外ではなく、とても嫌がっていました。体はすごく細いのですが、逃げる力はかなりの力です。しかし、往診専門動物病院わんにゃん保健室の獣医師もそのような場合には慣れているので、保定すると大人しくしてくれました。そして、採血中は大人しく頑張ってくれ、無事に終了しました。
ここで、余談ですが少し歯の話を挟みます。
わんちゃんの歯周病は、軽度→中等度→重度の段階があります。
そもそも歯周病とはどういったものでしょうか?
ご飯を食べると歯垢が歯に付きます。それが数日で固く石になり、歯石となって歯に付着します。歯石の表面はザラザラしており、そこにはさらに歯垢が付着しやすくなり、歯垢がたまっていきます。そこに、唾液と混ざった、ねちゃねちゃしたものが付着するようになると匂いを発します。そのネチャネチャが細菌の塊で、においの元凶です。この細菌が、歯の根元を溶かしていき、歯が浅くなって抜けてしまいます。逆に、抜けずに、歯の奥に膿が溜まってしまい、頬に穴が開いてしまうこともあります。
このようになってしまった場合、根本的な治療法としては、麻酔が必要となってしまいますが抜歯を行う方法があります。しかし、麻酔がかけられない子では、抗生剤を使用することが多いです。
また、歯石除去を動物病院で行ってもらうこともあるかと思いますが、注意しなければならないのは、その後いかに歯垢がつかないように歯のケアをしていくか、というところになってきます。そして、まれに無麻酔での歯石除去を行っているところもありますが、わんちゃんの恐怖心がトラウマとして残ってしまったり、歯周ポケットまできれいにできなかったり、舌や口腔内を傷つけてしまうことがあり危険なので、お勧めは出来ません。
歯に関しては、また別のブログにて詳しく説明しますね!
ということで、まるちゃんの採血も無事に終わり、おそらく上部消化管内の出血であろうということで胃薬、抗生物質、吐き気止めを処方し、改善が見られるかみてみることになりました。
血液検査の結果は、消化管内の出血がある場合に上昇する項目が上がっており、また、偶発的に内分泌系の疾患も発見されました。
今回の治療で、まるちゃんの出血は止まり、元気に過ごしてくれています。
おそらく考えられる要因としては、痛み止めによって胃が荒れてしまい出血が起こった可能性が高いと考えられました。非ステロイド性の消炎鎮痛剤は空腹で服用したり、体質的にはまれに、胃での出血を引き起こします。
そして、今回まるちゃんはかなり高齢でしたが、一見元気そうに見えました。しかし、実は内分泌系の疾患(甲状腺機能低下症)が隠れていました。この病気は、なんとなく活動性が落ちたり、毛が粗になったり、といった症状が出ることが多く、高齢の犬に多い病気です。
症状だけを見ていると、年のせいかな?と思ってしまうかと思いますが、実は病気で、治療が必要になることもあるので、もし年齢とともに動きが鈍くなったな、など変化がありましたら、一度往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。
高齢になって一度健診を受けたいけど動物病院に連れていけない、などのお悩みがある方は、往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。
高齢の子に多い病気や症状を詳しくご説明し、検査が必要かどうかも含めてご相談させて頂きます。
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