こんにちは!!
ようやく秋が来て、過ごしやすくなりそうですが、また台風が来ないことを願うばかりです。
さてさて、台風も多いですが、日本でもう一つ多い災害が地震で、そのような災害時に必ず問題になるのが避難時の対策ですね。
天候が荒れている時は、なぜか持病を抱えているペット(犬・猫)の体調も低下しやすいようで、荒れた天候の中、往診専門動物病院わんにゃん保健室では道路が封鎖されない限り、ご自宅まで獣医師と動物看護師が往診車で訪問させていただいています。
最近では動物も一緒に避難できるところも増えてきていますが、その際の準備が必要になってきます。例えば、ご飯やキャリーなどです。
いざという時のために、備えておくことをお勧めいたします。
それでは、最近猫ちゃんのお話が多かったかと思いますが、今回は、ワンちゃんのお話をしようと思います。
今回は、数日間嘔吐、元気食欲がなくなってしまった14歳の高齢犬、リッキーちゃん(東京墨田区在住)のお話です。
リッキーちゃん(東京墨田区在住、高齢犬)
東京墨田区在住の高齢犬であるリッキーちゃんは、数日前から元気食欲がなくなり、嘔吐が続いているということで、昨夜に別の往診専門動物病院の獣医師に診てもらい、慢性腎不全の終末期と言われ、そのターミナルケアをご希望でご連絡をいただきました。
お家に獣医師と動物看護師が訪問すると、高齢犬のリッキーちゃんはご家族に囲まれて、酸素ハウスの中で横になっていました。かなり苦しそうな状態でしたので、緊急状態でないか、舌の色や口の粘膜色を確認し、とりあえず緊急状態ではなかったので、問診に移らせて頂きました。
高齢犬のリッキーちゃんは元はすごくよく食べる犬だったそうなのですが、最近食欲が減ってきていて、どんどん痩せていってしまっていたとのことでした。また、数日前から吐く回数が増えて、昨夜は歩様もフラフラだったため、夜間の往診専門動物病院に電話をしてきてもらい、血液検査を行ったところ腎臓の数値が重度に上昇していて、慢性腎不全の末期だと言われましたが、皮下点滴などの対症療法をしたところ少し顔つきが楽になっていたので、対症療法などを行ってほしいというご希望でした。
ここで、ターミナルケアについて少しご説明させて頂こうと思います。
ターミナルケアと緩和ケア、すごくよく似た言葉で同じ意味じゃないの?という方も多いかと思いますが、実は少し意味合いが違っています。
ターミナルケアとは、緩和ケアの一部に含まれ、末期の子がどれだけ心穏やかにすごせるか、少しでもストレスや苦痛なく過ごせるように治療することです。一方、緩和ケアとは、末期の子たちだけではなく、比較的早期の段階でも、病気による症状を軽減し、苦痛を減らすことと並行して、治療も行っていくケアのことを言います。なので、緩和ケアという言葉は、決して末期の子たちにだけ使う言葉ではなく、対症療法を行いながら、まだまだ病気と付き合っていく、または戦っていけるということを意味しています。
今回のリッキーちゃん(東京墨田区、高齢犬)ではどちらを選ぶかというと、ターミナルケアを選び、少しでも慢性腎不全による吐き気や倦怠感、ふらつき、それによる食欲不振、元気消失を軽減してあげることが目標となりました。
ターミナルケアを行う時は、まず病状を見ることが大切になってきます。人であれば「ここが痛い」「吐き気がする」「こういう症状があるから食べられない」など話してもらえるのですが、犬猫では話をすることが出来ないので、検査結果から症状を推察していきます。今回のリッキーちゃんの場合、前日の血液検査で一部の項目のみですが、血液検査を行っていたので、慢性腎不全からくる症状を推測することが出来ました。
しかし、一口に慢性腎不全といっても、わんちゃんと猫ちゃんでは進行の仕方に違いがあるので、簡単にご説明します。
まず、腎臓の仕組みはどうなっているのでしょうか?
腎臓は大きく分けると、糸球体と尿細管という部分に分けることができます。糸球体は血管がたくさん集まって球になっている部分で、ここはザルのような役割をしています。つまり、ここで水分や様々な老廃物、ミネラル成分などが濾されて出ていきます。しかし、たんぱく質は大きいので通常はザルを通らずに体内に残ります。ここで作られた尿を原尿と言います。一方、尿細管では、糸球体で通過してしまったもの(原尿)の中で、必要な物質を必要なだけ再吸収します。例えば、ミネラル成分や水分などです。そうして濃縮されたものがおしっことして出ていきます。
そしてわんちゃんとねこちゃんでは、腎不全が始まるときに機能が落ちてくる場所が異なっています。猫ちゃんでは、尿細管の機能が先に落ちてくることが多いです。つまり、再吸収する機能が先に落ちていくので、まず最初にでる症状は、おしっこがたくさん出るようになった、つまり、多飲多尿です。
一方、わんちゃんでは糸球体の機能が先に落ちていきます。糸球体はザルの役割をしているのですが、ザルの網目が荒くなってしまうというイメージです。すると、通常通らないたんぱく質も原尿の中に含まれてしまい、たんぱく質は尿細管では再吸収できないので、おしっこの中に流れて行ってしまいます。これが尿たんぱくがでる仕組みです。
するとせっかく食べて吸収したたんぱく質がおしっこの中に出て行ってしまうので、どんどん痩せていきます。そして、たんぱく質が糸球体を通ること自体が腎不全の悪化要因でもあります。わんちゃんでは、腎機能が落ちるよりも前に尿たんぱくが出るという異常が一番最初に出るので、定期的に尿たんぱくを測定することをおすすめします。
余談が過ぎてしまいましたが、リッキーちゃんは病院がすごく苦手な子で、今までもずっと元気に過ごしてきたので、検査などもしたことがないとのことでした。しかし、今回体調が悪くなって、原因が分かったのですが、腎臓は治療法がなく、体内の老廃物の排出を少しでも薄めて排出を促すために、皮下点滴、吐き気止め、胃薬、二次感染を予防するために抗生剤を注射、という対症療法になってきます。
リッキーちゃんも、昨晩その治療によって少し楽になったとのことでしたので、今日も、より楽になってほしい、という思いを込めて治療に入らせて頂きました。
治療中は少しもぞもぞしていたリッキーちゃんでしたが、終わると立ち上がって酸素ハウスから出たがっていました。慢性腎不全では貧血になって、呼吸状態が悪くなることが多いので、酸素ハウスのレンタルをご家族が早急に行っていただいていて、リッキーちゃんは点滴や注射などの治療だけでなく、酸素ハウスにいることでも楽になっていたのだと思います。
リッキーちゃんの体調が徐々に進行し、高齢犬のリッキーちゃんの周りにはたくさんのご家族が集まっていました。これはリッキーちゃんがとても愛されていた証でもあります。
きっと体調が悪い中で、リッキーちゃんはみんなに「ありがとう」と伝えていたんだと思います。
次の日には、高齢犬のリッキーちゃんは全く立ち上がれず、ご家族様も診察をご希望されませんでした。たしかに、しんどい中で少しでも楽にしてあげることがターミナルケアですが、その中でご家族様がお別れを覚悟する時間や、お互いに感謝を伝える時間を、わんちゃんたちが与えてくれているのだと思います。それ以上は治療をせず、お別れをする、というのもまた一つの考え方だと思います。
私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室では、ご家族様と、どこまで最愛のペット(犬・猫)にターミナルケアを行うか、どこまで検査や治療を行うか、などしっかりとご相談させていただき、治療に入らせて頂いています。たとえ、途中で考えが変わってもご遠慮なくご相談頂ければ、その時々に合った治療法・ケア方法をご提案させて頂きます。
犬猫のターミナルケアでお悩みのご家族様、緩和ケアでお悩みのご家族様、一度往診専門動物病院わんにゃん保健室までお気軽にご相談ください。
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