ペットの終末期ケアは、ペットの病気だけを考えていけばいいわけではなく、その横で必死に看病しているご家族様の心の変化にも気づかなければいけません。
毎日が不安との戦いであり、体力的も精神的も摩耗していることに気づき、今目の前で病気と戦っているペットの状態について、どんな言葉を使って、どんなトーンで、早さで伝えるべきなのか。
そんなことを考えながら、日々の診療と向き合っています。
治療の結果「回復が見込める」症例であれば、今は辛いけど一途の光り輝く可能性を見て歩き出せると思います。
では、「回復が見込めない」症例、慢性疾患をずっと検査と薬でコントロールし続けている症例や病末期の場合は?
その光がないのに、どうやって病気と向き合っていけばいいのだろうか。
もしその光が安らかな旅立ちであれば、それまでの時間をいかに穏やかに過ごさせてあげられるかを考え、私たちが一緒に同じゴールに向かって歩いていきます。
診療で出会えるご家族様は、物理的に東京近郊となっているため、きっと今終末期ケアで困っているご家族様のほんの一部分しか、直接的なサポートはできません。
そのため、SNSを用いて広く情報を発信しますので、是非参考にしてみてください。
往診専門動物病院わんにゃん保健室の終末期ケアは、医療面だけでなく環境面にもアシストすることで、ペットとご家族様が安心して最後の時間を家で過ごせるように、そしてその最後の瞬間がご家族様のもとであることを目指しています。
今回ご紹介する症例、コーギーの風太くんは、肝臓がんの末期で当院を2023年5月4日に受診し、2023年7月9日の夜中、ご家族様が寝静まったときを見て、静かに眠りました。
初診の様子や、再診の様子などは、前回、前々回のブログで書かせていただきましたので、文書の最後にリンクを貼っておきますね^^
【在宅終末期ケア52日目(6月25日)】
もうほとんど立ち上がれなくなり、食欲も無くなってきました。
でも、ただ寝かせているだけでなく、大好きな抱っこをしてあげると笑顔になり、少しするとリンゴを1口、ドライフードを2粒食べてくれたとのことでした^^
飲水量も体力的に厳しいことから低下したこともあり、尿量も減ってきました。
しかし、まだまだちゃんと排尿も排便も出来ていました。
【在宅終末期ケア55日目(6月28日)】
この3日間で体調は著しく低下してきており、酸素マスクがないと呼吸するのが辛そうな様子でした。
それでも、りんご、ささみ、白菜、そしてヨーグルトを少量ずつ食べてくれたとのことでした。
酸素マスクありきですが、できる限り抱っこしたり、外を見せてあげたりと、終末期だからこそ、してあげられることを最大限やってあげたいと考えています。
お母さんとお父さんが力を合わせて、抱っこして外を見せてあげられたとのことでした。
【在宅終末期ケア59日目(7月2日)】
食欲旺盛の風太くんは、なんとデビフの馬肉スープ煮缶、デビフの牛肉ミンチ缶、デビフの牛肉の角切り缶を、1日合計で2缶くらい食べてくれたとのことでした^^
最初は水分の多いリンゴ(ジョナゴールド)をあげて見て、缶詰を食べさせて、食べたらヨーグルトをあげて、最後にお水をあげているとのことでした。
お水からあげると先にお腹いっぱいになってご飯を食べないことを考えると、この順番はおすすめですね!
呼吸が荒い時もあれば、安定している時もあり、寝たなと思うと、意識が戻ってこないくらいの深い眠りのような時もあったりと、常に細心の観察をされていました。
意識レベルの低下には、鼻先に息を吹きかけたり、上下まぶたの内側と外側をツンツンしたりして、反応を確かめます。
もし反応がなければ、その時はおそらく嚥下はできないと思われますので、経口のすべてはストップしましょう。
【在宅終末期ケア65日目(7月8日)】
昨夜から、もう1段階状態が下がったような感じがするとのことでした。
目も開け辛くなっていましたが、綺麗に洗浄してあげたら、クリクリのお目目がパチっと開いて、視線で追いかけてくれました^^
看病はほぼほぼ24時間付きっきりで行われ、風太くんの側にずっといてくれていました。
7月9日10:50、お母さん、お父さんがたまたま少し寝落ちしていた間を狙って、静かに眠りにつきました。
声もあげず、眠っている姿は、笑っているようにも思えたとのことでした。
向日葵の黄色がとっても似合う、コーギーの風太くんでした^^
ご冥福を心からお祈り申し上げます。
往診専門動物病院わんにゃん保健室
スタッフ一同