こんにちは!
往診専門動物病院わんにゃん保健室 往診獣医師の江本宏平です。
往診という診療形態から、猫ちゃんの診察が多いのですが、中でも多い主訴として、よく吐く、食欲がない、ぐったりしている、トイレにいくが尿が出ない、など多岐に渡る中で、圧倒的に多いのが、よく吐く(頻回嘔吐)です。
今回は猫ちゃんが吐いてしまう原因についてお話していこうと思います。
皆さま、お家の猫ちゃんが吐いてしまっても、猫だから、と思って特に気にしないことはございませんか?
たしかに、毛玉や空腹で吐いてしまうこともありますが、あまりにも嘔吐回数が多かったり、痩せてきたりするようであればそれは病気かもしれません。
そこで、今回は見逃しがちな猫ちゃんの嘔吐の原因になる多い病気についてお話していこうと思います。
もちろん毛玉を吐くことは、特に長毛種の猫ちゃんであれば多いと思うので、それに関しては除いて、猫ちゃんが吐いてしまう病気で多いのは、慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症、膵炎の3つがあげられます。もちろんこれ以外にも肝臓の病気や膀胱炎、胃腸炎などでも嘔吐してしまうこともありますが、上の3つが気付かないうちに進行してしまうことがあるので、今回はまず上記3つに気をつけて頂きたいと思います。
まずは慢性腎臓病についてお話ししていきます。
慢性腎臓病の猫
猫ちゃんの慢性腎臓病は数年単位で進行していき、ある一定のラインを超えると嘔吐や悪心などの症状が出てきます。これは身体の中に、本来おしっことして出て行く尿毒素が蓄積してしまうことで起こり、尿毒症と言われています。尿毒症は、腎臓の4分の3以上機能が落ちてしまうと起こってきますが、ここまで進行するまでに出てくる症状としては多くは多飲多尿かと思います。腎臓病の猫ちゃんのおしっこは水のように無色無臭で、お水の減りも早くなってきます。
では尿毒症になってしまったらどうしたら良いのでしょう?
腎臓の機能自体を復活させることはできないので、少しでも身体の中から出して、身体の中の尿毒素を排泄することが大切です。また、リンという物質も腎臓病では蓄積されていくのですが、リンの血中濃度が増えてしまっても強い嘔吐や悪心が出てくるので、リンも排泄させてあげなければなりません。尿毒素やリンを排泄させるために、皮下点滴やサプリメントを使って、身体からそれらの濃度を減らして、症状を軽減させてあげます。他には、あまりにも吐き気が強い場合には、吐き気止めを使って吐き気を抑えてあげて食欲を出させてあげることもあります。
慢性腎臓病の進行は治療をしていても進行を止めることは出来ず、進行を遅らせることしかできませんが、それでも早期に発見してあげることで、吐き気が出るほどの状態になるまでの期間を延ばすことができるので、お家の猫ちゃんたちのおしっこの状態をよく見てあげましょう。また、よだれが多くて気持ち悪そう、よく吐くようになった、などの症状がある場合は慢性腎臓病かもしれません。
次に甲状腺機能亢進症のお話です。
甲状腺機能亢進症の猫
ブログでも何度か甲状腺のお話しはさせて頂いているかと思いますが、今一度簡単にどういう病気かお話しさせて頂きます。
甲状腺とは、身体の代謝を調節する臓器で、甲状腺ホルモンというホルモンが全身に行き渡ることで、全身の臓器が活発に動き出します。例えば心臓であれば心拍数や血圧の上昇が見られますが、消化管の動きも活発にするため、食べ物が消化される前にどんどん流れていき、便として排泄されます。しかし、消化される前なので、下痢になってしまうことがよくあります。また、胃の動きも活発になるため、嘔吐もよく起こってしまいます。ただ、身体の代謝としては上がっているので、見た目では食欲もあり、活動も活発になるので、もっとも見過ごしがちな疾患と言えます。
嘔吐下痢をよくするようになっても、食欲が落ちない、食べても食べても痩せていく、といった場合、特に高齢になって食が細くなっていたのに急に食欲が上がってきた、などの変化がある場合はこの甲状腺機能亢進症の可能性が高いです。動物病院に連れていけない場合でも、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、ご自宅に往診専門獣医師と動物看護師が訪問し、安全に採血をしてホルモン濃度を測定することで診断が可能なので、動物病院に行くと興奮してしまうためしばらく行っていない方は、一度健康診断のためにも、血液検査を行ってみましょう。
また、甲状腺機能亢進症はお薬でコントロールすることができる病気です。もし甲状腺機能亢進症と診断されても、しっかりとコントロールすれば、症状も良くなってくるので、いつでも往診専門動物病院わんにゃん保健室にご相談ください。
最後に膵炎です。
膵炎の猫
猫ちゃんの膵炎は慢性膵炎が多いと言われています。犬では急性膵炎が多く、急性膵炎は救急疾患で命に関わるのですが、一方で猫ちゃんの膵炎は慢性なので、症状が出る以前から膵炎であることも珍しくありません。それが何らかの要因で急性の症状が出て、急激に食欲が落ちてしまったりします。嘔吐は起こることと起こらないことがありますが、嘔吐しているときは必ず考えていかないといけない病気の1つです。
犬では膵臓にかなりの痛みを生じるため、お腹を押されることをすごくいやがりますが、猫の膵炎ではあまり痛みが分からないことが一般的です。
ただ、膵炎の根本的な治療というのはわんちゃんでも猫ちゃんでもありません。そのため、対症療法、たとえば点滴や吐き気止めなどを使って出来るだけ早く食欲を戻して膵臓の炎症が収まるのを待つ、という治療になります。あまりにも症状が激しい場合には、しっかりと飼い主様と相談させていただいた上で、抗炎症剤を使うこともあります。
このように嘔吐ひとつ取ってもかなりさまざまな病気が考えられます。
大した変化でなくても、実は病気が隠れている可能性があるので、何か様子が変わったかな?という場合には、往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。
また、動物病院に連れていけないほど神経質で繊細な猫ちゃんの場合でも、往診専門動物病院わんにゃん保健室ではいつでもご相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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