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猫の腎臓病は在宅緩和ケアが可能(2025年5月)

猫の慢性腎臓病は進行性の疾患であり、内服薬や皮下点滴などを含めた期的な管理が必要です。特に高齢の猫にとって、頻繁な通院は大きなストレスとなることがあります。本記事では、15歳7ヶ月の日本猫、ロッキーくんの症例を通じて、在宅での緩和ケアの可能性とその実践について詳しく解説します。

 

ロッキーくんの症例紹介

東京都中央区にお住まいの日本猫、15歳7ヶ月の去勢雄ロッキーくん。3年前にかかりつけ動物病院で腎不全と診断されました。診断当初は腎臓ケアのフードやサプリメントによる治療が中心でしたが、徐々に血液検査結果の悪化がみられ、血管拡張薬やラプロスの投与が開始されました。

さらに病状が進行するにつれ、皮下点滴が必要となり、通院回数も最初は週1回から週3回へと増えていきました。しかし通院後はぐったりして寝込んでしまう日が続き、ご家族は「これ以上の通院はストレスになる」と判断し、在宅緩和ケアへの切り替えを決断。当院へのご相談をいただきました。

初診ではこれまでの治療経過や現在のご様子、ご家族が希望する今後の診療方針を細かくお伺いするカウンセリングからスタート。特に呼吸状態の悪化が気になったため詳細に状況をお聞きすると、体重2.3kgのロッキーくんに対し1回150ml以上の皮下点滴を行っていたことがわかりました。

すぐに超音波検査(エコー検査)を実施したところ、胸水の貯留を確認。もともと心臓には問題がないと聞いていたものの、診察では心雑音も確認できました。このことから、腎臓病の管理に集中するあまり、循環状態の悪化に気づかず過剰輸液になってしまっていたと考えられました。

さらに動物病院の診療体制からも、多くの獣医師による引き継ぎの中でプランが固定化されていたリスクも考えられました。当時の体重は4.5kgあったため、当初の計画は理解できましたが、その後の体重変化に応じた見直しが行われていなかったようです。

このような経緯を経て、ご家族のご希望に沿いながらロッキーくんの在宅緩和ケアがスタートしました。現在は1回60mlの皮下点滴を1日2回、ご自宅で行っていただきながら、月1回の往診と血液検査で状態を管理しています。

初期の在宅緩和ケアと症状改善

在宅緩和ケアに切り替えた直後のロッキーくんは、呼吸状態が悪く全身のだるさも顕著でした。まずは過剰輸液による循環負担を軽減するため、皮下点滴の量を標準量に合わせ、1回60mlを1日2回に分けて投与するプランを立てました。

この変更により、呼吸の速さや努力性呼吸(肩で息をする動き)が徐々に改善。胸水の貯留も少しずつ減少傾向となり、ロッキーくん自身の活動性もわずかに回復していきました。

加えて、腎機能の安定化と心負担軽減のために、内服薬やサプリメントの種類・量も細かく調整。血圧管理や利尿のバランスも慎重に見ながら治療を進め、ご家族には日々の観察ポイント(呼吸数・食欲・体重・排尿量など)を共有しました。

通院の負担から解放されたことはロッキーくんにとって非常に大きく、ご家族からも「以前より目に見えて落ち着いた」「呼吸も楽そうで安心して過ごせるようになった」とのお声をいただきました。

在宅ケア開始から約2週間後には、食欲・元気ともに安定。腎不全に対する治療を継続しながら、ストレスの少ない生活環境を整えることができました。

 

在宅管理のメリットと課題

在宅緩和ケアに切り替えたことで通院ストレスから解放され、診療のストレスも最小限にすることができ、また日々の変化についても二人三脚で歩んでいけることも大きなメリットのようでした。指示は口頭のこともあれば、基本はメールでの指示となるため、ご家族にとっても、どんな指示だったかのか、相談結果などを忘れてしまった時に、文書に戻れるという安心感があったとのことでした。

課題としては急変時の対応です。緩和ケア〜ターミナルケア、そして看取りといった後半のステージでは、急変はつきものです。その時に、1.救急を対応してくれる動物病院に飛び込むか、2.自宅でできる範囲の準備をしておき対処する、の2択となります。

まだ緩和ケアに切り替えたばかりの頃であれば、1を選ばれることがほとんどですが、病状の進行とともに、2を選ばれることが多くなり、ターミナルケアでは、みんなが2を選択されます。

もし1を選ぶ場合には、すでにかかりつけだった動物病院にお願いすることが多いですが、別の動物病院が関与しているのであればうちは診ない、とする動物病院も多く存在するのが現実です。

このように、在宅緩和ケアに切り替えることによるメリットもあれば、デメリットも存在します。

また、往診と救急は相性が悪いということをご理解ください。

急変時の判断はご家族に委ねられるため、日頃からの方針決定や、担当の先生との意思疎通はしっかりと行っておきましょう。

 

皮下点滴の調整と安全な管理

腎不全管理において皮下点滴は非常に重要な手段ですが、過剰輸液による副作用にも注意が必要です。ロッキーくんのケースでも、当初は過剰な点滴量が原因で胸水貯留を起こしてしまいました。在宅緩和ケアでは、安全な範囲での適正な投与量と頻度の調整が不可欠です。

過剰輸液のリスク
  • 胸水貯留や浮腫による呼吸苦
  • 心雑音の発現や循環負荷増加
  • 腎不全以外の合併症リスク
安全な皮下点滴管理のポイント
  • 体重1kgあたり10〜30ml/回を基準に設定
  • 猫の状態に応じて分割での投与を選択
  • 注射部位や針の選択、衛生管理を徹底
ご家族と二人三脚の治療
  • 初回は往診時に点滴方法を丁寧に指導
  • 不安があればオンライン相談やメールでフォロー
  • ご家族の精神的な負担を最小限にしつつ継続治療をサポート

現在ロッキーくんは1回60mlを1日2回という少量・高頻度投与で、腎臓への負担を抑えながら安定した管理が続けられています。

 

血液検査と病状モニタリング

腎不全の管理において、定期的な血液検査による病状の把握は不可欠です。在宅緩和ケアにおいても、月1回の血液検査で状態をモニタリングし、適切な治療調整を行っています。

主な検査項目
  • BUN(血中尿素窒素)・クレアチニン:腎機能の評価
  • SDMA:早期の腎障害検出
  • リン・カリウム・ナトリウムなど
検査データに基づく治療調整
  • 皮下点滴量や頻度の見直し
  • リン吸着剤を含めた投薬内容の調整
  • 食事療法やサプリメントの再評価
ご家族への説明とサポート
  • 検査結果は丁寧にご説明し、ご家族と今後の治療方針を相談
  • 体重や食欲の変化なども併せて総合的に判断
  • 常に最新の状態を共有し、ご家族と二人三脚のケア体制を継続

ロッキーくんのケースでも、月1回の血液検査によって過剰輸液の早期発見ができ、その後の適正管理につなげることができました。

 

 

在宅緩和ケアの進め方と注意点

在宅緩和ケアは、ご家族と獣医師が密に連携しながら進めていきます。ロッキーくんのケースでも、ご家族が主体となり、適切な医療サポートを受けながら在宅でのケアを続けています。

ご家族への情報提供と教育
  • 皮下点滴の手技や注意点を事前にしっかり指導
  • 症状の変化や異常サインの早期発見方法を説明
  • 日常的なモニタリング項目(体重、食欲、排尿量など)の確認
在宅医療の安全確保
  • 過剰輸液や低血圧などのリスクへの注意喚起
  • 感染予防のための衛生管理方法の徹底
  • 緊急時に備えた体制や対応方法の指導を提供
ご家族と獣医師の連携
  • 日常の様子を定期訪問時に報告
  • 月1回の往診および検査結果による治療計画の調整
  • 疑問点や不安を随時相談できる安心の体制づくり

このように在宅緩和ケアは、ご家族の協力と獣医師のサポートによって成り立ち、ロッキーくんも現在まで良好なコントロールが維持されています。

 

 

急変時の対応と準備

慢性腎臓病の在宅緩和ケアでは、急な体調変化にどう対応するかが非常に重要です。ロッキーくんのご家族も、事前にしっかりと準備を行い、不測の事態に備えていました。

事前に備えておくべきこと
  • 急変時の症状やサイン(ぐったり、食欲不振、呼吸異常など)を理解する
  • 急変時に緊急で対応してくれる動物病院の連絡先を調べておく
  • 皮下点滴や薬の量や種類、投与量、投与間隔などを再確認
  • 状態の悪化が続く場合、ご家族の意向に応じて看取りの準備を進める

 

 

わんにゃん保健室の在宅緩和ケア

ロッキーくんのように、慢性腎臓病の在宅緩和ケアをご希望されるご家族のサポートを、わんにゃん保健室では積極的に行っています。

ご家族とのカウンセリング
  • 初診時に過去の治療歴や現在の状態を詳細にヒアリング
  • 今後の診療方針や目標を明確に設定
  • ご家族の意向を最大限尊重したプラン作成
在宅管理への具体的な支援
  • 皮下点滴や投薬のご家族への指導
  • 緊急時の判断のための家族会議のすすめ
  • メールを活用した継続的な相談体制
最期までのトータルサポート
  • 病状の変化に応じた診療内容の調整
  • ターミナルケアや看取りへの準備・支援
  • ご家族の不安や負担を軽減するための伴走支援

在宅緩和ケアでは、ご家族と動物病院の信頼関係と密な連携が最も重要です。わんにゃん保健室では、ロッキーくんのご家族のように、自宅で最期まで穏やかに過ごしていただけるよう全力でサポートしています。

 

まとめ

ロッキーくんは、慢性腎臓病という長い闘病を経ながらも、ご家族の愛情と努力によって、自宅で穏やかな時間を過ごすことができています。

  • 通院によるストレスから解放されることで、精神的・身体的な負担が軽減された
  • 適切な皮下点滴量と在宅モニタリングにより、病状のコントロールが可能になった
  • ご家族と獣医師が二人三脚で在宅ケアを継続できたことで、最期までの生活の質(QOL)が保たれた

慢性腎臓病は完全な治癒が難しい疾患ですが、ご家族の協力と在宅ケアの工夫次第で、ペットにとっての「穏やかな日常」を実現することができます。

わんにゃん保健室では、東京を中心に通院が困難となった猫ちゃん・わんちゃんのご家族のもとへ往診に伺い、在宅緩和ケアの選択肢をご提案しています。どんな小さなご不安でも、まずはお気軽にご相談ください。

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