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猫の肺腫瘍と胸水の向き合い方(2025年5月)

猫の肺腫瘍は高齢猫に多く見られる疾患の一つであり、進行に伴って胸水貯留を引き起こすことがあります。胸水がたまると、猫は呼吸困難を訴えるようになり、食欲や活動性にも大きな影響を及ぼします。今回は、肺腫瘍による胸水貯留と向き合いながら、在宅での緩和ケアを選択された16歳の猫ちゃん、東京都江戸川区在住のキキちゃんのお話をご紹介します。

通院が困難となった今、どのような選択肢があり、胸水抜去は必須なのか、それとも他の方法で症状を緩和できるのか、ご家族様が取るべき行動と心構えをお伝えします。

目次

 

胸水がたまるということ

猫の肺腫瘍が進行すると、胸腔内に液体(胸水)が貯留することがあります。これは、腫瘍が肺や胸膜を圧迫・浸潤することで血液やリンパの流れが滞り、液体が溜まるためです。胸水の貯留が進行すると、肺が圧迫され、呼吸困難を引き起こすことがあります。

胸水がある時に見られる症状
  • 呼吸が速く浅くなる(呼吸促迫、尾翼呼吸、開口呼吸)
  • 安静時でも肩で息をするような動作
  • 食欲の低下、元気の消失
胸水がたまる原因
  • 肺腫瘍や胸膜腫瘍の進行
  • リンパの循環障害
  • 炎症による滲出液の産生増加
診断のために行う検査
  • 超音波検査(胸腔内の液体確認)
  • X線検査(肺の圧迫評価)
  • 血液検査(全身状態の把握)

猫の呼吸状態の異常に気づいたら、胸水の有無を含めた早急な評価が必要です。ご家族が気づく呼吸の変化が、命をつなぐきっかけになることもあります。

 

 

胸水抜去のメリットとリスク

胸水が貯留している場合、呼吸状態を改善するために胸水の抜去を検討することがあります。適切に胸水を抜去することで、肺の圧迫が軽減し、呼吸が楽になります。ただし、処置にはリスクも伴います。

胸水抜去のメリット
  • 肺が拡張し、呼吸が安定する
  • 食欲や元気の回復が期待できる
  • 苦しみを軽減できることで、ご家族の精神的負担も減少
胸水抜去のリスク
  • 抜去時の痛みと恐怖
  • 鎮静処置による呼吸抑制や循環不全
  • 大量の胸水を急速に抜去した場合の再膨張性肺水腫の可能性
在宅で抜去する場合の配慮
  • 状態の安定している時間帯に実施
  • 必要に応じた軽度鎮静を併用
  • 胸水抜去後の酸素管理を強化

胸水抜去は苦しみを取り除くための有効な処置である一方で、実施するかどうかはご家族の意向とその子の状態によって決まります。命をつなぐための選択肢の一つであると同時に、最期をどう過ごさせてあげるかを考える場面でもあります。

 

抜去しないという選択

胸水抜去は有効な対処法ではありますが、全ての症例において「必ず抜去すべき」とは限りません。猫の状態や性格、そしてご家族の希望によっては、抜去せずに緩和ケアを行うという選択肢もあります。

抜去を避ける理由
  • 重度の呼吸不全により鎮静のリスクが高い
  • 痛みによる強いストレスやトラウマ
  • 過去の経験から胸水抜去への強い拒否反応がある
代替手段としての治療
  • 利尿剤の増量(例:フロセミドなど)
  • ステロイドによる炎症抑制と腫瘍縮小の期待
  • 酸素濃度の管理強化(酸素発生装置・酸素ハウス)
在宅ケアに必要な準備
  • 高濃度酸素が維持できる環境整備
  • 状態の変化に応じた頓服薬の準備
  • こまめな呼吸数と様子のモニタリング

抜去を行わない場合でも、猫にとって「穏やかに過ごせる環境」を整えていくことは可能です。何がその子にとって最も苦痛の少ない道か、ご家族と共に考えることが在宅緩和ケアの本質です。

 

 

ご家族が選んだ緩和ケアとその工夫

ご家族は、「できるだけ苦しい処置を避けたい」「最後まで家で穏やかに過ごさせたい」という思いから、在宅緩和ケアという選択をされました。抜去を行わない代わりに、さまざまな工夫を重ねて呼吸状態の管理を行いました。

酸素環境の見直しと強化
  • 酸素濃度を高く保てるよう、酸素発生装置を1台追加
  • 密閉性の高い酸素ハウスの見直し
  • 猫が安心できる場所に酸素供給を集約(ベッドやお気に入りのスペース)
薬の調整による緩和ケア
  • 利尿剤の用量を調整し、胸水のさらなる貯留を抑制
  • ステロイドによる抗炎症作用と腫瘍の進行抑制
  • 鎮静や呼吸緩和を目的とした内服薬・注射薬のバランス調整
猫に寄り添った生活環境の整備
  • 酸素ハウスとトイレの距離を縮め、移動の負担を軽減
  • 床に滑り止めマットや低反発マットを敷き、動きやすくする
  • 好物の匂いを活用して、少しでも食欲を引き出す工夫

胸水抜去という選択をしない分、ご家族の工夫と努力で「穏やかな時間」を守っていく。その姿勢が、キキちゃんにとっての何よりの安心だったはずです。

 

 

最期の日の話

キキちゃんが旅立つ当日、ご家族はいつもと同じように朝のケアを行い、声をかけながら一日を過ごしました。呼吸は浅く早いものの、目を閉じて穏やかに横たわっていました。

酸素室の中で静かに寝ていたキキちゃんに、ご家族が「おはよう」と声をかけると尻尾と耳で反応を見せてくれ、お気に入りのウェットフードを鼻先に持っていくと、ほんの少しだけ舐めてくれたそうです。

午後に入り、呼吸がゆっくりになり、全身の動きも少なくなってきました。ご家族がそっと手を握っていたところ、一度だけお母さんの手をぎゅっと押し返してくれたとのことでした。

その後、軽くひきつけるような動きを数秒見せ、苦しむ様子もなく眠るように息を引き取ったとのことでした。

通院をやめると決めた時から、キキちゃんの表情が穏やかだったと話してくれました。きっとご家族の心が決まったことで、心の反応が穏やかになったことと、それがキキちゃんに伝わり、安心を与えられたんだと思っています。

動物も、そして人も、最後の時間をどう過ごせるかは、その一生を象徴する大切な時間です。キキちゃんのように、愛されながら、静かに、穏やかに過ごすこと。それが在宅緩和ケアの一つの理想です。

 

 

胸水抜去をしないという決断とその理由

キキちゃんの胸水貯留が確認された際、通常であれば胸水抜去を行うことで呼吸の改善が期待されます。しかし、胸水抜去には以下のようなリスクや負担が伴います。

  • 胸水抜去は肋骨の間に針を刺すため、大きな痛みを伴う
  • 鎮静処置が必要となるが、状態の悪い猫に対してはリスクが高い
  • 処置によるストレスやトラウマが残る可能性がある

これらの理由から、ご家族は胸水抜去を行わない選択をされました。代わりに、以下のような在宅での緩和ケアを進めました。

  • 利尿剤とステロイドの用量調整を行い、胸水の貯留を抑制
  • 酸素濃度を高めるために、酸素発生装置や酸素ボンベを追加設置
  • 内服薬を中止し、すべての薬剤を注射薬に切り替えて皮下点滴で投与

このようなケアにより、キキちゃんは呼吸状態が安定し、穏やかな日々を過ごすことができました。胸水抜去を行わないという決断は、ご家族とキキちゃんにとって最善の選択であったと考えられます。

 

 

在宅酸素療法の導入とその効果

呼吸状態が悪化したキキちゃんにとって、在宅酸素療法は重要な選択肢となりました。通院が難しい状態でも、自宅で酸素環境を整えることで、呼吸の補助が可能になります。

使用した酸素療法機器
  • 酸素発生装置(1〜2台)
  • 酸素ハウス
  • 必要に応じて酸素ボンベを追加導入

これらの機器を活用し、酸素濃度を安定的に維持することで、呼吸の苦しさを軽減しました。

設置と運用の工夫
  • 日の当たらない場所に酸素ハウスを設置し、温度が上がりすぎないようにする
  • 温度だけでなく湿度管理を併せて行い、快適な環境を維持
  • モニタリングにより、呼吸状態に合わせた酸素濃度の調整

ご家族と相談のうえ、無理のない運用方法を構築し、継続的なサポートを実現しました。

在宅酸素療法の効果
  • 呼吸促迫が改善し、落ち着いて横になる時間が増加
  • 食欲と元気が徐々に回復
  • ご家族が目の届く環境で見守れる安心感

キキちゃんにとって、在宅酸素療法は「安心して過ごせる時間」をもたらす大きな支えとなりました。

 

 

看取りを迎えるということ

キキちゃんの旅立ちは、ご家族にとって心に残る大切な時間となりました。通院という大きなストレスから解放され、自宅という安心できる場所で最期を迎えることは、猫にとってもご家族にとっても、穏やかな選択だったのだと思います。

在宅で看取るという決意
  • キキちゃんの呼吸が悪化したタイミングで、ご家族は通院を断念
  • 病院での処置を受けるよりも、自宅で寄り添いたいという強い思い
  • 在宅緩和ケアを選んだことへの後悔はなく、むしろ安心感があったとお話しされていました
最期の瞬間にできること
  • そばに寄り添い、優しく声をかける
  • 手を握ったり、背中を撫でたりといったスキンシップ
  • 呼吸が落ち着くよう酸素環境を保ち、静かな環境を整える

こうした「できること」を一つひとつ行っていただくことで、苦しさを最小限に抑え、穏やかな旅立ちへとつなげていくことが可能です。

在宅での看取りの意味
  • 病院という非日常ではなく、日常の延長にある時間で看取れる
  • 介護の時間を通じて、より深く絆を感じることができる
  • 最期の姿がトラウマになりにくく、後悔が少ない

キキちゃんの旅立ちが、悲しみだけではなく、「ちゃんとできた」という安堵と誇りに変わるよう、私たちは全力でサポートしています。

 

 

まとめ

キキちゃんは、肺腫瘍による胸水貯留や呼吸困難と向き合いながら、ご家族とともに在宅での時間を大切に過ごしてきました。

通院の限界を迎えたタイミングで在宅緩和ケアに切り替えたことで、治療の継続だけでなく、穏やかな生活と尊厳ある最期を実現することができました。

  • 肺腫瘍による胸水貯留には、在宅でも対応が可能なケースがある
  • 呼吸が苦しい状態でも、酸素療法や皮下点滴で負担を軽減できる
  • 通院が困難になっても、適切なケアと見守りで「穏やかな日々」を支えられる

呼吸の異変や日常の違和感を覚えた時、ご家族の気づきが命をつなぐきっかけになります。キキちゃんのように、ご家族に見守られながら、安心できる場所で穏やかに過ごすこと。

それが、私たちが目指す在宅緩和ケアのかたちです。

東京都江戸川区を中心に、通院が難しくなった猫ちゃん・わんちゃんのご家族のもとへお伺いしています。どんな小さな不安でも、どうか一度ご相談ください。

 

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