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猫の肥大型心筋症と在宅緩和ケア(2025年4月)

心臓病を抱える猫にとって、「通院による負担」は病状を大きく左右する重要な要素です。特に、肥大型心筋症は進行とともに胸水貯留や呼吸困難を引き起こす可能性があり、病気自体の重症度だけでなく、日々のケアの在り方が予後を左右します。

今回ご紹介するのは、東京都内に暮らす13歳の日本猫・キキちゃん。かかりつけで心臓病と診断され通院を続けていましたが、ある日を境に、通院後の疲弊がひどくなり、薬も飲ませられなくなってしまいます。

ご家族は、治療をあきらめたのではなく、「別の形でのケア」を模索し、在宅緩和ケアへと舵を切りました。

このブログでは、キキちゃんがどのように在宅緩和ケアへ移行し、どのようなサポートを受け、そして最期を迎えたのかを記録としてまとめています。通院が難しい猫と暮らすご家族に、ひとつの選択肢として届くことを願っています。

目次

 

キキちゃんの心臓病発覚とその経過

心臓病の診断と通院による管理

キキちゃんは2022年4月、かかりつけの猫専門動物病院にて肥大型心筋症と診断されました。当初は元気・食欲ともに安定していたため、3ヶ月に1回の通院で心臓の検査と内服薬の処方を受けながら経過観察を行っていました。

病状の悪化と通院の限界

2024年10月、急激な体調悪化が見られ、ぐったりとした様子にご家族も強い不安を抱かれました。どうにか通院したものの、胸水貯留が認められ胸水抜去を実施。その後、内服薬を継続するも、食欲がなく投薬が難しくなり、通院後もぐったりとした状態が続いたため、「通院が限界」と感じるようになったとのことでした。

在宅緩和ケアへの希望とご家族の決断

通院によるストレスや体調悪化のリスクを避けたいという思いから、ご家族は在宅での緩和ケアを希望されました。Web検索で当院を見つけてくださり、「この子にとって一番穏やかな選択を」と、往診での在宅ケアへの切り替えを決断されました。

 

呼吸の悪化と在宅ケアの開始

初診時の評価と胸水の状況

往診初診は、胸水抜去から10日後でした。キキちゃんは玄関まで迎えに来てくれるほどの体力は残っていましたが、超音波検査では少量の胸水が確認されました。呼吸の状態を鑑みて、この日は抜去は行わず、経過観察としました。

投薬方法の変更:皮下点滴への切り替え

ご家族からの「口を開けるだけで呼吸が乱れてしまう」という訴えを受け、すべての内服薬を中止し、注射薬を希釈した皮下点滴への変更を決定しました。これにより、投薬時のストレスを最小限にしながら治療を継続する体制を整えました。

在宅酸素環境の整備

初診時に酸素発生装置1台と酸素ハウスを導入し、呼吸補助を行いました。在宅酸素環境は、呼吸状態の安定に重要な要素であり、以後の診療でも環境強化を適宜行っていく方針としました。

 

在宅ケアでの安定期

内服中止後のキキちゃんの変化

皮下点滴への切り替え後、キキちゃんは徐々に食欲と元気を取り戻し、ご家族の目にもはっきりとした改善が見られました。内服のストレスが軽減されたことで、体への負担も大きく減ったと考えられます。

再診時の胸水減少と呼吸安定

初診から1週間後の再診では、胸水はほとんど認められず、呼吸状態も落ち着いていました。この結果を受け、診療間隔を2週間に1回とすることに決定しました。

穏やかな日常の再構築

この間、キキちゃんはお気に入りの窓辺のベッドで過ごし、ご家族とゆったりとした時間を取り戻していました。治療の効果と在宅環境の整備が、安定した時間を作る大きな要因となりました。

 

 

胸水再貯留とその対応

4ヶ月後の状態悪化

安定していた在宅ケアから4ヶ月が経過した頃、キキちゃんの呼吸状態が再び悪化。再診を前倒しで実施したところ、超音波検査で胸水の再貯留が確認されました。

在宅胸水抜去と鎮静処置

猫ちゃんは胸水抜去の際に強い不安やストレスを感じやすいため、軽度の鎮静をかけて処置を実施しました。こうすることで、処置へのトラウマを軽減し、次回以降のケアをスムーズに行うことが可能になります。

酸素環境の再構築

呼吸状態をさらに安定させるため、酸素発生装置を追加でもう1台設置し、酸素ボンベの併用も開始。必要に応じて酸素濃度を調整できるようにし、安心して過ごせる環境づくりを強化しました。

 

 

頻回な胸水抜去と症状の変化

1週間ごとの胸水抜去

キキちゃんはその後、1週間に1回のペースで胸水の抜去が必要となる状態が続きました。抜去後は一時的に呼吸が落ち着くものの、数日で再び呼吸促迫が見られるようになってきました。

呼吸の安定が得られない状況

4回目の胸水抜去後には、抜去後も呼吸状態がなかなか安定せず、これまでの経過とは異なる反応が見られました。この段階で、胸水以外の要因による呼吸不全の可能性を疑いました。

胸水がないのに呼吸困難

再度3日後に往診を実施し、超音波検査を行ったところ、胸水はほとんど貯留していませんでした。これは、末期の肥大型心筋症においてよく見られる症状であり、胸水がそんなに溜まっていなくても呼吸困難が継続する状態でした。

 

 

最期の夜と静かな旅立ち

お母さんとの最後のふれあい

その夜、キキちゃんはお母さんの手をペロペロと優しく舐めてくれました。それはまるで、「ありがとう」と伝えているような仕草だったとのことでした。その仕草に、お別れを感じ取ったとのことで、何も不安はなかったとのことでした。呼吸は浅くなりつつも、穏やかな表情を見せてくれていたそうです。

静かで穏やかな最期

明け方、キキちゃんは一瞬だけピクピクと痙攣のような動きを見せた後、大きくばたつくことなく、静かに眠るように旅立ちました。お母さんがそばにいてくれたことが、キキちゃんにとって何よりの安心だったことだと思っています。

最期を一緒に過ごせた

通院の負担を減らし、家で過ごす時間を大切にした選択は、キキちゃんにとっても、ご家族にとっても、かけがえのない時間だったのことでした。あの状態で通院させていたら、途中の車の中で、または病院で亡くなっていたかもしれないので、それだけは絶対避けたかったことだったとのことで、「家で見送れてよかった」というお母さんの言葉を受け、これが在宅緩和ケアの最大の意義であると、改めて思えました。

 

 

在宅緩和ケアでできること

通院に代わるケアの実現

通院が困難になったキキちゃんにとって、往診による在宅緩和ケアは大きな安心につながりました。検査・処方・処置をすべてご自宅で実施できるため、負担の少ない医療が実現できます。また、もう通院に伴うストレスをかけないでいいんだというご家族の精神的な安定が、キキちゃんの状態安定に繋がったんだと思います。ご家族の心の安定が、犬猫に及ぼす影響は、緩和ケアの時期にはかなり大きいと感じています。

酸素環境や注射薬での管理

酸素発生装置や酸素ハウスの設置、必要に応じた薬剤の皮下投与など、病院と同等の環境を自宅で整えることが可能です。特に心疾患を抱える猫にとって、呼吸をサポートする環境は今を少しでも楽に過ごさせてあげるための鍵になります。酸素環境を徹底することで、苦しいはずの時間を少しでも穏やかに過ごさせてあげることが可能であり、もしかすると、またご飯を食べてくれるかもしれないという期待を持てるかもしれません。

ご家族の心の準備を支える

在宅緩和ケアでは、医療面だけでなく、ご家族の心のサポートも大切にしています。今後の変化について丁寧に説明し、心構えを共有することで、急な変化にも落ち着いて対応できるよう支援しています。ご家族の病気への理解、そして家族としての方針決定などが、緩和ケアではとても大切です。

 

 

看取りからお別れまで

最期の時間をどう過ごすか

キキちゃんは、お母さんの見守るなか、静かに最期の時を迎えました。胸水貯留がないにもかかわらず呼吸状態が改善しないという状況は、心筋症の終末期のサインの一つです。苦しさを最小限に抑え、静かに息を引き取ることができるよう、医療と環境の両面からサポートしてきました。

家族にしかできないサポート

最期の瞬間にそっと手を舐めてくれたキキちゃん。その行動は、ご家族との絆の深さを物語っていました。ご家族の存在こそが、キキちゃんにとって何よりの安心であり、痛みを超えて心を癒す力となります。いつものように話しかけ、撫でてあげることで、愛犬、愛猫の不安が少しでも和らぎ、苦痛緩和につながるようです。これは、ご家族にしかできない、最後のケアです。

わんにゃん保健室ができること

当院では、症状に応じた医療サポートはもちろん、看取り後のご相談やご葬儀の案内など、最期のその先までを見据えたサポートを提供しています。「苦しませたくない」「穏やかに送り出したい」という想いに寄り添いながら、最期の時間を家族らしく過ごしていただけるよう尽力いたします。

 

愛犬、愛猫の穏やかな最期のために、在宅緩和ケアをご希望される場合には、当院までご連絡ください。

 

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