往診専門動物病院 わんにゃん保健室の往診獣医師です。
港区・中央区・台東区を中心に東京23区までエリアを拡大して、ご自宅まで訪問させていただき獣医療を提供しています。また、わんにゃん保健室は犬・猫専門ですので、他の動物種のペットはお受けすることができません。何卒ご了承ください。
前回、9月7日に「高齢猫の病気①」を描いてから早1ヶ月半ほど経ちましたが、今回は「高齢猫の病気②」をお送りさせていただきます。
往診専門動物病院は、診察・治療に必要な医療資材・医療機器を、訪問の際にご自宅まで運んでいき、ペット(犬・猫)が普段生活している家の中で診察を行います。
往診獣医療では、わんちゃんより猫ちゃんの方が診察数として圧倒的に多いです。理由は、やはり「猫」だからです。
往診獣医療のご予約にはそれぞれのご家族様ごとに違っていますが、その中で特に多いケースとして、やはり猫ちゃんの通院トラブルがあります。キャリーに入ってくれない、キャリーに入っても異常に怖がって鳴いてしまう、待合室でほかのペットが鳴くたびに怖がってしまうので、といったような繊細な猫ちゃんと暮らしているペットオーナー様からすると、動物病院に連れて行くこと自体が高いハードルになってしまい、飼い猫との死闘の末、結局断念してしまうといったことが多いようです。
しかし、もう少し早ければ・・・ということも多々あります。この回では、高齢猫を飼っている飼い主様向けに、高齢猫の気をつけたい症状について書いてみます!まずは、前回のおさらいです。こんな症状ありませんか?
腎臓機能、大丈夫ですか?
・トイレに行く回数が多くなった
・毎回ちゃんと尿量は出ている
・尿の色が薄くなったような気がする
・尿の臭いが、なんとなく薄くなった気がする
・お水をよく飲むようになった
口内炎かも・・・
こんな症状ありませんか?
・ご飯が食べづらそう
・食事の時に頭を振る
・食事の時に口を気にする
・涎が増えた
・口臭が強い
・前肢が汚れていて臭い
ここまでは前回書いた内容です。もう一度読み返したい!場合には、ココをクリックしてください^^
写真は、嘔吐と食欲不振を主訴に診察したすももちゃん16歳です。検査の結果、腎機能低下症であることがわかりました。
定期的な点滴と内服薬で、現在(写真右)はコントロール中です。
では、今日の内容に入ります!こんな症状、ありませんか?
歩くときにびっこをひく、よく手足の先を舐めている
人間もそうですが、猫ちゃんも高齢になると関節に痛みがでることがあり、びっこをひいたりジャンプができなくなったりすることがあります。そういった場合は痛み止めや炎症止めのお薬、サプリメントで改善することがありますので獣医師に相談してみましょう。
往診では、その症状が関節炎からくるものなのか、または違う病気からくるものなのかを判断し、必要な処置をご自宅で行います。猫ちゃんの多くが内服薬を飲むことが苦手なので、この場合には長期間効く注射を打つことが多いです。
その他にも、家具の配置や足場などを工夫することによって高齢になっても暮らしやすいお家にしてあげることも大切です。お気に入りのソファにのぼりやすいように足場になるようなクッションなどを床においてあげたり、階段の上り下りをしなくてもトイレや食事、水飲み場に行けるように猫ちゃんのものを配置してあげたりしてみると良いでしょう。往診では、直に生活環境を見ることができますので、細かい部分までアドバイスしていきます。ペットとご家族様にとって最善なアレンジメントを一緒に考えていきます。
また、若い猫ちゃんと比較して高齢猫ちゃんで多いのが「巻き爪」です。
若い頃は頻繁に爪とぎをしているので爪が伸びすぎてしまうことは少ないのですが、高齢になり関節炎などがあって爪とぎをすると関節に痛みを感じるため爪とぎの回数が減り、爪がどんどん伸びてしまいます。猫ちゃんの爪は鉤状に曲がっているため、伸びすぎると肉球に刺さってしまい、出血したり化膿したりします。そうなると、刺さった爪を抜いて消毒をし、化膿しないように注射をしたりお薬を飲んだりすることになります。嫌がってしまって一連の処置が出来ない場合には、麻酔をして治療をすることもあります。そうなる前に、定期的に手足の爪のチェックをして、伸びすぎているようならば爪切りをしてあげましょう。ただし、爪切りについても今までしていなかった猫ちゃんですととっても嫌がって暴れてしまうかもしれません。そんな時は獣医師に切ってもらった方が早いし安全です。
いぼ、しこりのようなものができた
人間と同じように、猫ちゃんも高齢になるとガンを含む腫瘍・腫瘤(出来物)ができやすくなります。体の中にできてしまうものについてはお家で見つけることは困難ですが、皮膚の表面にできるものについては比較的簡単に見つけることができます。全身毛で覆われていますので、見ただけでは見つけることは難しいことが多いですが、全身くまなく触れば出来物ができていればわかりますので、頭や背中だけでなく、普段あまり触らないような部位についても定期的に触って何か出来ていないか確認するようにしてみましょう。ただし、何かできていたからと言ってそれがすべて悪いものということはありません。怪我をしてかさぶたになっているだけのこともありますし、にきびのようなもののこともあります。何か見つかった場合はその場所をしっかり覚えておいて、獣医師に相談してみましょう。
往診では、体表(触ってわかるできもの)の腫瘤には針をさして細胞診を行うことができます。しかし、場所によっては細胞を取ること(針を刺すこと)の危険性が高くなることもあり、その場合にはご相談させていただいております。その他にも、超音波検査機器を訪問のときに家に持ち込み、お腹の中に何かあるかどうかを検査することもできます。お腹の中は自然には知ることができませんので、見た目上健康で元気なうちに、一度検査しておくことをお勧めします。
夜中に吠える、用事がないのにうろうろしている、粗相をする
何か不調を訴えている可能性もありますので、他にも気になることがあれば病院で検査をした方が良いですが、特に異常が認められない場合、もしかしたら認知症(痴呆症)かもしれません。猫ちゃん達も高齢になってくると認知症の症状がでてくることがあります。
夜中に大きな声で吠えるようになるとご近所迷惑になってしまったり、夜ぐっすり眠ることが難しくなってきたり…、症状によっては一緒に穏やかに暮らすことが難しくなってくることもあります。認知症ならば仕方ないとあきらめてしまいがちですが、お薬やサプリメント、食事療法で改善することもありますし、その症状ごとに工夫して暮らしやすくする方法もあります。方法がないとあきらめてしまう前に、今の症状と、一緒に暮らしていくうえで困っている内容を具体的に相談することとで猫ちゃんにとっても家族にとっても暮らしやすくなる方法が見つかる可能性がありますので、ぜひ獣医師に相談してみてください。
往診で訪問させていただいたご家族様には、日々の変化や異常行動を写真と動画で残してもらえるようお伝えしています。いつ、どんな症状が、どのくらいの時間起きたのか、また、その症状の前後に変わったことはなかったなどを訪問のときにお聞きしますので、そのときに写真や動画があると診察の参考になります。動物病院に通院できる場合でも、ペットの異常行動は口で説明するより動画で見せた方がしっかりと伝えられますので、常に心がけることをお勧めします。
今回は、高齢猫で多い爪の問題、出来物(腫瘤)、問題行動とそれにともなう仕草について書きました。
往診専門動物病院わんにゃん保健室では、通院できない全ての犬猫へ、必要な獣医療を届けられる社会構築を目指します^^
では、また!
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