こんにちわ。
往診専門動物病院わんにゃん保健室 往診獣医師の大東です。
先週は東京墨田区、東京葛飾区からのペット往診依頼が立て込み、高齢の猫ちゃんで元気がない、食欲がない、ふらつくという主訴のもと、検査結果から腎不全であったという症例と複数出会いました。心臓にも雑音があり、目も見えていないため、すでに腎不全からくる腎性高血圧によってダメージを受けていたという症例が2症例いました。動物病院へ通院できない猫ちゃんでも、往診専門動物病院わんにゃん保健室ならご自宅まで訪問できますので、在宅で獣医療を猫ちゃんに提供することができます。ペットの体調が悪そうだななど、異変に気がつきましたらすぐにご連絡ください。
さて、今回は症例のご紹介ではなく、前置きは猫であったにも関わらず、わんちゃんの心臓病のお話をしようと思います。
犬の心臓病といっても、犬の心臓病もとってもたくさんの種類があり、ここだけではお話しきれないので・・・
今回は、犬の心臓病の中でも最もよく見られる「僧帽弁閉鎖不全症」についてお話していきます。
そもそも心臓の構造ってどうなってるの?
犬の心臓は、人と同じで、4つの部屋に分かれています。右上に右心房、右下が右心室、左上に左心房、左下に左心室の4つがあり、それぞれのお部屋に太い血管が繋がっています。
簡単に血液の流れをお話しますと
全身→右心房→右心室→肺→左心房→左心室→全身
という流れになっています。
そして、今回お話する「僧帽弁」というのは
全身→右心房→右心室→肺→左心房→僧帽弁→左心室→全身
のように、左心房と左心室のお部屋の仕切りとして存在し、肺で酸素交換をして綺麗になった血液を全身に送るために左心房から左心室に一方向に血液が流れるようにしてくれています。
心臓はポンプの役割があると言われており、実際、上の矢印の方向に血液を送るために心臓は日々収縮してくれています。
そして、収縮したときに、お部屋の間を血液が逆流しないようにするために、弁がついています。上には書いていませんが、もちろん右心房と右心室の間にも三尖弁という弁がありますよ。
ではいよいよ本題へ・・・
僧帽弁閉鎖不全症ってどんな病気?
僧帽弁閉鎖不全症とは、僧帽弁がもろくなったり、厚くなったり、僧帽弁を支える筋肉が切れてしまったりして、僧帽弁の閉まりが不完全になってしまい、左心室に行くはずの血液の一部が左心房に帰って行ってしまう病気です。
そうすると、せっかく肺で綺麗になった血液が、左心室に行かずに、左心房にうっ滞してしまい、左心房の圧が上がってしまいます。そして、本来全身に送られるはずの血液が、心臓の中に溜まってしまいますので、そのままでは身体は血液が不足してしまいます。そこで、心臓は送り出そうとして、頑張ってポンピングします。
そうして、心臓が頑張ることで、身体は今までと同じぐらいの量の血液が循環します。
身体は今までと同じぐらいの量の血液が来るので、問題なく動くことが出来ているため、ご家族様は症状にほとんど気づかないかと思います。
しかし、その裏側で心臓は頑張り続けているので、その負荷がどこかのタイミングで症状として現れてきます。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の症状
初期の段階では、今までと変わりない生活が出来るでしょう。
しかし、進行してくると、例えば、運動をしたり、興奮したりするとそのたびに心拍数があがり、疲れやすくなってきます。
また、もっと進行すると、今までできていた、お家に入ったときのお迎えをしなくなったり、寝ている時間が増えたりしてきます。
そして、さらに進行すると、肺水腫といって、肺に水が溜まって、呼吸が苦しくなってしまったり、咳がでたりするようになります。肺水腫になってしまうと命にかかわりますが、僧帽弁閉鎖不全症があるからといって全員が肺水腫になるわけではありません。しかし、致命的な症状なので、もっとも注意しなければなりません。
他にも、失神が起こってしまったり、酸欠になってチアノーゼになってしまったりと、進行するとかなり注意が必要な疾患です。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の治療方法
まずは、頑張ってくれている心臓に対して、1回の収縮力を上げるお薬を使用していったり、血圧を下げて心臓から血液が出ていくときの負荷を減らすお薬を使用します。
それではコントロールが難しい場合には利尿剤を併用します。しかし、利尿剤は全身の血液量を減らして、心臓の負荷を下げまずが、腎臓に無理やりおしっこを作らせるので、腎臓への負担は避けられません。
あるいは最近では外科手術によって治療することもありますが、完全に治る子と、完全には治らない子がいるので、その辺りをご相談しながら治療方針を決めていかなくてはなりません。また、術後の合併症はどの子にも同程度の確率で起こることがあり、かなり低い確率ですが、最悪の場合亡くなってしまうこともあります。しかし、肺水腫を繰り返す、など内服でのコントロールが難しい子では、外科治療を選択することもあります。
僧帽弁閉鎖不全症は現在根治的な治療法は、外科治療のみとなっています。しかし、他の基礎疾患があって手術が困難な場合、右側の心臓(三尖弁の逆流)については手術での治療は出来ない場合には内科的に治療していきます。また、僧帽弁閉鎖不全症においても、多くのわんちゃんは、内服薬でコントロールしています。進行性の病気ではありますが、しっかりとコントロール出来れば、肺水腫にならずに過ごせる子も、肺水腫になったとしても再び内服でコントロールできる子もいます。
そして最も大切なのが、早期に発見して、お薬を開始することです。
疲れやすくなった、などの様子の変化が出る前に、聴診でわかることがほとんどなので、お家から出せない、動物病院に通院したことがない、という方でも、まずは往診専門動物病院わんにゃん保健室にご相談下さい。ご自宅まで獣医師と動物看護師が一緒に訪問し、しっかりとペット(犬、猫)の診察をさせて頂きます。
また、心臓病と聞くと驚いてしまう方も多いかと思いますが、しっかりとお薬でコントロールできる子も多いので、いつでもご相談下さい。
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