こんにちは!
往診専門動物病院わんにゃん保健室 往診獣医師の大東です。
東京千代田区からのペット往診の予約を、ここ数日ですが連日複数件お問い合わせをいただき、往診車で獣医師と動物看護師で、東京千代田区周辺をぐるぐる訪問している今日この頃です。
東京千代田区という土地柄、皇居周りをジョギングしている方やゆっくりとお散歩されている方、観光客の方などをたくさん見受けますが、犬の散歩をしている方はあまりいないような気がします。やはり、東京千代田区のペット飼育頭数が少ないことが区役所調べ(狂犬病予防に関連した犬の登録数)で出ているのですが、やっぱり犬の散歩を見かけないですね、
そんな中、東京千代田区在住の高齢犬、はなちゃんが1ヶ月ほど前から立てなくなってしまったということでご自宅まで訪問した時のお話をご紹介させていただきます。
高齢犬に多く、そしてご家族様にも気を付けて見て頂きたい、褥瘡(床ずれ)が出来てしまったわんちゃんのお話です。
はなちゃん(立てない/寝たきり/ペット介護/褥瘡/高齢犬/東京千代田区在住)
今回は、東京千代田区にお住いの高齢犬、はなちゃん、17歳です。
1か月ほど前から立てなくなってしまい、寝たきりで、布団の上で寝返りを打ちながら移動する、という日を繰り返していましたが、1週間ほど前から全く動けなくなってしまい、食欲も落ちてきて、寝返りも打てていないということで、1日前に体位を変えてみたところ、下側になっていた方に褥瘡(床ずれ)が出来てしまっていたということでした。しかし、はなちゃんは10キロ近くあり、動物病院に連れていくことが困難ということで、往診専門動物病院わんにゃん保健室までお電話を頂き、往診をご希望されました。
電話でお話をお伺いした際に、おそらくかなり深いところまで褥瘡が広がっていることが予測されましたので、お電話を頂いたその日の夜に獣医師と動物看護師でご自宅まで訪問し、往診させて頂きました。
お家にご訪問させて頂くと、はなちゃんは座布団の上で寝ており、ちらりとこちらを見てくれました。まずは、褥瘡のステージの確認と感染の確認に入りました。はなちゃんは長期的に立てていませんでしたので、筋肉が薄くなっており、もっとも褥瘡が起こりやすい部分、つまり肩や、太ももの付け根、肋骨の床にあたる部分、など骨が出っ張っている部分に褥瘡が複数見られました。
また、感染も起こしており、骨が見えてる箇所も認められましたので、褥瘡のステージ4、感染あり、という判断のもと、治療に入らせて頂きました。
そもそも褥瘡って何?
褥瘡は平たく言うと床ずれです。長期的に同じ体勢で寝ていると、通常はしびれや痛みを感じて寝返りを打ったり、起き上がったりして体勢を変えます。しかし、高齢犬等、自分で動けない子たちは、痛みなどがあっても自分で体勢を変えることができないために、ずっと同じ部分に体重がかかってしまい、その部分の血流が不足してしまいます。その結果、皮膚が破れてしまい、ジュクジュクとしてきて進行していくと筋肉や骨に達してしまいます。
また、動物では毛が生えているため、その毛が、褥瘡から出てくる浸出液によって固まってしまい、褥瘡に毛がついてしまうことで、毛の菌が感染してしまいます。健康な成犬の通常の傷であれば、免疫力があるためにひどい感染になることは少ないですが、高齢犬のように免疫力が落ちている子の場合は、褥瘡から入った細菌が全身に回ってしまい、敗血症といって全身性の細菌感染症を引き起こすことがあります。敗血症はかなり致命的になってしまうことがあるので、積極的な治療が必要となってきます。
では、褥瘡の治療はどうしていけば良いの??
最近では傷の治し方で聞いたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、湿潤療法といって、感染を抑えながら表面のうるおいを失わないように保護する方法が最も傷の治りも早いと言われています。人では傷パワーパッドを貼って、湿潤を保ちながら傷が治るのを待つというのがイメージしやすいかと思います。
傷から出てくる浸出液が上皮形成(皮膚の形成)や傷の治りに必要な物質を含んでいるので、それを使って傷を治していきます。
しかし、そのジュクジュクの部分に感染が起こってしまっては、先ほどお話したように、高齢犬だと敗血症になってしまう可能性がありますので、慎重に洗浄して滅菌状態を保つ必要があります。洗浄したうえで、肉芽形成を促し、皮膚の形成を促すようなお薬を塗って上から湿潤が保てて、クッション材になるようなもので保護します。
褥瘡も上手にケアが出来れば、少しずつ小さくなって、完全に治すことも可能です。
しかし、できれば褥瘡ができないようにしたいものかと思います。
では予防法は?
立ち上がれない犬猫の褥瘡に対する予防方法はペット介護を知るということがまずは最優先です。例えばですが、床にクッション性があり、体重を分散できるようなマットを敷いて、2~3時間ごとに体位変換することが理想とされています。しかし、ご家族の方も寝なければ体力が持たないかと思いますので、夜は出来る範囲で、ご家族の方が無理しないようにして頂くことが最も大切です。
今回のはなちゃんは、おしっこの量も少なくなってきているということで、かなり危険な状態と判断されました。しかし、飼い主様とご相談し、検査をして積極的な治療、というよりは、褥瘡の感染や痛みなどのコントロールを行いながら、ターミナルケアを行うことをご希望されましたので、その日は、はなちゃんが疲れすぎない程度に、褥瘡周辺の毛刈りと洗浄、軟膏の塗布、傷の保護、皮下点滴と抗生物質の注射を行いました。
また、口におやつを持っていくとくわえて飲み込もうとしてくれて、なんとか食べれるようになってほしいと願って、その日の治療は終了としました。
その後も数日間お伺いさせて頂き、洗浄と点滴など全力で治療をさせて頂きましたが、残念ながら、はなちゃんは治療開始1週間で、虹の橋を渡っていきました。
しかし、最期の日の前日、はなちゃんはご飯を食べてくれていたそうです。おそらく、最期のお別れの時間をはなちゃんが作ってくれていたのではないかと思います。
このように、褥瘡が進行した状態で気付き、ペット往診のご予約を頂くことも多く、その際にはしっかり処置の方法、また続けることが出来るような犬猫の介護方法を、生活環境を踏まえで一緒に相談して見つけていきますので、ペットの介護について諦める前に一度往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡下さい。
一緒に大切なわんちゃん、猫ちゃんが快適に過ごすことが出来る方法を探しましょう。
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