こんにちは!
往診専門動物病院わんにゃん保健室の往診獣医師 江本宏平です。
先日、夕方の報道番組News every.で往診専門動物病院について密着取材を受けました。
撮影にご協力くださりましたご家族様、本当にありがとうございました。
往診は動物病院の付属サービスではなく、ペットと飼い主様のニーズに対応できる往診専門動物病院でなければいけません。今回放送された症例の子たちは、みんな高齢の子たちでしたが、動物病院に通院できない事情は、ご家族様ごとで異なり、その形は全て異なっています。
しかし、共通して言えることは、最愛のペットに対して『何かしてあげられることはないか』という、優しい想いです。
往診専門動物病院わんにゃん保健室では、東京中央区、東京江東区、東京台東区に拠点を構え、東京23区を中心にその近隣地区まで、往診専門獣医師と動物看護師で訪問します。
諦める前に、まずはご連絡ください。
(写真:ウメちゃん&サクラちゃん)
さて、今回は黄疸になってしまった猫ちゃんのお話です。
検査はしないで緩和ケア(食欲不振/黄疸/猫/東京千代田区)
ご紹介するのは東京千代田区在住のライトちゃん、17歳の女の子の猫ちゃんです。
猫のライトちゃんとの出会いは1か月ほど前で、その時は血尿が出ているとのことでお電話を頂きました。
初めてライトちゃんに会ったときは、すごく大人しくて良い子だな、という印象で、ちゃんと寄ってきてご挨拶をしてくれました。お話をお伺いすると血尿だけではなく、2~3年前に食欲が落ちて以来、2日に1回程度吐くようになってしまい、痩せてきてしまっているとのことでした。また、2~3年前から多飲多尿があり、他院にて腎臓の数値が高いことから腎機能不全と言われていましたが、東京千代田区にはあまり動物病院がないことと、やはり連れ出されることが猫ちゃんであることから、特に治療は行っていないとのことでした。そのため、家でできる在宅医療、今後のペット緩和ケアについても相談をしたいということで往診をご依頼され、訪問させていただきました。
その日は、血液検査はご希望されなかったため、まずは膀胱炎と仮診断をして、抗生剤で対症療法を行いました。
往診専門動物病院わんにゃん保健室では、飼い主様とじっくりご相談させていただいた上で、選択肢をまずはご提案しています。検査が全てではありませんが、やはり検査をすることである程度病気を絞り込めることがあります。検査方法や内容について詳しく飼い主様とご相談した上で、診療方針を決めていきます。今回の場合は、検査なしでの対症療法で診察を進めさせていただきました。
次の日から血尿はなくなったとのことで、ライトちゃんの様子は落ち着いており、1週間ほどの内服で一旦治療は終了としました。その約1か月後、再び往診のお電話を頂きました。
急に食欲が無くなってしまい、1週間ぐらい何も食べていないとのことで、診察をご希望されました。ちなみに猫ちゃんでは、基本的には3日間の絶食は新たな病気を引き起こしてしまうため、緊急度は一気に上がります。
お家にお伺いすると、猫のライトちゃんは前回あった時よりもすごく元気がなくなっていて、苦しそうな顔をしていました。また、耳の内側や目、皮膚が黄色くなっており、黄疸が出ていることが確認されました。このことから、ご家族様に、検査を行ってからの治療をお話しましたが、検査をせずの緩和ケアをご希望されたため、皮下点滴と胃薬、抗生剤などの対症療法を行いました。その間に、ライトちゃんが排尿してくれたため、採尿し尿検査を行いました。その結果、やはり強い黄疸の反応が見られました。
では黄疸とはなぜ出るのでしょう???
黄疸には3種類あり、
①肝性黄疸
②溶血性黄疸
③肝後性黄疸
に分けられます。
①が一番思い浮かべられる黄疸かと思います。よく人でも肝臓が悪くなって黄疸が出た、というお話があるかと思いますが、まさにその黄疸です。
肝臓にダメージがあって、肝機能が落ちてしまうことで起こります。猫ちゃんで多いのは、体調が悪くて、食欲がなく食べられない日が数日間続いてしまった場合に、身体の代謝が変化してしまい、肝臓に脂肪をため込んでしまう、脂肪肝になってしまいます。その結果、肝機能が落ちてしまい、黄疸が出てしまうようになります。
②はいまいちピンとこない方も多いかと思いますが、赤血球の中にもビリルビンが含まれていますが、肝臓より手前で赤血球が壊されてしまったり、大量に壊れてしまったりすると、そこで大量のビリルビンが放出され、肝臓で処理しきれなくなってしまい、黄疸となってしまいます。
③は何となくもうお分かりかと思いますが、胆汁の通り道が何らかの原因でふさがってしまったりすることで黄疸が起こってしまいます。多いのは胆汁の通り道である胆管が炎症を起こしてしまう、胆管炎です。また、膵炎を併発していることもあります。
このように、黄疸には3種類の原因があるため、検査をしてみないとどの原因かは分かりませんが、猫のライトちゃんの場合は検査はご希望されず、往診による在宅医療で緩和ケアをご希望されましたので、続けて対症療法を行っていくこととしました。どの原因であっても、無治療であれば致命的になってしまうこともありますが、③であれば炎症が治まったり、胆汁が通るようになれば落ち着いてくれますので、その可能性を信じて治療を続けていきました。また、ご飯は全く食べたくない様子で、食べること自体がストレスになっている様子でしたので、強制給餌はせず過ごしたいように自由にしていてもらいました。
すると、ライトちゃんの生命力がとっても強かったおかげで、なんと!!治療を始めてから2週間ほどで自分でササミを食べてくれるようになりました。その間自分でお水は飲み、ウロウロはしているものの、ご飯には口を付けず、という生活で、お薬だけ飼い主様から投薬して頂く形でした。点滴はライトちゃんも慣れてきてくれていて、あまり嫌がることなく実施することができていました。通常は2~3分で終わるのですが、皮下点滴を行う時はある程度保定したり、逃げていってしまう子はがっちり保定することもあるのですが、ライトちゃんの場合はお家で行っている、という点もあるかと思いますが、すごく受け入れてくれていて、ふわっと持って、撫でているだけで終わることが出来ます。
ササミを食べ始めたのをきっかけにどんどん食欲も上がってきて黄疸もなくなり、現在はドライフードもおねだりするぐらい食べてくれています。
今回の猫ちゃんのように、黄疸が出ていて急に食べなくなってしまった場合も、様々な原因があり、必ずしもそのままずっと食べられないというわけではないです。また、病院に連れていけないからと治療を諦められているご家族様、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、その子の性格に合った治療をご提案させて頂き、処置が終わればすぐにいつもの場所に戻ってもらいます。
猫ちゃんの性格上、病院に連れていけず治療法を悩まれている方、一度往診専門動物病院わんにゃん保健室までご相談下さい。
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