往診専門動物病院わんにゃん保健室、往診専門獣医師の江本宏平です。
クリスマスの夜、かなり冷え込みましたね。
本日は、東京中央区、東京千代田区で診察が立て込んでいました。
東京中央区にお住いの高齢猫の太郎くんは慢性腎臓病で、本日は毎月行っている血液検査と皮下点滴の調節、内服薬の調整でお伺いしました。猫ちゃんに多いこの病気ですが、最初は2日に1回、動物病院に通院して点滴をしてもらっていたとのことでした。動物病院に連れて行くたびに異常興奮しまい、失禁し、ヨダレを流してしまうとのことで困り切った挙句、当院のペット往診にたどり着けたとのことでした。今回、東京中央区にある動物病院からのご紹介でしたので、スムーズに治療に入ることができました。家での点滴は、猫の太郎くんにとってはほとんどストレスはなさそうで、逆に温かい点滴が背中に入ってくるのが気持ちいいのか、目を閉じてじっとしてくれているとのことでした。現在、お母さんとお姉さんで2日に1回の点滴を続けてもらっていて、慢性腎不全のコントロールをしてもらっています。
(引用:https://withnews.jp/article/f0190621004qq000000000000000W00o10101qq000019370A)
往診専門動物病院で出会うペットは猫ちゃんが多く、その中でも高齢期に突入したペットが多いです。
高齢犬・高齢猫を多く診察していると、やはり出会う確率が多い病気の中には腫瘍が入ってきます。
今回は、東京中央区にお住いで、乳腺腫瘍を抱えている猫のコムちゃんのお話です。
皆様、乳腺腫瘍は聞いたことがある方が多いかと思います。イメージとしては乳がんではないでしょうか?
ただ、乳腺腫瘍にも良性の場合と悪性の場合があり、一概にすべてが悪性腫瘍、いわゆる乳がんとは言えません。
しかし、統計的には犬の場合には良性と悪性の割合は半々、猫ちゃんの場合には80~90%が悪性と言われていますので、猫ちゃんの乳腺にしこりを見つけた場合には注意が必要です。
今回ご紹介するのは、乳腺腫瘍になってしまった、東京中央区在住15歳のコムちゃんのお話です。
ペットのターミナルケア(往診/ターミナルケア/高齢猫/東京中央区)
コムちゃんは半年ほど前にかかりつけの動物病院の獣医師に乳腺のしこりを指摘されましたが、年齢的に手術はせずに経過を見ていたとのことでした。
しかし、ここ1週間ほどで急激に食べなくなってしまい、かかりつけの動物病院にて点滴をしてもらっていましたが、連れていくのもストレスがかかってかわいそうになってきたので、お家でやってあげられることがあるなら、とお電話を頂きました。
お家に入ると、コムちゃんは自分のベッドで丸まっていて、寝ている様子でした。かかりつけの動物病院での血液検査結果やレントゲン検査結果を見せて頂くと、腎数値の上昇や炎症所見、また、肺転移を疑う所見が認められました。
身体検査を行うと、激しい脱水と貧血が認められ、乳腺腫瘍の周りは熱感があり、周辺で炎症が起こっている様子でした。リンパ節の腫れは身体検査では腫瘍がある方のわきの下のリンパ節が腫れていました。また、ここ数日頭が下がっていると飼い主様がおっしゃっていましたが、たしかに頭部下垂があり、低カリウム血症を疑う所見でした。
カリウムというのは筋肉が動くときに必要になる物質なので、低カリウムになってしまうと、全身がだるくなったり、心臓の動きも悪くなってしまい、不整脈を起こしてしまうことがあります。
ということで、まずは全身状態を把握するために血液検査と、脱水がひどいので皮下点滴、腫瘍性の痛みをとるためのステロイド剤などのお薬を使用して治療を行っていきました。
猫のコムちゃんは、身体検査の間はもちろんのこと、採血、皮下点滴の間もすごくお利口で、全く動くことなく、処置をさせてくれました。採血は、老猫ならではですが、すごく血管が細くなっていて血流がゆっくりでしたが、しっかりと頑張ってくれました。
その後は、そそくさと自分のベッドへ。ゆっくりとくつろいでくれていました。これがペットにとっての往診メリットで、処置が始まる直前まで自分の安心できる場所にいて、処置が終わればまたすぐ自分の場所に戻ることができ、そうすることで、動物たちのストレスもすごく少なくて終わることが出来ます。
ここで、冒頭で少し触れた乳腺腫瘍のお話です。
まず、乳腺腫瘍は乳腺にできる腫瘍のことなのですが、早期に避妊手術を行ったかどうかで発生率が変わってきます。わんちゃんでは発情が来る前に行うのが最も発生率を減らすことが出来、1回目の発情が来てから行うとわずかに発生率は増えますが、初回発情前と大きな差はありません。ただし2回目の発情後以降の避妊手術では、グッと発生率が上がってしまうため、2回目の発情が来る前の避妊手術が望まれています。最近言われているのは、初回発情の前に避妊手術を行うと発生率は一番低いですが、一次性徴が始まる前なので、身体がしっかりと出来上がっていないため、避妊手術は初回発情と2回目の発情の間に行うのが良いと言われています。猫ちゃんの乳腺腫瘍でも同様で、初回発情の後に行うと一次性徴が終わった後になるので、最近では推奨され始めています。しかし、猫ちゃんの場合、発情中の鳴き声が問題行動になったりすることもあるため、初回発情が始まる前、生後半年ほどで行うことも多くあります。また、十分に成長した段階での手術が好まれる傾向にあるのは、成長途中で避妊去勢手術を行うことで、腺組織の発達が不十分になってしまい、将来的に内分泌疾患を引き起こす可能性があることも懸念されています。そのため、当院では、体重が安定してきた頃が避妊去勢手術のタイミングですとお伝えさせていただいています。
一概に早ければ早いほうがいいということはありませんので、避妊去勢のタイミングはかかりつけの獣医師にご相談してみてください。
ちなみに、わんちゃんの乳腺腫瘍では悪性と良性の割合はおよそ半々なのに対して、猫ちゃんでは8~9割が悪性と言われています。また、猫ちゃんの場合、腫瘍のサイズによって、中央生存率が変わりますが、基本的には広範囲での摘出を行わなければ再発率が高い腫瘍となっています。一方、わんちゃんの場合は、1個のみで小さければ、1つの乳腺のみ取っても片側乳腺切除を行っても基本的に再発率は変わらないと言われていますが、猫ちゃんの場合は片側乳腺切除、あるいは両側乳腺切除が一般的です。
乳腺腫瘍は転移もしやすい腫瘍で、リンパ節や肺に特に転移が起こりやすいです。なので、腫瘍を切除しても定期的に肺のレントゲンやリンパ節の触診など、定期検査が必要になってきます。定期的なモニタリングを行うことで、早期発見や早期治療にとりかかれます。
しかし、猫ちゃんの場合は乳腺のしこりに気づかないことも多く、発見が遅れてしまうことも珍しくありません。
そのため、発見したときにはだいぶ大きくなってしまっていて手遅れに、という場合もあります。あるいは、早期に発見したけれども手術はせずに余生を過ごさせてあげたいという場合もあります。
今回のコムちゃんがまさにそうでした。私たちもできるだけストレスなく、痛みなく余生を過ごしてほしいという思いで治療をさせて頂きました。
コムちゃんは血液検査の結果、激しい貧血と黄疸、カリウムの低下、強い炎症反応が認められました。貧血や炎症反応は腫瘍によるものと考えられました。また、低カリウムが認められたことから、やはり頭部下垂の原因は低カリウムであり、低カリウムを補正しなければ致命的になってしまうこともあるため、カリウムを多く含む食材をご飯に混ぜて少しずつ口に入れてもらいました。また、腫瘍性の痛みをとるためにステロイド剤を併用し、飼い主様にもコムちゃんにも負担が少なくなるように治療方針をご相談させて頂いた結果、お家で薬を混ぜた皮下点滴を行っていただくこととなりました。
治療して4日ほどはコムちゃんもすごく顔つきが良くなってきましたが、少しずつ尿量が減ってしまい、点滴の量を減らすことになりました。
その後立ち上がれなくなってしまい、2日後、ご家族様の横で永い眠りにつきました。
コムちゃんは最後まで、飼い主様の愛情を一心に受けて頑張ってくれていて、最期まで飼い主様と一緒にお家で過ごすことが出来て幸せだったと思います。また、飼い主様もお家でできるだけのことをしてあげられたということと、お別れの覚悟をする時間を作れた、ということで、しっかりとお別れをすることができました。
往診専門動物病院わんにゃん保健室では、お家で最期を過ごさせてあげたいがどうして良いか、何ができるのかわからない、といった場合や、とにかく痛みや吐き気だけを取ってあげたい、という場合に、どういったことができるのか等日常のケアの方法も含めてしっかりとご相談させて頂き、そのご家族様に合った方法をご提案させて頂きますので、お悩みの方は一度往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡下さい。
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