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ぐったりした猫(猫の腎不全/猫の心不全/東京中央区)

こんにちは!

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室 往診獣医師の江本宏平です。

ここ2週間で、東京中央区勝どき8症例(24回往診)、東京中央区築地4症例(8回往診)、東京中央区晴海4症例(24回往診)と、ほとんどが東京中央区に集中していました。

東京都内における往診専門動物病院の数は日々増えています。しかし、まだまだ犬猫の飼っているご家族様への往診専門動物病院の存在は周知されていません。

 

ペットを飼っている方同士のコミュニティやご友人同士での会話の中で、往診専門動物病院があることを教えてあげてください!

そして、病末期や酸素室管理状態のペット、そして動物病院に通院できないことで諦めていたと言うご家族様が少しでも減り、最後にできることのご提案が少しでも早くお届けできるような社会が来ることを期待しています。

 

さて今回は、食欲が安定しない猫ちゃんのお話です。

猫ちゃんの飼い主様であれば、多くの方が猫ちゃんは腎不全になりやすい、というのを聞いたことがある方が多いかと思います。

そんな慢性腎不全の猫ちゃんの頑張りとご家族様の頑張りをお話しさせて頂こうと思います。

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食欲不振でぐったり(慢性腎不全/心筋症/高齢猫/東京中央区)

東京中央区在住の18歳の高齢猫さんのさくらちゃんです。

さくらちゃんとの出会いは、3ヶ月ほど前の夜にかかってきた電話でした。最近調子が良くないとのことでしたが、夜になってやはり全く食べずにぐったりしているとのお電話で訪問することとなりました。

ご自宅に訪問すると、普段はご家族様も抱っこが出来ないほど敏感なさくらちゃんですが、この日は飼い主様が撫でても全く怒らず、かなり苦しそうな様子でした。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室では、完全予約制でのペットも飼い主様も安心ができるご自宅というプライベート空間で診察を行えるため、十分な時間を取り、詳しくお話をお伺いすることができます。

お伺いすると、調子が悪くなってきたのは数日前からとのことでしたが、それ以前から何となくいつもと様子が違うかな?という様子で、ここ数年は何となく運動量が減っていたり、おしっこが多飼ったりと感じられていたそうです。

 

このお話から、まず心臓病と腎臓病が疑われましたが、他の疾患でもこのような様子になることもあるので、本日は血液検査が必要になると思われ、ご家族様とご相談したところ、実施することとなりました。

往診では獣医師と動物看護師が一緒に訪問しますので、ご家族様もペットのワンちゃん・猫ちゃんも安心して診察を受けることができます。

いつもは全く触れないさくらちゃんですが、その日はタオルで包んであげると、身体検査は怒ることなく実施させてくれました。しかし、採血となると話は別のようで、採血をするために保定した途端すごく怒っていて、少しだけ、いつものさくらちゃんが垣間見えてご家族様もほんの少し安心されていました。

身体検査では顕著な脱水が見られ、口の粘膜の色がやや薄くなっていたことから貧血の所見もありました。

そのため、この日は皮下点滴を行い、そこに胃薬や吐き気止めといった対症療法のためのお薬を入れてました。皮下点滴は、タオルに包んで実施してあげるとすんなりと受け入れてくれて、ほとんど嫌がることなくさせてくれました。

在宅での皮下点滴は、家にあるものや設備、ドアだったりの建具を含めた環境を考慮して実施場所と実施方法を変えていきます。最初のうちは往診による獣医師と動物看護師で皮下点滴を行い、タイミングを見てご家族様に皮下点滴のやり方を指導させていただきます。ご家族様だけで皮下点滴をできるところまでご指導させていただきますので、皮下点滴に協力してくれる方が2人いれば、まずご自宅でできないことはありません。皮下点滴で一番重要なことは、ペット(犬・猫)をどうやって保定(押さえる)するかです。保定の方法は、保定のスペシャリストである動物看護師からご説明させていただきますので、ご安心ください。

 

この日は皮下点滴で治療終了とし、脱水がひどいので皮下点滴を数日間続けることとしました。

血液検査の結果は、腎臓の数値が高く、また、心臓の数値も高値を示しており、慢性腎臓病と心臓病が疑われました。

ここで、猫ちゃんに多い、心臓病と慢性腎臓病、ふたつの関係について少しお話していきます。

猫ちゃんに多い心臓病は肥大型心筋症といって、心臓の内側に向かって筋肉が大きくなり、心臓のお部屋が小さくなってしまう病気です。

心臓のお部屋が小さくなってしまうと、心臓に入る血液量が減ってしまい、1回の拍動で出て行く血液量が少なくなってしまうので、送り出す血液量を増やすために心臓は心拍数を増やして、部屋が小さくなってしまった分をカバーします。しかし、心臓にとっては負担がかかっているため、いつしか限界が来てしまうだけでなく、心拍数は上がりますが、一気に血液を送るための力が不足してしまうために心臓に残ってしまう血液も出てきて、それが固まってしまい血栓になってしまうこともあります。これが肥大型心筋症の合併症です。

 

ではどうやって治療すれば良いのでしょう?

 

根本的な治療法はありませんが、心臓への負荷を下げるために、強心薬や血管拡張剤、利尿剤を併用することで、1回の心拍で出せる血液量を増やし、利尿剤で体の体液量を減らすことで心臓への負担が減って、楽になります。また、血栓予防のお薬を使うこともあります。

しかし、この疾患は慢性腎臓病とも深く関係しています。

猫ちゃんの慢性腎臓病は、多くの場合は数年かけて少しずつ進行していき、症状が出てくるタイミングはその子によりますが、血液検査で腎臓の数値が上がってくると悪心や食欲不振が出てくることが多いです。慢性腎臓病は、少しずつ腎臓の毛細血管が減っていき、腎機能が落ちていく疾患で、脱水しやすくなってきます。そのため、腎臓にとっては、少ない血管でたくさんの血液をろ過して尿を作ろうとするので、身体の体液量は多い方が良いのです。

ここで、さくらちゃんのお話に戻りますと、さくらちゃんはかなり脱水しているので、できれば点滴をたくさん入れてあげたいところなのですが、心臓の数値が高い以上、点滴をし過ぎると心臓への負担が心配、という状況でした。

こういう時は点滴を少なくして、出来るだけ口からの水分摂取を増やしてもらいますが、さくらちゃんは数日間点滴を続けることで優位に回復してくれました。その後は点滴回数と注射を減らしていくために、お薬を飲んでもらうことにしましたが、飼い主様がこれなら食べてくれると思う、とチーズを出してきて下さり、チーズに包んでお薬をあげたところ難なくクリア出来ました!!!さすがペットの1番の看護師さんは飼い主さんですね。

そうして、3ヶ月ほど定期検診とお薬を続けて、安定していたのですが、最近数日で再び状態が落ちてしまい、ご飯を食べなくなってしまいました。

点滴にお伺いすると、やはりぐったりしていて前回同様点滴をスッとさせてくれるほどにしんどい状態でした。

しかし、点滴を3日間続けて行いましたが今回は状態が上がって来ず、腎臓、心臓の数値も前回よりかなり上がってしまっていることから、かなり厳しい状況というお話をさせて頂きました。

しかし、何かあっても救急病院に行くより、最期までお家の好きな場所で、さくらちゃんらしく過ごさせてあげたい、という飼い主様のご希望もあり、お家でゆっくり過ごしてもらうことにしました。その次の日にさくらちゃんは残念ながら息を引き取りました。いつものお家の、いつもの大好きだった場所で、家族に見守られながら迎えることができました。

 

ご家族様の涙には、最後まで最愛のさくらちゃんと向き合うことを決めた覚悟と、走り抜けたことに対する達成感を兼ね揃えていたように思いました。

 

さくらちゃんのご冥福、心からお祈り申し上げます。

 

往診専門動物病院わんにゃん保健室では、ペットが最後の時間を家族と迎えられるよう 最大限寄り添った最良の往診獣医療を最後まで提供していくことを診療理念とし、日々診療と向き合っています。

緩和ケア、ターミナルケアをご自宅で、とお考えの方は一度往診専門動物病院わんにゃん保健室までご相談ください。

 

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