こんにちは!
往診専門動物病院わんにゃん保健室 往診専門獣医師の江本宏平です。
東京中央区を中心に東京23区まで、往診獣医師と動物看護師の2人でペット往診車でご自宅までご訪問しております。
今回は、胸の中に癌が出来てしまった高齢猫ちゃんのお話しです。
胸の中に出来る癌の種類は様々ですが、そのほとんどで、胸水貯留という状態が見られます。胸水が溜まると、胸の中で肺が膨らめる空間が狭くなってしまうことから、徐々に息が苦しくなっていき、胸水は抜いてもすぐ溜まってしまう、という状態になってしまいます。今回は癌によって胸水が溜まってしまいましたが、すごく頑張ってくれた高齢猫ちゃんのご紹介です。
東京中央区在住の高齢猫のランちゃん、20歳です。
がん性胸水の高齢猫(酸素室管理/高齢猫のターミナルケア/東京中央区)
ランちゃんは、病気知らずで、ここ3ヶ月前までほとんど動物病院にかかることはなかったそうなのですが、3ヶ月ほど前に、急にいつも乗っているテーブルへのジャンプに失敗して、足を引きずるようになり病院に行ったところ、特に異常はないとのことで、痛み止めをもらいましたが、大きくは改善せず、セカンドオピニオンとして別の動物病院に行きましたが、変形性脊椎症、という老化による背骨の変化での痛み、とのことで、様子を見ることになりました。しかし、その後呼吸が荒くなってきて、ここ1週間ほどご飯を食べない、とのことでお電話を頂き、緊急性があると判断しましたので、当日にお伺いさせて頂きました。
お家に入るとランちゃんはソファの奥のランちゃん用のベッドに丸まっていて、そのときは特に呼吸の荒さは感じませんでした。
お話をお伺いすると、ランちゃんは動物病院に行くとかなり興奮して、ストレスが大きいため動物病院に通院させられない、とのことでした。普段はよく食べる猫ちゃんで、運動量も年の割には多い方だとのことでしたが、急に呼吸が荒いように感じ始め、元気食欲がなくなってしまったとのことで、その日からは全く食べていないとのことで、お水も飲めていないようでした。
ストレスがかかってしまうので、1度で終わらせるために、まずは今日させて頂こうと思っている検査内容についてお話しさせて頂き、ご同意を得られたので身体検査と採血をランちゃんには頑張ってもらうことになりました。しかし呼吸状態が良くないので、それには必ず注意しなければなりません。
まずはお母さんにランちゃんを抱っこで連れてきてもらい、身体検査からです。聴診では大きな異常はありませんでしたが、かなり呼吸の仕方が大きく、息が苦しそうな様子でした。その後、採血もおとなしく頑張ってくれて、お水が飲めていないようなので皮下点滴と抗炎症剤、抗生剤、胃薬などを投与し、その日は終了としました。
また、息がかなり苦しい様子でしたので、ご家族様には酸素ハウスのご提案をさせて頂きました。酸素ハウスがあると、処置など興奮した後にも、すぐに酸素を吸って楽になることができるので、息が苦しい場合にはお家にレンタルすることをお勧めしています。
血液検査では目立った異常所見はなく、次の日お伺いした際にもあまり改善が見られず、2,3日の間大きな改善がなかったことから、二次診療施設での精査をご提案させて頂きました。興奮することで、より呼吸状態が悪くなってしまうかもしれない、という葛藤はありましたが、飼い主様に決断していただき、精査をした結果、胸水が溜まっており、その中にはがん細胞が出ているとのことでした。
しかし、年齢的にもご家族様は抗がん剤などの治療はご希望されず、ご自宅で出来る限りの苦痛を軽減しながらゆっくりと看取ってあげるために行うターミナルケアをご希望され、再び往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡を頂きました。
緩和ケアというのは、癌などの病気に対して治療をしつつ、治療による副作用への対症療法や、病気の症状に対する対症療法を行うことであるのに対して、ターミナルケアとは、治療はせず、対症療法のみを行い、病気で起こる吐き気や痛みなどのみを取り除くことです。
今回のランちゃんでは、どういったガンか特定できていない以上治療法としては、ステロイド剤の投与と、癌による胸水なので効果が的面というわけではありませんが、利尿剤を使用、また癌による吐き気などを取り除くための吐き気止めや胃薬を注射で入れる、という治療方法が最善と考えられ、飼い主様とご相談した結果、これらを使用して少しでも楽に過ごさせてあげる、という方向になりました。
ステロイド剤というのは、量によって使い方が様々で、例えば軽い皮膚炎などの場合は1番下の投与量、末期の腎不全などの場合にはその少し上の量、そして癌の場合には最も高い量で使用します。ステロイド剤を使うのに抵抗があるご家族様もいらっしゃるかと思いますが、ガンの場合には、しっかりと使えば癌による苦しさをかなり軽減させてくれることが期待できます。
また、ガン性の胸水の場合、すぐに溜まってしまうということもあり、精査で胸水が見つかった際は抜去して頂きましたが、その後お家では抜去せず酸素ハウスで過ごしてもらっていました。
しかし、その後2週間ほどで、急激に呼吸状態が悪くなっていき、ご家族様の腕の中で虹の橋を渡って行きました。
ランちゃんのように、猫ちゃんの場合は我慢をして症状を出さずに過ごしてしまうので、見つかった時には進行してしまっている、ということも少なくありません。
ただその時も諦めず、その子がどうやって最期を迎えるのが1番良いか、出来るだけ楽に過ごすためにはどうすれば良いかなど、往診専門動物病院わんにゃん保健室ではご家族様と一緒に考えて、最善の方法をご提案させて頂きます。
ターミナルケアや緩和ケアを考えられているご家族様、一度往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡下さい。
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