こんにちは!
往診専門動物病院わんにゃん保健室、往診専門獣医師の江本宏平です。
本日は、東京中央区、東京墨田区、東京江東区にて往診診療を行ってきました。
緊急事態宣言の間は、日常ケアや健康診断という延期可能な診療は極力延期させていただき、また遠隔診療(オンライン診療)をご希望の飼い主様とは往診診療による対面診療ではなく、遠隔診療での診察を行っています。
こういうご時世ですが、ペットは普段通り体調を壊しますし、その病状は待ってはくれません。ペットの犬猫に異変を感じた場合、必ず獣医師に電話相談しましょう。かかりつけの動物病院で完全予約診療を行っていただけない場合には、別の動物病院に電話するか、往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。
飼い主様と私たち獣医療チームが力を合わせて、愛犬・愛猫の命を守っていきましょう。
さて、今回は突然食べなくなってしまった猫ちゃんのお話です。
ふらつき、嘔吐、排尿量が多い、尿が薄くなった、水を飲む量が多いなどの症状はないでしょうか?
猫の腎不全では、上記のような症状に、よだれが増えた、下痢をする、毛並みが悪くなった、痩せてきたなどを見せることがあります。
猫ちゃんは本能からか、ご家族様にさえ弱みを見せることはほとんどなく、体調が悪くても我慢して元気に振る舞ってしまいます。
そして症状が出た時にはかなり状態が悪くなっている、ということも珍しくありません。そうなった時に、ご家族様は気付いてあげられなかった、というようにご自身を責めてしまうことがあるのですが、責めてはいけません。
むしろ猫ちゃん自身が弱みを見せたくなく、弱みを隠して過ごしていたので、気付けないのは仕方がありません。犬であれば、よく痛みなどを隠さずすぐに鳴いたりして分かりやすく表してくれることが多いのですが、性格の違いですね。
今回は、そんな、弱みを見せない性格の猫ちゃんのご紹介です。
よだれ、食欲不振、ふらつき(猫/腎不全/東京中央区)
症例は東京中央区在住の19歳の高齢猫のはなちゃんです。はなちゃんは、以前に一度だけ診察をしたことがある猫ちゃんでしたが、ペット往診車で夜間診療に出発する時にお電話がかかってきました。
様子をお伺いすると、2,3日の間全く食べていないとのことで、お水も全く飲んでいないため早めの往診をご希望されました。
水分も取れていないとのことなので、今夜中に診察が必要と判断し、お電話で往診予約時間を調整し、深夜往診で訪問することとなりました。
お家に往診すると、はなちゃんはご家族様に抱っこしてもらっていて、前回の診察時のはなちゃんであればすごく嫌がるはずなのですが、今日は全く嫌がることがなく、嫌がる元気もない、という様子でした。とっても心配です。
詳しくご家族様にお話をお伺いすると、先週までのはなちゃんはいつもと変わらない様子で、ウェットフードもドライフードも食べていたそうなのですが、今週になって、突然全くご飯を食べなくなってしまったそうです。ご飯を食べなくなってしまってからは、お水も飲まず、何となく呼吸も荒く、また呼吸数も多い(呼吸が早い)感じがする、とのことでした。
猫ちゃんがこのような症状になる病気はたくさん考えられます。呼吸が荒い、という症状でも胸の中の問題だけではなく、お腹の中の臓器の疾患、たとえば腎不全でも悪化すれば呼吸が荒くなることがあります。
身体検査だけでは判断できないことも多々あり、原因が分からない限りしっかりと治療が出来なかったり、方向性が違った治療を続けてしまうことになったりするため、まずは身体検査に加えて、血液検査を実施することをご提案させて頂きました。本来のはなちゃんはとても元気で、処置をすると口が出てきたりするほどだったのですが、今回の様子は見たことがないほど元気が無くなってしまっていたため、飼い主様もとても心配されていて検査をすることにご同意頂きました。
身体検査をするために、バスタオルで巻いて身体検査を行なっていきました。身体検査では激しい脱水と貧血が認められました。診療中に少し興奮したのかよだれが出たり、歩く姿にふらつきを認めたりと、普段とは違う症状を見せてくれました。
採血をするためには、足を伸ばさなければならないのですが、これが猫ちゃんはみんな嫌がってしまうのですが、今回のはなちゃんはしょんぼりしてしまっていて、全く嫌がることがありませんでした。
気持ちが悪く元気がない中、頑張って検査を受けてもらい、最後は皮下点滴治療です。しばらくお水も飲めていないとのことでしたので皮下点滴、吐き気止め、胃腸を動かすお薬などを注射し、この日は終了としました。処置が終わった後はお母さんに抱っこしてもらって、いつものベッドのところへ行き丸まっていました。
少しでも明日は良くなっていることを願いつつ、その日は往診終了とし、次の日にもう一度往診することとしました。
血液検査では、腎臓の数値がかなり上がっており、末期の腎不全が考えられました。
数値からするとかなり気持ちが悪いだろうと思われる状態で、とても自分からご飯を食べられる状態ではないと判断されましたが、猫ちゃんは食べれていない日が続くと、体の中での代謝が変わってしまい、肝臓に脂肪を蓄積していきます。いわゆる脂肪肝ですね。
そうなると、肝臓の機能は著しく落ちてしまい、黄疸が出たり、毒素を分解できなかったり、さまざまな症状が出てきます。そうならないように、できるだけ早くご飯を食べられるようになってもらいたい、という思いではなちゃんの腎不全症状に対する治療に臨ませてもらいました。
次の日もやはり食べてはいなくて、少しドライフードに興味を持つ程度で口にはしなかったとのことでした。吐き気止めを使っているので吐くことは無いようです。食欲増進剤を飲んでもらい、昨日と同様皮下点滴と注射を行いました。また、ご家族様にも末期の腎不全であろうというお話をさせて頂いたところ、先住の猫ちゃんも末期の腎不全だったらしく、その子は動物病院に連れて行って、入院もして最後の時間をあまりいっしょに過ごすことができなかったので、はなちゃんとは最後の時間をお家で一緒にゆっくり過ごしたい、とのご希望でしたので、お家でできる精一杯のターミナルケアをご提案させて頂きました。
そこから、毎日皮下点滴と注射をさせて頂き約1週間、はなちゃんはご家族様に見守られながら虹の橋を渡って行きました。最期は苦しむこともなく、お母さんに抱っこされながら旅立てたとのことでした。
ご家族様は、最後まで愛猫の病気と向き合え、命を受け入れて、家族みんなで見守ることができたことを、往診専門動物病院わんにゃん保健室スタッフ一同、大変光栄に思います。
私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室では、在宅でのターミナルケア・緩和ケアに特化しています。愛犬・愛猫への緩和ケア、ターミナルケアの形は決して1つではなく、ご家族様と愛犬・愛猫の生きてきた生活環境及びその子その子の性格など全てを考慮してご提案察せていただいております。その中には、もちろん費用面を加味されます。治療を続けられないような診療プランは避けなければいけませんので、ペットの緩和ケア・ターミナルケア往診専門動物病院で希望される場合には、包み隠さずご相談ください。
最期の時間をご家族様の元で、痛みや吐き気などを軽減させ、その子らしく最後まで過ごさせてあげたいという思いで、日々往診診療に当たらせて頂いています。
飼い主様みんなの願いは共通しており、出来る限り辛くないように過ごさせてあげ、ご家族様の見守る中で最後の日を迎えさせてあげたいという切実な思いです。
病気の末期、と診断された方、セカンドオピニオンの方も一度往診専門動物病院わんにゃん保健室までお気軽にご連絡ください。
悔いのない最後に向け、一緒に歩みましょう。
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