こんにちは!
今回はウェルシュコーギーで多いと言われている、変性性脊髄症という病気について、お話していこうと思います。
変性性脊髄症という病気、聞かれたことはありますか?ほとんどの方は何それ?と思われるかと思います。
もちろん、ウェルシュコーギーを飼われている方もご存知でない方がほとんどだと思います。
しかし、こういう病気があると知っているだけで、その子の変化に気付きやすいと思うので、今回はこの病気を取り上げ、実際にこの病気と戦っていたわんちゃんのお話をすることにしました。
変性性脊髄症とは、ざっくりというと、お尻の方の脊髄から段々と頭の方に向かって脊髄が変性してきて、麻痺が後ろ足から前足に進んできて、最終的に中枢に麻痺が進むと呼吸ができなくなってしまい亡くなってしまう、という病気です。
ただ、進行はとてもゆっくりで、だいたい数年単位で進行してきます。そのため、最初は車いすで元気に動き回っているわんちゃんもたくさんいます。同じ麻痺が起こる病気に、椎間板ヘルニアがありますが、椎間板ヘルニアは痛みを伴うのに対して、変性性脊髄症に痛みはありません。
そもそも脊髄はどういうものなのでしょうか?脊髄とは、神経であり、傷害をうけるとすぐに麻痺につながってしまいます。
ただ、変性性脊髄症は傷害を受けている、というよりは脊髄自体が変性して神経の伝達ができなくなってしまう病気です。
はっきりとした原因は現在のところ分かっていません。
ただ、ウェルシュコーギーに多いことから、遺伝子疾患の可能性も言われています。
残念ながら診断方法はなく、症状や犬種から、臨床診断といって、その場で獣医師が、臨床症状から診断を出すことが多い疾患です。
最初の症状としては、痛みはないので本人は元気なのですが、後ろ足を引きずるようになります。
その変化も少しずつ起こっていきます。
後ろ足の甲が地面について、引きずるように歩いてしまう子が多いので、甲の部分の皮膚に傷がついて出血してしまいますので、靴や何かでカバーしてあげましょう。
本人は麻痺があるので、キズがついても痛みはありません。
そのため、ご家族様が定期的に足をチェックしてあげる必要があります。
しかし、後ろ足を引きずりながら歩くとそういった負担がかかるので、可能であれば車いすをご用意することをお勧めします。
歩かなければ前足の筋肉もすぐに衰えてしまいますので、車いすでも歩いてくれるととっても元気に歩き回ってくれることがほとんどなので、もしそういったことでご相談があれば、往診専門動物病院わんにゃん保健室までお気軽にご相談ください。
進行は個体差がありますが、1年ほどはそのまま過ごすことができることもあります。
しかし症状が進んでくると、前足の麻痺も進んできて、うまく歩くことができなくなってきます。
その後は、食欲が落ちてしまったりしてきて、呼吸がうまくできなくなってしまいます。そういったときには酸素ハウスのレンタルをお勧めします。
酸素ハウスをレンタルすると、お家で酸素を吸うことができるので、お家で呼吸を楽にしてあげることができます。
それでは実際に変性性脊髄症になってしまったわんちゃんのお話です。
東京渋谷区在住の13歳のウェルシュコーギー
高齢犬のメイちゃんです。
メイちゃんは、すごく人懐っこく、ご飯もすごくよく食べるわんちゃんでした。
しかし、2年前に足を少し引きずるようになり、近くの動物病院さんにて、変性性脊髄症の可能性が高いと言われ、症状の進行に合わせて車いすを作成したりと、ご家族様はメイちゃんが過ごしやすいように工夫されてきました。家の内装も中型犬サイズのメイちゃんが、車椅子を装着しても生活しやすい環境になっていたのが、何より幸いでした。
車椅子での生活を少しの間過ごせていたのですが、ここ1ヶ月ほど食欲が落ちてきていて、自分では全く歩けないため、動物病院に連れて行くことが難しくなってきて、かなり病状も進行してきていることから、お家で酸素を吸いながら、お家で最期を過ごしてほしい、との思いから私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室にお電話をいただきました。
お家に訪問するとメイちゃんは寝ていて、私達に気付いて顔だけをあげてくれました。しかし、食欲がないことからご飯を食べていないため、痩せていて、脱水している様子もありました。
メイちゃんの治療経過をお伺いし、お家に酸素ハウスもレンタルして頂いていたので、早速診察にうつらせて頂きました。身体検査では、かなりの脱水が見られ、尿やけもあることから、その日は皮下点滴と洗浄、尿やけの対処法をお伝えさせて頂きました。
そして、メイちゃん自身かなり弱ってしまっていることから、一緒に過ごせる時間も長くはないかもしれないこともお伝えさせていただきました。残された時間は入院ではなく、ご家族様と一緒に過ごさせてあげたいという思いから、ご自宅での緩和ケアに入りました。
皮下点滴もお家で出来るようにご家族様にご指導させて頂き、メイちゃんもお利口さんなので、ご家族様だけでもできそう、ということで数日分お渡しさせて頂くこととしました。また尿やけに関してはしっかりと洗浄を行い、炎症が酷い場合には軟膏の外用薬を、そうでない場合は予防としてワセリンを塗って頂くと良いとお伝えして、その日は診察終了としました。
本当はご飯も少し食べてほしいところですが、ご飯を口元に持っていってもかなり嫌がるため、その日は口に入れることはしませんでした。
2日後、もう一度お伺いすると、少し呼吸が早くなってきていて、かなり危険な状態でした。しかし、それでも延命というよりは酸素ハウスで過ごすことをご家族様もご希望され、点滴はせずに、少しでもメイちゃんと一緒にいてあげてください、とお伝えさせて頂きました。
そして、メイちゃんはその日の夜に、ご家族様に見守られて、虹の橋を渡って行きました。
メイちゃんは、本当によく頑張ってくれていました。呼吸が辛くなっても、私たちが行くと顔を上げてくれて、本当に人が好きなことが伝わってきました。
このように、普段は動物病院に行けたけれど、歩けなくなってしまうと動物病院に連れて行くのが難しい場合も多くあります。
また、そういった場合、入院での集中治療を選択するか、それとも自宅での緩和ケアを選択するのか、両極端のように感じますが、どちらを選ばれても間違っていないと考えています。飼い主様が勇気を持って決断された選択を尊重し、往診の度に診療方針を決めさせていただきます。
残りの時間をご自宅で過ごさせてあげたい、お家で最期を迎えさせてあげたい、とお考えの飼い主様、往診専門動物病院わんにゃん保健室までいつでもお気軽にご相談ください。
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