往診専門動物病院 往診獣医の江本宏平です。
往診専門動物病院があることをご存知でしょうか?
なんとなく元気がない、便が緩い(軟便・下痢)、よく吐く(嘔吐)、フラフラする(ふらつき)など、日常の中でよく遭遇する症状に気がついた場合には、きっと家の近くにある動物病院にペットを連れて通院し、獣医師の診察を受けるかと思います。
そのため、動物病院への通院や外出が大の苦手でない場合には、近くにある動物病院がかかりつけの動物病院になることと思います。
しかし、中には動物病院に連れて行けないケースも多くあります。
その代表例が猫です。
猫ちゃんは、家の中から連れ出されることが大嫌いであり、ほとんどの猫ちゃんがキャリーにすら入ってくれません。
また、ラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーなどの大型犬の歩行困難(歩けない、立ち上がれない)でも、動物病院への通院を断念してしまうケースに該当しています。柴犬やコーギーなどの中型犬クラスでも、飼い主様がペットを担いで動物病院に行けないというお問い合わせを受けることもあります。
こういった場合には、往診専門動物病院をご利用ください。
往診専門動物病院は、東京都内だけでも10を超える数があります。それぞれの動物病院で特色がありますので、予約する前に各動物病院のホームページをご確認ください。
獣医師が一人で運営している動物病院では動物看護師がいませんので、飼い主様に処置や採血、保定などをお願いする場合があります。
その場合には、どんなことを協力すればいいのか、事前に準備しておくものは何かなど、電話予約の段階で往診専門動物病院に伺っておくことをお勧めします。
往診専門動物病院わんにゃん保健室では、獣医師と動物看護師が一緒にご自宅までお伺いさせていただき、スムーズな処置、検査から飼い主様、わんちゃん・猫ちゃんにとって可能な限りストレス無く診察をさせていただいています。
また、完全予約制ですので、ペットも安心できる空間でゆっくりとお話をお伺いさせていただき、その子その子にとって最良の診療方針をご提案させていただきます。
特に、ペットが高齢であったり、家での緩和ケア、ターミナルケア及び看取りをご検討されている飼い主様は、急変する前にご連絡をいただき、事前に診察にてカルテを作成しておくことをお勧めします。残された時間をその子らしく過ごせるよう、全力でサポートさせていただきます。
さて、ここからが本日の記事です。
本日も連日お送りしている、慢性腎不全の猫ちゃんのお話です。
猫ちゃんを迎えることを決めたその日から、腎臓病について知っておかなければいけないと言っても過言ではないです。
ということで、今回も慢性腎臓病の高齢猫のお話です。
慢性腎臓病というと、よく耳にする病名かと思いますが、どのような症状が出るかご存知ですか?
猫ちゃんは症状を隠してしまい、なかなか気付くことができず、気付いた時にはかなり悪化してしまっているというケースも少なくありません。
しかし、動物病院に猫ちゃんを連れて行くというのは、猫ちゃんにとっても、ご家族様にとってもストレスが大きいかと思います。
初期症状を知っていれば、早い段階で気付くことが出来、また往診専門動物病院わんにゃん保健室であれば、動物病院に連れて行くというストレスもなく診察をさせて頂くことができます。
そこで、今回は初期症状のお話もはさみつつ、慢性腎臓病の高齢猫ちゃんのお話しをさせて頂こうと思います。
症例は東京江東区在住の16歳の高齢猫のニャン太ちゃんです。ニャン太ちゃんと初めて出会ったのは1年ほど前のことです。
お電話にて、最近尿量が増えた気がするとのことで往診をご希望され、お伺いさせて頂きました。
東京江東区にも往診をしてくれる動物病院は複数ありますが、動物病院業務が多忙であるために、動物病院業務が終わった夜中だったり、頑張ってたまに昼休憩中に行っているのが現状です。そのため、高頻度での往診を実施することが現実問題難しいです。
東京江東区は、最近では週1~2回程度往診で行っている方向ですので、もし東京江東区で動物病院への通院が困難な状況にある犬猫と暮らしている飼い主様はお気軽にお問い合わせください。
話を戻します。
ニャン太ちゃんはシニア猫のためなのか、お家の中ではとても温厚でした。お母さんのお話だと、一歩でもお外に出ると大興奮してしまうらしく、一度動物病院に連れて行って以来、動物病院に連れて行くハードルが上がってしまい、当院までご連絡を頂いたとのことでした。
ニャン太ちゃんは、お家での診察ではすごく大人しく、身体検査も血液検査も順調に終わり、すぐに解放しました。
高齢で、尿量が増えたとのことでしたので、慢性腎臓病を疑って診察を行い、脱水も見られたので、その日は点滴のみ実施し、次の日に血液検査の結果のご説明にお伺いすることとして、診察を終了としました。
血液検査では、腎臓の数値が上昇してきており、慢性腎臓病の治療を開始することをご提案させて頂き、皮下点滴とともに慢性腎臓病の内服薬もスタートすることになりました。
そんなニャン太ちゃん、月に1回の往診で調子が良かったのですが、先日食欲が落ちてきたとのことでご連絡があり、急遽お伺いさせて頂くこととなりました。
お家にお伺いすると、いつもキャットタワーの中にいるニャン太ちゃんですが、その日はベッドに横になって元気がない様子でした。
詳しくお話しをお伺いすると、数日前から食欲が落ちていて、今日は全然食べていないとのことでした。
お水もあまり飲んでいないとのことで、慢性腎臓病の悪化を疑い、血液検査をご提案させて頂き、実施することとしました。
ニャン太ちゃんをタオルでくるんで、身体検査からスタートです。
身体検査では軽度の脱水と歯肉口内炎、また、舌の色が薄くなってきており、貧血していると考えられました。
次に血液検査です。
いつも通り落ち着いて採血をさせてくれました。
その後、皮下点滴と吐き気止めや胃薬、消炎剤の注射を行いその日の処置は終わり、ニャン太ちゃんを解放しました。
おそらく、慢性腎臓病の悪化により、尿毒症が出てきており、貧血や歯肉口内炎も腎臓病によるものと考えられました。
次の日もう一度お伺いさせて頂くこととして、その日の診察は終了としました。
血液検査では、やはり腎臓の数値の上昇、貧血の数値の低下が認められました。
ではなぜこのような変化が見られるのでしょうか?
まず、猫の慢性腎臓病の初期症状は、今回のニャン太ちゃん同様、薄いおしっこがたくさん出る、いわゆる多飲多尿の状態です。
慢性腎臓病が始まると、通常水分を再吸収しておしっこを濃くするのですが、その機能が落ちてしまい、薄いおしっこがたくさん出てしまうようになります。
その後、腎臓によって老廃物を出す機能が落ちていき、体の中で尿毒素が蓄積していきます。
そしてある時点で吐き気や食欲不振、口内炎などの症状を出す、尿毒症を発症します。
また、腎臓は骨髄に向けて、造血ホルモンを放出しています。
しかし、慢性腎臓病になるとその造血ホルモンの放出量が減ってしまい、貧血となってしまうのです。
治療を行うことで、これらの症状になるまでの期間を延ばすことはできますが、いずれは発症してしまいます。
そういった場合には対症療法を行い、少しでも症状を和らげてあげる必要があります。
今回のニャン太ちゃんにも同様の処置を行っていきました。
次の日お伺いすると、ニャン太ちゃんは少しご飯を食べるようになり、少し顔つきも良くなったとのことでした。
そのため、まずは3日間集中的に往診にて注射治療をさせて頂き、ご飯を食べられるようになれば少し間隔を空けることにして、3日間集中治療を実施しました。
また、貧血に対しては、造血ホルモンの注射を行い、貧血の数値が改善するか1週間後検査を行うことにしました。
すると、3日後にはニャン太ちゃんはドライフードも食べてくれるまで回復してくれました。
ご家族様も私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室のスタッフも一安心です。
ご飯も食べられるようになったので、少し治療を弱めてお家での点滴と内服薬に切り替えて1週間後再診としました。
次回のお伺いがその再診日となっているので、ニャン太ちゃんがどこまで回復してくれているか、気になるところです。
このように、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、緩和ケアだけではなく、慢性疾患の管理にも力を入れています。
動物病院に連れていけないけれど、腎臓病がある、心臓病がある、などがあれば、いつでも往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。
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