こんにちは!
今日は嘔吐が続いている猫ちゃんのお話です。
人も嘔吐が続いていると食欲が落ちて食べられなくなってしまうと思うのですが、猫ちゃんも同様で、嘔吐が続いてしまうと食欲がなくなって、お水さえ飲まなくなってしまいます。
また、何度も嘔吐を繰り返していると胃液で食道が炎症を起こしてしまい、ムカムカする、いわゆる悪心が続いてしまうことがあり、嘔吐がおさまってもすんなり食べられないこともよく見られます。
しかし、嘔吐の原因を突き止めて、嘔吐を抑えて、胃薬で胃液を抑えなければ食道炎も良くなりません。
では、猫ちゃんが嘔吐する原因はどんなものがあると思いますか?
嘔吐の原因はとても幅広く、急性のこともあれば、慢性疾患のこともあり、稟告や年齢、既往歴、検査結果から原因を考えていかなければなりません。
たとえば子猫ちゃんであれば誤食や寄生虫疾患、中毒やアレルギー、先天性疾患のことが多く、特に外猫ちゃんであれば寄生虫疾患の可能性を必ず考えなければなりません。
一方で、ずっとお家にいる高齢猫ちゃんであれば、慢性疾患、例えば慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症などがあり、症例によって可能性が高い疾患が異なってきます。
今回は、そんな嘔吐が続いていてご飯が食べられない高齢猫ちゃんのお話です。
症例は、東京渋谷区在住の16歳の高齢猫のこむぎちゃんです。
高齢猫の嘔吐は怖い
1週間ほど前から嘔吐が続いていて、最近は吐くものがなくヨダレを出すだけですが、ご飯を食べられていないため、痩せていっているとのことでした。
脱水している可能性を考え、その日の往診が必要と判断し、当日にお伺いさせて頂くことにしました。
お家に入ると、こむぎちゃんはこたつの中で丸まっていて、はっきりと姿は見えませんでしたので、まずはご家族様にお話をお伺いすることにしました。
ご家族様によると、数ヶ月前から吐く回数が増えたような気はするものの、ご飯も食べていて、食欲もあったので特に気に留めていなかったそうなのですが、ここ1週間は何度も嘔吐していて、ご飯も食べなくなってしまい、衰弱してしまっている感じがするとのことでした。
たしかに、嘔吐して、食べれていない時は脱水してしまい、衰弱してしまうことが多いので、こむぎちゃんもそうなってしまっているのかもしれません。
しかし、嘔吐している原因が分からなければ根本的な治療もできないので、まずは身体検査と血液検査、超音波検査を行い、消化管に異常がないかも見ていくことをご提案させて頂いたところ、ご同意頂けましたので、それぞれ検査を行っていくこととしました。
往診専門動物病院わんにゃん保健室では、想定される実施内容(検査内容や処置内容)を事前にご説明させていただいています。ご家族様の理解なくして、ベストな診療はなし得ませんので、ご質問がありましたら遠慮なく診察の時にしていただければ幸いです。
検査を行うために、お母さんにこむぎちゃんを抱っこで出してきて頂きました。
こむぎちゃんは普段は抱っこがあまり好きではないそうなのですが、この日は元気がなくなってしまっていたのか、すんなり抱っこで出てきてくれました。
元気がない証です。
ご家族様としては抱っこして可愛がりたいところですが、やはり抱っこができることは逆に心配になので、抱っこを嫌がるぐらい元気になってくれることを願って診察にあたらせて頂きました。
まずは身体検査です。
身体検査
身体検査では、口の粘膜がやや薄くなっており、貧血が考えられました。また、想像していた通り、脱水が激しく、脱水を補正するだけでもだいぶ楽になる感じもしました。
次は血液検査のための採血です。
血液検査
往診で猫の採血を行うときは、後ろ足を伸ばして行います。
これもお利口さんにさせてくれました。また、横向きになっての超音波検査も無事に終わり、その後に点滴と吐き気止め、胃薬などの注射を皮下点滴に混ぜて実施し、その日の診察は終了となり、次の日に血液検査の結果説明も含めて再診にお伺いさせて頂くこととしました。
腹部超音波(エコー)検査
超音波検査検査では大きな異常はなく、嘔吐が続いていて、食べられていなかったため胃の中は空っぽで、消化管の動きも悪くなっている様子でした。
血液検査では、肝臓の数値がやや高く、腎臓の数値もわずかに高値が認められました。
ただ、それよりももっとも今回嘔吐の原因となっていると考えられたのは、甲状腺ホルモンの高値でした。
甲状腺ホルモンが高いということは、つまり、甲状腺機能亢進症と診断ができ、この疾患は高齢猫ちゃんの嘔吐の原因としてとても多く認められます。
このことを次の日再診した際に、ご家族様にご説明させて頂いたところ、嘔吐がなくなるなら治療をしたいとのことで、その日から甲状腺に関しても治療を行なっていくこととしました。
往診専門動物病院では、血液検査を初め、動物病院で行える検査のほとんどを実施することが可能です。大型医療機器(X線検査機器など)は持ち込むことができないため、やむを得ず必要と判断した場合には、動物病院への通院をお願いしています。
また、こむぎちゃん自身は昨日の注射以降、吐き気がなくなりだいぶ楽になったのか、少しお水やスープを口にしたようで、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室のスタッフも、ご家族様も安心しました。
少し良くなっているようなので、甲状腺機能亢進症に対する内服薬の投薬も含めて、昨日に引き続き点滴と注射での治療を行いました。
ここで注意しなければならないのは、甲状腺を治療することで、腎臓の数値が上がってしまうことです。
腎臓の数値が上がってしまうと甲状腺ではなく腎臓から吐き気が来てしまうため、腎臓の数値が上がらないように点滴はしばらく続けていくことをご家族にもお伝えさせて頂きました。
その後1週間、点滴と注射治療を続けたところ、こむぎちゃんは缶詰やドライフードも食べてくれるまでに回復し、吐くこともなくなりました!すごい回復力です!
今回こむぎちゃんは、しっかりと嘔吐の原因がわかり、治療を行うことができました。もちろん、原因が分からないこともあれば、根本的な治療が難しいこともあります。
しかし、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、根治が難しい場合には緩和ケアやターミナルケア、慢性疾患であれば継続治療、急性疾患であれば連続での診察、など、動物たちはもちろん、ご家族様ともしっかりお話させていただき、適切な治療法をご提案してご相談させていただきます。
病院に連れて行けずに悩まれている方、いつでも往診専門動物病院わんにゃん保健室までご相談下さい。
◆-----------------------------------◆