皆さんは、「誤嚥性肺炎」ってをご存じでしょうか?
人の医療では、よく赤ちゃんと高齢者が発症しやすい病気なのですが、実は犬猫でも同じです。
飲み込んだご飯やお水、嘔吐物などが誤って気道に入ってしまい、通常だと咳が出て、それらを吐き出そうとするのですが、それがうまくいかずに肺に流れてしまって引き起こされます。
高齢の犬猫に対して食欲がない場合に、無理矢理にでも栄養を取らせたいという目的から、「強制給餌」を行うことがあります。
強制給餌とは、その名の通り、半強制的に喉の奥にご飯を流し込む手法です。
回復期であれば止むを得ないと考え実施することが多いのですが、緩和ケアの後半やターミナルケアでは、あまり望まれないご家族様がいるが事実です。
少しでもお腹が減っているだろうから、少しでも栄養を摂らせてあげたいというご家族様の意志とは裏腹に、食欲がないのにご飯を流し込まれるのは、やはり、ペットたちからすれば苦痛なのでしょう。
加えて、顔や鼻(マズル)を押さえられるのが好きじゃない犬猫がほとんどです。
やればやるだけ、栄養は入ります。
しかし、愛犬、愛猫からすれば、「なんでそんなに嫌なことをするの?」って気持ちになるのか、頑張りたい飼い主様の気持ちに逆行するように、どんどん心の距離ができてきます。
立ち上がるだけで、逃げるようになることもありますし、人が起きてる時間をずっと隠れてしまっていることもあるかもしれません。
それでもやってあげたいし、栄養が入ればふらつきや、はたまた貧血などの状態も改善するかもしれない!って期待もあります。
もし皆さんでしたら、自分の子に強制給餌、やってあげたいですか?
今日は、強制給餌にはつきものになりやすい誤嚥性肺炎について、予防方法なども含めてお話していきます。
誤嚥性肺炎について
誤嚥性肺炎とは、冒頭にお話しさせて頂いた通り、食道に入るべきものが誤って気道に入ってしまった際に起こる肺炎です。
赤ちゃんや高齢者は、吐き出す力が弱かったり、免疫が落ちてしまっているため、誤嚥性肺炎が命に関わることも多々あります。
肺炎が命に関わるというのは、誤嚥性肺炎に関わらず、風邪の悪化やインフルエンザ、流行りの新型肺炎などでも共通しているので、皆様も肺炎にはお気をつけください。
話しを元に戻しますが、人と同様に、犬や猫でも、子犬や子猫、特に高齢犬や高齢猫では誤嚥性肺炎がとても多く見られます。
そして、そういった子たちは別の疾患で重症な中で誤嚥性肺炎を起こしてしまったり、老齢で体力的にすでに立つことができない場合が多く、治療が難しく、それが直接の原因となって命を落としてしまうことも少なくありません。
強制給餌での誤嚥性肺炎予防
1. 正しい姿勢であげましょう
姿勢は特に重要です。
寝転がった状態で上げようものならば、うまく飲み込めずにむせってしまって当然です。
私たちも、寝た状態で何かを飲み込むのって難しいと感じると思います。液状のものであれば、ストローが補助してくれますが、だとしても、それは口に含むまでであって、飲み込むのは結局難しいです。
姿勢を正さずに口にご飯を入れられてしまった場合には、基本的には自分で飲み込めない分はちゃんと吐き出してくれますが、何かの影響でむせてしまった瞬間に誤嚥の可能性があります。
注意しましょうね!
体勢の維持には左右から抑え込むクッション素材が最適です^^
2. 呼吸状態
苦しそうな時は、無理に責めないでください。
通常は気管への道が開いているのですが、飲んだり食べたりするときには、気管への道を遮断し、食道への道が開かれます。
この開閉作業は自動で行われていますが、老化現象というべきなのか、この作業をたまに失敗するようです。
ましてや、呼吸が苦しければ、常時気道への道を優先して確保し、頑張って呼吸して全身にぎりぎりの酸素を供給している状態だと思います。
そこにご飯(特に液状は要注意!)が入ってきたら、無理矢理気道を閉じて、食道への道を開かなければいけません。
もちろん、飲み込み終わるまでは気道が開きませんので、苦しさは増します。
そして、さらにもう一口と、ペットの顔を保持し上に向け口の中にご飯を流し込んだ時、低酸素状態に耐えられずに呼吸してしまった犬猫に誤嚥させてしまう、というような流れです。
呼吸状態が悪い犬猫への強制給餌は、酸素化してあげることが何より重要です。
在宅酸素を、動物病院から、または専用業者からレンタルできるかと思いますので、かかりつけの動物病院に尋ねてみましょう!
3. 1回量に注意
わんちゃんならまだしも、ここでは猫ちゃんのことをメインで話していきます。
猫ちゃんの場合、やってみて感じるのは、一回に0.5ml〜1ml程度までにしたほうが無難だと思います。
また、1回の食事で流し込める量は5ml程度から開始し、徐々に増やしていくのがお薦めです。
猫ちゃんの胃袋はそこまで大きくない(犬と比較してそこまでって感じです。)ということを知っておくのが大切です。
おおよそ、額の大きさだと言われています。
たくさん食べてほしい気持ちはわかりますが、一気に入れすぎて吐き出させてしまった結果、体力を奪うだけになってしまった、という悲しい結果にならないように、気をつけてあげてくださいね^^
というような感じで、今回は強制給餌における注意点を3つご紹介させていただきました。
まだまだポイントはありますが、その子の状態や性格、そして実施するご家族様を含めた生活環境などが要因として加わってくるために、これ!というパターン決めが難しいです。
そのため、実際に強制給餌をやりたいと、ご家族様が判断した場合には、かかりつけの動物病院でやり方を教わることが、まずは大切かと思われます。
また、もし動物病院への通院が難しい場合には、きてくれる往診の獣医師を片っ端から電話してみる、という方法もまた一つです。
東京都内、特に中央区を含めた23区および埼玉県、千葉県、神奈川県の東京近郊であれば、私たち、往診専門動物病院わんにゃん保健室がお伺いできますので、お困りの際にはご連絡ください。
X線検査や人工呼吸器などを必要としない検査、処置の一通りをご自宅で行います。
また、大型の酸素発生装置も保有しておりますので、当院の獣医師の判断のもと、最短即日でご準備させていただき、少しでも早く楽な状態を作れるように、みんなで工夫させていただきます。
このほかにも、高齢犬、高齢猫の場合は介護が必要になることもあり、そんな時にお家で出来るケアは沢山あります。
何かしてあげたいけれどどうして良いか分からない、そういった場合には往診専門動物病院わんにゃん保健室までご相談ください。高齢犬や高齢猫の介護にも詳しい獣医師、看護師がしっかりとご相談させて頂きます!
ペットの緩和ケアと看取りのお話
ペットの緩和ケアやターミナルケアをお考えのご家族様向けに参考ページを作成しました。
今後、もし慢性疾患など、治療による根治ではなく、症状や病状のコントロールのみと診断された場合、通院で今後も診てもらうか、在宅に切り替えるべきかを考える参考にしていただければと思います。
是非ご一読ください。
◆-----------------------------------◆