皆さんは、てんかん発作を起こしたわんちゃん、猫ちゃんのケアをしたことはありますか?
てんかんは、その原因がある症候性てんかんと特発性てんかんに分けられますが、私たちが「特発性」といった場合には、原因がわからない、という意味だと受け取りましょう。
全部が全部、原因を突き止められ、治すことができればいいのですが、まだまだ未知の領域が存在していることは事実です。
今回ご紹介する症例は、生まれつき「水頭症」を抱えた小枝ちゃん、16歳の女の子です。
水頭症とは、その名の通り頭に水が溜まってしまう病気です。
水頭症を抱えて生まれてきた犬猫は、生涯に渡り脳圧を下げる薬だったり、発作を抑え込んであげる薬だったりを飲まなければなりません。
外科的な処置もありますので、もし水頭症を疑われた場合には、大きな動物病院、できれば二次医療施設などの脳神経外科を受診することをお勧めします。
それでは、症例紹介です。
今回の初診では、2時間半ほどお時間をいただき、過去(既往歴や投薬歴)から現在、そして未来(検査プランや処方プランの決定と今後の流れ)をゆっくりとお伺いさせていただきました^^
(若かりし頃の小枝ちゃんです^^クリクリお目目が愛らしいですね♪)
初診時のご様子と対策
小枝ちゃんは、子犬の時から水頭症があり、頭の病気に伴うてんかん発作もあったことから、医薬品を使用して、発作をずっと抑え込むためのコントロールをしていたとのことでした。
最近になって、深夜2、3時になると夜鳴きを起こしてしまうようになり、発作も見られ始めたため、小枝ちゃんの体力もかなり消耗していましたが、その横で看病しているご家族様も、疲弊しきっているご様子でした。
少し前から、かかりつけの動物病院にて後肢のふらつきを指摘されたはいましたが、徐々に夜中の発作の頻度が上がるにつれてナックリングが強くなり、体勢維持が難しくなり、歩けなくなってしまったとのことでした。
初診時に現在のお薬内容を見てみると、かかりつけ動物病院から5種類処方されており、用量もしっかりとした量になっていたことから、ここ最近は意識レベル自体を下げることで常時鎮静状態にして、発作をコントロールしていたんだと判断できるものでした。
この場合、用法用量の見直しで、意識レベルを少しだけ上げてあげることで、また歩けるかもしれないことと、そのデメリットとして、投薬プランが1日3回になってしまうこと、さらには意識レベルが上がることで発作や夜鳴きが頻発してしまう可能性があることを天秤にかけながら調整していかなければなりません。
初診時段階で、かかりつけ動物病院から処方されていたお薬を必ず確認させていただきます。
また、アレルギーであったり、以前使った薬で体に合わなかったものがあるのかも併せて伺わせていただいています。
小枝ちゃんの場合5種類の医薬品を常備薬として処方されていて、発作止めとして1種類処方されていました。
現状の小枝ちゃんの体調及びご家族様の環境を踏まえ、3種類の医薬品を用量用法変更、2種類を種類変更させていただき、意識レベルと発作と夜鳴きの頻度を評価対象として様子見としました。
薬は全部で7種類、お母さんたちの工夫もあり、全部平らげてくれました^^
発作以外に併発していた病気
発作以外に、3ヶ月ほど前から、オリモノが出てしまうほどの、強い細菌性膀胱炎を発症しており、トイレの時にいつも鳴いてしまうほどでした。
抗生物質をずっと使用されていたこともあり、まずは培養検査と薬剤感受性検査を実施することが、症状緩和への最短ルートであると判断し、初診時に尿培養検査を行いました。
尿培養検査結果が揃うまでは、かかりつけ動物病院で処方されていた抗生物質を継続しようとしました。
チアノーゼ対策の酸素発生装置
小枝ちゃんは発作時や興奮時にはチアノーゼを起こしてしまうことから、ご自宅には酸素発生装置がレンタルされていました。
※ご自宅までレンタルしてくれる酸素業者さんを、事前に調べておきましょう。必要となったときにエリア外ですってならないよう、今のうちに調べるのがおすすめです^^
アクリル製の酸素ハウスの中にどうしても入ることが嫌いで、無理にでもハウスに入れてあげると、中を歩き回ってぶつかってしまうため、ほとんど使用できていないとのことでした。
ここ最近までは発作が出ていなかったので、発生装置をあまり使用していなかったが、発作が出てきてしまってからは、酸素発生装置をどうするべきか悩まれていました。
顔前で噴射する方法もありますが、風が顔に当たることを嫌がる犬猫がとても多いことから、少し工夫が必要であることをお伝えし、生活環境を見ながらアドバイスさせていただきました。
そして、今回重要なポイントである「介護の悩み」です。
病気の話もそうですが、理解して一歩ずつ進めなければいけないカテゴリが、現段階におけるご家族様の「病気以外の悩み」です。
犬猫の介護は、問題点をあぶり出すことから始まります。
看病/介護環境の整理から見つめ直す
犬猫の介護では、ペットの生活リズムに合わせてご家族様が生活していくというのが多く見受けられます。
まずは小枝ちゃんの生活リズムです。
・8:00ご飯(薬)→食後は就寝
・13:00ご飯(薬)→食後は就寝
・19:00ご飯(薬)→食後は就寝
お昼ご飯と夕食の間に1、2回起きて唸るため、抱っこして落ち着かせ、ベッドに戻すとまた寝てくれるとのことでした。
食後は疲れるようで、鼻をフガフガして震え出し、抱っこしてあげていると5〜10分程度で震えが収まり寝てしまうとのことでした。
お水を自分から飲んでくれないので、ご飯と薬をすりつぶして水で伸ばしてあげているとのことでした。
このリズムだけならば、まだ在宅環境であれば問題にはなりづらいのですが、問題は夜中の発作です。
初診時は、夜中2時〜明け方5時くらいに数回の発作のような症状が出てしまい、都度治まるまで見守り続けてしまっているという状況でした。
全体のお話の中から、まず最初に対処すべきは、この夜中の発作や夜鳴きをコントロールであることを確認しました。
発作のコントロールでは、容易に中毒域に達してしまう医薬品や呼吸抑制を起こしてしまうような医薬品を使用することもあり、いきなり強い薬を使用せずに、ステップを踏む必要があります。
そのため、もしかすると今の処方では効果が見られない可能性をお伝えした上で、まだまだ手はある事を支えとしてもらうために、未来予想図をお伝えし、安心してもらいながら一緒に向き合っていきます。
(ちなみに、小枝ちゃんの横にいたお猿さんのお人形はジョージって言うらしいです^^)
最後に・・・
今回は、最初の診察時に、問診の中で伺い対策を立てられた内容について書かせていただきました。
介護・看病と言葉で言うのは簡単ですが、その実態はかなりの精神力と体力を消耗しながらの戦いとなります。
向き合い方ややり方を見つめ直すだけで、愛犬、愛猫にとってだけでなく、その場で頑張っているご家族様にとっても心が軽くなることがあります。
...かなり長くなってしまったので、2回に分けてお送りさせていただきます^^
わんにゃん保健室では、在宅医療に特化した緩和ケアと看取りを見据えたターミナルケアに特化した獣医療を提供しています。
もちろん、通常診療で通院が難しい場合には、ご相談可能です。
それでは、また次回!^^
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