大型犬で多く見られる病気は、なんといっても腫瘍(がん)です。
慢性疾患で旅立つ大型犬もいますが、小型犬と比べて大型犬では、腫瘍(がん)で旅立っていく子が、肌感的に高い気がしています。
そして、大型犬の終末期特有の最も問題になることに、運動機能の衰えである「歩けない(歩行不全)」「立ち上がれない(起立不能)」が挙がります。
小型犬であれば抱き上げて動物病院に連れていくことが叶いますが、大型犬の場合、抱っこして動物病院まで行くことは、体重的にほぼほぼ不可能です。
もし持ち上がるのであれば、、、
車に乗せて上げられ、少し遠くの動物病院まで通院させることはできると思います。
そこまでの持ち上げは難しい場合に、台車などに乗せて通院するという方法もあります。
健康なわんちゃんと比べて熱中症を起こしやすいことが予想されますので、暑さ対策はしっかりしておきましょう。
ただ、それすらも難しいというケースがあります。
もし「痛み」を伴っている場合には、患部を触れられることを嫌がります。
例えば腰や膝、骨盤のあたりに痛みがある時には、下半身を触れられることが嫌であり、尚且つ、お尻のあたりや手足の先を触られるのが嫌いな犬猫の場合には、腰を立たせることすら至難の技になる場合もあります。
犬猫にとって、足先は生命維持にとって欠かせないものですので、結構触れられること自体に敏感で、意図せず歯を剥き出しにしてしまうことも多々あります。
大型犬の場合には、普段から抱っこに慣れていないことが多いので、この時期に下半身に触れられて持ち上げられたりすることを嫌がる傾向があるため、普段からトレーニングしておくことをお勧めします。
ペットが終末期を迎えるにあたり行われる終末期ケア、特に在宅終末期ケアでは、ペットだけでなくご家族様の負担もできる限り緩和していくことが必要であると考えています。
そのため、ペットの在宅終末期ケアでは、「犬猫が抱える症状の緩和」だけでなく、「寄り添うご家族様のケア」も同じくらい大切だと考えています。
もし愛犬の大型犬が立ち上がれなくなったり、歩けなくなってしまった場合には、通院という選択肢以外にも、往診という選択肢があることを、頭の片隅に置いておいていただければ幸いです。
今回お話する症例は、急に立てなくなってしまった大型犬の蛍ちゃんです。
2023年5月28日の初診でエコー検査にて肝臓がんを認め、2023年6月25日にご家族様のもとで眠りにつきました。
【初診(2023年5月28日)】
蛍ちゃんは2010年2月に、まだ3ヶ月齢の頃に保護され、家族として迎えられました。
異食癖のあるやんちゃな女の子で、靴下やビニールを食べてしまったこともありましたが、いつもちゃんと便で出てきたらしいです^^
5月26日からはあまり立ちたくない様子でしたが、5月27日になると明らかに状態が悪そうで食欲は無くなり(食欲廃絶)、5回ほど吐き出し(頻回嘔吐)、終始うつ伏せになろうとしていたとのことでした。
ただ、お散歩にはいくことはでき、いつも通り40分くらいお散歩したので、少し様子を見てあげたとの事でした。
しかし夜になると急激に立てなくなってしまったため(起立困難)、翌朝の5月28日に近医へ通院させようと思っていたのですが、大型犬ということもあり動かすことができないため、往診にて訪問診療をご希望されました。
お伺いすると、自力での飲水はできているものの、いつもよりも飲む水の量が少ないとのことでした。
ただ、飲水後に排便があり、排便すると、少し元気が出てきたようだとのこ事でした。
排尿量は、以前からとても多かったとのことでした。
血液検査と超音波検査を実施し、肝臓と脾臓に腫瘍があることを認めました。
当院の在宅医療における緩和ケア及び終末期ケアでは、初診時に血液検査と超音波検査のスクリーニングを実施しています。
また、何度も検査を重ねることでペットの体調を悪化させることを回避するため、1回の検査で幅広く十分な範囲を検査で見させていただいています。
今後立ち上がれなくなることを想定し、その場合には介護が必須になると考えられるため、今のうちから汚れを落としやすくしてあげることを考えて、少し安定してきたら予防的に毛刈りすることを検討していくこととなりました。
この日から3日間連続での処置をして、安定してきたら内服薬が苦手ではないという条件のもと、大型犬であれば内服薬に切り替えられる可能性は十分高いと考えるとお伝えさせていただきました。
次回は再診2日から最後の日までを書かせていただきます。
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