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猫のリンパ腫の在宅緩和ケア(往診/在宅緩和ケア/猫)

腫瘍というと、犬、特に大型犬という印象がありますが、猫ちゃんにも多く見られます。

 

猫ちゃんの腫瘍(がん)というと、最も多いのが皮膚腫瘍と言われており、次いで乳腺腫瘍、リンパ腫、と続いています。

 

猫ちゃんの皮膚腫瘍のほとんどが悪性の可能性が高く、肥満細胞腫や扁平上皮癌、繊維肉腫などその種類は様々です。

 

今回は、猫ちゃんが抱えうる腫瘍疾患(がん)の中で、最近よく在宅緩和ケアを実施している、「リンパ腫」について書かせていただきます。

 

「最近なんだか軟便気味だな」

食欲が少しだけ下がったような気がする

元気が少しだけないような気がする

体重が減ってきた感じがする

 

これらの症状は、もしかしたらリンパ腫が潜んでいるかもしれません。

 

往診専門動物病院での在宅緩和ケアにおける、実際の問診内容、検査プラン、処方プラン、生活環境へのアドバイスなどを中心に書かせていただきます。

 

 

予約時の問合せ内容

13歳の猫ちゃん(みー)で、1週間ほど前から元気食欲がなくなったとのことでした。

 

それ以外は至って普通だが、キャリーを見せるとよだれをこぼしながら興奮して隠れてしまい、頑張って動物病院に通院させようとしたが異常興奮したので、往診を希望したとのことでした。

 

通院歴はほぼなく、0歳の時に避妊手術とワクチンで動物病院に連れて行って以来、通院ができなくなってしまったとのことでした。

 

家の中なら、抱っこもできるし、落ち着いていると思うので、在宅でできる範囲で見てあげてほしいとのことでした。

 

初診時

ご家族様の印象通り、初対面の獣医師や看護師に対してもスリスリしてくれるような性格の猫ちゃんでした。

 

パッと見はそこまで体調が悪そうではないように見えるとのことでしたが、猫ちゃんの呼吸数はやや早めな印象を受けました。

 

往診専門動物病院では、通常の動物病院での問診と比べて長く時間を取り、深く伺うことが多いです。

 

当院では、初回問診は1時間〜2時間ほどかけています。

 

お伺いする内容は、元気、食欲、排便、排尿、飲水、発咳などの状況、今食べているご飯の種類や、猫ちゃんの好みのテイスト、ご飯の形状やあげ方、お水の位置や数、トイレについてなどです。

 

これらは基本的な内容ですが、生活環境や家族構成なども重要となる場合が多いので、そのあたりも深くお伺いすることもあります。

 

誰がどのくらい、この猫ちゃんの看護、介護に協力してくれるのか、どの時間帯に処置、処方のプランを組み込めば実施可能なのかなど、ご家族様ごとに組み立てさせていただきます。

 

この猫ちゃんの場合、まずは現状を把握するため、血液検査、超音波検査(エコー検査)を実施することとしました。

 

状態に応じて検査項目や検査種類を変えますが、かなり重篤な状態で、ストレスによってぐったりしてしまう可能性が高いと判断された場合には、まずは検査よりも臨床所見を持ってある程度診断を下し、処置のみを先行することもあります。

 

この猫ちゃんの場合には、初診時の状態がそこまで歩くなかったこともあり、検査が可能であると判断しました。

 

検査結果

往診では、ご自宅にて血液検査や超音波検査(エコー検査)、尿検査などを行うことが可能です。

 

中にはその場で結果がわかる検査もございますが、血液検査などの場合には、血液を持ち帰って検査を行いますので、次回診察時に結果のご説明をさせていただいています。

 

この猫ちゃん場合にも、血液は持ち帰っての検査となりましたが、その場で結果を一緒に見ることができる超音波検査(エコー検査)にて、お腹の中(腹腔内)にボコボコした腫瘤病変が、複数個確認されました。

 

初めて画像検査であったこともあるので、もしかすると昔から、または体質としてリンパ節が腫れやすい猫ちゃんも経験しているため断定はできませんが、画像の所見上で最も疑わしい病気として、リンパ腫の可能性をお伝えしました。

 

猫ちゃんのリンパ腫の余命は、抗がん剤などの積極的な治療を図らない場合には、おおよそ2ヶ月程度です。

 

また、経験上最初の6週間は元気なことが多いですが、そこから一気に体調が崩れていく印象です。

 

今回の猫ちゃんの場合も、この説明をさせていただき処置を行い、翌日も診察を組むこととしました。

 

その後のプラン

翌日には血液検査結果がある程度出揃い、数値には何も異常を認めないという、腫瘍疾患らしい結果が出ました。

 

こちらも主観的ではありますが、部位によって異なりますが、猫のリンパ腫の多くで、肝臓や腎臓などの数値が大きく崩れていることは少ないと受け取っています。

 

そのため、猫ちゃんで多い皮下点滴に関しても、輸液量を極端に少なくすることが可能であり、実際に投薬に要する時間は5秒ほどで完了しました。

 

そこに医薬品を混ぜることで、苦い薬を口から飲むことなく背中に入れてしまうことができるため、投薬後に口をくちゃくちゃしたり、泡を吹いてしまったりということが起きないようにすることができます。

 

ただ、皮下点滴ですので、実施にあたって誰が協力してくれるのかを明確にすることがとても大切であり、最終的にはご家族様の覚悟の問題になる場合が多いです。

 

病気の初期では、猫ちゃんも元気さが残っているため嫌がることが予想されます。

 

ここでは、皮下点滴時の保定の仕方が、皮下点滴成功への鍵となります。

 

ほとんどのご家族様で、みんな在宅での皮下点滴を実施できていますが、どうしても難しい場合には、別のプランを常に準備していますので、1つの方法に固執することなく、ご家族様が諦めなければ都度ご提案させていただいています。

 

2024年1月21日から始まった、この猫ちゃんが抱えたリンパ腫に対する在宅緩和ケアは順調に進み、最初の2週間は元気さを取り戻すことができました。

 

しかし、3週目からはだんだんと弱々しさが見えてきて、医薬品の量と頻度の変更が必要となりました。

 

そして2024年2月21日、いつもは入らないリビングにあるこたつの中に朝から入ったので、中を覗いたところ、そこで眠りについていたとの事でした。

 

お母さんはずっと付きっきりで看病してくれていましたが、きっと最後の姿を見せたくなく、最後の場所として、こたつの中を選んだと思います。

 

みーちゃんのご冥福、心からお祈り申し上げます。

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