こんにちは!
往診専門動物病院わんにゃん保健室 往診専門獣医師の江本です。
当院は、東京中央区・台東区にメインオフィスを構え、東京23区および近隣地区まで獣医師と動物看護師が一緒にお伺いさせていただいています。
診察の全てにおいて、往診獣医療チームで対応しますので、ご家族様にはその傍で愛犬・愛猫を応援していただければと思っています。
通院させるのが難しいな、負担だな、と感じた時は、諦める前にまずはお住まいのエリアまで来てもらえる往診専門動物病院へ電話しましょう!
最近出会った膵炎発症の高齢犬がいましたので、今回は膵炎のお話をわかりやすく、そして往診での考え方について解説していきます。
みなさん、膵炎という病気をご存知ですか?
人の医療では、膵炎の原因はアルコールや暴飲暴食、脂質の多い食べ物を食べすぎたりといった、食生活の乱れが原因と言われています。
一方で、人の食べ物を食べていない犬や猫では、ある意味人よりも食生活の点でいうとバランスのとれた食生活を送っていると言えます。
しかし、そんな犬や猫でも膵炎が起こってしまうのはなぜでしょうか?
もちろん犬や猫でも、人の食べ物や脂質の多いおやつをたくさんあげている場合には、膵炎になってしまうリスクが上がってしまいます。
しかし、原因はそれだけではありません。
自分自身の細胞が、自分の細胞(臓器)を攻撃してしまう自己免疫性の膵炎であったり、ミニチュアシュナウザーでは遺伝的に高脂血症になりやすかリスクが高くなります。
あるいは感染性の膵炎であったり、術後に血栓ができてしまって膵炎になったり、と原因は様々ありますが、犬では90%以上が原因不明の膵炎と言われています。
膵炎とはどういったものなのでしょうか?
膵臓は、胃の裏側あたりに位置し、インスリンなどのホルモンを出したり、消化酵素を十二指腸に分泌したりする働きがあります。
通常、膵臓から出る酵素は強力ですが、膵臓自身を消化しないように、十二指腸に達してから酵素が活性化されて働くようになります。
しかし、何かしらの原因で消化酵素が膵臓の中で活性化してしまい、膵臓自身を消化してしまうことがあります。
これが膵炎です。
そうすると、膵臓の細胞は溶かされ、膵臓や周辺の臓器で強い炎症が生じます。
その炎症が膵臓周囲だけで治れば、死に至ることは少ないかと思われますが、その炎症が、膵臓周辺だけでなく、肝臓や胃腸、さらには全身に広がってしまうと、血栓の原因にもなります。
話はそれますが、COVID19による肺炎も、肺炎が死因ではなく、肺での炎症により全身に炎症が広がり、血栓ができやすくなってしまい、血栓症になってしまうことが死因になっていると言われていますね。
まだまだ不明なことが多いので、これからの研究に期待です。
話が大きくそれてしまいましたが、膵炎での死因も血栓症や、全身性の炎症反応、あるいは敗血症が二次的に引き起こされることが大きいと言われています。
膵炎になってしまうとどんな症状が出るのでしょう?
膵炎には2種類あり、急性膵炎と慢性膵炎があります。
まずは急性膵炎のお話です。
急性膵炎とは、まさに名前の通り、急激に起こる膵炎です。
その進行はとても早く、治療をしなければ2,3日で亡くなってしまうこともあるほどです。
急性膵炎の場合、1番最初に見られるのは嘔吐や下痢、腹痛、食欲不振、発熱といった症状です。
特異的な症状はなく、他の病気にも当てはまる症状なので、診断が重要になってきます。
診断は血液検査や超音波検査によって、総合的に判断します。
また、膵臓の数値を測定することで、確定診断が得られます。
早期に診断ができれば、すぐに治療を始めなければなりません。
まずは点滴や吐き気どめや痛み止めの注射、そして血栓予防の注射を行います。
かなり痛みが強いため、鎮痛は積極的に行います。
そして人の医療では、急性膵炎の場合には絶食をすると言われていますが、獣医療では、吐かないのであれば出来るだけ早期に口からご飯を食べることが重要と言われています。
そうすることで、栄養分を膵臓に届けて、膵臓の回復に努めていきます。
ほとんどの場合、1週間ほどで血液検査の数値も落ち着き、お薬も減っていきます。
◎急性膵炎に対する往診の考え方
急性膵炎は集中的な入院管理が必要であると考えているため、往診のご依頼を頂いたとしても、電話の段階で判断し、入院治療を視野に入れて、できる限り急いで動物病院に行くように指示させていただいております。
特に、老犬ではなく、さっきまでは普通にご飯も食べれていたし、散歩も行けていたなどの場合で、急に嘔吐・下痢が止まらなくなったといった場合には、まずは急性膵炎を疑い通院を促します。
しかし、そうだとしても現実的に動物病院に連れて行くことが難しいと判断された場合には、往診でお伺いし、今の環境で提供できる獣医療内容を相談し、最良となる処置・処方プランや検査を含めた診療プランをご提案させていただきます。
みんながみんな、こういった時に通院させられる訳ではないので、ご家族様だけで悩まないで、まずは相談してくださいね!
一方慢性膵炎では、これといった急激な症状が現れないので、診断が難しいこともよくあります。
何となく元気がない日がある、何となく食欲がない日がある、といって症状なので、ご家族様も気付きにくく、動物病院に連れてくるきっかけとなりにくいことも一つの要因です。
診断は、急性膵炎と同様血液検査や超音波検査にて判断します。
血液検査では、膵臓の数値が軽度に上昇していたり、超音波検査では、膵臓が軽度に腫れていたりといった所見が認められます。
しかし、慢性膵炎は急激な悪化がなければ死に至ることは少ないので、まずは対症療法と食事療法を行います。あるいは慢性膵炎の内服薬を処方することもあります。
しかし、慢性膵炎も油断していると、急激な悪化をして急性膵炎になることがあるので、なんかいつもと違う、元気がない気がするなど、思い当たることがあれば、早めに獣医師にご相談ください。
◎慢性膵炎に対する往診の考え方
こんな感じで、あんまり特徴的な所見を認めないのが、慢性期の特徴でもあったります。
そのため、往診では、1回の検査でできる限り疑わしい検査を、わんちゃん・猫ちゃんの負担を考慮した上で実施するように心がけています。
通常の動物病院であれば、たとえば血液検査を考えると、費用を考慮した上で、検査項目を最小に絞り、広げたい場合には再度通院してもらい追加検査を行うかと思われますが、往診ではそうはいきません。
往診の場合には、そもそもが検査による負担が大きい場合を常に考えなければいけません。さらに、ここを検査したいので今日これから伺います!が、できないのがまた往診です。
往診だと、ここを検査したいので、次回1週間後、または1ヶ月後に追加で検査します、となってしまい、そんな悠長なことが言えないのが、おそらく初診かなと、経験的に感じています。
そのため、通院が難しく、在宅医療にお切替を検討される場合には、疑わしくは先に検査を検査することを大切にし、何度も採血するようなことはできるだけ避けてあげましょう。
最後に・・・
こうした膵炎ですが、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室でも膵炎を発症した犬猫と出会うことがあります。
急性期には毎日、時には1日2回お伺いすることもあります。
大型犬で動物病院に連れていくことが難しい場合、人が苦手で動物病院に連れていけない場合など、その子の性格によって動物病院に行けない理由は様々かと思います。
しかし、だからといって決して諦めずに、往診専門動物病院わんにゃん保健室にご相談ください。
往診専門動物病院わんにゃん保健室では、ご家族様と動物に合った治療をご提案させていただきます。
過去に犬の膵炎関連の記事を書いていますので、気になる方は是非読んでみてください!
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