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猫の胸水抜去に関するケースレポート(在宅緩和ケア/往診/東京)

猫に胸水が貯留すると、胸腔内の圧迫により呼吸困難が生じ、非常に苦しい状態になります。

 

特に猫ちゃんや小型犬などの場合、胸水抜去は強い痛みを伴い、ストレスがかかりやすいため、繰り返し抜去が必要な場合には、鎮静下での実施が望ましいです。

 

そのため、可能な限り負担を軽減する処置を行うことを推奨しています。

 

胸水抜去の頻度は猫ちゃんの状態次第で変動し、数か月に一度で済むこともあれば、連日抜去を要することもあります。

 

また、胸水貯留を伴う猫の日常生活の質を向上させるために、在宅酸素の設置も有効です。

 

酸素室内では呼吸が楽になるため、呼吸圧迫があっても比較的快適に過ごせる空間を提供できます。以下に、胸水貯留に対する在宅緩和ケアの実践として、往診による2つのケースレポートを紹介します。

 

猫の心筋症による胸水貯留

 

背景

12歳の日本猫で、心筋症の治療を2年半にわたって通院で行っていました。

 

しかし、心筋症が進行し、胸水が貯留し始めたため、動物病院での胸水抜去を試みましたが、3日後には再び胸水が溜まってしまいました。

 

通院頻度が増すことで猫にかかる負担が大きくなり、飼い主様の意向で在宅緩和ケアへ切り替えることとなりました。

 

在宅緩和ケアの内容

1. 酸素室の導入と環境整備

まず、猫ちゃんが穏やかに過ごせるように在宅酸素環境を整え、日常生活での負担を減らすことから図ります。

 

ご家族様の生活環境も把握したうえで、安静が保たれるスペースを確保しました。

 

2.投薬内容と方法の変更

心筋症治療の内服薬は、次第に経口投与が難しくなり、薬を与えるたびに開口呼吸が見られていました。

 

そのため、薬剤の投与経路を可能な限り経口から皮下投与に切り替えることで、呼吸悪化のきっかけの減少と、投薬成功率を向上することができました。

 

3. 定期的な往診とモニタリング

週1回の往診で胸水貯留の状況を超音波検査で確認し、薬剤の効果や体調の変化を把握しました。

 

また、状態に合わせて1〜2週間に1回の血液検査で体調をチェックしました。

 

投与経路の変更後、胸水の貯留は大きく改善し、6か月間ほど胸水抜去を必要としない期間が続きました。

 

胸水の再発と最期までのケア

在宅ケア開始から6か月後、再度胸水貯留が見られるようになりました。

 

週1回で胸水抜去を行っていたものの、貯留頻度が上がり、最終的には連日での抜去が必要になりました。

 

緩和ケア開始107日目、猫は家族に見守られながら旅立ちました。

 

 

ケース②:猫の心臓血管肉腫による胸水貯留

 

背景

次の症例は、急激な体調悪化で動物病院を受診した14歳の猫ちゃんです。

 

胸水が貯留していることが確認され、胸水を抜去したところ呼吸が安定しましたが、胸水の細胞診で腫瘍が疑われました。

 

抜去後の呼吸は改善したものの、帰宅後に猫ちゃんが横になれず唸り声を上げて隠れてしまったため、通院での継続治療が困難となり、在宅緩和ケアに切り替えました。

 

在宅緩和ケア内容

1. 環境整備と飼い主様のサポート

緩和ケアにあたっては、まず家庭環境を整備し、飼い主様が病気と向き合う準備ができるようサポートを行いました。特に腫瘍性胸水は医薬品によるコントロールが難しいため、在宅ケアの方針をあらかじめ共有しました。

 

2. 投薬の工夫

この猫ちゃんも内服薬の服用が難しかったため、早い段階で全ての医薬品を皮下投与に切り替えました。

 

この時期の猫ちゃんにとって、内服薬の負担はかなり大きくなることが予想されるため、無理に負担をかけず、確実に薬剤を投与するための措置です。

 

鎮静下での胸水抜去とその後

往診時に鎮静をかけたうえで胸水を抜去すると、呼吸が楽になり、通院後には食べられなかったドライフードを再び食べる様子が見られました。

 

24日間の在宅緩和ケアの間に4回胸水抜去を実施しましたが、全ての抜去後も、通院後の異様な興奮行動は認められませんでした。

 

この猫ちゃんは緩和ケア開始から24日目に、家族に見守られながら眠るように旅立ってとのことでした。

 

 

まとめ

 

猫で胸水が貯留し、呼吸が圧迫される場合、胸水を抜去することで呼吸が改善し、生活の質が向上する可能性があります。

 

胸水抜去には強い痛みが伴うため、全身状態次第ではありますが、可能な限り鎮静下で行うことが望ましいです。

 

在宅緩和ケアのステージにいる猫ちゃんのほとんどが良くない状態です。

 

そのため、胸水抜去の時は軽度〜中等度まで鎮静量を調整し、猫ちゃんの体だけでなく精神的な面にもできる限り負担をかけずにケアすることを心がけています。

 

胸水抜去は1回で終わることはほとんどなく、繰り返し必要になる場合が多いため、その都度の痛みやストレスを最小限に抑える工夫が不可欠です。

 

また、胸水による呼吸困難が続く猫に対しては、酸素室の設置も有効です。

 

酸素室の使い方や設定方法については、担当の獣医師に相談し、猫の症状や状態に応じて適切なケアを行っていきましょう。

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