ゴールデンレトリバーの男の子(8歳)を飼っている東京江戸川区在住のご夫婦から、こんな相談をいただきました。
「散歩が大好きだった子が、最近疲れやすくなって、呼吸も浅く速い気がします。検査をしてみたら、胸水が溜まっていると診断されました。これからの通院が難しくなりそうで、在宅でのケアができないかと考えています」
腫瘍が胸腔内に転移し、胸水貯留を繰り返す状況になると、通院そのものが犬にとって大きな負担になることがあります。特に大型犬は体重が重いため、移動させることが飼い主さん自身の負担も重なります。
この記事では、通院から在宅緩和ケアに切り替えたゴールデンレトリバーの実例をもとに、胸水貯留に対応するための具体的なケア方法や酸素環境の整備について詳しくお話しします。在宅緩和ケアは、ペットとご家族が安心して穏やかな時間を過ごせる選択肢の一つです。江戸川区をはじめとする東京23区での往診サービスに興味がある方にとっても、参考になる情報をお届けします。
1. 腫瘍の胸腔内転移と胸水貯留の発覚から在宅緩和ケアへの切り替え
ゴールデンレトリバーの男の子(8歳)は、東京江戸川区の河川敷を歩くのが大好きな、元気いっぱいの大型犬でした。しかし、ここ最近、散歩を途中で嫌がるようになり、帰宅後に息が荒くなることが増えました。さらに、伏せたまま立ち上がるのを躊躇する様子が見られるようになり、高齢のご夫婦は心配して動物病院を受診しました。
診断結果は「腫瘍の胸腔内転移」と「胸水貯留」でした。腫瘍が胸腔内に広がることで液体が溜まり、肺を圧迫して呼吸が苦しくなっていたのです。胸水は一度抜いても再び溜まることが多く、今後は定期的に胸水抜去が必要になるとのことでした。
通院のハードルが上がる大型犬の特性
大型犬の場合、歩行が困難になると一気に通院が難しくなります。車に乗せるだけでも、体重があるため高齢のご夫婦にとって大きな負担です。また、動物病院では待ち時間が長くなることもあり、犬が疲れてしまう様子を見ると「本当にこれが最善なのだろうか」と悩むようになりました。
ご夫婦が往診の選択肢を検討し始めたのは、動物病院での診察中に疲れ切って伏せている愛犬の姿を見たときでした。「これ以上無理をさせたくない」という思いが強まり、往診専門の動物病院に相談することを決意されました。
在宅緩和ケアを選択した理由
在宅緩和ケアでは、犬が自宅でリラックスした状態で診療を受けられるため、通院時のストレスが大幅に軽減されます。また、頻繁な胸水抜去や内服薬の調整も、往診なら負担を最小限に抑えて行うことが可能です。特に、大型犬では一度歩けなくなると移動そのものが難しくなるため、早めの段階で往診に切り替えることで、飼い主さんと犬双方の負担を減らせます。
ご夫婦は「自宅でケアが受けられるなら」と在宅緩和ケアを選択し、まずは胸水抜去や酸素環境の準備を中心にしたケアプランをスタートしました。
2. 在宅緩和ケア開始後の診療内容と環境整備
在宅緩和ケアを選択したロイくんとご夫婦は、初めての往診診療の日を迎えました。この診療では、ロイくんの現在の状態を細かく把握し、今後のケアプランを慎重に立てることが目標でした。
内服薬からのスタートと皮下点滴への準備
診療開始時、ロイくんはまだ自力で食事を取ることができていました。そのため、腫瘍性胸水を抑えるための薬や心臓の負担を軽減する薬など、内服薬を中心とした治療プランが導入されました。大型犬であるロイくんは、比較的内服薬を問題なく飲める状況にありましたが、同時に「今後内服が難しくなる可能性」についても説明を行いました。
ご夫婦には、「内服薬が飲めなくなった際に備えて皮下点滴を準備しておく」ことを提案しました。腫瘍症例の場合、最後の1週間ほどで内服から皮下点滴への切り替えが必要になるケースが多いため、あらかじめ皮下点滴の方法や薬剤の準備を進めることで、ご家族の不安を軽減することができました。
酸素環境の構築と工夫
胸水貯留による呼吸の負担を軽減するため、酸素発生装置を導入しました。ロイくんのような大型犬では、猫や小型犬のように酸素ハウスを作るのが難しいため、鼻先に酸素を吹きかける方法が採用されました。この方法では、酸素発生装置を2台使用し、風量を増やして効率よく酸素を供給します。
さらに、ご夫婦と相談しながら簡易的な酸素マスクをDIYで作成しました。段ボールを加工してロイくんの顔全体をカバーできるように工夫し、その中に酸素を送り込む仕組みを整えました。酸素環境の効果はすぐに現れ、呼吸が浅かったロイくんも、穏やかに息ができる時間が増えました。
酸素環境を整えることで、ご夫婦は「呼吸が苦しそうになっても対応できる」という安心感を持てるようになり、ロイくんと穏やかな時間を過ごすことができました。
3. 胸水貯留の進行と胸水抜去:ゴールデンレトリバーのケアの工夫
在宅緩和ケアを始めて数週間後、ゴールデンレトリバーのロイくんの胸水貯留が再び目立つようになりました。大型犬では、胸水が溜まると肺が圧迫され、呼吸が浅く速くなる「努力呼吸」の症状が現れます。この時期から胸水抜去を定期的に行うことが、ロイくんの生活の質を維持するための重要なケアとなりました。
胸水抜去のタイミングと頻度
初回の胸水抜去は、往診診療の際に実施しました。この処置では、細い針を胸に刺して溜まった液体を排出します。ロイくんの場合、約300mlの胸水が抜け、直後に呼吸が安定し、顔色も戻るほどの効果が見られました。
大型犬の胸水抜去では、猫や小型犬に比べて体格が大きい分、処置中の安定性が求められます。しかし、ゴールデンレトリバーのような痛みに強い犬種の場合、鎮静処置を行わずに実施できることが多いです。ロイくんも、処置中は大きな動きも見せず、穏やかに対応してくれました。
胸水抜去の頻度は、ロイくんの症状に応じて変化しました。最初は2~3週間に1回程度の頻度でしたが、症状が進行するにつれて週1回、最終的には2~3日に1回の処置が必要となりました。ご家族には「胸水が溜まるタイミングを見逃さないこと」が重要であると説明し、呼吸状態を常に観察するようお願いしました。
胸水抜去をスムーズに行うための工夫
胸水抜去は体への負担を伴うため、ロイくんの状態を確認しながら慎重に進めました。以下の工夫を取り入れることで、負担を軽減しながらケアを続けることができました。
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診療前の準備
酸素発生装置を稼働させ、処置前に十分な酸素を吸入して呼吸を安定させる。 -
ご家族の協力
ご夫婦には、ロイくんがリラックスできる環境を整えていただき、診療中も優しく声をかけてもらいました。 -
負担の少ない処置
胸水抜去の際には、処置時間を短縮し、可能な限りストレスを与えないよう工夫しました。また、処置後には十分な休息時間を確保し、ロイくんの体力を回復させることを重視しました。
胸水抜去は、ゴールデンレトリバーのような大型犬の在宅緩和ケアにおいて重要な役割を果たします。処置が成功するたびに、ロイくんの呼吸が楽になる様子を見たご夫婦は「在宅ケアを選んで本当によかった」と感じたとお話ししていました。
酸素発生装置の設置と工夫
ロイくんには酸素発生装置を2台導入し、十分な酸素供給が可能な環境を作りました。大型犬では、酸素ハウスのような閉じた空間を作ることが難しいため、鼻先に酸素を直接吹きかける方法を採用しました。
さらに、段ボールを加工してロイくんの頭部を覆える簡易的な酸素マスクをDIYで作成しました。このマスク内に酸素を送り込むことで、効率的に酸素濃度を高めることができました。また、ご夫婦には酸素装置の運用方法を丁寧に説明し、酸素濃度をモニタリングしながら調整する方法もお伝えしました。
大型犬に特化した酸素環境の注意点
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風量の確保
大型犬の肺容量に対応するためには、酸素発生装置の風量が重要です。ロイくんの場合、1台では不十分だったため、2台を並行稼働させました。 -
酸素濃度の調整
鼻先に酸素を吹きかける方法では、吹きかける位置や方向によって濃度が変わるため、常に犬の状態を観察しながら適切な濃度を保つ必要があります。
ご家族のサポートで生まれた安心感
酸素環境を整えたことで、ロイくんは息苦しさが軽減し、呼吸が安定する時間が増えました。また、「呼吸が乱れたときにどうすればいいのか」をご夫婦が把握できたことで、不安も和らいだようでした。
「酸素があるだけで、ロイが楽になっているのがわかります。本当に助かりました」と、ご夫婦からもお声をいただきました。大型犬のケアには独自の課題がありますが、酸素環境を整えることでその多くを解決することが可能です。
最期の1週間で必要な準備
ロイくんのような大型犬のターミナル期では、以下の準備が特に重要です。
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スケジュールの調整
「最期の時間を家族全員で見守りたい」というご夫婦の希望を受け、仕事や予定を調整していただき、ロイくんに寄り添う時間を確保してもらいました。 -
皮下点滴への切り替え
内服薬が難しくなったロイくんには、皮下点滴での薬剤投与を開始しました。腫瘍症例の場合、水分補正が不要なことが多いため、少量の輸液剤を希釈液として使用し、負担を最小限に抑えました。この方法により、ロイくんは穏やかな状態を保つことができました。 -
酸素環境の強化
胸水の再貯留が進む中、酸素発生装置の設定を見直し、より効率的に酸素を供給できるよう調整しました。特に呼吸が苦しそうなときには、酸素の吹きかけを強化するようご家族に指導しました。
ご家族の心構えとサポート
ターミナルケアでは、ペットと過ごす時間が限られていることを実感し、ご家族が不安や悲しみに押しつぶされそうになることがあります。そのため、この期間中は以下のようなサポートを行いました。
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事実と感情を分けて考える
「苦しいのはペット自身である」という事実を改めてご家族に共有し、その苦しみを軽減するための行動に専念していただくようにしました。 -
冷静さを保つアドバイス
症状が現れた際には「今の状態で必要な対応」に目を向けてもらい、頓服薬や酸素の使い方など、具体的な対処法を冷静に実践してもらえるよう支援しました。 -
最期の時間を大切に
「最期に何をしてあげたいか」をご家族と話し合い、ロイくんが好きだったおやつやリラックスできるアイテムを用意していただきました。この時間は、ロイくんが安心して過ごせるだけでなく、ご家族にとっても心に残るひとときとなりました。
ターミナルケアで感じたご家族の思い
「最初は不安ばかりでしたが、在宅緩和ケアのおかげで、ロイと最後まで一緒に過ごせたことに感謝しています」と、ご夫婦は話していました。ロイくんが最期まで安心して過ごせる環境を作れたことが、ペットとご家族双方にとって大きな支えになったようです。
6. ロイくんが過ごした最期の時間と在宅緩和ケアの総括
ターミナル期に入り、ロイくんの状態は徐々に穏やかな時間と厳しい時間が交互に訪れるようになりました。それでも、ご夫婦とロイくんが築いた在宅緩和ケアの環境は、最期まで大きな役割を果たしました。
最期の時間を穏やかに迎えるための準備
ロイくんの呼吸が浅くなり、胸水が再び貯留していることが確認されましたが、ご夫婦は無理に胸水抜去を繰り返すのではなく、酸素環境と皮下点滴でのケアを中心に進める選択をされました。この時期、ロイくんの負担を最小限に抑え、ご家族が寄り添える時間を大切にしました。
ロイくんの最期の数日間に行った主なケア:
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酸素供給の強化
呼吸が苦しい時間帯には、酸素発生装置をフル稼働させ、鼻先に酸素を吹きかける方法で呼吸を支えました。 -
頓服薬の使用
必要に応じて、安定剤や鎮痛剤を皮下点滴で投与し、ロイくんが苦しまずに過ごせるよう調整しました。 -
穏やかな環境づくり
ご家族にはロイくんの周りで穏やかに過ごしてもらい、彼が安心できるように優しく声をかけたり、リラックスできる音楽を流したりしていただきました。
2024年12月27日の朝、ロイくんは穏やかな表情のまま、ご夫婦に抱かれながら眠りにつきました。その場には、これまで支え続けてきたご夫婦と、ロイくんが好きだったおもちゃやおやつがそっと置かれていました。
最期の瞬間、ロイくんは大きな苦しみを見せることなく、ただ穏やかに呼吸が止まりました。その姿を見たご夫婦は、「ロイが安心して旅立てたことが何より嬉しいです」と語り、愛犬と最期まで共にいられたことに感謝されていました。
在宅緩和ケアがもたらした安心感
ロイくんが通院ではなく、自宅で最期まで過ごせたことで、ご夫婦は「在宅ケアを選んで本当に良かった」と感じていました。往診による在宅緩和ケアは、犬が慣れ親しんだ環境で過ごせるだけでなく、ご家族がペットとの絆を深める時間を持てる選択肢でもあります。
7. わんにゃん保健室が提供する在宅緩和ケアの特徴
わんにゃん保健室では、通院が難しくなったペットとご家族の負担を軽減するため、在宅緩和ケアを中心とした診療を行っています。特に、大型犬や高齢のペットの緩和ケアには、ご家族とペット双方の心と体に寄り添った対応が欠かせません。
通院が難しい大型犬に特化したケア
ゴールデンレトリバーのような大型犬は、通院が困難になることが多いため、往診による在宅ケアが非常に有効です。以下のような特徴を活かし、診療を提供しています。
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酸素環境の整備
呼吸が苦しいペットには、酸素発生装置や簡易的な酸素マスクを活用し、個々の状況に合わせた酸素供給を行います。特に、大型犬は鼻先への酸素吹きかけが有効であり、機器の運用方法も丁寧にご説明します。 -
胸水抜去や皮下点滴への対応
胸水が貯留した際の抜去や、内服薬が難しくなった場合の皮下点滴の準備・実施も往診で対応可能です。鎮静や鎮痛処置を適切に用いることで、ペットの負担を最小限に抑えます。 -
ご家族の心に寄り添ったアプローチ
診療のたびに、ご家族の希望や心配を丁寧にお伺いし、ペットが穏やかに過ごせるプランを一緒に考えます。最後の瞬間まで後悔のないケアを目指して、サポートを続けます。
東京23区を中心とした往診サービス
わんにゃん保健室では、東京23区を中心に往診サービスを提供しています。通院が難しい状況にあるペットとご家族が、安心して在宅での緩和ケアを受けられるよう、必要なサポートを全てお届けします。
また、初めて往診を利用される方にも安心していただけるよう、診療内容や料金についてのご質問にも丁寧に対応いたします。
大切な家族との時間をサポートします
在宅緩和ケアは、ペットとご家族にとって、穏やかで安心できる選択肢です。通院が難しいと感じたら、無理をせずにご相談ください。わんにゃん保健室は、最後の時間まで寄り添い、ペットとご家族の絆を守るお手伝いをいたします。
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ペットが安心して過ごせる在宅ケアを一緒に考えていきましょう。
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