2021年12月01日 リライト
『猫は腎臓病(腎不全)になりやすい』
猫ちゃんの多くは、高齢期、特に10歳以上になると腎臓の機能が下がってくるのか、血液検査で腎不全を示唆する所見を高確率で認めています。
このことは、愛猫ちゃんと一緒に暮らしているご家族様の多くがご存知だと思います。
高齢の猫ちゃんの3頭に1頭くらいの割合で、腎不全を患っているようです。
往診しているご家族様の中にも、愛猫の腎不全と向き合いながら、みんなで協力して自宅介護をなさっているご家族様が多くいらっしゃいます。
最近は、長寿の猫ちゃんが増えており、高齢になった愛猫の通院の負担をなくすために往診を選択されるご家族様も増えてきています。
往診で長く診察している猫ちゃんで、腎不全のために月1回の血液検査、内服薬は2種類で1日1回のものと2回のものをシロップにして投薬、皮下点滴は2日に1回のペースでご家族様が自宅で行っており、大好きなお家の中でご家族とゆったりとした幸せな時間を過ごす、今年19歳を迎えるシニア猫さんもいます。
本日は、腎不全とはどういう病気であり、どういう症状が現れ、どういう治療が必要になるのかお話しさせていただきます。
猫の腎臓病(腎不全)
腎臓の働き
腎臓は、体の中の老廃物を尿として排泄するという働きを持っています。
その過程で、体内の水分量やミネラルバランスも調整してくれています。
また、赤血球を造るために必要なホルモンも分泌しています。
もう少し深く話すと、腎臓の機能って大きく3つに分けることができます。
1. 濾過
体にとって不必要なものを尿として排泄させるための機能です。
2. 再吸収
濾過したものの、必要なものは再吸収させることで、多量に摂取しなくても体を維持できるために働く機能です。
水分などは、この機能があるから脱水を回避できています。
3. 分泌
血液を産生するには、エリスロポイエチンというホルモンが必要です。
このホルモンを分泌しているのが、腎臓です。
このホルモンが骨髄に作用して、赤血球産生を促しています。
高齢猫がなりやすいといわれている腎臓病(腎不全)は、『慢性腎臓病(腎不全)』と呼ばれるもので、長い時間をかけて腎機能が低下し、さまざまな症状をあらわす病気です。
進行は比較的ゆっくりですが、完治することのない病気なので、上手く病気と向き合っていく必要があります。
腎臓病(腎不全)の症状
腎機能が低下すると、排泄すべき老廃物が体内に蓄積することで『尿毒症』を引き起こし、元気や食欲がなくなり、嘔吐も見られるようになります。
水分量やミネラルの調整が上手くいかないことで脱水状態に陥り、赤血球が少なくなることで貧血にもなってしまいます。
この状態を「腎性貧血」と呼びます。
腎性貧血が発症した場合には、週1回の増血剤の注射を行いっていきます。
期間は10週間程度であり、安定してきたら、2週に1回などと頻度を下げていきます。
状態が悪くなる前には前兆が見られることが多いです。
高齢猫と一緒に暮らすご家族は、以下のような症状がないか観察し、症状が見られた際には動物病院の獣医師にご相談してみてください。
・水を飲む量が増えた
・おしっこの回数が増えた
・おしっこの色が薄くなった
・食欲が落ちた
・便秘がちである
・嘔吐する回数が増えた
・歯ぐきや肉球の色が薄くなった
腎臓病(腎不全)の診断、検査
往診では、以下の検査を実施し、総合的に診断します。また、多くの猫ちゃんが押さえられるのが苦手です。
しかし、検査をするためには、ある程度押さえてじっとしていなければいけません。
興奮により呼吸が荒くなることが予想されることから、当院では検査の時は必ず酸素ボンベを持ち込ませていただいています。
酸素を嗅がせながら検査をしてあげることで、呼吸状態も考慮た、より安全に検査を受けていただけます。
①血液検査
往診の血液検査で最も大切なことは、1回の検査でより多くのデータを取ることです。
もちろん、その検査自体に負担がある場合には、猫ちゃんの状態や性格に合わせて、都度相談しながら行っていきます。
何度も針を刺して、追加項目が必要だから、と後から血液を取り直すことを避けるため、当院では高齢猫ちゃんの血液検査項目として総合的に評価しています。
そのため、1回の採血で必要なデータを揃えることができるため、高齢で体力が下がってしまった猫ちゃんにとって、より負担なく行うことができます。
②超音波検査
超音波検査では、腎臓の血流や大きさ、左右差などを評価していきます。
③尿検査
猫ちゃんの尿は、基本的に濃いです。しかし、腎不全になると尿は薄くなり、また、状況次第ではタンパクが漏出していきます。
高齢猫ちゃんの腎不全を疑った検査では、尿一般検査に加えUPCとUACを測定することで、こちらも1度で今の状態を把握することができます。
上記の方法により、日本獣医泌尿器学会(IRIS)が定めるガイドラインに則って評価し、治療プランを決めていきます。
腎臓病(腎不全)の治療
腎臓病(腎不全)の治療の目的は、低下した腎機能を取り戻すことではなく、残っている腎機能を温存することと、腎機能低下による症状を緩和することです。
愛猫が慢性腎臓病(腎不全)になってしまった場合には、生涯向き合い続けなければいけない病気であるという認識を持つ必要があります。
①食事療法
塩分やタンパク質、リンを多く含む食事は、腎臓に負担をかけるため、猫ちゃんが嫌がらずに食べてくれるようであれば、腎臓へのサポートに特化した食事に変更します。
②薬による内科的療法
高血圧に対して血圧を下げる薬、嘔吐に対して吐き気を止める薬、食欲低下に対して食欲増進剤など、症状に応じて薬の内服による治療を行います。錠剤だけでなく、猫ちゃん専用のシロップ剤もあります。
③皮下点滴
腎臓病(腎不全)の治療で特に大事になることが、”脱水状態にさせないこと“です。腎機能が低下している分、腎臓はたくさん尿を作ることで老廃物を排泄しようとします。そのため、飲水だけでは水分量が足りずに脱水してしまう時には、皮下点滴によって足りない水分を補います。
猫の慢性腎臓病(腎不全)との向き合い方
猫の慢性腎臓病(腎不全)は、生涯向き合い続けなければならない疾患です。
定期的な診察および検査を行った上での治療が欠かせません。時には毎日や数日に1度の皮下点滴が必要となることもあります。
愛猫の病気との向き合い方でまずご家族様を悩ませるポイントは、『動物病院への通院』ではないでしょうか。
キャリーに入らない、キャリーに入れるとずっと鳴いている、病院で暴れてしまう、病院に行くと余計体調を崩す、このような悩みを持つご家族様はたくさんいらっしゃいます。
高齢になった愛猫に負担をかけての通院を望まれない方も多くいらっしゃいます。
通院では、病院までの移動時間、そして検査前の待ち時間、検査中、検査後の待ち時間、家までの移動時間、このすべての時間に猫ちゃんは緊張しストレスを感じてしまいます。
往診では、検査中だけ頑張ってもらえれば、検査が終わればすぐに安心できるいつもの居場所で落ち着くことが出来ます。
高齢猫の通院にお困りのご家族様、ご自宅で出来る限りのケアをしてあげたいご家族様、通院が出来ないことで治療を諦めてしまう前にぜひ一度当院にご相談ください。
往診専門動物病院わんにゃん保健室では、往診獣医師が皆様のご自宅に往診し、ペットの病状だけでなく性格や生活環境、ご家族様の暮らしも考慮したうえで、オーダーメイドの治療法をご提案させていただきます。
ご家族様と愛するペット双方にとって幸せな生活の形をご一緒に考えます。必要に応じて、皮下点滴や強制給餌など、ご家族様で出来る在宅介護の方法も丁寧にお教えいたします。
ご予約フォームはこちらです。
10時から19時の診療時間内に完全予約制で往診に伺いますので、まずは一度ご予約のご連絡をお願いいたします。
当日のご連絡でも、予約状況に応じてお伺いできることもありますので、ご遠慮なくご連絡ください。
猫ちゃんの腎不全でお悩みの場合には…
以下のブログや特設ページも参考にしてみてください^^
在宅切替を検討中のご家族様へ(東京犬猫往診/往診専門動物病院)
急に食べなくなってしまった(猫/腎不全/口内炎/東京中央区)
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