こんにちは!
往診専門動物病院わんにゃん保健室 往診獣医師の江本宏平です。
緊急事態宣言が発動されてから2週間が経ち、動物病院に通院できないで困っている犬猫からの体調不良に伴う緊急往診が急激に増えてきています。
現在、緊急事態宣言に伴い、当院としても可能な限り暴露及び伝播を回避できるように日々取り組んでおります。
また、緊急事態宣言中は基本的にワクチン接種のみや爪切りなどの日常ケアのみのご依頼は、緊急事態宣言後に延期させていただくことがありますので、ご了承ください。
ちなみに、フィラリア感染症予防シーズンが始まっていますが、これはワクチンとは違い、緊急事態宣言中でもフィラリア検査をすることをお勧めします。理由は単純で、蚊に緊急事態宣言は通用しないからです。
本日は、フィラリア予防について簡単なお話をするのと併せて、昨今流行して話題になっているコロナウイルスに関してのお話です。
来年のオリンピックもどうなるか、と言われていますが、今回はそんなコロナウイルスを獣医師の観点からお話しようと思います。
フィラリア予防の流れ
フィラリアは蚊が媒介する病気で、蚊が飛び出したらフィラリア予防として飲み薬や背中に垂らすタイプの薬などを始め、蚊が飛び終わったのを確認してからもう1回投与してあげます。
全ての蚊が媒介するわけではありませんが、ここでは細かいお話を割愛し、蚊が飛んでていあた感染するかもと考えましょう。
・家から出さないから大丈夫
・うちは高層マンションなので大丈夫
・今まで予防していなかったけどフィラリア感染しなかったので大丈夫
など、フィラリア予防をされない飼い主様は実際のところかなりの数います。
しかし、もしフィラリアを保有する蚊に吸血され感染してしまった場合に、心臓に寄生してしまい、最悪急なお別れとなってしまいます。
フィラリア予防をする時は、まずは今現在フィラリアに感染していないかの検査を行います。
検査方法は採血をしての血液検査(検査方法についてはまた今度お話しします)。
フィラリア感染が陰性だった場合に、安心してフィラリア予防薬の投薬を開始していただけます。
投薬プランは大きく2パターンあり、1つ目は5月〜12月までの計8ヶ月投薬するプランです。これを、当院ではシーズン投与と呼んでいます。
シーズン投与のメリットは8回で済むので費用面としてはいいですが、デメリットとしては投薬していない期間(1・2・3・4月)に、万が一暖かい日が継続したために蚊が飛んでいた場合にはフィラリア感染を起こしてしまうということです。
せっかくフィラリア予防していたにもかかわらず、4月・5月のフィラリア検査でフィラリア陽性!なんてこともあり得るということです。
そのため、当院ではシーズン投与ではなく、もう一方の方法をお勧めしています。
それは、休薬月なしの通年投与です。
通年投与では、休薬期間がないため、万が一暖冬で蚊が飛んでいても、安心してお散歩できます。
また、内服やスポイトでのフィラリア予防薬の特性として必ず覚えておいていただきたいことは、飲んだ時に体内にいたフィラリアを叩くだけであり、1ヶ月間ずっと効果を締めひているわけではあないということです。
つまり、飲んだ翌日には、もしかしたら蚊に刺されてフィラリアが体内に入ってきているかもしれません。
しかし、しっかりと定期的に予防薬を飲んでいれば、基本的には心臓に寄生する前に駆除できますので、飲み忘れに注意して、安心なペットライフを送りましょう。
コロナウイルス感染症(犬・猫)
次に、コロナウイルス感染症についてです。
今流行っているCOVID-19はコロナウイルス属ベータコロナウイルス科に属しており、報道されている通り、発熱や倦怠感、咳や筋肉痛、重症化すると肺炎を引き起こします。
感染は、ウイルス保持者の咳やくしゃみなどによる飛沫感染が主と言われています。
もちろんその飛沫がどこかに付着し、それを触ってものを食べたりすることでも感染することがあります。
しかし、ウイルス自体は強いわけではないので、アルコールで死滅すると言われており、世間ではアルコール消毒関係のものが品薄になってしまっていますね。
そこでよく私たち獣医関係者が聞かれるのは、動物にはうつらないのか?ということです。もちろん動物にもコロナウイルスによって引き起こされる感染症はありますが、COVID19に関しては、海外の報告で感染を認めているものの症状を示さないということであり、ペットから人への感染については、現段階では認めていません。
しかし、コロナウイルスもウイルスなので、インフルエンザウイルスのようにどんどん遺伝子変異が起こる可能性があり、遺伝子変異が起こると感染する可能性もあるかと思います。
現に、ニュース番組では、すでに変異株が現れていると耳にしています。また、動物の毛などに感染者の飛沫が飛んで、それを別の人が触って感染するなどといったことは起こるかもしれません。
今後の遺伝子変異などには注意が必要かもしれません。
では動物にかかるコロナウイルスはどういったものなのでしょうか?犬では犬コロナウイルス、猫では猫コロナウイルスがそれぞれ種特異的、つまり犬コロナウイルスは犬にのみ、猫コロナウイルスは猫にのみ感染します。
犬コロナウイルス感染症、猫コロナウイルス感染症はCOVID19の症状、つまり新型コロナウイルス感染症の症状と異なるのでしょうか?答えはイエスです。犬コロナウイルス感染症や猫コロナウイルス感染症は主に胃腸炎を引き起こし、消化器症状が主になります。
それでは、犬コロナウイルス感染症、猫コロナウイルス感染症について、それぞれご説明していきます。
まず、犬コロナウイルス感染症は多くは免疫力の低い子犬で問題となります。
症状としては、嘔吐や下痢、血便、発熱などが見られ、それにより衰弱して命に関わることもあります。
治療としては、犬コロナウイルス感染症に対する特効薬というのはなく、対症療法を行い、体力回復とともにその子の免疫力をアップすることとなります。
猫コロナウイルス感染症に関しても、多くは免疫力が低い子猫で起こります。
お外で生まれた子猫ちゃんに関しては約80%の猫ちゃんたちがかかったことがあると言われているぐらい、多くの猫ちゃんが罹患しています。
子猫の時に出てくる症状としては多くは犬コロナウイルス感染症と同様、胃腸炎の症状です。嘔吐や下痢、それに伴い食欲不振になり、体力が落ちていってしまい、命に関わることもあります。
治療に関しても、犬コロナウイルス感染症同様、点滴や抗生物質の注射など、対症療法を行い、体力回復と免疫力アップに期待します。
犬コロナウイルス感染症、猫コロナウイルス感染症ともに、免疫力が上がり、体力が回復すると、体に抗体ができるので、次第に症状もなくなっていきます。
しかし、猫コロナウイルス感染症で気をつけなければならないのが、通常の猫コロナウイルスの変異型である猫伝染性腹膜炎ウイルスによる、猫伝染性腹膜炎ウイルス感染症です。
猫伝染性腹膜炎ウイルス感染症とは、猫コロナウイルスよりもはるかに致死率が高く、ほとんどの場合で回復は難しいと言われており、治療法も確立されていません。
では、猫伝染性腹膜炎とはどういった感染症なのでしょうか?
猫伝染性腹膜炎とは、猫コロナウイルスの変異型によって引き起こされる感染症で、病態によってドライ型とウェット型に分けられます。
ドライ型とは、お腹の中のリンパ節が腫れたり、嘔吐や下痢などの消化器症状が出てきたりして、数日のうちに急激に状態が落ちてしまいます。
一方ウェット型とは、お腹や胸の中に腹水や胸水がたまってしまう病態で、腹水の場合はすぐに命に関わることはありませんが、胸水は肺を圧迫してしまうため、呼吸が苦しくなってしまいます。
そのため、胸水がたまっている場合には、速やかな処置が必要になりますが、すぐにまた溜まってしまうので、かなり厳しい状態となってしまいます。
しかし、この猫伝染性腹膜炎にも治療法はありませんので、対症療法を行なっていくほかありません。
往診専門動物病院では、ご自宅で最後の時間を出来る限りその子らしく過ごさせてあげたいという飼い主様から多くのご予約を受けており、通常の動物病院よりも猫伝染性腹膜炎の子猫と出会う機会が多くあります。
治療法は確立していなく、治る見込みは正直ないと言っても過言ではありません。しかし、そうだとしても楽にしてあげることはできます。
子猫を向かい入れて、万が一、猫伝染性腹膜炎を発症してしまった場合には、ご自宅で何が出来るのか、どんな最後を過ごせるのかなど、飼い主様と詳しく相談した上で診療プランを組んでいきますので、お一人で悩まずに、まずはご連絡ください。
このように、動物でもコロナウイルスによる感染症がありますが、現在人で流行しているコロナウイルスとは症状が異なります。
しかし、香港やベルギーでは犬や猫などのお家の動物たちから、またアジアではトラからCOVID-19が検出されたと言われており、いつ動物たちを介して人に感染するようになるか分からない状態であるのも事実です。
現状では、3密を避けて、東京都や周辺の県、大阪府を超えて全国で緊急事態宣言も出ています。
しかしこういった外出自粛の時に、お家のわんちゃん猫ちゃんに体調の変化が出てしまうこともあるかと思います。
そういった場合には、お家を出ずに、お家を診察室として使わせて頂く、往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡ください。
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