こんにちは!
最近暑くなってきましたね。
往診専門動物病院わんにゃん保健室では、高齢の犬猫(老犬・老猫)で持病を抱えている子たちと出会うことが多いため、病気の話だけではなく、ペットの生活環境を含めたアドバイスをすることが多々あります。
例えば、夏の時期です。
この季節になると気をつけていても、わんちゃんでは熱中症になることがあります。わんちゃんは私たち人間よりも体高が低いため、地面からの熱も受けやすく、また全身が家に覆われており汗を出す汗腺もほとんど持っていないため、熱が体にこもって熱中症になりやすいのです。
今回は、そんな熱中症になってしまった高齢犬のお話です。
症例は、東京都江東区在住の10歳のチワワのコロちゃんです。
コロちゃんは、お散歩が大好きなわんちゃんです。
お昼過ぎにほんの少しだけお外をお散歩したところ、そこからハアハアと息苦しそうな様子が止まらず、身体も熱いとのことでお電話を頂きました。
その日はとても暑く、外気温も30度近くあったことから、熱中症が疑われたので、まずはお部屋を涼しくしていただき、すぐに往診させて頂くこととしました。
往診専門動物病院わんにゃん保健室では、獣医師が緊急度が高くないと判断した場合には後日の予約になってしまうこともありますが、緊急性が高いと判断した場合はお電話当日、そして出来るだけお電話を頂いてすぐに向かわせて頂くようにしています。
コロちゃんも同様で、緊急性がかなり高いと判断されましたので、すぐに向かわせて頂きました。
お家に到着すると、コロちゃんはハアハアと息苦しそうな様子で、横になっていました。
熱中症であれば、すぐに身体を冷やす処置を行わなければならないので、まずは身体検査を行いました。
体温は40度、呼吸音や心音に異常はなく、腹痛や他の部位の痛みもない様子で、稟告からお散歩後からの症状ということで、熱中症と判断し、すぐに身体を冷やしていきました。
脇の下、首や股の間にタオルで巻いた保冷剤をいれて、サーキュレーターにて冷風を送り、体温を下げると同時に点滴も開始しました。
そうしていると、コロちゃんはおしっこをしましたが、おしっこの色が茶色〜黒っぽい血尿で、熱中症による溶血が考えられました。
その後、少しして体温を測ると39.5度まで下がっており、コロちゃんも少しだけ楽になったような顔つきでしたので、その時点で採血を行いました。
コロちゃんの様子を見つつ、ご家族様に詳しくお話しをお伺いすることにしました。
ご家族様は普段から熱中症には気をつけて下さっていたようなのですが、その日は少しだけお外に用事があり、コロちゃんが一緒に行きたいと鳴いていたため、少しだけだしということで一緒に連れて行ったそうです。
お外は暑く、早く帰らなければと思い、15分ほどで帰って来られたそうですが、帰宅後もコロちゃんはハアハアと暑そうな様子で、お外が暑かったからかと様子を見ていたそうですが、次第に元気が無くなってしまい、心配になって往診専門動物病院わんにゃん保健室へご連絡を頂いたとのことでした。
ここで熱中症について少しご説明します。
熱中症とは、身体に熱がこもってしまい、体温が異常に高くなってしまうことで起こる症状です。冒頭でもお話ししたように、わんちゃん、特にチワワやフレンチブルドッグ、シーズーやペキニーズなどの短頭種や大型犬では身体に熱がこもりやすく熱中症を起こしやすいです。
熱中症になってしまうと、普段の体温よりもかなり高いため、高熱によって身体の様々な細胞が障害を受けて死んでしまいます。
その結果、高熱が続いてしまうと、全身の臓器の細胞に障害が起き、多臓器不全によって死に至る怖い症状です。
そのため、少しでも細胞に起きる障害を減らすために、出来るだけ早く体温を元に戻してあげる必要があります。
また、その間に、身体は脱水しているため点滴を行うことも必須です。
そして、どこまで臓器に影響が出ているかを見るために血液検査も実施します。
今回のコロちゃんも同様に出来るだけ早く体温を下げるために冷却処置を行いながら点滴も実施して、細胞への障害を減らすことにつとめました。
その結果、しばらくしてコロちゃんはだいぶハアハアすることもおさまり、落ち着いてきたので、お家にて少し様子を見て頂くこととして、夜にもう一度お伺いするとし、その時点での診察は一旦終了としました。点滴は夜までは引き続き実施して頂き、コロちゃんが外してしまわないように気をつけて頂きました。
夜にお伺いするまでの間に血液検査を実施すると、肝臓の数値が少し上がり、黄疸が出ていました。
これはおそらく熱により赤血球が壊れる、溶血によるものだと考えられました。
しかし、その時点での赤血球の数値は正常値だったので、何とか貧血が進まないことを祈るばかりです。
夜になり、もう一度コロちゃんのお家にお伺いさせていただきました。
コロちゃんは日中よりも呼吸はだいぶ落ち着き、顔も穏やかでした。
体温を測ると、38.5度と平熱まで下がっており、舌な色も悪くはありませんでした。
夕方に一度おしっこが出たそうですが、色は少しましになってはいたそうですが、まだ茶色っぽい色だったようです。
しかし、それ以外には出血傾向も貧血の様子もなかったため、明日の朝まで経過観察としました。
コロちゃん自身は体調が戻ってきたのか立ち上がろうとしており、ご飯を少しあげるとよく食べていました。そのため、ふやかしたご飯をあげてもらうようにお伝えし、点滴を皮下点滴に変えて、夜はお部屋にエアコンをつけて自由に歩きまわれるようにしてもらいました。
血液検査の結果をご家族様にご説明すると、少し安心されており、本当に良かったとのことで私たちもコロちゃんの様子を見て安心しました。
次の日にはかなり回復していて、貧血の数値や内臓の数値の再検査と点滴のみで大丈夫な様子でした。
このように、ちょっとしたお散歩で致命的な症状を引き起こしてしまうのが熱中症です。
これからの時期、特に気をつけていかなければなりません。
もし怪しいな、息遣いが荒いなと感じた場合、往診専門動物病院わんにゃん保健室までご相談ください。
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