こんにちは!
往診専門動物病院わんにゃん保健室 獣医師の江本宏平です。
往診専門獣医師として診療を行う中で、つい最近までは動物病院に通院できていたが、できなくなってしまったという話をよくお伺いします。
その中の1つである、胸水が溜まってしまった猫ちゃんのお話を書きました。
呼吸が苦しそう、食欲がない、食欲が下がってきた、元気がない、ぐったりしている、よだれを垂らすなど、普段と明らかに違う症状を示していた場合には、待たずに獣医師の判断を仰ぎましょう。
そもそも胸水とは??
胸水というのは、胸に溜まった水のことで、成分は様々です。
成分によって、原因がわかることもありますが、ほとんどはどういった病気が考えられるか大まかに分類できます。
胸に水が溜まることで、肺がうまく広がるスペースがなくなってしまい、呼吸がし辛くなってしまいます。
そうすると、身体が酸欠状態になってしまい、命に関わってきます。
そのため、基本的には胸水は抜くことが第1になってきますが、原因によってはまたすぐに溜まってしまいます。
そのため、抜くことで治る、というよりは楽にするために抜く、というイメージです。
そして原因を調べて、それに沿った治療を行なっていきます。
今回お話しするのは、胸水がたまってしまい息が苦しくなってしまった高齢猫ちゃんです。
東京台東区在住の13歳の高齢猫のタロウちゃんです。
かかりつけの動物病院さんで何度も胸水を抜いてもらっていたけれど、治らない病気のためお家で過ごさせてあげたい、とのことで、往診をご希望されました。
おそらく胸水がたまっていることが予想されましたので、その日の午後にお伺いさせて頂くこととし、それまでに酸素ハウスのレンタルを行なって頂くことにしました。
東京にお住まいであれば、以下の酸素レンタル業者を抑えておきましょう。
タロウちゃんのお家に到着すると、タロウちゃんは部屋の隅でやや早い呼吸をしていましたが、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室のスタッフを見るとそそくさと別の部屋に行ってしまいました。
かなり敏感な猫ちゃんとのことでしたので、先にお話しをお伺いすることにしました。
猫のタロウちゃんは小さい頃から赤血球がすごく多く、調べてみると、心臓に先天的に異常があるとのことでした。
特に治療をせず経過をみていたところ、徐々に悪化していき、1ヶ月ほど前に口を開けて呼吸をしていたためかかりつけの動物病院さんに行ったところ、胸水が溜まっていて、おそらく心臓が原因の胸水とのことで、胸水を抜いてもらったそうです。
しかし、タロウちゃんはかなり敏感な猫ちゃんなので、胸水を抜くときには鎮静をかけなければ動いてしまい逆に危険なため、胸水抜去時には毎回鎮静をかける必要があるとのことでした。
胸水を抜いた後はタロウちゃんもかなり楽そうになっていたため、ご家族様も安心して、楽になるなら、治る病気ではなくても、毎回抜いてあげたい、とのことで、その後数回動物病院に通ったそうです。
ところが、最近になってタロウちゃんがお母さんを避けてしまうようになり、おそらく動物病院に連れて行かれるというストレスからそういう状態になっていることが予測され、タロウちゃんが楽になるなら、と続けられていましたが、そんなにストレスなら病院に行かずにお家で過ごさせてあげたい、という思いで私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室にお電話を頂いたそうです。
たしかに、敏感な猫ちゃんたちは、その子自身のためであっても、動物病院に連れて行ったりお薬を飲ませる人を避けたり攻撃したりするようになることがあります。
その子のためを思っての行動が逆にストレスになってしまうことがあるので、そういう場合には、往診専門動物病院わんにゃん保健室では、往診させて頂き、私たちで処置や投薬をさせて頂くこともあります。
無理のないように続けていけることが1番大切なので、そういった変化があった場合にはお気軽にご相談下さい。
タロウちゃんはここ1週間ほど胸水を抜いていないため、最近はかなり辛そうで食欲も落ちているとのことでした。
しかし、胸水を抜くことはもうしたくないとのご希望でしたので、何とか内科的に治療を進めて、ストレスが少しでも少なくなるように、と治療方針を考えさせていただきました。
いつも少し楽になると食欲が出るそうなので、利尿剤を内服で飲んでもらい、少し食べられるようになるまでは注射でお薬を入れていくこととしました。
ただ、呼吸のことなので、興奮したりすると急変する可能性もあるため、興奮しないように素早く処置を終えられるように気をつけました。
タロウちゃんのいるお部屋に行くと、少し怒っていましたが、やはりしんどさからか元気はなく、タオルにくるんで胸水の貯留量を超音波で確認し、素早く注射をしてすぐに解放してあげました。
胸水の貯留量はかなり多く、息苦しさがかなりあるかと予測されましたが、注射をするのはほとんど興奮することなく行うことができました。やはりお家で行うと落ち着いてくれる子が多いですね。
その後5日間治療を続けましたが、胸水の量は横ばいで、やはりタロウちゃんの食欲はなく、ごく少量の皮下点滴も行っていきましたが、10日後に残念ながらタロウちゃんは酸素室の中で、虹の橋を渡ってしまいました。
最期は苦しむことはなく、穏やかな表情で迎えることができたそうで、私たちも最期が苦しいものでなくてよかったと安心しました。
どんな動物たちも最期が来ますが、最期をどのように迎えるかはとても大切で、最期をその子らしく迎えることができるのが1番良いと私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室では考えています。
動物病院での治療は興奮しすぎて出来ない、連れていくことが難しい、病気の末期でお家で最期を迎えさせたい、など様々なご相談を往診専門動物病院わんにゃん保健室ではいつでもお受けしております。
お気軽にご連絡ください。
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