こんにちは!
今日はウイルス疾患とたたかっている猫ちゃんのお話です。
猫ちゃんのウイルス疾患はたくさんの種類がありますが、ヘルペスウイルスやカリシウイルス、猫エイズウイルス、猫白血病ウイルス、コロナウイルスなどなど他にもたくさんあります。
そんなウイルス疾患の中でも、獣医療で怖いと言われているのが猫伝染性腹膜炎ウイルスです。
猫伝染性腹膜炎ウイルスというのは、猫コロナウイルスが変異したもので、現在根本的な治療法はないと言われています。
通常、猫コロナウイルスには外猫の場合はほとんどの猫ちゃんがかかったことがあり、80%以上の確率で身体に持ち続けていると言われています。
主に胃腸炎を引き起こしますが、主症状を乗り切れば死に至ることはありません。
しかし、身体に持ち続けているウイルスが何らかの影響で、ウイルスの遺伝子が突然変異を起こしてしまうことがあり、突然変異が起こると、猫伝染性腹膜炎を引き起こす、猫伝染性腹膜炎ウイルスとなってしまいます。
そのため、猫伝染性腹膜炎はほとんどの猫ちゃんで起こる確率はあるものの、未だに治療法が確立されていない怖い感染症と言えます。
今回は、そんな猫伝染性腹膜炎と戦っている猫ちゃんのお話です。
症例は東京千代田区在住の3歳の猫ちゃんのにぁあちゃんです。
往診専門動物病院わんにゃん保健室では、東京台東区と東京中央区にメインオフィスを構えて、日々往診先に訪問しています。もちろん、今回のケースのように、東京千代田区などをはじめ、東京足立区などを幅広いところから依頼を受けた場合にも時間調整の上ご訪問させていただいています。
今回にゃあちゃんの場合は、お母さんからのお電話で「猫ちゃんが徐々に食欲がなくなってきて、元気がない」とのことで、往診をご希望されました。
猫ちゃんはご飯を食べないとすぐに脱水してしまうことがあるので、緊急性を感じ、お電話当日に往診させて頂くこととしました。
お家にお伺いすると、にゃあちゃんは横になっていて、ご家族様曰く、普段であれば知らない人が入ってくるとすぐに隠れてしまうとのことでしたが、今日は全く動かないのを見ると本当に元気がない様子でした。
まずは詳しくお話をお伺いすることとしました。
にゃあちゃんは普段から食欲にムラがあり、よく食べる日もあるかと思えば缶詰しか食べないような日もあり、最初はいつもの食欲のムラだと思われていたそうなのですが、徐々に痩せて来て、食べなくなって来て、元気もなくなって来てしまったそうです。
また、最近、にゃあちゃんの兄弟猫が猫伝染性腹膜炎で亡くなったとのことで、ご家族様も猫伝染性腹膜炎の心配をされていらっしゃいました。
若い猫ちゃんの元気食欲がなくなってしまう時は、やはり可能性としては感染症を一番最初に考えていかなければなりません。
また、兄弟猫が猫伝染性腹膜炎になったとのことから、にゃあちゃんもコロナウイルスはもっていて、それがいつ突然変異してもおかしくはない状況であることを考えると猫伝染性腹膜炎の可能性も否定はできません。
しかし、現状では、血液検査だけでの診断は正確性に欠けるため、腹水や胸水が貯留してきたら、それを採取して検査をするというのが最も診断率が高いと言われています。
あるいは、お腹のリンパ節が腫れてきた場合には、リンパ節をとって検査をするという方法もありますが、体力が落ちている中で、侵襲性が高いため、あまりオススメはできません。
とはいえ、他の疾患の可能性も考えて、できる限りの検査をご提案させて頂いたところ、ご同意を頂きましたので、行なっていくことにしました。
まずは身体検査です。
身体検査では、わずかに耳が黄色くなってきていて、黄疸所見が認められました。
また、身体は軽度に脱水していて、点滴が必要と考えられました。
その後は採血です。
にゃあちゃんは少し抵抗していましたが、タオルで巻いて、お母さんに頭を撫でてもらうとお利口さんにやらせてくれました。
その後は超音波検査にて、臓器の異常所見はないか、腹水はないか、リンパ節の腫れはないかを確認していきました。
では、ここで、猫伝染性腹膜炎の2つのタイプをお話させていただきます。
猫伝染性腹膜炎には、ドライタイプとウェットタイプという2タイプがあり、多くの猫ちゃんはウェットタイプになると言われています。
ドライタイプとは、胸水や腹水はたまりませんが、お腹のリンパ節が大きくなったり、ウイルスによって他の内臓に障害がでたりして、それに伴った症状が出てきます。
一方、ウェットタイプは胸水や腹水が貯留して、胸水が溜まった場合には呼吸が苦しくなってしまったり、ドライタイプ同様ほかの臓器に障害がでて、それに伴った症状が見られます。
しかし、これらの症状が出ていても、根本的な治療法は確立されていないため、対症療法を行なっていきますが、この感染症はかなり進行が早く、早ければ2週間ほどで命を落としてしまうこともあります。
今回、にゃあちゃんは超音波検査を行ったところ、腹水貯留が確認されました。
診断をするためには腹水を抜去して、検査を行う必要がありますが、ご家族様としては、診断ができても根本的な治療法がなく対症療法を行うことになるため、検査をしないという方向をご希望されました。
それも一つの正解だと思います。
針を刺して検査をして、陽性だったとしても、この疾患に関しては対症療法をして、免疫力を少しでも高められるようにするしかありません。
しかし、今回は臨床所見から、猫伝染性腹膜炎の可能性がかなり高いことから、点滴や抗生剤、ステロイド剤といった対症療法を行い、続けていくこととしました。
この日は点滴とステロイド剤の注射、胃薬などの対症療法を行い、次の日にもう一度お伺いすることとしました。
血液検査では、白血球の上昇が見られ、肝臓や腎臓の数値も上がってきており、年齢的にも、背景的にも、猫伝染性腹膜炎の可能性が高いと感じられました。このことを飼い主様にご説明したところ、せめて辛くないように、しんどくないように過ごさせてあげたいとのことで、対症療法を続けており、すごくよく頑張ってくれていましたが、3週間ほどで虹の橋を渡ってしまいました。
しかし、最期までにゃあちゃんは頑張ってくれていて、ご家族様との時間を大切にしていました。
また、ご家族様もそれに応えるように、できるだけにゃあちゃんと一緒に過ごすようにされていました。
今回のように、経過がかなりはやい感染症もありますが、それでも最期の時間をどう過ごすかは、動物たちにとっても、ご家族様にとっても、すごく大切です。
それが少しでも良いものになるように、私たち往診専門動物病院わんにゃん保健室は日々往診をさせて頂いております。
慢性疾患の末期から、急性疾患の急性期まで様々な疾患に対応させて頂いております。
往診専門動物病院わんにゃん保健室までお気軽にご相談ください。
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