がん(悪性腫瘍)とは、近い将来のお別れを意味する病気であると言っても、決して過言ではないです。
がんに対する治療には、抗がん剤を用いた化学療法や腫瘍外科、放射線治療など、犬猫でも人と同じように医療を受けることができる時代になってきています。
がん(悪性腫瘍)と診断された時、
時間が一瞬止まり
頭の中は真っ白になり
そこで説明された内容なんて頭に入ってくるはずがないくらい取り乱すものです。
少し時間が経ち、頭の中が冷静に戻ると、きっと涙が溢れてくることと思います。
その反応は当然であり、大切な家族とのお別れが近いと感じて感情的になるのが普通です。
この日から、がんの闘病生活が開始します。
がんと診断されるきっかけとなる症状は多岐に渡ります。
・最近食欲が下がってきた
・吐く頻度が高くなった
・吐いたものが胃液(白っぽい)なんだけど、黄色っぽいものをよく吐くようになった
・軟便になった
・黒っぽい下痢で臭いが普段と違う
・痩せてきた
・呼吸が荒い(呼吸が早い、呼吸促迫)
・ふらつく など
単なる一過性の症状なのか、それとも治療を必要とする病気なのか、またはもう治療を考えるには手遅れな状態まで進行した病気による症状なのかなど、一概に断片的な情報だけでは判断できないのが犬猫の病気です。
私たち人間とは違い、飼い主である人間に言葉で伝えることができません。そのため、愛犬・愛猫からのSOSのサインを見逃してしまうことは多々ありますし、きっとご家族様に迷惑をかけたくないという、ペットからの強い心遣いなのかもしれません。
がん治療を開始すると、直面する反応として状態良化であればいいのですが、多くの場合がご飯を食べなくなってしまった、元気がない、などのネガティブなフィードバックだと思います。
状態が良化しているのであれば、そのまま続けることがおすすめです。寛解を目指して、担当獣医師、ご家族様、愛犬・愛猫の三者一丸となって突き進みましょう!
結果良好でずっと進めているのであれば、全部が全部そのまま進めるわけではありません。
・今回の注射(抗がん剤)を打ってから食欲がなくなってしまった
・帰宅後からぐったりしてしまい動かない
こういった症状を示した時に、ほとんどのご家族様で立ち止まって考える時間がやってきます。
・まだ寛解を目指して抗がん剤を継続するべきなのか
・通院のストレスも与えながらも頑張るべきなのか
・もう痩せてきてしまったし、そんなに体力的にも持たないのではないか
・ここでがん治療はやめると、この後うちの子はどうなってしまうのか
・がん治療をやめたら、あとどれくらい生きられるのだろうか
今まで抱えていた心の声が、リアルに心の奥から湧き上がってきて、きっと自分でもコントロールできないくらい不安な気持ちになることと思います。
がん治療をやめた場合に、その病気にもよりますが、延命は期待できないと考えています。
しかし、攻めるだけが選択肢ではなく、もう辛い治療はしないで、その子の性格や環境にあった治療方法に切り替えることも、また一つの選択肢です。
その選択肢が、往診に切り替えての、在宅緩和ケア、そして在宅ターミナルケアです。
「動物病院に通院させ待合室で待ち、診察室で抗がん剤を投与され、帰宅する。」
当たり前ですが、通院させなければ治療を与えてあげられないのが動物病院です。
しかし、通院すること自体がストレスになってしまい具合が悪くなってしまうのであれば、それもまた、往診専門動物病院に切り替えるタイミングです。
往診による家での緩和ケア・ターミナルケアへの入り方は、以下のような流れです。
1. 電話または問合せフォームからの診療予約
ここで、ある程度の状況を先にお伺いさせていただきます。
どんな経過があったのかなど、もし可能であれば問合せフォームから詳細事項を記載していただけると、準備する医薬品や医療資材内容の参考になりますので、ご記入ください。
2. 日程調整と往診
当院の往診では、獣医師+動物看護師の合計2~4人程度でお伺いさせていただき、今までの経過や現在の治療内容、そしてご家族様が求める緩和処置や診療プランなどについて詳しくお話しを聞かせていただき、その上で最良と思われる診療内容をご提案させていただきます。
3. 診療プランの決定とそれまでのアクションプランの決定
ご家族様にとって、診療と診療の間の時間に、もし発作が出たら、もし下痢をしてしまったら、もし吐いてしまったら・・・・、など、もし〇〇のときはどう判断して何をしたらいいのか、と言うご相談を必ずといっていいほど伺います。
全部とは言えませんが、大まかに想定される症状の発症に対して「こんな時はこうしてください」というアクションプランを複数伝えさせていただき、できる限りご家族様を一人にで悩ませないように、スタッフ全員でサポートさせていただく体制を整えていきます。
がん治療は決して快適ではなく、辛く険しい道のりであることは間違い無いです。
しかし、状態が良化してきているのであれば、続けてあげてください。寛解することを心から祈っています。
そして、もし途中で状態悪化による食欲廃絶、ぐったり、明らかな疲弊など、もう攻めた医療ではなく、余生をその子らしく過ごさせてあげたいと願われるのであれば、往診に切り替えることをお勧めします。
当院の往診では、がんに対しての治療はできません。
しかし、がんを患っている犬猫が今後発症するである症状に対する先制的な処方やアドバイス、アクションプランのご提案やトレーニングなど、最後の時間を家の中で過ごさせてあげるために必要だと考えられる内容をご提供させていただきます。
そして、緩和ケアやターミナルケアは、決して延命処置では無いです。
そのため、言いも悪いも、大きく寿命に関与しないと考えています。
しかし、残された時間の質に対しては、十分に効果を発揮できるよう、痛みを伴うのであれば痛み止めを使用し、吐きが止まらないならば吐き止めを使用、発作が止まらないのであれば発作止めを、呼吸が苦しいのであれば酸素室の設置など、最大限の対症療法をご提案させていただきます。
往診での緩和ケア、ターミナルケアをご希望のご家族様は、まずはご連絡ください。
次回は、「往診に切り替えたタイミング」をケースレポートでお送りさせていただきます。
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