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猫の糖尿病は早期発見早期インスリン治療開始で離脱できるかも! (東京文京区/猫往診)

犬猫にも糖尿病があるのをご存知でしょうか?

 

わんちゃん、猫ちゃんたちにも私たち人間と同様、糖尿病が存在します。

 

糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があり、犬は1型、猫と人は2型が多いとされています。

(※詳しい病態や座学的な箇所は、web上でたくさん情報が落ちているため割愛します。)

 

本ブログでは、糖尿病を発症した猫ちゃんが、早期発見早期治療によってインスリン投与生活から離脱できたため、症例報告として書かせていただこうと思います。

 

猫ちゃんが糖尿病を発症すると、以下のような症状が現れます。

 

☑️飲水量が増える(多飲)

☑️尿量が増える(多尿)

☑️食欲不振

☑️元気消失

☑️嘔吐

☑️毛艶が悪くなる

☑️削痩(痩せてきた)

☑️尿の臭いがなんか変

 

ご自宅にいる猫ちゃんで、あれ?なんか変だな?と思う箇所が上記に当てはまるのであれば、かかりつけの獣医師に相談するようにしましょう。

もし通院が難しく、かかりつけの動物病院がない場合には、往診専門動物病院まで相談し、指示を仰ぐようにしましょう。

 

 

糖尿病を発症した経緯

今回の猫ちゃんは、特発性膀胱炎を持病としていました。

 

猫ちゃんの膀胱炎というと、結石性膀胱炎細菌性膀胱炎、そして原因不明の特発性膀胱炎に分類されます。

 

特発性というのは調べたけど原因不明である、という意味です。

 

この場合は、ストレス性を疑うものの、原因は特定されませんので、対症療法のみを行って症状のコントロールを行っていきます。

 

この猫ちゃんは特発性膀胱炎を繰り返しており、処置すると症状が治るため、毎回同じ処置を繰り返していました。

 

本来は1日1回〜2回の内服薬でコントロールするのが一番いいのですが、とはいえ内服が苦手な猫ちゃんに対して毎日投薬することはとても難しく、ストレスがどんどん蓄積されてしまい、もしこの特発性膀胱炎の原因がストレスであればもっと悪化していく可能性も疑われました。

 

そのため、膀胱炎の症状が認められる度に、2週間の効果を期待できる注射薬を使用して、毎日処置するストレスをなくすことで調子を保てていました。

 

そんな中で、2022年1月末に異変が起き、糖尿病を発症していることが発覚しました。

 

糖尿病に気づくきっかけ

2022年1月末の定期検診の時に、「そういえば最近尿がベタつく」という主訴を受け、まさかと思い検査をしたところ、糖尿病を発症していることが発覚しました。

 

尿検査でケトンが検出されなかった(陰性)ことが救いです。

 

〜余談〜

糖尿病であれば、そのコントロールをどうするかについて経時的な変化を見つつ相談していく猶予がありますが、もしケトンが検出された場合には糖尿病性ケトアシドーシスを発症していることを疑い、致命的な結末も想定した入院管理が必須となり、24時間の集中治療を行います。

その場合には、できれば24時間管理ができるだけの規模の動物病院に入院させるのがおすすめですが、もし難しい場合に、夜間はケージで一人になることを受け入れなければいけません。

なお、在宅で管理できますか?、と質問を受けることがありますが、入院治療と比べて細かく1日に何度も検査ができないことから、コントロールが十分にできず、致命率は大幅に上がってしまうことを懸念し、もし回復を望むのであれば入院を推奨します。

なお、もうぐったりしていて、動物病院の中で1人旅立つのは絶対に嫌だとされる場合には、そのまま在宅で看取りを見据えた緩和ケアおよびターミナルケアに移行することもありました。

 

データが揃うのを待ち、2022年2月3日から、インスリン治療を開始しました。

 

血糖値の変化を知る方法

ここで、血糖値の変化について在宅医療ではどのように把握していくのかについて書かせていただきます。

 

皆さんは「Free Style Libre」をご存知でしょうか?皮膚に装着させることで、長期にわたって血糖値の変化をアプリで見ることができる優れものです。

 

人の医療では多用されているもので、ここ数年で動物医療にも使用されてきています。

 

img-index-01.jpg

 

装着させながら血糖値の変化を把握しつつ、尿検査も実施していただき、尿糖の状態、ケトン検出の有無を評価していただきました。

 

糖尿病のコントロールを把握するための表を作成し、ご家族様に測定していただいたものを毎日共有していただき、データの変化によってインスリン投与量を変化させてコントロールしていきました。

 

〜余談〜

Free Style Libreは、体表に装着させるため、設置面がそこまでルーズではなく、かつ設置面の広さを担保できる個体には有用かもしれませんが、結果としては参考値程度で3回の装着の後に、使用しなくなりました。

1回目は6日間程度データを取ることができ、2回目、3回目は4日程度で、商品に記載のある14日間有効というのは、「人の場合であり、ペットでは個体差あり」と認識させられました。

とはいえ、通常の動物病院で行うインスリン投与量決定前の日内入院による血糖効果曲線作成のための複数回の採血よりも、ストレスのない在宅中での正常時血糖を測定する方が有用であると考えているため、今後も初期検査方法の一つとして使用していこうと考えています。

 

基本プラン設定から離脱まで

 

基本的なプランは以下です。

 

☑️毎日の給餌時間と食事量(%)を主観で記載してもらう

☑️毎日のインスリン投与時間と投与量を記載してもらう

☑️トイレに溜まった尿で朝と夜に尿検査を実施してもらう

☑️毎日データを共有してもらう

☑️2週間に1回の往診で血液検査スクリーニング+長期血糖測定を実施する

 

基本的なプランと書きましたが、このプランもご家族様と相談し、何ができて何ができないかを明確にすることから、プラン決定に入ります。無理のない範囲で、かつちょっとだけ頑張ってもらうくらいがちょうどいいかと、個人的には考えています。

 

この方法で、インスリン投与量を徐々に増加させて4Uまで増加し、0.5Uずつ1週間〜2週間程度かけて下げていきました。

2022年2月3日から開始したインスリン療法は、ご家族様と猫ちゃんの協力により、2022年7月12日に完全離脱を成功し、今では食事療法のみでコントロールできています。

 

まとめ

猫ちゃんの糖尿病は、早期発見、早期治療でインスリン生活から離脱できるかもしれません。

もしすでに糖尿病が進行していて、ケトン尿が出てしまっている場合には、どうしても入院させたくない場合を除いて、治療を望むのであれば、可能な限り入院での集中管理を選ぶべきです。

とはいえ、もし糖尿病のサイン(多飲、多尿、尿の臭いの変化など)を感じた場合に、通院が苦手なわんちゃん・猫ちゃんであれば、早めに往診専門動物病院まで相談するようにしましょう。

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