猫ちゃんの多くが、動物病院に通院することが苦手です。
通院させると異常に興奮してしまい、極度のストレスに失禁や脱糞をしてしまったり、診察室では恐怖のあまり威嚇してしまうなどの豹変ぶりを見せたり、帰宅すると隠れてしまったりと、通院するだけでぐったりしてしまうということを多く見受けます。
猫ちゃんが通院できないのは、決してご家族様のせいではなく、それは猫ちゃん自身が選んだことですので、あまり気負わないようにしましょう。
そんなこんなで年月が経ち、いつもなら数日で体調が戻っていたはずなのに、それどころか徐々に悪化してしまっているような時期が訪れます。
そこでご家族様には選択肢ができ、満を辞して通院させるべきなのか、このまま看取っていくべきなのか、または往診を呼ぶべきなのか。
今回は、東京港区のご実家で暮らす19歳6ヶ月の猫ちゃんの在宅緩和ケアのお話です。
今回のケースでは、ご実家にいるご高齢のお母さんと息子さん、近くにいるお孫さんと協力して在宅医療プランを組み、2022年11月9日から4日間の連続往診を終え、11月12日から内服と食餌介助のプランを開始しています。
今後往診による在宅医療をご検討のご家族様、その日の参考にご一読ください^^
初診予約時
今回は、すでに当院で在宅医療を実施中の猫ちゃんと暮らしているお孫さんからご予約いただき、内容としては『実家にいる猫ちゃんの具合が悪いので往診をお願いしたい』とのことでした。
ここ最近急激に増えてきた事案として、「住んでいる場所は違うが、実家にいる犬猫の体調が悪く、また通院させることができないため、ご実家への往診してほしい」、というものです。
人間の方では、そういったサービスが拡大されているようですが、ペット業界ではまだまだ発展途上なため、こういったケースは以下のようなプランがおすすめかと思います。
1. 往診専門動物病院に依頼し、かかりつけ動物病院として現状を把握してもらう
2. 訪問サービスでペットの介助をしてくれる業者を選定する
3. 訪問サービス業者がどんなことをすべきかを往診専門動物病院から指示してもらう
今回のケースでは、お孫さんもご実家から比較的近くに住まれていたため、診察に立ち会っていただくことが可能だったので、スムーズに診療予約を確定できました。
もしこういったケースで遠方からのご依頼だった場合には、実際の診療に立ち会うことが物理的に難しいと思われます。
しかし、ご依頼される方と、実際にペットと生活しているご家族様の意見が異なってしまうと、お伺いしても何もできないという場合が発生してしまうことがあります。
ご依頼いただく時には、必ず意見の擦り合わせはできているのかをご確認させていただきますので、もしその時点でまだの場合には、何について決めておかなければいけないのかをご案内させていただきます。
意思決定ができる人間の数ほど意見がありますので、難しい場合には、診察に立ち会っていただくことをお勧めします。
私たちがお伺いして状況・状態を整理し、何がどこまで可能なのかを明確にした上で選択肢を挙げさせていただきます。
初診(2022年11月9日)
子猫との時からの慢性鼻炎と便秘持ちで、現在は耳が聞こえてないとのことでした。
お会いすると、ベッドの上でぐったりとした猫ちゃんが静かに伏せして待っていてくれました。
普段は人見知りなのか、おそらく知らない人が来たら真っ先に隠れてしまうはずなのですが、それだけ具合が悪かったということと思います。
かかりつけの動物病院から処方された内服薬は、ちゃんと飲ませられていることに驚きました。
それであれば、もし押さえられたり針刺が苦手だった場合にも、内服薬でのコントロールを選択肢として挙げられるかもしれないと思われました。
お母さんのお気持ちとしては、検査はストレスが大きいので、検査なしで今の症状を楽にすることを望まれましたが、この背景には、まだ若くて元気だった頃に検査ですごく抵抗していて可哀想だった記憶がありました。
お孫さんとも相談し、長年検査をしていなかったことと、やはり今の状況を把握する方が対策を打てる可能性が高いことから、やはり検査をすることで話を進めさせていただきました。
もし猫ちゃんが嫌がって取り乱すことがあれば、その場で検査をすることを中止することとし、お母さんにどうにか承諾を得て、血液検査、超音波検査を実施しました。
想定していた通り、既に血圧も低くなっていたこともあり、ほぼ嫌がらずに検査を受けてくれました。
お母さんも、その姿に安心してくれました。
最後に皮下点滴を行い、この日は終了です。
初診日、翌日、翌々日と診察を行い、4日目に状況を整理してプランニングをしていくこととなりました。
再診(2022年11月10日)
昨日よりは状態も上がり、朝は猫ちゃん自らご飯を少しだけ食べてくれたとのことでした。
この時点で確認できた血液検査結果より、慢性腎臓病のステージ4、急性〜慢性膵炎の2つを検出しました。
本来であれば、毎日皮下点滴を実施してもらいたいため、皮下点滴トレーニングをご家族様にしっかりと入れ、家の中でご家族様だけで実施できる環境づくりを行う状況です。
しかし、ご家族様の希望もあり、連続往診による皮下点滴処置後は、内服で余生を過ごさせてあげることとなりました。
わんにゃん保健室の在宅医療プランは、決して攻めた医療内容ではなく、愛犬、愛猫の余生を少しでも楽に過ごさせてあげるためのプランです。
ご家族様の望む最後の時間の過ごさせ方を、医療の面から、家の中でサポートさせていただきます。
少し元気が出てくると、この猫ちゃんらしさが徐々に出てきて、処置中にもイヤイヤモード全開でした。
連続往診4日目(2022年11月12日)
ご家族様がシリンジを用いた食事介助や投薬ができるという環境でしたので、連続往診を終え状況が把握できた後は、内服と食餌介助でのコントロールとしました。
ただ、状態がグッと上がってきたわけではなく、初診時よりは少し上がったものの、まだまだ予断を許さない状況であることをお伝えし、また内服薬がなくなる1ヶ月後くらいを目処にご予約をいただくこととしました。
内服薬は全部で6種類です。
頑張っていきましょう!
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