皆さんは、往診専門動物病院を利用されたことはございますか?
そもそも往診という診療形態は、従来から存在しており、人間では専門分野として確立されていますが、獣医療業界では、まだまだ通常の動物病院の診療サービスのオプションとして存在している程度でしか浸透していません。
施設を有する通常の動物病院の往診は、基本はずっと通院していたペットに対し、もう通院が難しいからと判断した時に、診療時間の合間を縫って処置のみで伺うことが多いとされています。
ポータブルの検査機器を準備されていれば、飼い主様のご自宅にて検査を実施することは可能ですが、通常診療の中で往診を求められる頻度が極端に少ないこともあり、ポータブルに特化した検査機器を完備しているところは少ないです。
もしかすると、ニーズはたくさんあるにもしても、動物病院では手術や検査などに時間を優先的に割かなければいけないという経営的な観点から、往診に対して消極的な対応となっているという側面が大きいのかもしれません。
なお、診察の時には「保定」と言って、検査や処置の間できる限り動かないように抑える行為を診療を、専門技術を有する動物看護師にお願いするのですが、診察室にある診察台の上で行う保定と、ご自宅で行う保定では、同じようですが全然違うものを要求されます。
基本はご自宅の床上で行うため、体の柔軟性や失禁・脱糞・肛門腺を飛ばしてしまうなどの事象に対し、事前準備と飼い主様への説明であったり、その場合にどうするべきなのかなどを常に意識していなければいけません。
また、往診を希望されるペットの状態は、基本的には病気の末期で体力が極端に消耗していたりと、重体であることがほとんどです。
ましてや呼吸状態が悪いペットの保定には、どこをどれくらいの力で押さえるべきなのかがとても重要なため、それをご自宅の床上でやりながら、さらに言えば呼吸状態の変化に対して酸素供給の動線確保などを考えなければいけないなど、多岐にわたる意識分散が必要となってきます。
この状態のペットの保定を、通常であれば飼い主様に強いるようなことはしないのですが、獣医師が一人でお伺いするような往診診療を行なっている場合には、飼い主様自身でこの保定業務を行わなければいけません。
そのようなことが起きる場合には、細心の注意を払うのはもちろん、万が一胸やお腹を圧迫してしまって呼吸困難を引き起こしてしまった時に、どう対処したらいいのかなど、事前に獣医師に確認して万全の体制で臨みましょう。
最終的に、全ての判断を委ねられるのは、飼い主であるご家族様です。
できれば動物看護師を連れてきてもらえるよう、しっかりとお願いすることをお勧めします。
このようなことから、普段から在宅での診療を意識した準備をしていなければ、ペットの往診では、いろんなところにトラブルが潜んでいます。
しかし、実際の現場では、往診を希望されるシニア期のペットと暮らしているご家族様が多くいて、潜在ニーズとしては、往診を希望されるご家族様が多くいると考えています。
ただ、忙しく診療されている担当の獣医師や院長に、往診にきてほしいとなかなか言いづらいために、ペットに鞭打って通院させなければいけないような雰囲気を過ごしてしまっているのもまた、悲しい事実です。
そんな中、ペットが病気の末期で、もう動かすことすら厳しい状態になって初めて往診専門動物病院わんにゃん保健室までご連絡をいただき、覚悟を持って終末期医療(ターミナルケア)の往診切り替えを希望されています。
月間で多い時だと初診数で20件ほどを受けていますが、今後はより診療件数が増えてくることが予想されるため、もし今後往診での緩和ケアやターミナルケアを希望される場合には、早期から一度ご連絡をいただき、カルテ作成と現状把握をさせていただくことをお勧めします。
もう少し早くご連絡をいただければという症例も多々ある中で、ご家族様にとって動物病院への通院は日常に存在するものですが、往診は非日常的な存在であると考えています。
そのため、ペットの往診専門が存在することすら知らなかったというご家族様が、当院初診時の大半を占めています。
往診専門動物病院が、一体どんな性質の動物病院なのか、何ができるのか、実際の診療の雰囲気はどんなものなのかは、ブログやインスタなどで発信してはいるものの、ご家族様だけでなく、実は動物病院で働く獣医師や動物看護師の方たちもまだまだ知られていないのも事実です。
これからも、どんどん往診専門動物病院の実態について発信していきますので、往診を将来的に利用されるかもしれないと考えているご家族様、紹介先として往診専門動物病院を差がされている動物医療関係者の方々は、是非当院のブログを見ていただければと思います。
前置きが長くなってしまいましたが、次のブログでは【往診専門動物病院でできることとできないこと】を書かせていただきます。
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当院の往診は、一過性の症状に対する治療にも対応しております。
在宅医療特化型の犬猫往診を東京23区を中心に近隣地区までお伺いし、慢性疾患に対する検査・処方コントロール、および緩和ケアと看取りまでのターミナルケアに対しては、専門的に取り組んでおります。
わんちゃん、猫ちゃんの在宅医療でお困りのご家族様、まずはご相談ください。(03-4500-8701 / 10:00-19:00 / 不定休)
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