猫の癌(がん)と言えば「リンパ腫」が最も知られているかと思います。
リンパ腫と言っても、発生部位や悪性度など、同じようでも全く違うもののように、犬猫の余生に対し影響してきます。
今回ご紹介するのは、東京葛飾区にお住まいのタマちゃんです。
2022年10月27日に出逢い、ご自宅のペット許可申請を完了し、正式に迎えたのは12月2日でした。
2023年4月22日にCT検査にて左鼻腔内リンパ腫と診断され、抗がん剤を実施しましたが、体力的にも精神的にも負担が大きかったため断念し、往診での在宅終末期ケアに変更しました。
毎日の看病の末、2023年7月15日、お母さんの腕の中で眠るように、静かに旅立ちました。
【初診(2023年6月9日)】
最初に違和感に気づいたのは、2023年4月初旬のことでした。
鼻血(鼻出血)が出ていたので、家の近くにある動物病院に通院してみたところ、口内炎があるので、おそらくは口内炎が原因で鼻血が出たのだろうとされたとのことでした。
症状が改善しないこともあり、4月下旬にCT検査を実施したところ、左鼻腔内リンパ腫と診断されました。
ただ、食欲は旺盛だったため、ステロイドの量もどんどん漸減できていたのですが、5月31日から一気に食欲がなくなり、この頃は高頻度で通院させていたですが、もう体力的にも厳しいと判断し、在宅医療での終末期ケア(ターミナルケア)に切り替えました。
ご飯の匂いを嗅ぐけど食べないというような感じで、強制給餌をするべきなのかの相談も含めて、往診でご相談させていただきました。
また、同日に終末期ケアに入るための検査を実施しました。
酸素化しながらの血液検査と超音波検査を実施し、全身状態を把握していきます。
かなり嫌がることを想定していたのですが、タマちゃんは理解しているようで、かなり強力的に検査に臨んでくれました。
動物病院に連れて行くと、診察台の上では借りてきた猫のように固まってしまうタイプの猫ちゃんでも、実際に家の中では全く異なった性質を見せます。
診察室では怖くて取り乱してしまう猫ちゃんでも、在宅環境なら比較的落ち着いて受け入れてくれたり、その逆も然りです。
当院では、異常興奮に伴う呼吸悪化を防ぐ意味からも、酸素ボンベを常に持ち込み、緊急時の備えはもちろんのこと、検査時などにも呼吸に注意しながら、看護師人数を揃えてお伺いさせていただいております。
タマちゃんのケースでは、すでに自宅にてお母さんによる皮下点滴を実施できていることもあり、投薬経路は確保されているため、注射薬内容を調整することで点滴準備は整いました。
投薬のための点滴なのか、少しでも水分補正を狙ったものなのか、この量の輸液を一回に入れても代謝できる状態なのか、今まで合わなかった医薬品は、どれがしみるのか、などを説明した上で、プラン決定をしていきます。
強制給餌に関しては、やってあげたい気持ちもありますが、ただ頑張れば頑張るほど、きっとタマちゃんは怖がり、心の距離ができてしまうかもしれないことをお伝えさせていただきました。
ただ、その上で実施をご希望される場合や、やり方だけを知っておきたいといった場合には、強制給餌トレーニングを一緒にさせてただき、使用するフードの種類や1回量、ご飯の濃度や流し込む位置、速さ、そしてペットの押さえ方や顔のキープの仕方など、細かくお伝えさせていただきます。
この日は、まず治療経過を追ってみて、医薬品では改善できないとした場合に、また考えましょうということとしました。
検査、処置、暫定的なプランを決定し、終了としました。
【初診までのまとめ】
本日は、猫のタマちゃんとの出会いから、初診での深いヒアリング、暫定的な方針決定までのお話を書かせていただきました。
通院できる犬猫だとしても、終末期を迎えると移動することがとても辛くなってきます。
無理に通院させるのではなく、もう余生を見据えた在宅医療に切り替えたいと感じましたら、お早めにかかりつけの動物病院にご相談してください。
動物病院によっては、定期的に時間を設けて、しっかりと往診にて訪問診療を組み立ててくれる獣医師もいるかと思います。
往診はその場その場での診察であるのに対し、訪問診療は組まれたプランに沿って行う在宅医療です。
完全に訪問診療とはいきませんが、多少の臨機応変さを兼ね揃えた訪問診療を提供してくれる獣医師と、1家族でも多くの方が出会えることを祈っています。
東京、埼玉、千葉、神奈川であれば、往診専門動物病院わんにゃん保健室がご家族様のお力になれます。
当院の往診をご希望のご家族様は、まずは在宅医療切り替えが可能かどうか、当院までお問い合わせください。
次回は、タマちゃんの経過から旅立ちまでの在宅終末期ケアです。
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