終末期を迎えた犬猫に対して、「(治療に関しては)何もできないので、そのまま看取ってください」と言ってしまう獣医師がいます。
この言葉には、「治療の手段がない」という思いが強く隠れていますが、言葉足らずで伝わってしまった結果、とても冷たく伝わってしまった典型的なケースであると考えています。
かかりつけの獣医師からの心無い言葉で傷つく飼い主様はたくさんいます。
ただ、もし今受け入れられる心の余裕がございましたら、その背景には、全ての命を平等に助けたいと考え、毎日死に物狂いで働いている先生の言葉足らずを許してあげてください。
今回ご紹介するのは、通院から往診に切り替え、しかしその往診が動物病院のオプションだったことから、在宅医療に特化した当院に転院された、頸部腫瘍を抱える猫のももたろうちゃんのお話です。
2023年7月9日に当院と出会い、約3ヶ月間にわたる終末期ケアの末、2023年10月3日、家族が見守る中、静かに眠りにつきました。
【初診時のももたろうちゃん】
食欲はまだあったのですが、飲み込むのが難しい病態なため、食皿の前でじーっと見つめて考える仕草が胸に刺さるとのことでした。
しばらく考えて一口食べては、ゼェゼェしてやめて、また考えては一口食べて、を繰り返しているとのことでした。
ご飯はドライフードをすり潰し、a/d缶などのウェットフードと混ぜているとのことでした。お皿が汚れないよう、頻繁に交換してあげているとのことでした。
ウェットはいろんな種類のものを準備し、騙し騙しローテーションしているとのことでした。(猫ちゃんあるあるですね^^)
あまり動けなくなってきたが、もともと体も大きくあまり動かないタイプとのことで、運動量の変化は大きく感じていないとのことでした。
それでも知らない私たちが触ると怒る仕草を見せて抵抗しましたが、頑張って血液検査、超音波検査をさせてくれました。
常備薬としてセレニアとプリンペラン、レメロンが準備されていましたが、これらも全て別の医薬品、剤形変更にて対応し、ももたろうちゃんにあった常備薬として準備させていただきました。
飲み込むのが辛い猫ちゃんに、食欲増進剤を出し続けるのはかわいそうかなと思い、一応別の薬で代用できるように準備はするが、使用するかどうかはお任せですとお伝えしました。
皮下点滴はビタミン入りのソルラクト輸液を2023年5月から1日1回180mlで投与していたので、1日2回90mlずつと分けることで、本人の負担だけでなく、実施するご家族様の負担を軽減することができました。
ご家族様ごとで何が負担なのかは異なります。
その負担な箇所を把握し改善案を提示すること、そしてそれを実施できるようにお手伝いすることが、ペットの在宅終末期ケアでは必須となってきます。
腫瘍に対してステロイドを使用しない理由を伺ったところ、以前に医原性糖尿病を発症したことがあったことから、かかりつけ獣医師から、ももたろうちゃんにはステロイドを使用しないと言われてしまったため、今回も出してもらえなかったとのことでした。
インスリン療法によって糖尿病を克服できたものの、その後も再発を繰り返していたとのことでした。
初診時に行った検査結果と日を追うごとに変化するももたろうちゃんの病状に合わせた処方を都度変更しながら調整していきます。
この日から、ももたろうちゃんの在宅終末期ケアが始まりました。
次回はももたろうちゃんの終末期ケア(ターミナルケア)の様子をなるべく鮮明にお伝えしていこうと思います。
もしお近くで、通院が難しいとされる犬猫と暮らすご家族様がいらっしゃいましたら、往診専門動物病院があることを教えてあげてください。
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